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東ティモール共和国「コミュニティ自立支援事業」 1 年次完了報告書 (報告対象期間:2014 年 7 月 1 日~2015 年 6 月 30 日) (c)Kei SATO 2015 年 9 月 公益財団法人 ケア・インターナショナル ジャパン

東ティモール共和国「コミュニティ自立支援事業」 9 57 4,000 Aileu 11 59 4,000 Manufahi 9 38 4,000 Manatuto 12 38 4,000 Ermera 18 107 7,920 Bobonaro 24 74 7,849

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東ティモール共和国「コミュニティ自立支援事業」

1年次完了報告書 (報告対象期間:2014年 7月 1日~2015年 6月 30日)

(c)Kei SATO

2015年 9月

公益財団法人 ケア・インターナショナル ジャパン

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1.支援組織の皆様による支援概要

事業名 コミュニティ自立支援事業

実施国 東ティモール共和国(注 1)

支援期間 2014年 7月~2017年 6月(3年間)

全体事業規模 1,120,520 ドル(1年次)

4,071,462 ドル(3年間)

支援金額合計 6,473,944円(1年次)

(注1)アジアで一番若い国であると同時に、国民の半数が

1日 1.25 ドル以下で暮らすアジア最貧国とされています。

2.1 年次の主な活動実績

CARE東ティモールの協力のもと、「経済」「教育」「情報」へのアクセスが制限された農村部の人々の自立を支援す

ることを目的に、以下の活動を実施しました。主に、子どもと識字能力の低い成人の学習効果の向上に寄与すること

で、家族の社会的・経済的状況の改善と学習効果の向上を目指しています。

1) 子どもを対象としたラファエック雑誌(Lafaek Kiik)

幼稚園教育局、基礎教育局、カリキュラム局等の教育省の担当部局との

密接な連携のもと、第 1号の子ども用ラファエック雑誌を制作。幼稚園と

小学校 1 年~2 年生に在籍する全ての子どもに配布しました。全ての雑

誌は、初歩的な読み書きと計算能力の強化及び基本的な健康と衛生に

関するメッセージに焦点をあてた教育省の新しい基礎教育カリキュラムに

即した内容となっています。

(左:本事業キャラクターのワニの着ぐるみ)

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今年度は、2014年 12月に、子ども用ラファエック雑誌第 1号 140,000 部を制作し、以下の通り、その内 115,207部

の配布を完了しました。以後、教育省の正式な学校リストには掲載されていない、4 つの幼稚園と 21の小学校が確

認されたことをうけ、追加配布予定です。2015年 6月には、第 2号の 140,000部の印刷を完了。8月に配布予定と

なっています。

2015年度配布実績(子ども用ラファエック雑誌):

学校と学年 配布学校数 男子 女子 障害児 総計

男子 女子

Nol Besar 280 3,990 4,163 1 0 8,154

Nol Kecil 4,426 4,354 2 0 8,782

Grade 1 1230

27,289 26,123 154 32 53,598

Grade 2 23,370 21,298 4 1 44,673

総計 59,075 55,938 161 33 115,207

2) コミュニティ対象のラファエック雑誌(Lafaek ba Komunidade)

コミュニティ・ラファエック雑誌では、改善された農業技術、健康、マ

イクロファイナンス、気候変動や栄養に関する情報が掲載され、成

人向けの読み書きと計算に焦点があてられています。

2014年 12月には、第 1 号として 84,000 部を制作。その内 79,933

部を、13の市、40の行政区、183村、829集落村の世帯に配布しま

した。これにより、東ティモールの全世帯のうち 45%がカバーされて

いることになります。残りの 995部については 115の現地の協力団

体を通して配布されました。第 2号についても配布中であり、2015

年 8月には配布を完了する予定です。

持続的で自立的な発行を担保すべく、雑誌への広告販売を開

始。第 2号発行において、2社がスポンサーとなりました。今後も、

スポンサーが増えることが予想されます。

(右:事務所のパソコンで編集作業を行うスタッフ)

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雑誌の発行に加えて、より学習内容の理解促進と定着を図る

ことを目的に、6つの市で(Manufahi, Manatuto, Ainaro, Aileu,

Ermera, Dili)、対話ワークショップを 6 回開催。198名の住民

(男性:123名、女性:75名)が参加しました。

対話ワークショップは、地域住民による参加型で行われ、雑誌

で取り上げた内容の実践方法について伝授するとともに、生活上の課題について協議する場となっています。同時

に、地域住民に雑誌の内容について質問や意見を求めるなど、次号で取り上げる新たなトピックの発掘にも役立っ

ています。

2015年度配布実績(コミュニティラファエック雑誌):

配布地域 村(Suco) 集落村(Aldeia) 配布世帯数

Covalima 18 87 8,010

Ainaro 9 57 4,000

Aileu 11 59 4,000

Manufahi 9 38 4,000

Manatuto 12 38 4,000

Ermera 18 107 7,920

Bobonaro 24 74 7,849

Oecusse 10 56 7,652

Dili 8 43 4,090

Liquisa 6 32 4,380

Baucau 23 59 7,966

Viqueque 16 92 8,069

Lautem 19 87 7,997

計 183 829 79,933

2015年度対話ワークショップ実施実績(コミュニティラファエック雑誌):

実施地域 行政区 村(Suco) 集落村 男性参加者 女性参加者 総計

Manatuto Natarbora Au-Beon 2 7 10 17

Manufahi Ala Taituduc 3 20 11 31

Aileu Aileu Villa Hoholau 8 25 11 36

Ainaro Maubisse Maulau 5 22 18 40

Dili Vera Cruz Dare 9 30 13 43

Ermera Ermera Villa Raimerhei 5 19 12 31

計 32 123 75 198

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3) 教師用ラファエック雑誌(Lafaek ba Edukador)

教師用ラファエック雑誌を、教育省の関係部局との密接な連携のも

と発行しました。教授法の改善を促進するとともに、教育省と現場

の教師とのコミュニケーションの手段としても役立っています。

2014年 12月には、教師用ラファエック雑誌第 1号 11,075 部を制

作。その内 8,161号が、幼稚園と小学 1年生から 6年生までを担当

する教師に配布されました。268の幼稚園と 1,216の小学校が対象

となり、これにより東ティモールの幼稚園と小学校の全教師をカバ

ーしたこととなります。

2015年 6月には、第 2号の制作を完了しました。現在、配布中であり、2015年 9月には配布を完了する予定です。

2015年度配布実績(教師用ラファエック雑誌):

配布地域 学校数 教師数

幼稚園 小学校

Covalima 20 85 626

Ainao 14 87 457

Aileu 20 78 436

Manfahi 29 83 599

Manatuto 10 64 245

Ermera 9 140 698

Bobonaro 30 149 901

Oecusse 14 68 419

Dili 38 74 887

Liquisa 27 55 454

Baucau 9 167 1,054

Viqueque 31 92 921

Lautem 17 74 464

計 268 1,216 8,161

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3.ジェンダーの平等を促進するための工夫

CAREは、全ての事業において、ジェンダーの平等と女性と女子のエンパワメントを進めています。本事業も例外で

はなく、様々な工夫がされています。

1)個人レベル(女性自身の技術、知識、自尊心)

ラファエック雑誌では、記事の中で、伝統的に規定された性的な役割には捉われないよう配慮しつつ、

女性、男性、女子、男子を描くようにしています。また、歴史上、科学上の女性の役割を強調し、多様性の大切さを

記事に盛り込むようにしています。

(例)3種類のラファエック雑誌では、以下のようなメッセージを含めるようにしています。

・子ども用ラファエック雑誌:

女性のキャリアパス、子どもの将来の夢や憧れを励ます。

・コミュニティ・ラファエック雑誌:

女性が自尊心を身に付け、公共の場へのアクセスを促進する。対話の場への女性の巻き込みを促進する。

・教師用ラファエック雑誌:

女性教師の事例やロールモデルについて描写する。

2)人との関係性のレベル(女性と夫、子ども、両親、地域住民との関係性)

ラファエック雑誌では、女性や女子を家族や地域での決定の過程から排除せずに、周囲の男性や男子が彼女達の

参加を促すような状況を描写しています。また、家事労働の男女間での平等な分担という考え方を促進し、教育に

関する性別による既成概念を打ち壊すようにしています。とりわけ、コミュニティラファエック雑誌では、女子が学校に

出席し続けるように、そして男子が児童労働やギャング活動に巻き込まれることのないように、特別な配慮をしていま

す。

(例)3種類のラファエック雑誌では、以下のようなメッセージを含めるようにしています。

・子ども用ラファエック雑誌:

初等教育、とりわけ女性・女子に対する初等教育を促進する為、両親を含めた家族からの支援を引き出す。

・コミュニティ・ラファエック雑誌:

男女の平等な関係性の良いモデル(例:意思決定を一緒に行う、夫婦の責任等)について、事例や記事として掲

載する。

・教師用ラファエック雑誌:

生徒間、教師間の交流を、性別による型にはまった役割分担に基づき描写するのではなく、より平等に描写する。

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3)社会構造レベル(経済市場、政府、教育システム、宗教、親類等の外部環境による女性の選択への影響)

ラファエック雑誌では、教室での男子女子の平等な扱いの事例を示すようにしています。また教師向けの雑誌と子ど

も向けの雑誌では、教室内の男女の関係性の変革を進めるための指導方法が開発されています。

(例)3種類のラファエック雑誌では、以下のようなメッセージを含めるようにしています。

・子ども用ラファエック雑誌:

女子を対象とした競争や活動について描く。

・コミュニティ・ラファエック雑誌:

男女の役割に関する社会的規範と慣習及び伝統的な家庭内での男女の家事労働の配分について打開してい

く。

・教師用ラファエック雑誌:

男女の平等と多様性を包括した教室運営について描く。

4.今後の課題と展望

コスト削減、事業収益をあげる活動そして技術の共有によって、雑誌の継続性を高めるため、以下の選択肢を検討

していきます。

1)宣伝とスポンサー制の導入:

雑誌内での利害の対立が起こらないよう配慮しながら、非営利目的及び営利目的の民間、公共の団体等の宣伝広

告の掲載を広く受け入れます。

2)ラファエック印刷プレス:

大量印刷を可能とするソーシャルビジネスを立ち上げます。これにより本事業に限らず、費用対効果の高い印刷サ

ービスを様々な顧客に提供することができるようになります。

3)オンラインサービス提供:

東ティモールの人口の約 6割以上が携帯にアクセスできており、多くはインターネットにもアクセスしている状況を考

慮し、雑誌コンテンツのメールによる配信サービス、ブログやフェースブック、アプリによるラファエックゲームの開発

等を検討していきます。これにより、現在のフィールドオフィサーや雑誌が行き届いている範囲を超えて、情報を拡

散できる可能性があります。

4)漫画とテレビの売り込み:

例えば、ラファエックのキャラクターを使用した短い漫画や、2~5分程度のアニメーションを制作し、現地の新聞社

や他の出版業者に有償で提供することも検討します。

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5)クラウドファンディングの活用:

クラウドファンディングはオンラインによる資金調達モデルの一つであり、大きな資金ではなく、限定的な資金額の調

達をするにあたっては成功する可能性が高いと言えます。例えば、オーストラリアや他の市場を対象として、ラファエ

ック漫画やアニメーション、アプリといった創造性あふれる成果物を使い、資金調達をする等、検討していきます。

5.活動写真

All Photos (c)Kei SATO

以上