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経済産業省商務流通保安グループ 電力安全課 殿 平成 28 年度電気施設保安制度等検討調査 (信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討) 報告書 平成 29 3 日本エヌ・ユー・エス株式会社

平成 28年度電気施設保安制度等検討調査 (信頼性 …経済産業省商務流通保安グループ 電力安全課 殿 平成28年度電気施設保安制度等検討調査

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Page 1: 平成 28年度電気施設保安制度等検討調査 (信頼性 …経済産業省商務流通保安グループ 電力安全課 殿 平成28年度電気施設保安制度等検討調査

経済産業省商務流通保安グループ

電力安全課 殿

平成 28 年度電気施設保安制度等検討調査

(信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討)

報告書

平成 29 年 3 月 日本エヌ・ユー・エス株式会社

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目 次

略語表 ............................................................................................................................... iii 1.序文 ............................................................................................................................. 1 2.米国 EPRI の RCM と PMBD に関する調査.............................................................. 3

2.1 米国 EPRI が開発した簡略化 RCM 手法の調査 ................................................... 3 2.1.1 簡略化 RCM 手法の概要 ................................................................................. 4

2.2 米国 EPRI が開発した PMBD の調査 ................................................................... 8 2.2.1 PM テンプレートの適用プロセス ................................................................... 9 2.2.2 PM テンプレートのフォーマットと作成 ...................................................... 10 2.2.3 PM テンプレートの適用(PM レビュー) ................................................... 12 2.2.4 PM 実行と継続的改善 ................................................................................... 13

3.米国における取組の調査 ........................................................................................... 14 3.1 米国訪問調査のまとめ ......................................................................................... 14 3.2 EPRI による PM 基盤データベース(PMBD)の開発と米国電力会社での利用

...................................................................................................................................... 18 3.3 ファーストエナジー社での保守高度化と PMBD の活用 .................................... 30 3.4 ルイビルガス・電力社(LG&E)での火力発電所保守高度化の取り組み ......... 40 3.5 FOMIS による火力発電所間の情報交換 ............................................................. 46

4.欧州の類似の取組に関する調査 ................................................................................ 52 4.1 欧州訪問調査結果のまとめ .................................................................................. 52 4.2 ドイツ VGB (欧州大規模発電所技術協会) ..................................................... 54 4.3 ドイツ LEAG 社 ................................................................................................... 65 4.4 フィンランド Fortum 社 ..................................................................................... 72 4.5 文献調査の結果 .................................................................................................... 77

4.5.1 フランス電力(EDF)の火力発電所への RCM 適用 ................................... 77 4.5.2 イタリア ENEL 社の火力発電所への RCM 適用 ......................................... 79 4.5.3 アイルランド ESB 社の Poolberg CCGT 発電所への RCM 適用 ................ 80

5.国内の関係各者・有識者へのヒアリング等の実施 .................................................. 81 6.我が国に適した信頼性重視保全のフォーマット案の作成と評価 ............................. 85

6.1 機器タイプの選定 ................................................................................................ 85 6.2 PM テンプレートの作成プロセスとフォーマットの比較 ................................... 89 6.3 PM テンプレートの適用プロセスの比較 ............................................................ 90 6.4 我が国における PM テンプレートの評価と考察 ................................................. 90

7.信頼性重視保全のフォーマットの活用についての有識者検討会の運営 .................. 94

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8.まとめ ...................................................................................................................... 101 付録 1 検討会資料 付録 2 ヒアリング会資料

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略語表 AOV Air Operated Valve 空気作動弁

ASME American Society of Mechanical Engineers 米国機械学会

BM Breakdown Maintenance 事後保全

BOP Balance-of-Plant 原子力蒸気供給系以外の系統設備の総

CBM Condition Based Maintenance 状態監視保全(状態基準保全)

CCGT Combined Cycle Gas Turbine ガスタービンコンバインドサイクル発

CHP Combined heat and power 熱併給発電

CMMS Computerized Maintenance Management

System

計算機保守管理システム

EAM Enterprise Asset Management 企業資産管理

EDF Electricité de France フランス電力会社

EEX European Energy Exchange 欧州エネルギー取引所

ENEL Ente Nazional per l'Energia Electrica イタリア電力公社

EPA Environmental Protection Agency 環境保護庁

EPRI Electric Power Research Institute 電力研究所

ER Equipment Reliability 機器信頼性

FERC Federal Energy Regulatory Commission 連邦エネルギー規制委員会

FMEA Failure Modes and Effects Analysis 故障モード影響解析

FMECA Failure Mode, Effect and Criticality Analysis 故障モード影響及びクリティカリティ

解析

GE General Electric Company ゼネラル・エレクトリック社

IAEA International Atomic Energy Agency 国際原子力機関

INPO Institute of Nuclear Power Operations 原子力発電運転協会

IPP Independent Power Producer 独立系発電事業者

IVO Imatran Voima Osakeyhtioe IVO 社(フィンランドの電力会社)

KPI Key Performance Indicator 主要パフォーマンス指標

LTA Logic Tree Analysis ロジックツリー解析

MEL Master Equipment List マスター機器リスト

MTBF Mean Time Between Failures 平均故障時間間隔

NERC North American Electric Reliability Corporation 北米電力信頼度協議会

O&M Operation and Maintenance 運転及び保守

OEM Original Equipment Manufacturer (他社ブランド製品の)製造業者

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P&ID Piping and Instrumentation Diagrams 配管・計装線図

PDCA Plan, Do, Check, Action 計画、実施、評価、改善

PM Preventive Maintenance 予防保全

PMBD Preventive Maintenance Basis Database 予防保全基盤データベース

PMO Plant Maintenance Optimization プラント保守最適化

PRIS Power Reactor Information System 発電炉情報システム(IAEA)

PUC Public Utility Commission 公益事業委員会

RCM Reliability Centered Maintenance 信頼性重視保全

RTF Run to Failure 壊れるまで使用する(事後保全)

SME Subject Matter Expert 当該機器専門家

SRCM Streamlined Reliability Centered Maintenance 効率化信頼性重視保全

TBM Time Based Maintenance 時間計画保全(時間基準保全)

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1.序文 火力発電施設の保安のためには、運営者の日常的な保全が不可欠である。電力システム

改革による電力全面自由化が今年度から開始され、発販分離の体制に移行した事業者もあ

る中、各火力発電所においては保安水準を維持することが求められつつも、よりコストを

かけない取組を実施する必要に迫られている。このような状況下では、リアルタイムの状

態監視による信頼性評価に基づき、最適な工事・維持管理・運用計画により最適な保全(信

頼性重視保全(RCM))を実施することが有効となる。高度な信頼性重視保全のもとでは、

火力発電所における事故リスク(計画外停止リスク)が減少するとともに、火力発電所に

係る損害保険料等の算出根拠になるリスク評価の見直しにもつながることから、事業者の

保安の向上・操業コストの低減につながることが期待される。 火力発電設備に関する信頼性重視保全は、米国では米国電力研究所(EPRI)を中心

に取組が進められているが、日本では体系的な取組があまり行われていない状況である。

そこで本検討調査では、米国EPRIの取組事例等を調査しつつ我が国に適した信頼性重

視保全の方法について調査することにより、信頼性重視保全を実施する為の支援ツールと

してフォーマット案をとりまとめ、その活用方法について検討し、継続的な保安水準の維

持・向上に資することを目的とする。 こうした目的を達成するために、本調査の内容は図 1-1 に示す 3 つの作業から構成され

る。

図 1-1 調査の内容

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また、図 1-1 に示した各作業の関連性を図 1-2 に示す。

図 1-2 各作業の関連性

「1.信頼性重視保全の取り組み等に関する調査」のうち、米国 EPRI の取組の調査の結

果については、第 2 章にまとめている。米国調査の結果については第 3 章、欧州調査の結

果については第 4 章、有識者とのヒアリング会については第 5 章にまとめている。 「2.我が国に適した信頼性重視保全のフォーマット案の作成と評価」については第 6 章

にまとめている。 「3.信頼性重視保全のフォーマットの活用についての有識者検討会の運営」については、

第 7 章にまとめている。 そして、第 8 章では、調査結果及び有識者検討会で述べられた意見に基づき、本調査の

まとめ、我が国における信頼性重視保全(RCM)の導入あるいは火力発電所の保全の在り

方について検討を行う。

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2.米国 EPRI の RCM と PMBD に関する調査 米国 EPRI(電力研究所)の信頼性重視保全(RCM)に対する考え方を整理し、米国 EPRI

が取り組むことになった背景・経緯と合わせて、その機能と役割の全体像を整理した。こ

の際、米国 EPRI のフォーマットの類型や項目等の設定方法についても整理し、フォーマ

ットの背景思想、目的等について明らかにするものとした。

2.1 米国 EPRI が開発した簡略化 RCM 手法の調査

信頼性重視保全(Reliability Centered Maintenance)とは、最適な保全プログラムを策

定するための体系的評価手法であり、機器の故障がもたらす安全上の影響、運転上の影響、

環境上の影響に応じて適切な保全プログラムを同定する。 この手法は、1960 年代後半、米国の民間エアライン業界で開発され、その後米国国防省

でも採用されたが、米国の電力業界では EPRI(電力研究所: Electric Power Research Institute)の主導により、1980 年代の中頃より導入に向けた実証事業が開始され、1990年代の前半に簡略化 RCM 手法(SRCM:Streamlined RCM)が開発され実用化に成功し

た。1990 年代中頃より、米国電力自由化が始まり、RCM が火力や原子力の電力設備の保

全管理に本格的に導入され、保全最適化が推進された。その後、多くの米国原子力発電所、

火力発電所、送変電設備、化学プラント、その他への適用がすすみ、我が国も含めて海外

でも導入・検討が進んでいる。 本業務では、米国 EPRI が開発した簡略化 RCM 手法を調査・分析し、その概要と要件を

明確化した。なお、故障モード影響解析(FMEA : Failure Mode and Efect Analysis)とロ

ジックツリー解析(LTA : Logic Tree Analysis)による標準的 RCM 手法については、RCMに関する教科書その他で紹介されており、その代表例を以下に示す。

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2.1.1 簡略化 RCM 手法の概要

米国の民間エアライン業界で開発された正統派(標準的)RCM 手法は、限られた貴重な

保全リソースの有効活用と設備のパフォーマンス向上に大きな改善効果を期待できる一方、

FMEA などの解析に大きな手間暇を必要とする手法である。民間旅客機のように、RCM 解

析結果を反復利用できる場合には問題にならないが、電力設備は反復利用が困難(プラン

トは基本的に一品もの)であり、この問題が電力業界への RCM 適用を阻んでいた。 そのため米国 EPRI は、1993 年~1995 年の期間で電力業界向けに簡略化 RCM 手法の開

発・実証プロジェクトを行い、RCM の実用化に成功した。この簡略化 RCM 手法は、正統

派 RCM 手法の原則を守りながら、RCM 解析のコストと手間を大幅に簡略化した電力設備

に特化した RCM 手法である。この簡略化手法は、正統派 RCM 手法との間でベンチマーク

比較評価が行われ、解析コストを大幅に節減できる一方、その解析結果の差異はわずかで

あり、RCM 解析者の個人差のレベルであることが検証されている。 簡略化 RCM の目標は、以下の点にある。 保全リソースを、最も良いと思われるところに集中する 不必要で非効率な保全を削除する 設備の保全や劣化の検査に、最も単純で費用対効果の高い手段を考慮する PM タスクとして、適用可能な予知もしくは状態監視活動に焦点を合わせる 文書化された保全プログラムの基盤や履歴を整備する PM タスクや頻度を決定する際に、プラントの従業員や契約者の経験を最大限活用す

る ・RCM 解析ステップ 図 2-1 に正統派 RCM と簡略化 RCM の解析ステップの対比を示す。正統派 RCM の 8 段

階の解析ステップを簡略化 RCM では次の 5 段階に大幅に簡略化している。 (1) 主要な重要機能の確認 (2) 重要度解析を実施 (3) 非クリティカル機器評価を実施 (4) タスク比較 (5) 解析結果の実行

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図 2-1 正統派 RCM と簡略化 RCM の解析ステップの比較 1) 主要な重要機能の確認 機能故障が生じた場合に、プラントの安全、発電、環境等に悪影響を与える系統機能を特

定する。特定された系統機能が“重要機能”であり、重要機能を構成する機器のみが次の

「重要度解析」の対象となる。“重要機能”でない系統機能を構成する機器は「重要度解析」

の対象とならず、「非クリティカル機器評価」の対象となる。 「重要度解析」を、重要機能を構成する機器に絞ることが簡略化の第一歩となる。 2) 重要度解析を実施 故障すると当該の“重要機能”に悪影響を与える機器を特定し(“クリティカル機器”と

いう)、故障を予防するための包括的な予防保全プログラムを選択する。正統派手法では、

クリティカル機器を特定するために故障モード影響分析(FMEA)を実施するが、簡略化

手法では、簡略的な FMEA 手法もしくは重要度チェックリスト法という FMEA 手法を使

わない、より簡略的手法でクリティカル機器を特定する。

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クリティカル機器を特定したならば、基本的に全ての故障メカニズムに対処できる包括的

な PM プログラムを策定する。正統派手法では、ロジックツリー手法により予防保全(PM:

Preventive Maintenance)タスクの選択を行うが、簡略化手法では、予め準備された予報

保全(PM)テンプレートを活用して簡略化する。 FMEA と LTA の2つの解析ステップは RCM 解析ステップの 6 割程度を占めると言われ

ており、上記の重要度解析の簡略化と併せて、この大きな工数を必要とする2つの解析ス

テップの簡略化が簡略化手法の特徴である。 3) 非クリティカル機器評価を実施 重要度解析で、重要機能に属さない機器および重要度解析でクリティカル機器以外の機器

は非クリティカル機器と見做され、経済的な観点から予防保全の必要性を評価する。非ク

リティカル機器は、故障してもプラントの安全、発電、環境に影響のない機器であり、重

要度の観点では予防保全を行う必要がない。 非クリティカル機器に関しては、壊れたら直す、即ち保全戦略として事後保全を選択する

(米国では Run-To-Failure(RTF),我が国ではブレークダウンメンテナンス(BM:

Breakdown Maintenance)と称す)ことが基本となる。ただし、事後保全を選択した場合、

修理に高額なコストがかかる、故障を防止できる簡単な PM タスクがある等の経済性の観

点から評価し、予防保全を実施したほうが経済性の面で有利な機器に関しては、“非クリテ

ィカル機器”として簡単な予防保全を実施する。“非クリティカル機器”の PM タスクの選

択も、PM テンプレートを活用して簡略化する。 4) タスク比較 2 番目、3 番目の解析ステップでクリティカル機器および非クリティカル機器の PM 基準

(タスクと頻度)が選択されるが、この結果は RCM のアプローチに従って、論理的かつ理

詰めで導いた内容である。この解析ステップでは、RCMにより導いたあるべきPM基準と、

発電所で実施している現行の PM 基準を比較し、PM 変更を行う(PM レビューという)。

PM レビューは機器毎、PM タスク毎に行い、不一致であればあるべき PM 基準に変更する

ことが基本である。ただし、特別な理由(規制要求、メーカー保証、保険会社等との確約

事項他)があれば、不一致であっても現行の継続が許される。PM レビューの結果は文書化

され、機器毎の PM 基準の技術的根拠となる。 PM 基準の変更は、発電所の運営に大きなインパクトを与える。特に、従来からの時間基

準保全(TBM:Time Based Maintenance)から状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)に変更する場合には、発電所の保全プログラムを大幅に変更する必要が生

じる。従って、PM レビューの実施、および結果の実行は、会社大、発電所大で承認され、

その進捗状況も統制監視される。

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5) 解析結果の実行 発電所では変更した PM 基準に従い、保全活動を実行する。その実績をフィードバックし、

保全基盤を継続的に改善するリビングプロセスを確立する。不測の故障やトラブルが発生

した場合、発電所の是正措置プログラムに登録し、その根本原因追及と再発防止を確実に

実施するプロセスを確立する。

・機器の重要度分類 機器の重要度分類は、設備信頼性管理の基本属性であり、予防保全プログラムだけでなく

その他の多くの保全プログラムでも活用される。RCM を実行した発電所では、機器の重要

度分類の平均的割合は概ね、 クリティカル機器=約 20%程度、 非クリティカル機器=約 20%程度、 RTF 機器=約 60%程度

と想定され、貴重な保全リソース(人、物、金)をクリティカル機器に重点的に配分し、

設備の信頼性の向上やプラントのアベイラビリティを図ることが可能となる。

・予防保全(PM)テンプレート 予防保全(PM)テンプレートとは、機器タイプ毎に、PM 基準(保全タスク、間隔)を

推奨するテンプレートである。RCM 解析は系統単位に実施され、担当する RCM 解析者も

異なる場合も多い。同じ機器タイプ、同じ運用条件であっても系統の違いや解析者の違い

で PM 基準の設定に矛盾が生じないように、PM 基準の一貫性を保証することが当初の目的

である。 EPRI は、簡略化 RCM 開発実証プロジェクトにおいて、PM テンプレートをロジックツ

リー解析(LTA)の簡略化ツールとして位置づけた。PM テンプレートは、RCM の専門家

が、現場の保全を良く知る技術者、技能者より彼らの知見を聞き出して作成される。 ・保全最適化

PM テンプレートは、業界内もしくは他業界内で過去に実際に発生した劣化や故障事象を

分析し、その故障メカニズムに有効な PM 基準を推奨する。その際、正統派 RCM と同様

にロジックツリー解析のロジックに従い、状態監視保全タスクの適用可能性が優先的に判

断され、その利用が推奨される。時間計画保全タスクの適用は、状態監視保全タスクで対

処できない故障メカニズムに限定される。このように簡略化 RCM は、“機器の重要度”に

バランスして保全リソースの再配分を行うとともに、“PM テンプレート”により従来の時

間基準保全(TBM)中心の PM 基準から状態基準保全(CBM)中心の PM 基準に移行させ

る。この RCM の実行による保全戦略の抜本的な見直しは、保全を実行するプログラムに大

きな影響を与える。

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CBM はこれまでにない、新しい技術、新しい人材、新しいプロセスを必要とする新しい

保全プログラムである。また、CBM 中心の PM 基準への移行に伴い、故障ギリギリのタイ

ミングで作業依頼される緊急性の高い PM タスクも多くなる。かつ、これらのタスクは、

定検時以外の日常保守で実施される場合も多くなる。 米国 EPRI は、上記のような RCM の実行に伴って大きな影響をうける保全プログラムの

最適化のために、RCM の簡略化手法の開発だけでなく、故障予知に有効な状態監視ツール

の適用化技術および CMMS(Computerized Maintenance Management System:設備保

全管理システム)/EAM(Enterprise Asset Management:企業資産管理)等の保全管理統

合化ツールを活用した作業管理の高度なワークコントロール技術も開発し、予防保全プロ

グラム全体の最適化を支援している。

2.2 米国 EPRI が開発した PMBD の調査

PM テンプレートは、これから RCM に取り組む事業者に、その出発点を提供するツール

であり、過去に実際に発生した故障や劣化等の設備問題事象の運転経験に基づき作成され

る。具体的には、RCM のエキスパートが当該機器の設計や保全をよく知るベンダーの設計

者や現場の保全技術者より情報を引き出して作成する。 米国電力業界は、1997 年~1998 年に保全基盤プロジェクトを推進し、自ら PM テンプレ

ートを整備できる環境を整えた。PM テンプレート作成方法のガイドライン(エキスパート

パネルワークショップと呼ばれる)が整備され、PM テンプレート運営委員会が設立され、

業界標準テンプレートを作成する環境が整備された。作成された標準テンプレートは、当

初ハードコピーの形態で会員電力に提供されていたが、EPRI は 2000 年に PMBD(PM Basis Database:PM 基盤データベース)を開発し、標準テンプレートをデータベース化

し、インターネットの Web 環境を利用して電子的に利用できる環境を提供している。PMBDの利用は原子力より始まったが、その後火力、水力、送配電にも利用拡大し、今日では電

力共通の技術基盤に成長している。PM テンプレートは、PMBD 推奨のテンプレートと、

その技術的根拠を示す劣化表のデータセットで構成されるが、PM テンプレートの作成イメ

ージを図 2-1 に示す。

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図 2-2 PM テンプレートの作成イメージ

2.2.1 PM テンプレートの適用プロセス

EPRI の会員電力事業者は、電力標準の PM テンプレートを参考に、自社の保全能力や保

全文化に合わせてカスタマイズし、自社固有のPMテンプレートを作成して運用している。

2.1.1 で紹介した簡略化 RCM のプロセスに準拠し、会員電力は PM テンプレートの PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを廻すプロセスを確立して運用している。さらに、会

員電力各社の実績が PM テンプレート運営委員会にもフィードバックされ、業界レベルの

PDCA サイクルを廻すプロセスも確立されている。予防保全は製品ライフサイクルを通じ

て長期間繰り返し実施される作業であり、実績に学び継続的改善を行う強力なリビング・

プロセスが確立されていると判断される。 図 2-3 に米国の PM テンプレートの適用プロセスを示す。

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図 2-3 PM テンプレートの適用プロセス

2.2.2 PM テンプレートのフォーマットと作成

PM テンプレートは、設計に類似性があり PM 基準を標準化できる機器グループ(機器タ

イプ)単位に作成される(例えば、機種=ポンプの場合、“縦型ポンプ”、“横型ポンプ”、“容

積式ポンプ”、“直流電源ポンプ”等)。 PM テンプレートの作成単位が決定されたならば、機器本体と機能的に一体な付属設備(計

測装置、連結設備等)を含めた機器境界を定義し、この範囲が検討対象となる。 PM テンプレートは、標準的な PM 基準を推奨するテンプレートと、推奨する PM 基準の

技術的根拠を示す劣化表のデータセットで構成される。

・テンプレート PM 基準を推奨するテンプレートは、PM タスクと、その実施頻度を示す、比較的シンプ

ルな表である。 PM タスクは、“状態監視タスク”→“時間計画タスク”→“故障発見タスク”の順で推

奨される。 当該機器タイプの故障メカニズムに対して状態監視タスクを優先して推奨し、故障を予防

できる適切な状態監視タスクがない場合、その次善策として時間計画タスクが推奨される。

故障発見タスクは、故障予防に有効な状態監視タスクも時間計画タスクもない場合に推奨

される。なお、PM テンプレートが推奨する PM タスクは、当該機器タイプのすべての故障

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メカニズムに対処できない場合も多く、この場合、無防備となっている故障メカニズムに

関しては、運用中に留意するとともに、機器の設計改良のタイミングをとらえて問題の故

障メカニズム自体を除去し、抜本的な対策を図る(米国では、プロアクティブ保全と称さ

れる)。 PM タスクの実施頻度に関しては、機器個別の運用条件の違いに応じてタスクの実施の有

無や間隔を調整できるようになっている。運用条件には、「重要度」、「負荷サイクル」、「供

用状態」の 3 種類がある。 「重要度(クリティカリティ)」;“クリティカル機器”、または“非クリティカル機器” 「負荷サイクル」;連続運転、起動停止が頻繁な“高い”機器(High)、または待機機

器のように“低い”機器(Low) 「供用状態」;高湿度、高温等の“過酷”な環境で供用される機器(Severe)、または

室内等の“穏やか”な環境で供用される機器(Mild) ここで、「重要度」は簡略化 RCM 解析ステップの“重要度解析”および“非クリティカ

ル機器評価”の結果である。重要度は、“クリティカル機器”、“非クリティカル機器”、“RTF機器”の3種類に分類されるが、RTF 機器は予防保全の対象ではないのでテンプレートの

適用対象外となる。 「負荷サイクル」と「供用状態」に関しては、ポンプ、弁、モータのようなプラントに多

数設置される小型回転機器の PM タスク頻度の調整が主目的である。これらの機器は、発

電所で千差万別な使われ方をするので、メーカー推奨の PM 基準が実態とかけ離れるケー

スが多い。摩耗故障の劣化の進行スピードに影響を与える代表的な因子で実施間隔を調整

できるようにしている。

・劣化表 劣化表は、当該の機器タイプに関して、エキスパートパネルのメンバーが、当該の PM テ

ンプレート作成に必要と判断した劣化メカニズムを収録したテーブルである。このテーブ

ルには、仮説のメカニズムは一切含まれず、実際に過去発生した故障や劣化事象のみが含

まれる。これらの運転経験は、発電所の是正措置プログラムにて、その故障原因追及と再

発防止に向けて故障メカニズム(故障場所、劣化メカニズム、劣化影響、進行速度等)が

分析されたものである。業界標準の PM テンプレートを作成する場合には、業界および他

業界より広い範囲で故障メカニズムのデータ収集が行われ、エキスパートパネルのメンバ

ーがその発見の機会と、故障予防に有効な PM タスクを推奨する。エキスパートは、日ご

ろの経験により、どの故障メカニズムが重要であり、その故障を予防するのにどの PM タ

スクが有効であるかを良く知っていることを前提としている。 即ち、米国では業界レベルで運転経験を収集できる環境が比較的整っているものの、どの

故障メカニズムを対象に、どの PM タスクを実施するかの判断は、エキスパートパネルの

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メンバーの知見に完全にゆだねられる。このため、米国の電力業界(EPRI)は、PM テン

プレート運営委員会を設置し、全米、場合によっては海外も含めて、当該の機器タイプの

保全に最も詳しいと判断されるエキスパートを招聘して標準テンプレートの品質の向上に

努力している。 ・PM 基準の技術的根拠 テンプレートが推奨する PM 基準と、劣化表の故障メカニズムとの対応関係が技術的根拠

となる。テンプレートの 3 種類の運用条件の組み合わせは 8 パターンになるが、故障メカ

ニズムの検討結果を踏まえて、パターンごとの PM 基準(タスクと間隔)が設定される。 基本的に、クリティカル機器に関しては全ての故障メカニズムに対処できる包括的なタス

クセットを設定する。一方、非クリティカル機器に関しては、経済的合理性の範囲内で部

分的なタスクセットを設定する。そのうえで、「負荷サイクル」、「供用環境」の違いに応じ

て間隔を調整してテンプレートを完成させる。 このように PM テンプレートが推奨する PM タスクは、どの故障メカニズムを対象にして

いるかが明確となっている。したがって、どの場所を、どのように作業すべきかが明らか

となっており、PM タスクのジョブリストも PMBD に収録されている。

2.2.3 PM テンプレートの適用(PM レビュー)

EPRI の会員電力は、業界標準の PM テンプレートを参考に、自社固有の PM テンプレー

トを作成する。作成した PM テンプレートは本店側で承認され、発電所にリリースされる。

発電所側は、当該の PM テンプレートの対象となる全ての機器を対象に PM レビューを実

施し、現行の PM 基準と比較し、変更する。PM テンプレートが推奨する PM 基準と現行

の PM 基準を比較し、一致しない場合、現行の基準を継続する正当な理由がない限り、推

奨された PM 基準に変更しなければならない。ここで正当な理由には発電所固有の様々な

事項があり、規制要求、メーカー保証、確約事項以外にも、過去のトラブルの有無等、保

全の履歴情報、手順書、技術仕様書等、関連する多くの情報のレビューを必要とする。PMレビューの結果は文書化し、PM の技術根拠情報として機器のライフサイクルを通じて維持

管理する。PM 変更には次の種類がある。 タスクの追加 タスクの削除 間隔の延長 間隔の短縮 PM スコープの拡大 PM スコープの縮小

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このように、PM レビューでは PM テンプレートが推奨する PM 基準に丸ごと置き換わる

ケースはまれである。現行の PM 基準は、これまでの運用を通じて実証されている。一方、

PM テンプレート推奨の PM 基準は、エキスパートにより検証されている。ただし、両者の

ミックスとなる PM レビューの結果に関しては、その有効性の検証が別途必要となる。最

新版の PMBD では脆弱性評価機能を提供しており、この有効性評価を定量的に簡便に実施

することが可能となっている。

2.2.4 PM 実行と継続的改善

PM テンプレートを作成し、適用し、PM 基準を最適化しても、PM 実行を通じてその有

効性の評価が重要となる。PM テンプレートの品質はエキスパートの知見に依拠しており、

完全ではない。米国では、点検手入れ前評価やパフォーマンス監視プロセスを確立し、設

定した PM 基準の有効性を監視し、もし想定外であるならば確実に PM 基準を是正する継

続的改善を実施している。 PM テンプレート運営委員会は、会員電力よりフィードバックされた実績情報をもとに、

2 年に 1 回の頻度で PM テンプレートの見直しを実施しており、90 年代後半からの長年の

運用を通じて確実に品質向上されているものと判断される。

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3.米国における取組の調査 米国 EPRI の信頼性重視保全(RCM)のフォーマットについては、民間事業者への委託

等により幅広く活用されているので、米国 EPRI の信頼性重視保全のフォーマットを活用

している事業者等へのインタビュー等を通じ、この活用の全体像を明らかにすると共に、

活用における好事例や新たな活用可能性を調査した。 2017 年 2 月、米国の電力会社(2 社)と電力研究所(EPRI)、そして民間会社(Scientech)

を訪問して、信頼性重視保全(RCM)/PM 基盤データベース(PMBD)などの保守高度

化の取り組み状況その他について聞き取り調査した。調査結果のまとめを 3.1 節に、また各

訪問先別の調査結果を 3.2~3.5 節にまとめた。

3.1 米国訪問調査のまとめ

(1)EPRI による PM 基盤データベース(PMBD)の開発と米国電力会社での利用 ・ 信頼性重視保全(RCM)解析に伴う手間を減らすためのストリームラインド(SRCM)

手法が EPRI で開発され、その延長として予防保全基盤データベース(PMBD)が開発

された。 ・ 原子力発電所の設備を対象にした検討から始まり、1997 年には 38 種類の機器タイプに

対する PMBD が最初に作成され、その後、その機器タイプの数が拡張され、原子力以

外にも、火力、送変電、水力などへの適用が広がっている。最近では国内のみならず、

米国以外の国の電力会社でもその使用は広がっている。 ・ 火力発電所での PMBD の適用は 2001 年頃から始まった。現在、火力の 30~40 社がユ

ーザーであり、そのうち 20 社ほどは積極的なユーザーである。 ・ PMBD の使用方法は各社によって差があり、新規参入者は丸ごとそれを保全プログラ

ムのスタートとして用いる場合もあるし、不具合経験時にこれを利用して原因究明や再

発防止策の検討に使う電力もある。 ・ PMBD には機器タイプ別に推奨される保全タスクとその頻度が、その重要度(クリテ

ィカリティ)、使用環境、使用頻度などの 8 つの区分別に設定されている。そのベース

情報として、各機器のどこの場所で、どのようにして故障するか、最初に故障が起きる

のはいつか、故障モードを防止する保全方法の有効性はどの程度か、といった情報が整

理されている。 ・ PMBD に含まれるこれらの技術的情報は、専門家の意見導出プロセス(Expert

Elicitation Process)によって収集・作成されている。一つの機器タイプごとに、関連

の専門家が数名 EPRI に集合して、3,4 日かけた話し合いで決めていく。その構成メ

ンバーは、EPRI のメンバー、機器の技術的専門家、機器メーカーの専門家、EPRI の

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職員、外部のベンダーである。EPRI のコーディネータの下で、機器タイプごとに、関

連した情報を集約し、PM テンプレートにまとめていく。参加者は、これに参加するこ

とで、他の機器についての成果が得られるというメリットがあるため、本作業にかける

労力よりも得られる利益が大きいとの判断で自主参加している。 ・ EPRI としては現在でもその機能と対象機器タイプを拡張しつつある。そして、この

PMBD の有効性に自信を持っていて、各メンバー会社はそのニーズに応じてそのメリ

ットを享受していると認識している。 ・ PMBD の最新版は、2016 年に更新されたバージョン 3.1 である。近年になって、脆弱

性評価の機能が追加され、保全タスクや頻度を EPRI の推奨から変更した場合の信頼性

の変化が計算できるようになっている。 ・ 最近では、原子力分野で導入が進んでいる機器信頼性(ER:Equipment Reliability)

プログラムの火力向けに簡略化したアプローチを検討し適用している。そこでは、設備

の継続的な信頼性の維持を確保するうえで重要な要素として PMBD の利用が位置付け

られている。 (2)FirstEnergy 社での保守高度化と PMBD の利用 ・ 本社はオハイオ州 Akron で、送電と発電を行う会社。従業員数は 15,000 名。発電総量

は 17,000MW でそのうち、石炭火力が 56%、原子力が 24%、天然ガスが 8%、水力・

風力・太陽光が 11%、そして石油が 1%である。石炭火力発電所は 6 か所、ガス・石油

火力発電所も 6 か所で運転している。 ・ 2011 年に FirstEnergy 社が Allegheny 社と吸収合併した際に、両社の発電所の保守方

法に大きな差があることから、本社レベルでその調整を図る必要性が認識された。また

自由化の下で発電コストを下げる必要性が認識された。そのため本社で、AMP(Advanced Maintenance Practices)と呼ばれる保守高度化検討チーム(総勢 6 名)

が結成された。 ・ 当時原子力部門で採用されていた INPO(Institute of Nuclear Power Operations:原

子力発電運転協会)の AP-913「機器信頼性(ER:Equipment Reliability)プログラ

ム」に注目し、原子力での経験者が検討チームの主力となって、火力発電所にふさわし

い簡略的なアプローチを検討した。そこでは、保守ベーステンプレレート(MBT:

Maintenance Basis Template;EPRI の保守テンプレートと類似したもの)を作成し実

施すること、機器の重要度判断を行うこと、EPRI の PMBD を参考情報として利用す

ることといった方針を決定した。採用したアプローチは、MTA(Maintenance Task Analysis)と呼ばれる。想定しうるすべての故障モードを扱うのではなく、起こりそう

な故障モードに限定することで作業の範囲を低減させた。 ・ 最初はファンに着目して、2 サイト(石炭火力)を対象にして、3 か月かけてテンプレ

ートの作成とその結果のサイトへの実施を行った後、ほかの 3 サイトでの展開を行い、

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他の機器に展開していった。テンプレートは数名の社内専門家の合意プロセスによって

作成される。サイトと本社レベルで合意を得ることで完成した PM テンプレートは、各

機器タイプに対して、本社指定の標準のフォーマットで作成される。そこには、EPRIの PM テンプレートと相違がある場合には、その理由を記載している。

・ これまでに 3 年間かけてこれまでに 34 種類の保守テンプレートを作成した。9,240 の

PM を新たに作成し、3,488 の PM をキャンセル(削除)し、3,682 の既存のタスクは

維持された。3 段階の重要度区分の結果は、以下のとおりである。重要機器に区分され

る数が少なくなったことに着目している。 クリティカル(A):4% 非クリティカル(B):23% RTF(故障するまで使用)(C):73%

・ これまでの成果で、定常保守の作業時間のうち 15,000 人時間以上を削減でき、保守の

リソースの効率性を向上できた。今後さらに、機器信頼性が向上し故障が減ること、そ

して計画外の保守作業が減ることによる更なる費用効果も見込める、としている。

(3)ルイビルガス・電力社(LG&E)での火力発電所保守高度化の取り組み ・ 従業員は 3,600 名、ペンシルバニア電力(PPL)社の子会社で、ケンタッキー州とバー

ジニア州内の 130 万人の顧客に電気と天然ガスをサービスしている。発電総量は

7,997MW、そのうち火力発電所は 5 か所で運転している。 ・ 2015 年末に副社長の決定によって保守高度化のプロジェクトが開始された。その背景

には、経験あるエンジニアの退職が増えていること、各サイトで異なる予防保全を全社

規模で整合性のあるものにする必要があると認識したことなどがある。 ・ 本社の幹部クラスが直轄する本プロジェクトのマネージャをリーダとして本社で検討

チームが結成され(最初は 1 名主体でスタート、のちに 1 名を補充して 2 名)、さらに

各サイトの保全部門と運転部門の部長が参加する形でプロジェクトが始動した。 ・ 作業のステップは、①重要度判断、②EPRI の PMBD と現行保全との比較による PM

レビューの 2 段階である。 ・ 重要度(クリティカリティ)の判断は EPRI の機器信頼性(ER)プログラムのガイダ

ンスを参考に自社でチェックシートを開発して、クリティカル(5 段階に細分)、非ク

リティカル(5 段階に細分)、そして RTF(壊れるまで使用)に区分している。 ・ 回転機器を対象に 5 つの発電所に対して 2016 年の 1 年間をかけて実施し、今期は電気

品を、そして来年度は計装品に拡張する予定である。パイロット発電所を 1 か所選んで

検討を行い、その結果を他の発電所に展開する方式を採用した。 ・ 第 2 段階の作業は昨年後半、回転機器に対する重要度判断の結果を利用して開始したと

ころである。すべての機器に対する上記の作業が終了するのに 5,6 年かかる予定であ

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る。大きな電力会社ではないため、できるだけ現有戦力だけで大きな労力をかけずに作

業を進めている。その分、時間はかかると認識している。 ・ 重要度の判定リストは本社の 2 名で作成した。重要度判定作業は本社の指導を受けて各

サイトが責任をもって行う。最初は本社のスタッフの関与があるが、情報提供とトレー

ニングを受けたあとは、サイトにその作業が移管され、保守部門、運転部門のマネージ

ャ、機器の専門家、システムエンジニアなどの数名体制で行う。 ・ RCM や FMEA は、これまでにトライした経験はない。EPRI の PMBD を使えばそれ

と同じ効果が得られるとの認識である。 ・ 運転保守にかかわる各種のデータを統合して活用する検討が進んでいる。これには、

Black & Veatch 社での外部サーバ利用監視サービス(web ベースでの運転保守データ

の遠隔監視とその分析)、MicroGADSGold データ(信頼性データの報告システム)、

MAXIMO データ(統合型アセットマネージメント(EAM)システムでの機器と保全記

録情報収録)、OSIsoft(プロセス計算機からの運転データ分析ツール)、SharePoint2013データ、PowerPlan(財務・運転データ)などがある。これらを統合活用するためにビ

ックデータ処理のための IBM 社の NETEZZA というデータウェアハウスとマイクロソ

フト社の SQL サーバーなどが利用されている。 (4)FOMIS による火力発電所間の情報交換 ・ FOMIS(Fossil Operations & Maintenance Information Service)は、米国内外の火

力発電所の担当者間で運転保守に関する情報交換を行う仕組みである。Curtiss- Wright社の Scientech 部門が事務局を務めていて、1980 年頃から継続している。

・ FOMIS サービスは、電気事業者メンバー(メーカーは排除される)が web サイト上で

質問と回答を提供しあう情報交換の仕組みが中心である。質問を見た他の会員は、可能

な範囲で情報を提供することで、お互いを支援しあう。その他に、過去の質問回答をデ

ータベース(DB)化した情報の蓄積、年会による情報交換の場がある。 ・ 米国以外に、カナダ、イスラエル、スペイン、ポルトガルその他の国の電力会社が参加。

現在の会員は 50 社、150 サイトで石炭火力サイトが多い。 ・ 会社・発電所名を隠した匿名での回答も可能である。FOMIS 事務局はファシリテータ

として機能する。回答を促したり、過去の類似質問への回答を調べたりしている。担当

者の負担を減らすために回答はそれほど手間をかけずに済ませてもよい。詳細が知りた

い場合には当事者同士のコンタクトに任せることになる。基本的には本情報交換サービ

スの価値を理解しているメンバーだけが参加するので、前向きの対応をしてくれること

が多い。 ・ 発電所が最近経験したある特定の不具合への対応をどうしたか、といった緊急性のある

質問もあるが、良好事例や保守最適化に関係した質問もある。例えば、どんな保守最適

化プログラムを実施したか、その中で EPRI の PM テンプレートを使っているか、など

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を聞いた質問があった。あるいは、タービン設備などの点検頻度を問い合わせるといっ

た質問もあった。 ・ 各電力会社は競争環境下であるため、経済性にかかわる質問はあまり扱われず、技術的

な問題について情報を共有しあうのが主目的である。

3.2 EPRI による PM 基盤データベース(PMBD)の開発と米国電力会社での利用

日時: 2017 年 2 月 17 日(金)9:00~14:30 場所: EPRI (1300 West WT Harris BLBD, Charlotte, NC 28262-7097) 米国電力業界における信頼性重視保全(RCM)の最新の利用形態である EPRI 開発の予

防保全(PM)基盤データベース(PMBD)の内容とその利用について最新の情報を調査し

た。 (1)EPRI の紹介

EPRI(電力研究所)は 1972 年に設立された研究所で、1965 年のニューヨーク大停電を

経験し電気事業の重要性が認識されたことがその設立の背景にある。独立した、非営利組

織で、産業界、大学、研究者など関連機関の協力の下で成り立つ機関である。運営資金は、

会員から参加費やプロジェクトやメンバーコース別に拠出される会費で成り立つ 1。 30 か国以上の 450 以上の機関、主に電力会社が会員として参加している。メンバーの構

成は、投資家所有会社が 59%、海外の機関が 25%、連邦政府や州政府関係の機関が 6%、

地方公共団体が 6%、共同機関が 4%、独立発電業者(IPP:Independent Power Producer)が 1%という構成である。米国電力会社の EPRI メンバーによる総発電量は国内発電量の

90%を占めている。 研究開発の成果としては、技術的指針、(今回の訪問目的である PMBD などの)技術的な

ガイドブック、ユーザーグループ活動、専門家による支援、技術開発などがある。 扱う分野としては環境問題、原子力、その他発電(火力、風力、水力など)、送変電など

がある。 (2)火力発電所の規制について 米国では、原子力発電所の運転に際しては、規制局からの運転認可が必要であるが、火力

1 2015 年の収入は、合計 4 億 600 万ドルで、会費(membership)が 1 億 9、000 万ドル、

プロジェクトベースの補足収入(Supplemental)が 2 億 1,000 万ドル、その他が 500 万ド

ルである。 http://www.epri.com/About-Us/Documents/Governance/2015_Financial_Statements_Letter.pdf

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発電所の場合は、そのような運転認可はない。環境規制については、環境保護庁(EPA:

Environmental Protection Agency)や地元の州や地方政府の規制要件をパスすることが、

またその他にも土地の利用やその他で関連の規制に適合することが必要とされる。電気料

金については州の公営気事業委員会(PUC:Public Utility Commission)の規制を受ける。 従って、火力発電所設備の保守点検に関する特定の規制要件はない。メーカーの推奨や保

険会社の関与などの下で、自社が独自に設定する仕組みである。蒸気タービンの分解点検

の間隔はおおむね 10 年間とのことであった。 (3)予防保全基盤データベース(PMBD)について ・PMBD の概要 予防保全基盤データベース(PMBD:Preventive Maintenance Basis Database)は、発

電所設備の機器に対する予防保全に関する情報を集約したデータベースである。信頼性重

視保全(RCM)の技術をベースにして、300 種類以上(現時点では 325 種類との説明であ

った)の機器タイプに対して 20,000 以上の故障モードを検討し、その故障モードの防止に

相応しい保全タスクとその頻度、更にその技術ベースを収録したデータベースである。 PMBD の目的は以下を提供することにある。 ・ 産業界の経験に基づくベースラインとなる PM タスクとその頻度 ・ 保全タスクと頻度の技術ベースを分析するツール ・ 産業界の PM 経験についての生きた情報の保管場所 ・ EPRI による保守技術分野の成果物 ・ 時間計画保全よりも状態基準保全を望ましいとする保全の戦略 原子力発電所の設備を対象にした検討から始まり、1997 年には 38 種類の機器タイプに対

する PMBD が最初に作成され、その後、その機器タイプの数が拡張され、原子力以外にも、

火力、送変電、水力などへの適用が広がっている。最近では国内のみならず、米国以外の

国の電力会社でもその使用は広がっている。 火力発電所での PMBD の適用は 2001 年頃から始まった。現在、火力の 30~40 社がユー

ザーであり、そのうち 20 社ほどは積極的なユーザーである。 PMBD の使用方法は各社によって差があり、新規参入者は丸ごとそれを保全プログラム

のスタートとして用いる場合もあるし、不具合経験時にこれを利用して原因究明や再発防

止策の検討に使う電力もある。 来週訪問するファーストエナジー社は長年のユーザーで、その利用でコスト低減を達成し

大きな利益を得ている。ルイビル電力はつい最近その利用を開始したところである。 PMBD を利用する権利は、EPRI との契約条件に従う。一般に原子力の EPRI メンバーで

あれば、PMBD へのアクセスは可能である。原子力以外でも、各種の EPRI メンバーコー

ス(例、タービン、ガスタービンなどいろいろあるが)に入っていれば PMBD へのアクセ

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スが可能である。 ・PMBD の開発経緯(RCM との関係)

PMBD のベースになっている RCM のアプローチは、航空機業界で開発され普及したもの

である。エンジンのタイプなどが数種類に限定された航空機分野では、RCM 解析に必要な

手間が大きくても、その解析結果の適用範囲が広い(同様に適用できる機種が数多くある)

ため、コスト効果性がある。しかし、個々の設計や運用が異なる発電所においては RCM 解

析結果の適用性が限定されてしまうために、解析に伴うリソースの面で、その効果は認め

られつつも RCM の普及は限定的であった。 そのため RCM 解析に伴う手間を減らすためのストリームラインド(SRCM)手法が EPRI

で開発され、その延長として PMBD の開発につながっていった。 ・専門家による PMBD の作成プロセス

PMBD に含まれる各種の技術的情報は、専門家の意見導出プロセス(Expert Elicitation Process)によって収集・作成されている。一つの機器タイプごとに、関連の専門家が数名

EPRI に集合して、3,4 日かけた話し合いで決めていく。その構成メンバーは、EPRI のメ

ンバー、機器の技術的専門家、機器メーカーの専門家、EPRI の職員、外部のベンダーであ

る。 EPRI のコーディネータの下で、特定に機器ごとに、下記に関連した情報を集約し、PM

テンプレートにまとめていく。 ・故障の場所 ・劣化メカニズム ・劣化の影響 ・予防保全タスク ・予防保全タスクの有効性 基本はこの専門家会合への参加はボランタリーベースである。参加者は、これに参加する

ことで、他の機器についての成果が得られるというメリットがあるため、本作業にかける

労力よりも得られる利益が大きいとの判断で自主参加しているとのこと。 結局のところ、情報をたくさん持っている大電力が自社の経験に基づく貴重な情報の提供

ばかりして、新たに参入する小電力が得をするのではないかという懸念について聞いてみ

たが、確かに電力会社のサイズは大小あるが、各電力メンバーは自社で持ち合わせていな

い、国内他社が集まる業界規模の情報が集約されるこの仕組みに魅力を感じている、とい

った返答であった。 EPRI としては現在でもその機能と対象機器タイプを拡張しつつある。そして、この

PMBD の有効性に自信を持っていて、各メンバー会社はそのニーズに応じてそのメリット

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を享受していると認識している。 PMBD の最新版は、2016 年に更新されたバージョン 3.1 である。近年になって、(後述の)

脆弱性評価の機能が追加されている点がユニークである。 EPRI から以下の二つの資料が出されていて、PMBD の最新の機能が紹介されている。

・ 3002007555, Preventive Maintenance Basis Database (PMBD) Familiarization Video

・ 3002007394, Preventive Maintenance Basis Database (PMBD): Quick Reference Guide, February 2016

上記の資料(Quick Reference Guide, 2016)と面談時の説明内容から PMBD の概要と最

新情報を以下にまとめる。 (4)EPRI の PM 基盤データベース(PMBD)の最新情報

1908 年代から 90 年代にかけて、EPRI の主導によって米国の商用原子力発電所で信頼性

重視保全(RCM)手法の適用が始まり、それまで主流であった時間計画保全(TBM)から

状態監視保全あるいは不要な保全タスクの削除を含めた見直しという保全の最適化が行わ

れてきた。その中で、FMEA とロジックツリー解析を主体としたクラシカル(標準的)な

RCM 手法をベースにして、発電業界に適した効率的な RCM(ストリームラインド RCM)

評価手法の検討が EPRI を中心に行われてきた。 その検討の一環で予防保全(Preventive Maintenance)のベース(PM ベース)の検討が

1997 年に 38 の機器タイプに対して行われ、38 件の PM ベース報告書が作成された。この

報告書では、ポンプや弁、モータといった発電所で数多く使用される設備に対して、適切

な保全タスクとその頻度を設定するための技術ベースを提供した。これには、故障モード

や運転環境の特徴などについての情報も含まれていた。 2001 年にはこれらの内容をデータベース化する作業が行われ、38 の機器タイプに対する

PM 基盤データベース(PMBD)が CD 版としてユーザーに提供され普及が行われた。が、

そのツールの使用方法には限界もあって、PMBD の活用は限定的なものであった。 2013 年に PMBD のバージョン 3.0 が開発され、web ベースの製品となり、メンバー間で

の活用が増加した。 2016 年時点で、PMBD の最新バージョンは 3.1 である。機器タイプは 300 以上をカバー

していて、その中には原子力発電所で福島事故後の対応として新たに追加設置されている

可搬式設備の機器も含まれている(FLEX 設備と呼ばれる)。 PMBD の機器テンプレートは、専門家の意見導出プロセス(expert elicitation process)

によって作成される。扱う機器についての専門家がグループとなって情報を提供し集約す

る仕組みである。構成は通常は、産業界の専門家(エンジニアリング、保守、または運転

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分野)、当該機器の専門家(SME:subject matter experts と呼ばれる)、そしてベンダーの

代表などで構成される。ファシリテータによるリードの下で、会合メンバーから情報を引

き出し、そのプロセスを追跡可能な状態にして、特定の情報に関して意見の相違がある場

合には(必要な場合に)各自の合意を取り付ける。この意見集約プロセスは、下記の報告

書に詳しく記載されている。 2011 EPRI Report, Guideline for Expert Elicitation of Equipment Reliability Experiences (Product ID 1023073)

図 3-1 PM テンプレートを作成する専門家チームの構成(EPRI, 2016)

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図 3-2 PM テンプレートの画面(機器タイプ:ポンプ、横置き式、単段、片吸込)

(EPRI, 2016) 上の図 3-2 の番号別に、その内容を以下に示す。 1. 保全タスク(Tasks):見出しにある機器タイプ別に、推奨される予防保全または予知保

全のタスクが記載されていて、その右側には、基本となるタスクの頻度が、分類カテゴ

リー別に示されている。分類カテゴリーは、3 種類の文字コード別に専門家が決定した

推奨の保全タスク頻度が示されている。たとえば、CHS と表記される場合は C:クリティカル(その反対は、N:非クリティカル)、 H:負荷サイクルが高(その反対は、L:低負荷)、 S:厳しい使用環境(その反対は、M:穏やかな使用環境))

2. 脆弱性(Vulnerability):このタグは、当該機器に対して脆弱性評価の計算を行う際の

ページに移動する。その内容については後述を参照。 3. 定義(Definitions):当該機器タイプについての定義が表示される。機器の境界、共通

故障原因、保全を行うことに伴うリスクの寄与因子などについて記載している。 4. 故障の場所(Failure Locations):機器の故障モードに関連するすべての情報が表示さ

れる。このタブで示される情報は、脆弱性の計算の際に使用される。

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5. レポート(Reports):機器特定の報告書が pdf フォームでダウンロードできる。 6. タスクランキング(Task Ranking):TIPS タブとも呼ばれる。各機器テンプレートに

リストされる保全タスクの重要性についての一般的な情報が提供される。機器に対する

保全方法を検討する際の出発点となる。 7. PM ベース(PM Basis):このタブは、機器テンプレートにリストされる保全タスクに

ついての厚く情報が表示される。テンプレート作成時に専門家によって収集された情報

である。 8. 内容比較(Content Comparator):特定機器に対して実施されるタスクによって対処さ

れる故障場所を特定するためにこのタブが使用できる。ソフトウェア内で特定の故障場

所を除外すると、除外された故障の場所に基づいて、その機器がより受けやすい故障モ

ードのリストが表示される。

PMBD における重要な用語には、以下のものがある。 故障の定義: 設計基準(すなわち、どのように動作するか想定された範囲)内で動作していない機器ま

たは機器の一部の状態を指す。故障の程度は、オイルの劣化や部品の摩耗といったものか

ら機器の動作が阻害されるような機器の機能故障に至るまで、その厳しさの範囲は変わる。

図は、機器の故障モードを検討していた際に専門家の意見導出プロセスで収集された情報

の例を示す。

図 3-3 PMBD における故障モードの情報(EPRI, 2016)

(どこの場所で、どのようにして故障するか? 最初に故障が起きるのはいつか? 故障モー

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ドを防止する保全方法の有効性はどの程度か? が記載される)

故障モード: 各機器テンプレートにおいて、機器に影響を及ぼす故障モードは数 10~数 100 に上る。

時間コードの定義: そのままの状態に置かれるとした場合に、特定の故障モードに対して最も早く故障に至る

と想定される時間を表す。これは、MTBF とは異なるので注意が必要である。平均故障時

間間隔(MTBF:Mean Time Between Failures)の算定には相当な統計データが必要とさ

れる。PMBD 内で使用される時間コードは専門家たちの経験や知識に基づいた専門家意見

導出プロセスで検討されたものである。特定の値について専門家の間で十分な合意が得ら

れない場合は、時間コードに幅を持たせている(例、UW5_7 または W10_15)。 R:ランダム故障:機器の運転寿命内で故障がランダムなタイミングで起こる。PMBD の

計算では、一定の低確率の発生を想定している。 UW(Unconditional Wearout):無条件の摩耗故障で、機器に影響しうる特定のストレッ

サと無関係に故障が起こるものとする。例えば、UM5 は、最初の故障が起きるのが 5年間と想定される場合である。

W(Wearout):温度、振動、または汚染といった特定のストレッサによってその故障モー

ドが開始され進展する場合である。例えば、W7_10 は、悪化させるストレッサが存在し

た場合に最初の故障が 7~10 年の間に起こると想定されることを意味する。 タスクの有効性の定義(Task Effectiveness Definition): 特定の保全タスクがその故障モードが発生する前に発見または防止できる確率を指す。 H(高):97%:正確に実施された場合に、本保全タスクの結果は発電所職員に劣化モード

の信号を適切に伝える。 M(中):80%:正確に実施された場合に、劣化モードの信号を少なくとも 4,5 回は提供

する。 L(低):50%:正確に実施された場合に。劣化モードの信号をその時間の 50%以上は伝え

る。 N(なし):0%:正確に実施されても、劣化モードの伝達はないか、その時間の 50%以下し

か伝えない。 プログラムの有効性(Program Effectiveness): 個々の故障モードと保全タスクを関連付けて、慣例的な保全プログラムが特定の故障モー

ドに対してどれだけ予防できることになるのかの程度を色分けして表示する。 赤:予防保全(PM)による防護はないか非常に少ない。タスクがないかまたは L(低)の

タスクのみ。課題となる故障モードに対する累積の防護は約 50%。

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オレンジ:PM は中程度の防護を提供する。少なくとも一つの M(中)のタスクがある(Lがいくつかある以外に)。課題となる故障モードに対する累積の防護は少なくとも 80%。

黄:PM は良好な防護を提供する。一つ以上の H(高)のタスクがある(L や M がいくつ

かある以外に)。課題となる故障モードに対する累積の防護は少なくとも 97%。 緑:PM は優れた防護を提供する。少なくとも 2 つの H(高)のタスクがある(L や M が

いくつかある以外に)。課題となる故障モードに対する累積の防護は少なくとも 99.5%。 機器のカテゴリー: 機器テンプレートの時間間隔は、以下の分類カテゴリー別に支援される。1)機器のクリ

ティカリティ、2)機器の負荷サイクル、3)機器のサービス状態。合計 8 つのカテゴリー

に分かれる。

表 3-1 PM ベースの分類枠(EPRI, 2016) 重要度分類

(Criticality) クリティカル(Critical) 非クリティカル(Non-critical)

負荷サイクル(Duty Cycle) 高 HI 低 LO 高 HI 低 LO 高 HI 低 LO 高 HI 低 LO

供用条件(Service Conditions ) 厳しい(Severe) 穏やか(Mild) 厳しい(Severe) 穏やか(Mild)

重要度分類にあるクリティカルとは、機能上重要、リスク上重要、発電に必要、安全関連、

あるいは規制対応上必要のいずれかの基準に当てはまる機器である。 非クリティカルとは、機能上は重要ではないが、経済上は重要な設備を言う。つまり、効

果や修理に伴う費用が大きい(ので、それを防止するために費用効果的な予防保全を施す

もの)、その他のクリティカル機器の故障の原因となりうる、あるいは修理の頻度が高くな

るもののいずれかの条件にあてはまるものである。それ以外は、故障するまで使用すれば

よい(RTF:Run-To-Failure)区分になる。 米国火力発電所でのクリティカルと非クリティカル、それ以外(RTF(Run to Failure:

故障するまで使用する))の機器の分類比率は、おおむね以下の通りとのことである。 クリティカル:15~20% 非クリティカル:20% RTF:60% この割合は、原子力発電所でも同様とのことである。

脆弱性の計算 1. ストレッサ 特定の厳しい環境条件、例えば、過剰な温度、湿度、または汚染などによって既存の故障

モードのトリガーとなったり悪化させるもの。脆弱性計算の前に、ユーザの使用環境下で

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想定しうる特定のストレッサを選択できる。PMBD で利用可能なストレッサは下記のもの

である。 負荷サイクル(すなわち、CLM ではなく CHM) 温度 湿度/湿分 振動/流体振動/流量/生物学的因子 汚染/汚れ/破片

2.タスク有効性のオプション このボタンをチェックして、例えば、タスクの頻度を 1 段階緩くする。

3.比較すべきプログラムの選定 二つのプログラムを選定して計算することで、両ケース(の保全の効果)が比較できるよ

う計算される。EPRI のベースケースとの比較をすることも可能である。発電所の現状の保

全をベースラインとして利用して、それを変更した場合の変化を見ることもできる。 計算結果は、ベースラインケースに比べての故障率の相対的な変化、ベースラインに比べ

ての信頼性の効果の二つである。図のケースでは、故障率が 1.89 に増加し、信頼性のベネ

フィットは EPRI のベースライン 100%に比べて 84%に低下する。

図 3-4 脆弱性の計算画面(EPRI, 2016)

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その他に、上記の脆弱性計算の結果を解釈するための情報として以下のもの提供される。 タスクの有効性:PM タスクを選択すると、故障場所、劣化メカニズム。劣化の影響と時

間コードの横に、当該 PM タスクの有効性が色分けして示される。 機器の劣化:有効性の表示の横に、故障の場所、劣化メカニズム、劣化影響、補修時間、

時間コード、発見方法、などの情報が示される。 故障モードサマリ:ある機器についてのすべての故障モードについての PM プログラムの

有効性をランク分けしてサマリー表示する。 カスタム頻度で実施した場合の故障モード:カスタマイズした保全頻度では、ベースライ

ンの頻度に比べてリスクの増減がどうなるかを示す。新しいリスクは何か、低減できるリ

スクは何かが示される。 (5)PMBD を利用した最近の検討(保守ケーススタディ、機器信頼性プログラム)

EPRI では最近、保守ケーススタディ(プロジェクト番号 69)を立ち上げて、ユーザーが

経験した機器の運転不具合などの特定の問題解決に対して、この PMBD を利用して、設備

の信頼性向上策を提供する業務を開始している。 また、原子力発電所で最近導入が進んでいる機器信頼性プログラム(ER:Equipment

Reliability)を火力発電所その他の設備に適用する検討も進んでいる。この ER プログラム

は、以下の 6 つの要素が含まれる発電所の設備信頼性維持のためのプログラムである。「継

続的な機器信頼性改善」のところで、PMBD を利用するという位置づけである。 クリティカル機器の範囲決定と把握

パフォーマンスの監視

継続的な機器信頼性改善

予防保全(PM)の実施

是正措置

長期計画とライフサイクル管理

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図 3-5 機器信頼性(Equipment Reliability)プロセス

(EPRI 報告書 10034792:2002 年より) (注:最新の ER プロセスではない)

(入手資料) PMBD and MARGe Overview and Tutorial, Michael Ruszkowski, EPRI

2 Equipment Reliability Case Studies, INPO AP-913 Equipment Reliability Process Implementation Summaries, 1003479, EPRI, November 2002

パフォーマンスの監視 ・系統パフォーマンスの監視と傾向分析 ・機器パフォーマンスの監視と傾向分析 ・予知保全の傾向分析 ・運転員巡視による監視 ・試験と検査結果の監視

予防保全(PM)の実施 ・予防保全(PM)プログラム ・「点検手入れ前」設備状態を記録 ・設備状態のフィードバック ・標準保全後試験

クリティカル機器の範囲決定と把握 ・共通の範囲決定基準 ・重要な機能を確認 ・クリティカル機器を確認 ・Run-to-Failure 機器を確認

是正措置 ・事後保全 ・故障原因 & 是正措置 ・設備の問題の優先順位づけ

継続的な機器信頼性改善 PM テンプレートの作成と使用 発電所と産業界の設備運転経験に基づ

く PM タスクと頻度の継続的調整 PM 技術基準の文書化 信頼性ある設備を確実にする代替保全

戦略の検討 設計変更要求の開始

長期計画とライフサイクル管理 ・系統および機器の健全性の長期戦略 ・改善活動の優先順位づけ ・長期計画の発電所事業戦略への統合

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3.3 ファーストエナジー社での保守高度化と PMBD の活用

日時: 2017 年 2 月 20 日(月)9:00~14:30 場所: Greensburg 事務所 (住所:800 cabin Hill Drive, Greenburg, PA 15601) ファーストエナジー社の火力発電所における PMBD の活用状況について聞き取り調査し

た。事前に質問状を送付することで、当方の関心事項に沿ったプレゼン資料が用意されて

いて、それに沿って内容を確認した。 (1)ファーストエナジー社について 本社はオハイオ州 Akron で、送電と発電を行う会社。 オハイオ州その他米国の中西部と中部大西洋沿岸の 6 つの州に発電や送電サービスを

供給している。従業員数は 15,000 名。 以下に示す合計 10 の電力会社で構成される。(今回の訪問先は下記の West Penn

Power 社の本社に当たるところであった。) Ohio Edison、The Illuminating Company、Toledo Edison:オハイオ州 Met-Ed、Penelec、Penn Power、West Penn Power:ペンシルバニア州 Jersey Central Power & Light:ニュージャージー州 Mon Power、Potomac Edison:ウェストバージニア、メリーランド州

発電総量は 17,000MW でそのうち、石炭火力が 56%、原子力が 24%、天然ガスが 8%、

水力・風力・太陽光が 11%、そして石油が 1%である。年間の収益は約 150 億ドル。 石炭火力発電所は 6 か所、ガス・石油火力発電所も 6 か所で、そのデータと地図を下

記に示す。

図 3-6 ファーストエナジー社の電源構成

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Coal(石炭火力発電所)

Bay Shore Plant Location: Oregon, OH Generation Type: Coal/Oil Capacity: 136 MW

Bruce Mansfield Plant Location: Shippingport, PA Generation Type: Coal Capacity: 2,490 MW

Fort Martin Power Station Location: Maidsville, WV Generation Type: Coal Capacity: 1,107 MW

Harrison Power Station Location: Haywood, WV Generation Type: Coal Capacity: 1,983 MW

Pleasants Power Station Location: Willow Island, WV Generation Type: Coal Capacity: 1,300 MW

W.H. Sammis Plant Location: Stratton, OH Generation Type: Coal Capacity: 2,233 MW

Gas / Oil(ガス・石油火力発電所)

Buchanan Generating Facility Location: Oakwood, VA Generation Type: Gas/Oil Capacity: 88 MW

Chambersburg Plant * Location: Guilford Township, PA Generation Type: Gas/Oil Capacity: 88 MW

Gans Plant * Location: Springhill Township, PA Generation Type: Gas/Oil Capacity: 88 MW

Hunlock Creek 4 * Location: Hunlock Creek, PA Generation Type: Gas/Oil Capacity: 44 MW

Springdale Units 1-5 * Location: Springdale Township, PA Generation Type: Gas/Oil Capacity: 628 MW

West Lorain Plant Location: Lorain, OH Generation Type: Gas/Oil Capacity: 545 MW

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図 3-7 ファーストエナジー社の発電所

(出典) https://www.firstenergycorp.com/about/generation_system.html (2)火力発電所に対する保守高度化の取り組み ・プロジェクトの開始

2011 年に FirstEnergy 社がペンシルバニア州の Allegheny 社と吸収合併した際に、両社

の発電所の保守方法に大きな差があることから、本社レベルでその調整を図る必要性が認

識された。また自由化の下で発電コストを下げるためには燃料費に次いで 2 番目の支出で

ある保守費用を下げること、などの必要性が認識された。当時、主要な 5 プラントでの 2011年から 2012 年での緊急性の高い保守作業(修理費用)は、6,200 万ドルに上っていた。 そのために本社サイドで、AMP(Advanced Maintenance Practices)と呼ばれる保守高

度化検討チーム、総勢 6 名)が結成され、現状保守の実態のレビューを行い、保守高度化

の取り組みを開始した。 保守高度化の取り組みに際しては、当時原子力部門で採用されていた INPO(原子力発電

運転協会)の AP-913「機器信頼性(ER:Equipment Reliability)プログラム」に注目し

た。そのため、原子力分野で ER を導入した FENOC 社(ファーストエナジー社原子力部

門)の専門家との話し合いをして、火力発電所にふさわしい簡略的なアプローチを検討し

た。そこでは、保守ベーステンプレレート(MBT:Maintenance Basis Template;EPRIの保守テンプレートと類似したもの)を作成し実施すること、機器の重要度判断を行う、

これをテンプレートに組み込むといった方針を決定した。また、EPRI の PMBD を参考情

報として利用することも決められた。 このような火力でのアプローチ(簡略版 AP-913 アプローチ)は、原子力に比べて規制環

境が異なること、利用可能な人材が限定されていることといった条件の違いを考慮して考

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えられたものであった。 なお、合併前(15 年ほど前)から、二つの会社では RCM の検討を独自に行っていたが、

リソース(人材、時間)がかかりすぎることなどの理由からその作業は挫折していた。 そのため 2010 年頃に RCM の効率化したストリームラインド RCM と類似のアプローチ

を採用した。採用したアプローチは、MTA(Maintenance Task Analysis)と呼ばれる。

そこでは想定しうるすべての故障モードを扱うのではなく、起こりそうな故障モードに限

定することで作業の範囲を低減させた。 最終成果物は自社版の PM テンプレートを作成することで、特に、EPRI で作成していな

いテンプレートは自社で独自に作成を行った。 検討対象設備は、重要設備から順番に取り上げることになった。重要性の高い設備の選定

にあたっては当時、緊急性の高い修理作業が必要となった機器をレビューした。その結果、

15 の機器タイプが緊急性の高い保守作業の 70%を占めることが分かった。 PM テンプレートの作成とサイトでの導入プロセスは、3 段階に分けて実施している。

第 1 段階 熱交換器 ファン 粉砕機

運搬装置 ポンプ

第 2 段階 配管 弁 モータ アンローダー フィルタ

第 3 段階 リザバー ゲート フィーダー トランスミット スートブロワ

PM テンプレートの作成に当たっては、AMP グループから 1 名が調整者として機能し、5

サイトから当該機器の専門家各 1 名が参加し、合計 6 名からなる会議で作成した。1 日 4時間ほどかけて、約 3 日間で検討を行うもの。

FMEA を含むその検討結果は、IVARA という IT ソフト上に展開される。また、すべての

発電所設備、保守関連情報は同社の CMMS(計算機保守管理システム)である SAP 上に

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展開される。 機器の重要度判断は、チェックリスト式である。重要度は A、B、C の 3 段階である。A

はクリティカルで PM が必要なもの、B は非クリティカルでコスト効果性のある PM を施

すもの、C は予防保全が必要でないもの(壊れるまで使用してよい)。この重要度判断は、

AMP メンバーの 1 名が当たった(原子力分野で十分な経験を積んだ人)。 重要度判断と同時に保守テンプレートの分類枠である、負荷サイクルの区分と供用状態の

区分も行う。それによって、各機器(ここでは故障場所ごとの単位で検討される)に対し

て適用されるテンプレート番号が付与される。このチェックシートのサンプルは受領した

プレゼン資料に添付されている。 最初はファンに着目して、2 サイト(Ft Martin と Pleasants 発電所、ともに石炭火力)

を対象にして、3 か月かけてテンプレートの作成とその結果のサイトへの実施を行った。そ

の後は、ほかの 3 サイトでの展開を行い、他の機器に展開していくという方法である。 テンプレートの保守タスクと頻度は、上記のように数名の専門家の合意プロセスによって

作成されるが、その際には、EPRI の PMBD の脆弱性ツールも利用することがある。それ

によって、各自が主張する保守の有効性がどの程度のものか評価することで、各自の合意

を得るのに役立っている。 サイトと本社レベルで合意を得ることで完成した PM テンプレートは、各機器タイプに対

して、本社指定の標準のフォーマットで作成される。その後半には、EPRI の PM テンプレ

ートと相違がある場合には、その理由を記載するようにしている。サンプルを受領した。 作成した PM テンプレートと各サイトで実施する PM には、相違がある。その相違点はエ

クセルシートに書き出されて、現状保全からの削除になるのか、追加になるのかといった

点が明らかにされる。

・これまでの成果 上記の 3 段階の検討を 3 年間かけて実施した。 34 種類の保守テンプレートを作成し社内承認した。 SAP 上で記録される機能上の場所(機器 ID 番号の数とほば同義)は 15 万か所で、その

うち保守テンプレートで対処される機能上の場所は、16,234 か所に上る。 9,240 の PM を新たに作成し、3,488 の PM をキャンセル(削除)し、3,682 の既存のタ

スクは維持された。 重要度区分の結果は、以下のとおりである。重要機器に区分される数が少なくなったこと

に着目している。 ・クリティカル(A):4% ・非クリティカル(B):23% ・RTF(故障するまで使用)(C):73%

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発電所設備の稼働状態は、主要パフォーマンス指標(KPI:Key Performance Indicator)

でモニターしている。 緊急作業の数(Emergent Work)、重要故障件数(Critical Failures)、費用節約(Cost

Savings)、プロアクティブ保全(Proactive Maintenance)について図を提供された。 なお同社はすべての保守作業のワークオーダーについて、その緊急性を下記の 4 段階の優

先度に区分している。 優先度 1:直ちに修理作業が必要なもの 2:24 時間以内に対処が必要なもの 3:6 週間以内に対処が必要なもの 4:次回の停止時に作業すればよいもの 上記の図面に示される緊急性の高い作業は、優先度 1,2 の作業数である。 発電所の保守にかかわる指標は SAP 上で計算可能である。SAP は 2003 年に導入した。

また、状態監視にかかわる情報は、CSI 社のソフト(振動関係)、PdMA MCE Gold(モー

タ電流分析ソフト)、PI システム(振動その他のセンサーデータ)、IVARA/APM ツールに

よるアラームなどのツールや IT を利用している。そしてこれらをベースにして設備の健全

性状態にかかわる状態報告書(Equipment Condition Report)を QickView というソフト

を使用してイントラネット上で見られるようにしている。保守作業のスケジュール作成に

は Primavera P6 を利用している。 その他、以下の点の説明があった。 いずれの発電所もかなり古いものが多い。特に古い発電所の場合は、保守に対する基準も

ゆるくして、保守費用を下げる戦略をとることもある。 運転開始当初はメーカー推奨の保守が多かったが、今は経験ベース、そして PMBD の活

用によって自社の管理下で保全タスクを決めている。 状態基準保全(CBM)は 20 年以上前から実施しているが、今ほど公式なものではなかっ

た。振動、オイル分析、サーモグラフィー、モータ電流試験などである。4,5 年ほど前か

ら本社の管理を強くして公式なものとなった。CBM でデータをとる技術者はサイトで 4 名

ほどいる。潤滑油は 1 か所のラボに送付して、そこで分析を行う。 TBM と CBM の比率はおよそ半々と思うとのことであった。 サイトでは 3 年ごとに、ボイラー設備などで大規模な保守停止を行う。その期間は 4~6

週間ほどである。 3 年未満の頻度の PM は、運転中に行うものがほとんどである。停止しないといけない

PM がその 3 年以内に生じる場合、通常は状態を見て次回停止時まで使えるかどうか様子を

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見る。 不具合などで計画外に発電所を停止させてしまう事態は、2 か月に 1 回ほどの頻度である。

年間のアベイラビリティは 85%ほどである。 火力発電所の場合、関与する規制機関として、FERC(Federal Energy Regulatory

Commission:連邦エネルギー規制委員会)と NERC(North American Electric Reliability Corporation:北米電力信頼度協議会) (それに州の公営事業委員会)などがあるが、い

ずれも定期点検を義務付ける要件はない。ただし、直流電源、ボイラー、安全弁などにつ

いての健全性が検査される。また、タービンオーバースピードの試験、発電機試験などが

検査される。ASME のコードに従って建設されるボイラー・圧力容器については、ASME公認の検査官による認証が必要とされる。

まとめ 最後に、保守高度化の取り組みに関する重要なポイントとして、以下の指摘があった。 火力発電所では、原子力発電所ほど厳密で詳細な検討までは必要とされない。 100%の信頼性または 30 年間の寿命にわたっての完全な維持を要求するものではな

い。 成功するには社内の各層に及ぶ理解が必要である。 実施段階ですべての面において発電所が参加する仕組みが重要である。 起こりうるすべてを扱うのではなく、合理的に考えられる機器の故障とその保守タス

クに焦点を置くべきである。 一度の作業で終わるものではない。継続的な改善プロセスで回していくことが重要で

ある。 その他、口頭で、保全の改革には自社のトップの重要性の認識と働きかけが必要である、

とのコメントもあった。本社の 6 名の検討チームが主体となった活動であるが、その中に

は原子力ですでにこの作業を経験した人が含まれていること、またチームの結成の際に優

れた人材をピックアップしてこの作業にあてたことなども工夫している点として指摘があ

った。 受領資料 ・ Implementation of the Fossil Maintenance Strategy, FirstEnergy Fossil Section,

February 20, 2017 ・ Sheet for Criticality Determination ・ FGBP-MNT-0201, Large Centrifugal Fan Maintenance Basis Template, Revision 5

(3)補足情報(EPRI 発行のニューレター情報から)

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ファーストエナジー社の取り組みは、EPRI 発行のニュースレター2015 年 2 月号に紹介

されている。 タイトル:ファーストエナジー社は EPRI のデータベースを全社の発電所に適用し PM を

改善(2015 年 2 月、EPRI ニュース記事より) First Energy 社は社内の発電所全ての重要な機器に対する予防保全(PM)を向上させる

ために EPRI の PMBD(PM 基盤データベース)を導入した。PMBD ソフトによって、電

力会社にとって最も有効な保全タスクを決定し、以前考慮していなかった故障モードを認

識し、そして必要なところだけに有効な保守タスクを追加させ、またリソースを再配備で

きるように有効ではないタスクを削除することで、保全計画の有効性を向上させることが

できた。 より有効な保全戦略の必要性 今日、米国火力発電所の保守要員は、設備の経年劣化、リソースの不足、専門家の減少、

アベイラビリティに関する要求の増加といった課題に直面している。そのような課題に対

して発電所管理者たちは、設備の信頼性の達成にために最も有効な保守タスクを自らの保

全計画に組み込むよう努力している。しかし多くの場合、過去に実施した RCM(信頼性重

視保全)などの解析での成功例はあったものの、保守の方略は依然としてリアクティブな

ものあり、故障モード、影響、クリティカリティ(重要度)などに考慮していなかった。 予防保全基盤データベース(PMBD) この 20 年ほどにわたって EPRI では、PMBD ソフトウェアを開発してきた。機器の劣化

メカニズムとそれに影響を及ぼす因子、故障の進展にかかわる時間スケール、劣化状態を

発見しそれを防止するための機会の間の関係を扱うことで、事業者は発電所の状態に応じ

た予防保全(PM)プログラムを採用することが可能となる。今日まで EPRI では、250 種

類以上の発電所機器タイプに対して故障モードの詳細な情報を編集してきた。その結果、

故障モードは合計で 19,000 以上、そして 1,800 以上の保守タスクを編集していて、PMBDは信頼性分野の専門家にとって産業界で最も包括的な情報源となっている。 これらのデータは厳格に管理され、実証されたプロセスである専門家による意見導出プロ

セスによって得られている。このプロセスは、運転中、補修作業、保守の経験と産業界で

の専門家から良好事例を収集し、保守作業タスクの選定プロセスのための技術ベースを明

確化し、クリティカルで重要な設備に対して最も効果的なタスクを見出すための単一のデ

ータベースに集約したものである。保守タスクの選定と頻度の原則は、保守ベースとして

知られている。電力会社のメンバーと産業界の専門家による EPRI チームは共同でこれら

のデータを編集してきている。

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PMBD の中には、ベースラインとなる機器テンプレートがあり、これは原子力業界では

BOP(バランスオブプラント;原子力系以外の在来の発電系統)設備に対する保守のスタ

ンダードとして幅広く採用されてきている。これらのベースラインテンプレートのベース

は二つあり、過去 20 年以上にわたる機器の故障モードレベルでの履歴についての EPRI 編集データがある。もう一つは、ユニークな解析手法、タスク有効性手法である。これは特

定の故障モードを防止するための保守タスクの有効性を推定することで信頼性の増加につ

なげるものである。 脆弱性解析(Vulnerability Analysis)と呼ばれる PMBD ソフトウェア内の解析を使用し

て、保守マネージャは定量的な保守のベースを得ることができる。これば、自らの発電所

にカスタマイズされた機器の履歴、設計、運転経験、そして産業界データを踏まえたもの

となっている。この解析手法は、結果として得られる保守の推奨案が一般的な勧告ではな

く、個別の目標と利用可能なリソースに基づいたものであるという点で、ユニークな手法

である。 First Energy 社全体での PMBD の使用

First Energy 社では、社内を通して、設備信頼性方策と状態基準保全(CBM)計画を標

準化させるための方法を探していた。数 100 種類に及ぶ機器タイプに対してゼロからこれ

らの保守方策を作り上げることは時間と費用が掛かってしまうだろう。 First Energy 社では PMBD を使用して自社の PM 実態をレビューし、最適な頻度を設定

し、適正な故障モードを配慮するよう最適化することが可能となった。産業界が認めた保

守テンプレートを使用することで自社の 18,000MW の全発電所にわたっての PM 戦略に自

信を持つことの支えとなった。 AMP(Advanced Maintenance Practices)と呼ばれる同社の保守検討チームの Rick

French 氏はこのグループを率いて、社内火力発電所の重要機器を確認し、PMBD 情報を利

用して同社固有の PM ベース・テンプレートを作成した。これらのテンプレートを使用す

ることで、同社全体の発電所間で標準化され整合性のある保守計画が作成できた。 これまでに作成した 32 の機器で、同社としては個別のテンプレート作成にかける費用を

節約して 32万ドルの費用効果があった。今後さらに、機器信頼性が向上し故障が減ること、

そして計画外の保守作業が減ることによる更なる費用効果も見込める。 AMPチームのマネージャであるJohn P Anna氏は、「EPRIのPMBDを使用することで、

AMP チームが最も効果的な保守タスクを決定し、それと同時に不要で価値の低い保守タス

クを削除するためのサポートを得ることができ、First Energy 社の火力発電所の重要設備

の PM プログラムを改善できた。5,000 以上の PM タスクが新たに作成あるいは修正され、

既存の設備に対する定常保守の作業時間のうち 15,000 人時間以上を削減でき、保守のリソ

ースの効率性を向上できた。」と述べている。

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図 3-8 FirstEnergy 社の Sammis 火力発電所(オハイオ州)

(同社の 6 火力発電所のうちの一つ)(1/2)

図 3-9 FirstEnergy 社の Sammis 火力発電所(オハイオ州)

(同社の 6 火力発電所のうちの一つ)(2/2) (Photo courtesy of FirstEnergy Corp.)

(出典)FirstEnergy Improves Preventive Maintenance Practices Across Its Fleet With EPRI Database, EPRI News, February 2015

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3.4 ルイビルガス・電力社(LG&E)での火力発電所保守高度化の取り組み

日時:2017 年 2 月 22 日(水)9:00~14:00 場所:ルイビルガス・電力本店 3 階会議室(住所:220 West Main Street, Louisville, KY)

ルイビルガス・電力(LG&E)社の火力発電所における保守高度化の取り組みと EPRI の

PMBD の活用状況について聞き取り調査した。 (1) ルイビルガス・電力(LG&E)社の概要

LG&E(Louisville Gas and Electric Company)社はケンタッキー州ルイビルに本社のあ

るガス・電力会社である。LG&E 社と合併したケンタッキー電力(KU:Kentucky Utilities Company)と合わせての従業員は 3,600 名でいずれも、ペンシルバニア電力(PPL)社の

子会社である。ケンタッキー州とバージニア州内の 130 万人の顧客に電気と天然ガスをサ

ービスしている。2 社合わせての発電総量は 7,997MW である。 いずれの 2 社も、ケンタッキー州公営気事業委員会(Kentucky Public Services

Commission)によって規制された環境下にある。電力自由化はなされておらず、地域独占

の電気事業者である。 安全性ではトップの成績で、全国、世界で最も傷害事故率が低い。 LG&E 社は 1838 年にルイビルガス・水供給会社として設立された後、1842 年には水供

給事業が外されたためガス会社と名前を変えた。1913 年にガス・電気事業が統合されて現

在の名前になった。発電総量は 2,919MW である。 LGE 社では、5 つの火力発電所を有している。 HP によれば、13 基の石炭火力発電所、1 基のコンバインドサイクル発電所、11 基の水力

発電所、1 基の太陽光発電所を所有している。

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表 3-2 LGE 社と KU 社の保有する火力発電所 Cane Run Generating Station (天然ガスコンバインドサイクル)

640 MW、 2015 年運転開始

E.W. Brown Generating Station (水力、火力、燃焼タービン、太陽光)

(石炭火力)749 MW、3 基 1957 年運転開始

Ghent Generating Station (石炭火力)(KU 社)

1,932 MW ;1~4 号機(全 4 基) 1973 年運転開始、

Green River Generating Station (石炭火力)

1,932 MW;1~4 号機(全 4 基) 1973 年運転開始、2015 年操業停止

Mill Creek Generating Station (石炭火力)

1,472MW 、1~4 号機(全 4 基) 1972 年運転開始、LGE 社最大の石炭火力

Trimble County Generating Station (石炭火力:粉炭)

1 号機:514 MW(1990 年) 2 号機:760MW(2011 年) 天然ガス燃焼タービン: 960 MW(2002-2004 年)

(160MW×6 機) (出典) https://lge-ku.com/our-company/power-plants-and-compressor-stations (2) 保守高度化の取り組み(重要度判断と PMBD の活用)

2015 年末に副社長の決定によって保守高度化のプロジェクトが開始された。その背景に

は、経験あるエンジニアの退職が増えていること、各サイトで異なる予防保全を全社規模

で整合性のあるものにする必要があると認識したことなどがある。 本社の幹部クラスが直轄する本プロジェクトのマネージャ(今回の面談相手)をリーダと

して本社で検討チームが結成され(最初は 1 名(Chuck 氏)主体でスタート、のちに 1 名

(Katie 氏)を補充して 2 名)、さらに各サイトの保全部門と運転部門の部長が参加する形

でプロジェクトが始動した。 作業のステップは、以下のとおりである。 ① 重要度判断 ② EPRI の PMBD と現行保全との比較による PM レビュー 本社の 2 名は、EPRI の機器信頼性(ER)プログラム(EPRI 訪問時にその内容は聞き取

り済み、FirstEnergy 社でも同様の話があった)のガイダンスを参考にして、まず、機器の

重要度(クリティカリティ)の判断作業を行うことにした。 クリティカリティ判断のためのチェックシートは上記の EPRI の ER ガイダンスを参考に

独自の(シンプルな)ものを作成した。 クリティカリティの判断項目は、その重要度が高い順に並んだ 5 項目の質問に対して上か

ら順にチェックを行い、どこかでイエスが当てはまればそこで終了する。その次に、同様

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に非クリティカルかどうかのチェックを 5 項目で行う。いずれにも該当しない機器は、RTF(壊れるまで使用する)として扱う。そのチェックシートは、おおむね以下のイメージで

ある。

表 3-3 クリティカリティ(重要度)のチェックシート(イメージ) クリティカリル 1 その機器が故障した場合に停止が必要になる

2 安全関連のハザードを起こす 3 制御室で重要な表示になる 4 … 5 故障の修理費用がかさむ(10 万ドル以上…)

非クリティカル 1 故障の修理費がかさむ(XX ドル以上…) 2 ・・・・・ 3 ・・・ 4 ・・・・・ 5 ・・・・・

上から順にチェックして、該当したところの番号が付与される。例えば、クリティカルの

1 には該当しないが 2 に該当する場合は、クリティカリティ 2 の区分になる。その結果は、

機器別に下記のように整理される。

表 3-4 クリティカリティの評価結果シート(イメージ) 機器名 ユニット 1 ユニット 2 ユニット 3 …ポンプ クリティカル 1 クリティカル 1 クリティカル 2 …ファン クリティカル 1 クリティカル 1 クリティカル 2 … 非クリティカル 3 非クリティカル 2 非クリティカル 1

このように、各機器の重要性が 3 段階(クリティカル、非クリティカル、RTF)に区分さ

れ、さらにその中での相対的な重要性が 5 段階別(1~5)に区分される仕組みである。 同じ機器でも、その設計の多重性などによって重要度の区分は異なる場合がある。判断は、

夏のピーク需要時に故障した場合(最も保守的な想定になる)を想定するものとした。対

象機器の選定には、マスター機器リスト(MEL:Master Equipment List)を利用したが、

サイトによって同じ機器でも呼び名が違うことが多いことが分かった。これはもともと別

の電力会社であったり(KU 社と LGE 社の違い)、あるいはメーカーの相違に起因したり

している。 第 2 段階の作業では、同社使用の CMMS(計算機保守情報管理システム)である MAXIMO

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に登録済みの現状の P M(予防保全)タスクと EPRI の PMBDの PM推奨との比較を行う。 EPRI の PMBD のほうが優れた保全を提案していると判断されればそれを採用することに

する。つまり現状保全に比べて、追加、削除、修正のいずれかを判断していく。 次に頻度の決定である。これも PMBD にある頻度と照らして、自社の経験を見ながら望

ましい頻度を決めていく。その際には、PMBD にある脆弱性解析の機能を使用することも

ある。 ・作業の進捗と作業体制 現在、上記の第 1 段階について、回転機器を対象に 5 つの発電所に対して 2016 年の 1 年

間をかけて実施し、今期は電気品を、そして来年度は計装品に拡張する予定である。回転

機器は比較的情報が整理しやすいと思われたので、まずこれを扱うことにした。最初は、

パイロット発電所を 1 か所選んで検討を行い、その結果を他の発電所に展開する方式を採

用した。 第 2 段階の作業は昨年後半、回転機器に対する重要度判断の結果を利用して開始したとこ

ろである。すべての機器に対する上記の作業が終了するのに 5,6 年かかる予定である。 重要度の判定リストは本社の 2 名で作成した。重要度判定作業は本社の指導を受けて各サ

イトが責任をもって行う。最初は本社のスタッフの関与があるが、情報提供とトレーニン

グを受けたあとは、サイトにその作業が移管され、保守部門、運転部門のマネージャ、機

器の専門家、システムエンジニアなどの数名体制で行う。 本社側で推奨事項の指摘は行うが、サイトでの判定を重視することにしていて、本社側は

それを観察する関係である。ユニットによる判定の差はある程度出ているが認めている。 本作業に対して、サイト側のサポートを得るにはそれなりの苦労はあったようである。本

社のトップ主導で開始されたが、サイトの現場レベルになると、現状を変更するのに対し

て抵抗する力は強いものがある。 ・労力とコスト効果性

PM 最適化の作業は開始されたばかりであり、その効果を例えば信頼性の向上度合いなど

で測定できる段階ではない。そのような状況になるまで 3,4 年はかかるとみている。 これまでの作業では、例えば、同じ機器でもサイトごとで呼び名が違ったりして、それを

調整する必要があることが判明したりしている。 サザン電力その他の大電力では多くの人数をかけて PM 高度化を行っている(例、Duke

社では 30 名ほどかけて、短時間で進めている)が、ここでは本社の 2 名が専任になってい

るだけである。できるだけ現有戦力だけで大きな労力をかけずに作業を進めている。その

分、時間はかかると認識している。 EPRI からのサポートも受けているが、主に PMBD の使用方法だったり、質問への回答

といったレベルである。特に予算をつけて委託業者に作業を依頼しているものではない。

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RCM や FMEA は、これまでにトライした経験はない。EPRI の PMBD を使えばそれと

同じ効果が得られるとの認識である。 LGE 社による保守高度化のアプローチは、他の火力発電所に比べてどの程度の位置づけ

なのか聞いてみたところ、おおむね平均的な位置づけではないかとのこと。つまりは先進

的でもないし、また遅れているわけでもないとの認識である。Duke 社のようにお金と人手

をかけて実施しているところもあるが、発電所数が多いため、その分のコストメリットも

大きいと判断されるためであろうとのことであった。 なお、EPRI によれば、昨年 LG&E 社では EPRI 主催のある機器に対する保全について情

報交換するための各社の専門家がある会合を主催してくれたとのことで、EPRI の活動にも

前向きな支援をしてくれているとのこと。 各サイトの職員の数はサイトにより大小である。大きな発電所では 250 名の社員と委託業

者が 150 名ほどいる。最新のコンバインドサイクル発電所では 35 名程度である。 (3) 運転保守データの統合と活用 運転保守にかかわる各種のデータを統合して活用する検討が進んでいる。 その全体のフローを図 3-8 に示す。 データウェアハウスに収納されるデータには、以下のものがある。 Black & Veatch(web ベースでの運転保守データの遠隔監視とその分析) MicroGADSGold データ(信頼性データの報告システム) MAXIMO データ(統合型アセットマネージメント(EAM)システム、保守情報) OSIsoft(プロセス計算機からの運転データ分析ツール) SharePoint2013 データ PowerPlan(財務・運転データ)

また、IBM 社の NETEZZA というビッグデータ活用のためのデータウェアハウスとマイ

クロソフト社の SQL サーバーが利用されている。 「データウェアハウス」とは、発電所の意志決定のため、目的別に編成され、統合された

時系列で、削除や更新しないデータの集合体とされる。同社が使用する NETEZZA は、ビ

ッグデータの分析ソフトの一つである。 ビジネス分析ツールである Power BI と Dashboards と呼ばれる表示機能を使って、発電

所の運転保守にかかわる様々なデータ(主要パフォーマンス指標(KPI)情報)が常時、サ

イトだけではなく本社レベルで監視ができる。また、管理層向けにその運転あるいは保守

にかかわるパフォーマンスデータのレポートを即座に作成することもできる。 各週に発生する保守依頼表の件数とそのうち作業が完了した件数などのデータを表示し

た例などが提示された。その他、依頼表の件数が多い不具合の上位 10 のリストなどが表示

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される。 状態監視保全データによる異常状態の早期検知のために、Black & Veatch のツール(お

そらく ASSET360™ )を 7 年前から使用している。LGE 社発電所で収集した振動監視や潤

滑油分析などの状態監視データを Black & Veatch のサーバーに送付することで、リアルタ

イムで不具合事象の予兆を検知する仕組みになっている。 LGE 社では監視と異常の判断のためにかける人件費を上記の仕組みに外注することにつ

いて、2.4 倍のコスト効果があると評価している。つまり、Black & Veatch 社の診断サー

ビスに 1 ドルかけて、結果的に異常の早期発見や、効率改善の機会を見つけることで、2.4ドルの便益を得ているとの評価である。なお 5 プラント分の外部監視に要する委託費用は

およそ年間 100 万ドル以下とのことである。 LGE 社の IT システムは、情報セキュリティ上の懸念から、クラウドベースではなく、ブ

ラウザベースで全ての情報を交換する仕組みを採用している。

Black & Veatch MicroGADSGold MAXIMO データ

OSIsoft SharePoint2013

PowerPlan

Microsoft SQL Server

N NETEZZA (an IBM Company)

Microsoft SQL Server Power BI

SharePoint 2013

図 3-10 LGE 社における運転保守データの統合と活用(LGE 社提供資料)

Date Warehouse

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3.5 FOMIS による火力発電所間の情報交換

日時: 2017 年 2 月 15 日(水)8:00~13:00 訪問先:Curtiss- Wright 社 Nuclear Division(Clearwater, Florida))

FOMIS(Fossil Operations & Maintenance Information Service)は、米国内外の火力

発電所間で運転保守に関する情報交換を行う仕組みである。その事務局を務める Curtiss- Wright 社の Scientech 部門を訪問して、サービスの内容や FOMIS を通してなされている

電力会社間の情報交換の状況を聞き取り調査した。 FOMIS サービスは、メンバーが質問と回答を提供しあう情報交換の仕組みが中心で、そ

の他に、過去の質問回答を DB 化した情報の蓄積、年会による情報交換の場がある。 FOMIS サービスのメリットは、以下の点にあるとされている。 データベース:(過去に類似の問題を抱えているケースが多いため)事業者が抱えてい

る課題についての解決策を与える報告書やデータにアクセスが容易。 解題解決のための専門家:メンバー電力の専門家ネットワークを利用して、運転保守

(O&M)に関する質問に回答を得て、緊急性のある問題を即座に解決できる。 機器と調達に関するアドバイス:機器、パーツ、サービスの選択に関して、(メーカー

ではなく)事業者の立場からの助言や参考情報を得る。 ダウンタイムや停止期間の短縮:ダウンタイムや停止期間の短縮のための解決策を見

出し、パーツや機器の調達費用を減らす。 会議による良好事例の共有:関係者が集まる会議において、新しい機器やサービス、

良好事例などについての情報を得る。 FOMIS サービスに加入した会員はいつでも、会員用の web サイトを使って他のメンバー

に質問を投げかけることができる。質問を見た他の会員は、可能な範囲で情報を提供する

ことで、お互いを支援しあうという仕組みである。(画面イメージを参照。) 米国以外に、カナダ、イスラエル、スペイン、ポルトガルその他の国の電力会社が参加。

現在の会員は 50 社、150 サイトで石炭火力サイトが多い。 1980 年ごろに開始されたサービスで、原子力版のサービス(NOMIS)の開始直後に火力

版としてスタートした。なお、NOMIS サービスは原子力業界団体の INPO(原子力発電運

転協会)においてその仕組みが引き継がれている。 年間契約で、年会費は原則サイト当たり 22,000 ドル。一つの会社が持つサイト数などに

よってあるいは継続年数などによってディスカウントもある。 最近は環境省の規制(環境放出の制限)が強化されたこともあって、電力会社の財政が厳

しく、メンバーから抜けつつある電力もあるため、最多の時から比べるとかなり(100 サイ

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ト以上)減っているとのこと。ただしいずれも平均して約 10 年間以上は参加してくれてい

る。大規模電力はこのような(他社の)ニーズが一般に少ないのでサービスから抜ける傾

向も強いが、それでも一部の大電力、例えば、エクセルサービス社など長年積極的な参加

を続けている。Duke 社は昨年抜けたが、年会ではプレゼンしてくれている。 質問への回答に当たっては、そのようなケースは少ないが、会社・発電所名を隠した匿名

での回答も可能である。ただし、FOMIS 事務局はそれがどこか分かっているので、場合に

よっては事前の了解の上で、直接コンタクトが可能なように取り計らう場合もある。 FOMIS 事務局はファシリテータとして機能する。回答を促したり、過去の類似質問への

回答を調べたりしている。担当者の負担を減らすために回答はそれほど手間をかけずに済

ませてもよい。(上記の匿名のケースを除いて)回答者の連絡先が分かるので、どうしても

詳細が知りたい場合には当事者同士のコンタクトに任せることになる。 回答に際しては、あくまでも担当者の個人の立場での回答でよい。会社を代表して回答す

る立場ではあるが、個人として回答する。問題によっては、質問者の事前許可を得たうえ

で、FOMIS 事務局がその問題に詳しそうなメーカーに問い合わせて情報を提供してもらう

場合もある。 例えば、ルミナント社は個人での情報開示については禁止されているので、事前に社内の

手続きが必要であるが、そのような場合であっても参加してくれている。 基本的には本情報交換サービスの価値を理解しているメンバーだけが参加するので、前向

きの対応をしてくれることが多い。回答が来ない場合は、事務局が回答を促したり、過去

の類似質問の回答を提供したりして補足する。メンバーはお互いに、回答の提供度合い、

つまりこの仕組みへの協力の度合いが分かるので、単に質問するだけで回答を提供しない

ような後ろ向きの参加はあまり奨励されないことは皆が理解している。 会員になる場合には、協定を結ぶ。その条件の中でのみ、情報の開示は限定される。 質問回答サービスのほかに、すべての情報(過去の質問回答など)のデータベース化(ユ

ーザによる検索機能付き)、そして年会(アニュアルカンファレンス)がある。DB 化され

た過去の情報は 30,000 件以上に上っている。 年会への参加は、メンバー電力に限定されない。非会員の電力やベンダーの参加も可能で

ある。ベンダーは自社製品のデモをしたり、電力の生のニーズを聞けるチャンスがある。

元のメンバー電力の参加も結構あるし、プレゼンもある。 ベンチマーク・セッションもあり、1~2 日間かけて、ある特定テーマについてメンバー

間が自由に議論しあう。その場合は、ベンダーは排除されることが多い。テーマは質問の

傾向を見て FOMIS が設定したり、メンバーがリクエストすることもある。例えば最近では、

モバイルを使った運転員のウォークダウン、安全性の観察などを扱った。例えば、その問

題に関する実情の話し合いの場で、各社の手順書レベルの話が出た場合、口頭では情報を

提供するが、手順書のコピーまで提供されることは少ないが、ケースによってはこれを共

有することもある。質問回答の場合でも同様である。

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今年(2017 年)の年会は、6 月 5 日から 4 日間、フロリダ州のサンドキーで開催される。

50~60 社の参加を見込んでいる。去年の会議では Duke 社が 2 年前に経験したコンバイン

ドサイクル発電所での火災事例の根本原因についてのプレゼンがあった。 FOMIS への質問は、特に範囲は限定されない。火力にかかわることであれば何でも聞く

ことは可能である。質問のテーマによって、運転、保守、安全性、IT(情報技術)、化学、

その他いくつかのカテゴリーに分類する仕組みになっている。 発電所が最近経験したある特定の不具合への対応をどうしたか、といった緊急性のある質

問もあるが、良好事例や保守最適化に関係した質問もある。例えば、どんな保守最適化プ

ログラムを実施したか、その中で EPRI の PM テンプレートを使っているか、などを聞い

た質問があった。あるいは、タービン設備などの点検頻度を問い合わせるといった質問も

あった。 もちろん各電力会社は競争環境下であるため、経済性にかかわる質問はあまり扱われず、

技術的な問題について情報を共有しあうのが主目的である。 EPRI は大きなテーマについて研究開発的な要素を扱うが、FOMIS は日常の課題を扱う

点で差別化されている。EPRI に比べるとあまり公式ではなく、技術的な要素も深くはない。

費用もより小規模で済むので、小規模電力にとっては EPRI に参加せずにこちらに参加す

るほうがハードルが低くて、コスト効果的と認識されている。 本サービスの在り方については、毎年の契約更新時にメンバーのコメントを聞いている。

2 年前にはアンケートを実施して、現在もその対応のために web を改良中である。5 年前に

は外部の会社を使ってアンケートをしたこともあった。 ガスタービンは技術の進歩も激しく、一部設備についてはメーカー保証の期間も限定され

定期的な交換などが必要になったりするため、その保守については基本はメーカーの推奨

に従うことになる。それ以外の蒸気タービンやボイラーなどはそれほどオリジナルメーカ

ーの意見には左右されずに、自社で保全を決める場合が多い。オリジナルメーカーではな

く、第 3 者のサービスを使うケースも最近は見られている。古い発電所の場合は同じ設備

が製造中止になったりして、オリジナルメーカーへの依存度も下がることが多い。 火力発電所の規制機関として、環境関係の規制は EPA が行う。その他、電気料金に関し

ては州の公営事業委員会(PUC)が決定する。運転面についての PUC による関与の度合い

は州によっても異なる。州によって自由化のレベルが違うので、規制州と非規制州では、

電力会社間の競合の度合いも異なる。競争の激しい州としてはテキサス州などがある。停

電など、発電所の信頼性の問題は、送電網の安定性と関係した複雑な問題であり、EPRI で検討が行われている。

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図 3-11 FOMIS のメニュー(メイン画面、質問提出用、回答提出用)

図 3-12 質問提出時の入力フォーム

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図 3-13 質問への回答提出フォーマット

図 3-14 FOMIS に寄せられた保守最適化に関する質問のリスト

(出典)FOMIS からの提供資料

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(資料) 2016 年の FOMIS 年会のプログラム

Agenda 62nd FOMIS Conference

Monday, June 13, 2016

Optional Training Sessions

8:00am - 8:15am Opening Remarks & Introductions, Anthony Hull, Curtiss-Wright

8:15am - 9:45am

Safety Session Part 1: Employee Engagement • Are control room or post-shift safety meetings good practice? • Do meetings, stand downs, etc. have equal impact across all shifts? • How do you improve the level of engagement of all employees? • How do you manage effective housekeeping?

9:45am - 10:00am Break 10:00am - 11:45am

Safety Session Part 2: Electrical Safety and Fall Protection • How do you define a Qualified Electrical Worker? • Who is issued FR clothing, and how is said clothing maintained? • How do you provide for Arc Flash safety? • How do you provide fall protection when tie-offs, etc. aren't obvious? • How do you manage rigging safety?

11:45am - 1:00pm Lunch 1:00pm - 2:30pm

Safety Session Part 3: Standards and Future Workforce • Are you keeping up with the 1910.269 changes, and if so, how? • How do you manage inspections, tests, SOPs, JHAs, etc. with a lean workforce? • Is there a difference in safety between generations of workers? • How do you manage strains and sprains related to an aging workforce?

2:30pm - 2:45pm Break

2:45pm - 5:00pm

Safety Session Part 4: Environmental Regulations and Protection • How have new environmental regulations changed your safety program? • How do you manage safety relating to scrubbers (Lime, Ammonia, PPE, etc.)? • How do you manage Hexavalent Chromium exposure for welders?

7:00pm - 9:00pm Opening Reception - Poolside Grass Area

(以下、省略)

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4.欧州の類似の取組に関する調査 米国 EPRI 以外においても、欧米における類似の取組について、ヒアリング等を通じた調

査を行った。この際、米国 EPRI での取組を含めて、各取組の比較が可能な形で整理を行

った。 2017 年 1 月、ドイツとフィンランドの発電事業者(2 社)と技術協会(ドイツ)を訪問

して、信頼性重視保全(RCM)などの保守高度化の取り組み状況について聞き取り調査し

た。欧州訪問調査のまとめを 4.1 節に、そして訪問先別の調査結果を 4.2~4.4 節にまとめ

た。 また、上記以外の国に関する事例を調査するために文献調査を行った。その結果を 4.5 節

にまとめた。 4.1 欧州訪問調査結果のまとめ

ドイツとフィランドの火力発電所の保守高度化検討の状況は、以下の通りである。 ・ ドイツ VGB(欧州発電所技術協会)は、欧州の電気事業者に対して技術的支援を行う

協会で、発電所の保守管理や保守高度化のための課題解決を目指した情報交換やワーク

グループの運営を行っている。また発電所の信頼性評価に利用可能な運転経験データを

収集する KISSY データベースシステムの運用を行っている。KISSY システムの参加メ

ンバー(10 か国、20 社、821 基)は自社発電所のアベイラビリティ(稼働状況)にか

かわるデータとアンアベイラビリティ(利用不能状態、計画停止を含む)にかかわる事

象に関する情報を匿名で、所定のフォーマットに従って提出している。これによって稼

働率の低下をもたらす重要機器の特定などが可能であり、下記発電所の RCM 解析のケ

ースでもこの情報が使用されているとのコメントがあった。 ドイツでは、ハザードをもたらす設備(高圧部分)について、法定点検が要求されてい

る。分解を伴う内部点検は 3 年(ボイラー設備)あるいは 5 年(圧力容器)の頻度であ

る。それ以外の設備は、基本的には事業者の自主で保全を行うことができる。VGB は

そのための業界指針を発行している。 ・ ドイツ LEAG 社の褐炭火力発電所では、保守コストの低減を目指した検討を数年前に

実施した。プラグラマティック RCM と呼ばれる独自開発の評価手法で、所内の専門家

がワークショップ形式で検討を進めることで、効率的なRCM解析が可能となっている。

1 年間かけて 14 機を対象に解析を行い、約 10%の保守コストの低減効果を得ている。

米国 EPRI の RCM や PMBD は見ておらず、VGB の活動に参加していてそれで十分と

の認識である。 ・ フィンランドでも法定点検での要求はドイツと同様の状況であった。また、重要機器に

ついては保険会社の要求が検査頻度に影響している。自主的な保全プログラムの高度化

は事業者独自の判断で柔軟に実施している。

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・ 訪問したフィンランド Fortum 社では、RCM の考え方に基づく ReMaint®という評価

手法を独自に考案し自社と他社の発電所に適用している。この評価手法は、ロビーサ原

子力発電所での実施経験を標準化したもので、重要度のスクリーニング解析を先に行い、

詳細な FMEA 解析に進む機器を大幅に減らすことで、解析の手間を省力化、効率化す

る一種の効率化 RCM アプローチである。また、保守テンプレートに類似した機器タイ

プ別の推奨保全パッケージも作成されている。ただし、EPRI の RCM や PMBD とは直

接の交流はないとのことである。 ・ 訪問した 2 か国(ドイツ、フィンランド)の事業者(2 社)における火力発電所設備の

保全の取り組みをまとめると、規制の関与する高圧部分を除いて、自社独自で保守の高

度化検討を進めている。その背景には、自由化に伴う競争下での保守コストの低減ニー

ズがある。標準的な信頼性重視保全(RCM)の考え方に沿って、それを効率化したア

プローチが独自で考案されていて、解析の手間を省力化させている。特に、フィンラン

ドのFortum社ではEPRI の保守テンプレートに近い推奨保全パッケージを独自に作成

していて、興味深かった。ただし、いずれも米国 EPRI との直接の交流はない模様であ

る。 ・ また、ドイツ VGB では、競争下にある欧州内の電気事業者同士が情報交換する仕組み

を設け、また産業界の自主ガイダンスを作成するなどして、共通の課題解決に役立つ活

動を実施していることが分かった。

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4.2 ドイツ VGB (欧州大規模発電所技術協会)

日時:2017 年 1 月 16 日(月)9:30~15:30 場所:VGB 原子力シミュレーションセンター建屋 4 階会議室 VGB PowerTech e.V., Deilbachtal 173, 45257 Essen Germany Tel: +49 201 8128 0

図 4-1 VGB 事務所

https://www.vgb.org/en/offices_essen.html

(1)VGB の概要 プレゼン資料を用いて VGB の紹介があった。 VGB(欧州大規模発電所技術協会)は、1920 年に設立された発電および熱供給に

かかわる事業者の支援を目指した技術協会である。欧州内外の発電業務に関係した

会社や機関が拠出する会費のもとで運営されている。 通常会員は電力会社に限定され、その他に協会や研究機関向けの関連機関会員、そ

して、メーカーやコンサル会社などの支援会員があり、それぞれ所定の年会費が定

められている。 今回訪問したエッセンの本部には 82 名の職員が勤務している。 欧州を中心とした 35 か国の 488 社・機関のメンバーで構成される。アジア、米国、

豪州、南米、南アフリカの事業者や機関も会員には含まれるが、90%は欧州のメン

バーで占めている。日本からも火原協など数社がメンバーとなっている。 メンバー会社の発電総量は 461GW で、石炭・ガス・石油が約 50%強、原子力約 25%、

水力・風力・太陽光・バイオマスが残りの 20 数%を占めている。原子力は減ってき

ていて、再生エネルギーが増加傾向にある。 扱う分野は、原子力発電、在来発電技術、再生エネルギー・送配電、環境技術・無

地化学・安全性と健康、技術サービスの 5 分野がある。 メンバー会社の操業にかかわる支援を行い、戦略的な挑戦を支援し、関係者間の国

際的な情報交流を促す役割がある。そのために、発電業務にかかわる経験を情報交

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換し、知識管理を促している。 VGB 活動の使命には以下のものがある。

1. 技術的なノウハウの創生、交換及び引き渡しのための国際的なプラットフォーム

の提供 2. 会員と関連するロビー機関に対して、技術的なノウハウの保護と提供の役割を果

たす 3. 運転者と供給者の間の密接な協力を通して技術的及び操業上のスタンダードを

定義する 4. 核国または国際的な資金に基づく研究開発プロジェクトの開始・調整 5. 専門家の知識プールに対してメンバーがアクセスできるようにする 6. 技術的なサービス、エンジニアリング・コンサルティング、及び建設時の監督の

提供 7. 訓練の提供(原子力発電所向け及びそれ以外の発電所向けの訓練センターがある)

技術支援委員会の下に 12 の技術分野があり(例、運転保守もその一つ)、その下に

合計 50 以上のテーマについて検討が行われている(例、運転保守の中には、保守

管理、保守最適化などのテーマが合計 7 つある)。 各テーマについて、合計 1,700 名の専門家がメンバーから選ばれて、委員会におい

て経験の情報交換を行うほか、会議やワークショップ、その他の会合を開いている。

委員会は合計で 80 あり、その他に 120 のプロジェクトがその時々の要請に応じて

設けられている。委員会の検討はワークグループとして、またプロジェクトの検討

はプロジェクトグループとして実施される。例えば、ガスタービンについて扱うグ

ループでは、40 名ほどの専門家が関連技術について検討している。 2014年には 29件の会合などのイベントがあり、参加者の合計は 3,200名であった。 その他、産業界向けのガイドラインやスタンダードの作成も行う。合計 300 件のガ

イドライン/スタンダードがドイツ語版で作成済みで、うち 100 件以上が英語版で

も出されている。ガイドラインの作成はメンバーからの要請に基づくものである。

作成者は主に当該ワークグループのメンバーが当たり、電力会社などのエキスパー

トなどで構成される。ただし、その使用はメンバーの判断に任される。ほとんどは

規制対応にリンクした強制的なものではない。例外として、洋上風力発電設備の腐

食防護についてのガイドラインは規制でエンドースされた強制的な位置づけの文

書である。 事故などの事象が発生した後にタスクフォースが結成され、その原因究明と対策を

まとめた報告書が作成されることもある。 VGB 発行の各種ガイドラインのリストを受領した。ガイドラインは web サイトで

メンバー向けには割引されて販売されている。

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その他、運転経験情報を集約したデータベースの編集も行っている(例、KISSY、

後述)。 また、メンバーに対するコンサルティング、訓練、ラボ、品質保証、出版などの業

務も行う。 ドイツ国内の原子力発電所の運転員訓練用のシミュレータがあり、そのほか、火力

や水力発電所の運転員訓練用シミュレータもある。 日本の火力原子力技術協会とは類似した機能を有していることから、2006 年以降

両者は協力している。覚書の下で交流を深めていて、VGB の年会には毎回火原協

が参加し、日本では 2 年ごとに技術ワークショップを開催している。

(2)日本側の説明 今回の訪問の背景情報を説明した。 先方からは、法定点検に関して、第 3 者による検査・監査はないのか、検査頻度は

ドイツのそれより少し短いなどといったコメントが出された。特に、ドイツでは第

3 者検査機関として TÜV があり、重要な役割を果たしているとのコメントがあっ

た。

(3)火力発電所の点検にかかわる規制要件 VGB スタンダード「蒸気ボイラー発電所、圧力容器施設、及び高圧水・蒸気配管

の機器に対する状態監視と検査」(VGB-R 506e、2012 年)についての説明があっ

た。 産業安全と保健に係る法令(BetrSichV)15 条において、所有者はハザード評価と

技術的安全評価に基づいて点検期間を定めることが要求されている。そのためのガ

イドラインは、産業安全にかかわる技術規則;TRBS-1111(VGB ガイドライン

R104O「産業安全と保健にかかわる法令の実施ガイドライン」に従うことになる。 従来は、より規範的な規制であったものが、2012 年版ではハザードベースで点検

頻度を決めるような仕組みに変更された。つまり、ハザードのある部分について法

定点検が要請されるというものである。ハザードのある部分は、上記の VGB ガイ

ドラインに従った事業者の評価によって確定されるという仕組みのようである。 点検は、外観点検、内部点検(分解検査)、圧力をかけた強度試験検査の 3 種類が

あり、現状は下記の頻度で検査を実施している。

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表 4-1 ドイツの法定の点検頻度(圧力部分のみ)

外観検査 内部検査 ストレス試験 (水圧試験)

ボイラー 1 3 9 圧力容器 -* / 2 5 10 単純な圧力容器 - 5 10 配管 5 - 5 * 燃焼を伴わない圧力容器は対象外 上記の規制要件がかかわるのは高圧がかかる部分のみである。それ以外の場所の点

検は事業者の独自の判断で行えばよい。 ただし、高圧部分とそれ以外の境界をどこに置くかについては、規制側と事業者側

の判断が食い違う場合が今でも見られることがあるとのことである。規制側はター

ビンを高圧機器として扱おうとするが、事業者はこれに反対している。 ドイツ電力の RWE ではかつてタービン設備を 24 年間一度も開放点検せずに運転

を続けて(簡易な点検のみ実施)、そのあとに新しい設備に交換したという事例が

あったとのことである。 なお、火力事業者の規制機関は連邦政府エネルギー省であるが、許認可の発給は州

政府が行うため、州政府の関与も受ける(原子力発電所と同様の関係である)。 上記 VGB ガイドラインの付録 4 には、RIMAP 手法についての説明もある。この

RIMAP とは、欧州産業界におけるリスクベースの検査及び保守手順(Risk Based Inspection and Maintenance Procedures for European Industry)プロジェクトに

おいて作成されているものである。2000年 10月 4日版が最新で、欧州委員会(EC)

からの指令(Directive)として発行されている。様々な業界において、点検・保守

の方法をリスクベースで行う手法である。リスクは一般には、破損の確率と破損影

響の積で計算されるが、スクリーニングによって単純な定性的手法による評価も含

まれている。(この手法は、信頼性重視保全(RCM)の手法をより定量化したアプ

ローチに相当するといえる。) 付録 6 には、専門家による評価の例が記載されている。これは、最新の状態監視技

術をオプションとして使用することで、点検間隔の延長を達成するというもので、

Frimmersdorf 火力発電所(褐炭、300MW)において、SAP という資産管理ソフ

トに基づいた SAP TS ecm(SAT Technical Supervision equipment condition monitoring)という評価手法が適用された。保守の最適化によって、発電所の稼働

率の向上をもたらしている。 再生エネルギーの増加に伴い、在来火力発電所ではデマンドに応じた起動停止回数

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が当初の想定以上に増えてきている。そのため、サイクル疲労が増加し機器の新た

な故障に至らないかどうかが課題と認識されている。 2014 年にある火力発電所で起きたボイラー水循環ポンプでのクラックと破損の事

象については、タスクフォースを立ち上げて原因究明を行い、VGB メンバーに情

報提供と注意を促すとともに、その対策を報告書にまとめている。

(4)発電所情報システム“Kissy”について KISSY(KraftwerksInformationSSYstem)は、VGB の技術グループの扱うテー

マの一つであるパフォーマンス指標のもとで運営されている発電所情報システム

である。 10 か国(ベルギー、チェコ、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、ラトビ

ア、ポルトガル、南アフリカ、オランダ)の 20 メンバーがそのユーザーである。

原子力発電所(98 基)、石炭(無煙炭)(257 基)、褐炭(84 基)、石油/ガス(214基)、水力(171 基)の合計 821 基がメンバーで、総発電量は 271.2GW である。

メンバーには EDF、E-on、Vattenfall、RWE、Enel など欧州の代表的な電力会社

が含まれている。 メンバーは自社発電所のアベイラビリティ(稼働状況)にかかわるデータとアンア

ベイラビリティ(利用不能状態、計画停止を含む)にかかわる事象に関する情報を

匿名で、所定のフォーマットに従って提出する。データの提出頻度は、原子力発電

所は毎月、火力、水力発電所は年 1 回である。 アンアベイラビリティをもたらす不具合情報については、その事象の時期、事象の

タイプ、影響など必須の 8 項目についてそれぞれ入力様式が定められている。該当

設備には 3 階層で区分される KKS と呼ばれるコード体系が使用される。第 1 層の

区分は、送配電系、変電補助電源系、主要機械系、燃料系などの大区分であり、第

3 階層になってボイラー、発電機といった機器単位の情報が付与される仕組みのよ

うである。 アベイラビリティとアンアベイラビリティにかかわる様々なパフォーマンス指標

の情報が編集され、メンバー用 web サイトからオンラインでユーザーに提供され

る。また年報として報告書も作成されている。各ユーザーは、そのような統計図面

の中で自社の設備がどこに位置づけられるかを認識することができる。 VGB の KISSY 担当者によれば、本システムは米国 EPRI の RCM や PMBD とは

無関係で作成している。むしろ、IAEA が運営する PRIS(原子炉情報システム)

という世界各国の原子力発電所の運転情報システムは意識されているとのこと。

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KISSY によるデータ分析と評価の例: 発電所のアベイラビリティの分析(VGB-TW 103Ve)

図 4-2 アベイラビリティの分析(KISSY)

上の図は、アベイラビリティとアンアベイラビリティに関する分析を示している。

この分析は、プラントのすべてのクラス(技術、名目出力、稼働年数および稼働

時間)に対して毎年実施される。

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発電所のアンベイラビリティの分析(VGB-TW 103Ae)

図 4-3 計画外アンアベイラビリティ事象のタイプ

計画外のアンアベイラビリティに至った事象を分類して示したのが上の図である。

KKS または EMS システムに基づく機器区分の分析によって、弱点が特定できるよ

うになる。この図から、例えば、故障事象(A2)件数は 10 年間で一定であったが(左

図)、その事象が利用不可能となったエネルギーに占める割合は大幅に増加している

ことを示している(右図)。変化した市場条件によって要求される柔軟な運転モード

(例、起動停止回数の増加)とアベイラビリティの間の関係は、特に重要となる。

将来的に KISSY は、機器の信頼性解析によって機器の多重性や保守戦略の評価に役

立てる予定である。

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特別分析(機器のアンアベイラビリティ)

図 4-4 火力発電所のアンアベイラビリティ(計画分、非計画分)の機器別の内訳

特別分析では、VGB の発電所統計に反映された 40 年間の経験を個別に使用する。

この例では、火力発電所の機器の弱点を特定するために、プラント機器当たりのア

ンアベイラビリティの内訳が示されている。これは、調達計画や保全対策の計画策

定に役立つ。分析は、例えば、タイプ、サイズ、稼働時間、運転モードまたは国ご

とに実施することができる。

(出典) https://www.vgb.org/vgbmultimedia/VGBonepagerKISSYENG120916.pdf

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図 4-5 火力発電所のアンアベイラブル時間(計画停止時間と非計画停止停止の関係)

図 4-6 データ収録対象の発電所の数(エネルギー利用クラス(%)別)

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図 4-7 アンアベイラブル電力量と電力取引価格(EEX) の時間変動

(出典) https://www.vgb.org/en/kissye.html (5)保守の最適化に向けた VGB の取り組み 各サイトのマネージャ(保全部門の部長)が年 2 回集合する会合を持っている。30

名ほどが集まり、課題の共有などを行っている。 保守最適化に関するプロジェクトグループ(PGMON:Power Generation

Maintenance Optimization Network (PGMON))では、本店の保守マネージャが年

2 回集合し、保守の最適化関連で自発的にプレゼンを行うほか、いくつかの課題につ

いて話し合いをしている。 PGMON の紹介ページには、各電力会社は競争環境下に入ってはいるものの、事業者

同士が課題を共有することは非常に有益であるとの立場に立ち、各メンバーは運転効

率を維持させながら運転保守費用を削減することを主眼に置いた活動をこのグルー

プ内で行ってきている。https://www.vgb.org/en/pgmon.html 会合に参加した人からのコメントとして、電力各社は電力自由化で、競争環境下には

あるが、産業界として一つの声を規制側に伝えることは重要であり、そのためには、

このような VGB での様々な活動が重要であることが指摘された。そして、事業者間

で(メーカーの関与はなしで)、可能な範囲で良好事例を情報交換してお互いの技術

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力の向上に努めている、といった状況が確認できた。

入手資料 ・ プレゼン資料(VGB 紹介、検査に関する規制、KISSY 説明) ・ KISSY パンフレット ・ VGB パンフレットなど

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4.3 ドイツ LEAG 社

日時:2017 年 1 月 18 日(水)9:30~15:00 場所:LEAG 社 Jänschwalde 発電所情報センター会議室

03185 Peitz (Cottbus から約 20km)

図 4-8 LEAG 社 Jänschwalde 発電所 (出典)https://en.wikipedia.org/wiki/J%C3%A4nschwalde_Power_Station

(1)LEAG 社と発電所の概要 LEAG 社は正式名称が Lausitz Energie Kraftwerke AG で、ドイツ東部では最大のエ

ネルギー会社で、褐炭の生産と生産地近くの 4 か所の褐炭発電所の運転、地域熱供給

などを行っている。 LEAG 社の合計 4 サイトの発電所は、以下のとおりである。

発電所名 容量 発電量(2015 年)

Jänschwalde (A,B,C,D,E,F (500×6) 3,000 MW 20,2 TWh

Schwarze Pumpe(A,B) (800×2) 1,600 MW 11,5 TWh

Boxberg (U&P; Q,R) (500,500,900,675)2,575MW 18,5 TWh

Lippendorf (Block R) 920 MW 5,4TWh

LEAG 社の従業員は合計で 8,000 人、訪問したジャンシュワルデ発電所には 700 名が

勤務している。 LEAG社のオーナーは、エネルギー会社であるEPH社(50%)と投資会社PPH社(50%)

である。EPH 社(正式名称;Energetický a průmyslový holding, a.s.)は、チェコに

本拠を持つ発電、石炭鉱業、発熱業務を行う会社で、チェコのほかに、ドイツ、イタ

リアその他で発電所を操業している。ドイツでは合計 4 か所の火力(褐炭燃料)発電

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所を運転しているが、いずれも 2016 年まで Vattenfall 社が所有・運転していたものを

買収したものである。 Vattenfall 社は、CO2 とは無縁の会社に移行することを目指すため、褐炭発電所の売

却を行ったとのこと。LEAG 社は環境問題のある褐炭発電所の操業に伴うリスクを覚

悟したうえでその購入を判断したとのことである。

訪問したジャンシュワルデ(Jänschwalde)発電所は、ドイツとポーランドの国境にあ

るブランデンブルクの Jänschwalde 村の近くにある褐炭燃料の火力発電所で、合計

3,000MW 容量、6 基の 500MW ユニットで構成されている。これは、ドイツで操業中

の第 3 位の石炭火力(褐炭)発電所である。 発電所は 1976 年から 1989 年の間に建設された比較的古い発電所である。タービンや

発電機は当初ロシア製であったが、ドイツ統一と 1990 年代半ばの間に、近代的な環境

技術が採用され、ドイツ式の改良が加えられ、より高い効率を可能にした。 ただし、WWF(World Wide Fund for Nature:環境グループ)による調査によると、

エネルギー効率と CO2 排出量の比が欧州内で 5 番目に低い発電所とされている。 この発電所では、主に Jänschwalde と Cottbus の近くの露天掘り鉱山からの褐炭を使

用する。発電所までは自社の鉄道を使用して運搬する。 全負荷時に発電所は 1 日に約 8 万トンの褐炭を燃焼させる。褐炭の 1 キログラムから

約 1 キロワット時の電気エネルギーが生産される。 サイト内では 1.5 日分の褐炭を保管している。 年間出力は約 220 億 kWh(22 TWh)。 各号機の出力は 500MW で、 ベースロード運転が基本であるが、近年の風力や太陽光

に対応するため、500MW 出力から 180MW までの範囲で短時間で柔軟に対応できる。 このサイトには、高さ 300 メートル(980 フィート)の古い煙突が 3 つあったが、2002

年から 2007 年にかけて解体された。スペース上の理由から従来の解体工法の適用が不

可能であったため、段階的な工法で徐々に解体された。独特の手順が導入され、煙突

の端を丸めた掘削機を備えた特別な工法によって、煙突を上から 50 メートル(160 フ

ィート)の高さまで破壊した後、残りの煙突は従来の工法で破壊された。 サイトには合計 9 台の冷却塔があり、発電所 2 基あたり 3 台の冷却塔が使用される。

高さ 150m、底部の直径は 90m、上部は 50m の円筒形である。自然循環冷却で大型の

ファンが内部にある。 排ガスは現在、9 台の冷却塔のうちの 6 台から高所放出されている。排ガス中の成分は

制御室で常時モニターされている。最初は 360 度だったものが、放出段階での排ガス

の温度は 60 度 C ほどになっている。パンフレットによれば、排ガス中の二酸化硫黄や

ダストは 95%以上が除去されている。

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同社の 4 サイトには合計 14 機があり、蒸気ボイラーが 22 台、タービンは 36 基、69台の大型ボイラー、144 基の粉砕機、7,100 台のポンプがある。

その他、以下の指標がある。 発電パフォーマンスの測定ポイント 205,000 点 寿命管理している機器 60,000 法定点検が必要な機器 14,000 KKS(機器タイプ;VGB で議論されたもの) 1,000,000

ジャンシュワルデ発電所の設備構成と諸元は以下のとおりである。

図 4-9 ジャンシュワルデ発電所の設備構成

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表 4-2 ジャンシュワルデ発電所の設備の諸元

(出典)

https://www.leag.de/fileadmin/user_upload/pdf-en/fb_kw_jaewa_10seiter_engl_2013.pdf

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-REPORT ahlen. Date

図 4-10 ドイツの発電量とその構成の変遷(2015 年) http://www.eia.gov/todayinenergy/

(2)日本側の背景説明 VGB での説明と同様に、今回の訪問の背景情報を説明した。その後、日本の状況

に関する質疑応答と、今回の訪問の意図に関する確認を行った。

(3)LEAG 社の保守最適化の取り組み 保守最適化に関する先方の取り組み状況は以下のとおりである。 2012 年に 1 年間かけて保守の最適化検討を行い、保守の見直しを実施した。その

目的は保守コストの低減である。 そこで利用した手法は、プラグラマティック RCM と呼ばれる同社独自に開発した

簡易 RCM 手法である。 通常の FMEA は手間がかかるため採用せず、ワークショップ形式で所内の専門家

が、所定の質問をチェックしその重要性を判断する仕組みである。その際には故障

の起こりやすさと影響を考慮したリスクマトリックスを使用する。このリスクマト

リックスはオランダの専門家が考案したものを自社でカスタマイズした。 故障の可能性や影響を評価する際には、過去 3 年分の不具合データを分析したほか、

VGB の KISSY データベースも利用している。 保全タスクは、ワークショップ形式で検討を行う。保全コストの低減が主眼である

ため、現状の保全に比べてその合理化の余地がないか、例えば頻度の延長が可能か

どうかを、それを変更した場合に想定されるリスクの変動の程度を評価することで

その可能性を関係者で検討する方法である。その際には、資産管理パッケージソフ

トである SAP システムにある現状の保全履歴がレビューされる。

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ワークショップは設備単位で行われるが、各発電所から最低 2 名、4 サイトで合計

8~12 名の専門家が集まる。2 週間ごとに、各 2 日間かけて検討を行う。6 週間前

から準備を行い、保全プログラムを変更した後も、定期的(2,3 年ごと)にその

結果をフォローしその変更に妥当性を確認する。 年間保守費用と保全の程度との相関を考慮し、両者のバランスが最適化されるポイ

ントで最適な保守を行うように保全のタスクとその頻度を設定している。頻度の設

定は自社の経験とメーカー(OEM:Original Equipment Manufacturer)推奨の

両者を考慮する。 1 年間かけて LEAG 社所有全 14 機の全系統を対象にした評価を行った。ただし、

法定で要求される設備(高圧部分;合計 14,000)は評価の対象外である。 評価の結果、保全費用は約 10%の低減効果が出ている。これによって、かけた労力

を見てもコスト効果的であったとみている。例えば、高圧タービンの分解点検は以

前は 12 年毎であったものを 16 年に延長した。 自社職員が中心であるが、コンサルタントをモデレータの役割として使用した。

予防保全は時間計画保全と状態監視保全の組み合わせである。状態監視には、振動

と潤滑油分析を使用している。主に回転機器が対象である。 タービンなどの大型機器にはオンラインモニタリングも実施している。ただし、サ

イト内での監視のみで、本社(フリート)モニタリングは実施していない。 サーモグラフィーは予防保全目的では使用しておらず、トラブル対応などに限定さ

れる。 GE 社のスマートシグナルのような高度な予兆監視技術は採用していない。予兆監

視は人間系による評価に限定される。 ライフタイムモニタリングプログラムものとで、いくつかの重要機器については、

運転開始からの機器の稼働時間総計、圧力、温度などの履歴をチェックし、長期の

寿命管理をしている。 米国 EPRI の RCM や PMBD は見ていない。むしろ VGB の活動を見ていて、それ

で十分との認識である。VGB で紹介のあった保守管理関係のワークグループにも

積極的に参加している。 米国の SOLOMON という会社を以前に一度利用したことがある。欧米の発電所情

報を把握しているという強味がある。 (これは、HSB Solomon Associates LLC (Solomon)という会社と思われる。エネ

ルギー業界向けにパフォーマンス向上のためにベンチマークを行うとの会社紹介

がある。また、信頼性重視保全(RCM)関係の解析として、Plant Reliability and Maintenance Effectiveness (RAM Study)を実施しているとの紹介がある。)

所有者がバッテンフォール社から LEAG 社に変わったが、保全方策の合理化検討

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はその変更に影響されたものではない。あくまでも保守コストの低減が目的である。 保守合理化の評価手法は同社独自に考案した手法である。ドイツ内の他の電力でど

のような手法を採用しているかは知らない。 同席していただいた VGB のグリンメルトさんの見解によれば、EnBW 社は LEAG

社とは異なる簡略化 RCM 手法の一つを利用しているようである。RWE 社もやは

り褐炭発電所向けのコスト低減方策を行っているが、手法までは不明。バッテンフ

ォール社は自社の経験に基づいた評価をしているようである。VGB で説明のあっ

た RiMAP 手法はアカデミックすぎて、あまり採用はされていないようである。

(4)発電所見学 構内の設備について説明を受けた後、6 号機の内部を見学した。タービン建屋、制

御室など。 6 号機には、2 年ほど前に新しいマイクロプラズマバーナーが 8 台、追加設置され

ている。これは、近年の低出力デマンドに対応するための設備で、100MW 程度の

出力を発揮できるように設計されている。 2 基で共通の制御室があり、室内には合計 3 名が勤務していた。1 名が各 1 基を担

当する仕組み。3 シフト、5 チームの体制である。 各機器には ID 番号のタグが付いていて、KKS 番号も ID 番号の一部に使われてい

る。例えば、AA は弁、BR はチューブといった記号が使われている。図の場合、F 2HJE40 AA522 という番号である。

図 4-11 機器の ID 番号を付したタグ(KKS 番号)

入手資料 ・ プレゼン資料(Maintenance Performance Management, Lausitz Energie Kraftwerke

AG, LEAG) ・ LEAG 社パンフレット

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4.4 フィンランド Fortum 社

日時:2017 年 1 月 20 日(金)10:00~16:00 場所:Fortum Power and Heat Oy

Piispanportti 10, Espoo, P.O. Box 100, FI-00048 FORTUM, Finland

(1)Fortum 社の紹介 フォータム(フィンランド語: Fortum)はフィンランドの電気事業企業で、北欧諸国、

バルト諸国、ポーランド、北西ロシアといった主要なサービス区域に対して、発電と

地域熱供給の事業のほかに、エンジニアリング・コンサルティングサービスを提供し

ている。フィンランドのほか、スウェーデン、ロシア、ポーランドなど合計 9 か国に

会社があり、本社所在地は、フィンランドのエスポーである。 従業員数は総数が約 8,000 名で、フィンランド国内の従業員数は約 2,000 名。なお最

近、アウトソースを進めていて、300 名ほどが他社(子会社ではない)に移った。これ

は、この 2 年ほど、電力自由化のもとで競争が強化し電気料金が下がり、収益が減っ

ていることの影響のようである。売り上げは、60 億ユーロだったものがこの 2 年ほど

で 35 億ユーロに、利益も 18 億ユーロが 8 億ユーロに下がってきている。 設立は 1998 年。フィンランドの国営電力(Imatran Voima:IVO)とネステ石油の合

併で設立された。2005 年にネステの資産は別の上場企業として分離された。資本の

50.8%は国営である。

表 4-3 Fortum 社の発電容量と熱供給能力 (Fortum's power generation capacity, 31 December 2015)

MW Finland Sweden Russia Poland Other Total

水力 1,535 3,088 - - - 4,623

原子力 1,465 1,539 - - - 3,004

熱電併給 438 0 4,903 197 93 5,631

復水式 376 12 - - - 389

その他 - 30 - - 15 45

合計 3,815 4,669 4,903 197 108 13,692

熱生産能力(Fortum's heat production capacity, 31 December 2015:)

MW Finland Sweden Russia Poland Other Total

Heat 1,974 0 12,696 1,129 812 16,611

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フィンランド国内の主な火力発電所には、以下のものがある。地域暖房と発電を兼ね

る熱電併給施設であり、いずれも都市の近くに設置されている。主に石炭やガスが燃

料であるが、近年はバイオマスや廃棄物発電も手掛けている。

表 4-4 Fortum 社の火力発電所

Meri-Pori condensing power plant

Naantali CHP plant Suomenoja CHP plant

Condensing power Combined heat and power(CHP)

Combined heat and power(CHP)

運転開始:1994 年 1960 年 6 機、1977 年とそれ以降 電気出力:565MW 256 MW 350 MW 熱・蒸気容量: 350 MW + 80

MW 熱容量: 600 MW

石炭燃料 石炭燃料 石炭、天然ガス http://www.fortum.com/en/corporation/fortumworldwide/finland/Pages/default.aspx 同社の 2015 年の発電量の総量は 771TWh、その内訳は、水力発電所が全体の 32%、

天然ガスが 31%、原子力が 30%、石炭が 4%、バイオマスが 2%、廃棄物が 1%であ

る。フィンランド国内では、水力、原子力、熱供給発電、復水式発電所がある。 CO2 を出さない発電を目指していて、現在の発電量の 64%はカーボンフリーである。 発電や熱併給の主たる業務のほかに、発電事業者としての自社の経験をベースに、ま

た独自の研究開発業務も行うことで、欧州内外の自社設備以外の発電設備に対してコ

ンサルティングやエンジニアリングの業務も行っている点がユニークである。 フィンランドの電力は自由化されているが、地域熱供給は規制環境下(電気料金は固

定式)にある。 訪問相手の Power Solutions 部門では、200 名ほどの職員が自社及び自社以外の事業者

に対して運転保守分野を中心としたサービス業務を実施している。数年前までは倍ほ

どの人数がいたが、いくつかの大きな顧客が自立して自社中心の運転保守体制に移行

するなどして、大きな契約がいくつか終了したため、人数も以前の半数ほどに低下し

ている。 業務としては、自社向けとそれ以外とで半々程度とのことである。 火力発電所向けの業務実績は、下記のサイトで紹介がある。

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Page 80: 平成 28年度電気施設保安制度等検討調査 (信頼性 …経済産業省商務流通保安グループ 電力安全課 殿 平成28年度電気施設保安制度等検討調査

http://www.fortum.com/SiteCollectionDocuments/Products%20and%20services/References/Multiple-TOPi-projects_Suomenoja.pdf

サービス業務の特徴は、自社での運転保守の経験に基づくノウハウがあることである。

そのため、メーカーとは違ったユーザーサイドの立場で自社設備のネットワークを生

かしたサービスができる。 サービス分野は、水力、火力、原子力などがあり、エンジニアリング、調達、建設、

運転保守など幅広い分野をカバーしている。保守の高度化もそのメニューの一つであ

る。また、顧客施設の監査を行う業務も実施している。 IT システムの開発や販売も行っている。これは、自社での開発あるいは利用経験を生

かしたもので、他社ソフトのカスタマイズ版や自社開発ソフトとして、社内利用の他

に他社に販売も行っている。 保守管理の分野では、信頼性重視保全(RCM)の考え方をベースにした保全の高度化

を進めるための ReMaint®というソフトを開発している。また、IT システムとしては

保守管理の分野で有効なツールとして IBM 開発の MAXIMO というパッケージを独自

改良して提供している。これ以外にも、ライフサイクルコスト管理のツール、アベイ

ラビリティ管理のツールなどを扱っている。 資産管理ツールでは一般に SAP が有名ではあるが、会計や人事など幅広い分野を扱っ

ている。これに対して、MAXIMO は保守管理システムに向いているとの見解である。

もちろん、他社の顧客に対してサービスをする場合は、顧客の所有する IT システムを

利用する場合もある。 (2)保守高度化の状況と保守高度化支援ツール ReMaint®について 点検について法定で決められるのは重要機器の高圧部分のみで、その頻度は 6~8 年で

ある(ドイツの法規制と類似)。それ以外は自社判断で決めることができる。ただし、

保険上の要求事項を反映するのは重要であり、重要設備については保険会社とも話し

合って点検頻度を決めることもある。 多くの設備は 12~18 か月の頻度で、外観目視点検を行う。 保守コストの低減に向けたサポートを社内外の設備に対して実施しており、RCM の考

え方に近いツール ReMaint®を独自開発している。 この評価ツールは、2000 年頃にフィンランドのロビーサ原子力発電所向けに開発した

手法が基本となっている。現在は、自社の発電所に適用したほかに、他社の発電所向

けにこのツールを利用した保守高度化のコンサルティング・サービスを展開している。 ベテラン保守技術者の減少などを背景に、保守の高度化の必要性が認識され、本ツー

ルが開発された。自社の原子力発電所技術者中心で当初の開発が行われ、在来火力向

けに改良・標準化されたツールといえる。

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標準的な RCM のアプローチに比べると、以下の点がユニークな手法である。 クリティカリティ解析を最初に行うことで、詳細な解析が必要な機器を限定する。最

初のクリティカリティ解析で非重要と判断された機器は、基本的には事後保全あるい

は簡単な保守のみを行うことで、その後の詳細な解析には進まない。解析の単位は、

配管・計装図(P&ID)に表記される機器の単位で行う。 重要と判断された機器については、詳細なレベルの FMEA を行う。故障モードと故障

影響の解析は、それぞれの大きさを半定量的に評価し、両者を 2 次元のリスクマトリ

ックス上で表現し重要度を判定するという手法である。故障確率は自社の経験を主に

使用する(通常は MAXIMO に登録されているデータを利用する)。FMEA の評価シー

トは、通常よくあるシート(RCM の教科書などに記載されるもの)に少しコラムを追

加修正したものである。 クリティカリティ(CA)は通常は、1,2,3 の 3 段階で区分される(発電所のニーズ

に合わせて 4 段階に区分するケースもある)。そして区分ごとに予防保全のレベルを使

い分ける。例えば、CA-1 に対しては、時間計画保全(分解点検)と状態監視保全(CBM)

を組み合わせた適用を、CA-2 に対しては TBM または CBM のいずれかの適用を(多

重性などを見て)判断し、CA-3 については非重要として事後保全またはシンプルな(故

障した場合の補修や取り換えに伴う費用から見てコスト効果的な)保全を適用すると

いったルールである。 さらに保守タスクについては、機器タイプごとに、上記の重要度分類ごとに推奨保全

をリスト化している。これは、米国 EPRI の保守テンプレートに類似したものと思わ

れた。電気モータの場合を例にした説明があった。 この解析は通常、ファシリテータ(FORTUM 社から派遣される)による指導のもと、

発電所の関係者数名が話し合うことで行う。解析チームには電気、機械、計装などの

保守部門や運転部門の専門家各 1 名、そして意思決定者 1 名を含めて合計で 5~6 名ほ

どが参加する。ある発電所の場合は、ベテランのエンジニアのほかに、若い人も参加

し、技術伝承を兼ねていた。話し合いで決めるにしても最終判断を下す意思決定者が

加わることが重要とのことである この評価手法は自社独自に開発された。すべての機器について FMEA を行うのは手間

がかかりすぎて現実的ではないとの判断で、重要機器をあらかじめスクリーニングし、

重要設備についてのみ詳細な検討を行うという、簡略化プロセスを考案した。ロビー

サ原子力で開発した手法を、在来火力向けに変換して今の手法が出来上がった。 いったん保全プログラムを定めた後は、運転経験を反映して見直しを図る。そのため

には、キーパフォーマンス指標(KPI)を定め、監視することが重要である。また、

MAXIMO のような IT ツールの利用も推奨される。 フォータム社では自社推奨 KPI と MAXIMO の利用が進められるが、国ごとの規制の

違いや IT ツールの利用にも差があるので、その点は柔軟に対応できる仕組みを構築す

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ることになる。 解析には数か月かかる。自社または他社発電所での本手法の適用経験のいずれにおい

ても、かけたコストに比べて、得られる利益は大きいとの結果が得られている。なお、

同社では、このような評価によって OM コストを 10%ほど下げることを意図している。 ドイツ VGB で説明のあった KISSY という信頼性データのことは知っているが、同社

はこれには参加していない。自社の運転経験データを提供することを考えると、得ら

れるメリットが小さいとの会社判断があったようである。 EPRI の RCM や PMBD についての言及はなかったが、内容的には簡略化 RCM 手法

の考え方を採用していて、保守テンプレートを含め、EPRI の評価手法とも共通した要

素が多いと思われた。 なお、ロビーサでの開発経験が国際会議でなされたことがあったかもしれないが、

ReMaint®については、公開情報は出ているかは不明とのことであった。 Fortum 社の web サイトには、ReMaint®について簡単な紹介があった。

http://apps.fortum.fi/nuclearservices/ReMaint_Nuclear-2017-09_01_2pages.pdf 発電所の保守タスクは、基本的には最初はメーカーの推奨を重視して最初は決められ

るが、運転経験とともに見直すことになる。これは機器の重要度にはあまり関係ない。 パフォーマンスを見ながら回していく問題解決の仕組みは、トヨタの改善方式に倣っ

ているとのこと。 重要度のカテゴリー別の機器の区分けは、ある発電所の例では以下のようになってい

る。他社においても、これと大きな差はない。: クリティカリティ 1:~ 6% クリティカリティ 2:~ 27% クリティカリティ 3:~ 67%

保全分野の用語については、EU の下記のスタンダードがある。MAXIMO ではこれを

反映している。また、KPI のスタンダードもある。 EN 13306:2010, Maintenance Terminology EN 15341:2007, Maintenance Key Performance Indicators http://www.cen.eu/

入手資料 ・ This is Fortum ・ Maintenance Planning and Engineering, Vesa Tanttari/ 9.1.2017 ・ Lifecycle Management and Risk Based Inspection, Fortum Power Solutions, Ulla

McNiven, 12 April 2016 ・ Power Solutions, Success through a shared perspective

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4.5 文献調査の結果

フランス、イタリア、アイルランドの火力発電所における保守高度化の取り組みについて、

文献調査した結果を以下にまとめた。 フランス電力会社(EDF)では、EPRI の RCM 手法を利用した評価が原子力発電所のみ

ならず火力発電所に対しても適用されている。イタリアの電力会社では米国 EPRI とコン

サル会社(ERIN 社)の支援を受けて、効率化 RCM 手法が採用されている。アイルランド

の電力会社(ESB 社)においても発電所の建設段階で RCM 手法が利用されている。

4.5.1 フランス電力(EDF)の火力発電所への RCM 適用

フランス電力(EDF)では 1990 年に米国電力業界での RCM の経験をレビューしたうえ

で、EPRI の RCM 手法を習得し、自社の原子力発電所への RCM の適用を開始した。その

後は同社の経験を活かして、以下のように火力発電所その他への適用を進めてきている。 ・ 原子力発電所では、高い安全性を維持した上で、保守の費用を低減しかつ稼働率を制

御できることを主眼として、既存の予防保全プログラムを改良するために RCM を適

用した。系統レベルの FMEA(故障モード影響解析)と機器レベルの FMECA(故障

モード影響クリティカリティ解析)、そしてロジックツリーによる標準手法をベースに

したが、安全上重要な部分については、重要度の判断の際に炉心損傷頻度に占めるリ

スク重要度の定量的指標を採用した。全 58 基の発電所の多くの系統に対して適用が

なされた。設計が標準化されているため、ある程度詳細な解析をしても、その結果が

多数の発電所系統機器に適用できるという特徴がある。 ・ ガスタービンに対しては、最初の保全プログラムを作成するために、RCM を適用し

た。 ・ 石炭・石油火力発電所に対しても、新たな負荷追従型運転モードへの対応に向けて

RCM の適用がなされ、その結果、運転条件の変更に従って予防保全を見直すことが

できた。 ・ 静機器つまり配管部分に対しては、RCM とは別のリスクベースのアプローチを原子

力発電所その他に適用した。 ・ 上記の経験から結果的に、状態監視保全の利用が進み、予備品の必要性の評価にも適

用がなされた。

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図 4-12 フランス EDF の RCM 解析プロセス

ガスタービンへの適用においては、1996 年と 97 年に操業を開始した 2 基のガスタービン

(各 123MW)に対して、その建設前の 1994 年に RCM を適用した。その際にはメーカー

の推奨があったが、保全タスクの数は十分ではなく、EDF の運転条件に適したものではな

いと判断されたため、RCM を使って新たに保全プログラムを作成することになった。 原子力のように多数のユニットに適用するものではないため、原子力の場合の RCM 解析

手法とは少し異なるアプローチを採用した。つまり、よりシンプルな方法が採用され、運

転経験情報が少ないために専門家の意見を多用した。 石炭火力発電所は、1980 年代当初はベースロード運転に使用されていたが、その後は負

荷追従型の運転様式に変更された。現在は、電力が必要な際に直ちに稼働し、kWh あたり

の発電費用を競争力のあるものとすることに運転の目的が変更されている(保全費用は全

発電費用の約半分を占める)。そのため、RCM を適用して、当初の保全プログラムを見直

し、新たな運転モードにふさわしい予防保全が検討された。本検討は発電所の職員によっ

て実施された。運転に関連して重要な系統を優先的に検討した。 解析手法は原子力用 RCM の変形である。機能解析は系統レベルで行い、機器レベルでは

グループ化して機能解析を実施した。そして重要な機能を果たす機器に対して詳細な

FMECA(故障モード影響クリティカリティ解析)が実施された。故障の重要度評価におい

ては、起動回数の増加と環境上の制約を考慮に入れた。ボイラーについては、配管、チュ

ーブ、サポートなどの静機器で多くが構成されるため、劣化メカニズムに注目した検討を

行った。一つのプラントの結果を他のプラントにできるだけ再利用きる方法が考案された。

資料 Power RCM, A Survey of Reliability Centred Maintenance Applications in Power

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Plants, Maintenance & Asset Management Journal, Vol.15, No.5, December 2000, Antoine Despujols, Electricite de France

4.5.2 イタリア ENEL 社の火力発電所への RCM 適用

イタリアの ENEL 社は、国内に約 60 基の火力発電所を運転していて、その発電容量は

37,000MW を超える。 同社は 1990 年代に、火力発電所向けの RCM のパイロットスタディを実施し、その結果

を 1996 年の EPRI の会議で発表している。対象となった発電所は、La Casella 火力発電所

(各 320 MW、4 基、石油燃料)である。解析は、米国 EPRI との契約のもとで米国 ERIN社の支援を受けて、同社開発の SRCM 手法であるプラント保守最適化(PMO : Plant Maintenance Optimization)手法が採用された。解析は、EPRI の指導を受けて発電所の

職員で構成されるチームが実施した。このパイロットスタディの目的は以下の通りである。 ・ EPRI で開発された効率化 RCM(SRCM: streamlined RCM)手法が同社の発電所に

適切に適用できるか判断する。 ・ RCM 解析による効果がどの程度なのかを評価する。 第 1 段階では、対象発電所の復水・給水系を対象にして、解析手法の訓練を受けながら実

施した。第 2 段階では、5 つの系統(ベント・ドレン・化学物質添加系、ボイラー起動系、

ボイラー補助系、ブローコンプレッサ系、空気・燃焼排ガス系)に拡大して適用した。他

の発電所への適用を目指して、他の発電所からの職員も解析チームに加わった。 PMO 解析は以下の 4 ステップからなる。 1.系統機能の確認 2.系統機能の機能故障モードの評価 3.故障とその影響から見た重要度の評価 4.重要な機能故障に対処するために効果的で適用可能な保守タスクの選定 解析の結果は、他の発電所で見られているのと同様、SRCM 解析の有効性が確認できた。

つまり、以下の通りである。 ・ PMO 手法は火力発電所に対して適切に適用可能である。 ・ SRCM アプローチによって、解析結果の品質を下げることなく、RCM 解析を行うた

めの時間を大幅に低減できた。 ・ PMO は最適な保全プログラム策定のために効果的である。 ・ 本解析によって得られた保全プログラムは、重要性の判断基準や保守履歴の変更があ

っても、容易に更新することが可能である。

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(資料) Results of the plant maintenance optimization (PMO) pilot-project at an ENEL Fossil Power Plant, Proceedings: 1996 EPRI fossil plant maintenance conference; 677 p, July 1996 4.5.3 アイルランド ESB 社の Poolberg CCGT 発電所への RCM 適用

アイルランドの電力会社である ESB 社(Electricity Supply Board of Ireland)は、

4,000MW の設備容量を持ち、最近は毎年 4%の成長を遂げている会社である。その電力需

要にこたえるためにコスト効果的な発電所として、コンバインドサイクルガスタービン

(CCGT)発電所をダブリン近くの Poolbeg に建設することを決定した。新設の段階で RCMを適用して保全方式を決めることとした。その理由は、いくつかのパイロットプロジェク

トで RCM の有効性を確認していたためである。 ガスタービンはビッドの結果、ドイツのシーメンス社の 150MW V94.2 と契約することが

決定された。直後から ESB 社はシーメンス社幹部と面談し、RCM の概念を説明し、同社

の関与が必要なレベルを相談した。解析の対象は 17 の系統に区分され、各系統単位ごとに

(シーメンス社職員を含めて)8 名が解析チームとして指名された。3.5 時間の会合が毎日

2 回、週 5 日間開催された。各会合の結果は、ファシリテータによって情報シートと決定ワ

ークシートとして整理された。また、平均して、各系統テーマごとに 20 件以上の技術的な

質問がシーメンス社に提出され、同社が回答した。その結果、大部分は時間基準の保全タ

スクが最終決定され、同社の計算機保守管理システムに登録された。 この経験の結果、ESB 社では通常の訓練コースよりも深いレベルでの発電所の理解が深

まった。また、想定していた保守プログラムと本解析の結果は大差なかったものの、他の

発電所に比べると計画外の保守費用は大幅に低下するであろうと予想された。計画外のア

ンアベイラビリティと計画外の送電切り離しは重い罰則が科されるため、これらを最小化

することは本検討の大きな目的であった。 RCM によって、正確で、他者によっても理解が容易な総合的な運転保守手順が出来上が

った。RCM の訓練は標準的な訓練よりもより総合的なものであった。運転保守の手順のベ

ースとなったロジックは、広範なものでしかも文書化されることになった。そのため、診

断世のツールとしても利用が可能で、将来の改造のベースとしても新しい職員の訓練に活

用できるとみている。 ESB社では、RCMによってコスト効果的な間隔で適切な運転保守が可能となり、そして、

発電所の長期パフォーマンスの向上をもたらすことになると期待している。 (資料)

Reliability centered maintenance minimizes costs and maximizes plant availability, 05/01/1997, Power Engineering International

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5.国内の関係各者・有識者へのヒアリング等の実施 信頼性重視保全の現状や課題、それらの解決に向けた議論に資するため、国内の関係各

者・有識者(各回1名程度)を招いたヒアリング会(セミナー形式)を経済産業省会議室)

で 9 回実施した。各ヒアリング会の開催日時、テーマ、講師を表 5-1 にまとめる。

表 5-1 実施したヒアリング会 日時 テーマ 講師 1 2016年 12月2日 ・信頼性重視(RCM)の経緯

・米電力研究所(EPRI)における

RCM の取組概要

日本エヌ・ユー・エス株式会社

伊藤邦雄 ファンディール株式会社 菊

地徹氏 2 2016年 12月8日 ・PM テンプレートと本事業にお

ける検討内容 ファンディール株式会社 菊

地徹氏 3 2016 年 12 月 13

日 ・信頼性重視保全(RCM)の手法 ・RCM の開発経緯と諸分野での適

用状況

有限会社プラントアルファ

菅伸介氏

4 2016 年 12 月 27日

・火力発電の最新設備の動向につ

いて 株式会社三菱日立パワーシス

テムズ(MHPS) 小泉純氏、

石井弘実氏、潮崎成宏氏 5 2017年 1月 12日 ・RCM の適用拡大と保全プログラ

ムの発展 ファンディール株式会社 菊

地徹氏 6 2017年 1月 17日 ・規格の国際標準化について(そ

の 1) 一般財団法人日本規格協会

千葉祐介氏 7 2017年 1月 19日 ・規格の国際標準化について(そ

の 2) 一般財団法人日本規格協会

千葉祐介氏 8 2017年 1月 24日 ・信頼性工学の基礎とネットワー

クの信頼性評価 長岡技術科学大学システム安

全工学専攻 福田隆文教授 9 2017年 3月 14日 ・欧米における RCM の活用状況

~欧米火力発電事業者訪問調査~ 日本エヌ・ユー・エス株式会社

安部裕一 表 5-1 に示すようなテーマで 9 回のセミナー形式のヒアリング会を行ったが、信頼性重視

保全(RCM)とは何か、どのようなメリットがあるのか、国際的に標準的な手法とはどの

ようなものか、欧米では RCM がどのように活用されているのか、といった国内火力発電の

保全の今後を考えるにあたって、役立つと思われるものを選んでいる。以下、それぞれの

ヒアリング会の概要をまとめる。また、ヒアリング会の開催案内を付録 2 として添付する。

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第 1 回ヒアリング会 日時:2016 年 12 月 2 日(金)9:00~11:00 場所:経済産業省別館 301 会議室 テーマ: ・ 信頼性重視保全(RCM)の経緯 ・ 米電力研究所(EPRI)における RCM の取組概要 内容:先進的に導入が進んでいる米国の RCM 導入状況について、その全体像を理解する

ために、EPRI が中心となり米国の電力会社に RCM が導入されてきた経緯について基本的

な内容の説明が行われた。その後、EPRI が開発し会員向けサービスとして提供し、米国の

火力発電所でも活用されている予防保全基盤データベース(PMBD:Preventive Maintenance Basis Database)の概要とそこにいたる経緯の説明もあった。 米国の状況は現状に至る背景、電力業界外の活用状況、日本での RCM の状況や PMBD の

利用状況などについて質疑応答が行われた。 第 2 回ヒアリング会 日時: 2016 年 12 月 8 日(木)15:00~17:00 場所: 経済産業省別館 302 会議室 テーマ: ・ PM テンプレートと本事業における検討内容 内容:EPRI が提供している PMBD(予防保全基盤データベース)のデータフォーマット

である PM テンプレートについて、それがどのようなプロセス、どのような参加者で作成

されているかについて、米国で標準化されている「専門家パネルワークショップ」の説明

が行われた。続いて、その PM テンプレートを集約・整理して構築されている PMBD の活

用事例、米国の RCM を活用した保全プログラムを支える人材基盤について説明が行われた。

また、この PM テンプレートの日本版を作成できるかどうかという検討についての説明も

行っている。 PM テンプレート作成の基準やデータの整理手法、国際基準化などについて活発な質疑応

答が行われた。 第 3 回ヒアリング会 日時: 2016 年 12 月 13 日(火)16:00~18:00 場所: 経済産業省別館 302 会議室 内容:リスクベースの手法である信頼性重視保全(RCM)の考え方と解析手順について、

そのベースとなる FMEA(Failre Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)の基

本的な考え方も含め、具体的な例を挙げながら説明が行われた。続いて、RCM 手法の開発

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経緯と関連する標準文書について説明が行われ、最後に国内外の諸産業における RCM の適

用事例についての説明が行われた。 ISO55001 などのリスクマネジメントの要求事項に基づき海外では RCM などの普及が促

されている面があるなど、実際の RCM の活用状況等について活発な質疑応答が行われた。 第 4 回ヒアリング会 日時: 2016 年 12 月 27 日(火)10:00~12:00 場所: 経済産業省別館 301 会議室 内容:石炭火力(コンベンショナル)、石炭ガス化複合発電(IGCC)、大型ガスタービン

コンバインドサイクルという火力発電技術について、その最新動向をそれらの製造メーカ

ーでもある株式会社三菱日立パワーシステムズ(MHPS)から、それぞれの技術の専門家

の方 3 名に、各技術の内容や動向について説明を行ってもらった。 石炭火力発電技術の輸出に関する OECD のガイドラインも問題など、気候変動問題等環

境問題を中心に活発な質疑応答が行われた。 第 5 回ヒアリング会 日時: 2017 年 1 月 12 日(木)10:00~12:00 場所: 経済産業省別館 301 会議室 内容:RCM の適用拡大と保全プログラムの発展というテーマで、RCM プログラム、予知

保全(PdM)プログラム、作業管理(WM)プログラムの 3 つを統合した新たな PM プロ

グラム、RCM の系統監視プログラム、長期保全プログラム、ライフサイクル管理プログラ

ムへの応用拡大、スマート機器および設備診断への適用と遠隔設備監視の拡大、フリート

モニタリングへという、保守に関する米国の最新の動きについて説明があった。 米国の最新の保守プログラムやその応用事例、日本の現状との違いや導入可能性等につい

て、活発な質疑応答が行われた。 第 6 回ヒアリング会及び第 7 回ヒアリング会 日時: 2017 年 1 月 17 日(火)14:00 ~16:00

2017 年 1 月 19 日(木)10:00~12:00 場所:経済産業省 301 会議室 内容:「規格の国際標準化について」というテーマで、ISO/IEC などの国際規格がなぜ重

視されるのか、国際規格はどこで作られるのか、日本はどのように国際規格に対応してい

るのか、そして国際規格はどうやって作っていのか、といった疑問に対する答えが学べる

講義が 2 回にわたって実施された。規格の標準化の基礎や WTO/TBT 協定の概要などを紹

介しながら、国際規格の重要性などについて述べられる「標準化概論」、ISO 規格の構成と

作成、ISO 規格開発に携わる組織と人、ISO 規格開発の手順、国際会議対応等について述

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べられる「規格開発のルール」、ISO 規格を作る現場である国際会議への対応方法、特許を

含む規格への対応、ISO 等の国際規格にとって重要な概念について述べられる「特許や懐

疑論」、適合性評価の概論、適合性評価の俯瞰図、適合性評価の利用と効用、国・地域ごと

の状況と、適合性評価に関する話が述べられる「適合性評価の全体像」の 4 つの講義が行

われた。 商品・サービスを国際展開する際に極めて重要となる国際規格について、JIS との違いや

策定プロセス、第三者認証などに関するところで活発な議論が行われた。 第 8 回ヒアリング会 日時: 2017 年 1 月 24 日(火)10:00~12:00 場所: 経済産業省別館 301 会議室 内容:RCM の技術的ベースにある信頼性工学について基礎から学ぶということで、人の

寿命分布を題材とした概念の説明、信頼度関数、故障率関数、バスタブ曲線、MTTF など

の専門用語の開設、直列回路と並列回路における信頼性の違い、複雑なシステムの信頼性、

ネットワークの信頼性について、具体例を挙げ、丁寧な解説が行われた。また、信頼性工

学に関する近年の研究についても説明が行われた。 国内の化学プラントにおけるRBI/RBMの導入状況や点検頻度とヒューマンエラーの関係

などについて質疑応答が行われた。 第 9 回ヒアリング会 日時: 2017 年 3 月 14 日(火)10:00~12:00 場所: 経済産業省別館 120 会議室 内容:本調査において、欧州のドイツとフィンランドの火力発電事業者及び電気事業の業

界団体、米国の火力発電事業者と研究機関に対し、RCM の実施状況等を調べるために実施

した訪問調査の成果、その調査結果に基づく、欧米と日本の保守の違い、今後日本に RCMを導入する際の課題等についての考察などについて報告を行った。 欧米の RCM で利用されている VGB の KISSY や EPRI の PMBD に関する話、電気事業

者同士の情報交換プラットフォームなど、主に日本にない状況について活発な質疑が行わ

れた。 火力発電所の保守における RCM の活用という視点を中心に、欧米の RCM の開発の歴史

から活用が広がっていく経緯、そして最新動向に関する内容、火力発電所の最新設備に関

する内容、インフラ輸出などに関わってくる国際規格に関する内容について、各種専門家

の方々に講演してもらい、国内火力における RCM の活用を考える際に役立つ多くの知見を

得ることができた。

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6.我が国に適した信頼性重視保全のフォーマット案の作成と評価 上記の調査を踏まえ、我が国の火力発電事業者による活用を想定したフォーマット案の作

成と評価を行った。その際には、これまで十分に保全に取り組んできた火力発電事業者の

知見も活用し、より実態に近いものを作るものとした。なお、火力発電事業者の知見を活

用するに当たっては、実際に活用する場合にどのような効果及び課題があるのかについて

も調査するものとした。本業務の実施に際しては、電力安全課殿と事前に調整の上、国内

の火力発電事業者と再委託契約を行い上記の検討への協力を得た。 今回協力を得た火力事業者においては、RCM 適用の検討が行われた経緯があるが、いわ

ゆるフルスコープでの実施には至っていない。この主な理由は、欧米のように RCM を実用

化するための簡略化手法が開発されなかったためと考えられるが、一方で、米国の PM テ

ンプレートと同様な機器タイプ別の PM 基準を設定しこれを活用している。 今回、長年火力プラントの保全に従事し、十分な保全のノウハウを有する我が国の火力発

電事業者の専門家の協力を得て、PM テンプレートのプロセスやフォーマットに関して、日

米間の比較を行いながら、米国 EPRI の PM テンプレートの我が国への適用可能性を考察

した。 具体的な検討は、米国で標準化されている PM テンプレートの作成手順(エキスパートパ

ネルワークショップ)および PM テンプレートの適用プロセスに従って、日米間の比較と

考察を行い、我が国に適した PM テンプレートのフォーマット案の検討と実際に導入する

場合の有効性や課題の検討を実施した。以下に、検討の結果を説明する。なお、協力を頂

いた国内電力会社について「国内火力事業者」と表記する。

6.1 機器タイプの選定

次の 3 種類の機器タイプを選定し、PM テンプレートのフォーマットを比較した。 (1) モータ_低電圧(600V 以下) (2) 弁_空気作動弁(AOV) (3) ポンプ_容積式 これらの機種は、火力発電プラントに数多く設置されている回転機器等の動的機器である

という特徴がある。タービン等の大型機器は、メーカー側も発電所の運用条件に精通して

おり、製品自体に多くのセンサー等を装着して製品提供し、運用時もパフォーマンス監視

等のサービスを提供する場合が多い。一方、これらの小型機器は発電所で千差万別な使わ

れ方をしており、メーカー側が発電所の運用条件を把握することが困難である。従って、

メーカーが推奨する PM 基準も最も極端な運用条件を前提と場合が多いと考えられる。米

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国 EPRI の PM テンプレートのフォーマットは、このような小型の動的機器の特徴に配慮

して設計されていると判断され、今回の日米間の比較対象として適切であると判断した。 EPRI の公開報告書より、選定した 3 種類の機器タイプに関する米国の PM テンプレート

の調査を実施した。 EPRI 1004590 Equipment Maintenance Optimization Manual Application, Final Report (Dec2001)

調査した米国の PM テンプレートを表 6-1、表 6-2、表 6-3 に示す。

表 6-1 モータ_低電圧(600V 以下)の PM テンプレート(EPRI 1004590)

1 2 3 4 5 6 7 8はい X X X Xいいえ X X X X高い X X X X低い X X X X過酷 X X X X穏やか X X X X

予防保全タスク【状態監視】

サーモグラフィー 2.5 6ヶ月 6ヶ月 6ヶ月 6ヶ月 1年 1年 1年 1年振動監視 3 3ヶ月 3ヶ月 3ヶ月 3ヶ月 1年 1年 1年 1年油分析 1 6ヶ月 6ヶ月 6ヶ月 6ヶ月 NR NR NR NR電気試験:オンライン 2 1年 1年 1年 1年 2年 2年 2年 2年電気試験:オフライン 3 2年 2年 2年 2年 NR NR NR NRパフォーマンス監視 6ヶ月 6ヶ月 6ヶ月 6ヶ月 1年 1年 1年 1年

【時間計画】内部目視検査 12 AR AR AR AR NR NR NR NR外部目視検査 1 6ヶ月 6ヶ月 6ヶ月 6ヶ月 1年 1年 1年 1年

【故障検知】改修・取替 2 AR AR AR AR AR AR AR AR

AR; 必要に応じてNR; 不必要

タスク間隔

PMテンプレートモータ_低電圧(600V以下)

【US】

重要性

負荷サイクル

供用条件

(レンチタイム:H)

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表 6-2 弁_空気作動弁(AOV)の PM テンプレート(EPRI 1004590)

1 2 3 4 5 6 7 8はい X X X Xいいえ X X X X高い X X X X低い X X X X過酷 X X X X穏やか X X X X

予防保全タスク【状態監視】

付属品の較正 1.5 2年 2年 2年 2年 NR NR NR NRパッキン検査/調整 1 2年 2年 2年 2年 NR NR NR NR外観検査 0.5 2年 2年 2年 2年 NR NR NR NR診断スキャン 2 AR AR AR AR NR NR NR NR内部漏洩検出 1 AR AR AR AR NR NR NR NR超音波手法 – 最小壁厚 1 AR AR AR AR NR NR NR NR

【時間計画】空気供給フィルター取替 1 4年 4年 4年 4年 NR NR NR NRアクチュエータアセンブリー分解点検 4 5年 6年 5年 6年 NR NR NR NR付属品の取替 2 10年 12年 10年 12年 NR NR NR NR弁アセンブリー分解点検 6 10年 12年 10年 12年 NR NR NR NRパッキン取替 1.5 2年 6年 5年 6年 NR NR NR NR

【故障検知】ストローク試験(時間計測、SOV & リミットスイッチ作動)

2 AR AR AR AR NR NR NR NR

AR; 必要に応じてNR; 不必要

タスク間隔

PMテンプレート弁_空気作動弁(AOV)

【US】

重要性

負荷サイクル

供用条件

(レンチタイム:H)

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表 6-3 ポンプ_容積式の PM テンプレート(EPRI 1004590)

1 2 3 4 5 6 7 8はい X X X Xいいえ X X X X高い X X X X低い X X X X過酷 X X X X穏やか X X X X

予防保全タスク【状態監視】

油分析 1 6ヶ月 6ヶ月パフォーマンス監視 1 3ヶ月 3ヶ月振動解析 1.5 6ヶ月 6ヶ月赤外線サーモグラフィー 1 6ヶ月 6ヶ月運転員巡視 0.5 1シフト 1シフト

【時間計画】カップリング検査 1 2年 2年油フィルター交換 1 6ヶ月 6ヶ月内部外観検査 1.5 2年 2年流体シリンダー検査 0.5 AR AR可動部(フレーム)検査 1 6年 6年

【故障検知】機能試験 2 AR AR

AR; 必要に応じてNR; 不必要

タスク間隔

PMテンプレートポンプ_容積式

【US】

重要性

負荷サイクル

供用条件

(レンチタイム:H)

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6.2 PM テンプレートの作成プロセスとフォーマットの比較

本業務で協力を頂いた国内火力事業者の場合、RCM の適用による PM 技術基盤の見直し

までは実施しておらず、従来からのメーカー推奨をベースとした時間基準保全(TBM)を

中心とした保全戦略を継続している。ただし、実際に発生した劣化や故障等の運転経験に

対する故障モード影響解析(FMEA)を行い、その故障場所、劣化メカニズム、劣化影響、

劣化の進行等の故障メカニズムを分析し、該当する点検基準に反映し、全発電所での PM変更を実施している。この部分は、EPRI の PM テンプレートのベース情報の内容にかなり

類似していると言える。 PM テンプレートに相当する我が国の国内事業者の「点検基準」の作成プロセスのイメー

ジは、図 6-1 に示した米国の PM テンプレート作成プロセスとの類似性が高い。一方、国

内事業者の使用するフォーマットに関しては、PM 基準の技術的根拠を示す劣化メカニズム

表は類似性が高いが、PM 基準を推奨するテンプレート表のフォーマットとの類似性は低い。 点検基準の作成プロセスの類似性が高い理由は、日米ともに PM 基準を共通化可能な機器

グループ(機器タイプ)単位で PM テンプレートを作成していることと、FMEA による故

障や劣化事象の原因分析結果(劣化メカニズム表)を技術的根拠としていることによると

判断される。 一方、テンプレート表/点検基準表のフォーマットの違いの理由は、その背景の違いによ

るものと判断される。米国の PM テンプレートは、機器の重要度分類や状態基準保全を優

先した PM タスクの推奨等、RCM の適用を前提としたフォーマットとなっている。国内事

業者の点検基準も、当該の機器タイプに関する推奨の PM タスクと頻度を規定していると

いう点に関しては基本的に同じであるが、推奨するタスクは従来からの時間計画タスクが

優先されており、点検間隔に関しては、運転経験の反映のしやすさを考慮したフォーマッ

トとなっている。また、機器の重要度区分も包括的には実施されてはおらず、EPRI のテン

プレートのような形で重要度区分が保全タスクに反映される仕組みにはなっていない。た

だし、重要でない設備に対してのブレークダウンメンテナンス(BM)(いわゆる事後保全)

が導入されていて、重要度に応じた保全タスクの考え方の一部は導入されている。また、

状態監視保全は重要度の低い機器や信頼度が高く予防保全の必要性が低い機器等を対象に

実施されているが、重要度の高い設備への適用はこれからと考えられている。このように、

米国とはかなり異なる分類フォーマットでの運用となっていると言える。 まとめると、米国の PM テンプレートは、RCM の実施を前提に最適化されたフォーマッ

トとプロセスとなっている。一方、国内事業者の点検基準は、現行の PM 戦略を維持しな

がら、実際に発生した故障や劣化等の運転経験の是正措置として PM 基準の変更に最適化

されたフォーマットとプロセスになっている。このように、PM 基準を推奨するテンプレー

ト表のフォーマットに大きな差異がみられるが、国内事業者は、この違いは背景の違いに

よるものであり、仮に RCM の実施を前提にするのであれば米国のフォーマットに従うこと

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にも支障はないであろうとの見方をしている。

6.3 PM テンプレートの適用プロセスの比較

図 6-2 に示した PM テンプレートの適用プロセスに関しては、国内事業者内のプロセスは

米国のそれとほぼ同じである。社内標準の点検基準(米国でいう PM テンプレート)が本

店側で承認され、すべての発電所に発行され、既存 PM と比較し PM 基準の変更を行う(PMレビュー)。この際に、PM テンプレートと現行 PM との間で違いがあっても、正当化でき

る理由があれば現行 PM を継続できることも同様である。 大きな違いは、米国では EPRI を中心にした PM テンプレート運営委員会が設置されてお

り、業界標準の PM テンプレートの運用が行われていることにある。米国の事業者も、自

社固有の PM テンプレートに基づいて運用している点に関しては我が国と同じであるが、

自社固有の PM テンプレートを作成する際に業界標準の PM テンプレートを参考にするこ

とができる。また、PM 実績をフィードバックし、PM テンプレートを継続改善する際にも、

自社内だけでなく、PM テンプレート運営委員会にもフィードバックし、業界標準の PM テ

ンプレートの継続的改善も行えるプロセスとなっている。 我が国には、点検基準や、その技術的根拠となる運転経験を業界レベルで共有し標準化す

る仕組みがない。したがって、該当するプロセスもない。

6.4 我が国における PM テンプレートの評価と考察

米国と比較した我が国事業者の事例は、当該電力会社固有の事例であるものの、米国同様

に保全最適化に向けた独自の取り組みを実践していることが分かった。特に、故障や劣化

事象等の運転経験の原因分析に、RCM でも採用されている FMEA 解析手法を採用してい

ることは評価できる。一般に、RCM の適用がそれほど進んでいない大きな理由として故障

モード影響解析(FMEA)とロジックツリー解析(LTA)の困難さがあったことは既に説

明したとおりである。当該国内事業者は、既に FMEA 解析を実践していることと、LTA 解

析については、フォーマットの違いはあるものの、米国 EPRI の PM テンプレートに相当

する位置づけの点検基準を運用して実践している。さらに、この点検基準の作成プロセス

や適用プロセスも米国と同じようなプロセスを確立して運用している。PM テンプレート/

点検基準のフォーマットの違いは、RCM を実行している、していないかの違いであると言

える。仮に、我が国で RCM を実行する場合には、当該国内事業者の専門家でも米国 EPRIの PM テンプレートのフォーマットの有用性を評価しており、必ずしも現行の点検基準フ

ォーマットに固執しているわけではないとのことであった。 まとめると、今回の事業で協力を頂いた国内事業者を始めとして、これまで長年火力発電

所を運営してきた我が国の大手の火力発電事業者は、RCM を実行している、していない、

の違いがあるものの、米国の PM テンプレートの考え方と同じような検討・運用を行って

いると考えられる。そして、RCM の実行に関しても、欧米で実践されている簡略化手法を

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参考にすれば、それ自体、それほど大きなハードルとも考えられない。課題は、PM テンプ

レートのフォーマットや RCM の簡略化手法にあるというよりは、次のような我が国の業務

慣行や保全体制にあるのではないかと考えられる。 (1) 業界として保全に係る情報を共有し、標準化する仕組みがない (2) RCM により最適化した PM 戦略を実行する保全プログラムの体制がない 1. 業界として保全に係る情報を共有し、標準化する仕組みがない【課題 1】 欧米では、電力自由化による厳しい競争市場にさらされながらも、トラブルや故障等の運

転経験の情報を業界で共有し、原因追及や再発防止策を共同で検討する等の土壌がある。 一方、我が国では、規制からの強制的な要求に基づく場合を除き、自発的にこれらの情報

を他社と共有し対策案を共同で検討することは、ほとんどないとのことである。 今回の事業で協力を頂いた国内国火力事業者も、自社内の運転経験を解析した故障メカニ

ズム等の情報をデータベース化して活用しているが、社外には提供していない。 このような我が国のクローズした業務慣行は、保全最適化を推進するうえで、PM テンプ

レートの品質に影響を与える可能性がある。 PM テンプレートの品質は、その技術的根拠とテンプレートを作成するエキスパートの知

見に大きく依拠する。技術的根拠は、PM テンプレートが対象とする機器タイプの機器グル

ープに関して、過去実際に発生した故障や劣化の運転経験であるが、業界事例および他業

界の事例まで参考にする米国と、自社内の経験だけを参考にする我が国とでは大きな違い

が生じうる。例えば、重要機器は、基本的には全ての故障メカニズムに対処できる包括的

な PM タスクの設定が必要であるが、自社内だけの経験では見落としの可能性がある。ま

た、PM タスクの実施頻度に関しても、米国では、当該の機器グループの最短故障期間を基

準に設定しており、これも同様である。そして、このような技術的根拠と、PM テンプレー

トで推奨する PM 基準を結びつけるのは、当該機器タイプの設計や保守に精通したエキス

パートの知見に依拠しており、米国の PM テンプレート運営委員会は、全米もしくは場合

により海外からも含めて、最もふさわしいと考えられるエキスパートを招請している。我

が国では、社内に限定してエキスパートを招集していると判断されるが、特に、製品の設

計をよく知るメーカー技術者の協力を得ることが困難と考えられる。 また、予防保全タスクは、プラントのライフサイクルを通じて繰り返し実施される保全活

動であり、その保全実績に学び継続的に改善することも PM テンプレートの品質上、極め

て重要である。米国の PM テンプレートは、北米を中心に海外を含めて多くの原子力、火

力、送配電、水力、風力等の電力設備全般の共通フォーマットになっており、広範囲の保

全実績から学んでテンプレートを継続改善する強力なリビングプログラムが確立されてい

る。 このように、我が国のクローズした業務慣行は、PM テンプレートの初期作成時の品質に

影響するだけでなく、長年の運用を通じた品質の継続的改善にも大きな影響を与える可能

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性がある。 2. RCM により最適化した PM 戦略を実行する保全プログラムの体制がない【課題 2】 RCM は、従来、定められた暦日時間もしくは運転時間間隔で保全作業を実施してきた時

間基準の保全プログラムを機器の状態に応じたタイミングで保全作業を実施する状態基準

の保全プログラムへの移行を科学的かつ合理的に後押ししていく手法であるとも言える。 米国の EPRI は、この保全プログラムの移行に対応できるようにするために、状態基準保

全プログラムと作業管理プログラムに関して、技術面からの支援を行っている。状態基準

保全に関しては、1989 年に、当時実用化され始めた振動監視、潤滑油分析、赤外線サーモ

グラフィー等の状態監視技術を火力発電プラントに適用し、予知保全プログラムを確立す

るための開発実証センターを設立している。また、当時ほとんどの火力保全組織に導入さ

れ活用されていた CMMS (Computerised Maintenance Management System) をベース

に、状態基準保全プロセスより作業依頼される緊急性の高い保全タスクに適切に対応でき

るようにするために、高度なワークコントロールを可能とする日常保守向けの作業管理技

術を開発している。このように、米国 EPRI は、RCM を実用化するための簡略化 RCM 手

法の開発だけでなく、その結果大きな影響を受ける状態基準保全プログラムと作業管理プ

ログラムに関しても技術面からの支援を行っている。一方、米国の火力発電事業者も、新

しい保全技術に対応できる人材の育成や業務改善を実施し、予防保全プログラム全体の最

適化を推進している。特に、保全体制の面では、従来の定検中心の保全から定検以外の日

常保守中心の保全に移行することから、保全の直営体制を強化している。 我が国でも、電力完全自由化の流れの中で、設備故障の予兆診断等、状態基準保全を強化

する方向にある。また、保全情報管理システム(CMMS)やエンタープライズアセットマ

ネージメント(EAM)等の統合的な保全管理ソフトウェアの活用も進められている。ただ

し、保全体制に関しては、従来からの請負外注体制に依存しており、日常保守を中心とし

た直営保守体制の強化は今後の大きな課題であると判断される。

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図 6-1 PM テンプレートの作成イメージ(2 章から再掲)

図 6-2 PM テンプレートの適用プロセス(2 章から再掲)

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7.信頼性重視保全のフォーマットの活用についての有識者検討会の運営 信頼性重視保全(RCM)のフォーマットの活用について、国内の有識者を集めた検討会

を 3 回開催し、RCM の国内への導入の可能性等について幅広い検討を行った。本検討会の

検討委員は、表 7-1 に示す方々である。

表 7-1 有識者検討会検討委員 ご所属 氏名 1 早稲田大学創造理工学部経営システム工学科 高田祥三 教授 2 早稲田大学各務記念材料技術研究所 酒井潤一 名誉教授 3 東北大学流体科学研究所 髙木敏行 教授 4 東北大学大学院工学研究科 青木孝行 特任教授 5 火力原子力発電技術協会 中澤治久 専務理事 6 電力中央研究所エネルギー技術研究所領域リーダー<

火力運用保守領域> 藤井智晴 上席研究員

三回実施した検討会の開催日時、議題、参加された委員について表 7-2 にまとめる。

表 7-2 検討会の実施状況 日時 参加された委員 議題 第 1 回 2016 年 12

月 21 日 ・早稲田大学 高田祥三教授 ・東北大学 髙木敏行教授 ・火力原子力発電技術協会

中澤治久 専務理事

・調査の目的と背景 ・調査内容 ・検討会の目的 ・信頼性重視保全とは? ・EPRI の PM テンプレートとは? ・今後の計画

第 2 回 2017 年 1月 27 日

・早稲田大学 高田祥三教授 ・東北大学 青木孝行 特任

教授 ・火力原子力発電技術協会

中澤治久 専務理事 ・電力中央研究所 藤井智晴

上席研究員

・調査の目的と背景 ・欧州訪問調査報告 ・欧州の火力発電所における RCM ・今後の計画

第 3 回 2017 年 2月 27 日

・早稲田大学 高田祥三教授 ・東北大学 高木敏行教授 ・東北大学 青木孝行 特任

・米国訪問調査報告 ・日本版 PM テンプレートの検討

状況

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教授 ・火力原子力発電技術協会

中澤治久 専務理事 ・電力中央研究所 藤井智晴

上席研究員

・RCM の国内での適用に関する z方法の整理

各検討会の議事メモ及び配布資料については、付録 1 として添付する。以下、それぞれの

検討会について、議論の概要を以下にまとめる。 第 1 回検討会 日時:2016 年 12 月 21 日(水)11:00~13:00 場所:AP 西新宿会議室 5 階 F 会議室 参加者: 検討委員:早稲田大学 高田教授、東北大学 高木教授、火力原子力発電技術協会 中澤

様 経済産業省: 商務流通保安グループ 電力安全課:原様、石原様、潰瀧様 オブザーバー: 菊地様(ファンディール)、ほか 1 名 事務局(JANUS):伊藤、安部、富田、谷本、今関 主な内容: 事務局から、第一回目の検討会ということで、本調査の背景と目的、調査の内容、検討会

の目的の説明を行い、本調査のテーマである信頼性重視保全(RCM)とは何か、及びその

応用技術で米国で活用されている米国電力研究所(EPRI)作成の PM テンプレートの概要

について情報提供を行った。 欧米訪問調査の内容、訪問先、国内の RCM に関する状況、国内の故障データの整備状況

などについて質疑応答が行われた。また、検討委員からの意見として、以下のようなもの

があった。

・欧米の訪問先については、検討委員の方からアドバイスを頂ければと思います。欧州に

ついては 1 月初めまで、米国については 1 月中を目処に情報提供してほしい。 ・火力発電所に対する規制を検討する上で、まずは、体系的な予防保全選択手法としての

有効性を議論し,その結果に合わせて規制のあり方を考えるような柔軟な規制側の姿勢

が必要と考える。その文脈において、RCM や PMT の利用について調査するのは有用で

あると考える。また、リスクベースの RBM 等に対する調査も有用であると考える。な

お、RCM 等の手法の導入には時間を要するので、その努力を 10 年から 20 年のスパン

で行っていくことが重要である。 ・API(米国石油学会)や RBM などでは故障情報について一般データを用意して、各ユー

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ザーがカスタマイズできる仕組みを用意している。事業者に対して、情報の共通部分を

共有化できるようにする仕組みが重要と思う。 ・各社ノウハウをキープしたうえで情報の共有化を図る仕組みについて検討してほしい。

また、メーカーとオペレータの関係も国による相違があると思うので、その点は調査し

ておいてほしい。 ・合理的な規制の検討の流れで、何かを事業者に求める場合には、これまでの経緯を理解

していない新規参入者が錯覚してしまうような事態は避ける必要がある。強制する内容

は十分に考慮する必要があると思う。 ・新しく参入する事業者と従来からの事業者に対する規制を公平なものにするのか、ある

いは何らかの保全改善策を講じた事業者に対する規制を緩和(インセンティブを与える)

するのか、また、RCM や PMT を強制的な位置づけにするのか、あるいは事業者に委ね

て産業界のガイドラインを作成するのか、といった方向性について検討することも重要

である。なお、仮に PMT を開発し公開していくとしても、新規参入者だけがそのユー

ザーとなって得をするといった事態にはならないよう配慮しないといけないと考える。 ・RCM や PMT に係わらず、一度導入してしまえばそれで終わりではなく、継続的に有効

性を評価し、改善が必要な場合は改善を行う、いわゆる PDCA を回していくこと、その

ための仕組みを作ることが重要であると考える。 第 2 回検討会 日時:2017 年 1 月 27 日(金)14:00~16:00 場所:日本エヌ・ユー・エス株式会社 大会議室 参加者: 検討委員:早稲田大学 高田教授、東北大学 青木教授、火力原子力発電技術協会 中澤

様、電力中央研究所 藤井様 経済産業省: 商務流通保安グループ 電力安全課:石原様、潰瀧様 オブザーバー: 菊地様(ファンディール)、ほか 1 名 事務局(JANUS):伊藤、安部、富田、大久保、谷本 主な内容: 事務局から、欧州訪問調査において訪問したドイツの電気事業関連業界団体 VGB

PowerTech、ドイツの石炭火力発電事業者 LEAG 社、フィンランドの電気事業者 FORTUM社から得られた情報の報告、欧州の火力発電における RCM 活用事例の文献調査報告を行っ

た。 VGB が運営する KISSY(故障率(Availability)情報データベース及び分析サービス)や

欧州の RCM 実施の実態、よく活用されているプラントの運転・管理情報を入力・整理・処

理するソフトウェア(MAXIMO など)等について質疑応答が行われた。また、検討委員か

らの意見として、以下のようなものがあった。

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MAXIMO 等を使うにしても、保守を見直すためのワークショップには必ず外部のファ

シリテータを入れる必要がある。社員だけのワークショップだと、各々の経験がバラ

バラでなかなかまとまらないことが多い。さらに、フィンランドでは、運転コンサル

会社があり、そこからベテラン運転員を各発電所に派遣していると聞いた。この手法

は、限られた運転員を共有し、全体最適化を図った良い方法である。今後は日本でも、

ベテラン運転員が減ることに対する対策が重要であると思うが、日本はドキュメント

化が苦手である。しかし、データベース化するのは重要だと思う。 予防保全テンプレートはあるべき保全を表形式に整理した結果である。これには、状

態監視を含む予防保全方法や頻度の根拠が記載されており、それらが明記されている

ことがポイントである。テンプレートは保全ノウハウの集合体であり、そこに保全の

経験を踏まえた知見やノウハウが結集されるように運用する必要がある。また、継続

的に適正化されていくことが重要である。 欧米で RCM が活用されている背景には、アベイラビリティの向上が求められているこ

とと、運転・保守費用を下げる上では時間計画保全主体では限界があるという二つの

課題を解決するうえで、これが重要な手法と認識されているのだと思う。 アベイラビリティを上げることに関して、コスト低減の目的を最優先とすることは日

本では難しいと思う。別の方策というかロジックが必要であると考える。 どんなにいい保全プログラムがあろうとも、それを変更する意思決定、決断ができな

いと前に進まない。TBM 主体から CBM に移行する際には、決断しなくてはいけない

が、慎重な判断が求められる日本ではそれが非常に難しい。しかし、やらなければ保

全の高度化(安全性の向上、経済性の向上)は進まない。 米国訪問調査では、事業者の決断がどのようになされているのかを調べてきてほしい。

また、日本でなぜ RCM が導入されていない、あるいは体系化されていないのかについ

ても検討してほしい。 第 3 回検討会 日時:2017 年 2 月 27 日(月)14:00~16:00 場所:日本エヌ・ユー・エス株式会社 大会議室 参加者: 検討委員:早稲田大学 高田教授、東北大学 高木教授、東北大学 青木教授、火力原子

力発電技術協会 中澤様、電力中央研究所 藤井様 経済産業省: 商務流通保安グループ 電力安全課:原様、石原様、潰瀧様 オブザーバー: 菊地様(ファンディール)、ほか 2 名 事務局(JANUS):伊藤、安部、富田、大久保、谷本 主な内容:

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まずは、事務局から米国訪問調査において FOMIS(火力発電事業者情報交換プラットフ

ォームサービス)、電力向け RCM を開発し PMBD サービスを提供している EPRI(米国電

力研究所)、電気事業者 First Energy 社、電気事業者 LG&E 社で得られた情報の報告と、

日本版 PM テンプレートの検討状況についての報告を行った後、最後の検討会ということ

で、日本での RCM の導入を検討するにあたっての情報の整理ということで、欧米の状況と

日本の状況の比較のために整理した情報を説明したうえで、検討委員に自由に意見を述べ

てもらうという形式で行った。検討委員からの主な意見として、以下のようなものがあっ

た。

・ 報告いただいた日本と欧米との比較については、現状ではその通りであると考える。

今後日本が、自由化や規制緩和の面でどのように変わっていくのかが重要であると考

える。原子力は福島事故を受けて規制の変更が進められている。日本の火力の状況も

欧米のような状況(自由化や規制緩和)に進むのであれば、文化は違っても、技術的

な方向性としてはやはり保全の最適化に進むのではないかと考える。 ・ 欧米では RCM が有効であることが既に示されている。日本も自由化に伴い規制側も電

力側も RCM を導入する方向に進むのであればそのメリットについて広く知らしめる

ことが必要である。規制のオプションとしてこれを進めるのも一つの手ではないかと

思う。 ・ 欧米における保守の最適化の定義が、加工のプロセスの無駄を省き生産性を上げ、保

守の費用を削減し、結果的に品質を下げてしまうのであれば問題である。また、RCMにより TBM から CBM に当然のように移行するというのは誤解がある。TBM によっ

て劣化を見つけるのであれば、これも状態監視の一つであると言える。運転中に実施

することだけが状態監視ではない。例えば、劣化メカニズムがわかっているのであれ

ば、その傾向に応じた頻度の TBM により劣化状態を確認することで結果的に TBM の

頻度を低減することが可能で、これも合理化といえる。日本で RCM を導入するのであ

れば、保守の最適化の定義を明確にする必要がある。現状の無駄を省くための一定の

ルールや枠組みが必要である。RCM といっても様々なアプローチがあり、報告いただ

いた欧米の RCM はリスクベースに近いものであると考える。どのような無駄を省くの

かについて検討する必要がある。 ・ 火力の定検を 6 年にするという合理化の検討も進められている。高度な保守の導入イ

ンセンティブとして規制緩和が必要である。高度な保守には CBM も含まれると考える。

なお、日本において情報の共有化はこれまで行われてきたが、自由化に伴い難しくな

ってきている。費用がかかる分野についての情報の共有化は難しくなると思う。共通

のテンプレートを作成することは、小規模の電力事業者や新規参入の電力事業者にと

ってはメリットがあるが、大規模の電力会社にとってはメリットがない。このため、

すぐに RCM を導入するのは難しいと思う。

98

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・ 報告されたまとめについては概ね同意する。但し、文化でくくるのはどうかと思う。

多数の国や州で電力系統を構成している欧米とは国情も違い、日本では電気事業法に

よる規制という共通指標によって電力品質が高く維持されてきているということ。自

由化において供給責任のあり方等が変化していくことになるが、規制のあり方を含め、

整合性の取れた保全のあり方と再構築して言う必要がある。 ・ 委員の方からよい意見を頂いた。定検を 6 年に伸ばすということはインセンティブに

なる。自由化において何が問題になるのか明確にする必要があると思う。また、文化

でまとめるのはどうかと思う。日本は事故率が先進国で低く、自由化後も維持したい

と考える。自由化に伴う規制緩和をどこまでやるのか議論する必要がある。欧米でマ

ニュアル化する必要性は様々な民族がいるためである。これらの背景の違いを踏まえ

て、我が国でどのような規制や保守を行うかよく考える必要性があると思う。 ・ 原子力では、被ばく低減が重要で、Reliability を上げることで原子力安全が向上した。

火力の保全によって Availability(Reliability)を上げる目的を明確にする必要がある。

また、何を達成するのかをパフォーマンス指標として見ることが重要である。保全の

Availability(Reliability)を上げるというと経済性を上げるのみと誤解される可能性

がある。人的な安全や環境面での安全性もある。欧米では既にそのような状況になっ

ているのかもしれないが、日本では保全の Availability(Reliability)を上げることが

安全性と経済性の両方を上げることにつながるというのが重要である。 ・ 再生エネルギーの拡大と優先給電により火力の役割が変化してきている。不安定な再

エネの変動に対応するため待機状態にあっても必要なときに確実に発電できることが

より重要となる。欧米で Availability(Reliability)の向上を目的とするのはそういう

ことではないか。 ・ 欧米での Availability(Reliability)の定義を明確にしないと発電単価と誤解される可

能性がある。日本の火力は信頼性が高いが欧米のような状況になってよいのかを検討

する必要がある。 ・ 原子力に関して、イギリスの BNFL では燃料の記録改ざんが問題となり安全に関する

記録を取ることが重要であるとの認識に至った。安全はどの産業でも重要である。政

府は、安全確保と供給確保を事業者に求めている。発送電分離の中で、供給責任を今

後どのように考えるのかが重要である。3+S という発想は変わらない。 ・ RCM の実施可能性が電力会社の大小に依存するかどうかの件で、保全の高度化は管理

の強化であるため、他人任せにはできず、事業者で管理する必要がある。一方、日本

の原子力の場合、保守はメーカー等の下請けに任せていることが多く、保守後の安全

を事業者自体で確実に把握することできない。そのため、従来通り下請けを使って保

全を行うことしかできず、これでは RCM の実施が難しかった。小規模の IPP で保全

の高度化の流れについていけるのか。RCM を実施するにしても、保全の体制がどちら

に向かうのかを合わせて検討する必要がある。

99

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・ 日本には二つの大きな流れがあり、1 つ目は再生エネルギーの導入の流れ、2 つ目は温

暖化対策として二酸化炭素削減の流れである。これら二つのために、火力の経営環境

は厳しくなる一方であると思われる。規制においては、現状の保安レベルを維持しつ

つ合理化できるところを検討する必要がある。 ・ 保安レベルの維持において、指標をどうするのか重要である。合理的なストーリーで

説明することが重要である。適切な目標でないと技術の進化を妨げる。保守の枠組み

を設定しておくことが重要である。また、先ほどマニュアルの話があったが、マニュ

ル化するかどうかの議論は必要なく、マニュアルを作るときに必要となる、保全の合

理的な考え方について、もっと議論すべきである。 ・ コストと信頼性のバランスの図において、いじり壊しなどの面で、信頼性を上げる方

向に向かいすぎるのはよくないという意識が重要である。FOMIS は良い仕組みである。

日本でもビックデータ等が利用されつつあるので、電力会社にインセンティブを持た

せて同様の仕組みを導入することは重要であると思う。

100

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8.まとめ 欧米の火力発電所の保守高度化の取り組み状況について、今回の訪問調査や文献調査から

得られた情報をまとめて表 8-1 に示す。表には、今回の業務で協力を頂いた国内事業者から

の聞き取りによって得られた国内の情報も合わせて示した。 欧米では、日本より一足先に電力自由化が始まり、発・送・配電部門は完全に分離され、

発電事業者は入札により落札できた時間帯に確実に発電することで収益を上げなければな

らなくなった。さらに、時期的にはそれに並行するような形で再生可能エネルギーの普及

推進政策が導入され、再生可能エネルギーによる電力の量が増加するにつれて、火力発電

の市場が徐々に小さくなり、落札価格も低下するようになった。このような背景に下、欧

米の火力発電事業者は、安全性を担保しつつ、自由化された市場でも柔軟に対応できるよ

う、安全性、経済性、柔軟性(Flexibility)、そして高い利用可能性(Availability)を同時

に満たす保守の確立にせまられている。その中で、それらを合理的に確保する手法として、

RCM が注目されている。RCM は当初、教科書通りの適用は莫大な作業量が必要なゆえ、

実用的ではないとみなされたものの、米国 EPRI が電力向けに開発した簡略化 RCM(SRCM:Streamlined RCM)を始めとして、様々な簡略化の工夫を行った RCM を導入

が進んできている。欧米の規制がハザードベースやパフォーマンスベースといった事業者

の自由度が高い方向へシフトしていく中、RCM 導入の優れた事例も出てきており、RCMへの期待はさらに高まってきているようである。さらに、米国 EPRI の PMBD や欧州 VGBの KISSY など、RCM 導入の際に大幅な労力の削減につながるデータベースサービスも充

実してきており、欧米では、RCM はより活用が進んでいくように思われる。 一方、我が国は、電気事業法や技術基準が保守の業界標準となっており、国主導ではある

ものの電力業界も協力し、基準等を策定してきている。また、実際の保守において、電力

会社は必要に応じてメーカーとも連携し、適切な保守を実施してきている。その結果とし

て、日本の電力の保安は、世界的に見ても高いレベルにあると言える。 しかし、電力システム改革は始まっており、2020 年には完全自由化をめざし、議論は進

んでいる。そして、固定価格買取制度に基づく再生可能エネルギーの導入もかなりの速度

で進んでおり、欧米と類似した電力市場の状況になることも予想される。また、定期点検

の 6 年延伸なども議論されており、TBM のみの保守では済まなくなると思われる。こうし

た電力自由化と規制緩和の流れの中にある我が国の電力市場において、保安の維持とコス

トのバランスを発電事業者が自律的に取っていく仕組みは、まだ整備されていない。 ゆえに、欧米において、安全性向上、柔軟性の確保、アベイラビリティの向上、そしてコ

スト低減のすべてをバランスよく達成するための手法として RCM が導入されていること

を考えると、今後の大きく変わっていくである日本の電力市場においても RCM の有効性が

十分に活かせる状況になる可能性がある。欧米でも RCM 導入の際には、必ず簡略化が行わ

れた RCM が用いられており、日本での導入の際にも、日本の規制や保守・保安を支える体

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制などを考慮した簡略化 RCM が必要となるかもしれない。また、RCM の普及を促すため

には、EPRI の PMBD や VGB の KISSY のように、希望すればどの事業者でも利用できる

業界標準となるデータベースのような技術基盤の確立も必要となるだろう。このように、

今後は、日本の電力改革・規制緩和の動向などに合わせ、RCM 導入する場合に必要となる

要素を具体的に検討していくことが有用であろう。

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表 8-1 欧米の火力発電所の保守高度化に関する調査結果のまとめ 米国 欧州 日本

RCM に代表される保守

高度化のための体系的

評価手法の検討と標準

化の動き

FMEA とロジックツリー解析に基づく標準的

RCM 手法は手間がかかりすぎると認識

されていて、EPRI が電力業界向けに標

準的な効率化 RCM(SRCM)手法を開

発。

国や電力によってアプローチは異なる。 米国 EPRI の SRCM を採用するケースもあ

れば、独自で SRCM 評価手法を開発して

いるケース(例、フィンランド FORTUM 社)も

ある。

電力会社個別の検討はあるが、国レベルで

の評価手法の標準化の動きはない。 調査した電力会社では FMEA の活用が

進んでいた。

上記に関連した情報の

共有 EPRI を中心に業界レベルで標準的評価手

法(SRCM)を開発するとともに、保全

関連情報を収集・共有し、標準的な予防

保全(PM)テンプレートを含む PM 基盤データ

ベースを開発。

ドイツにある欧州発電事業者協会(VGB)

の運転経験情報(KISSY)データベースが、

メンバー会社間で共有化され活用されてい

る。

電力会社間での情報の共有化は進んでい

ない。

保守高度化の適用例(代

表例) (ファーストエナジー社の例)EPRI の標準手法

と PM 基盤データベース(PMBD)を参照し

ながら、独自の効率化 RCM 手法を開発、

適用した。

ドイツ LEAG 社やフィンランド FORTUM 社で

は独自の効率化 RCM 手法を開発・適用

している。

詳細レベルの FMEA を実施し、運転経験を

反映して更新、その内容を保全タスクとも関

連付けしている例があった。

重要度分類(例) チェックリストを使って全ての機器を 3 段階に

分類(クリティカル、非クリティカル、事後保全)。 上記 2 社ではチェックリストを利用した重要度

分類を実施。 非重要機器への事後保全の適用はあるも

のの、発電所大で個々の機器について重

要度を評価している事例は見当たらなか

った。 予防保全タスクの決定

ロジック(例) EPRIのそれを参照してPMテンプレートを開

発し、重要度分類に対応して保全タスクと頻

度を設定。状態監視保全の適用を最優先

においている。

FORTUM 社では PM テンプレートに類似し

たものを独自開発。 法定の定期点検要件の関係で、従来から

定期検査時の時間基準保全を主体とした

点検基準を採用。非重要設備への状態監

視技術の適用は行われてきている。 保全タスク・頻度の設定

における専門家の利用

(例)

EPRI 標準テンプレートの開発では国内専門

家が自主参加し専門家会合を開催。自社

の評価では、社内の専門家数名の会合で

保全タスク・頻度の意思決定を行う。

社内の専門家会合で意思決定を行ってい

る。 社内の専門家会合で意思決定を行ってい

る。

(注)日本の内容は、今回の業務で協力を頂いた国内電力会社からの聞き取り情報に基づいている。 103

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付録 1 検討会資料

第一回検討会:

・ 議事メモ ・ 配布資料

第二回検討会:

・ 議事メモ ・ 配布資料

第三回検討会:

・ 議事メモ ・ 配布資料

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第一回検討会: ・ 議事メモ

・ 配布資料

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検討会議事録 「信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討」

第一回検討会

日時: 2016 年 12 月 21 日(水)11 時~13 時 場所: AP 西新宿 5 階 F 会議室 参加者(敬称略):

検討委員:早稲田大学 高田、東北大学 高木、火力原子力発電技術協会 中澤 経済産業省: 商務流通保安グループ 電力安全課:原、石原、潰瀧 オブザーバー: 菊地(ファンディール)、ほか 1 名 事務局(JANUS):伊藤、安部、富田、谷本、今関

第一回検討会議事次第: ご挨拶ほか 調査の背景と目的 調査内容 検討会の目的 信頼性重視保全とは? EPRI の PM テンプレートとは? 今後の計画 提出資料: 「信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討」第一回検討会 第 1 回検討会資料 信頼性重視保全とは? 第 1 回検討会資料 EPRI の PM テンプレートとは 主な議事: 現在委員をお願いしている 5 名のうち、3 名の委員の出席のもと、第 1 回の検討会を実施

した。(酒井教授(早大)、青木教授(東北大)は都合によりご欠席。) 事務局から上記提出資料を用いてご説明を行った後、以下の質疑応答を行った。また、最

後に今後の計画などについて各位からのご意見を伺った。 主な質疑応答やご意見の内容を以下に示す。

Q:欧米における火力発電所に対する規制体系についても調査に含めるのか。(高木) A:訪問調査のヒアリングにおける一つのポイントとして聞き取りする。

1

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Q:予防保全の改善として近年は Iot やビックデータを利用し、経費削減というやり方があ

るが PM テンプレート(PMT)を用いる場合との違いはどこか。(経産省) A:EPRI の PMT は、保全の最適化を目指した RCM のプロセスの後半部分で、適切な保

全タスクとその頻度を選択するためのツールとして米国発電業界で広く利用されていて、

時間計画保全から状態監視保全への移行に効果を発揮している。。なお、RCM の発展系

として最近のスマート化の中で、状態監視から得られる兆候とその兆候の意味を判断す

るために IoT やビックデータが活用されつつある。 Q:欧米の訪問先を選定する際の基準は(経産省)。 A:米国については EPRI 報告書で、欧州については公開情報で信頼性重視保全(RCM)

を採用していると報告されている電力会社を中心に選定中である。 Q:訪問調査の候補として、機器を提供するベンダーや米国の DOE も考えてみるのはどう

か。(経産省) A:検討に加えます。 Q:欧州では VGB(ドイツ)が PMT を開発しているのか。(高木) A:VGB による活動として分かっているのは、故障率のデータを提供していること。米国

EPRI に相当するような機関は欧州にはおそらく存在しないと思う。 Q:EPRI の PMT は火力や原子力以外でも利用されているのか。(経産省) A:最新の改訂版では国際化を目指していて、水力や送変電もカバーしたものとなっている。 Q:PMT の試作の際の対象機器タイプとして、ポンプ、バルブ、モーターを選定しようと

しているが、その理由は。(経産省) A:広範囲に使用されている汎用品から選ぼうとしている。大型機器であるタービンやボイ

ラー等も PMT には含まれているが使用状態が限定されている。一方、汎用機器はプラ

ント毎に数も多くその分使用状態が様々であるため、メーカー推奨の保全を PMT を用

いて改善する余地が多いと考えている。 Q:RCM は国内でも昔からかなり検討・議論されてきたが、本格導入には至っておらず、

その課題も認識されているのが現状と思う。その背景にある日本の規制も関係するため、

RCM の導入を図るためには、日本の火力発電所に対する規制におけるこの種の手法の扱

いも合わせて考える必要があるのではないか、その上で、日本ではどのような方策が適

しているのか検討することが重要であると考える。(高田) A:新規の参入者も含めてその保安レベルを下げることなく、また Iot やビックデータとい

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った事業者の自主的なインセンティブによる保安技術の高度化を促し、一方でコスト低

減等を達成できるような合理的な規制の達成を最終的な目標としている。本業務は開始

は少し遅くなったが、RCM や PMT がその方策検討の一つのヒントとなるのではないか

ということで、重点的に調査することにした。別のプロジェクトでは、RBM やリスクと

いう概念の利用についても検討している。(経産省) Q:日本の火力発電所で故障データのデータベース化は実施しているのか。(高木) A:データの収集は発電所個別行っているが、機器のタイプもメーカー別に差があるため、

機器タイプ別に整理されたデータベース化まではできていないと思う。(オブザーバー) Q:米国で RCM や PMT が導入されたきっかけとして電力自由化を挙げているが、それも

一つの要因であることは否定しないが、元々、整備された規制がなかったため事業者が

規制機関に代わって保全を整備していこうという気運が高まったことが大きな推進力に

なったと考えるが。(中澤) A:ご指摘の通りと思う。 ご意見: ・欧米の訪問先については、検討委員の方からアドバイスを頂ければと思います。欧州に

ついては 1 月初めまで、米国については 1 月中を目処に情報提供していただければ幸い

です。(経産省) ・火力発電所に対する規制を検討する上で、まずは、体系的な予防保全選択手法としての

有効性を議論し,その結果に合わせて規制のあり方を考えるような柔軟な規制側の姿勢

が必要と考える。その文脈において、RCM や PMT の利用について調査するのは有用で

あると考える。また、リスクベースの RBM 等に対する調査も有用であると考える。な

お、RCM 等の手法の導入には時間を要するので、その努力を 10 年から 20 年のスパン

で行っていくことが重要である。(高田) ・API(米国石油学会)や RBM などでは故障情報について一般データを用意して、各ユー

ザーがカスタマイズできる仕組みを用意している。事業者に対して、情報の共通部分を

共有化できるようにする仕組みが重要と思う。(高田) ・各社ノウハウをキープしたうえで情報の共有化を図る仕組みについて検討してほしい。

また、メーカーとオペレータの関係も国による相違があると思うので、その点は調査し

ておいてほしい。(経産省) ・合理的な規制の検討の流れで、何かを事業者に求める場合には、これまでの経緯を理解

していない新規参入者が錯覚してしまうような事態は避ける必要がある。強制する内容

は十分に考慮する必要があると思う。(中澤) ・新しく参入する事業者と従来からの事業者に対する規制を公平なものにするのか、ある

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いは何らかの保全改善策を講じた事業者に対する規制を緩和(インセンティブを与える)

するのか、また、RCM や PMT を強制的な位置づけにするのか、あるいは事業者に委ね

て産業界のガイドラインを作成するのか、といった方向性について検討することも重要

である。なお、仮に PMT を開発し公開していくとしても、新規参入者だけがそのユー

ザーとなって得をするといった事態にはならないよう配慮しないといけないと考える。

(経産省) ・RCM や PMT に係わらず、一度導入してしまえばそれで終わりではなく、継続的に有効

性を評価し、改善が必要な場合は改善を行う、いわゆる PDCA を回していくこと、その

ための仕組みを作ることが重要であると考える。(高田)

以上

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2017/3/22

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平成28年度電気施設保安制度等検討調査

信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討

第一回検討会

2016年12月21日(水)

11:00〜13:00

日本エヌ・ユー・エス株式会社

1

議事次第

1. ご挨拶ほか

2. 調査の背景と目的

3. 調査内容

4. 検討会の目的

5. 信頼性重視保全とは?

6. EPRIのPMテンプレートとは?

7. 今後の計画

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1. ご挨拶ほか

• ご挨拶 • 経済産業省商務流通保安グループ電力安全課 電気保安室長 原信幸様

•検討会委員のご紹介

•参加者のご紹介

•事務局の紹介

•配布資料確認

3

2.調査の目的と背景

電力自由化による競争促進 新規事業者の参入 労働人口の減少

背景 保守要員の不足 保安の質・安全の確保 保守の効率化 知識・技術の共有化

米国の電力業界: ・信頼性重視保全の普及と活用 ・その技術基盤であるPMDBとPMテンプレートを業界で整備

目的

信頼性重視保全の考え方、PMDBやPMテンプレートなどの技術的な要素は、上記の課題の解決に使えるのではないか?

日本と米国(あるいは欧州)との違いの把握 日本に適したPMテンプレートの試作 信頼性重視保全を日本に適用する際の課題の摘出

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3.調査内容(1)

1. 信頼性重視保全の取り組み等に関する調査

2. 我が国に適した信頼性重視保全のフォーマット案の作成と評価

3. 信頼性重視保全のフォーマットの活用についての有識者検討会の運営

① 米国EPRIの信頼性重視保全の取り組みの全体像の整理

私共のこれまでの調査研究の知見に基づき全体像を整理し、海外調査内容を決定する。

② 米国調査

米国の火力発電事業者等をヒアリングし、米国EPRIの信頼性

重視保全の活用状況や良好事例を調査する。

③ 欧州調査

欧州の火力発電事業者等をヒアリングし、信頼性重視保全の実施状況を調査する。

④ 国内の関係各者・有識者とのヒアリングの開催

関連分野の専門家の方とのヒアリングの場を設定し、我が国の状況に関して議論する。

① 米国EPRIの信頼性重視保全を実施するための支援ツールの分析

我が国の火力発電事業者により、米国EPRIが開発した支援ツールの分析を行う。

② 我が国に適した予防保全基盤のフォーマット案の作成

我が国での活用を想定した信頼性重視保全を支援する予防保全基盤のフォーマット案を作成する。

③ 作成したフォーマット案の評価

作成したフォーマット案に基づく予防保全基盤と現行の予防保全基盤との比較評価を行い、有効性や課題の抽出を行う。

① 有識者検討会の企画

信頼性重視保全のフォーマットの活用について、国内の有識者を集めた検討会を企画する。

② 有識者検討会の運営

有識者検討会を3回程度開催し、将来の保全体系の国際標準化も見据え、幅広い検討を行う。

③ 有識者検討会の結果の反映

有識者による議論を踏まえ、今回の調査検討に反映し、深堀を行う。

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3.調査内容(2)

調査の流れ

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3.調査内容(3)

1.米国EPRIの信頼性重視保全の取り組みの全体像の整理 • 米国EPRIの信頼性重視保全ツール開発の背景と内容

• 信頼性重視保全のためのツール(PMテンプレート)の調査

• 応用事例:予防保全プログラム、パフォーマンス監視、ライフサイクル管理、アセット管理、フリートモニタリング

2.米国訪問調査 • 上記の調査内容の現地訪問調査による確認

• 訪問先候補 • EPRI、 First Energy社(オハイオ州)、 Ameren Corporation社(ミズーリ州), Reliant

Energy/Counter Point Energy社(テキサス州)、 ) ConEdison社(ニューヨーク州)(変動の可能性あり)

3.欧州訪問調査 • 欧州の信頼性重視保全の現状調査

• Fortum社(フィンランド)、LEAG社(ドイツ)、VGB(ドイツ)

4.関係者・有識者ヒアリング会 • 10回程度、METI会議室で実施。

1. 信頼性重視保全の取り組み等に関する調査

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3.調査内容(4)

1. EPRIの信頼性重視保全支援ツールの分析 • EPRIのPMテンプレートの作成プロセスと内容の分析

2. 対象機器選定と予防保全テンプレートの試作 • 3種類程度の機器タイプ(ポンプ、バルブなど)を選定 • EPRIのPMテンプレートをベースに、選択した機器タイプに対して予防保全テンプレートを試作する。

• 例:図1 EPRIのPMテンプレート(モーターの事例)

3. 予防保全テンプレート試作版の評価 • 試作版を用いて、導入した場合について効果を検討する。

• 試作版に対し、実際の国内火力発電への適用を想定した場合の問題点、課題等について検討する。

• 例:図2 国内でのPMテンプレートの運用イメージ

2. 我が国に適した信頼性重視保全のフォーマット案の 作成と評価

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図1 EPRIのPMテンプレート(モーターの事例)

機器タイプ モーター

機器分類カテゴリー

Yes × × × ×

No × × × ×

厳しい × × × ×

厳しくない × × × ×

頻繁 × × × ×

稀 × × × ×

状態監視タスク 頻度 故障コード コメント

1M 1M 1M 1M 3M 6M 3M 6M BS; LC; SC これらの頻度は、駆動する機器にもとづく

2M 2M 2M 2M 3M 6M 3M 6M BS; SC; MS; DL

1A 1A 1A 1A NN NN NN NN BS; SC; MS; DL

1A/EO 1A/EO 1A/EO 1A/EO 1A/EO 1A/EO 1A/EO 1A/EO DA; MB; MS; SH; SCこれが非重要,低コスト,RTF モーターである場合、この試験は該当せず効果的でない

AR AR AR AR AR AR AR AR BS, LC, SC, MBこのタスクは、他の方法を通じて高温が確認され依頼された場合だけ実施すべきである

1A 1A 1A 1A 1A 1A 1A 1A BS, LC, SC, MB 2300 vac 以上

CD CD CD CD CD CD CD CD MB; MS; SC; SH

1A/EO 1A/EO 1A/EO 1A/EO 1A/EO 1A/EO 1A/EO 1A/EO AG, SH

時間基準タスク 頻度 故障コード コメント

CD/IO CD/2IO CD/2IO CD/2IO CD/2IO CD/2IO CD/2IO CD/2IO BS; DL; MS油試料採取を実施しない場合、これらの頻度を用いる

AR AR AR AR AR AR AR AR BS; DL; MS EPRI ガイドラインを用いる

OR OR OR OR OR OR OR OR SC; DL; BS潤滑油分析を用いて、状態基準で大型サンプモーターの潤滑油交換を指示

? ? ? ? ? ? ? ? BS; CB; DA; LC; MB; MS; SC; SH このタスクの頻度は、タスク選定会議中に決定する

? ? ? ? ? ? ? ? BS; CB; DA; LC; MB; MS; SC; SH このタスクの頻度は、タスク選定会議中に決定する

サーベイランスタスク 頻度 故障コード コメント

1M 1M 1M 1M 1M 1M 1M 1M DA; LC; MB; SC; DL

OR OR OR OR OR OR OR OR DA; LC; MB; MS; SC; SH機器状態あるいはパフォーマンスの定性的観察[視覚,聴覚,触覚]

経済的検討 頻度 故障コード コメント

NA NA NA NA × × × ×

ステーター温度を監視。HCLIP が使える場合結果を傾向監視

運転が適正であることを検証(視覚,聴覚,触覚)

事後保全が必要になるまで稼働する

注油(グリース注油ベアリング)

潤滑油位を確認し、必要な場合追加(潤滑油注油ベアリング)

フィルターの目視検査を実施。必要に応じて清掃/取替

内部目視検査を実施。必要に応じて分解し清掃

モーター回路評価を実施。アクションレベルを確立して結果を傾向監視

IR スキャンを実施

超音波監視を実施

電流解析を開始/電流波形状をサンプリング

モーターヒーター電流を監視

潤滑油交換(潤滑油注油ベアリング)

重要

環境

使用

全面的な振動監視を実施。ベースラインを確立。結果を傾向監視

基本的な潤滑油分析を実施。アクションレベルを確立して結果を傾向監視

全面的な潤滑油分析を実施。アクションレベルを確立して結果を傾向監視

9

図2 国内でのPMテンプレートの運用イメージ

10

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2017/3/22

6

4.検討会の目的

•日本の火力発電における「保守」の課題に対し、信頼性重視保全のような考え方は「解」の一つとなりうるのか?

• EPRIのPMDBやPMテンプレートのような技術基盤の整備が可能なのか、あるいはより優れた日本版の作成は可能なのか?

•欧米での実情を踏まえ、日本の実情、文化的な違いを考慮し、信頼性重視保全、PMDB及びPMテンプレートの整備についての課題等について意見を提供いただく。

11

5.信頼性重視保全(RCM)とは?

•別紙参照

12

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2017/3/22

7

6.EPRIのPMテンプレートとは?

•別紙参照

13

7.今後の予定

•欧州訪問調査:1月中旬で調整中

•米国訪問調査:2月初旬で調整中

•第2回検討会:1月下旬(27日が候補日) • 欧州訪問調査報告

• 日本における信頼性重視保全のあり方

•第3回検討会:2月下旬(27日が候補日) • 米国訪問調査報告

• 信頼性重視保全の日本に適用する場合の課題

• 2017年3月17日報告書納品

14

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第1回検討会資料

信頼性重視保全(RCM)とは

1. RCMとは2. RCMの背景3. 標準的なRCM手法4. RCMの課題と解決策5. 各業界におけるRCMの導入状況

2016年12月21日(水)

日本エヌ・ユー・エス株式会社

JANUS(2016.12.21) 1

信頼性重視保全(RCM)とは

• RCM(Reliability-Centered Maintenance)とは?最適な保全プログラムを策定するための体系的な評価手法

• 機器の故障がもたらす安全上の影響、運転上の影響、劣化メカニズム・原因などに応じて、適切な保全プログラムを同定する

重要な故障モードの摘出(故障モード影響解析(FMEA)など)

上記故障の原因に対処するための保全作業の同定(ロジックツリー解析(LTA))

• RCMによってもたらされる便益(例)

• 保全プログラムに対する技術ベースの策定

• 不要な保全タスクの削除

• 新しい効果的な保全タスク(例、状態監視保全)の導入の契機

• 設備の信頼性向上

JANUS(2016.12.21) 2

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http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g30210b045j.pdf

JANUS(2016.12.21) 3

RCMの背景/経緯

• 1960年代後半、米国の航空機業界で開発。MSG‐1 (1968), MSG‐2(1970), MSG‐

3(1980)と進展。

• 1970年代後半、米国国防省でも採用。海軍では、1981年にハンドブック作成。

• 1978年に、NowlanとHeapが論文を発表し、RCM(Reliability‐Centered 

Maintenance:信頼性重視保全)と命名。

• 1985年~、米国電力研究所(EPRI)の主導による原子力発電所での導入。

• 1993~95年、EPRIの解析費用低減プログラム(ストリームラインド手法):SRCM

• その後は、PMO(保守最適化)とも呼ばれる。

⇒ 多くの米国原子力発電所、火力発電所、送変電設備、化学プラント、その他

で適用が進む。

⇒ 我が国の化学プラント、原子力発電所、火力発電所などでも導入・検討。

JANUS(2016.12.21) 4

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米電力業界におけるRCMの取組経緯

1. 1980年代、米電力研究所(EPRI)に依頼し、原子力発電所を対象にしたClassical‐RCM手法の大規模実証プロジェクトを実施(FMEAとロジックツリーを利用した標準手法)

2. RCMの有効性が実証される一方、解析コストと手間の多さにより、EPRIは“既設の発電プラントには実用的でない”(1991年)との結論

3. 電力自由化を控え、米電力業界はEPRIにRCMの実用化技術の開発を要請し、SRCM(簡略化RCM)の開発(1993~95年)に至る

JANUS(2016.12.21) 5

不具合発生のパターン(United Airlines,  1960年代)

⇒ ほとんどがバスタブ曲線(下図のAタイプ)に従わない定期分解点検が必ずしも有効ではない

JANUS(2016.12.21) 6(Anthony M. Smith, Reliability Centered Maintenance )

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RCMにおける7つの基本的な質問

1. 対象とする設備の機能とそれに関連するパフォーマンス基準

は何か?

2. その機能を達成するうえで、どのようにして故障に至るのか?

3. それぞれの機能故障の原因は何か?

4. それぞれの故障が起きたときの影響は何か?

5. それぞれの故障はどれくらい重要か?

6. その故障を予知または防止するための方法は何か?

7. 適切でプロアクティブなタスクがない場合にどうしたらよいか?

(John Moubray ; Reliability‐centered Maintenance Second Edition)

JANUS(2016.12.21) 7

標準的なRCM解析手法

1. データの収集

2. 系統(システム)の明確化

3. 系統の機能解析(システム解析)

4. 予防保全作業の選択(保守解析)

5. パッケージング(解析結果の導入)

JANUS(2016.12.21) 8

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1. データの収集

• 系統の設計、運転及び保守関係の文書、図面

• 現行の保守手順

• 系統の修理・保守記録

• 系統の故障経験など

2. 系統(システム)の明確化

• 対象系統の境界の決定

• 境界内に含められる機器の決定

• 機器リストの作成、機器タイプの決定

JANUS(2016.12.21) 9

3. 系統の機能解析(システム解析)

• 系統の機能の明確化

• 各機能の故障の明確化

• 重要な故障モードの摘出• 利用される解析手法:

• 故障モード影響解析(FMEA)• フォルト・ツリー解析(FTA)• ストリームラインド手法(クリティカリティ・チェックリスト、計

装マトリックス、その他)

JANUS(2016.12.21) 10

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図 故障モード及び影響解析(FMEA)の例

故障影響機能故障 故障モード

ローカル 系統 プラント

クリティカ

リティ備考

吐出逆止弁の

開失敗

なし 給水量の低下 プラント停止の

可能性

No 上流側吐出圧力表示が増

加する。アラームなし。

ポンプの破損 なし タービンのオーバ

ースピードによる

トリップ

プラント停止

(高出力)

Yes 吐出圧力が低下し、流量

アラームがなり、運転員

に知らせる。

弁の吸い込み なし 吸い込み圧低によ

る補助給水ポンプ

のトリップ

プラント停止

(高出力)

No 低 NPSH トリップのア

ラーム。吸込弁は手動。

吐出弁の

開失敗

なし 給水量の低下 プラント停止の

可能性

No 弁が中間位置になる表

示。弁上流の吹出圧力が

増加する。アラームな

し。

ポンプインペラの

部分的な閉塞

なし 給水量の低下 プラント停止の

可能性

Yes 吐出圧力が低下し、流量

アラームが運転員に知ら

せる。

十分な給水の提供

に失敗する

不十分な

吸い込み圧

なし 吸い込み圧低によ

る補助給水ポンプ

のトリップ

プラント停止

(高出力)

Yes 低 NPSH トリップのア

ラーム。復水ポンプの吐

出ヘッダ圧力低のアラー

ムが運転員に知らせるか

もしれない。

(出典:EPRI RCM Technical Handbook より)

JANUS(2016.12.21) 11

EPRIの著作物

4. 予防保全作業の選択

• クリティカルな故障モードに対し、ロジックツリーを使用して、

適切でコスト効果的な保全タスクを選定する。①状態監視保全(予知保全)例:振動解析、潤滑油分析、サーモグラフィ、ポンプ性能試験など②時間計画保全例:分解点検、潤滑油交換、フィルターの交換など③設計変更/事後保全その故障が容認可能でない場合→「設計変更」その故障が容認可能な場合:

・故障が直ちに認識できる場合→「事後保全」・故障が直ちに認識できない場合

(待機機器など)→④へ④故障検出保全例:機能試験、目視検査など

JANUS(2016.12.21) 12

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EPRIの保全タスク選定ロジックツリーJANUS(2016.12.21) 13

EPRIの著作物

• 故障の予知 = 状態監視保全タスク が適用できる3つの条件

• 故障への耐久性の低下が検知できること

• 潜在的な故障状態(上記のP地点)が検知できること

• 劣化の度合いが、予測可能で、潜在的故障状態(P地点)から機能故障のポイント(F地点)

まで一定であること

→ P‐Fの間隔は、状態監視タスクの間隔よりも十分長くなければならない。

安全係数2~3を設ける。

故障していることがわかるポイント

機能故障

状態(故障への耐久性)

JANUS(2016.12.21) 14

(John Moubray ; Reliability‐centered Maintenance Second Edition)

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5. パッケージング(解析結果の導入)

• 予防保全タスクの追加、削除、変更、設計変更案の作成

• 実施に主要な手順の作成

• 必要な財源、その関連問題の解決

• 実施上の問題点の摘出

• 実施スケジュールまたは優先順位の策定

• 関連部署の承認

• リビングRCM

JANUS(2016.12.21) 15

RCM解析の課題とその解決策

• 解析作業の効率化(支援ソフトウェアの利用)

• 知識ベースの提供(標準データの整備)

• 工学的判断(FMEA/クリティカリティ判断)の支援

→ 重要度判断基準の明確化(半定量評価など)

チェックリストの利用 等

• 工学的判断(保全タスクとその頻度)の支援

→ EPRIのPMテンプレート

EPRIのPMベース・データベース(PMBD)の開発

JANUS(2016.12.21) 16

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各業界におけるRCMの導入状況

JANUS(2016.12.21) 17

(出典) 「信頼性重視保全( RCM )の手法と適用状況 )の手法と適用状況」2016 年12 月13 日;(有)プラントアルファ 菅 伸介

JANUS(2016.12.21) 18

(出典) 「信頼性重視保全( RCM )の手法と適用状況 )の手法と適用状況」2016 年12 月13 日;(有)プラントアルファ 菅 伸介

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JANUS(2016.12.21) 19

(出典) 「信頼性重視保全( RCM )の手法と適用状況 )の手法と適用状況」2016 年12 月13 日;(有)プラントアルファ 菅 伸介

JANUS(2016.12.21) 20

(出典) 「信頼性重視保全( RCM )の手法と適用状況 )の手法と適用状況」2016 年12 月13 日;(有)プラントアルファ 菅 伸介

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EPRIのPMテンプレートとは?

1. EPRIのPMテンプレートとは

2. PMテンプレートの作成方法

3. PMテンプレートの活用方法

4. PMテンプレートの適用拡大と保全プログラムの発展

第1回検討会資料

JANUS(2016.12.21) 1

1.EPRIのPMテンプレートとは

• RCMのロジックツリー解析ステップを簡略化する支援ツール故障を予防するための適切でコスト効果的な保全タスクの選択を支援

• 簡略化RCM(Streamlined‐RCM)の開発実証プロジェクト(1993~1995)におけるEPRIの提案が始まり

ルーツはRCM専門家の手持ちツール

• 原子力標準の予防保全基盤(PM Basis)の整備(1997~1998)PM Basisとは、PMテンプレートとその技術的根拠のデータセット。EPRIの支援で、PM Basis作成の電力自営化プログラム(専門家パネルワークショップ)が確立され、39種類の機器タイプの原子力標準が整備

• EPRIによるPMBD(PM Basis Database)の開発とサービス提供EPRIが、PM Basis情報を電子化、データベース化し、2000年以降、インターネットのWeb環境で利用できるサービスを提供開始。その後、原子力以外(火力、送配電、水力等)の部門の利用も拡大し、企業共通技術基盤の位置づけに成長(最近では300種類以上の機器タイプを収録)

JANUS(2016.12.21) 2

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PMテンプレート

機器タイプ モーター

重要度 Yes ✓ ✓ ✓ ✓

No ✓ ✓ ✓ ✓

利用環境 過酷 ✓ ✓ ✓ ✓

過酷でない ✓ ✓ ✓ ✓

使用条件 頻繁 ✓ ✓ ✓ ✓

まれに ✓ ✓ ✓ ✓

頻度 故障原因 コメント

状態監視タスク

振動監視 1M 1M 1M 1M 3M 6M 3M 6M BS;LC;SC

潤滑油分析 1A 1A 1A 1A NN NN NN NN BS;SC;MS;DL

超音波監視 1A 1A 1A 1A 1A 1A 1A 1A BS;LC;SC;MB

モータ温度監視1A/E

O1A/E

O1A/E

O1A/E

O1A/E

O1A/E

O1A/E

O1A/E

OAG;SH

時間周期タスク

潤滑油交換CD/ IO

CD/2IO

CD/2IO

CD/2IO

CD/2IO

CD/2IO

CD/2IO

CD/2IO

BS;DL;MS潤滑油分析を行わない場合、この頻度で実施

すること

フィルター点検/交換 ? ? ? ? ? ? ? ?BS;CB;DA;LC;MB

;MS;SC;SH頻度はタスク選択会議で決定すること

分解点検 ? ? ? ? ? ? ? ?BS;CB;DA;LC;MB

;MS;SC;SH頻度はタスク選択会議で決定すること

定例試験タスク

モータースターター温度 1M 1M 1M 1M 1M 1M 1M 1M DA;LC;MB;SC;DL

稼働検査(目視、異音、感触) OR OR OR OR OR OR OR ORDA;LC;MB;MS;SC

;SH機器の品質を確認すること

1M=毎月NN=必要無しEQ=定期検査CD=状態基準IO=機能検査OR=運転員巡視

• 設計に類似性があり標準化が可能で、できるだけ大きな機器グループ(機器タイプ)単位にPMタスクと頻度(PM基準)を推奨するためのテンプレート

• 状態監視タスクの推奨を最優先し、不可能な場合、時間周期タスク、故障発見タスクを推奨• 機器の運用条件(重要度、利用環境、使用条件)の違いに応じたPM頻度の調整機能

JANUS(2016.12.21) 3

EPRI著作物

PMテンプレートの技術根拠(劣化メカニズム表)

• PMテンプレートのPMタスクが予防する故障メカニズムを規定し、その技術根拠を示す• 故障メカニズムは、業界内もしくは他業界内で実際に発生した劣化や故障事象である

• 故障メカニズムの数は膨大。劣化メカニズム表には、発生頻度が高い、もしくは発生した場合、その影響が大きい等のPMテンプレートが対象とする故障メカニズムを収録

• “故障位置”、“劣化メカニズム”、“劣化影響”、“劣化モード”、“故障に至るまでの時間”、“発見機会”、“PM戦略”等の項目が登録

JANUS(2016.12.21) 4

EPRI著作物

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バウンダリー

NY

YN

RTF を推奨 簡単なタスク

を定義

RTF?

どんな PM を行

うかを定義 非重要評価を

実施

現行の PM プログラム

故障原因

比較

適切な PM タス

クを定義

系統機器

機器は重要か?

FMEA(重要度解

析)

PM プログラムを

変更

故障モード 故障影響

系統機能

重要機能

意思決定を実施

何が重要かを

確認 非重要機能

生きたプログ

ラムを実行

系統を選定

重要機能を確認

重要機器を確認(FMEA)

非重要機器とRTF機器を確認PMテンプレート

プロセス作成

サイトPMレビュー

簡略化RCMプロセスとPMテンプレートとの関係

JANUS(2016.12.21) 5

PMテンプレートの作成

業界、他業界の運転経験

PMテンプレート

劣化メカニズム表

当該の機器タイプに関して、過去発生した設備問題事象の中で、故障予防すべきと考えられる

劣化事象を抽出

予防保全基盤 (PM Basis)【機器タイプ単位】

PMBD ( PM Basis Database)【情報システム】

専門家パネル

現場の保全を良く知る、運転、保修、機器ベンダー等のエキスパートから構成されるチーム(4~6名)

EPRIが、彼らから必要な情報を聞き出すためのワークショップを確立(3~4日間)(ワークショップ・ガイドラインを発行)

予防しなければならない故障はこれだね、このタスク

が有効だね

JANUS(2016.12.21) 6

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専門家パネルワークショップ

番号 検討項目 検討内容

1 機器グループの選定 PMテンプレートの作成単位である機器タイプを選定

2 機器境界の定義 機器の範囲および対象とする機器構成品や部品を定義

3運転条件による機器グループの分類

PMタスクや間隔に影響を及ぼす可能性のある運転条件(重要度、使用頻度、利用環境)に応じて、当該の機器タイプのグループを分類するか否かを決定

4 PMタスクの予備リスト作成 ここまでの検討結果に基づき、当該機器タイプのPMタスクの仮のリスト(予備リスト)を作成

5 機器の細分化必要に応じて、機器を保守単位に細分化する(例えば、ポンプを機械品の「本体」と電気品の「モータ」に細分化)

6 故障場所のリスト化 劣化メカニズム作成の出発点として、劣化や故障の発生場所をリスト化

7 劣化メカニズムの設定 故障場所リストに、劣化メカニズム、劣化影響、劣化進行等の情報を追記する

8 発見方法の設定 劣化メカニズムの発生や進行の発見方法を追記

9 PM方策の設定 当該劣化メカニズムの発見や故障予防に有効なPM方策を設定する

10 PMタスクのジョブリスト作成 PM方策に設定したPMタスクを作業管理側に作業指示する場合のジョブリストを作成

11 PMタスクリストの決定産業界の情報や、当該エキスパートパネルの専門家の経験をもとに、PMテンプレートの設定するPMタスクセットを決定する

12 PMタスク間隔の決定 決定したPMタスクごとに、運転条件の機器の分類単位ごとに、PMタスク間隔を決定する

13 PMテンプレートの作成 決定したPMタスクと間隔をPMテンプレートに記入し、PMテンプレートを作成

14 防止できない故障の再確認 予防できない故障メカニズムを確認し、PM以外の対処方法を決定する

• 保全の現場を良く知る専門家(運転、保修、機器ベンダー技術者等)より、予防保全に係る知見を効率良く聞き出すだめのワークショップ手順を標準化

JANUS(2016.12.21) 7

2.PMテンプレートの活用方法

• PMBDより提供される業界標準のPMテンプレートを参考に、事業者は、自社の保全能力や保全文化に合わせて自社固有のPMテンプレートを作成して運用PMテンプレートは、あくまでも参考の位置づけ

• 固有のPMテンプレートと現行PMを比較し、PMを最適化不一致の場合でも、正当化できる理由(規制要求、ベンダー保証、保険会社との確約事項等)があれば現行通り継続、無ければPMテンプレートの推奨に変更(PMレビューと言う)

• 変更後のPMの有効性をPMBDの脆弱性評価機能を活用して定量的に評価

劣化メカニズム表には、当該機器タイプのグループの最短故障期間があり、これらの故障に至る時間データをもとに、EPRIがPMBDに故障確率を計算できる機能を開発(2000年代前半~)。EPRIは、2年毎に、ヨーロッパの故障データ公開データベースであるEIReDAとベンチマーク評価し、その妥当性を検証

JANUS(2016.12.21) 8

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テンプレート作成 サイトの

PMレビュー

PM実施PMテンプ

レートの継続的改善

【PMテンプレートプロセス】

電力事業者

業界標準PMテンプレート作成

業界標準PMテン

プレートの継続的改善

業界標準PMテンプ

レート

企業実績PMテンプ

レート

PMテンプレート運営委員会EPRI

米国のPMテンプレート・プロセスの概要

• PMテンプレート運営委員会が設置され、業界標準のPMテンプレートの作成、電力事業者への情報提供、および継続的改善プロセスが確立

• EPRIは、その技術支援と、インターネットのWeb環境でデータ共有できる情報サービスを実施(PMBD)

• 各事業者も、自社固有のPMテンプレート・プロセスを確立

JANUS(2016.12.21) 9

-12,000

-10,000

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0

2,000

4,000

6,000

保全タスク増加 保全タスク減少 保全間隔短縮 保全間隔延長 保全スコープ拡大保全スコープ縮小 合計

年平均工数

0

500

1,000

1,500

2,000

保全タスク増加 保全タスク減少 保全間隔短縮 保全間隔延長 保全スコープ拡大 保全スコープ縮小

件数

PMレビュー

PM変更の件数グラフ

PM変更のコスト増減グラフ

• PMタスク増加 (+)• PMタスク減少 (-)• PM間隔短縮 (+)• PM間隔延長 (-)• PMスコープ拡大(+)• PMスコープ縮小(-)

【凡例】+:PMコスト増ー:PMコスト減

• 固有のPMテンプレートが本店側で承認され、サイトに交付• サイトは、ユニット、発電所を横断して、対象の機器グループに適用し、機器毎にPMレ

ビューを行い、PM変更を行う(PMレビュー結果を文書化し、PM根拠を明確化)• PMレビューの対象機器の数量は膨大となるが、PMの標準化、一貫性の保証ができる効果

がある。特に、従来からのメーカ推奨による時間基準タスクから状態基準タスクに移行できる機会を得られることが大きな効果となる

JANUS(2016.12.21) 10

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PMBDの脆弱性評価機能のベンチマーク評価

EPRIレポート引用;資産パフォーマンスデータベース(1008553)

PMBD

EIReDA

• 機器タイプ毎の故障率に関して、PMBDの脆弱性評価結果と、ヨーロッパ産業信頼性データバンク(EIReDA)との定期的なベンチマーク評価は実施されており、良い一致をみている

• PMBDは、米国電力業界の正規の故障データベースとして認知されている

JANUS(2016.12.21) 11

EPRI著作物

4.PMテンプレートの適用拡大と保全プログラムの発展

• PMテンプレートは、米国の火力および原子力発電所のPMプログラム刷新の礎となり、保全モデルが確立された

火力の保全モデル;PMO(Plant Maintenance Optimization)(2003.12)

原子力の保全モデル;SNPM(Standard Nuclear Performance Model) (2003.11)

• PMテンプレートはPMBDに進化し、多くの保全プログラムに適用拡大し、その礎となる

JANUS(2016.12.21) 12

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PMプログラムの刷新

EPRI M&Dセンター

(フィラデルフィア

Eddystone火力発

電所;1989年~)

EPRIパルアルト

研究所ワークマネジメント技術(Planning&Scheduling)

Work Management Guideline

1998年

RCM簡略化技術(Streamlined‐RCM)

SRCM Guideline

1993年~1995年

予知保全技術(Predictive Maintenence)

プラント保全最適化モデル(PMO;Plant Maintenance Optimization)

PMO Guideline

2003年12月

PdMGuideline V1‐V4

1994年~1999年

1990 1995 2000 2003

原子力

(1980年代、正統派

RCM大規模検証

統合&大規模適用

電力自由化

JANUS(2016.12.21) 13

火力の保全モデル(2003年12月制定)

信頼性

重視保

全(RCM)

予防保全(PM;Preventive  

Maintenance)

事後保全(CM;Corrective  

Maintenance)

予知保全(PdM;Predictive 

Maintenance)

プロアクティ

ブ保全PAM;ProActive  

Maintenance)

Work Control

Work Execution

Work Close‐out

継続的改善(Continuous Improvement)

作業管理プロセス

是正措置プロセス

プロアクティブ保全プロセス

RCMプロセス

PMO: Plant Maintenance Optimization

JANUS(2016.12.21) 14

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原子力の保全モデル(2003年11月発行)

SNPM: Standard Nuclear Performance Model

RCMプロセス

アセットマネジメントプロセス

JANUS(2016.12.21) 15

EPRIレポート:Electronic Performance Supports System (EPSS) As‐Found Condition Assessment Hardware/Software (2004.10) 引用

PMBDの適用拡大

JANUS(2016.12.21) 16

EPRI著作物

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第二回検討会: ・ 議事メモ

・ 配布資料

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検討会議事録 「信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討」

第二回検討会

日時: 2017 年 1 月 27 日(金)14 時~16 時 場所: 日本エヌ・ユー・エス 大会議室 参加者(敬称略):

検討委員:早稲田大学 高田、東北大学 青木、火力原子力発電技術協会 中澤 電力中央研究所 藤井、

経済産業省: 商務流通保安グループ 電力安全課:石原、潰瀧 オブザーバー: 菊地(ファンディール)、ほか 1 名 事務局(JANUS):伊藤、安部、大久保、谷本、富田

第二回検討会議事次第: ご挨拶ほか 調査の背景と目的 欧州訪問調査報告 欧州の火力発電における RCM 今後の計画 提出資料: 「信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討」第二回検討会 第二回検討会資料 欧州訪問調査報告 第二回検討会資料 欧州の火力発電における RCM 主な議事: 現在委員をお願いしている 5 名のうち、4 名の委員の出席のもと、第二回の検討会を実施

した。(高木教授(東北大)は都合によりご欠席。) 事務局から上記提出資料を用いてご説明を行った後、以下の質疑応答を行った。また、最

後に今後の計画などについて各位からのご意見を伺った。 主な質疑応答やご意見の内容を以下に示す。

VGB(ドイツ)訪問に関する質問 Q:VGB ガイドラインとはどういう位置づけのものか(石原) A:これは規制要求ではなく、事業者の規制対応を支援するために、法令をかみ砕いてガイ

ドラインという形にまとめたものである。

1

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Q::規制要求による点検は高圧部分のみなのか(P.13)(石原) A:そうである。正確にいうと、ハザード評価にてハザードがあると判断した設備で、かつ

高圧設備に対して法令点検を実施する。 Q:この VGB のスクリーニング方法は、パフォーマンスベースのようなものなのか(青木) A:従来は規範的な規制であったものが、2012 年以降はハザードベースで評価するという

規制に変わった。米国で最近活用されているパフォーマンスベースの規制に近いと考え

る。 Q:KISSY のフォーマットは入手できたのか(P.15)(高田) A:依頼はしているが入手できていない。あるデータベースについては、8 項目に分かれて

いるということだけを教えてもらった。 Q:P.18 右上のグラフについて、縦軸は何か(青木) A:左側のグラフの縦軸は事象の数、右側は発電損失を表している。 Q:つまりこれらの縦軸の値が大きいほど、経済効果が悪いということか(青木) A:そうです。また、この事象 A1、A2 が具体的にどういう事象であるかは教えてくれなか

った。 Q:KISSY は自分のプラントが、どのような位置であるのかをベンチマークをするものだ

と考えれば良いのか(藤井) A:そうです。例えば、P.16 を見ると、自分のプラントの停止時間が、他プラントと比較し

て長いのか、短いのかがわかる。 Q:unplanned とはどういう状態であるか(P.16)(石原) A:トラブルにて停止している状態である。 Q:VGB は日本の火原協とのことだが、少し違う気がする(石原) A:ご指摘の通り。欧州内の事業者の意見を扱っていること、ガイダンスを作っていること、

運転訓練機関でもあることなど、活動分野は幅広い。 LEAG 社(ドイツ)訪問に関する質疑応答 Q:LEAG 社は、VGB に RCM を売り込んでいるのか(潰瀧) A:売り込んではいない。同社の RCM 手法は独自に開発したもので、自社内での使用に限

定されている。VGB の KISSY ベータベースの一部は利用している。

2

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Q:LEAG 社は VGB の RCM を用いているのか(青木) A:RCM 自体は独自の手法で実施している。そもそも VGB は RCM に関するガイドライン

等は作っていない。 Q:P.24 のプログラマティック RCM の「プログラマティック」とはどういう意味合いがあ

るのか(潰瀧) A:VGB ガイダンスにある RIMAP 手法はアカデミックすぎるとみている。独自に簡略法

の RCM を作成したもので、この自分たちで作り上げた手法を「プログラマティック」

と呼んでいるようである。 Q:今後の再生エネルギーの増加を鑑みると、火力発電所は停止の期間が増えると思うが、

保全プログラムは 2、3 年毎に変更すれば問題ないという理解なのか(P.25)(藤井) A:これまでの運転状況や稼働状況を考慮して、概ね 2、3 年周期で見直しをすれば良いと

判断しているようだ。 FORTUM 社訪問に関する質問 Q:プラントの運用や保守について保険会社と相談するのは、日本以外の国ではよくあるこ

とである。日本が特殊であるといえる(青木) A:ご指摘の通りです。 Q:MAXIMO についてだが、これはデータベースの構築管理や教育が非常に大変であり、

なかなかやりきるのが難しいが、保全を適正化、合理化するには大変重要と考える。(青

木) A:私も電力殿からそのような話を聞いたことがある。 ヨーロッパの文献調査に関する質疑応答 Q:良好事例が多いが、何かうまくいっていない事例はあったか(石原) A:そのような事例は特に見当たらない。傾向としては、RCM を教科書通りにやると手間

がかかるので、如何に簡略化するかが重要であるようだ。 Q:P.42 のアイルランドの事例は非常にユニークであると感じた。故障確率をメーカである

シーメンスから入手したとあるが、通常メーカからそのような情報を入手するのは難し

いと思う。どのような工夫があったのか(藤井) A:機器の購入の契約前に、そのような内容も契約条件に含めて、入札をかけていたようで

ある。

3

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ご意見: MAXIMO 等を使うにしても、保守を見直すためのワークショップには必ず外部のファ

シリテータを入れる必要がある。社員だけのワークショップだと、各々の経験がバラ

バラでなかなかまとまらないことが多い。さらに、フィンランドでは、運転コンサル

会社があり、そこからベテラン運転員を各発電所に派遣していると聞いた。この手法

は、限られた運転員を共有し、全体最適化を図った良い方法である。今後は日本でも、

ベテラン運転員が減ることに対する対策が重要であると思うが、日本はドキュメント

化が苦手である。しかし、データベース化するのは重要だと思う。(青木) 予防保全テンプレートはあるべき保全を表形式に整理した結果である。これには、状

態監視を含む予防保全方法や頻度の根拠が記載されており、それらが明記されている

ことがポイントである。テンプレートは保全ノーハウの集合体であり、そこに保全の

経験を踏まえた知見やノーハウが結集されるように運用する必要がある。また、継続

的に適正化されていくことが重要である。(青木) 欧米で RCM が活用されている背景には、アベイラビリティの向上が求められているこ

とと、運転・保守費用を下げる上では時間計画保全主体では限界があるという二つの

課題を解決するうえで、これが重要な手法と認識されているのだと思う。(中澤) アベイラビリティを上げることに関して、コスト低減の目的を最優先とすることは日

本では難しいと思う。別の方策というかロジックが必要であると考える。(青木) どんなにいい保全プログラムがあろうとも、それを変更する意思決定、決断ができな

いと前に進まない。TBM 主体から CBM に移行する際には、決断しなくてはいけない

が、慎重な判断が求められる日本ではそれが非常に難しい。しかし、やらなければ保

全の高度化(安全性の向上、経済性の向上)は進まない。(青木) 米国訪問調査では、事業者の決断がどのようになされているのかを調べてきてほしい。

また、日本でなぜ RCM が導入されていない、あるいは体系化されていないのかについ

ても検討してほしい。(石原)

以上

4

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平成28年度電気施設保安制度等検討調査

信頼性重視保全によるスマートな保安

の確保に関する調査・検討

第二回検討会

2017年1⽉27⽇(⾦)14:00〜16:00

⽇本エヌ・ユー・エス株式会社

議事次第

1. ご挨拶ほか

2. 調査の⽬的と背景

3. 欧州訪問調査報告

4. 欧州の⽕⼒発電におけるRCM

5. 今後の計画2JANUS(2017.1.27)

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1. ご挨拶ほか

• ご挨拶• 検討会委員のご紹介• 参加者のご紹介• 事務局の紹介• 配布資料確認

3JANUS(2017.1.27)

2.調査の目的と背景

4JANUS(2017.1.27)

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2.調査の目的と背景

電⼒⾃由化による競争促進新規事業者の参⼊労働⼈⼝の減少

背景保守要員の不⾜保安の質・安全の確保保守の効率化知識・技術の共有化

⽶国の電⼒業界:・信頼性重視保全の普及と活⽤・その技術基盤であるPMDBとPMテンプレートを業界で整備

⽬的

信頼性重視保全の考え⽅、PMDBやPMテンプレートなどの技術的な要素は、上記の課題の解決に使えるのではないか?

⽇本と⽶国(あるいは欧州)との違いの把握⽇本に適したPMテンプレートの試作信頼性重視保全を⽇本に適⽤する際の課題の摘出

5JANUS(2017.1.27)

3.欧州訪問調査報告

6JANUS(2017.1.27)

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スケジュール

⽇次 ⽉⽇ ⾏動

1 1⽉15⽇(⽇) ⽻⽥発→フランクフルト着、エッセンへ鉄道で移動

2 1⽉16⽇(⽉) 終⽇、VGB訪問

3 1⽉17⽇(⽕) エッセンからベルリン経由でコットバスへ鉄道で移動

4 1⽉18⽇(⽔) 終⽇、LEAG社訪問

5 1⽉19⽇(⽊) コットバスからベルリンへ鉄道移動、ベルリンからヘルシンキへ⾶⾏機で移動

6 1⽉20⽇(⾦) 終⽇、FORTUM社訪問

7 1⽉21⽇(⼟) ヘルシンキ発→フランクフルト経由→22⽇(⽇)⽻⽥着

7JANUS(2017.1.27)

VGB概要(1)• 1920年設⽴。発電及び熱供給に関わる事業者の⽀援を⽬的とした技術協会。会員の会費により運営されている。

• 通常会員は電⼒会社に限定され、協会や研究機関向けの関連機関会員、メーカーやコンサル向けの⽀援会員があり、それぞれの年会費が定められている。

• 欧州を中⼼に35カ国、488社/機関の会員がいる。90%は欧州の会員。メンバー企業の総発電量は461GW(下図参照、1年前の状況)

8JANUS(2017.1.27)

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VGB概要(2)

• メンバー企業全体の発電設備の構成は、化⽯燃料が50%強、原⼦⼒が約25%、再⽣可能エネルギー(⼤規模⽔⼒含む)が20数%であり、原⼦⼒が減少傾向、再⽣可能エネルギーが増加傾向にある

• VGBのミッション• 技術的なノウハウの創成、交換及び引き渡しのための国際的プラットフォームの提供

• 会員と関連するロビー機関に対し、技術的なノウハウの保護と提供• 運転者と供給者の密接な協⼒を通し、技術的及び操業上のスタンダードを定義• 各国または国際的な資⾦に基づく研究開発プロジェクトの開始と調整• 専⾨家の知識プールへの会員のアクセス保証• 技術的サービス、エンジニアリング、コンサルティング、建設時の監督の提供• 運転訓練の提供

• 技術⽀援委員会の下に12の技術分野があり、その下に50以上のテーマについての検討が実施中

• 各テーマについて1700名の専⾨家が会員から選ばれ、会議、ワークショップなどを開催

• 産業界向けのガイドラインやスタンダードの作成。合計300件作成済み。うち100件が英語版あり。その作成は、会員からの要請に基づいて実施。

• ガイドラインやスタンダードのほとんどは規制に取り込まれたものではない。

9JANUS(2017.1.27)

VGB概要(3)

• VGB PowerTechの組織構成

10JANUS(2017.1.27)

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火力発電所の規制について(1)

• VGBスタンダード「蒸気ボイラー発電所、圧⼒容器施設、及び⾼圧⽔・蒸気配管の機器に関する状態監視と検査」(VGB‐R 506e、2012)

• 産業安全と保険に係る法令(BetrSich V)15条:所有者はハザード評価と技術的安全評価に基づいて点検期間を定めること

• 産業安全に関わる技術規則:TRRS‐1111(VGBガイドライン)「産業安全と保険に関わる法令の実施ガイドライン」

• 2012年版より、ハザードのある部分についてのみ法令点検を要請。ハザードのある部分は、上記ガイドラインに従い、事業者⾃⾝の評価により確定

• 法令点検は、⾼圧設備のみ(頻度は下記の表、単位は年)

外観検査 内部検査 ⽔圧試験

ボイラー 1 3 9

圧⼒容器 2 5 10

単純な圧⼒容器 ‐ 5 10

配管 5 ‐ 5

11JANUS(2017.1.27)

火力発電所の規制について(2)

• 規制要件があるのは⾼圧部分のみ。それ以外の場所の点検は事業者の独⾃判断で実施可能

• ⾼圧部分とそれ以外の境⽬は規制側と産業界で判断の⾷い違う部分もあり(例:タービン設備)

• RWEでは、タービン設備を24年間⼀度も開放点検せず運転を続け、そのまま新しい設備に交換した事例もあり

• 前記のTRRS‐1111(VGBガイドライン)の付録4には、RIMAP(Risk‐based Inspection and Maintenance Procedures for European Industry)⼿法に関する解説あり

• RIMAPは、複雑過ぎ、⼿間がかかるということで⽕⼒発電では、普及していない

• 同ガイドライン付録6には、SAP TS ecmを⽤いた最新の状態監視技術により、点検間隔の延⻑を達成したFrimmersdorf⽕⼒発電所(褐炭、300MW)の事例がある。保守最適化による稼働率向上の事例

• 再⽣可能エネルギーの増加に伴い、在来⽕⼒は起動停⽌回数が当初の想定より増加。そのため、サイクル疲労が増加による新たな機器故障が発⽣しないかどうかが課題となっている。

12JANUS(2017.1.27)

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KISSYについて• KISSYは、VGB技術グループが扱うテーマの⼀つ、パフォーマンス指標の下で運営されている発電所情報システム

• 10カ国(ベルギー、チェコ、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、ラトビア、ポルトガル、南アフリカ、オランダ)の20会員がユーザー。EDF、e‐on、Vattenfall、RWE、Enelなど欧州の代表的事業者がユーザーに含まれる。

• 原⼦⼒発電所(95基)、無煙炭(257基)、褐炭(84基)、⽯油/ガス(214基)、⽔⼒(171基)の合計821プラントのデータが含まれる。

• ユーザーは、⾃社発電所のアベイラビリティ関連データとアンアベイラビリティに関わる事象に関する情報とデータを所定のフォーマットに従って提出する。原⼦⼒は毎⽉、⽕⼒と⽔⼒は年に1回。

• 情報は匿名で処理され、ユーザーに公開される情報は、個々のプラントが特定できないよう処理

• アンアベイラビリティに関する不具合情報は、その事象の時期、タイプ、影響など必須8項⽬について定められたフォーマットに記⼊。対象機器は、KKSと呼ばれる3階層のコード体系で整理

• アベイラビリティ、アンアベイラビリティに関わる様々なパフォーマンス指標が、Webサイトでユーザーに対し提供され、年報も作成、提供される

13JANUS(2017.1.27)

VGBの保守最適化に対する取り組み

• 各発電所のマネージャ(保全部⾨の部⻑)が年2回集合する会合を主宰。30名ほどが集まり、課題の共有などを⾏う

• 保守最適化プロジェクトグループ(PGMON:Power Generation Maintenance Optimization Network)では、事業者の本店の保守担当部⻑クラスが年2回集まり、保守の最適化関連で⾃発的にプレゼン。いくつかの課題について話し合いを実施

• 各電⼒会社は競争環境下にあるものの、事業者同⼠の課題共有は有益であるという視点

• 運転効率を維持しながらのO&M費⽤の削減に主眼• 競争環境下でも、産業界として⼀つにまとまった声を上げることは⼤事

• 事業者間(メーカーの関与なし)で、可能な範囲で良好事例に関する情報を交換し、お互いの技術⼒向上に貢献している

14JANUS(2017.1.27)

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LEAG社概要(1)• ドイツ東部最⼤のエネルギー会社4ヶ所の褐炭の⽣産・販売、炭鉱近接の4つの褐炭発電所の運転、地域熱供給などを⾏う

• エネルギー会社であるEPH社(50%)と投資会社PPH(50%)が所有。2016年まではVattenfallが所有していたものをLEAG社が買収

• 4つの発電所は、下記のとおり

発電所 設備容量 発電量(2015年)

Janschwalde 3,000MW(500MW×6) 20.2 TWh

Schwarze Pumpe 1,600MW(800MW×2) 11.5 TWh

Boxberg 2,575MW(500MW×2、900MW、675MW) 18.5 TWh

LIppendorf 920MW 5.4TWh

• 訪問先のJanschwalde発電所は、ドイツにおいて第3位の規模の⽯炭⽕⼒発電所

• 1976年から1986年に建設。元はロシア製。ドイツ統⼀後、1990年代半ばにドイツの技術で改修

• Janschwalde発電所とCottobusの間にある露天掘り炭鉱からの褐炭を⾃社の鉄道で輸送

15JANUS(2017.1.27)

LEAG社概要(2)• 全負荷時は1⽇8万トンの褐炭を燃焼。発電所内の保管量は1.5⽇分• プラント2基で3基の冷却塔を使⽤。冷却塔は、⾃然循環冷却で⾼さ150m、底部の直径90m、上部直径50m。3基のうち、2基は排気筒も兼ねる

• 各ユニットの定格出⼒は500MWであるが、⾃由化市場に対応するため、500MWから180MWまで柔軟に対応可能

• 4つ発電所に合計14ユニットの発電設備、蒸気ボイラー22台、タービン36基、粉砕機(ミル)144基、ポンプ7,100台を有する

• 発電パフォーマンス測定ポイント205,000点、寿命管理対象機器60,000台、法定点検が必要な機器14,000台、KKS(機器分類)1,000,000

16JANUS(2017.1.27)

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LEAG社における保守最適化(1)

• 2012年、所有する14ユニットの発電プラントに対し、1年間かけて保守の最適化検討を⾏い、保守活動の⾒直しを実施。⽬的は、保守コストの低減

• ⽤いた⼿法は、プラグマティックRCMという独⾃に開発した簡略化RCM⼿法

• 通常のFMEAは⼿間がかかるため採⽤せず。ワークショップ形式で、所内の専⾨家が所定の質問リストをチェックし、その重要性を判断していくという仕組みを採⽤。

• 故障の起こりやすさとその影響を考慮する際にリスクマトリックスを使⽤。このリスクマトリックスは、オランダの専⾨家が考案したものを⾃社でカスタマイズしたもの

• 故障の起こりやすさや影響を評価する際には、過去3年分の⾃社の不具合データに加え、VGBのKISSYデータベースも利⽤

• 保全タスクについて、ワークショップ形式でその合理化が可能かどうかを検討。保全タスクを変更した場合のリスク変動の程度を評価し、変更できるかどうかを検討している。このとき、SAPシステムで管理されている保全履歴のレビューを実施

17JANUS(2017.1.27)

LEAG社における保守最適化(2)

• ワークショップは設備ごとに実施。各発電所から最低2名、全部で8〜12名で1つのワークショップを形成。2週間ごとに約2⽇間かけて検討。各ワークショップの準備は6週間前から実施。

• ほぼすべて⾃社職員が実施しているが、ワークショップのモデレーターとしてコンサルタントを利⽤

• 保全プログラム変更後も定期的(2、3年ごと)に変更の妥当性を評価• ⾃社の経験とOEM推奨基準を元に、年間保守費⽤とリスクのバランスを⾒ながら、保守頻度を最適化

• ⾼圧設備(法令で保守頻度が規定)は、最初から対象外(14ユニットで14,000点)

• 最適化実施の結果、10%程度の保守コストの削減を達成。かけた労⼒とコストを⾒ても、実施してよかったという認識

• 電⼒⾃由化の下では、落札することと落札した時間帯に適切に発電することが重要である。そのため、設備について、⾼いアベイラビリティと運転の柔軟性の確保が最も重要。ユニットの稼働率は、40〜50%程度

18JANUS(2017.1.27)

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LEAG社:その他

• 予防保全は、時間計画保全と状態監視保全の組み合わせ。主に回転機器が対象

• タービンなどの⼤型機器に対してはオンラインモニタリングを実施。ただ、本社での監視ではなく、サイト内での監視

• 重要機器については、ライフタイム・モニタリング・プログラムを実施。運転開始からの機器の稼働時間総計、圧⼒、温度などの履歴を記録

• ⽶国EPRIのRCMやPMBDは全く⾒ていない。VGBの活動に注⼒しており、VGBの保守管理ワークグループにも積極的に参加

• RIMAPはアカデミック過ぎて使っていない• 所有者がVattenfall社からLEAG社に代わっても、保全活動ほか運転管理への影響は皆無。現場を尊重してもらっている。

• 発電所⾒学• 6号機⾒学。2基で共通制御室1つ。運転員3名、3交代、5チーム体制• プラズマバーナー設置。ミルが使⽤できない程の低負荷(100MW程度)でも発電可能とするための設備。柔軟性向上策の⼀つ。

19JANUS(2017.1.27)

FORTUM社概要(1)• FORTUM社は、フィンランドの事業者で、北欧諸国、バルト諸国、ポーランド、ロシア北⻄部を主要なサービス対象地域とし、発電と熱供給事業を中⼼に、エンジニアリングやコンサルティングサービスも提供している

• 1998年設⽴。フィンランド国営電⼒IVO社とネステ⽯油の合弁会社。2005年、ネステの資産は分離。50.8%の株式を国が保有

• 従業員数約8,000名。フィンランド国内は約2,000名。

20JANUS(2017.1.27)

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FORTUM社概要(2)

• 発電の設備容量及び熱⽣産設備の容量は、下表の通り• CO2フリーの発電を指向。現在、発電量の64%がカーボンフリー。

MW Finland Sweden Russia Poland Other Total

Hydro 1,535 3,088 - - - 4,623

Nuclear 1,465 1,539 - - - 3,004

CHP 438 0 4,903 197 93 5,631

Pumpーup 376 12 - - - 389

Others - 30 - - 15 45

Total 3,815 4,669 4,903 197 108 13,692

MW Finland Sweden Russia Poland Other Total

Heat 1,974 0 12,696 1,129 812 16,611

21JANUS(2017.1.27)

FORTUM社概要(3)• エネルギー源ごとの発電量(TWh)及びエネルギー源ごとの熱⽣産量(TWh)の過去3年の経緯は、下表のとおり

• 電⼒販売は⾃由競争、熱販売は⾏政による固定価格• ゆえに、電⼒販売量は増加しているものの、売上及び利益は減少傾向(それぞれ、60億EUR→35億EUR、18億EUR→8億EUR)

2015 2014 2013

Hydro power 25.0 22.3 18.0

Nuclear Power 22.7 23.8 23.7

Natural gas 24.1 22.6 20.0

Coal 2.9 3.6 4.0

Biomass and biofuels

0.0 0.9 1.1

Peat 0.0 0.1 0.1

Others 0.3 0.2 0.5

Total 75.9 73.4 67.4

2015 2014 2013

Natural gas 24.2 26.7 26.1

Coal 6.0 5.1 4.6

Biomass and Biofuels

2.0 2.0 2.8

Heat pumps, electricity

0.3 0.1 0..3

Waste‐derived 0.4 0.3 0.4

Oil 0.1 0.1 0.1

Peat 0.3 0.3 0.3

Total 32.2 34.6 34.6

22JANUS(2017.1.27)

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FORTUM社概要(4)

• FORTUM社戦略

23JANUS(2017.1.27)

FORTUM社概要(5)

• Power Solution部⾨は、約200名の職員が⾃社及び⾃社以外の事業者に対し、運転保守分野を中⼼にサービス業務を展開

• サービス分野は、⽔⼒、⽕⼒、原⼦⼒、CHP、再⽣可能エネルギーと幅広い技術を対象に、EPC(エンジニアリング・調達・建設)及び運転保守⽀援を実施。顧客の設備の監査業務も提供

• 運転保守、アセット管理等に関わるITソフトウェアも販売。⾃社での利⽤経験を活かし、⾃社で開発。他社ソフトのカスタマイズ版や完全⾃社開発のソフトウェアがあり、⾃社利⽤だけでなく、他社への販売を実施

• 保守分野では、RCMをベースとしたReMaint®というソフトウェアを開発し、販売

• 保守管理ツールとして、IBMのMAXIMOという⾃社での利⽤経験に基づき、カスタマイズして販売⽤のパッケージソフトへ。SAPよりも、発電所の保守管理に向いているという認識。

• ⾃社の保守管理データは、すべてMAXIMOを⽤いて管理しており、その他の管理ツール(アベイラビリティ管理やライフサイクル管理など)と連携可能。

24JANUS(2017.1.27)

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保守高度化と保守高度化支援ツールReMaint®(1)

• 点検に関する法令で決められているのは⾼圧機器のみで、その頻度は6〜8年

• ⾼圧機器以外は事業者が⾃由に決められるが、重要機器については保険会社との協議が必要

• 多くの設備は、12〜18ヶ⽉ごとに外観⽬視点検を実施• ReMaint®は、保守コストの低減のために⾃社開発したソフトウェア。

2000年頃にロビーサ原⼦⼒発電所向けに開発・適⽤したRCMの応⽤⼿法がベースとなっている

• ベテラン保守技術者の減少などを背景に、保守⾼度化の必要性が認識され、本ツールが開発された

• 通常のRCMを簡易化するための⼯夫が施されている• クリティカリティ解析によるスクリーニング。クリティカリティは通常、CA‐1、CA‐2、CA‐3の3区分だが、4区分などへ変更も可能。CA‐1区分の設備には、時間計画保全(分解点検)と状態監視保全(CBM)の適⽤、CA‐2区分の設備には、TBMまたはCBMのいずれかを適⽤。CA‐3区分の設備には、事後保全または類似した簡易な(コスト効果的な)保全を実施

25JANUS(2017.1.27)

保守高度化と保守高度化支援ツールReMaint®(2)

• 解析の単位は,P&ID図に表記される機器の単位で実施• 最も重要と分類される設備については、FMEAを実施。故障モードと故障影響の解析は、それぞれを半定量的に評価し、2次元のリスクマトリックス上で表現し、重要度を判定するという⼿法

• 故障確率は⾃社経験に基づくもの(MAXIMO登録データ)を利⽤• 保守タスクについては、機器タイプごと、かつ上記の重要度分類ごとに推奨保全をリスト化している。EPRIの保守テンプレートに類似。

• ReMaint®を⽤いた保守⾼度化サービスでは、通常、ファシリテータ(FORTUM社が派遣)の指導の下、発電所の関係者数名での話し合いの場を設置。このチームには、電気、機械、計装などの保守や運転の部⾨から専⾨家1名ずつ、意思決定者1名の合計5〜6⼈で実施。

• 全ての機器にFMEAを⾏うのは現実的ではないため、スクリーニングにより重要機器を選定し、それらにのみFMEAを実施する簡略化⼿法を独⾃に考案

• ロビーサ原⼦⼒発電所を対象に開発した⼿法を在来⽕⼒向けにカスタマイズして作り上げた

26JANUS(2017.1.27)

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保守高度化と保守高度化支援ツールReMaint®(3)• ⼀旦、保全プログラムを決めたら、運転経験を反映していく⾒直しプロセスに⼊る(PDCAサイクル)。KPIを定め、モニタリングを実施することが重要。MAXIMOのような管理ソフトウェアの利⽤が推奨される

• FORTUM社は、独⾃のKPIやMAXIMOの利⽤を推奨するものの、顧客の状況や各国の規制状況などに応じ、柔軟な対応が可能

• ReMaint®を⽤いた解析には数ヶ⽉を要する。⾃社及び他社の発電所への適⽤経験に基づき、この⼿法の適⽤により、O&M費の10%低減が⾒込める

• VGBのKISSYデータベースは知っているが、利⽤するメリットや参加時の義務を考え、不参加を選択している

• 保守タスクは、最初はメーカー推奨を重視して決められるが、メーカー推奨値は機器の重要度とあまり関係がないので、運転経験に基づきすぐに⾒直すことになる。

• パフォーマンスを⾒ながら回していく問題解決プロセスは、トヨタの改善⽅式に倣っている

• 重要度分類の例として、CA‐1が6%程度、CA‐2が27%程度、CA‐3が67%程度となるが、だいたいどこもこのぐらいの感じになる

27JANUS(2017.1.27)

4.欧州の火力発電におけるRCM

28JANUS(2017.1.27)

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EDFにおける火力発電所へのRCM適用(1)• フランスのEDFは、1990年に⽶国の電⼒業界でのRCMの経験をレビューした上でEPRIのRCM⼿法を習得し、⾃社の原⼦⼒発電所への適⽤を開始

• 原⼦⼒発電所では、⾼い安全性を維持した上で、保守費⽤を低減し、稼働率も制御することを⽬的に、既存の予防保全プログラム⾒直しのためにRCMを利⽤

• 系統レベルのFMEA、機器レベルのFMECA、及びロジックツリーを⽤いた標準⼿法をベースとしたが、安全上重要な部分については、重要度判断の際に炉⼼損傷頻度に占めるリスク重要度の定量的指標を採⽤。

• 設計が標準化されているため、ある程度詳細な解析をしても、その結果を他のプラントへ適⽤できるという特徴がある

• この経験を活かし、⽕⼒及びそれ以外への適⽤を進めている

29JANUS(2017.1.27)

EDFにおける火力発電所へのRCM適用(2)

• 1996年と97年に運転開始した2基のガスタービン(各123MW)に対し、建設前の1994年にRCMを適⽤

• メーカー推奨値があったものの、保全タスクの数がEDFの運転条件に適していないと判断されたため、RCMを⽤いた保全プログラムを作成

• 原⼦⼒のように多数のユニットに適⽤するわけではないため、よりシンプルな⼿法を採⽤し、運転経験も⾜りないため、専⾨家の意⾒を多⽤

• ⽯炭⽕⼒発電所は、1980年代はベースロード運転に使⽤、その後に負荷追従運転に変更。現在、電⼒⾃由化に伴い、必要な際に直ちに稼働し、KWhあたりの発電費⽤を競争⼒あるものとすることへ運転モードを変更。

• この新たな運転モードにふさわしい予防保全を検討するため、RCMを適⽤し、従来の保全プログラムの⾒直しを実施

• 解析⼿法は原⼦⼒⽤RCMの改良版。機能解析は系統レベルで⾏い、機器レベルではグループ化して機能解析を実施。重要な機能を果たす機器に対して詳細なFMECAを実施。

• 故障の重要度評価においては、起動回数の増加と環境上の制約を考慮• ボイラーについては、多くが配管、チューブ、サポートなどの静機器で構成されるため、劣化メカニズムに注⽬した検討を実施。

• ⼀つのプラントの結果を他プラントにできるだけ再利⽤できる⽅法を考案30JANUS(2017.1.27)

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ENELの火力発電所におけるRCMの適用(1)

• イタリアのENEL社は、国内に約60基の⽕⼒発電所を運転しており、その総発電容量は37,000MW超

• 同社は1990年代、⽕⼒発電所向けRCMのパイロットスタディを実施し、その結果を1996年のEPRIの会議で発表

• 対象となった発電所は、La Casella⽕⼒発電所(各320 MW、4基、⽯油燃料)

• 解析は、⽶国EPRIとの契約の下で⽶国ERIN社の⽀援を受け、同社開発のSRCM⼿法であるプラント保守最適化(PMO : Plant Maintenance Optimization)⼿法を採⽤

• 実際の作業は、EPRIの指導を受けた発電所の職員で構成されるチームが実施

• パイロットスタディの⽬的は、「EPRIで開発された簡略化RCM(SRCM: streamlined RCM)⼿法が同社の発電所に適切に適⽤できるか判断すること」と「RCM解析による効果がどの程度なのかを評価すること」

• 第1段階は、復⽔・給⽔系を対象に解析⼿法の訓練を受けながら実施。第2段階は、5つの系統(ベント・ドレン・化学物質添加系、ボイラー起動系、ボイラー補助系、ブローコンプレッサ系、空気・燃焼排ガス系)に適⽤

31JANUS(2017.1.27)

ENELの火力発電所におけるRCMの適用(2)

• PMO解析は以下の4ステップからなる。1.系統機能の確認2.系統機能の機能故障モードの評価3.故障とその影響から⾒た重要度の評価4.重要な機能故障に対処するために効果的で適⽤可能な保守タスクの選定

• 解析の結果は、他の発電所で⾒られているのと同様、SRCM解析の有効性を確認。具体的には、以下の通りである:

• PMO⼿法は⽕⼒発電所に対して適切に適⽤可能• SRCMアプローチにより、解析結果の品質を下げることなく、RCM解析を⾏うための時間を⼤幅に低減

• PMOは最適な保全プログラム策定のために効果的• 本解析によって得られた保全プログラムは、重要性の判断基準や保守履歴の変更があっても、容易に更新することが可能である。

32JANUS(2017.1.27)

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ESB社Poolberg CCGT発電所へのRCM適用

• アイルランドの電⼒会社ESB社(Electricity Supply Board of Ireland)は、4,000MWの設備容量を持ち、最近は毎年4%の成⻑を達成

• その電⼒需要に応えるためのコスト効果的な発電所として、CCGT発電所をダブリン近くのPoolbergに建設することを決定

• ガスタービンは⼊札の結果、シーメンス社の150MW V94.2と契約• ESB社はシーメンス社幹部と⾯談し、RCMの概念を説明し、同社の関与が必要なレベルを相談。解析の対象は17の系統に区分され、各系統単位ごとに(シーメンス社職員を含めて)8名を解析チームとして指名。3.5時間の会合を毎⽇2回、週5⽇間開催

• 各会合の結果は、ファシリテータが情報シートと決定ワークシートとして整理

• ⼤部分は時間基準の保全タスクが最終決定され、同社の計算機保守管理システムに登録

• この経験により、ESB社では通常の訓練コースよりも深いレベルで発電所の理解が深まった

• 想定していた保守プログラムと本解析の結果は⼤差なし。他の発電所に⽐べると計画外の保守費⽤は⼤幅に低下すると期待

• RCMによって、正確で、他者によっても理解が容易な総合的な運転保守⼿順が完成

33JANUS(2017.1.27)

欧州の火力発電所を取り巻く状況

• 電⼒⾃由化と再⽣可能エネルギーの導⼊拡⼤により、⽕⼒発電の市場が縮⼩ → ⽕⼒発電の卸売り単価の著しい低下

• CO2排出対策:Cap & Trade制度の下、EU‐ETSでの調達 → ⽕⼒発電のコスト増要因

• ⽕⼒発電は、厳しい市場で⽣き残るため、運転・保守コストの低減、柔軟性(flexibility)の向上、稼働率(availability)の確保が命題

• RCMは、運転・保守の効率化(コスト低減)の重要な⼿法という位置づけ

34JANUS(2017.1.27)

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5.今後の計画

35JANUS(2017.1.27)

5.今後の予定

• ⽶国訪問調査:2⽉中旬で調整中• 第3回検討会:2⽉下旬(27⽇が候補⽇)

• ⽶国訪問調査報告• 信頼性重視保全を⽇本に適⽤する場合の課題

• 2017年3⽉17⽇報告書納品(必着)

36JANUS(2017.1.27)

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第三回検討会: ・ 議事メモ

・ 配布資料

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検討会議事録 「信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討」

第三回検討会

日時: 2017 年 2 月 27 日(月)10 時 30 分~12 時 30 分 場所: AP 西新宿 会議室 参加者(敬称略):

検討委員:早稲田大学 高田、東北大学 高木、東北大学 青木、火力原子力発電技術

協会 中澤、電力中央研究所 藤井 経済産業省:商務流通保安グループ 電力安全課:原、石原、潰瀧 オブザーバー: 菊地(ファンディール)、ほか 2 名 事務局(JANUS):伊藤、安部、大久保、谷本、富田

第三回検討会議事次第: ご挨拶 検討会委員のご紹介 参加者のご紹介 事務局の紹介 配付資料確認 提出資料: 米国訪問調査報告 日本版 PM テンプレートの検討状況 RCM の国内での適用に関する情報の整理 検討のまとめ 主な議事: 現在委員をお願いしている 5 名の委員の出席のもと、第三回の検討会を実施した。事務局

から上記提出資料を用いてご説明を行った後、以下の質疑応答を行った。また、最後に今

後の計画などについて各位からのご意見を伺った。 主なご意見の内容を以下に示す。

・ 報告いただいた日本と欧米との比較については、現状ではその通りであると考える。

今後日本が、自由化や規制緩和の面でどのように変わっていくのかが重要であると考

える。原子力は福島事故を受けて規制の変更が進められている。日本の火力の状況も

欧米のような状況(自由化や規制緩和)に進むのであれば、文化は違っても、技術的

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な方向性としてはやはり保全の最適化に進むのではないかと考える。(青木) ・ 欧米では RCM が有効であることが既に示されている。日本も自由化に伴い規制側も電

力側も RCM を導入する方向に進むのであればそのメリットについて広く知らしめる

ことが必要である。規制のオプションとしてこれを進めるのも一つの手ではないかと

思う。(高木) ・ 欧米における保守の最適化の定義が、加工のプロセスの無駄を省き生産性を上げ、保

守の費用を削減し、結果的に品質を下げてしまうのであれば問題である。また、RCMにより TBM から CBM に当然のように移行するというのは誤解がある。TBM によっ

て劣化を見つけるのであれば、これも状態監視の一つであると言える。運転中に実施

することだけが状態監視ではない。例えば、劣化メカニズムがわかっているのであれ

ば、その傾向に応じた頻度の TBM により劣化状態を確認することで結果的に TBM の

頻度を低減することが可能で、これも合理化といえる。日本で RCM を導入するのであ

れば、保守の最適化の定義を明確にする必要がある。現状の無駄を省くための一定の

ルールや枠組みが必要である。RCM といっても様々なアプローチがあり、報告いただ

いた欧米の RCM はリスクベースに近いものであると考える。どのような無駄を省くの

かについて検討する必要がある。(高田) ・ 火力の定検を 6 年にするという合理化の検討も進められている。高度な保守の導入イ

ンセンティブとして規制緩和が必要である。高度な保守には CBM も含まれると考える。

なお、日本において情報の共有化はこれまで行われてきたが、自由化に伴い難しくな

ってきている。費用がかかる分野についての情報の共有化は難しくなると思う。共通

のテンプレートを作成することは、小規模の電力事業者や新規参入の電力事業者にと

ってはメリットがあるが、大規模の電力会社にとってはメリットがない。このため、

すぐに RCM を導入するのは難しいと思う。(藤井) ・ 報告されたまとめについては概ね同意する。但し、文化でくくるのはどうかと思う。

多数の国や州で電力系統を構成している欧米とは国情も違い、日本では電気事業法に

よる規制という共通指標によって電力品質が高く維持されてきているということ。自

由化において供給責任のあり方等が変化していくことになるが、規制のあり方を含め、

整合性の取れた保全のあり方と再構築して言う必要がある。(中澤) ・ 委員の方からよい意見を頂いた。定検を 6 年に伸ばすということはインセンティブに

なる。自由化において何が問題になるのか明確にする必要があると思う。また、文化

でまとめるのはどうかと思う。日本は事故率が先進国で低く、自由化後も維持したい

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と考える。自由化に伴う規制緩和をどこまでやるのか議論する必要がある。欧米でマ

ニュアル化する必要性は様々な民族がいるためである。これらの背景の違いを踏まえ

て、我が国でどのような規制や保守を行うかよく考える必要性があると思う。(原) ・ 原子力では、被ばく低減が重要で、Reliability を上げることで原子力安全が向上した。

火力の保全によって Availability(Reliability)を上げる目的を明確にする必要がある。

また、何を達成するのかをパフォーマンス指標として見ることが重要である。保全の

Availability(Reliability)を上げるというと経済性を上げるのみと誤解される可能性

がある。人的な安全や環境面での安全性もある。欧米では既にそのような状況になっ

ているのかもしれないが、日本では保全の Availability(Reliability)を上げることが

安全性と経済性の両方を上げることにつながるというのが重要である。(青木) ・ 再生エネルギーの拡大と優先給電により火力の役割が変化してきている。不安定な再

エネの変動に対応するため待機状態にあっても必要なときに確実に発電できることが

より重要となる。欧米で Availability(Reliability)の向上を目的とするのはそういう

ことではないか。(中澤) ・ 欧米での Availability(Reliability)の定義を明確にしないと発電単価と誤解される可

能性がある。日本の火力は信頼性が高いが欧米のような状況になってよいのかを検討

する必要がある。(青木) ・ 原子力に関して、イギリスの BNFL では燃料の記録改ざんが問題となり安全に関する

記録を取ることが重要であるとの認識に至った。安全はどの産業でも重要である。政

府は、安全確保と供給確保を事業者に求めている。発送電分離の中で、供給責任を今

後どのように考えるのかが重要である。3+S という発想は変わらない。(原) ・ RCM の実施可能性が電力会社の大小に依存するかどうかの件で、保全の高度化は管理

の強化であるため、他人任せにはできず、事業者で管理する必要がある。一方、日本

の原子力の場合、保守はメーカ等の下請けに任せていることが多く、保守後の安全を

事業者自体で確実に把握することできない。そのため、従来通り下請けを使って保全

を行うことしかできず、これでは RCM の実施が難しかった。小規模の IPP で保全の

高度化の流れについていけるのか。RCM を実施するにしても、保全の体制がどちらに

向かうのかを合わせて検討する必要がある。(青木) ・ 日本には二つの大きな流れがあり、1 つ目は再生エネルギーの導入の流れ、2 つ目は温

暖化対策として二酸化炭素削減の流れである。これら二つのために、火力の経営環境

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は厳しくなる一方であると思われる。規制においては、現状の保安レベルを維持しつ

つ合理化できるところを検討する必要がある。(原) ・ 保安レベルの維持において、指標をどうするのか重要である。合理的なストーリーで

説明することが重要である。適切な目標でないと技術の進化を妨げる。保守の枠組み

を設定しておくことが重要である。また、先ほどマニュアルの話があったが、マニュ

ル化するかどうかの議論は必要なく、マニュアルを作るときに必要となる、保全の合

理的な考え方について、もっと議論すべきである。(高田) ・ コストと信頼性のバランスの図において、いじり壊しなどの面で、信頼性を上げる方

向に向かいすぎるのはよくないという意識が重要である。FOMIS は良い仕組みである。

日本でもビックデータ等が利用されつつあるので、電力会社にインセンティブを持た

せて同様の仕組みを導入することは重要であると思う。(高木)

以上

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平成28年度電気施設保安制度等検討調査

信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討

第三回検討会

2017年2⽉27⽇(⽉)10:30〜12:30

⽇本エヌ・ユー・エス株式会社

議事次第

1. ご挨拶ほか

2. ⽶国訪問調査報告I. FOMIS(Fossil Operation & Maintenance Information Service)

II. EPRI(Electric Power Research Institute)

III. First Energy社

IV. LG&E社

3. ⽇本版PMテンプレートの検討状況

4. RCMの国内での適⽤に関する情報の整理I. 欧州・⽶国・⽇本の電⼒産業

II. 欧⽶でのRCMの使われ⽅

III. 情報の整理

5. 検討とまとめ

JANUS(2017.2.27) 2

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1. ご挨拶ほか

• ご挨拶• 検討会委員のご紹介• 参加者のご紹介• 事務局の紹介• 配布資料確認

JANUS(2017.2.27) 3

2.米国訪問調査報告

I. FOMIS(Fossil Operation & Maintenance Information 

Service)

II. EPRI(Electric Power Research Institute)

III. First Energy社

IV. LG&E社

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米国訪問調査スケジュール

⽇次 ⽉⽇ ⾏動1 2⽉14⽇(⽕) ⽻⽥発→シカゴ経由、フロリダ州タンパへ

2 2⽉15⽇(⽔) 終⽇、Curtiss Wright社Scientech部⾨FOMISサービス訪問

3 2⽉16⽇(⽊) ノースカロライナ州シャーロットへ移動4 2⽉17⽇(⾦) 終⽇、EPRI訪問5 2⽉18⽇(⼟) ペンシルベニア州ピッツバーグへ移動6 2⽉19⽇(⽇) ペンシルベニア州グリーンスバーグへ移動7 2⽉20⽇(⽉) 終⽇、First Energy社訪問8 2⽉21⽇(⽕) ケンタッキー州ルイビルへ移動9 2⽉22⽇(⽔) 終⽇、ルイビル・ガス&エレクトリック社訪問10 2⽉23⽇(⽊) ルイビル発→シカゴ経由で⽇本へ11 2⽉24⽇(⾦) ⽇本到着

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I. FOMIS (1)

• FOMIS (Fossil Operation & Maintenance Information Service)は、⽶国内外の発電所間で運転保守に関する情報交換を⾏う仕組み

• Curtiss‐Wright社のScientech部⾨が事務局• サービスのメリット

• データベース:事業者の問題について解決策の参考となる報告書や情報・データにアクセス可能

• 問題解決のための専⾨家:メンバー電⼒の専⾨家ネットワークを利⽤し、O&Mに関する質問の回答を得ることが可能

• 機器と調達に関する助⾔:機器やサービス等の選択について、事業者の⽴場からの助⾔や参考情報が取得可能

• ダウンタイムや停⽌期間の短縮:対応策を⾒出し、機器等の調達費⽤を削減

• 会議による良好事例の共有:関係者の会議において、新しいサービスや機器、良好事例などの情報を収集

• 会員は、会員⽤ウェブサイトでいつでも他のメンバーへ質問を投げ掛けることが可能

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I. FOMIS (2)

• FOMISのウェブサイト

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I. FOMIS (3)• 会員企業は50社、150サイト。• ⽶国以外に、カナダ、イスラエル、スペイン、ポルトガル、その他の国の電⼒会社が参加。

• 年会費は、原則としてサイトあたりで設定。• ⽕⼒は競争環境が厳しいため、会員数は減少傾向• 参加企業は、このサービスの価値を理解して参加しているため、質問が出されれば、回答してくれることが多い

• 回答がなければ、事務局が促したり、声かけしたりする(ファシリテーターとしての役割)

• 会員が検索できる過去事例(データベース)は、30,000件以上あり。

• 年会(4⽇間ぐらいのイベント、50〜60社が参加)がある。年会は、メンバー企業に限定されないので、ベンダーなども参加し、製品デモなども⾏われる。

• 保守最適化プログラムやPMテンプレートに関する質問も過去に出ている。

• 規制機関としては、環境分野でEPA、電気料⾦等で州のPUCであるが、PUCの関わり⽅は州ごとに異なる。

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II. EPRI (1)

• EPRI(Electric Power Research Institute):1965年のニューヨーク⼤停電を経験し、電気事業の重要性が認識され、電気事業者が資⾦を出しあって1972年に設⽴された。

• ⾮営利組織であり、運営資⾦は、主に会員からの会費で成り⽴っている。2015年度収⼊は、会費1億9,000万ドル、プロジェクトベースの補⾜収⼊2億1,000万ドル、その他500万ドルの4億600万ドル。

• 30カ国以上、400以上の機関が会員。主な会員は電気事業者。構成は、IOUが59%、海外の機関が25%、連邦政府または州政府関連機関6%、共同機関が4%、IPPが1%。

• ⽶国の⽕⼒発電関連規制:運転認可なし。環境規制はEPA、⽴地などで州や地元の許可が必要。電気料⾦はPUC。⼀般的な⼯場と同様。

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II. EPRI (2)

• PMBD(Preventive Maintenance Basis Database):発電所の設備・機器に対する予防保全に関する情報を集約したデータベース

• RCMの技術をベースに整備。300種類以上(現時点で325種類、随時追加中)の機器タイプに対し、20,000以上の故障モードを検討し、故障モードにふさわしい保全タスクとその頻度、その技術ベースを収録したデータベース

• PMBDの⽬的:下記の情報・サービスの提供• 産業界の経験に基づくベースラインとなるPMタスクとその頻度

• 保全タスクと頻度の技術ベースを分類するツール• 産業界のPM経験についての⾏きた情報の保管場所• EPRIによる保守技術分野の成果物• 時間計画保全より状態基準保全を望ましいとする保全の戦略

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II. EPRI (3)

• 原⼦⼒発電所を対象に開発が始まり、1997年に38種類の機器タイプでPMDBが始まる。現在は、⽕⼒、送変電、⽔⼒などへ広がっている。

• ⽕⼒への適⽤は、2001年頃開始。現在の⽕⼒のユーザーは30〜40社。アクティブユーザーは約20社

• 航空業界のRCM(リソース的に発電所への適⽤困難)→ SRCMの開発 → PMBDへ。

• 専⾨家意⾒抽出プロセス(Expert Elicitation Process):EPRIメンバー、機器の技術的専⾨家、機器メーカーの専⾨家、EPRI職員、外部のベンダーから構成され、3、4⽇の話し合いで決定

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II. EPRI (3)

• 下記の情報を集約し、PMBDにまとめる。• 故障の場所• 劣化メカニズム• 劣化の影響• 予防保全タスク• 予防保全タスクの有効性

• Expert Elicitation会合への参加は、基本的にボランタリーベース

• 「情報が得られるなどメリット > 労⼒」という判断で、⾃主的に参加

• ⼤電⼒は情報提供ばかりになるのでは?

• 各メンバーは、⾃社で持ち合わせていない、国内他社が集まる業界全体規模の情報が集約される仕組みそのものに価値を⾒出している

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II. EPRI (4)

• クリティカル:機能上重要、リスク上重要、発電に必要、安全関連、規制対応上必要のいずれか

• ⾮クリティカル:機能上重要ではないが、経済上重要• その他の機器 → RTF(Run to Failure)に分類

• ⼀般的な分類⽐率• クリティカル:15%〜20%• ⾮クリティカル:20%• RTF:60%

重要度分類

(Criticality) クリティカル(Critical) 非クリティカル(Non-critical)

負荷サイクル(Duty Cycle) 高 HI 低 LO 高 HI 低 LO 高 HI 低 LO 高 HI 低 LO

供用条件(Service Conditions )

厳しい

(Severe) 穏やか(Mild) 厳しい

(Severe) 穏やか(Mild)

• 重要度分類

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II. EPRI (5)

• PMBDを利⽤した最近の事例• 保守ケーススタディ:特定の運転不具合に対し、PMBDを利⽤し、信頼性向上策を提供するサービス

• 機器信頼性プログラム:

• クリティカル機器の範囲決定と把握

• パフォーマンス開始• 継続的な機器信頼性改善

• 予防保全の実施• 是正措置• ⻑期計画とライフサイクル

• 上記の「継続的な機器信頼性の改善」でPMBD利⽤

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III. First Energy社 (1)

• 本社はオハイオ州Akron。送電と発電を⾏う会社• 10社の電⼒会社で構成

• オハイオ州:Ohio Edison、The Illuminating Co., Toledo Edison• ペンシルベニア州:Met‐Wd、Penelec、Penn Power、West Penn Power

• ニュージャージ州:Jersey Power Power & Light• ウェストバージニア州、メリーランド州:Mon Power, Potomac Edison

• 従業員数15,000名、総設備容量17,000MW

• 設備の内訳は、右図• 年間収益は約150億ドル• ⽯炭⽕⼒発電所が6ヶ所、ガス・⽯油⽕⼒も6ヶ所

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III. First Energy社 (2)

• ⽕⼒発電所保守⾼度化への取り組み• 2011年、First Energy社がAllegheny 社を吸収合併• 保守⽅法の相違が⼤きく、本社で調整を図る必要あり• 燃料費についで⾼い保守費⽤の低減• 保守⾼度化検討チーム(AMP:Advanced Maintenance Practices)を本社に設置

• INPOのAP‐913「機器信頼性プログラム」(原⼦⼒向け)をベースに⽕⼒に適⽤できる簡略的⼿法を⾃社で開発

• 保守ベーステンプレート(MBT:Maintenance Basis Template)を開発し、機器の重要度判断を実施

• EPRIのPMBDも参考情報として採⽤• 両社は、15年ほど前からRCMの検討を独⾃に実施• リソースの低減を⽬指した⼿法:MTA(Maintenance Task Analysis)を開発

• 起こりそうな故障モードに限定

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III. First Energy社 (3)

• 検討対象設備(右表)• 重要設備順• 緊急性の⾼い修理が必要となった機器の記録をレビュー

• 15の機器タイプで緊急性の⾼い保守作業の70%を占めることが分かる。

• PMテンプレートの作成とサイトへの導⼊は、3段階

• PMテンプレート作成• AMPチームの1名が調整社、5サイトから当該機器専⾨家1名の合計6名のチームで作成

• 1⽇4時間×3⽇間の会議• FMEAを含む検討結果は、IVARA(ソフトウェア)に展開

• 全ての発電設備、保守関連情報はCMMSであるSAPで管理

• 重要度判断は、チェックリスト⽅式。A、B、Cの3段階

第 1 段階 熱交換器 ファン 粉砕機

運搬装置 ポンプ

第 2 段階 配管 弁 モータ アンローダー フィルタ

第 3 段階 リザバー ゲート フィーダー トランスミット スートブロワ

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III. First Energy社 (4)

• 最初は、ファンに着⽬し、2サイト対象に実施• 3ヶ⽉かけてPMテンプレート作成と結果のサイトへの導⼊を実施、その後、他の3サイトへ展開

• 保守タスクと頻度の決定では、EPRI/PMBDの脆弱性ツールも利⽤。

• これまでの成果• 3段階の実施プロセスを3年間かけて実施• 34種類のPMテンプレートを作成。社内承諾済み• SAPで記録される機能上の場所15万ヶ所以上• そのうちPMテンプレートで対処される機能上の場所は16,234ヶ所

• 9,240のPMを新たに作成し、3,488のPMをキャンセル、3,682のタスクは維持

• 重要度分類の結果:クリティカル(A)4%、⾮クリティカル(B)23%、RTF(C)73%

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III. First Energy社 (5)

• First Energy社のコメント• ⽕⼒発電所では、原⼦⼒発電所ほど厳密で詳細な検討までは必要とされない。

• 100%の信頼性または30年間の寿命にわたっての完全な維持を要求するものではない。

• 成功するには社内の各層に及ぶ理解が必要である。• 実施段階ですべての⾯において発電所が参加する仕組みが重要である。

• 起こりうるすべてを扱うのではなく、合理的に考えられる機器の故障とその保守タスクに焦点を置くべきである。

• ⼀度の作業で終わるものではない。継続的な改善プロセスで回していくことが重要である。

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IV. LG&E社 (1)

• LG&E(Louisville Gas and Electric Company)社は、ケンタッキー州ルイビルの電⼒会社

• 1838年ルイビルガス・⽔供給会社として設⽴• 1842年⽔事業が分離、ガス会社に• 1913年電気事業が統合され、現在の名称に

• 従業員数は3,600名。設備容量は7,997MW• 5つの⽕⼒発電所を所有• 13基の⽯炭⽕⼒プラント、1基のコンバインドサイクル発電プラント、11基の⽔⼒、1基の太陽光発電所を所有

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IV. LG&E社 (2)

• 保守⾼度化の取り組み• 2015年末、副社⻑の決定により作業開始

• 経験豊富なエンジニアの退職の増加• 各サイトで異なる予防保全を社全体で整合性のあるものにする必要性

• 実施体制• 本社幹部直轄の2名+各サイトから保全部⾨と運転部⾨の部⻑

• 作業ステップ• 第⼀段階:重要度判断• 第⼆段階:EPRIのPMBDと現⾏保全の⽐較によるPMレビュー

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IV. LG&E社 (3)

• 第⼀段階:重要度判断• 本社2名が担当• EPRIのERプログラムのガイダンスを参考• 重要度は3段階(クリティカル、⾮クリティカル、RTF)を基本として、さらに、それぞれを5段階に分ける⽅式

• 第⼆段階:PMレビュー• CMMSであるMAXIMOに登録済みの現⾏PMタスクとEPRIのPMBD推奨のものを⽐較

• EPRIのPMBDの⽅が優れた保全を提案していると判断されれば、そちらを採⽤

• 現状保全に対し、追加、削除、修正のいずれかを判断していく

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IV. LG&E社 (4)

• 作業の進捗• 第⼀段階の作業について、回転機器対象で5つの発電所に対して、2016年の1年間をかけて実施

• 2017年に電気品、2018年は計装品の予定• 第⼆段階は、2016年後半に回転機器対象に始めたばかり。• サイト側の指摘を重要視

• 労⼒とコスト• PM最適化は開始したばかり。信頼性向上のレベルをはかれるまでには、3、4年かかかると推測

• 専属は、本社の2名のみ。ゆえに、時間がかかることは了解済み

• RCMやFMEAは実施経験なし。EPRIのPMBDを使えば、同等の効果が得られると理解

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IV. LG&E社 (5)

• 運転保守データの統合と活⽤

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3.日本版PMテンプレートの検討状況

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EPRI著作物から

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フォーマット案の標準化

• 我が国ではPMテンプレートの作成に必要な保全の現場を良く知るエキスパートや運転経験データは、事業者内でクローズして活⽤されており、業界として活⽤できる仕組みがない

• 我が国の新規参⼊の⽕⼒発電事業者は運転経験に乏しく、今のままでは保全最適化を推進することは困難である

• 我が国の既存の⽕⼒発電事業者も、現状の既存の時間基準のPM基準の部分的最適化のレベルでは問題ないかもしれないが、今後、RCMを実⾏して本格的な保全最適化を推進する段階では、品質上問題が⽣じる可能性がある

• 今後、何らかの標準化⽅策を推進する際、RCMプログラムだけでなく、CBMプログラムや新作業管理プログラムを含めた、保全最適化を推進するために必要な包括的な⽅策を検討する必要がある(RCMプログラムだけの標準化⽅策では実効性が乏しくなる可能性がある)

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4.RCMの国内での適用に関する情報の整理

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欧州の電力産業

• 欧州の電⼒市場• 発・送・配電は分離。EU⼤の完全⾃由化市場• 発電事業者に「供給責任」なし• 再⽣可能エネルギーは優先的に給電 → 導⼊増加傾向• ⽕⼒発電所⽤の市場は縮⼩傾向 → 電⼒卸売価格の低下 → ⽕⼒発電の収益悪化

• CO2排出削減義務など環境規制の強化(EU規模の排出権取引制度)• ⽕⼒発電のコスト削減は急務

• ⽕⼒の保守• ⾼圧設備のみ定期検査の規制あり• 作業員レベルまで⾃社の社員• 第三者検証あり• ハザード評価に基づく規制• 保険会社の関与あり• メーカーの推奨値を重要視しない• 発電所の運営は、本社主導に• 保守管理ソフトウェアの活⽤

• 電⼒業界(⽂化)• 「共有」すべきところは共有する⽂化あり• 規制緩和等は、業界団体が主導• 職務権限が明確

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米国の電力産業• ⽶国の電⼒市場

• ⽕⼒発電の規制は、州ごとに異なる• 基本的に発・送・配電分離の⾃由化市場。地域ごとに異なる制度。• 発電事業者に「供給責任」なし• 再⽣可能エネルギーは優先的に給電 → 導⼊増加傾向• ⽕⼒発電所⽤の市場は縮⼩傾向 → 電⼒卸売価格の低下 → ⽕⼒発電の収益悪化• CO2排出削減義務など環境規制の強化• ⽕⼒発電のコスト削減は急務

• ⽕⼒の保守• 圧⼒容器(ASMEのPressure Vesselのみ)定期検査の規制あり。(ない州もあるかもしれない)

• 作業員レベルまで⾃社の社員• 保険会社の関与あり• 基本的に規制が少ない(⼀般の⼯場と同等)• メーカーの推奨値を重要視しない• パフォーマンスベースの考え⽅• 発電所の運営は、本社主導• 保守管理ソフトウェアの活⽤

• 電⼒業界(⽂化)• 「共有」すべきところは共有する⽂化あり• 規制緩和等は、業界団体が主導• 職務権限が明確

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日本の電力産業

• ⽇本の電⼒市場• 2020年の完全⾃由化を⽬指し、変化の途上• 現時点で、「供給責任」は従来の電⼒会社にあり• 再⽣可能エネルギーはFIT制度により優先給電、かつ増加中• CO2排出に関する量的規制はない、⽯炭⽕⼒新設に対して厳しい• ⼩売電⼒価格の低減に取り組んできている

• ⽕⼒の保守• ボイラー、タービン等主要機器に定期検査の規制あり → 2年に1回のプラント⻑期停⽌を伴う定検 → 変更余地の少なさ

• 定検などは、メーカーを含む外注で対応• 保険会社の関与や第三者検証はなし• 規制とメーカー推奨値が基準• 発電所の運営は、発電所主導• 保守管理ソフトウェアなど導⼊途上

• 電⼒産業(⽂化)• 「共有」という⾏為になじんでいない• 規制緩和等も含め、⾏政主導が強い• 職務権限が不明瞭

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欧米でのRCMの使われ方 (1)

• RCM活⽤のコンセプト

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LEAG社資料から

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欧米でのRCMの使われ方 (2)

• RCMの積極的な活⽤例:フィンランドFORTUM社

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FORTUM社資料から

情報の整理

• ⽇本と欧⽶の共通点• 厳しくなる市場環境

• ベース、ミドル、ピークという概念はなくなる• 落札できた時に、確実に発電できることが重要• 落札のために、低コスト化が重要• ⼊札は本社が実施 → 意思決定は本社へ

• 供給責任 → 送電部⾨へ• CO2排出削減への対応

• ⽇本と欧⽶の相違点• ハザードベースやパフォーマンスベースの考え⽅

• この考え⽅において、RCMは有効な⼿法• 労働慣⾏

• スペシャリスト ⇔ ジェネラリスト• 社員で定検まで実施 ⇔ 下請けを活⽤ (従業員数が⼤きく異なる)• 情報伝達:マニュアル社会 ⇔ 徒弟制度的

• ⽂化的• 「深く追求」や「追加」は、得意• 「標準化」や「簡略化」は、得意ではない?• 技術などの「共有化」は、得意ではない?

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5. 検討とまとめ

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検討とまとめ

• ⾃由化や少⼦⾼齢化等の社会変化の中で、⽇本の電⼒の保守の規制は、どこを⽬指すのか?

• RCMを、有効に使える「⼟壌」はあるのか?あるいは、「⼟壌」を作れるのか?

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付録 2 ヒアリング会資料

第一回ヒアリング会 ・ 開催案内

第二回ヒアリング会 ・ 開催案内

第三回ヒアリング会 ・ 開催案内

第四回ヒアリング会 ・ 開催案内

第五回ヒアリング会 ・ 開催案内

第六回及び第七回ヒアリング会 ・ 開催案内

第八回ヒアリング会 ・ 開催案内

第九回ヒアリング会 ・ 開催案内

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第一回ヒアリング会 ・ 開催案内

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開催案内 「信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討」

「信頼性重視保全の取り組み等に関する調査」ヒアリング会 日時: 2016 年 12 月 2 日(金)9 時~11 時(予定) 場所: 経産省 301 会議室 第 1 回のご説明テーマ: 信頼性重視保全(RCM)の経緯 米電力研究所(EPRI)における RCM の取組概要 全 10 回のテーマ(予定) 内容: 信頼性重視保全(RCM)の米国での導入状況に関する全体像を理解するために、その

経緯、米国電力研究所(EPRI)が中心となって米国電力会社で RCM が導入されてき

ている状況について、基本的な内容を中心にご説明します。 また、合計 10 回のヒアリングで予定している各回のテーマとの関係性もご理解いただ

けるようにします。 Ⅰ. 信頼性重視保全(RCM)の経緯

信頼性重視保全(RCM)の全体概要(RCM とは?、RCM の生まれから現在に至

るまでの変遷) 米電力業界における RCM の取組経緯(標準手法から簡略手法への変遷)

Ⅱ.米電力研究所(EPRI)における RCM の取組概要 電力向け簡略化手法(Streamlined-RCM)の概要(標準手法の原則を守りながら、

RCM 解析のコストと手間を大幅に簡略化する簡略手法) 予防保全(PM)テンプレートの概要と活用プログラム(EPRI が開発した RCM

の最新の活用形態である PM テンプレート) 米国における予防保全プログラムの最適化と効果(米国火力発電所での RCM の活

用状況、保全最適化の流れ) RCM の適用拡大と保全プログラムの発展(予防保全(PM)テンプレートを含む

PM 根拠データベースを活用した最新の保全最適化の戦略とその導入効果)

説明者: 日本エヌ・ユー・エス株式会社 伊藤邦雄 ファンディール株式会社 菊地 徹

以上

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第二回ヒアリング会 ・ 開催案内

Page 194: 平成 28年度電気施設保安制度等検討調査 (信頼性 …経済産業省商務流通保安グループ 電力安全課 殿 平成28年度電気施設保安制度等検討調査

開催案内 「信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討」

「信頼性重視保全の取り組み等に関する調査」ヒアリング会 日時: 2016 年 12 月 8 日(木)15 時~17 時(予定) 場所: 経産省 別館 101 会議室 第2回のご説明テーマ: PM テンプレートと本事業における検討内容 内容: PM テンプレートの作成と評価 PMBD の活用と、設備信頼性プログラムを支える組織と人材 本事業の実施項目(2)の実施内容(予定) Ⅰ.PM テンプレートの作成と評価

PM テンプレートの作成は、当該機器の運用に通じた運転や保守の専門家より、彼

らの知見を引き出すワークショップを実施して作成する。米国で標準化されてい

る“専門家パネルワークショップ”の概要 Ⅱ.PMBD の活用と、設備信頼性プログラムを支える組織と人材

PM テンプレートは PMBD に進化し、PM プログラムだけでなく多くの設備信頼

性プログラムの開発に活用されている。その活用事例を紹介 米国の信頼性重視保全をベースとした保全プログラムの発展を支えるエンジニア

リング組織と人材(系統エンジニア、機器エンジニア)を紹介 Ⅲ. 本事業の「我が国に適した信頼性重視保全のフォーマット案の作成と評価」の実施内容

(予定) 我が国の火力発電事業者による活用を想定した PM テンプレートの作成と評価に

関する実施内容(予定) PM テンプレートの活用を我が国の火力発電業界に拡大していくための取組方策

の検討方法(予定)

説明者: ファンディール株式会社 菊地 徹

以上

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第三回ヒアリング会 ・ 開催案内

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開催案内 「信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討」

「信頼性重視保全の取り組み等に関する調査」ヒアリング会 第 3 回

日時: 2016 年 12 月 13 日(火)16 時~18 時(予定) 場所: 経産省(別館) 302 会議室 第 3 回のご説明テーマ: 信頼性重視保全(RCM)の手法 RCM の開発経緯と諸分野での適用状況 内容: RCM の基本的な考え方と手法をご説明します。 RCM 手法開発の経緯と諸産業や公共分野における RCM の適用状況についてご説明し

ます。 Ⅰ. 信頼性重視保全(RCM)の手法

リスクベース手法である RCM の考え方と解析手順について、そのベースとなる

FMEA(Failure Modes and Effects Analysis:故障モード影響解析)の基本的な

考え方を含めて、具体的な例を交えながらご説明します。 Ⅱ.RCM の開発経緯と諸分野での適用状況

RCM 手法の開発経緯と各種の標準文書についてご説明します。 国内外の諸産業ならびに公共分野における RCM の適用状況についてご説明しま

す。

説明者: 有限会社プラントアルファ 取締役社長 菅伸介 (プロフィール) 千代田化工建設株式会社にて、石油精製・化学等のプラントのプロセス設計・プロジェク

ト業務・プラント現場業務などに従事したあと、米国の技術コンサルタント会社勤務を経

て 2005 年に有限会社プラントアルファを設立し、プラント技術・設備管理・設備信頼性な

どに関わるコンサルティング・サービスを提供している。 公益社団法人日本プラントメンテナンス協会(JIPM)が主催する講習会「プラント設備の

FMEA」の講師を務めている。 以上

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第四回ヒアリング会 ・ 開催案内

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開催案内 「信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討」

「信頼性重視保全の取り組み等に関する調査」ヒアリング会 日時: 2016 年 12 月 27 日(火)10 時~12 時(予定) 場所: 経産省 別館 301 会議室 第4回の講演テーマ: 火力発電の最新設備の動向について 内容: Ⅰ.石炭火力(コンベンショナル)

超臨界圧/超々臨界圧(SC/USC)発電設備 排煙処理システム バイオマス燃料とボイラ技術

Ⅱ.石炭ガス化複合発電 IGCC/石炭ガス化技術 世界の IGCC プロジェクト 空気吹き IGCC の特長 勿来10号機 運転実績 今後の見通し

Ⅲ. 大型ガスタービンコンバインドサイクル ガスタービンコンバインド発電所について ガスタービンの特徴 MHPS 最新大型ガスタービンの概要 ガスタービンの燃料多様化

説明者:株式会社三菱日立パワーシステムズ(MHPS)エンジニアリング本部 電力 PJ 総括部 電力計画部 内容 I:コンベンショナル計画2G 上席主任 小泉 純様 内容 II:IGCC プロセス G グループ長 石井 弘実様 内容 III:GTCC 基本計画 G グループ長 米田 卓弘様

以上

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第五回ヒアリング会 ・ 開催案内

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開催案内 「信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討」

「信頼性重視保全の取り組み等に関する調査」ヒアリング会 日時: 2017 年 1 月 12 日(金)10 時~12 時 場所: 経済産業省別館 301 会議室 第 5 回のテーマ: 「RCM の適用拡大と保全プログラムの発展」 PM プログラムへの適用と保全モデルの確立 系統監視プログラムへの適用と長期的保全管理の発展 スマート機器および設備診断への適用と遠隔設備監視の拡大 EPSS への適用と現場支援の拡大 内容: 第 1 回では EPRI の RCM の取組を紹介し、第 2 回で RCM を支援するツールである

PM テンプレートを中心に、その作成方法と現行 PM の変更方法に関して紹介いたしま

した。今回は、保全プログラムの発展に向けた PM テンプレートの活用事例を紹介い

たします。 Ⅰ. PM プログラムへの適用と保全モデルの確立

RCM プログラム、予知保全(PdM)プログラム、作業管理(WM)プログラムの

3 つを統合した新たな PM プログラム確立への変遷とその内容 Ⅱ. 系統監視プログラムへの適用と長期的保全管理の発展

RCM の系統監視プログラムへの応用、そして長期保全プログラムやライフサイク

ル管理プログラムへの応用拡大 Ⅲ. スマート機器および設備診断への適用と遠隔設備監視の拡大

スマート機器の導入によりビッグデータの整備が可能になり、それらと RCM 等を

組み合わせることで、設備状態監視(ECM)プログラムが発展。さらに、フリー

トモニタリングへと拡大。 Ⅳ. EPSS への適用と現場支援の拡大

EPSS(Electronic Performance Support System)と RCM 等の組み合わせによ

り、団塊世代の大量退職に伴う熟練技術者不足の自体へ対処しようという試み。

説明者: ファンディール株式会社 菊地 徹

以上

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第六回及び第七回ヒアリング会 ・ 開催案内

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開催案内 「信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討」

「信頼性重視保全の取り組み等に関する調査」ヒアリング会 日時: 2017 年 1 月 17 日(火)14 時~16 時 2017 年 1 月 19 日(木)10 時~12 時 場所: 経済産業省別館 301 会議室 第 6 回及び第 7 回のテーマ:「規格の国際標準化について」 ISO/IEC などの国際規格がなぜ重視されるのか、国際規格はどこで作られるのか、日本は

どのように国際規格に対応しているのか、そして国際規格はどうやって作っていのか、と

いった疑問に対する答えが学べる講義を 2 回にわたって実施されます。 内容: 1 月 17 日(火)14 時~16 時(第 6 回) 1. 標準化概論:規格の標準化の基礎や WTO/TBT 協定の概要などを紹介しながら、国際規

格の重要性などについて述べられます。 2. 規格開発のルール:ISO/IEC Directives Part1 の概要説明。ISO 規格の構成と作成、ISO

規格開発に携わる組織と人、ISO 規格開発の手順、国際会議対応等について述べられま

す。 1 月 19 日(木)10 時~12 時(第 7 回) 3. 特許や懐疑論:ISO 規格を作る現場である国際会議への対応方法、特許を含む規格への

対応、ISO 等の国際規格にとって重要な概念について述べられます。 4. 適合性評価の全体像:適合性評価の概論、適合性評価の俯瞰図、適合性評価の利用と効

用、国・地域ごとの状況と、適合性評価に関する話が述べられます。 説明者: 一般財団法人日本規格協会 国際標準化ユニット 千葉祐介氏: 2006 年~2014 年までは、ISO において複数の技術委員会の国際幹事を務め、ISO14001 を

はじめとした ISO マネジメントシステム規格の開発に従事。2014 年~2016 年 5 月まで、

ISO 中央事務局(ジュネーブ)に出向。現在は、ISO CASCO(適合性評価委員会)国内事

務局、ISO PC277 及び SR 国内事務局、ISO/TC282(再生水)及び SC3(リスク評価)国

際幹事、ISO/TC268/SC1(スマートインフラ)国際幹事を務めている。 以上

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第八回ヒアリング会 ・ 開催案内

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開催案内 「信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討」

「信頼性重視保全の取り組み等に関する調査」ヒアリング会

日時: 2017 年 1 月 24 日(火)10 時~12 時 場所: 経済産業省別館 301 会議室 第 8 回のテーマ:「信頼生工学の基礎とネットワークの信頼性評価」 内容: (1) 信頼性の基礎1 人の寿命分布 (2) 信頼性の基礎2 アイテムの信頼度関数・確率密度関数・故障率関数、バスタブ曲線、 MTTF、指数分布 (3) 信頼性の基礎3 直・並列系の信頼度関数・確率密度関数・故障率関数、MTTF の 導出 (4) 信頼性の基礎4 安全装置の MTTF、PFD、故障率 (5) 信頼性の基礎5 直・並列ではない場合の扱い (6) システムの信頼性に関する研究 - ガス供給網(循環形状のシステムの供給信頼性 の計算を試みた例のご紹介 ) (7) ネットワークの信頼性 (8) リスクベースあるいは信頼性ベースの評価のために予め検討しておくべきこと (9) 研究分野のご紹介 1 機械安全 (10) 研究分野のご紹介 2 安全装置の信頼性評価 説明者:長岡技術科学大学 システム安全工学専攻 福田隆文教授 1979年3月 横浜国立大学工学部機械工学科卒 1979年4月 東洋電機製造(株)設計部、 1988年10月横浜国立大学工学研究院助手、講師を経て、 2006年4月長岡技術科学大学システム安全専攻助教授(准教授)、 2010年4月同教授。 専門はシステム安全工学 中央労働災害防止協会機能安全の活用促進に関する検討委員会、日本機械工業連合会

IEC/TC44 国内委員会、日本工作機械工業会電気安全専門部会、等委員 安全技術応用研究会長 博士(工学)

以上

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第九回ヒアリング会 ・ 開催案内

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開催案内 「信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討」

「信頼性重視保全の取り組み等に関する調査」ヒアリング会

日時: 2017 年 3 月 14 日(火)10 時~12 時 場所: 経済産業省別館 1 階 120 会議室 第 9 回のテーマ: 「欧米における RCM の活用状況 ~欧米火力発電事業者訪問調査から~」 内容: 本調査において欧州のドイツ及びフィンランドの火力発電事業者と事業者団体、米国の火

力発電事業者と関連研究機関の訪問調査を行った。具体的な訪問先は下記のとおり。 ドイツ: ・ VGB(火力・原子力・水力発電技術に関する電気事業者の協会、欧州大の組織) ・ LEAG 社(石炭火力発電事業者) フィンランド: ・ FORTUM 社(発電事業者であると同時に運転管理サービス・コンサルティング企業で

もある) 米国: ・ FORMIS(火力発電事業者による情報交換プラットフォームサービス) ・ EPRI(Electric Power Research Institute、電力研究所、SRCM の開発や PMBD の開

発・運営を実施) ・ First Energy 社(原子力・火力・水力・再エネを有する発電事業者) ・ LG&E 社(石炭火力中心の発電事業者) 上記の訪問調査から得られた RCM 関連情報の報告に加え、欧米で RCM が導入される背景

などを整理し、我が国との差異についての考察も述べる。 説明者: 日本エヌ・ユー・エス株式会社 安部 裕一

以上

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(様式2)

頁 図表番号

22 図3-1

23 図3-2

24 図3-3

26 表3-1

27 図3-4

29 図3-5

35 図3-10

49 図3-11

49 図3-12

50 図3-13

50 図3-14

86 表6-1

87 表6-2

88 表6-3

PMテンプレートの画面(機器タイプ:ポンプ、横置き式、単段、片吸込)(EPRI, 2016)

PMBDにおける故障モードの情報(EPRI, 2016)

PMベースの分類枠(EPRI, 2016)

モータ_低電圧(600V以下)のPMテンプレート(EPRI1004590)

弁_空気作動弁(AOV)のPMテンプレート(EPRI1004590)

ポンプ_容積式のPMテンプレート(EPRI 1004590)

機器信頼性(Equipment Reliability)プロセス(EPRI報告書1003479 :2002年より)

図3-10 LGE社における運転保守データの統合と活用(LGE社提供資料)

FOMISのメニュー(メイン画面、質問提出用、回答提出用)

質問提出時の入力フォーム

二次利用未承諾リスト

委託事業名:平成28年度電気施設保安制度等検討調査(信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討)

報告書の題名:平成28年度電気施設保安制度等検討調査(信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討)報告書

受注事業者名:日本エヌ・ユー・エス株式会社

質問への回答提出フォーマット

FOMISに寄せられた保守最適化に関する質問のリスト

脆弱性の計算画面(EPRI, 2016)

タイトル

PMテンプレートを作成する専門家チームの構成(EPRI, 2016)

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