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参加記
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楠本
自己紹介
名前:楠本 (@ir5)
新入社員
京大岩間研卒
アルゴリズム系(理論&応用)の出身
今は映像解析や機械学習に着手
個人的に Learning Theory が面白い
発表内容
先月参加した ICALP 2014 という学会の報告
ICALP 2014 (41st International Colloquium on Automata, Languages and Programming)
アルゴリズム理論とか計算量とかプログラミング言語とかオートマトンの学会
アルゴリズム理論の会議ではヨーロッパでトップ
デンマーク,コペンハーゲン
修論が Accept されたので行った↓コペンハーゲンの町並み
コペンハーゲンの様子
コペンハーゲンの様子
アルゴリズム理論
組合せ問題,最適化問題などに対し,
性能の良いアルゴリズム (計算時間 / メモリ消費 / 近似度等) を与える
困難性の証明をする
性質の定式化を与える
漸近的な解析を与えることがメイン(つまり入力が十分大きいときの性能を考える)
(c.f., 実データに対するアルゴリズム
例: shortest path problem
会議の雰囲気(ビジネスミーティングは出席しそびれたため雰囲気だけ)
学会
Track A (アルゴリズム・計算量),Track B (プログラミング言語),Track C (ネットワーク?) から成る
Track A には 87 の発表論文
採択率は例年は 25%~30% くらいらしい
雰囲気
アカデミックの人が大半
たまにMSR, IBM などの人も
ヨーロッパ人多い(8割くらい?)
目視で90~120人くらい居た
日本人は2人↑会場のITコペンハーゲン大学
スケジュール
1日目:ワークショップ Day
オンラインアルゴリズム
PhD 学生のポスター発表
2日目~5日目:発表
朝最初に招待講演
朝~昼に口頭発表
3セッション並列
1日目 : ワークショップ
1日目 : オンラインアルゴリズム
オンラインアルゴリズムとは
将来何が起こるか分からない状況下でできるだけ良い判断(コストが小さくなる,利益を大きく出来る等)をするアルゴリズムのこと
例:株価の予測とか
アルゴリズムの性能は競合比での解析が主流 コストを小さくしたい場合:
競合比が最悪でいくらになりうるかを解析するのが主な目的(競合比が大きければ大きいほど性能が悪い)
アルゴリズムの出した解のコスト競合比 = ------------------------------------------------------------
入力を全部知っていた場合の最適コスト
1日目 : オンラインアルゴリズム例:ビンパッキング問題
色んな大きさのアイテムがある.容量 1 のビンをいくつか用意してすべてのアイテムを詰めるにはビンがいくつ必要か?
例:オンラインビンパッキング問題
アイテムがオンラインで来る.その都度,アイテムをすでにあるビンに詰めるか新たにビンを開封するかの判断をする.
ビン
アイテム
1日目 : オンラインアルゴリズム
印象に残ったもの
オンラインビンパッキング問題
Advice 付きオンラインアルゴリズム
オンラインシュタイナー木問題
オンライン線形計画問題
オンライングラフ彩色問題
1日目 : オンラインアルゴリズム
オンラインで解くことが難しい問題は多い
例えばオンラインビンパッキング問題の場合,競合比 ≥ 1.54
Advice 付きオンラインアルゴリズム
入力を全部知っている人(神)がいて,入力に関する情報を事前に教えてもらえる (入力は小さいデータしかないとか)
ただし神はアルゴリズムにちょっとしか情報を送れない
オンラインビンパッキングの場合,log nビットの情報を教えてもらえると競合比を 1.5にできる
1日目 : オンラインアルゴリズム
Advice 付きオンラインアルゴリズム
オンラインナップサック問題の場合,競合比 = ∞
しかし 1 ビットの情報を送ってもらえるだけで競合比 = 2を達成できる
ナップサック
アイテム
2~5日目 : 招待講演
Claire Mathieu. Homophily and the Glass Ceiling Effect in Social Networks
実社会で起きている現象を数理モデル化して解析する話
「なぜアカデミア(特に CS コミュニティ)では男女のバランスが不均一なのか?」
※図は著者の発表スライドより引用
同じ性質を持った人同士が結びつきやすい性質(“rich gets richer”; homophily) を表す(数学的な)条件を 3 つ定義
次のことを証明した
条件がすべて同時に成り立つとき不均一が起きる
逆に条件が1つでも成り立たないと,不均一は起きない
Claire Mathieu. Homophily and the Glass Ceiling Effect in Social Networks
※図は著者の発表スライドより引用
Sanjeev Arora. Overcoming the Intractability Obstacle for Unsupervised Machine Learning
Sanjeev Arora. Overcoming the Intractability Obstacle for Unsupervised Machine Learning
教師なし機械学習の話
データが何かの分布から生成されると仮定して尤度最大化等をする
多くの場合 NP 完全になる
しかし,現実のデータは NP 完全になるような意地悪い入力じゃないかもしれない
分布になんらかの現実的な仮定を置くと適当そうなヒューリスティックがまともな計算量になるのでは?
Sanjeev Arora. Overcoming the Intractability Obstacle for Unsupervised Machine Learning
↓ヒューリスティックと理論屋の図
Sanjeev Arora. Overcoming the Intractability Obstacle for Unsupervised Machine Learning
基本的には講演者のグループでやっている機械学習寄りの研究の話
Topic model の non-negative matrix factorization
Dictionary learning
Deep nets の解析等
2~5日目 : 発表論文
全体の傾向とか
色々ある
計算量理論(PとかNPとか)
オンラインアルゴリズム
ストリーミングアルゴリズム
近似アルゴリズム
乱択アルゴリズム
難しい問題で入力クラスを制限して解けるようにする系
オラクルに聞いて何かを決める系
幾何っぽいの
etc…
Eric Blais, Johan Håstad, Rocco Servedio and Li-Yang Tan.On DNF approximators for monotone Boolean functions
DNF(積和標準形) とは↓ こういうの
復習:任意の n ビット論理関数 f : {0,1}n → {0,1} はサイズ(項数)が高々 2nの DNF で書ける
逆に Ω(2n) サイズ必要な論理関数が有る
f を近似する DNF を表すことにすると?
ε>0 が与えられた時に,ある g で,Pr[f(x) ≠ g(x)] < ε となるようなものをできるだけ小さいサイズの DNF で書きたい
Ω(2(1-4ε)n) は必要らしい
今回
f を単調関数に制限するとサイズ Θ(2n / √n) でいいらしい
f(x1, x2, x3) = x1x2 + x2x3 + x1
(BEST PAPER) Andreas Björklund and Thore Husfeldt. Shortest Two Disjoint Paths in Polynomial Time
グラフがあって頂点 s1,t1,s2,t2 が指定される
s1→t1,s2→t2 に向かうパス対で互いに頂点を共有しないものでパス長の和の最小を求める
今まで指数時間解法しか知られていなかった.
彼らは多項式時間アルゴリズムを提案した
ただし O(n11) とかかかる
(BEST PAPER) Andreas Björklund and Thore Husfeldt. Shortest Two Disjoint Paths in Polynomial Time
ざっくりした概要:
変数入り隣接行列の Permanent を考えると,多項式で最初に現れる非ゼロ項の次数が最小パス長に等しい
元のパスが何なのか分からないが最小パス長だけは分かる
Permanent の計算は一般には #P-hard
しかし今回の目的なら計算したいものが限られているのでうまく計算するアルゴリズムが存在する
(BEST PAPER) Andreas Björklund and Thore Husfeldt. Shortest Two Disjoint Paths in Polynomial Time
なぜ BEST PAPER?
シンプルな問題設定
証明はシンプルでありながら非自明
指数→多項式は大きなブレークスルー
代数的アルゴリズムの利用
とかが効いている?
Mitsuru Kusumoto and Yuichi Yoshida. Testing Forest-Isomorphism in the Adjacency List Model
僕です
Mitsuru Kusumoto and Yuichi Yoshida. Testing Forest-Isomorphism in the Adjacency List Model
http://ir5.hatenablog.com/entries/2014/04/12
Amir Abboud, Virginia Vassilevska Williams and Oren Weimann.
Consequences of Faster Alignment of Sequences
文字列マッチング系の問題で,Õ(n2) 時間より速いアルゴリズムが知られていないものは多い
編集距離,最長部分列,…
今回は配列アラインメントで Õ(n2) より真に速いアルゴリズムは無さそうなことを証明
無さそうとは?
配列アラインメントが O(n2) より真に速く解けるとすると,他の有名問題で「速く解くのは無いだろうと思われてる問題(3-SUMとか)」がたくさん解けてしまう,と証明
Konstantin Makarychev and Yury Makarychev.Nonuniform Graph Partitioning with Unrelated Weights
グラフの最小 k 分割:
グラフの頂点を k 個のクラスタに分けて,異なるクラスタにまたがる枝の個数を最小化する
多分NP完全?だが O(√(logn logk)) 近似がある
Nonuniformグラフ分割
i番目のクラスタの大きさは ρin以下でないといけない
O(logn) 近似が知られていた
→ O(√(logn logk)) 近似に改善
SDPベースのアルゴリズムを使うらしい
Andreas Björklund, Rasmus Pagh, Virginia VassilevskaWilliams and Uri Zwick. Listing Triangles
Triangle listing : グラフ中の△を全部列挙したい!!
’78:O(m√m) 時間アルゴリズム (m は枝数)
△の個数は Θ(m√m) 個ありうるのでタイト
でも output sensitive (△の個数を t としたとき t に依存する計算時間) にしたいですよね??
熾烈な計算量の争い
Andreas Björklund, Rasmus Pagh, Virginia VassilevskaWilliams and Uri Zwick. Listing Triangles
ω は行列積にかかる計算時間の指数部
現在は ω = 2.3728639
ω = 2 ならこの計算時間はタイト!! という主張
(少しアグレッシブすぎではないか…)
その他
ゲーデル賞
3日目の conference dinner でゲーデル賞の授賞式があった
ゲーデル賞 (Gödel Prize) は、理論計算機科学分野で優れた功績を残した人に、ACM(アメリカ計算機学会)のアルゴリズムと計算量理論に関する部会とEATCS(ヨーロッパ理論コンピュータ学会)が贈る賞である。受賞者には賞金5,000ドルが贈られる。論理学者クルト・ゲーデルに由来する。計算機科学分野ではチューリング賞と並んで権威を持つ賞である。 (Wikipedia より)
ゲーデル賞
ゲーデル賞
例年に比べると少し応用に寄っている?
まとめ ICALP 2014 のレポートでした
来年は京都で開催されるらしいです
感想
綺麗だけど複雑な構造を持った問題に対してアプローチしたい人が多い気がする
テーマ探しが難しい
基本的な問題は大体既に解かれている or 解くのがすごく難しい
凝った問題設定に走り過ぎるとモチベーションが何かわからなくなる
デンマークは物価が高い
謝辞
今回の ICALP 参加は JST/ERATO 河原林巨大グラフプロジェクトよりご支援を頂きました.関係者の方々に深く感謝致します.