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キャリア教育における アクティブラーニング実施時の
着眼点と工夫
文化放送キャリアパートナーズ・就職情報研究所 平野 恵子
第21回 大学教育研究フォーラム 個人研究口頭発表、部会13
2015年3月14日(土)
株式会社文化放送キャリアパートナーズ
【自己紹介】
本日は、よろしくお願いいたします。
低学年向け キャリア教育
就職支援 (キャリア教育)
新入社員研修 (若手研修)
課題反映 課題反映
<主なステークホルダー> 大学生 ・ 大学教職員 ・ 人事担当者(採用、研修)
平野 恵子(hirano keiko)
文化放送キャリアパートナーズ 就職情報研究所 [email protected]
■ 「大学生から社会人(市民)への接続」をテーマに、 キャリア教育・キャリア支援を専門としている。 ■ 2006年より、大学のキャリア教育科目(正課)を担当。 ■ 現在、東北学院大学、北星学園大学、札幌学院大学にて キャリア教育科目の非常勤講師を務める。 また、企業の新入社員(若手)研修の講師業務も担う。
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【はじめに ~私の問題意識~】
■ 格差拡大のジレンマ
他者とのコミュニケーション(意思や感情、思考を伝達し合うこと)に苦手意識を持ち、 人見知りを自認する学生は少なくない。
そうした学生は、アクティブラーニング(以下、AL)(※)において、 ワークを拒否したり、フリーライダーとなったり、履修自体を避けたりする。 また、ALそのものに苦痛を感じ、学びを得られない懸念もある。
結果として、「Education , More Education」のように、 もともと積極的に他者と関われる学生は、より高次のコンピテンシーを獲得し、 そうでない学生は、コンピテンシーを発達させる機会を逃し続けてしまう。 ■ キャリア発達の方向性が不明瞭
社会人(市民)として有用なコンピテンシーを体感することなしに キャリア発達のための“大学生活(経験)”や“経験の意味付け”を自ら行うことは困難。
※ 本発表においては、「他者との対話をともなう学習スタイル」と定義して説明する。
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【AL実施時の着眼点】
■ 必要に応じて、プレALで土台づくりを!
すべての学生が、ALを通じてよりよい学びを得られるように、 土台となるコミュニケーション技法やコンピテンシーを、 キャリアラダー(※)を意識した段階的トレーニングで実践する。 →他のALカリキュラム参加へのハードルが下がる。 ■ 学生と社会人(市民)の違いをプチ体験!
大学生活で目指す“キャリア発達の方向性”を認識してもらうため 学生と社会人(市民)の違いを理解し、体験ワークを行なう。 →リフレクション時の補助線が得られる。 (考え、行動したプロセスに意味付けがしやすくなる)
※ 梯子を昇るように着実に成長できるキャリア発達の道筋と能力開発するための仕組み。
問題意識を踏まえて・・・
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【AL実施時の工夫 ~チーム形成~】
■ 人数について
・ペアー(2人) → 4人(もしくは4人前後) ・ハードルが比較的低く、ワークを避けにくいペアーから実施。 ・次ステップでは、基本4人とする。 ・6人以上のワークは、AL慣れした学生向き。
補足/経験則として、4人がもっとも“話す&聞く”のバランスが良いと感じる。 ■ 座席について
・フリー座席 → エリア指定(参考①) → 座席指定(2~3週間毎に新しい座席表を配布)(参考②) → エリア指定 ・意図を説明した上で、段階的に他者との交流をうながす。 ・座席変更を繰りかえすことで、初対面同士の対話の場数をふむ。 ・最後に再度“エリア指定”を行うと、主体的行動の自己成長を実感しやすい。
補足/ALトレーニング段階においては、座席指定は有効だと感じる。 ただし、事前告知なしで、いきなり座席指定を行なうのはリスクが高い。
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【AL実施時の工夫 ~チーム型グループワーク~】
■ チーム型グループワーク(以下、GW)を目指す
・司会、タイムキーパーなどの役割設定をしない(ファシリテーターの説明のみ)。 ・合意形成時に、多数決を推奨しない。 ・単純な分業によるワークを推奨しない。 補足:司会なしの方が議論がおきやすい(※)。 ■ 実施時のポイント
・個人ワーク(自らの意見形成) →チーム型GW → 講師フィードバック (同じスタイルによる反復練習) ・まずは、異なる価値観の振れ幅(多様性)を 実感してもらう。 (振り返りコメント(参考③)などが有用) ・次に、多様な意見の受容をうながし、 他者への寛容や共感レベルが向上したら チームでの合意形成を体験。
※ 「グループには司会がいた方がいい?」(三宅・中山、2012)
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【AL実施時の工夫 ~ワーク内容~】
■ 実施ワークのタイプ
・非自己開示型 → (中間) → 自己開示型 (最初から自分をさらけ出すタイプのワークはハードルが高すぎる) ・非自己開示型/他者交流のトレーニング(名刺交換ワーク、無反応ワーク・・・など) ・中間/他者の立場で思考する(思考力トレーニング・・・など) ・自己開示型/ディスカッション全般(コンセンサスゲーム・・・など) ■ タイプ別にユニット化した授業構成
・キャリアラダーを意識した段階的トレーニング ・基礎トレーニング(非自己開示型~中間) → 応用トレーニング(中間~自己開示型) → 実践ワーク(チームレポート作成、総合演習)
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【タイプ別にユニット化した授業構成】
<授業概要> ■ 文系総合大学、1年生対象 ■ 必修科目(3学部5学科が対象) ■ 前期/277人、後期/280人 学部学科混合クラス
<基礎トレーニング> ・非自己開示型~中間のワークが中心 ・ペアーワーク~4人ワーク
<応用トレーニング> ・中間~自己開示型ワークが中心 ・4人ワーク(座席指定)
<実践ワーク> ・総合演習的な位置づけ ・学生と社会人(市民)の違いをプチ体験
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【ワーク事例:非自己開示型】
ノンバーバル(表情、視線、立ち振る舞い…) を意識して、自己紹介カードを全て 交換してください!
言語のみで絵を説明して 相手にイメージ通りの絵を描いてもらおう!
アクティブ・リスニング (話を聞いていることが相手に伝わる態度で聞く) することの大切さを体感してみよう!
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【ワーク事例:中間】
それぞれのタイプになりきって考えてみよう! メンバーそれぞれの意見の違いも認識しよう!
自分の考えだけでなく、 自分以外の立場で、このテーマを考えてみて! (GWでは、言いたくないことをムリに言う必要はないよ)
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【ワーク事例:自己開示型】
自分の意見をメンバーに伝えよう! メンバーの意見を理解しよう! できるだけ多様な意見を共有してください。
自分の意見をメンバーに伝えよう。 メンバーの意見を理解しよう。 安易に自分の意見を取り下げないで! でも、自分の意見に固執しすぎないで!
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【AL実施時の工夫 ~実践ワーク(チームレポート)~】
■ 学生と社会人(市民)の違いをプチ体験
・学生と社会人(市民)の違いを言語化し、明示する。 ・プチ体験として、チームレポート作成を実施する。 ■ 社会人(市民)へのキャリア発達をうながす仕掛け
・初対面メンバーでチームを組み、複数回(5回)にわたりワークを行なう。 ・チームレポート(制作物)の“目的”を明確にする。 ・自分ではない立場(相手の立場)で思考する。 ・多数決ではなく、話し合いによる合意形成をうながす。 ・情報は与えすぎず、報連相(ほうれんそう)をうながす。 ・書式などの自由度は高くする。 ・他者評価で優勝チームを決める(コンペティションの実施)。 ・・・など
これまでトレーニングしたことの総合演習という位置づけとともに・・・
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【キャリア発達の方向性 ~学生と社会人の違い~】
【学生(主に高校生まで)】
<消費者(受け手)> ・主語は「自分」 ・個人単位 ・既知の確認 →評価は明確 →失敗は避けられる ・社会から支えられる存在
<受動的行動の合理性>
【社会人(≒市民 citizen)】
<提供者(与え手)> ・主語は「相手」 ・チーム、集団(組織)単位 ・未知へのアプローチ →評価は曖昧(他者評価) →失敗を100%避けのはムリ ・社会を支える存在
<能動的行動の必要性>
【大学生(大学)】
両者の汽水域
<仕事とは…> 異なる立場や価値観、特技を持った者同士が、 同じ目的(ゴール)を目指して、自分を活かしつつ、 他者と協力しながら物事を進めていくこと
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【ワーク事例:チームレポート】
・学生ではない設定により 自分主語(自分メリット)からの脱却 ・提供者(採用担当)の視点をプチ体験
・チームレポートの目的を明示する ・チームで目的達成を目指す
・目的と最低限のルールのみ提示 ・ワーク中の報連相をうながす ・他者による不確実な基準で評価をおこなう
・・・
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【ワーク事例:チームレポート】
(左側)基本的な企業情報
(右側)フリースペース
<お願い事項> ・単純な分業作業は避けよう ・意見が割れたときは、話し合いで合意形成 (多数決での決定を避けよう)
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【AL実施時の工夫 ~リフレクション~】
■ リフレクションについて (毎回の「振り返りシート」以外)
・他者評価による自己特性の発見(Thank youカード) ・チーム内で果たせる役割への気付き(Peer Reviewシート) ・チームレポート制作における、自分&チームの振り返りでは、 良かった点の要因分析(再現性の向上)をうながす。 →自己効力感の醸成を目指す
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【まとめ】
■ 学生の反応 2014年度、北星学園大学「職業と人生Ⅰ」 第15回の振り返りシートより ・出席/213人(履修280人、出席率76.1%) ・成長実感のコメントあり/173人(81.2%) ・コメント内容/人見知りの軽減、GWへの苦手意識の減少、他者交流の面白さ、 他者の多様性の実感、新たな自己発見・・・など ■ 今後の課題 振り返りコメントを見るかぎり、本プログラムによる学生の成長(≒変化)を感じることはできる。 しかし、プログラムデザインおよびコンテンツの汎用性は未知数である。 学生特性、教員特性、リソース、環境、授業回数…といった不確定要素に対応可能な、 “ALのためのキャリアラダー”の体系化を行ないたい。 ■ 最後に・・・ つたない発表にお付き合いいただき、感謝申し上げます。 皆さまのご意見をいただき、ブラッシュアップができれば幸甚です。 何卒よろしくお願い申し上げます。
平野 恵子 [email protected]
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【参考①:エリア指定】
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乙女座 射手座
やぎ座 さそり座
おひつじ座
しし座
かに座
水瓶座
おうし座 天秤座
双子座 魚座
座席エリア制にご協力ください 各自、当てはまるエリアにお座りください
友達同士が同じ星座の場合は、離れてお座りください!
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【参考②:座席指定】
ご自分の学籍番号の席にお座り下さい。
自分の学籍番号が見つからない人は
平野までお声がけください
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【参考③:振り返りコメント共有】
・授業内容への感想や気付き ・共感した意見、異なる意見 ・ポジティブなもの、ネガティブなもの ・・・など
(第8回授業の振り返りシートより)
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【補足:コンピテンシー診断「SPROUT(スプラウト)」】
■ コンピテンシー診断「SPROUT(スプラウト)」 「富士ゼロックス総合教育研究所(FXLI)」と文化放送キャリアパートナーズが共同開発したアセスメントツール。 URL、http://www.careerpartners.co.jp/shien/competency.html
FXLIは、日本の大手企業の人材開発・ 教育研修で早くからコンピテンシー育成を 導入し成果を上げている。
<活用理由> ・可視化できるものを診断対象としている。 →チーム作業で観察可能、フィードバックしやすい。 ・コンピテンシーは後天的に開発が可能である。 →自らを成長させることへのモチベーションとなる。 ・行動目標を立てやすい。 →学生生活を想定した「啓発ポイント」 「行動目標例」が示されている。
■ コンピテンシーとは 全ての職務に共通する「継続的に成果をあげる人の行動パターン」 のこと。 多くの企業では、コンピテンシーの概念を活用し、採用、教育研修、評価制度と人事管理のあらゆる領域で活用している。 そのため、新卒採用でも大学生活の場面ごとで「何を考え、どう行動したのか」を掘り下げるコンピテンシー採用が主流となっている。