Science Academy - P-29 ベントナイトのメチレンブルー吸着 …...はじめに...

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  • ■ はじめに ベントナイトは、粘土鉱物の一種であるモンモリロナイト

    を主成分として、石英、クリストバライト、長石、雲母、ゼオライトなどのケイ酸塩鉱物を副成分とし、カルサイト、ドロマイト、ジプサムなどの炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物、パイライトなどの硫化鉱物を随伴する弱アルカリ性粘土岩の名称である。ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトは、低透水性、膨潤性などの性質をもつ。このため、産業廃棄物や放射性廃棄物の処分場における人工バリアの1つとして、ベントナイトの利用が検討されている。

    ベントナイトを人工バリアとして利用する場合、ベントナイト中のモンモリロナイトの含有量が重要となる。ベントナイト中のモンモリロナイト含有量は、一般的に、モンモリロナイトがメチレンブルーを吸着することを利用し、ベントナイトのメチレンブルー吸着量を測定して見積もる。メチレンブルー吸着量測定の方法は、日本では一般的に日本ベントナイト工業会の標準試験方法(JBAS-107-91)が用いられている(日本ベントナイト工業会, 1977)。しかしながら、このJBAS-107-91は詳細な試験方法についての記載がなく、実際の試験方法は試験者に委ねられているのが現状である。メチレンブルー吸着量試験は、試験の手順のわずかな違いが結果に大きく影響することが経験的に知られている。そのため、詳細な試験方法が決められていないという現状はベントナイトを人工バリアとして用いるにあたって大きな問題点である。本研究では、メチレンブルー吸着量試験方法について詳細に検討し、最終的には標準化することを目指して研究を進めている。

    ■ 活動内容

    本研究で行われているメチレンブルー吸着量試験法の詳細は、堀内と高木(2012)を参照されたい。試験法の大まかな流れとしては、ベントナイトを分散溶液に分散させ、メチレンブルー溶液を加え、ベントナイトが吸着できる最大のメチレンブルー量(飽和吸着量)を求めるというものである。本研究では、試験方法について、主に以下の点を検討した。 1.ベントナイトを分散させる溶液の検討:日本ベントナイト工業会の標準試験方法(JBAS-107-91)には、ピロリン酸ナトリウム溶液を分散溶液として用いる方法が記載されている。本研究では、ピロリン酸ナトリウム溶液のベントナイトへの影響を確かめるため、純水を分散溶液として用いて試験を行ない、ピロリン酸ナトリウム溶液を用いた場合と比

    較した。純水を用いて試験を行った場合、試験時間が日単位で経過するとメチレンブルー吸着量が大きくなることがわかった。これは、時間経過によってベントナイト中のモンモリロナイトが膨潤する(層間に水を取り込んで膨らむ)ためであると考えられる。ピロリン酸ナトリウム溶液を用いて試験を行った場合は、時間が経過してもメチレンブルー吸着量は変化しない。ピロリン酸ナトリウム溶液は、時間経過によってモンモリロナイトのメチレンブルー吸着量が変化することを防ぐ効果があることが明らかになった。 2.分散の方法の検討:試料をピロリン酸ナトリウム溶液に分散させる際、超音波分散がよく行われる。しかし、超音波分散機の出力によって試験結果が異なることが経験的に知られる。本研究では、超音波分散のベントナイトへの影響を確かめるため、超音波分散を行わずに試験を行い、超音波分散を通常通り行った場合と比較した。超音波分散を行わなかった場合は、超音波分散を行った場合と比べてメチレンブルー吸着量が少なくなる傾向が見られた。 3.ベントナイトが吸着できる最大のメチレンブルー量(飽和吸着量)の求め方の検討:飽和吸着量は、ベントナイト分散溶液にメチレンブルー溶液を加え、溶液の1滴をろ紙上に落としたときのメチレンブルーのハローの残存状態から吸着限界を判定する方法(スポット法)によって簡便に求めることができる。しかし、スポット法による判定は、試験者によって異なる可能性があることが経験的に知られる。スポット法のほかに、ベントナイト分散溶液にメチレンブルー溶液を加え、上澄み溶液のメチレンブルー濃度を吸光光度計によって測定し飽和吸着量を求める方法(吸光光度法)も知られる。本研究では、個人差が少ない飽和吸着量の求め方の検討を進めている。 ■ 参考文献 日本ベントナイト工業会, 1977, 日本ベントナイト工業会標準試験方法 ベントナイト(粉状)のメチレンブルー吸着量測定方法(JBAS-107-91) 堀内悠, 高木哲一, 2012, 産総研におけるベントナイトのメチレンブルー吸着量測定方法, 地質調査総合センター研究資料集, No. 555

    資源・エネルギー

    ベントナイトのメチレンブルー吸着量試験方法の 標準化に関する研究

    代表発表者 三好 陽子 (みよし ようこ) 所 属 (独)産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門

    鉱物資源研究グループ

    問合せ先 〒305-8567 茨城県つくば市東 1-1-1 中央第 7 TEL:029-861-4021 FAX:029-861-3717 youko-miyoshi@aist.go.jp

    ■キーワード: (1)粘土鉱物 (2)モンモリロナイト (3)放射性廃棄物地層処分

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