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人材力強化のためのETSS入門ー技術とスキルを動的に捉えるスキル標準ETSSの構造とはー
IPA/SEC リサーチフェロースキルマネージメント協会(SMA)理事長
㈱オプテック 代表取締役会長東海大学名誉教授 大原茂之
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アジェンダ
1.ETSSとスキルマネージメント協会(SMA)の関係2.産業構造の激変3.技術とスキルの関係4.ETSSの構造5.ETSSの活用6.SMAにおけるETSSの新たな展開
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1.ETSSとスキルマネージメント協会(SMA)の関係
1) ETSS(組込みスキル標準)開発の背景 製造業はソフト指向型産業へシフト
製造業の基盤技術が製品の機能を物理的に実現するハード指向型から、組込みソフトによって機能を実現し、サービスを提供するソフト指向型へシフト
ソフト指向型を成功させる鍵緻密な論理的作業と創造性を発揮できるスキルが重要
2)組込みスキル標準(ETSS)の策定 2003年 経済産業省組込みソフトウェア開発力強化推進委員会準備会が発足
スキルWG:組込みソフト技術者育成のために、スキルを統一的に可視化するETSSを策定
2004年 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)にソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)を設置スキルWG:ETSSの詳細化、普及促進活動を展開
3)スキルマネージメント協会の概要 2009年7月 ETSSを組込み系以外の企業へも普及促進する一般社団法人として発足 目的: ETSSをベースにして、人材の育成手法、スキルマネージメント手法、スキルの分析手法、 経営資源としてのスキルの可視化手法などを提案し、日本を中心に広く国際社会に貢献
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2.産業構造の激変
新たな付加価値創造に
モチベーション
サービス等を提供
商品向け組込みソフト開発
開発成果を量産製造できるよう再設計
開発成果を量産製造できるよう再設計
ソフトが入る部品の製造
ハード部品の製造
製品向け組込みソフト開発
部品向け組込みソフト開発
ハード開発
ハード開発 量産設計
部品
部品
量産設計
組み立て部品としての組込みソフト
ハード設計図
ハード設計図
製造
製造
<日本が強かった製造工程>世界的な部品の標準化・共有化の推進は
製造の付加価値を低減
<製品固有の機能に対してもソフトを提供>ユーザの手元にある製品の機能を改善(ハード指向ではありえなかったサービス)
組込みソフトはモノづくりの主戦場を製造から開発へシフト
創造型マーケットマーケットに関係するステークホルダによる
製品の組合せ、製品の機能向上等による価値創造
商品 商品
商品
商品
商品
いかに早く適切に創造的なサービスや製品等をマーケットへ提供できるか
牽引する技術の変化
ユーザによるシステムオブシステムズ指向ユーザ自身が複数の商品を組み合わせたシステムの上で、ユーザにとっての価値を創造
消費者の手元にある製品の使用状況、各種状態の情報収集
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3.技術とスキルの関係<技術者に求められる二面性>
<技術> 定義
経済性、新規性、再現性、保守性などを満足しつつ、要求に対する結果を得るための工程
工程の例:製品の機能、システム開発、製造、保守、サービスなど
方向性 革新
<スキル> 技術者としての側面
既存技術を修得しつつ、未来を指向する革新の方向 経済性、新規性、再現性、保守性などを強化する能力 要求に対する結果を得る工程の新規開発、改善、改良を行なう能力
既存技術の範囲での一対多の教育による育成は可能
技能者としての側面 現状を肯定し、工程の変化を好まない保守の方向
工程に沿って、要求された品質を繰り返し出せる個人の作業能力 個人に内包される作業能力のため、知識化困難(体系的育成は困難)
≪技術者:革新と保守の両面のスキルが必要≫
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要求に応える技術とスキルが充足
結果
要求に応える技術またはスキルが不足
技術スキル
結果
技術環境
×
3.技術とスキルの関係<開発を成功させる必要条件>
開発可能(競争力強化・確保)
開発失敗(競争力喪失)
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目標
技術要素
開発技術
管理技術
技術要素
開発技術
管理技術
技術要素
技術
A開発技術
技術
B管理技術
技術
C
第1階層 第2階層 第3階層
作業(タスク)の実施に必要な技術(=知識)項目の整理
整理した技術ごとのスキルレベルを記入
技術A1
技術Ap
技術B1
技術Bq
技術C1
レベル 1初級
レベル 2中級
レベル 3上級
レベル 4最上級
技術Cr
4.ETSSの構造<フレームワーク>
ETSSではフレームワークが標準! 人材のスキレベルは、作業に求められる技術(=知識)ごとに計測
計測したスキル全体は分布として可視化(健康診断で血圧、体重、身長などを分布で診ることと同じ)
組織スキル:個人のスキル分布を集計して、事業部単位などのスキルを可視化
個人、組織のスキルはこのような分布になる
技術項目を分類整理してこの枠内に書き込む
目標達成のために
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レベル1(初級):支援のもとに作業を遂行できる(半人前)(指導の下に工程にそった行動ができる)
レベル2(中級):自律的に作業を遂行できる(1人前)(既存の工程にそって自律した行動ができる)
レベル3(上級):作業を分析し改善・改良できる(1.5人前)(後進を指導でき、既存の工程で発生した想定外の事象に対応できる)
レベル4(最上級):新たな技術(知識)を開発できる(創造者)(これまでの知識・工程を超えた新しい知識や工程を創造できる)
守
破
離
4.ETSSの構造<スキル評価とレベルの考え方:スキルレベルは期待値>
異なる次元へ
守破離日本の伝統的人材育成の段階であり、その段階で期待される到達レベル
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4.ETSSの構造<階層への記入例 技術要素>
第1階層 第2階層 説明1 通信 1 有線 WAN,LANなど有線通信技術
2 無線 電気通信事業用無線,一般業務用無線など無線通信技術
3 放送 デジタル方法,アナログ放送など放送技術
4 インターネット 透過的データ転送,アプリケーションなどインターネット通信技術
2 情報処理 1 情報入力 データ入力,音声入力など情報入力技術
2 セキュリティ 暗号,著作権保護などセキュリティ技術
3 データ処理 圧縮,データベースなどデータ処理技術
4 情報出力 マークアップランゲージや文書ビューアなど情報出力技術
3 マルチメディア 1 音声 データ処理,圧縮・伸張など音声処理技術
2 静止画 データ処理,圧縮・伸張など静止画処理技術
3 動画 データ処理,圧縮・伸張など動画処理技術
4 統合 音声・画像などの統合処理技術
4 ユーザインタフェース 1 人間系入力 ボタン,座標など人間系入力デバイス制御技術2 人間系出力 表示,音声など人間系出力デバイス制御技術
5 ストレージ 1 メディア リムーバブル,メモリなどストレージメディア技術2 インタフェース リムーバブル,常時接続型などストレージインタフェース技術
3 ファイルシステム ISOやOSネイティブなどファイルシステム技術
6 計測・制御 1 理化学系入力 電気,圧力,光など理化学系入力技術
2 計測・制御処理 座標・運動,信号処理などの計測・制御技術
3 理化学系出力 アクチュエータ,光,熱などの理化学系出力技術7 プラットフォーム 1 プロセッサ CPU,GPUなどプロセッサ技術
2 基本ソフトウェア カーネル,ブートなど基本ソフトウェア技術
3 支援機能 情報記録,情報収集など支援機能技術
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4.ETSSの構造<階層への記入例 開発技術>
第1階層 第2階層 説明1 システム要求分析 1 要求の獲得と調整 インタビュー手法,マーケティング手法など
2 システム分析と要求定義 モデリング手法,分析手法,要求定義など
3 システム分析と要求定義のレ レビュー手法,インスペクション手法など
2 システム方式設計 1 ハードウェアとソフトウェア間の機能および性能分担の決定
性能見積もり,FMEA.FTA,ソフトウェア見積もり手法,知的財産権など
2 実現可能性の検証とデザイン レビュー手法,インスペクション手法など
3 ソフトウェア要求分析 1 ソフトウェア要求事項の定義 モデリング手法,分析手法,要求定義など
2 ソフトウェア要求事項の評価・ レビュー手法,インスペクション手法など
4 ソフトウェア方式設計 1 ソフトウェア構造の決定 性能見積もり,信頼性設計,フォールトトレラント技術,ソフトウェア見積もり手法,知的財産権,再
2 ソフトウェア構造のデザインレ レビュー手法,インスペクション手法など
5 ソフトウェア詳細設計 1 ソフトウェアの詳細設計 設計手法,設計ツール,実時間性設計など
2 ソフトウェアの詳細設計のレ レビュー手法,インスペクション手法など
6 ソフトウェアコード作成とテスト
1 プログラムの作成とプログラムテスト項目の抽出
プログラミング手法,プログラミングツール/環境,テスト設計手法,カバレッジ測定法,シミュレーションなど
2 コードレビューとプログラムテスト項目の
レビュー手法,インスペクション手法,静的解析ツール,動的解析ツールなど
3 プログラムテストの実施 ドライバ/スタブ,テストツール,回帰テストなど
7 ソフトウェア結合 1 ソフトウェア結合テスト仕様の設計
テスト設計手法,カバレッジ測定法,シミュレーション,エミュレーション,ハードウェア環境
2 ソフトウェア結合テストの実施 テストツール,ICE,モニタ,ロジックアナライザ,オシロスコープ,回帰テスト
8 ソフトウェア適格性確認テスト 1 ソフトウェア適格性確認テスト レビュー手法,インスペクション手法,受け入れテスト2 ソフトウェア適格性確認テスト
の実施
テストツール,ICE,モニタ,ロジックアナライザ,オシロスコープ,回帰テスト
9 システム結合 1 テスト項目抽出とテスト手順の決定およびレビュー
レビュー手法,インスペクション手法
2 システム結合テストの実施 テストツール,ICE,モニタ,ロジックアナライザ,オシロスコープ,回帰テスト
10 システム適格性確認テスト 1 システム適格性確認テストの レビュー手法,インスペクション手法,受け入れテスト2 システム適格性確認テストの 回帰テスト
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4.ETSSの構造<階層への記入例 管理技術>
第1階層 第2階層 説明1 プロジェクトマネジメント 1 統合マネジメント WBS,EVM,会議運営メソドロジ,レビュー手
法など
2 スコープマネジメント WBS,変更管理など
3 タイムマネジメント パート図,ガント図,見積もり手法など
4 コストマネジメント ROI,ROE,見積もり手法,EVMなど
5 品質マネジメント 監査,故障解析統計的手法,傾向分析など
6 組織マネジメント チームビルディング,OBSなど
7 コミュニケーションマネジメント 情報配布手法など
8 リスクマネジメント リスク分析,デシジョンツリー分析,リスク等級など
9 調達マネジメント 企画,調達先選定,契約,実績管理など
2 開発プロセスマネジメント 1 開発プロセス設定 システム開発プロセス設定,レビュー設定など
2 知財マネジメント 関連法規,管理システムなど
3 開発環境マネジメント 開発環境企画,設計,構築,運用管理など
4 構成管理・変更管理 識別,統制,記録,監査など
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4.ETSSの構造<階層への記入例 パーソナルとビジネス>
スキルカテゴリ 第一階層 説明
パーソナルスキル
1 コミュニケーション 話す、聞く、書くなど
2 ネゴシエーション 質問、調査、主張など
3 リーダシップ 能力開発、時間管理、動機付けなど
4 問題解決 着眼、発想、問題発見、分析、論理指向など
ビジネススキル
1 経営 分析、戦略、評価など
2 会計 財務分析、経理など
3 マーケティング 分析、市場調査、戦略など
4 *HCM 人事戦略、要員管理、能力開発など
*HCM: Human Capital Management
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5.ETSSの活用<ある企業での個人のスキル分布の事例>
技術要素 開発技術 管理技術 パーソナル ビジネス
通信
情報 M
MUI
記憶
制御 P
F
シ要
シ設
ソ要
ソ方
ソ詳
ソ作
ソ結
ソ適
シ結
シ適
統合
範囲
時間
費用
品質
組織
伝達
危機
調達
工程
知財
環境
構成
対話
交渉
統率
解決
経営
会計
市場
人材
レベル1 レベル2 レベル3 レベル4
L4
L3
L2
L1
スキル分布で個人の特性を可視化 次に目指すべきスキル分布の目標を設定
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5.ETSSの活用<ある企業での部門別集計結果の事例>
レベル1 レベル2 レベル3 レベル4
管理技術
開発技術
技術要素
部門Aのスキル分布特性 部門Bのスキル分布特性
技術(知識)分類
全員のスキルの集計
管理技術
開発技術
技術要素
技術(知識)分類
サプライチェーン上での企業間の個人別スキル分布の比較が可能 当該部門のスキル育成、スキル調達、技術戦略を策定可能
レベル3の方がレベル1よりも多い
業務と人材育成の両立は成功の可能性大
レベル3の方がレベル1よりも少ない
業務と人材育成の両立は失敗のリスク大
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5.ETSSの活用<業界におけるスキルの標準化>
技術要素
開発技術
管理技術
技術要素
開発技術
管理技術
技術要素
開発技術
管理技術
A 社内のスキルシート
B 社のスキルシート
業界標準スキルシート
技術要素
開発技術
管理技術
C 社内でのみ使用するスキルシート
調達したいスキルの要望
提案スキル
業界標準となるスキルシートを作成した場合A社、B社、C社は業界標準スキルシートを介して
互いに社内のスキルに関する機密事項に触れることなく、スキルの提供、調達精度を向上
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6.SMAにおけるETSSの新たな展開<IoTの体系化と人材育成部会の活動>
「白熱教室」(ディスカッション)
問題設定:IoTという言葉の明確な定義はなく、IoTの技術範囲も人材のスキルと育成に関しても未知の状態!
問題への取組み:SMAと一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)は連携して以下の活動を展開1) IoT技術動向の調査2) IoT関連技術用語の整理等3) 組込み視点でのIoT技術方針策定4) IoT技術者のスキルセット体系、および育成指針の策定5) IoT技術動向の調査 ⇒ IIC,OICなどの国際標準化活動の勉強会を開催。
⇒ 有識者を招きディスカッション形式の「白熱教室」や参加企業のサービスを紹介。
テーマ プレゼンター
World IoT Forum 7 Layer概要 シスコシステムズ
IoT向けクラウドHILS 東芝情報システム
Open Interconnect Consortium 活動概要 YRP-IoT
Smart Connected Product by M.Porter PTCジャパン
オムロンのMEMSセンサー技術およびアプリケーションについて
オムロン
IoTにおけるモデルベース開発の意味や活用について 東芝
これまでの実績
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6.SMAにおけるETSSの新たな展開<モデリング技術者育成新分野研究会の活動>
具体的取組みIoT分散型モデルベースによる上流の設計開発に関して、次の事項について調査研究に取り組んでいる。 IoT空間上でモデルを構築する技術 分散型モデルベースの設計開発状況に応じて、
構成メンバや開発プロセスなどを自在に変更できる技術
思いついたら直ちに試作できる支援技術 試作した製品を公開し、仮想空間上でユーザの
反応をチェックしながら、開発にフィードバックする技術
新しいキャリアとして、IoTモデル全体を設計する統括デザイナ、動的変化に対応できるプロジェクトマネージャのスキルを定義
研究課題設定:IoT分散型モデルベースによる設計開発スタイルの例 エッジ、フォグのモデリング 得られたモデルベースがIoT分散型モデルベース IoT分散型モデルベースの上で上流設計
クラウド
フォグモデル
フォグモデル
フォグモデルエッジ
モデル
エッジモデル
エッジモデル
エッジエッジ
モデルと物理的存在とモデルがクラウドを介して分散して共存
開発、運用等に新たな技術的観点が発生
これを有利に展開できるスキルが必要
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6.SMAにおけるETSSの新たな展開<スキルとタレントのマネージメントによる人材育成研究会>
【これまでの成果および現在研究中の事項】1)試験によって人材のスキルを計測できる客観的方法を策定2)常識力をETSSで評価する原案①レベル1:部門内外での業務遂行上の常識力が不十分②レベル2:部門内外での業務遂行上の常識力は十分③レベル3:レベル2以上であり、常識から外れた問題を的確
に解決し、後進に常識を指導④レベル4:部門内外での常識集合が時代に合わなくなった場
合、新 たな常識集合を設計し組織的に展開
3)その他現在研究中の事項 形式知としての常識、暗黙知としての常識 各委員が所属する組織の常識を収集分析 常識力の差による影響 常識を常識力として発揮する能力 常識力、技能力、人間力を考慮した人材育成 常識を打ち破る常識力とイノベーションをおこす能力
常識力
人材のスキル(技能力)、タレント性(人間力)は企業活動にとって最も重要な要素であるが、さらに組織社会の中で振舞うには、その組織の風土や文化を把握し、的確に行動できる常識力も必要こうした観点から以下の活動を展開■ スキルを客観的に評価してETSSに活用できる手法の調査研究
■ スキルとタレントのマネージメントの観点からのチーム編成手法などの調査研究
■ 企業文化などと関係する「常識」の管理と「常識力」を育成する手法の調査研究
技能力、人間力、常識力の3次元で人材育成を考える!
本研究会の活動には、IPAからも参画ETSSの成果につきましては、企業の機密にあたらない場合に限りiCDの活動にも協力してまいります。
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ご清聴ありがとうございました。
ETSS、SMAの活動、SMAへのご入会等のご質問は
SMAのブース E06までお越し下さい。
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