M33 の巨大 H II 領域 NGC604 における、 GMC ごとの物理状態の違い

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M33 の巨大 H II 領域 NGC604 における、 GMC ごとの物理状態の違い. 村岡和幸(大阪府立大学)、久野成夫、小野寺幸子、中西康一郎、金子紘之(国立天文台)、濤崎智佳(上越教育大学)、三浦理絵(東京大学)、小麦真也 ( NAOJ/ALMA ). Abstract. 昨年度の NROUM において、最近傍の渦巻銀河 M33 の巨大 HII 領域 NGC604 に対する野辺山 45m 鏡を用いた 13 CO(1-0) 輝線の OTF マッピングを報告した。今回、 NGC604 内部の各 GMC に対して進めた、詳細な解析の結果を報告する。. - PowerPoint PPT Presentation

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M33 の巨大 HII 領域 NGC604 における、 GMC ごとの物理状態の違い

村岡和幸(大阪府立大学)、久野成夫、小野寺幸子、中西康一郎、金子紘之(国立天文台)、濤崎智佳(上越教育大学)、三浦理絵(東京大学)、小麦真也( NAOJ/ALMA )

Introduction

Results

■NRO Legacy Project – M33  

■M33 最大の HII 領域:NGC604

NGC604 は、 3 つの巨大分子雲( Giant Molecular Clouds; GMCs )に分けられ、特に中央の GMC-B はその内部に星団形成領域を含んでいる。この GMC に対し、我々は 13CO(1-0)/12CO(1-0) 比( R13/12 )と、 12CO(3-2)/12CO(1-0) 比( R31 )という 2 つの輝線強度比を求めた GMC 全体で平均した強度比として R13/12 = 0.11 、 R31 = 0.67 を、また GMC 内部の星団形成領域付近( GMC での 12CO(1-0) ピーク位置)での局所的な強度比として R13/12 = 0.09 、 R31 = 0.76 を得た。更に、我々は Large Velocity Gradient 近似の下で、この GMC における分子ガスの密度と温度を導出した。 GMC 全体の平均では、 n(H2) ~ 2.5×103cm-3 、 TK ~ 25 K を得た。一方、星団形成領域付近での局所的な値は、 n(H2) ~ 2.8×103cm-3 、 TK ~ 33 K と、ガス密度は同程度であったが、温度では GMC 平均よりも有意に高かった。即ち、高密度ガスは GMC 全体で形成されているのに対し、高温領域は GMC 内部の一部領域に限られていることを示唆する。これは、 GMC の加熱源が星団形成領域の若い OB 星からの UV 放射しかなく、またそれが GMC 全体にまでは行き渡っていないためと考えられる。この結果は、第一世代の星団形成領域からの星風や超新星爆発が周囲のガスを圧縮し、第二・   第三世代の星形成を誘発する(即ち、高温領域よりも高密度ガス形成領域の方が空間的な広がりが大きくなる)という理論と矛盾しない。

昨年度の NROUM において、最近傍の渦巻銀河 M33 の巨大 HII 領域 NGC604 に対する野辺山 45m 鏡を用いた 13CO(1-0) 輝線の OTF マッピングを報告した。今回、 NGC604 内部の各 GMC に対して進めた、詳細な解析の結果を報告する。

■CO 輝線観測に関する先行研究

■ 観測諸元・望遠鏡: NRO 45-m・受信機: T100H/V (両偏波)・輝線: 13CO(1-0)@110.201GHz・マップ: 2’×2’ (480×480 pc)・観測方式: OTF・ Tsys : ~200K

NGC604 の 8.4GHz 連続波と 、 13CO(1-0) 観 測 領 域(白四角)。 × 印は第一世代の中心星団( central star cluster )を表す。

■ データリダクション・ NOSTAR による Split, Base, Make map, Basket-weave・マップ作成時の grid 7”.5 、実効的な空間分解能 20” 、・ 1σ r.m.s ~ 28mK (速度分解能 5km/s ) ~ 16mK ( 20” --> 25” に convolution 後)

NRO45m 鏡の BEARS + OTF スキャンを駆使し、最近傍の渦巻銀河 M33 ( D =

840kpc ) の 30’×30’ ( 7.3×7.3 kpc )を、 12CO(1-0) 輝線でマッピングするプロジェクト。到達目標感度は 5×103 太陽質量で、最終的には M33 の巨大分子雲の大部分を同定し、カタログ化する。

Local group では、 30 Dor と並ぶ活発な星形成領域として知られている。 Hα や8.4GHz 電波連続波でトレースされる星形成領域が、中心の星団を取り囲むようにarc 状に分布している。

Abstract

■ 本研究の目的

Discussio

n

NRO45m 鏡による 12CO(1-0) 、 ASTE10m による 12CO(3-2) の OTF マップが既に得られている。12CO(3-2)/12CO(1-0) 比の高い領域が Hα 等のarc 状の分布とよく似ていて、これは(第一世代の)中心星団からの星風や超新星爆発による圧縮によって、 arc 状領域での高密度ガス形成と星形成が進んでいることを示唆する。13CO(1-0) のデータを加えて計 3 つの輝線を揃え、 LVG 近似の下でガス密度と温度の縮退を解く。 NGC604 における星間物質と星形成の進化をより詳しく明らかにするとともに、 3 輝線 LVG によるガス密度と温度の導出を系外銀河一般に適用していくための手がかりとする。

8.4 GHz

×

Observation

GMC label GMC-A GMC-B

averaged averaged 12CO peak

line ratio

R13/12 0.06±0.01 0.11±0.01 0.09±0.02

R31 0.31±0.04 0.67±0.02 0.76±0.06

physical state

n(H2) [cm-3] ~ 7.9×102 ~2.5×103 ~2.8×103

TK [K] ~ 22 25±2 ~ 33

NGC604 の 3 つの GMC A 、 B 、 C における、 12CO(1-0) 、 12CO(3-2) 、 および 13CO(1-0) 輝線それぞれの積分強度と、Hα光度の比較。 3 つの分子輝線はいずれも各 GMC で検出されているが、一方で Hα (大質量星形成領域)はGMC-B の北側にしか存在しない。

13CO(1-0) の強度を、既に取得されている 12CO(1-0) 、 12CO(3-2) の強度、および Hα のイメージと比較した。

■ マップによる、各 emission の比較  

■ 輝線強度比の導出

■LVG 近似による、各 GMC の分子ガスの物理状態導出  

R13/12 と R31 の 2 つの輝線強度比から、 LVG近似のもとで各 GMC の分子ガスの物理状態(密度・温度)を導出し、誘発的星形成との関連を探る。

■ 分子ガスの物理状態と誘発的星形成シナリオの関連  

・ 12CO(1-0) データ (Miura et al. 2010) より、この領域に 3 つの GMC を同定。北から GMC-A, B, C と名付けた。・ 13CO(1-0) 輝線は、いずれの GMC からも検出した。・但し、 Hα の放射は GMC-B の北側でしか見られない。・ GMC-A 、 B の 2 つ に つ い て 、 13CO(1-0)/12CO(1-0) 比 ( R13/12 )と 12CO(3-2)/12CO(1-0) 比 ( R31 )を計算した。・ GMC-A では、この GMC 全体における平均値として   R13/12=0.06±0.01 、 R31=0.31±0.04  を、 GMC-B では、この GMC 全体における平均値として、   R13/12=0.11±0.01 、 R31=0.67±0.02  を、 更に、 GMC-B の 12CO(1-0) ピークでの局所値として、   R13/12=0.09±0.02 、 R31=0.76±0.06  を得た。

・ LVG 計算を実行するにあたって、以下の input parameter を仮定した。  Z(12CO) = [12CO]/[H2] = 1×10-5 、 [13CO]/[12CO] = 0.02 、 dv/dr = 1 km/s

・右図に示すように、密度-温度図上で等 R31 線と等 R13/12 線が交わる点を、 その GMC 全体(もしくはピーク)における密度 n(H2) ・温度TK とした。

GMC-A 全体での平均値として、 n(H2) ~ 7.9×102 cm-3 、 TK ~22 KGMC-B 全体での平均値として、 n(H2) ~ 2.5×103 cm-3 、 TK =25±2 KGMC-B の 12CO(1-0) ピーク位置で、 n(H2) ~ 2.8×103 cm-3 、 TK ~33 K

・ GMC-A は温度 30K以下、密度 103cm-3以下なので低温低密度のガス・ GMC-B は 全 体 の 平 均 で も 12CO(1-0) ピ ー ク 位 置 で も 、 2×103cm-3 を 超える密度を示している。そのため、高密度ガスは GMC-B の全体で くまなく形成されていることを示唆する。一方、温度は GMC-B 全体で は 25K と低いが、 12CO(1-0) ピークでは 33K と高い。即ちGMC-B の中 では、場所によって分子ガスの温度が異なっていることを示唆する。

GMC-A 、 B に 対 す るLVG 計算の結果。温度(横軸)、密度(縦軸)に対する R31 の、 依存性を赤線で、 R13/12 の依存性を黒線で示した。

13CO(1-0) 積分 強 度 ( カラー)に、高密度ガス形成 領 域 ( 黒 の 破線、 R31>0.7 に対応)と星形成領域(黒の実線、 LHα >10-12 erg s-1 cm-2 )の分布を重ねたもの。高密度ガス形成は GMC-B 全体で進んでいるが、星形成はGMC -B の北側に限られている。

・ Tosaki et al. (2007) によると、 NGC 604 の第一世代の星団形成領域は GMC-B の北端にある。そこからの星風や超新星爆発が周囲の星間 ガスを圧縮し、南側に第二世代以降の星団形成を誘発している。・第二世代の星団は既に形成され、 Hα 輝線も十分に放射されている。 しかし第三世代( GMC-B の南側)では高密度ガスが形成されてるい 段階で、まだ星団は生まれていない。そのため高密度ガスはGMC-B の全体にわたって 存在しているのに対し、星間ガスの加熱源となる 大質量星は GMC の北側にしか存在していない(右図参照)。

GMC-A お よび Bについて、輝線強度比と、 LVG 計算により導出した分子ガスの物理状態を ま と め た もの 。 GMC-B で は 、R31 ~ 0.1 、 R13/12 ~ 0.7 程度の似たような輝線比を見せているが、導出される温度には有意な違いがある。

・これは LVG 計算による分子ガスの密度・温度の推定と良く合う。即ち ガス密度は GMC-B 全体で 2×103cm-3 を超えているが、ガスの温度は GMC の北側でのみ上昇している。 加熱源が大質量星からの UV 放射 に限られているからであろう。

References: Miura et al. (2010), ApJ, 724, 1120 Tosaki et al. (2007), ApJL, 664, L27

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