ーRMST (restricted mean survival time) を理解するー · Collett D. Modelling survival data in...

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【日本製薬工業協会シンポジウム】生存時間解析の評価指標に関する最近の展開ーRMST (restricted mean survival time) を理解するー

1. 生存時間型応答の評価指標のまとめ

2018年6月13日医薬品評価委員会データサイエンス部会タスクフォース4

生存時間解析チーム

中外製薬株式会社 仲川慎太郎

留意点

本発表は,先日公開された「生存時間型応答の評価指標-RMST(restricted mean survival)を理解する-」について,日本製薬工業協会医薬品評価委員会データサイエンス部会タスクフォース4生存時間解析チームが本シンポジウムの趣旨を踏まえ,再構成したものである

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発表構成

1. 生存時間型応答の評価指標2. 長所・短所の整理3. まとめ

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1. 生存時間型応答の評価指標

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生存時間型応答の評価指標

① 時点生存割合② 平均生存時間③ 境界内平均生存時間(Restricted Mean Survival Time; RMST)

④ 生存時間に対する中央値⑤ ハザード

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①時点生存割合

ある特定の時点での生存割合時点 𝒕𝒕での時点生存割合 𝑺𝑺 𝒕𝒕 = 𝑷𝑷(𝑻𝑻 ≥ 𝒕𝒕)𝑇𝑇: イベント発現までの時間(生存時間)を表す確率変数

時点 𝒕𝒕は対象疾患や試験目的を考慮して選択

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生存割合

生存時間𝑡𝑡

𝑆𝑆(𝑡𝑡)

0

②平均生存時間

生存時間 𝑻𝑻の期待値平均生存時間 𝜇𝜇 = 𝐸𝐸 𝑇𝑇 = ∫0

∞ 𝑡𝑡𝑡𝑡 𝑡𝑡 𝑑𝑑𝑡𝑡 = ∫0∞𝑆𝑆 𝑡𝑡 𝑑𝑑𝑡𝑡

生存曲線下の面積として算出最長の生存時間データがイベントの場合のみ算出可能

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生存割合

生存時間

𝝁𝝁0

タイデータ,打ち切りがない場合(全例イベント発現)

各被験者の生存時間を短い順に𝒕𝒕𝟏𝟏 < 𝒕𝒕𝟐𝟐 < ⋯ < 𝒕𝒕𝒏𝒏

�𝝁𝝁 = 𝟏𝟏.𝟎𝟎𝒕𝒕𝟏𝟏 + �𝑺𝑺(𝒕𝒕𝟏𝟏) 𝒕𝒕𝟐𝟐 − 𝒕𝒕𝟏𝟏 + ⋯+ �𝑺𝑺 𝒕𝒕𝒏𝒏−𝟏𝟏 𝒕𝒕𝒏𝒏 − 𝒕𝒕𝒏𝒏−𝟏𝟏 Kaplan-Meier(KM)曲線下の各矩形の面積の和打ち切りがなければ単純平均( ̅𝑡𝑡 = ∑𝑖𝑖=1𝑛𝑛 𝑡𝑡𝑖𝑖 /𝑛𝑛)に一致

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生存割合

生存時間

……

𝑡𝑡1 𝑡𝑡2 𝑡𝑡𝑛𝑛−1 𝑡𝑡𝑛𝑛

�̂�𝑆(𝑡𝑡1)

�̂�𝑆(𝑡𝑡2)

�̂�𝑆(𝑡𝑡𝑛𝑛−1)

0

③境界内平均生存時間(RMST)

境界時間 𝝉𝝉内での生存時間 𝑿𝑿 𝝉𝝉 = 𝐦𝐦𝐦𝐦𝐦𝐦 𝑻𝑻, 𝝉𝝉 の平均値

RMST: 𝝁𝝁 𝝉𝝉 =𝐄𝐄 𝑿𝑿 𝝉𝝉 = 𝐄𝐄 𝐦𝐦𝐦𝐦𝐦𝐦 𝑻𝑻, 𝝉𝝉境界時間𝝉𝝉内における生存関数の曲線下面積

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生存割合

生存時間

𝝁𝝁(𝝉𝝉)𝜏𝜏0

④生存時間中央値(median survival time)

生存割合が50%に到達するまでの時間�̂�𝑆 t = 0.5 を満たす 𝑡𝑡

生存曲線の要約指標として頻用

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生存割合

生存時間Median survival time

0.5

0

⑤ハザード

ある時点 𝒕𝒕まで生存したという条件付で次の瞬間にイベントが発現する率

ハザード: ℎ 𝑡𝑡 = limΔ𝑡𝑡→0

Pr(𝑡𝑡≤𝑇𝑇≤𝑡𝑡+Δ𝑡𝑡 | 𝑡𝑡≤𝑇𝑇)Δ𝑡𝑡

群間差の指標として各群のハザードの比(hazard ratio)が報告されることが一般的Cox 比例ハザードモデルにより推定

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2. 長所・短所の整理

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①時点生存割合

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長所臨床的に解釈しやすい生存時間中央値を推定できないようなイベントが稀な疾患で要約指標として頻用

モデルに依存せずKM曲線から推定可能

短所

ある1時点の代表値であり,全時点での生存時間の振舞いを把握することが困難

事前に妥当な評価時点を決める必要がある

②平均生存時間

長所臨床的に解釈しやすい

短所最終生存時間が打ち切りの場合,平均生存時間を定義できない

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平均生存時間の算出上の留意点

最長の生存時間データ 𝒕𝒕𝒏𝒏 が打ち切りの場合KM曲線の生存割合がゼロに到達しないKM曲線が閉じた領域とならない

生存曲線下面積を計算できない

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生存割合

生存時間

……

𝑡𝑡𝑛𝑛−1 𝑡𝑡𝑛𝑛

�̂�𝑆(𝑡𝑡𝑛𝑛−1)

0

対処法

いずれも真の平均生存時間を過小に評価1. 最長の打ち切り時間までの範囲で推定

2. 最長の生存時間までの範囲で推定

16生存時間

……

𝑡𝑡𝑛𝑛−1 𝑡𝑡𝑛𝑛

�̂�𝑆(𝑡𝑡𝑛𝑛−1)

0

生存時間

……

𝑡𝑡𝑛𝑛−1 𝑡𝑡𝑛𝑛

�̂�𝑆(𝑡𝑡𝑛𝑛−1)

0

最長の打ち切り時間

最長生存時間

③ RMST

長所

臨床的に解釈しやすい

最長生存時間を超えて打ち切りが発生した場合の平均生存時間の問題点を解決

KM曲線の境界時間までの情報をすべて利用している

短所

事前に妥当な境界時間を決める必要がある

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④生存時間中央値

長所臨床的に解釈しやすい外れ値の影響を受けにくい臨床の現場で評価指標として頻用されている

短所生存割合が50%に到達していないと推定できない

ある1時点の代表値であり,全時点での生存時間の振舞いを把握することが困難

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⑤ハザード

長所比例ハザード性の仮定の下で群間差の妥当な要約指標としてハザード比が頻用されておりデータが豊富

短所単一の指標として直観的に解釈しづらい比例ハザード性の仮定が崩れるとハザード比の解釈が困難となる場合がある

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生存時間型応答の評価指標

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参考文献

Everardo D. Saad, John R. Zalcberg, Julien Pe´ron, Elisabeth Coart, Tomasz Burzykowski, Marc Buyse. Understanding and Communicating Measures of Treatment Effect on Survival: Can We Do Better? J Natl Cancer Inst. 2018; 110: 232-240.

Uno H, Wittes J, Fu H, Solomon SD, Claggett B, Tian L, et al.Alternatives to Hazard Ratios for Comparing the Efficacy or Safety of Therapies in Noninferiority Studies. Ann Intern Med.2015; 163: 127–134.

Collett D. Modelling survival data in medical research, third edition. CRC Press; 2015.

Klein JP, Moeschberger ML. Survival Analysis: Techniques for Censored and Truncated Data second edition. Springer-Verlag: New York; 2003.

Lee ET, Wang JW. Statistical Methods for Survival Data Analysis. second edition. John Wiley & Sons: New York; 1992.

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