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NTT技術ジャーナル 2016.420
NTT R&Dフォーラム2016 ワークショップ
「競争」から「協創」へ
NTTドコモは新料金プランの導入,ドコモ光の提供などを契機として従来の顧客獲得競争から脱却,より長くご利用いただくことでお客さまに価値を提供できるよう競争フェーズの転換に取り組んできました.今後,多様化す
るお客さまのニーズにおこたえするために多様なパートナーとのコラボレーションにより新たな価値を一緒に創造する「協創」に取り組みます.これまでも技術革新や市場環境の変化に事業モデルを変革しながら取り組んできたように,今回は「+d」を中心とした「付加価値協創企業」への変革に取
り組みます.「+d」とは,パートナーとドコモが
「協創」しながら,もっとお得,もっと楽しい,もっと便利などの新たな価値をお客さまにお届けする取り組みです(図 ₁ ).「+d」を推進するための基盤として「ビジネスアセットの強化」と「サービスブランドの統一」に取り
中期的取り組み +d 協 創
ビジネスアセット
ドコモ
協創
価値創造
ビジネスアセット
パートナー
協創
ドコモパートナー
価値創造 協創
ドコモパートナー
価値創造
協創
ドコモパートナー
価値創造
パートナーとともに新たな価値創造
「 」の展開
・IoT・社会的課題の解決・地方創生・2020
社会価値の協創
図 1 「協創」による価値創造
ドコモの「+d」の取り組み
阿あ
佐さ
美み
弘ひ ろ や す
恭NTTドコモ 取締役常務執行役員 経営企画部長 光ブロードバンド事業推進担当NTTドコモは,2015年 4 月28日の決算発表時に「中期目標に向けた新たな取り組み」と題して新たな事業ビジョンを発表しました.キーワードは「競争」から「協創」です.パートナーの皆様が保有する強みとドコモの強み(各種のビジネスアセット)を組み合わせて新たな価値を一緒に創造(協創)していきたいという思いです.この取り組みをドコモの頭文字をとって「+d(プラスディー)」と名付けました.本稿では,ドコモの「+d」の具体的な取り組みについて紹介します.本記事は,2016年 2 月18~19日に開催された「NTT R&Dフォーラム2016」ワークショップでの講演を基に構成したものです.
NTT技術ジャーナル 2016.4 21
特集
組みました.
ビジネスアセットの強化
パートナーの皆様の強みに顧客基盤,送客,決済システムなどドコモが持つビジネスアセット(資産)の強みをプラスすることで新たな価値を創造します.パートナーとの「協創」の取り組みを「+d」として展開し,パートナーの皆様のサービスとドコモのアセットを連携させ,新しい商流を生み出し加速していきます.
サービスブランドを「d」に統一
「+d」の展開に対応してドコモポイント,DCMXやdocomo IDなどの各種名称を,パートナーの皆様が使いやすいように「dマーケット」と同じように頭を「d」でそろえて,サービスブランドを統一することにしました.
「d」が日常生活のさまざまな場面で目にしていただけるよう,ビジネスパートナーの皆様とともに「協創」の取り組みを進めていきます.
「+d」の具体的事例
企業 ・ 自治体など多様なパートナーとの「協創」を通じて,産業の活性化,社会的課題の解決に寄与する新しいビジネスを創出します(図 ₂ ).そして,これらの取り組みを通じ,豊かな未来社会の実現に貢献します.■dポイントやdカードによる「+d」
今回,開始したdポイントやdカードは「+d」の基盤の第一歩となる取り組みです.お客さまにとって分かりやすく,便利でお得な「ポイント」をパートナーの皆様とともにコンビニエンスストアやファストフード店などで
「dポイントは,こんなに貯まる,こんなに使える!」「dカードはお得!」ということをお客さまに実感していただき,ご満足いただけるよう取り組んでいきます.
多くのパートナーと連携し「貯まる場所」と「使える場所」を増やすことで,お客さまにより利用価値の高いポイントを提供できるようになります.お客さまにポイントというもっとも分かりやすい価値で「もっとお得,もっと楽しい,もっと便利」を実感していただき,ドコモユーザ5400万人の顧客基盤がパートナーの皆様のお客さまになります.お客さまにはより多くのポイントを貯めて使っていただく,パートナーの皆様にはポイントを提供し集客していただく,というサイクルにより,dポイントの魅力をより高め,商流を加速していきます.
DCMXは「dカード」として生まれ変わりました.dカードは,dポイント,クレジット(Visa/Master),電子マネー(iD)の 3 つの機能が一体となったお得なカードです.決済ポイントと
して全世界3₉₆0万店舗で100円につき1 ポイント( 1 %還元)進呈され,全国 1 万3000店以上のdカード特約店ではさらに 1 %進呈されます.ローソンやマクドナルドなどのdポイント加盟店では加盟店ポイント 1 %(100円につき 1 ポイント)が還元され,加えてdカードのご利用で 3 %の割引特典があるため実質 5 %お得になります.
貯めたdポイントは,ドコモの携帯電話利用料金や機種変更代金,コンテンツサービスなどでの利用や,Pontaポイントなどのパートナーのポイントとの相互交換も可能となります.今後,幅広くパートナーを募り「dポイント加盟店」として拡大を図ります.■ICTの力で農業,教育 ・学習,安心 ・安全分野などの課題を解決ICTによるパートナーとの連携の仕
組みを通じて,農業,教育 ・ 学習,安心 ・ 安全などの各分野でクラウドを活用した新しいサービスを創出します.ICTの力で社会的課題の解決 ・ 改善をめざします.
農業分野では,水田センサによる水
IoT
交通 小売
学習
農業医療・健康
提携パートナー 続々拡大
図 ₂ さまざまな分野における「+d」の推進
NTT技術ジャーナル 2016.422
NTT R&Dフォーラム2016 ワークショップ
位 ・ 水温 ・ 温度管理を通じて「農業の大規模化」に向けた革新的な「稲作営農管理システムの実証実験」を新潟市などと共同で行っています.この実証プロジェクトを通じて農業従事者の減少および高齢化への対応や,これまで各農家 1 人ひとりの経験や勘によるところが多かった経営に対しICTを軸とした効率的な農業経営の実現をめざします.
教育 ・ 学習分野では,茨城県古河市立の小 ・ 中学校32校を対象に,通信モジュールを搭載した学習用タブレット1421台を活用し,学校内のみならず校外や自宅においても学習しやすい環境を構築し,児童 ・ 生徒 1 人ひとりに最適な学習を行うことで学力向上をめざします.古河市との共同研究を通じて個々人に合わせた学習向上効果と教育ICT環境整備のあるべき姿を今後検討していきます.
また,オンライン学習サービス「gacco
(ガッコ)」の仕組みを利用した教員向けオンライン学習サービスについて共同研究を進めていきます.さらに遠距離通学支援バスを利用する児童を見守るため,ドコモのお子さま向け腕時計型ウェアラブル端末「ドコッチ」の有用性についても検討を進めていきます.
安心 ・ 安全分野では,高齢者向けの見守りソリューション「おらのタブレット」を全国の法人 ・ 地方自治体向けに提供開始しました.本ソリューションは長野県大町市と天龍村の両自治体と住民の方に 1 年以上にわたりご協力いただき,実際に試作品をご利用いただきながら高齢者の方からの利用方法に関するご意見を反映するなどして独自で開発しました.高齢者の方々の日々の血圧測定や歩数管理などの健康管理も自治体と連携しながら行うことができ,自治体はメールで情報を配信した後に開封通知を受け取るこ
とで健康状態や安否確認を簡便に把握することができるようになりました.
ドコモは,パートナーとともに新たな価値を協創する「+d」の取り組みとして社会価値の協創を推進することでお客さまの生活をより豊かにするとともに地域の活性化やさまざまな社会的課題の解決に貢献していきます.
「+d」とR&D
ドコモはR&Dのテーマとして「5G*
の実現」と「2020を見据えたビジネス創出」を当面のターゲットとしてとらえています.これらのターゲットに向けて「言語 ・ メディア処理」「ビッグデータ解析・ IoT(Internet of Things)」そしてモバイル事業者としての「ネットワーク」の 3 つの技術アセットを活用し取り組みを加速していきます
(図 3 ).■言語 ・メディア処理
ドコモが提供する「しゃべってコンシェル」の3000万ユーザに鍛えられた人間の言葉を理解し対話するための
「自然対話プラットフォーム」を活用し株式会社タカラトミーと次世代コミュニケーショントイ「OHaNAS(オハナス)」を共同で開発しました.今後も拡大が見込まれるIoT分野を視野に入れ,自動車や家電などとのコミュニケーションを自然対話プラットフォームで推進していきます.
また,翻訳サービスについては世界最高レベルの精度を持つ翻訳技術や
*5G:10 Gbit/sを超える通信速度,LTEの約1000倍にもおよぶ大容量化,IoTの普及に伴う端末数の増加や多様なサービスへの対応などを目指して研究が進められている次世代の移動通信方式.
eコマース健康データ解析
ビッグデータ解析・IoT
翻訳サービス
ネットワークの進化
言語・メディア処理
ネットワーク
音声対話プラットフォーム
R&Dアセット
社会システム最適化
文化の壁を越えたコミュニケーション
2020
大迫力・高臨場感を手軽に
5G
図 3 R&Dにおける「+d」
NTT技術ジャーナル 2016.4 23
特集
サービスを提供できるよう高い目標で取り組んでいるところです.ドコモは
「はなして翻訳」「うつして翻訳」「メール翻訳コンシェル」に加えて「てがき翻訳」を提供することでトータルな翻訳サービスを提供し,多言語での自然なコミュニケーションの実現に向けて今後も先進的な翻訳サービスを提供していきます.■ビッグデータ解析 ・ IoT
eコマースの分野においては業界最高峰の人工知能エンジンをeコマース事業者へ提供していきます.お客さまに最適な商品をどう選び,提供していくか,eコマース事業者とのパートナーリングを通じて強化し,より購買につなげていきたいと考えています.
健康データ解析においては発症原因が不明な妊娠関連疾患の予防 ・ 早期発見方法を確立するために東北大学 東北メディカル ・ メガバンク機構(以下,東北大学)と共同研究を開始しました.東北大学が保有するゲノム解析および体内物質解析の技術力とドコモが保有するモバイル ・ ヘルスケア技術を融合することで,世界に先駆けて妊婦に特有な疾患の発症予防方法や早期発見方法を確立し, 1 人でも多くの妊婦が疾患を経験することなく安心して出産を迎えられるよう母子の健康確保に貢献していきます.■モバイル事業者としてのネットワークこれまでドコモは5Gのさまざまな
周波数帯を想定した通信技術について多くの開発パートナーと協力し実験をしてきました.現在,13社の開発パートナーとともに5Gの共同実験を進めています.このような手法もこれまで
とは異なる新しい試みです.早い段階から複数社と双方の知恵と技術を出し合い広い意味での「協創」を実践することで独自に開発するよりも効率良く,しかも標準化につながりやすいと考えています.これまでの常識を超える高速 ・ 大容量 ・ 低遅延 ・ 高パフォーマンスを発揮すべく今後もさまざまな開発パートナーと協力し早期のサービス提供をめざします(図 ₄ ).
5Gがサポートする未来のコミュニケーションの可能性を紹介した動画“Sharing our Future” を作成しましたのでぜひご覧ください(2).映像の中で「人と人,企業と企業が,垣根を越えて手をつなぐことで,どんな未来へも進める」との台詞があるとおり,ドコモはそう信じて「+d」に取り組んでいきます.
いつか、あたりまえになることを。
ドコモはパートナーの皆様と一緒に価値を「協創」する企業グループへと
変革するにあたり,これまでのブランドスローガンである「手のひらに、明日をのせて」を「いつか、あたりまえになることを。」へと一新しました.提供されるサービスや商品をお客さまがそれを実現する高度な技術や複雑な仕組みを全く意識することなく簡単に使いこなすことでできる,それが私たちの考えるイノベーションです.気が付けば,そのようなサービスや商品があたりまえのように生活の中にたくさんある,そんな日を実現すべくイノベーションに挑み続けていきます.
■参考文献(1) https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/
about/philosophy_vision/strategy/(2) https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/
technology/rd/tech/5g/5g_movie/
◆問い合わせ先 NTTドコモ 経営企画部 TEL 03︲515₆︲1₂5₂
5G 1 ms以下の無線区間伝送遅延
超低遅延
省電力&低コスト
超大容量
超大量デバイスとの接続
ピークレート10 Gbit/s以上
超高速伝送
開発パートナー +
これまでの常識を超える高速・大容量・低遅延・高パフォーマンス
図 ₄ ネットワークの進化
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