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日皮会誌:91 (4), 419―431, 1981 (昭56)
モルモットにおけるpenicillin疹および
cephalosporin疹の研究
一実験的薬疹における細胞性免疫と血中抗体一
池渾善郎 永井隆吉
要 旨
半合成のpenicillin (PC)およびcephalosporin (CS)
系薬剤に対する接触過敏症を誘導したモルモットに,感
作薬剤と同一薬剤を体重kg当りl.OOOmg腹腔内注射
することによりgeneralized rash(GR)を誘発するこ
とが出来た.この実験的薬疹と遅延型局所皮膚反応の関
係を比較検討すると共に血中抗体についても検討した.
1) GRも,局所皮膚反応も,24時間ないし48時間後
をピークとした遅延型過敏反応(DH)であるが,GRは
誘発3時間後に出現するのに対し,貼布試験による接触
過敏反応は誘発6時間後にも未だ出現しないという違い
がみられた.皮内試験による浸潤を伴った紅斑反応も,
同様に誘発6時間後には出現しなかったが,ほとんど浸
潤を触れない淡い紅斑だけの反応は,誘発3時間後に既
に出現しており,GRの出現時期に一致した
2) cephalothin-keyhole lympet hemocyanin (CET-
KLH)感作モルモットにおけるGRは,接触過敏反応
や皮内反応と同様に担体特異性を示した.
3) GRの主な組織変化は,真皮上層の血管拡張を伴
うリンパ球と好中球などからなる細胞浸潤であり,表皮
の変化が軽度であることを除けぼ,基本的には接触過敏
反応の組織と同じであった.
4) GRと接触過敏反応は,その強さの程度において
は相関しなかった試薬剤間の交叉反応性においてはほ
ぼ同様の成績を示した.
PCおよびCS系薬剤のアシル側鎖の構造は,抗・ヽプ
テソ抗体に対する抗原決定基の重要な部分を構成すると
横浜市立大学医学部皮膚科学教室(主任 永井隆吉)
Zenr6 Ikezawa and Ryukichi Nagai: Penicillinrash
and cephalosporin rash in guinea pigs―Cell-me-
diated immunity and humoral antibody in drug-
induced experimental rash一
昭和55年8月5日受理
別刷請求先:(〒232)横浜市南区浦舟町3―46
横浜市立大学医学部皮膚科学教室 池渫 善郎
されている.そのアシル側鎖の構造が全く異なるceph-
alothinとcefazolinの間において,GRと接触過敏反
応が交叉反応したことは,アシル側鎖がこれらの免疫反
応に対する抗原決定基の重要な部分を構成していないこ
とを示している.従って,GRは,交叉反応性からみた
抗原構造において,抗ハプテソ抗体とは異なり,接触過
敏反応に類似していることが考えられた.
5)間接血球凝集反応による抗ハプテソ抗体価は,
sulbenicillin感作において最も高い値を示し,次ぎは,
ampicillin感作, benzylpenicillin感作の順であった.
しかしながら, cephalothinおよびcephalexin感作にお
いては,著明なGRが誘発されるにもかかわらず,抗
ハプテン抗体は血中にほとんど認められなかった.
以上より,この実験的薬疹は,経時的変化,担体特異
性,組織所見,交叉反応性および抗ハプテソ抗体価など
多くの点で,薬剤に対する遅延型局所皮膚反応に一致し
ており,血中抗体よりは,むしろ細胞性免疫が重要な役
割を果していることが考えられた.
しかしながら,GRは,強さの程度において遅延型局
所皮膚反応に相関せず,前者は後者の単なる全身的表
現ではないと考えられ,両者の解離とJones-Mote型反
応,ツペルクリソ型過敏反応との関連についても若干の
考察を加えた.
緒 言
penicillin(PC)およびcephalosporin (CS)系抗生剤
は,ほかの抗生剤に比らべて臓器毒性が低いため,現在
広く使用されており,これらの薬剤による薬疹は急速に
増加しているよりに思われる。播種状紅斑丘疹型のPC
疹およびCS疹は,誘発試験陽性例があり,その場合,
多くは遅延型過敏反応(DH)ともいうべき経時的変化
を示すことから,少なくとも,これらのPC疹および
CS疹は,遅延型の薬剤アンルギーによることが考えら
れる。遅延型の薬剤アレルギーについては,アナフィラ
420 池滞 善郎 永井 隆吉
キシー型のPCアレルギーと異なり,近年,急速な免
疫学の進歩にもかかわらず,ほとんど解明されるところ
がないといえより.その理由のひとつには,遅延型の薬
剤アレルギーによる薬疹の動物実験モデルが未だ確立さ
れていないことがあげられる.
我利よ,既にDNCB感作モルモットのDNBSO.Na
によるgeneralized rash (GR)がDvorakら1)の報告に
あるsystemic cutaneous basophil hypersensitivityに一
致するものであり,薬疹の動物実験モデルのひとっとな
る可能性があることについて報告した2)3)さらに,半
合成のPCおよびCS系薬剤に対して接触過敏症を誘
導したモルモヅトに感作薬剤と同一薬剤を全身的に投与
することによってGRを誘発することに成功した4).今
回は,この実験的薬疹と遅延型局所皮膚反応の関係を検
討すると共に血中抗体価について検討した
材料と方法
動物こ350~500gのHartley系雄白色モルモット.
試薬:PCG (Benzylpenicillin,明治), MPIPC (Oxa-
cillin,万有), CBPC (Carbenicillin,藤沢), SBPC
(Sulbenicillin,武田), IPABPC (Hetacillin,万有),
AMPC (Amoxillin,協和発酵), ABPC (Ampicillin,明
治), CEX (Cephalexin,塩野義), CET (Cephalothin,
塩野義), CER (Cephaloridine,塩野義), CEP (Cepha-
pirin,ブリストル), CEC (Cephacetrile,武田), CEZ
(Cephazolin藤沢), CET・KLH (CET-keyhole lympet
hemocyarin conjugate;Batcherorらの方法5)によりCET
をCalbiochem社製KLHに結合させた) FCA (Fre-
und's complete adjuvant, Iatron).
感作:2%抗生剤溶液を等量のFCAと混合して
emulsionとし,これを皮下注射して感作した.最初の
感作実験では上記emulsionをO.lmlずつfootpadに
4ヵ所皮下注射し,1週後毎に貼布試験し,接触過敏症
の出現を観察しながら四肢の筋肉に追加感作した.以後
の感作は,1次感作として上記emulsionを0.2mlずつ
footpadに4ヵ所皮下注射し,その2週後に2次感作と
して0.1mlずつ四肢に筋肉内注射した.
皮膚試験:貼布試験はLevineの方法6)に準じて
ethanol, methylcellosolveおよびTween 80 (45:45:
10)からなる溶媒で2%抗生剤溶液を作り,その5μIを
剃毛した側腹部にopen patch testをし24時間ないし48
時間後にModified Chase's scoringsyste�)に従い判定し
た.皮内試験は,抗生剤による場合2%生食溶液を0.1
ml, CET-KL耳およびKLHによる場合0,1%生食溶液
を0.1ml皮内注射し,24時間後の皮内反応(浸潤性紅斑
ないし硬結)の直径(mm)を計測した.
GRの誘発:rashの誘発における抗生剤投与量を検
討した実験.(Fig. 2)を除き,20%抗生剤溶液を1,000
mg/kg腹腔内注射して誘発し,24時間後にDvorakらの
記載1)に従い判定した.また, KLHによるrash誘発の
場合,1%ないし0.5%生食溶液を50mg/kgないし5mg/
kg腹腔内注射しだ.
間接血球凝集反応:Levineらの方法8)に準じて,抗生
剤-HSA(Human serum albumin, Calbiochem) conjugate
をglutaraldehydeで羊赤血球(SRBC)に結合し,感作
血球を調整した.マイクロプレートの全管に被験血清25
μIずつの2倍稀釈系列を作成し,次いでレ前述の1%
感作血球浮遊液を25μIずつ滴下した.内容をよく撹伴
し,一夜室温に静置し,凝集反応を判定した.凝集価は
陽性反応を示す最大稀釈倍数で表わした.
間接血球凝集ハプテン阻止反応:ハプテンである各種
抗生剤の稀釈系列をマイクロプレートに作製し,次に,
抗血清の4単位稀釈液(陽性反応を示す最大稀釈濃度
を1単位とし,その4倍濃度稀釈液)を25μ1ずつ滴下
し,室温で1時間反応させた.さらに,1%感作赤血球
浮遊液を25μ1ずつ滴下し,一夜静置して阻止反応を観
察した.阻止価は,阻止反応を示すハプテンの最小濃度
(mM)で表わした. |
成 績
1. PCおよびCS系薬剤による実験的薬疹の作製
(Tab. 1; Fig. I)
PCおよびCS系薬剤として代表的なSBPC, ABPC,
CET, CEZ を用いて感作し,I週後毎に接触過敏反応
の出現を観察しながら追加感作した. Tab. 1 はその成
績を経時的に示したものである. SBPCは感作2週後
にCET, CEZ は3週後に明らかな接触過敏反応が出
現したがABPCは4週後(4回感作)においても明ら
かな接触過敏反応はみられなかった. SBPC, CET, CEZ
では,4週後において充分に強い接触過敏反応が得られ
たものと考え,それぞれ,感作薬剤と同一薬剤を腹腔内
注射してGRの誘発を試みた.その成績はTab. 1 に
みられるように,どの薬剤についてもDNBSO,Naによ
るGRと同様のrashを誘発し得た.特に, CET感作
では全てに著明なrashが誘発された(Fig- I). SBPC
感作では,最も強い接触過敏反応を示したにもかかわ
らず, rashはCET感作に比し軽度であり,その逆に
ABPC感作では明らかな接触過敏反応がみられなかっ
Table l A drug-induced contact sensitivity reac‘
tionand generalized rash in the guinea pigs sen-
sitizedwith semisynthetic penicillins and cepha-
losporins.
実験的薬疹
lmmUnlZlng
anllgen
Open patch test with 2% antibiot・csolutionGeneralized rash
with 20% .ntibiotics
(i.p、)
Mean score士SD ln,
Time after l st SenSitizat,0n(W.eks)
1 W 2W 3W 4W
Mean士SDr
J
Mean士SDt
J
Mean土SD(
J
Mean士SD ("
SBPC0,7士o.r (5) 2、3土1.4 (5) 2.6士O.S (SI 4,4土0.8 (51 2,9士i.l(5)
ABPC o、(4) o (4) 0.2土0.2 (4) 0.5士0.2 (4) 2.1土0.9H)
CEZ0,3士0.2 15〕 0,6士0.7 (5) 1.3士0.7 14) 2.5土0.6 (41 2.9士O.t141
CET o (510.5士o、6 (5) 2、0±1.0 (5) 3.1土0.3 (41 3.9士0、2 141
+ + + +
9J00S
s.qsBJ
peziiejsuan
Dose of antigen 40 100 400 1000 "g/ke
i.p.・・njected
Fig. 2 Development of a generalized rash with
various doses of challenge antigen i・p. injected
in the guinea pigs sensitized with CET.
たにもかかわらずrashが出現した.なお,GRの出現
に際してDNBSO3Naによる場合と同様に既往の貼布試
験部位のflare upが認められた.
2.実験的薬疹の誘発に必要な投与薬剤量の検討
(Flg.2)
最も著明なGRが誘発されるCET感作モルモット
を用いて投与薬剤量を検討した.5匹ずつからなる4群
について1次感作5週後(2次感作3週後)に体重kg
当り,それぞれ40mg, lOOmg, 400mgおよびl,OOOmg
のCETを腹腔内注射した.その成績は, Fig. 2 のご
とく400mg/kgから明らかにGRが誘発されl.OOOmg/
kgでは全てに著明なGRが誘発された.従って,以後
のGR誘発に際してはどの薬剤についてもl,OOOmg/kg
を腹腔内注射した.
3.実験的薬疹と局所皮膚反応の経時的変化(Fig. 3)
421
Fig, 1 A flare-up of previous patch test sites and
a generalized rash at 24h, induced with CET i・P.
injected in the guinea pig sensitized with CET.
+ + + +
(3J00S s。4sey)
ト30 %U Ml!” 4seJ pazjejausg
04
12 8 4 0
(luui
:jai9LUGi())
133 %l Ml
is=( IBuuspeJl"!
(3J00S s^sseLjQ pai^ipo|A|)
130 %Z 41!≫ 1531 PeiuoO
CTi
CM
^
0
036 16 2448 72 96
Hoursafter challenge
F垣。3 A time course of the generalized rash and
local skin test reactions in the guinea pigs sen-
sitized with CET.
最も著明なGRが誘発されるCET感作モルモット
5匹について,1次感作4週後(2次感作2週後)に皮
内試験と貼布試験を行い,その1週後にGRを誘発し
てそれぞれの経時的変化を観察し趾
422 池滞 善郎 永井 隆吉
Table 2 Carrier specificity of the generalized rash
andlocal skin test reactions in the guinea pigs
sensitizedwith CET-KLH.
Chairenge antigen
(Dose. R・vie)
Immunizing antigenCET・KI_H CET・KI_H GET
また,ハプテソ単独感作の場合,局所皮膚反応はハプ
テソ担体結合物では惹起されなかった.なお, CET-KLH
感作の場合は,感作I週後に既に著明な局所皮膚反応
がみられるため,感作1週後(Exp. 1)と感作3週後
(Exp. 2)に,また,CET感作の場合は,接触過敏反応
が最大レベルとなる感作4週後に局所皮膚試験を施行
し,それぞれその1週後にGRを誘発した.
5. 実験的薬疹, flare uPおよび接触過敏反応の組
織所見(Fig. 4,5, 6, 7, 8, 9)
SBPC, ABPC, CETおよびCEZ感作モルモット5
匹において,1次感作4週後に貼布試験を施行し,24時
間後の皮膚反応をそれぞれ2匹から4匹について生検
し,HE染色して組織学的に検討した.さらに,その
1週後に誘発されたGRおよび既往の貼㈲試験部位の
flareupについても,それぞれ,2匹から4匹誘発24時
間後に生検して同様の検討した.
CETおよびCEZによる接触過敏反応は,軽度ない
し中等度の組織変化(Fig. 4,5)を示した.その主な
変化は,真皮上層のリンパ球,好中球などからなる細胞
浸潤であった,表皮はspongiosisを伴って軽度肥厚し,
表皮直下の空胞化および表皮内へのfocalな細胞浸潤を
しばしば伴っていた(Fig- 5).真皮上層の血管は,内
被細胞の腫脹を伴って拡張し,赤血球や白血球でしばし
ば充満していた.
SBPCによる接触過敏反応は,極めて強い組織変化
(Fig. 6)を示した.表皮内への細胞浸潤は著明であり,
浸潤した好中球,リンパ球などが集積して表皮内膿瘍を
形成していた.この表皮内膿瘍はspongiosisを伴って
おり,所謂“spongioform pustnles”ともいえる像を示
し,表皮内に多発し,痴皮となって排出されていく所見
もみられた真皮の細胞浸潤は一層桐密となり,上層だ
けでなく,中層から下層にまで及んでいた.
GRの主な組織変化は,真皮上層の細胞浸潤と血管拡
張であり,基本的には,接触過敏反応の真皮の変化と
同じであった.細胞浸潤は,同様に,リンパ球と好中球
などから,なり,内被細胞の腫脹を伴って拡張した血管
腔内は,赤血球や白血球でしばしば充満していた.表皮
の変化は,接触過敏反応に比らべ軽度であり,浮腫を伴
った表皮肥厚と軽度のexocytosisがみられ,しばしば
表皮直下の空胞化を伴っていた.発赤の著しい部位の生
検標本ではspongiosis, exocytosisか著明となり,表皮
は一部で変性し,不全角化がみられた.しかしながら,
接触過敏反応でみられたような“spongioform pustule”
j
j
1
O.I%OET・KLH
い弱・a/0.1≫<い.d.〉
0.1%KLH
(ioo・g/0.1-*, i.dj
2%CET
l2-t/9.lmtパd,)
2%CET
(ID0≪K/5^r、●pi〉
1%KLH
(SQ・l/㎏バ、p、1
0.5%KLH
(S>≪/ii(. j.p.}
20%CET
く1ひM>f/㎏、i-p-)
Mean M・・n Mean
diamet・r士SD㈲ dism・l・f±SD ^) diameter土SD㈲
18.0±0.9 (5) 14.8士3、3 (9) 3.2±i.e w
18.7士1.4 (5) 16.4±3.8 (9) 1.6±1.0 (l≪
3.S±1.0(5) 1.9±2.0(9) II.0士0、8叩
Mnn ± Mean Mean
scorei^SO {nj score土SD㈲ score士SD㈲
o (5) 0 (9! 2.1 ±1.0 (l≪
Mein Mnn Mean
sc・re士SD㈲ scare士SD㈲ score±5D (n)
2。1±0.2 (5〕
ND
O く5)
009v
jIf
回’
心切
‥に0
③③
6±0.4 (6)
GRは, Fig- 3 のごとく,3時間後に早くも淡い紅
斑が出現したか,以後漸次赤味を増して24時間後にはほ
ぼ最大となるDHの経時的変化を示した.48時間後に
はやや消槌し始め,72時間後には鱗屑を伴った淡い紅斑
をわずかに残すのみとなり,96時間後には完全に消槌し
た.一方,接触過敏反応は,6時間後にまだ現われず,
16時間後頃に出現し,48時問後頃に最大となるDHで
あった.皮内試験の場合も,明らかな浸潤を有する紅斑
は,同様に6時間後にはまだ現われず,24時間後に最大
となるDHであった.しかし,浸潤のほとんどふれな
い淡い紅斑のみの反応は,GRと同じように3時間後に
出現し,GRの出現時期に一致した.
ま仏 SBPCの皮内反応はCETの皮内反応にみら
れるような軽度の浸潤を伴った紅斑とは異なり,ツベル
クリン型(ツ型)の古典的DHに一致する著明な硬結
を24時間後に示した.
4.実験的薬疹と局所皮膚反応におけるハプテン担体
特具性(Tab. 2)
CET-KLHとCETによる感作モルモットを用いて,
GR,接触過敏反応および皮内反応におけるハプテソ担
体特異性を検討した.
その成績は, Tab. 2 にみられるようにCET感作の
場合,GRも局所皮膚反応もハプテソ単独投与により誘
発されたがCET-KLH感作の場合,ハプテン単独投与
では誘発されず,担体単独投与により誘発された.この
ことは,ハプテソ担俸結合物による感作では,GRは局
所皮膚反応と同様に担体特異性であることを示してい
る.
Fig. 4 A photomicrograph of a CET patch test
reaction at 24h (original magn. XI00).
Fig. 5 A photomicrograph of a CET patch test
reaction at 24h (original magn. ×50).
Fig. 6 A photomicrograph of a SBPC patch test
reaction at 24h (original magn. ×50).
実験的薬疹 423
Fig. 7 A photomicrograph of a CET rash at 24h
(original magn. ×100)・
Fig. 8 A photomicrograph of a flare-up on the site
of a previous CET patch test at 24h (original
magn.×20).
Fig・ 9 A photomicrograph of a SBPC rash at 24h
(original magn. ×50).
424 池洋 善郎 永井 隆吉
Table 3 Development of a contact sensitivity to
semi synthetic penicillins and cephalosporins.
Immunizingantigen
Total
number of
animals
Modified Chase's score for contact testing
<1,14<3, 3* I * (.%} Mun score士so
PC・G 1024h: 6 4 0
48h: 4 4 2
4/10 ( 40)
6/10 ( 60)
0.8土0.8
1.3士1.2
CBPC 624h: 0 3 3
48h: 0 3 3
6/6 (100)
6/6 ClOO)
2.6±0.e
2.6士0.8
SBPC 3324h: 0 5 28
4ah: 0 3 30
33/33 (100)
33/33 (100)
3.9士1.1
4.4士1.1
ABPC 1424h: 9 4 1
48h: 5 5 4
5/14( 38)
9/14( 64)
o、9士0.8
1.6土1.1
CEX 824h: 7 1 0
48h: 6 1 1
1/8 (13)
2/6 ( 25)
0.4士0.8
0.6土1.0
CET 3324h: 0 18 15
48h: 0 8 25
33/3S (100)
33/3S (100)
2.9±0.B
3.3士0.9
CEZ 1324h: 0 5 8
48h: 0 4 9
8/8 (100)
8/8(100)
3,3士1.4
3、5士1.2
+4
1
・
+3
+2
+1
0
0 1 2 3 4 5 6
Contact test
Immunizing antigen : ○;PC・G、▽;CBPC、△; SBPC
□;ABPC、■ :CEX、○;CET、●;CEZ
Correlation coefficient(r)= 0.281 (P〈0.02〉
Number of animalsfn)=61
Fig. 10 A correlation between a generalized rash
and a patch test reaction.
の像はflare-upの一部にみられたのみで,GRでは認
められなかった. flare-upの組織所見では,GRに比らべ
表皮の変化が強くexocytosisを伴うspongiosisがしば
しば認められた.真皮の細胞浸潤はより桐密で,上層だ
けでなく,下層にまで及んでおり,皮下組織においても
赤血球と白血球で充満して拡張した血管周囲に軽度のリ
ンパ球と好中球からなる細胞浸潤がみられた(Fig. 8).
なお,ギムザ染色によって真皮上層の細胞浸潤にはリ
ソふ球,好中球に加えて好塩基球か認められたが,その
詳細にっいては別に報告する予定である.
6. PCおよびCS系薬剤による実験的薬疹と接触過
敏反応(Tab. 3,4; Fig. 10)
PCG, CBPC, SBPC, ABPC, CEX, CETおよびCEZ
感作モルモットを用いて,これらの薬剤に対する接触過
Table 4 Development of a generalized rash with
semisynthetic penicillinsand cephalosporins.
17首g Total
number of
aoiinals
Generalized rash's score (Dvorak et al,)
く+1,+1* <十3,*3i +1≦く%) M≪an score ±SD
PC・G 5 2 3 0 3/5 (60〉 1.3士0.8
CBPC 6 0 6 0 6/6.(100) 1、8士0.6
SBPC 17 0 12 5 17/17 (100) 2.4士0.7
ABPC 10 1 6 3 9/10 ( 90) 2,1土0.8
CEX 4 0 3 1 4/4 (100) 2.3士0,9
CET T2 0 0 12 12/12 (100) 3、8士0.3
CEZ 8 0 5 3 8/a (100) 2j士1,0
敏反応を,1次感作4週後(2次感作2週後)に貼布試
験し,24時間と48時間後に観察した.
その成績はTab. 3 にみられるように,24時間判定
では,1以上のscoreがCEXは8匹中1匹と少な
く,次いでPCG, ABPCはそれぞれ10匹中4匹,14匹
中5匹であり, CBPC, SBPC, CETおよびCEZはどの
薬剤も全て1以上のscoreであったTab. 3 のscore
で,1以上の陽性率およびMean scoreから,同一感
作条件におけるこれらの薬剤に対する接触過敏反応性を
判定すると, SBPOCBPC, CEZ, CET>ABPC, PCG≫
CEXの順であった.
次に,貼布試験1週後にGRを誘発し,24時間後に
観察したTab. 4 がその成績である. CEX, ABPCで
は,接触過敏反応の陽性率が低いにもかかわらず, GR
の出現率が高く,またSBPCでは,最初の実験成績と
同様に,最も著明な接触過敏反応がみられたにもかかわ
らずCETより明らかに軽度のGRが誘発された.
以上の接触過敏反応とGRの相関関係を検討してみ
ると, Fig. 10 のごとく相関係数が0.281 (p<0.02)で
あり,両者は統計学的に相関しなかった.これを,薬剤
別にみると,接触過敏反応に比らべGRのscoreが高
い薬剤であるCET, CEX, ABPCは,主に図の対角線
の上側に分布し,逆に,接触過敏反応に比らべGRの
scoreが低いSBPCは,そのほとんどが対角線の下側に
分布していた.また,薬剤別の両者の相関関係は,例数
が少なく,結論を出すには至らないが,印象としては,
SBPCで正に, CETとCEZでは負に相関する傾向が
みられた.
7. 実験的薬疹および接触過敏反応における交叉反応
(Tab. 5, 6, 7: Fig. 11)
実験的薬疹
Table 5 Across-reactionof antibioticsin the patch test system in the guinea pigs
sensitizedwith PCG, CBPC,SBPC and ABPC.
425
Immunizing antigen: PCG CBPC SBPC ABPC
ニ:フe:ゴ肩こ
PCG 《::3y- CH2・CONH-
MPIPC (:きZ:コI:CONH一一-
N`OCH.
CBPC O‘?-CONH
COONa
SBPC 《:}?・CONH-一一
SOiNa
AMPC Hoく::》i-CH-CONH一一
NH,
ABPC 《:》“CH-CONH
N吻
CETワcH2’coNtZlococHs
?=%・cH2・CONHCEZ
-CH.sJLJl- CH.
Cross reaction of antibiotics in contact testing
1≦(%) 1≦(%) 1≦(%) 1≦(%)
Mean士SD Mean土SD ^Aean士SD Mean土SD
6/10 (60) 2/6 (33) 6/16 ( 38) 2/9 (22)
1.3±1.2 0.8±0.5 0.8±0.8 0.4±0.7
O/IO 0/6 7/16 ( 44) 1/9 ( 11)
0.9±1.0 0.2±0.3
6/10 (60) 6/6 (100) 14/16 ( 88) 9/9 (100)
2.3±2.2 2.6±0.8 3.9±1.7 2.4±0.8
0/10 6/6 (too) 33/33 (100) 14/14 (100)
2.8±1.1 4.4±1.1 3.3±1.3
ND
-o /10
O /10
0/10
GRにおける抗原決定基と接触過
決定基との関係を検討するために, PCG, CBPC, SBPC,
ABPC, CEX, CET およびCEZ感作モルモットにおい
て,種々のPCおよびCS系薬剤で接触過敏反応とGR
を誘発することにより薬剤間の交叉反応を観察した.
なお,交叉反応を検討する場合,感作抗原として用い
た薬剤に含まれている少量の同系薬剤による影響を考慮
しなければならないCBPC中にはPCGの含量規格
が5%以下と記載されている.他の薬剤については同系
薬剤の含量がほとんどないとされているので,今回は,
モの影響を無視して検討した.
接触過敏反応における交叉反応の成績はTab. 5,6,
-2/6 ( 33)
0.8±0.6
o/6
0/6
7/10 ( 70)
1.7±0.8
-12/33 ( 36)
0.8±0.8
0/21
0/21
ND
9 /14 ( 64)
1.6±1.1
0/10
0/10
7に示す通りである.アシル側鎖のα位にcarboxyl基,
sulfonyl基amino基か結合したCBPC, SBPC, ABPC
の三者(特にCBPCとSBPCの二者)はTab. 5 の
ごとくよく交叉反応したまた, PCGは, CBPC, SBPC
およびABPC感作において若干交叉反応し, MPIPC
は, SBPCおよびABPC感作において若干交叉反応し
た.しかしながら,PCとCS系薬剤間の交叉反応は,
ABPC感作でCEX接触過敏反応が9匹中1匹にscore
1の弱い反応としてみられるのみで,モれ以外の交叉反
応は全くみられなかった.
次に, CET感作においては, Tab. 6 にみられるよう
にアシル側鎖に同じthlenyl基を有するCERだけでな
426 池渾 善郎 永井 隆吉
Table 6 Across-reactionof antibioticsin the patch test system in the guinea pigs
sensitizedwith CET、CEZ and CEX.
Immunizing antigen
Challenge Ri
antigen
CET CEZ CEX
Cross reaction of antibiotics
in contact testing
1≦(%) 1ぶ(%)
Mean士SD Mean士SD
CETn/13 ( 85)
2.2±1.2
1≦(%)
Mean士SD-o/8
CER
O-CH2-C0NH―
― CHjOCOCH
O-CH,-C0NH-
S -CH.-N*Q
CEP NC;2〉-SCH,-CONH―
CH,OCOCH,
CECn£ c-ch,・CONH一一
CHjOCOCH,
N二NCEZ " _/N-CH,-CONH― 7=
CEX てy(や-CONH
NH: CH,
PCG ひcH2・CONHバズ乱
。1.c ^3"!!―ipCONH―
CBPC⑩-5Hz-CONH-
COONa
SBPC Q-FH゛'coNH‾
SOiNa
ABPC くと;》h-CHi・CONH-一一
NH.
く,異なるpyridylthio基, cyano基, tetrazolyl基を
有するCEP, CEC, CEZもよく交叉反応した.但し,
アシル側鎖にABPCと同じaminobenzyl基を有する
CEXだけは,26匹中の3匹としか交叉反応せず,その
scoreも1ないし2と弱い反応であった. CEZ感作にお
いても, CETとはよく交叉反応した.しかし, CEXと
は5匹だけの実験であるが,全く交叉反応せず, CET
感作の場合とほぼ同じ成績であった. CEX感作におい
ては, CEX接触過敏反応自体の陽性率が低いこともあ
るが,ほかのCS系薬剤とも全く交叉反応を示さなかっ
33/33 (100)
3.3±0.9
-
21/26 ( 81)
2.2±1.0
-26/26 (100)
2.7±0.8
-
24/26 ( 92)
2.6±1.2
-
33/33 (100)
2.8±0.8
-3/26 ( 12)
0.2±0.5
ND
ND
ND
ND
ND
ND
13/13 (100) 0/8
3.5±1.2
o/5
3/18 ( 17) 0/5
0.3±0.6
2/18 ( 11) 0/5
0.2±0.5-4/18 (22) 0/5
0.5±0.7-
0/14 0/13
O/22 0/!3
2/8 (25)
0.6±1.0-
0/8
O/8
0/8
0/8
o/8
た.また,PC系薬剤との交叉反応は, CET感作にお
いてのみ, PCX5, MPIPC, CBPC との間に若干みられ
たが,いずれもscore l ないし2の弱い反応であり,明
らかな交叉反応と断定しがたい成績であった.
以上の交叉反応の成績をscore l ないし2以上の陽
性率でまとめた表が, Tab. 7である.各欄内の上段の数
字はscore 1以上の陽性率で,下段のカッコ内の数字は
score 2以上の陽性率であり,黒い太線の枠内は, score 2
以上の反応を示したものである.
さらに,接触過敏反応における交叉反応性とGRに
Table 7 A cross-reaction of antibiotics in the patch
test system. Cross-reactivity is expressed as a
percent of positive reactions more than l in the
scoring system for contact testing. Numbers in
parentheses refer to the percentage of patch test
reactions more than scored 2.
実験的薬疹
よ MPI
PC PC&CB
PC
SB
PC
IPAB
PC
AM
PC
AB
PC CEX CET CER CEP CEC CEZ
PCQ0
(0)
60
(40)
60
(W)
0
(0)ND NO
0
(0〉
0
(0)
0
(0)ND ND ND
0
(0)
CBPC0
(o)
33
(0)
100
(iS)
100
く67)ND ND
33
(17)
0
(o)
0
(o)NO ND ND
0
(a)
SBPC44
(SI)
3a
(19)
88
(闘)
100
(1卯)
75
(・?〉
70
呻)
36
(2f)
0
(0)
0
く0) ND ND ND0
(a)
ABPC11
(0)
22
(田
1卯
lit)
1卯
(≪≪
1㈲
(7S)ND
64
(48)
11
(o)
0
(0)NO ND ND
0
(0)
CEX0
(0)
0
(o)
0
(S)
0
(0)NO ND
0
くo)
25
(IS〉
0
(0)ND ND ND
0
(0)
CET11
(0)
17
(o)
22
(11!
0
(o)ND ND
0
(0)
12
(4)
100
(94〉
81
≪S)
100
(SS)
92
OS)
100
(94)
CEZ0
(0)
0
(o)
0
(o)
0
(0)ND ND
0
(o)
0
(0)
85
(S!)ND ND NO
1㈲
(la)
Table 8 Hemagglutination titersin the guinea pigs
sensitized with PCG, SBPC, ABPC, CEX, CET
and CET-KLH.
Immunizingantigen
Total
number of
animal
Hemaggiutinationtiler(IO&)
0,1,2.3,≪、5,6,7,8, 2≦(%)Mean
titer土so
PCG 10 a5soooooa 5/10(50) 1.5±0.6
SBPC 9 0 I 3 I I 0 I I 1 8/9 (89) 3.9土2.4
ABPC 9 014400000 6/9 (89) 2.3+0.7
CEX 7 700000000 0/7 (0) 0.
CET 15 6BI0OOO0O 1/15(7) 0.7士0.6
CET・KtH 5 0 10 2 2 0 0 0 0 4/5 (80) 3.0±l.l
おける交叉反応性と比較してみた. PCG, SBPC, ABPC,
CEX, CET およびcEz感作モルモットにおいて,そ
れぞれ種々のj薬剤でGRを誘発し,薬剤別のGRの
scoreの平均値を求めた.次に,GR誘発薬剤別にその
1週間前の同じ薬剤に対する接触過敏反応のscoreの
平均値を求め,これをGRのscoreの平均値と比較し
た.
その成績は, Fig- 11 にみられるように,接触過敏反
応とGRが,強さの程度では相関しないが,交叉反応
性では極めて類似していることを示している.従って,
GRにおける抗原決定基は,交叉反応からみた場合,接
触過敏反応における抗原決定基と同様の構造をとること
が考えられる.
8,間接血球凝集反応による血中抗体(Tab. 8,9)
実験的薬疹における血中抗体の役割を検討するため
にPCG, SBPC, ABPC, CEX およびCET感作モル
Immunizing
antigen
Contact test
≫lth 1% anlibi。tics
5 4 3 2
Cbilltnn
jntigen
0
427
QBneralized rish
with a % anlibi。tics
(IHOOh/H. i.B.)
0 +1 +2 +3 +4
PCG
5
5
4
・ ・ i i ・
PCG
CBPC
SBPC
| | ● ●Ξ
1一一
ドー=
-4
SBPC
17
4
4
4
号SBPC
CBPC
ABPC
CET
尹ASPC
10
4 こ ABPC
SBPC ⊇CEX
4
4ベヨCEX
CET 戸CET
12
4
4昌三CET
CEZ
SBPC
三戸
CEZ4
4
毎
・ Z I ・ |
CEZ
CET
三す
l i i
Fig. 11 A cross-reaction of antibiotics in the ge-
neralized rash and patch test system・
Table g Hapten inhibition of hem・agglutination
of guinea pig anti-SBPC against SRBC coated
with SBPC-HSA.
Antibiotic used
for inhibition
Cross reaction of antibiotics in
hemagglutination system with
anti-SBPC serum and SBPC・
HSA-SRBC
Concentration (mM)
Cross-reactivity
PC・G 100土0 2.6
CBPC 2.3土1.1 113.0
SBPC 2.6士0.7 100.0
ABPC 38士18 6.8
CEX 83土24 3.1
CET 33土12 7.9
CEZ 83士24 3.1
The highest dilution of antibiotic which inhi-
bited agglutination was recorded as endpoint. Data
represent as mM of hapten. Cross-reactivity was
culculated as follow:
Cross-reactivity = mMof SBPC ×100
mM of each antibiotic
モットにおいて,1次感作5週後(2次感作3週後)の
GR誘発直前に採血し,間接血球凝集反応により血中の
抗ハプテソ抗体価を測定した.また,前述したCET-KLH
428 池渫 善郎 永井 隆吉
Table 10 Effects of induction of a generalized
rash on the local skin test reactionsand hemag-
glutinationtiters.
I mmunizinS An・mal
≪nt>8<n No、
S・lare
7 1
Syste°iC
↓
6・llenge
0
After
1 H(Dm!)Contact Hem^SSluti nation
r*actlon litw {!=!,)Generalisedr≪sK
HemaCSlutinationContacttiter(log,) r●●clion
PCS
Msan SD
2
0
3
卜3
0
I.S-tl-3 1.2 04
2
0-1
2~3
0-|
| 1.3+0 8 Q、6
0
0
0
0
1
0.5 0.+
SBPC
Mean SD
S
5
4
2
3,S+1.1 4.5 2.1
2
日
3
1、Q 40
0
3
2
12.0 I,S+I、2
ABPC
Meln so
0.5
1
F3
0
1.0+0,9 23 Q,4
2
2.4
3
0 , 4
|,3
0
0
0
1
0,4 0.3+D.4
CEX
Moan SD
S
O
0.5
1,2+1,S 0.
3
22.3
4
S
I.0
0.5
0、?5
0 0.3+0.Z
GET
Main so
3-4 0
4 1
2-S O
3.3士0.S 0.3土0,5 S、70.5
0 0
0 1
0 0
0,! 0.3±0.5
感作モルモットにおいても,GRにおける・ヽプテソ担体
特異性と血中抗体との関連を検討するために,抗CET
抗体を測定した.
その成績はTab. 8にみられるように,凝集価(log2)
が2以上を陽性とした場合SBPC感作では9匹中8匹
(89%)が陽性で,凝集価(log.)の平均値も3.9と最も
高い値である.次はABPC感作,PCG感作と続き,
CET感作では15匹中1匹のみ陽性で,陽性例の凝集価
(loge)も2と低い値であり, CEX感作では7匹中全て
が陰性であった.一方CET-KLH感作においては,1
回感作のみで感作3週後に5匹中4匹か抗CET抗体陽
性で,凝集価(log,)の平均値は3と比較的高い値で
あった.すなわち, CET感作においては,抗CET抗
体陰性にもかかわらず,GRがCETにより誘発され,
CET-KLH感作においては,抗CET抗体陽性にもかか
わらず,GRがCETで誘発されないで, KLHで誘発
され乞これらの成績は,GRが抗ハプテソ抗体を介し
ては誘発される可能性が少ないことを示している.
次に,高い抗SBPC抗体価を有する3検体について,
間接血球凝集ハプテソ阻止反応により交叉反応を検討
した. Tab. 9 は,その平均値を示したものである.抗
SBPC抗体はCBPCと極めてよく交叉反応を示すか,
CS系薬剤はもちろんのこと, PCG, ABPCともとほん
ど交叉反応を示さなかった.すなわち,アシル側鎖のα
位の残基が抗ハプテソ抗体における抗原決定基として重
要な部分を構成することを示している.この交叉反応の
成績を, SBPC感作モルモットにおける接触過敏反応や
GRの交叉反応の成績と比較すると, CBPCについては
同じであるがABPC, PCGでは若干異なっている.
9.実験的薬疹誘発前後における接触過敏反応と抗ハ
プテン抗体価の変動(Tab. 10)
Tab. 10は, PCG, SBPC, ABPC, CEXおよ.びCET
感作モルモットにおいて,GR誘発前後の接触過敏反応
と抗ハプテソ抗体について検討できた例をまとめた表で
ある.GR誘発により接触過敏反応は著明に低下した
が,間接血球凝集反応による抗ハプテソ抗体価は,その
差が2倍以下と明らかな低下を示すことはなかった(な
ぜなら,被験血清は2倍稀釈係列のため,同じ濃度の稀
釈液かその2倍濃い稀釈法となるのにすぎないので).
考 按
半合成のPCおよびCS系薬剤で感作したモルモッ
トに,感作薬剤と同一薬剤を全身的に投与することによ
り,紅斑丘疹型から紅皮症型に及ぶ全身性のrash (GR)
か誘発される,GRは,体重kg当り400mg以上の腹腔
内注射で誘発され,誘発3時間後頃より出現し始め,ほ
ぼ24時間後が最大で,約72時間に及ぶ遅延型の経時的変
化を示す.この経時的変化は,皮内試験における紅斑の
経時的変化にほぼ一致する.
GRの組織所見は,表皮の変化が比較的軽度であるこ
とを除けば,接触過敏反応の組織と基本的に同じであ
る.主な変化は,真皮上層の血管拡張を伴う,主として
リンパ球,好中球などからなる細胞浸潤であり,さら
に,ギムザ染色により好塩基球浸潤も認める.
CET-KLH感作モルモットを用いたGRと遅延型局
所皮膚反応におけるハプテソ担体特異性の検討は,血中
抗体のハプテソ特異性と異なり,両者が担体特異性であ
ることを示している.この成績はDvorakら1)のDNP・
BGG感作モルモットを用いたGRにおけるハプテソ担
体特異性の実験成績に一致する.
また, CET感作の場合,遅延型局所皮膚反応がCET
で惹起されるがCET-KLHでは惹起されない.我
列び,既にDNCB感作モルモットにおいて, DNBS
OjNaでGRが誘発されるがDNP-HGG, DNP-HSA,
DNP-KLHではGRが誘発されないことを報告してい
る.従って,ハプテソ単独感作の場合も,遅延型局所皮
膚反応およびGRの誘発に際しては,自己の担体蛋白
が重要な役割を果していることが考えられる.
自己の担体蛋白を重要視する立場から,GRと接触過
敏反応の交叉反応をみてみよう.PCおよびCS系薬剤
のアシル側鎖の残基は,抗ハプテソ抗体を誘導する抗原
決定基の重要な部分を構成するとされている9)-11)しか
しながら,そのアシル側鎖の構造が全く異なるCETと
実験的薬疹
CEZの間において,著明な交叉反応を示していること
は興味深い.抗CET抗体と抗CEZ抗体が,それぞ
れ, CEZ, CETと交叉反応しないことは,間接血球凝
集ハプテソ阻止反応において岩田ら12)によって報告され
ている.GRと接触過敏反応においてCETとCEZが
交叉反応することは,アシル側鎖がこれらの免疫反応に
おいて主要な抗原決定基を構成していないことを示して
いる.さらにCETとCEZが自己の担体蛋白(MHC
抗原ないしla抗原?)に結合して形成されるnew
antigenic conformationが,アシル側鎖の違いにもかか
わらず, CETとCEZの場合で類似したものになるこ
とを示していると思われる.
またCETのthienyl基は抗ハプテソ抗体に対する
抗原決定基として, PCGのbenzyl基から充分に識別
されないため,抗CET抗体と抗PCG抗体が,それぞ
れ, PCG, CETと交叉反応することはよく知られてい
る13)U)しかしながら,接触過敏反応においてはCET
とPCGはTab. 5,6,7にみられるようにscore 2以
上の明らかな交叉反応を示さない.
TNP基とDNP基は類似した構造をしており,その
抗ハプテソ抗体はよく交叉反応するが, TNCB接触過
敏症とDNCB(DNFB)接触過敏症は全く交叉反応しな
χ,ヽ. ,.
以上は,単純化学物質であるハプテンに対するDH
が,交叉反応性において抗ハプテソ抗体とは異なること
を示すものであり,ハプテソ自体の構造よりも,むし
ろ,ハプテンが自己の担体蛋白と結合して形成される
new antigenic conformation に対する反応であることを
示している.
間接血球凝集反応による抗ハプテソ抗体価は, SBPC
感作において最も高く,次いでABPC感作PCG感
作の順であるがCET感作, CEX感作においては,著
明なGRが誘発されるにもかかわらず,ほとんど測定
できない.この成績は,抗原抗体複合物で感作すること
により抗体産生を阻害しても,GRの誘発が抑制されな
いとするDvorakら1)の報告に一致する.
以上より,我々の実験的薬疹は,遅延型の経時的変
化,組織所見,担体特異性,交叉反応性および抗ハプテ
ソ抗体価など多くの点で,薬剤に対する遅延型局所皮膚
反応に類似しており,血中抗体よりもむしろ細胞性免疫
が重要な役割を果していることが考えられる.
しかしながら,GRは, Fig- 10にみられるように,
その強さの程度において遅延型局所皮膚反応に相関せ
429
ず,前者が後者の単なる全身的表現ではないことを示し
ている.特に,両者の解離は, CET感作とSBPC感作
の間でみられる.すなわち, CET感作では,局所皮膚
反応が余り強くないにもかかわらず,最も著明なGR
朗
がみられるのに,GRは■ CET感作の場合のGRに比ら
べ明らかに軽度である.この関連で, SBPCによる皮内
反応が,ツベルクリン型(ツ型)DHにー致する著明な
硬結を示すのに対して, CETによる皮内反応は,軽度
の浸潤を伴った紅斑で,ツ型の硬結を示さないことは興
味深い.
CET感作においてJones-Mote型反応の方がより強
くSBPC感作においては,ツ型DHの方がより強く
誘導されやすいのかもしれない. Dvorakら1)は, FCA
加感作によるツ型DHにおいても,GRが誘発される
が,その場合のGRはFreur!(Fs incomplete adjuvant
(FIA)加感作の場合のGRに比らべて弱い反応である
と報告している. SBPC感作においてツ型DHが誘導
されているとするならば,余り著明でないGRが誘発
されることが説明できよう.
また, Jones-Mote型反応が感作後早期に出現し,抗
体産生の上昇と共に消槌することはよく知られている15)
16).SBPC感作における抗SBPC抗体の上昇はJones-
Mote型反応出現の抑制とツ型DHとの共存に関係し,
CET感作において抗CET抗体が上昇しないことは,
感作後数週に渡るJones-Mote型反応の持続(?)と著
明なGRの出現に関係しているかもしれない.
今回のPCおよびCS系薬剤による感作実験におい
てJones-Mote型反応とツ型DHのうちどちらのDH
が強く発現してくるかは,感作に用いた薬剤および誘発
の時期などによって左右されることが考えられる.
従来,特に独立した現象として取り扱われていなかっ
たJones-Mote型反応が,ツ型DHとは異なるもので
あることは明らかである16) 17)さらにJones-Mote型
反応の発生学的位置,抗原認識の特殊性および異物排除
における役割などがますます明らかにされつつあるIS)IS)
-22)今まで,把えがたい分野として位置づけられてい
た遅延型薬剤アレルギーによる薬疹についても, Jones-
Mote型反応として把え直してみる必要があろり.我々
の実験的薬疹でみられたSBPCとCETによる反応の
対照的な違いは,遅延型薬剤アレルギーにおけるJones-
Mote型反応とツ型DHの位置づけを検討する上で重要
な手がかりを与えてくれるように思われる.
430 池洋 善郎 永井 隆吉
著者は,さらにSBPC感作およびCET感作におけ
る感作後の皮内反応と抗・ヽプテソ抗体の経時的変化の比
較検討cyclophosphamideによる感作前処理の効果お
よび細胞性免疫と血中抗体産生に対する免疫学的寛容の
誘導などの実験をすすめているところである.
ヒトの薬疹において,皮膚試験陰性にもかかわらず,
内服試験陽性の症例はよく経験する.今回の実験的薬疹
においても,接触過敏反応陰性のABPC, PCG および
CEX感作モルモットでGRが誘発されている.また,
GR誘発によりTab. 10 にみられるように接触過敏反
応は著明に低下ないし陰性化している.
従って,ヒトの薬疹患者において,皮膚試験陰性にも
かかわらず,誘発試験が陽性となる原因には,薬剤の投
与経路の違いの問題と共に,薬疹出現による局所皮膚反
応の抑制の問題があげられよう.
Richerson23)および野本ら24)は,可溶性蛋白抗原を大
量静注してから,同・じ蛋白抗原をFCA加で感作したと
き,ツ型DHは消失するが, Jones・Mote型反応は残存
すると報告している.
もし,実験的薬疹だけでなく,ある種のヒトの薬疹も
Jones-Mote型反応とした場合,先に述べた皮膚試験陰
性,誘発試験陽性の原因としてさらにJones-Mote型反
応の免疫学的寛容が誘導しにくいという問題も考慮する
文
1) Dvorak, H.F., Hammond, M.E., Colvin, R.B.,
Manseau, E・J. & Goodwin, J.: Systemic ex-
pression of cutaneous basophil hypersensitivity,
j.Immu厭)l・,nl:1549-1557, 1977・
2)池渫善郎,藤田敬一,峯村協成,永井隆吉:
Generalized rash (Polak & Turk)における
cutaneous basophil hypersensitivity,日皮会誌,
88 : 701-707, 1978.
3)池渫善郎,峯村協成,長岡英和丿永井隆吉:実
験的薬疹の研究.第2報.―DNBSOjNa induced
generalized rash と DNCB skin reaction の比
較についてー,横浜市特定研究“救急疾患の基
礎的,臨床的研究”昭和53年度研究業績.横浜,
1979, pp. 45-49.
4)池渾善郎,石井則久,長岡英和,峯村協成,永
井隆吉:半合成のセファロスポリソおよびペニ
シリソによるgeneralized rash (実験的薬疹).
Proc. C. Derm。Rgぶ.,4 : 29-30, 1979.
5) Batchelor, F.R。Dewdney, J.M・, Weston,
R.D. & Wheeler, A.W.:The imtnunogenicity
of cephalosporin derivatives and their cross-
reaction with penicillin, Immunology, 10: 21-
33, 1966.
必要があろう.
今後,この実験的薬疹を遅延型アレルギー性薬疹の動
物実験モデルとして確立するためにさらに検討をすすめ
たい/
結 語
半合成のPCおよびCS系薬剤で感作したモルモット
に,感作薬剤と同一薬剤を全身的に投与することによ
り,GRを誘発することに成功した.このGRを遅延型
局所皮膚反応と比較検討すると共に,血中抗体について
検討した.GRは,経時的変化,担体特異性,組織所
見,交叉反応性および抗ハプテン抗体など多くの点で,
薬剤に対する遅延型局所皮膚反応に一致しており,血中
抗体よりむしろ細胞性免疫か重要な役割を果しているこ
とが考えられた しかしながら,GRと局所皮膚反応は
強さの程度において相関せず,前者は後者の単なる全身
的表現ではないと考えられ,両者の解離とJones-Mote
型反応,ツ型DHとの関連についても若干の考察を加
えた.
稿を終えるにあたり,血中抗体の測定ならびに貴重な
御助言をしていただいた三共生産技術研究所の岩田正之
博士に深謝致します.
また,終始,技術的な御協力を頂きました本学皮膚科
学教室の勝呂純子技術員に感謝致します.
献
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