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自主ゼミ 骨粗鬆症Osteoporosis M2 平井佑季
骨粗鬆症の定義と分類
• 定義としては骨強度の低下を特徴とし、骨折リスクが増大しやすくなる骨格疾患のこと。骨強度=骨密度+骨質(骨代謝、骨梁構造など)
• 分類として、原発性と続発性に分かれる★原発性骨粗鬆症低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患や続発性骨粗鬆症を認めないもので、主に以下の2つに分類される。
閉経後骨粗鬆症(Ⅰ型):更年期におけるエストロゲン分泌量の低下老人性骨粗鬆症(Ⅱ型):加齢に伴う腎機能の低下によるビタミンDの産生低下
★続発性骨粗鬆症●骨代謝に影響を及ぼすホルモンやサイトカイン異常,●不動など骨への力学的負荷の減少,●骨構成細胞や物質の異常,●全身的および血管障害などの局所的栄養障害
などによって結果として二次的な骨量喪失が起きたもの
分類
• 原発性骨粗鬆症退行期骨粗鬆症閉経後骨粗鬆症、老人性骨粗鬆症
突発性骨粗鬆症妊娠後骨粗鬆症
• 続発性骨粗鬆症内分泌性: 副甲状腺・甲状腺・性腺機能亢進 クッシング症候群
糖尿病代謝性:慢性腎・肝疾患、カルシウム摂取不足炎症性:関節リウマチ、サルコイドーシス薬剤性:ステロイド、メトトレキセート、ワーファリン不動性:全身性血液疾患:多発性骨髄腫先天性:骨形成不全症、マルファン症候群
診断
• Ⅰ 脆弱骨折あり
• Ⅱ 脆弱骨折なし
正常
骨密度YAMの80%以上かつX線での骨粗鬆化なし骨量減少
骨密度YAMの70~80%で、X線で骨粗鬆症化の疑いあり
骨粗鬆症
YAMの70%未満で、X線で骨粗鬆症化あり
脆弱骨折とは低骨量(骨密度がYAMの80%未満,あるいは脊椎エックス線像で骨粗鬆化がある場合)が原因で、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折のこと
YAM:20~44歳の平均骨密度
治療薬
• 腸でのCaの吸収を上げ、Ca代謝促進活性化ビタミンD3
• 骨の形成促進
活性化ビタミンD3、メナテトレノン
• 骨吸収を抑制
カルシトニン、エストロゲン、ラロキシフェン
ビスホスホネート
シナリオ
• Mrs. Patelは72歳の女性。喘息を患っており、普段は高用量のステロイドを吸入して良好にコントロールされている。増悪時には経口でステロイドを服用している。
• 彼女はギブスで固定された手首を見せ、整形外科の医師に骨粗鬆症になっていると言われたこと、X線検査を受け、すぐに治療を開始するように言われたことについて、意見を求めてきた。
患者情報
• 72歳 女性
• 現病歴:骨粗鬆症• 既往歴:喘息(継続)• BMI:18• 薬歴:ステロイド(名称不明) 吸入・経口
問題点
• 骨粗鬆症
#1 骨粗鬆症
S手首を骨折した。医師に骨粗鬆症の疑いがあるから検査を受けるべきと言われた。
O長期にわたり、高用量のステロイド(吸入・経口)、72歳と高齢、女性(閉経後)、低体重(BMI:18) 手首の骨折
A喘息治療で高用量のステロイドを長期にわたり服用、高齢、女性(閉経後)、低体重など複数の因子が関わって骨密度の低下が起こり、骨折が起きたのではないか。X線検査を受け、直ちに治療を開始すべき。β2刺激薬などを併用してステロイドは減量できないか?ステロイドによるその他の副作用(高血糖など)はないか?
Plan
• 検査を受けていただく→骨粗鬆症の確定診断
• 喫煙・飲酒、食事内容・運動の有無の確認• 低血圧や家に急な階段がないかなど、転倒するリスク因子確認
• 薬物療法ビスホスホネート製剤など
• 非薬物療法食事(カルシウム・ビタミンD)
運動(適度な負荷が骨の形成には重要)
• 現在服用中のステロイドの減量可能か確認• 他にステロイドの副作用はないか、血糖など確認
ステロイド性骨粗鬆症(GIO)
• 骨粗鬆症は、ステロイド全身投与によって起こる副作用の中で最も発症頻度が高く、かつ重篤な副作用の1つである。
• 骨強度の低下は、ステロイド投与開始後3~6ヵ月以内に急速に進行する。
• 発症は、年齢、性差、人種と相関しないが、骨量の少ない閉経後女性や、活発な活動により骨折が危惧される小児は注意が必要である。
• リスク因子は、(1)閉経、(2)高齢、(3)脆弱性骨折の既往(40歳以降に些細な外傷で生じた骨折)、(4)低体重(BMI<18)、
(5)骨量減少をきたす基礎疾患、(6)関節リウマチ(RA)、(7)日常生活動作 (ADL)障害、(8)高用量ステロイド、(9)低骨量、(10)カルシウム摂取不足などである1)
ステロイドによる骨粗鬆症の発生機序
ステロイド性骨粗鬆症の治療
一般的な方針
• ステロイドの投与量を可能な限り減らし、維持量が多いときは免疫抑制薬を併用して減量を図る。
• 基礎疾患治療に問題がなければ、分割投与よりは1回投与、連日投与よりは隔日投与のほうが、副作用の発症は少ない。
• 一般的に、ベタメタゾン、デキサメタゾンのようなフッ素含有ステロイドは、作用時間が長く、筋骨格系の副作用も多いとされるので注意が必要。
• 筋力が低下すると骨密度が低下し、転倒のリスクも増大する。支障がない程度に、軽いエクササイズを行うよう指導する。また、喫煙、飲酒などを控える。
• 日本人のカルシウム所要量は600mg/日だが、ステロイド服用中は、一般的に1,000mg/日以上、閉経後女性患者では特に1,200mg/日以上のカルシウム摂取が望ましい。
ステロイドによる生理作用・薬理作用・副作用
Q1:How is osteoporosis characterized ?
• 骨吸収が骨形成を上回っており、骨に微小な穴が形成されたり、骨量が低下して骨強度が低下している。
• その結果、骨が脆くなり、骨折のリスクが高まっている状態。
Q2:What are the risk factors for condition ,and which of these is relevant to Mrs. Patel ?
Mrs. Patelにあてはまる骨粗鬆症のリスク因子• 低体重(BMI=18<22) ←低体重と低骨密度には高い関連性を認める• 長期のステロイド服用歴• 高齢者• 女性(閉経後)
その他一般的なリスク因子として• カルシウムの摂取不足• 運動(負荷がかかる程度)の不足• 骨折歴• 早期(45歳未満)の更年期障害• 家族歴• アルコールの過剰摂取(利尿作用によるCa放出)• 長期の無月経• 甲状腺機能亢進症などの続発性骨粗鬆症を起こす疾患
Q3:What is the special X ray and the results indicate ?
• 骨密度(BMD)は Dual Energy X-ray Absorptiometry (二重エネルギーX線吸収測定法=DEXA)により測定される。
• DEXAは2種類のエネルギーレベルのX線の透過率の差を利用して骨量を測定する方法で、測定対象骨は、腰椎、大腿骨頸部、前腕骨ならびに全身骨。測定の精度が高く、測定時間が短く(全身で7~8分、腰椎なら3分程度)、放射線の被爆量もわずかで済む。
• 骨密度を測定することにより、骨粗鬆症の診断を行う。• 日本では若年成人平均値(YAM)と比較し、70%未満であれば骨粗鬆症と診断される。ただし、ステロイドを3ヶ月以上服用している場合は80%未満
Q4:What are the goals of therapy in this case ?
骨密度を増やし、骨折の危険性を減らす。
骨折による寝たきり状態にならないようにする。
QOLQOL・・ADLADLの低下を防ぐ!の低下を防ぐ!
Q5:What drug treatments are available ? Comment on their advantages and disadvantages with regards to Mrs Patel, using latest evidence.
• ビスホスホネート製剤長所:高い骨密度改善効果・骨折予防効果。週一回の服用で効果あり欠点:独特の服用法、食道潰瘍など
• エストロゲン製剤長所:閉経後骨粗鬆症に有効。骨折予防効果あり欠点:血栓症、乳がんの危険性増大が認められる。(大規模臨床試験:WIH)
• 活性化ビタミンD3(アルファカルシドール、カルシトリオール)
長所:加齢による骨量低下には第一選択 副作用は少ない。欠点:高Ca血症の恐れ。肝機能低下群ではカルシトリオールを。
• ビタミンK2長所:骨形成の促進のほかに骨質の強化作用欠点:出血傾向
• カルシトニン長所:疼痛緩和作用。欠点:筋注製剤のみ。カルシウムの摂取必要
• ラロキシフェン(選択的エストロゲン受容体調節薬)長所:閉経後骨粗鬆症に有効。生殖器ではエストロゲン受容体遮断作用を示すため、乳がんなど
aaaの誘発は少ない。欠点:エストロゲンと同じく静脈血栓、脳梗塞が問題となる。静脈血栓症はプラセボに比べ3.1倍高い
本邦で承認されている薬剤の骨密度・骨折予防に対するエビデンス(WHO Technical Report より)
DーーA蛋白同化ステロイド
ーーーBイプリフラボン
DーCCアルファカルシドール
ーCCCカルシトリオール
ーーBBメナテトレノン
DCCAカルシトニン
ーーAAラロキシフェン
AAAAエストロゲン
DDBAエチドロネート
AAAAアレンドロネート
AAAAリセドロネート
大腿近位部骨折
非椎体骨折椎体骨折骨密度薬剤
A:1つ以上の大規模なRCTでエビデンスあり B:小規模で限定的なRCTでエビデンスあり
C:RCTの結果が一致しない D:観察結果のみであり、エビデンスなし -:有効性が確立していない or 未検討
Q6:What monitoring would be required if Mrs Patel was prescribed alendronate 70 mg weekly ?
• 血漿中のカルシウム濃度、クレアチニン値• DEXAなどで毎年1回は骨密度確認• 嚥下困難を訴えた場合は内視鏡で食道に潰瘍ができていないか確認
Q7:What other measures would patients with this condition need to take, including falls prevention ?
• 生活習慣について喫煙の有無適度な運動をしているかカルシウム・ビタミンDの摂取状況
• 患者側の転倒のリスク因子平衡感覚、運動機能は正常か視力は正常か中枢抑制薬や降圧剤を服用していないかうつ病がないか低血圧ではないか
• 環境因子暗い照明で生活していないか急な階段がないかよくすべる床がないか自分に合った靴を履いているか
参考
• 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編集(2006)
• 骨粗しょう症ホームページいいほね.jp総監修:東京都リハビリテーション病院院長 林泰史http://www.iihone.jp/
• 薬局 12月号 Vol. 58 No.13 南山堂 (2007)• ステロイドプラクティス Pfizer 監修:東邦大学医療センター大森病院膠原病科教授川合眞一 http://www.steroid-practice.jp/
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