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個別支援計画の作成とその重要性について

寝屋川市民たすけあいの会 事務局長

地域生活支援センター冨田昌吾

http://totutotu.hp.infoseek.co.jp/

支援費制度でも施設の支援計画の策定は義務づけられていた。障害者自立支援法では、特にサービス提供の責任体制をはっきりさせ、サービスの質の向上をめざすため、事業者ごとにサービス管理責任者を配置し、個々の利用者についてアセスメントや個別支援計画の作成、定期的なモニタリングなどの一連のサービス提供プロセス全体を管理することになっている。

→ つまり、個別支援計画には二つの意味の計画が存在するということ。

◆残念ながら、障害者自立支援法では個別総合支援計画の位置づけが薄くわかりにくい。

①それぞれのサービスについて、個別支援計画=個別サービス計画(ISP: Individual Service Plan )が

組み立てられている。それは、個別の利用者の生活全体のプランではなく、生活介護なら生活介護というサービスの支援計画。居宅サービスの場合も居宅サービス計画というサービスごとの計画のことである。サービスを提供する上での、ニーズ、目標(Goal)、その方法などを示したもの。どちらかといえば、サービスの質(quality)を管理する目的に使われることが多い。

②指定相談支援事業所が策定するのはサービス利用計画、委託相談支援事業所が策定するケアプランという個別支援計画=個別総合支援計画・本来的な意味では本人中心の支援計画(PC-IPP:Persons Center-Individual Program Plan)。相談支援の部分で強調されるのは、障害者ケアマネジメントを明確

に位置づけたと言われるこの部分。障害者ケアマネジメントで強調されているご本人の「したいこと」を中心にした地域生活(支援)の総合的な計画

◆本来的な意味では、個別総合支援計画は地域生活支援にしか必要ない。

24時間管理の入所施設や病院では、①=②になるから

地域生活と入所施設での生活の違いは、24時間体制の管理システムの中にいるかどうか

※障害者自立支援法の中のケアホームの位置づけは、施設なのか、居宅のサービスなのかの位置づけが大変あいまいであり、全体の仕組みを理解することをむずかしくしている。

※障害者自立支援法での昼間と夜間のサービスを(形式上)分けているので、わかりにくい。

ことばの整理

個別支援計画(個別サービス計画=ISP)と個別総合支援計画(本人中心支援計画=PCーIPP)の関係

日中活動

本人をよく知る親しい人その他の

支援者

かかりつけ医

相談員専門職

提携医

行政

自宅 サービス事業所等

介護職

相談支援専門員

支援員など

ショートステイ

家族

本人

サービス利用計画に基づいた支援

個別支援会議(ケア会議)などへの出席

プランニングシートは別

ヘルパー

相談支援員

家族

本人

サービス管理(提供)責任者

就労支援関係者

権利擁護関係者

本人中心支援計画 個別サービス計画

本人の希望

サービスを受ける本人・ネットワーク・地域社会のの諸状況

サービスを提供する行政担当機関や、各種サービス提供機関の諸状況

ケース(ケア)マネジメントが必要になった背景 D.Moxley北野誠一による整理

①施設(病院)でなされていた、一元的なサービス提供及び責任体制の、脱施設化による不明確化②公営機関、非営利機関、営利機関を含めた地域サービスの多元・多様化分化③必要なサービスの担当部局や機関の、年齢や問題別の専門・セクター化

④多くの問題やニーズを併せもつ市民の増大⑤本人を取り巻く家族や仲間等のインフォーマルなネットワークが、本人の日常生活に大きな意味を持つことの再認識

⑥必要なサービスの費用対効果に関する関心の増大

地域生活を支えていくイメージ

生活の3要素

うしろだて支援の3要素くらしの3要素

介助

医療

移動

はたらく

(日中活動)

くらす(住宅)

いこう(余暇)

相談支援

権利擁護

所得保障

地域社会との関係

支援当事者

①住む(一人暮らし支援・グループホーム・在宅支援)

②働く・生きがい作り(通所施設・デイサービス・就労支援)

③余暇・社会参加支援(移動支援・本人会支援・情報提供支援)

④所得保障(障害基礎年金・手当て・就労賃金の確保)

⑤権利保障

(成年後見・権利擁護)

⑥医療保障

(日中活動の場の医療保障、

訪問看護、連携医療機関)

⑧相談支援(個別支援計画作

成・各種相談支援)

⑨地域の意識変革(啓発活動・差別禁止法の制定)

⑩人材育成機関

(ヘルパー養成など)

基本的な支援

こんなふうに創りたい地域生活支援システム

暮らしを包み込む支援

移動の支援

(SST、通学、通勤、

身近な生活での移動の保証

介助・支援

⑦家族援助

(レスパイトサービス)

原図案:社会福祉法人むそう 冨田加筆訂正

介護保険のケアマネとの制度上の差異

①介護保険の給付サービスを受ける方には、原則すべての人に居宅介護支援(ケアマネ)が適用される。

◆制度的には一応「セルフケアプラン(セルフマネジメント)」が認められている。

▼入所施設にもケアマネがいて、施設支援のケアプランを立てる。ISP=IPPになっている

②要介護認定の決定を前提としたその枠の中でのサービスおよびマネー(給付額)の管理が大きな役割。

◆必要なサービスの費用に対する裁量権限、サービス提供事業者に対するモニター権限、社会資源の新たな開発の役割などない

▼障害者自立支援法では、障害者ケアマネジメントを前提としているため、本人の希望をきくことからはじまることになっている

③家族介護が前提の家族介護の補足的な役割を果たす介護保険の在宅サービス制度では、中軽度の人を中心に家族支援を主目的にマネジメントをすることになる。

▼障害者自立支援法での、サービス利用計画の対象者は、重度者、単身が基本前提

障害者支援における相談支援のプロセスがわかりにくくなっているわけ

1)地域生活支援や相談支援、サービスの利用に至る支援など、あらゆるところに相談支援員(事業)が登場しすぎる

2)そのため、相談支援員の役割が不明確

3)介護保険の居宅介護支援員(ケアマネジャー)に比して、狭いサービスの支援だけで終わらない

4)ケアマネジメントの手法が、「本人の希望」発で行うため、単純なサービスの組み立てにならない

初期相談からサービス等の利用まで

指定相談支援事業者

(委託相談支援事業者)

サービス利用計画

作成費の対象者

身体障がい者相談員知的障がい者相談員民生委員 等

学校・保育所 等

サービス事業者 等

家族・知人 等

サービス等の利用

支給決定プロセス

市 町 村

支給決定

申 請

認定調査概況調査

市町村審査会

障がい程度区分の認定

利用意向聴取

支給決定案

サービス利用計画作成費の対象者

申請・決定

課題分析(アセスメント)

原案作成

サービス担当者会議

サービス利用調整

モニタリング

相 談

指定相談支援事業者

(委託相談支援事業者)

※教育・就職等のさまざまな一般的な相談↓障がい者相談支援事業(委託相談支援事業者)地域のネットワークで解決

申請援助

調査受託

指定相談支援

委託相談支援事業者による

ケアマネジメント

サービス利用計画作成費の対象外

指定相談

支援事業者

本人中心ケアマネ機関の業務は①必要なサービスと結びついていない事例の発見

②Life Cycle をいっかんしてサポートできる体制

③各種相談支援体制(住宅、教育、就労を含めて)

④本人中心の自立生活支援計画(サービス機関ごとの個別サービス計画ではなく、本人の生活希望にもとずく総合支援計画)作りのサポート

⑤そのための本人⇔支援関係者会議の開催

⑥必要な社会資源の発見と創造とそのための権限

⑦本人の利用するサービス事業所へのスーパーヴィジョンやモニタリングと、苦情解決・権利擁護

等が、その中心業務となる。

北野誠一作成

個人総合支

援計画作成機関

・教育機関

・就労支援機関

・権利擁護機関

・その他の支援機関

行政

サービス提供事業者

インフォーマルなネットワーク支援

(社会参加活動支援)

インフォーマルなネットワーク

相談支援員

ご本人を中心とした支援のネットワークのイメージ

本人支援

個別化

自己決定

受容

非審判的態度の原則

秘密保持の原則

統制された情緒関与の原則

意図的な感情表出の原則

バイスティック7原則

対人援助の原則の基本として

ソーシャルワークのプロセスを考える

インテーク ラポール

アセスメント

プランニング

実施モニタリング

終了

ソーシャルワークプロセスから考えるアセスメントの重要性

・介護保険の居宅介護支援員や障害者ケアマネジメントの前提は、契約関係である。それは介護保険制度や障害者自立支援法(支援費制度)が契約関係でのサービス提供を前提にしているからである。

・しかし、契約関係によってなりたたない支援の組み立てを考えるときに、当然そこには契約関係を前提にした利用者ー専門家の関係性の構図は、違った構図を考える必要に迫られる。

・ここでは一般的なソーシャルワークのプロセスを紹介することで、ケアマネジメントのプロセスではおとしがちな「ラポール」「インテーク」をきちんと押さえておくことを指摘したい

・そして、単にサービスを提供することを前提としない場合に、特にアセスメントが重要になることを指摘したい。

・「ニーズ→サービス」ではないこと、ニーズをどうアセスメントし、「支援をあえてしない」ことも含めて、考えていくのか。

環境健康管理および行動障害

コミュニケーション支援 ADLおよびIADL

支援の必要性・必要度

本人の意思確認

【矢印の先に行くほど支援度が高い】

4つの要素をス

ケールではかり、立体的にアセスメントをするイメージ

とみたが考えている支援スケールイメージ

例:身体(中度)、知的、精神の障害のある方が、入所施設から一人暮らしをするときにつくったアセスメント(寝屋川市民たすけあいの会)http://homepage3.nifty.com/neyagawatasukeai/の相談支援

本人の意思(○/△/

×/?)

環境的に整っているのか(○/△/

×/?)

支援者の判断(判断者: ) 備考

○できる

○だいたいできる(よほどの気分の落ち込みや体調不良がなければできる)

△助言やことばかけ、見守りがあればできる。気分によって左右される

△強い助言やことばかけ、一緒に行うなど間接の支援があればできる

×できない

不明?

身のまわりのこと(パーソナルケア)

安全管理

• 竹内孝仁も言うように、エンパワーメント支援としての本人中心ケアマネジメントは、セルフマネジメントをめざす支援である。

• 障害者ケアマネジメントがあくまでも「本人の希望」を前提として組み立てられるものである。

• 専門家がたてる支援計画とは葛藤関係が生じる。

専門家による支援のマネジメントとセルフマネジメントとの葛藤関係

★実践上の課題としては・専門家の専門性とは何を担保にしての専門性であるかを考える必要

・セルフマネジメントを目指すとしたときに、そのセルフマネジメントが一体なんなのかを共有する必要

・障害者ケアマネジメントで強調されている「本人の希望」が、社会的抑圧構造から生まれているという理解の上で、ご本人の希望をアセスメントするための力をつける・計画を実現をするためバリアを取り除くための努力を「よりそい」ながら行うこと・社会防衛的観点に対しての勇気

そうすると

日常生活支援の

当事者管理に

関するモデル(S.Litvak,WID

1991)

北野誠一作成 冨田訂正

アメリカの当事者運動による、当事者管理(セルフマネジメント)の理解

専門家の管理が必要

専門家(機関)が管理することが望ましい

サービスのある部分は、本人だけでは管理できないか、本人が

それを望まない

経験やトレーニングによって、必要なサービスを本人

が管理できる

すぐに必要なサービスを管理できる

怪我・病気等をしないように

防御・制御された隔離室での

完全な管理・保護状態

一般的な市民生活上の自由な自己決定・選択に伴う危険・リスク状態

入所施設・病院

GH

《自由度》vs《安全性》《リスク度》vs《管理性》

学校

家庭

家庭

北野誠一作成

①セルフマネジメントセルフケアプラン

③エンパワメント支援

②専門家によるサポートプラン

ご本人が望む地域での自立した生活の実現

社会防衛的抑圧

社会資源の不足

④地域社会への参加

個別支援会議

個別支援計画表

1.あなたの希望する生活

2.いつまでに、実現するか

いますぐ ちょっと先( ヶ月後くらい) ずっと先( 年後ぐらい)

3.具体的な内容

①してみたいこと困っていること知りたいこと

②手伝ってほしいこと

③誰に手伝ってもらうか

④サービス内容や、回数など

⑤順番

「わたしの『個別支援計画』『個別支援会議』 P23より大阪府地域移行推進指針策定検討委員会「地域移行 利用者作業部会」

支援のキーワードとしての「時間軸」

◆講義中の「自立生活」の概念は障害者の自立生活運動の中で使われている「自立生活」概念です。障害者支援の大前提として、ご存じない方は調べておいてください。

• 「ご本人の希望」を軸にして、ご本人のまわりにいる支援者たちが、ご本人を中心においた支援のネットワークを組み、その支援を組み立てていくというプロセスをここまで説明してきた。

• もう一つの支援のキーワードは、「時間」である。

• 「時間」というのは、「プロセス要する時間」という意味と「支援のスピード」という2つの意味を含めて使っている。

• 「待つこと」も含めて、個別の支援の中での時間の使い方

• モニタリングのタイミングというプロセスの中での「時間」=支援のステージの考え方

• そして、もっとも難しいのは、ご本人を含めた関係者全体の時間のマネジメントだと思う。少なくとも、もっともご本人によりそっている支援者は、目標の設定とモニタリングの設定を明確にしていく必要があるように思う。

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