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第26回 肝臓病教室
B型肝炎について
慢性肝疾患の原因
C型肝炎 75%
B型肝炎 15%
その他 10%
42nm
B型肝炎ウイルスの構造
不完全2本鎖DNA
HBs抗原 HBc抗原
DNA ポリメラーゼ
Envelope
コア(Core)
B型肝炎ウイルスは不完全2本鎖DNAをコアタンパクが取り囲み、
さらに脂質二重膜のエンベロープで覆われた構造を有する。
cccDNA mRNA
ウイルス 球状粒子、桿状粒子 HBe抗原
HBsタンパク
コア粒子
肝細胞
核
B型肝炎ウイルスの生活環
逆転写
ウイルス
B型肝炎ウイルスの目くらまし作戦
完全なウイルス
100nm
小型球状粒子、桿状粒子 → 中身は空っぽ
全体の粒子の中で完全なウイルスは1%位しかない、と考えられている。
見かけ上治癒
不顕性感染
急性肝炎
感染
劇症肝炎 持続感染へ
20~30%
1~2%
70~80%
B型肝炎ウイルス感染の自然経過(1)
感染した時に免疫がある程度完成している(≒成人)場合。
成人に感染した場合の自然経過
HBs抗原
HBV DNA HBc抗体
感染
症状がでたら急性肝炎、でなければ潜伏感染
ALT
HBs抗体
潜伏期は1~6ヶ月
最終的に、HBs 抗体陽性・HBc 抗体陽性になる
急性肝炎の症状・身体所見
症状 風邪の症状:発熱、咽頭痛、頭痛など で始まることが多い。
次第に褐色尿、黄疸、食欲不振、 全身倦怠感、嘔気・嘔吐、腹痛、 少ないが関節痛や発疹などがみられる。
この時点での診断は困難
褐色尿:ウーロン茶色 → コーラ色 それにつづいて黄疸がでることがある。 (黄疸は白目のところで見ます)
肝硬変
肝細胞癌
慢性肝炎
無症候性キャリア
感染
90%
10%
感染時に免疫が不十分(≒乳幼児、小児)な場合。
HBe抗体陽性
1~5%/年
3~8%/年
0.5~1%/年
~0.3%/年
B型肝炎ウイルス感染の自然経過(2)
持続感染の自然経過
HBs抗原
HBV DNA
HBc抗体
ALT
免疫寛容期
HBe抗原陽性
非活動性キャリア期
HBe抗体陽性 肝炎期
長引くと慢性肝炎 肝硬変とすすむ。
HBe抗体陽性の非活動性キャリア期にはいっても 自然経過で肝炎が再燃することがある。
B型肝炎ウイルスに関連する血液検査
HBs抗原 検査時点でウイルスに感染している (定量すればウイルスの量を反映)
HBs抗体 ウイルスに出会ったことがある ウイルスワクチン接種後
HBc抗体 ウイルスに曝露したことがある 検査時点でウイルスに感染している
IgM-HBc抗体 急性肝炎(高力価) 慢性肝炎の急性増悪(低力価)
HBe抗原 多くの場合ウイルスの増殖力が強い
HBe抗体 多くの場合ウイルスの増殖力が弱い
HBV DNA 血中のウイルス量を反映 (少なすぎると測れない)
HBVゲノタイプ 治療方針に関係する
各種の抗原と抗体
HBs抗原 HBs抗体
HBe抗原 HBe抗体
HBc抗体 (HBc抗原)
血中では特殊処理をしないと検出できない
HBV DNA
ウイルスを「溶かして」中身にあるDNAの量を測る。
PCRという方法で量を増やして調べる。
ゲノタイプ
1979年 B型肝炎ウイルスの全塩基配列が決定(1株だけ)
1988年 18株のB型肝炎ウイルスの塩基配列が判明
現在は A~J の9つが報告されている(IはCの亜型)。
それぞれの塩基配列を比較したところ、
18株とも異なっていることが判明した。
全長の8%に相当する250個以上の塩基配列に相違があれば
異なるタイプと決めたところ、4種類に大別できた。
1966年 オーストラリア抗原の発見
HBVゲノタイプの地域差
genotype A B C
急性肝炎の割合(日本) 9.6 % 5.2 % 84.5 %
急性肝炎からの慢性化率 10 % 0 % 0 %
IFN による
HBe 抗原陰性化率
IFN α ---- 39 % 17 %
PEG-IFNα 2a 47 % 44 % 27 %
肝硬変進行率 ---- 低い 高い
発癌率 ---- Ba;若年層で高い
Bj;低い 高い
ゲノタイプで臨床像に相違がある
平成27年 B型慢性肝炎の治療ガイドライン <35才未満>
治療開始基準 治療戦略
HBV DNA 量* ALT 値**
慢 性 肝 炎
HBe 抗原陽性 ≧4 ≧31 ① インターフェロン ② 核酸アナログ製剤
HBe 抗原陰性 ≧4 ≧31 ① インターフェロン ② 核酸アナログ製剤
肝硬変 ≧2.1 核酸アナログ製剤
* Log copies/mL ** IU/L
<35才以上>
治療開始基準 治療戦略
HBV DNA 量* ALT 値**
慢 性 肝 炎
HBe 抗原陽性 ≧4 ≧31 ① 核酸アナログ製剤 ② インターフェロン
HBe 抗原陰性 ≧4 ≧31 ① 核酸アナログ製剤 ② インターフェロン
肝硬変 ≧2.1 核酸アナログ製剤
cccDNA mRNA
p22cr
p22cr
p22cr
HBV HBV HBs抗原 HBe抗原
HBs抗原
中空粒子
コア粒子
肝細胞
核
核酸アナログ製剤使用時は
血中のDNAは減少するが、
cccDNAは影響を受けない
逆転写
移植前
もらう側 あげる側
HBs抗体(+) and/or
HBc抗体(+)
HBs抗原(-) and
HBc抗体(-)
移植後
HBs抗原(+)
脳死肝移植1 3/6
生体肝移植2 15/16
肝移植後にB型肝炎が生じた!
1:Wachs ME et al, Transplantation 1996;59:230-234.
2:Uemoto S et al, Transplantation 1998;65:494-499.
これまでの人生でHBVに 出会ったことはなかったはず
讀賣新聞2011年9月19日
讀賣新聞2011年9月8日
Werle-Lapostolle B, Gastroenterology 2004;126(7):1750-1758
慢性肝炎のNatural History Group
LLOD, lower limit of detection.
HBs抗原が陰性化しても
肝内にはウイルス遺伝子が残存する
肝移植後のB型肝炎の原因は・・・
HBs抗体(+) and/or
HBc抗体(+) のドナー(あげる側)の肝臓には
実は・・・
B型肝炎ウイルスが潜んでいたのだ!
ただしよほど特殊な状況でない限り、潜んでいた ウイルスが再活性化することはない。
B肝炎ウイルスの再活性化による
肝炎は防げるのか
Lauらは全身化学療法予定のHBs抗原陽性リンパ腫30例に、
ラミブジン予防投与(化学療法前から化学療法後6週間)の
有無により2群に割付けるランダム化比較試験の結果を報告。
GKK Lau, et al. Gastroenterology 2003;125:1742-1749.
⇒ HBV再活性化の頻度は0% vs 53% と有意に
予防投与群において低かった。
キャリアではできるだけ早期にエンテカビルの内服を開始。
感染既往についてはHBV DNAの陽性化でエンテカビルの
内服を開始。 ⇒ 防げたといういくつか報告例あり
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