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NEWS LETTER 高輝度光源利用者懇談会 VUVSX Users' Organization 2015.12 No.23 ―1― 本懇談会が支援してきました東大アウトス テーションSPring-8・BL07LSUでは、第1期 のビームライン建設、第2期のエンドステー ション建設・立ち上げが計画通りほぼ終わり、 本格的な利用研究が始まっています。新しいサ イエンスを生み出すことを目指して、スタッフ もユーザーも、日夜、一丸となって奮励努力さ れていることと思います。その甲斐があって、 時間分解、発光分光、ナノESCAの三つのエン ドステーションとも、順調にアウトプットが出 ているとうかがっています。フリーポートでも、 非常に魅力的な実験装置が立ち上がっており、 これからの成果が楽しみなところです。 先日、昨年末にファーストライトが得られ た ば か り のTaiwan Photon Source(TPS)の ユーザーズミーティングに招かれて行きまし た。TPSの所長、元所長やビームラインサイエ ンティストの方々と懇談する機会を得ました。 どの人からも、それぞれの分野で世界トップの ものを作るんだというような気迫のようなもの を感じました。例えば、発光分光のエネルギー 分解能の高性能化においては、BL07LSUを始 めとして、いくつかの施設の間で熾烈な競争が なされています。TPS元所長のC. T. Chen氏 によれば、TPSではこれらを遥かに凌駕する ような分光器を必ず建設してみせるとのことで した。Advanced Light Source(ALS)のビーム ラインサイエンティストから中国のShanghai Synchrotron Radiation Facility に 移 籍 し た 友 人にも会いましたが、 ALSよ り ず っ と 高 性能の光電子分光ス テーションが間もな く立ち上がるとのこ とでした。アジアの 国々での新しい放射 光研究設備の開発は それぞれの国の強力 な支援によって進められています。一方で、東 大アウトステーションは、強力とは言え一つ の大学がステーションの運営を支えています。 様々な不足がある中でスタッフの方々が本当に よくやってくださっていることに敬意を表しま すが、世界的な装置開発競争の中で生き残り、 光る研究を発信し続けるためには、ユーザーコ ミュニティーの真剣な後押しも必要です。 ユーザーコミュニティーは新しいサイエンス の方向を醸成する場であり、それをもって良き ユーザーを送り出す母体でもあります。来年 1月に予定しておりますBL07LSUの成果報告 会でビームラインの現状をよく見極めていただ き、3月に予定しております軟 X 線放射光利用 研究のパラダイムシフトを期した第2回研究会 では、これまでとは異なる新しいビームライン 利用の方向性を活発にご議論いただけましたら 幸いです。そして、是非、新機軸のアイデアを 持ってBL07LSUの共同利用申請をしていただ くことをお願いする次第です。 ユーザーコミュニティーが結集するとき 近 藤   寛 VUV・SX高輝度光源利用者懇談会 会長、慶應義塾大学理工学部    

VUV NEWS LETTER - 東京大学 物性研究所...VUV・SX Users Organiation NEWSLETTER 2015.12 No.23―4― 図1 共鳴軟X線散乱装置 2-2) フリーポートステーション(Free-Port)

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NEWS LETTER高輝度光源利用者懇談会

VUV・SX Users' Organization 2015.12 No.23

―1――1―

 本懇談会が支援してきました東大アウトステーションSPring-8・BL07LSUでは、第1期のビームライン建設、第2期のエンドステーション建設・立ち上げが計画通りほぼ終わり、本格的な利用研究が始まっています。新しいサイエンスを生み出すことを目指して、スタッフもユーザーも、日夜、一丸となって奮励努力されていることと思います。その甲斐があって、時間分解、発光分光、ナノESCAの三つのエンドステーションとも、順調にアウトプットが出ているとうかがっています。フリーポートでも、非常に魅力的な実験装置が立ち上がっており、これからの成果が楽しみなところです。 先日、昨年末にファーストライトが得られた ば か り のTaiwan Photon Source(TPS)のユーザーズミーティングに招かれて行きました。TPSの所長、元所長やビームラインサイエンティストの方々と懇談する機会を得ました。どの人からも、それぞれの分野で世界トップのものを作るんだというような気迫のようなものを感じました。例えば、発光分光のエネルギー分解能の高性能化においては、BL07LSUを始めとして、いくつかの施設の間で熾烈な競争がなされています。TPS元所長のC. T. Chen氏によれば、TPSではこれらを遥かに凌駕するような分光器を必ず建設してみせるとのことでした。Advanced Light Source(ALS)のビームラインサイエンティストから中国のShanghai Synchrotron Radiation Facilityに 移 籍 し た 友

人にも会いましたが、 ALSよ り ず っ と 高性能の光電子分光ステーションが間もなく立ち上がるとのことでした。アジアの国々での新しい放射光研究設備の開発はそれぞれの国の強力な支援によって進められています。一方で、東大アウトステーションは、強力とは言え一つの大学がステーションの運営を支えています。様々な不足がある中でスタッフの方々が本当によくやってくださっていることに敬意を表しますが、世界的な装置開発競争の中で生き残り、光る研究を発信し続けるためには、ユーザーコミュニティーの真剣な後押しも必要です。 ユーザーコミュニティーは新しいサイエンスの方向を醸成する場であり、それをもって良きユーザーを送り出す母体でもあります。来年1月に予定しておりますBL07LSUの成果報告会でビームラインの現状をよく見極めていただき、3月に予定しております軟X線放射光利用研究のパラダイムシフトを期した第2回研究会では、これまでとは異なる新しいビームライン利用の方向性を活発にご議論いただけましたら幸いです。そして、是非、新機軸のアイデアを持ってBL07LSUの共同利用申請をしていただくことをお願いする次第です。

ユーザーコミュニティーが結集するとき近 藤   寛

(VUV・SX高輝度光源利用者懇談会会長、慶應義塾大学理工学部    )

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NEWSLETTERVUV・SX Users' Organization 2015.12 No.23

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1) アンジュレータビームライン ビームラインBL07LSUは、8台の水平/垂直偏光型8の字アンジュレータを組み合わせた高輝度軟X線アンジュレータビームラインとして

(1)光エネルギー250-2000eV、(2) 分解能10,000以上、(3)スポットサイズ10μm以下(ゾーンプレートで70nm、ミラー集光で1μmを記録)、(4) 強度 ~1012photons/秒の光学性能を有した軟X線が利用できる。本アンジュレータはクロス型であり、電磁石移相器を用いた高速偏光スイッチングができる設計となっている。 2014年~2015年ではこの高速の偏光スイッチングの実現にむけてそれに必要な、電磁石移相器の交流運転に向けた準備を着実に進めてきた。そのために図1のように空芯コイルを光源加速器ID07前後に設置し、これを元に電磁石移相器の使用に伴う電子軌道への影響を最小限に抑えるためにXBPM(X-ray Beam Position Monitor)信号を利用した軌道補正の方法を確立した。さ

らに様々な偏光スイッチングのパターン運転に対応した軌道補正テーブルを作成可能にするプログラムを開発した。現在、電磁石移相器の直流運転にてフラックスの最適化及び偏光の制御を確認した後、交流運転にて偏光スイッチングを行なう準備を進めている。

2) 実験ステーション ビームラインBL07LSUでは現在1)時間分解軟X線分光実験、2)フリーポート、3)3次元走査型光電子顕微鏡、4)超高分解能軟X線発光の4つの実験ステーションが設置・整備されて

いる。いずれのステーションも共同利用実験装置として開放しており、利用希望者は各責任者との相談の上、東京大学物性研究所共同利用係へ申請書を提出する*。

図1SPring-8BL07LSUの光源加速器 ID07 に設置した空芯コイル

東京大学放射光アウトステーション物質科学ビームライン:SPring-8 BL07LSUと実験ステーションの現状

松田  巌・原田 慈久・和達 大樹(東京大学放射光連携研究機構・東京大学物性研究所)

 東京大学では、2006年5月に総長直轄の組織として物質科学部門、生命科学部門の2部門からなる放射光連携研究機構を開設し、既存施設の高輝度放射光を利用して先端的研究の展開を目指している。物質科学部門では、SPring-8 の長直線部に世界最高水準の軟X線アンジュレータビームライン(BL07LSU)及び先端分光実験ステーションを建設し、2009年後期から共同利用を開始している。本稿ではビームライン及び各実験ステーションの最近の動向について報告する。

*東京大学物性研究所共同利用係ホームページ:http://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/joint.html

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NEWSLETTERVUV・SX Users' Organization 2015.12 No.23

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2-1) 時間分解軟X線分光実験ステーション(TR-SX spectroscopy)

担当者:山本  達、松田  巌(東京大学放射光連携研究機構・東京大学物性研究所)

 発光ダイオード、太陽電池、光触媒などの光電子デバイス材料の光機能性は光励起キャリアが直接関係している。光電子分光の時間分解測定は現象に関わる電子状態の時間変化あるいはキャリアダイナミクスをリアルタイムで追跡することができる。SPring-8 BL07LSUではレーザーと放射光を用いた時間分解光電子分光を実施することができ、ここに酸化亜鉛(ZnO)結晶の(0001)面(図1)についての研究成果を紹介する。[1] 図2はサンプルへポンプ光(hv=3.2 eV)を照射し、遅延時間1ナノ秒(1ns)における内殻光電子分光スペクトルを軟X線プローブ(hv=253 eV)で測定したものである。レーザー照射(Pumped)によりZn 3dの光電子ピークは高い結合エネルギーへシフトしており、これは表面光起電力(surface

photovoltage、SPV)の発生に対応している。図3(a)はこのSPVによるピークシフトを遅延時間に対してプロットしたものであり、このZnO試料表面ではSPVの緩和は10ナノ秒(ns)以上かかる。この緩和は表面での電子-ホール再結合過程に起因するため、バルク中の光励起キャリアは表面ポテンシャルを乗り越える必要があり、そのため緩和時間(τt)は遅延時間と共に長くなる

(Self-Deceleration Effect)。光電子分光の価電子スペクトルより直接評価したポテンシャル障壁を取り入れて表面緩和時間を計算するとτt=1.7 ピコ秒(ps)となった。この値は過去の光学反射・透過実験において間接的に得られていた緩和時間(~1ps)と一致した。ZnO(0001)では表面深さ30 nm - 100 nmの範囲に存在する欠陥が再結合サイトとして考えられており、本実験で得られた緩和時間はこの長さを電子が拡散する間に再結合過程が起こることとも定量的に合致した。

[1] R. Yukawa et al., Appl. Phys. Lett. 105, 151602 (2014).

図1ZnO(0001) 表面構造モデル

図 2 ZnO(0001)表面における Zn3d の時間分解光電子分光スペクトル(遅延時間 t=1ns)。測定はポンプ(hv=3.2eV)- プローブ(hv=253eV)法で行われた。

図 3 時間分解軟 X 線光電子分光測定で得られた ZnO(0001)における表面起電力(SPV)効果の緩和過程の様子。(a)SPV によるピークシフト(VSPV)の時間変化。(b)各時間における緩和時間(τt)の時間変化。

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図1共鳴軟 X線散乱装置

2-2) フリーポートステーション(Free-Port)

担当者:和達 大樹、平田 靖透(東京大学放射光連携研究機構・東京大学物性研究所)

 本ステーションでは全国の研究者が実験装置を持ち込んで接続し、本ビームラインが発生する高輝度軟X 線放射光を用いた実験を行っている。2014及び2015年度は下記の4つの装置による実験を行った。

(1) 共鳴軟X線散乱装置 共鳴X線散乱は、電荷秩序・磁気秩序・軌道秩序といった電子に起因する秩序状態を明らかにすることができる強力な実験手法である。特に、強相関電子系の主要な舞台である3d電子系遷移金属化合物の新規秩序を解明するには、軟X線を利用した共鳴回折が重要となる。近年では静的な秩序の観測のみならず、海外の放射光施設を中心に、光源となる放射光や自由電子レーザーのパルス性を利用したポンププローブ法による時間分解測定によって秩序の動的な振る舞

いを明らかにする研究が行われ始めている。 東大物性研・和達研究室ではフリーポートにおいて軟X線回折実験装置(図1)の開発を行ってきた。放射光X線やさらにはX線自由電子レーザーSACLAにおけるポンププローブ型の時間分解型測定のために、時間分解軟X線分光実験ステーションからポンプ用のレーザーを導入した。散乱X線の検出器としては、時間分解型測定に対応するように、マイクロチャンネルプレート

(MCP)やアバランシェフォトダイオード(APD)の導入を行っている。 2014年度後半よりフリーポートに接続しての測定を行っており、鉄酸化物La0.33Sr0.67FeO3薄膜などの磁気秩序ピークの静的な測定にはすでに成功している。2015年度よりさらに本格的に、時間分解型測定のセットアップ構築に向けて装置改良を日々行っている。

(2) X線共鳴磁気光学カー効果測定装置 磁気光学カー効果(MOKE)とは、磁性体に直線偏光した光を入射すると反射光は楕円偏光となり、その主軸の向きが入射光の偏光方向から回転する現象である。偏光方向の回転角であるカー回転角は磁性体の磁気モーメントの大きさに比例するため、MOKE 測定は物質の磁性情報を抽出する手法の一つである。さらに、入射する光を磁性元素の吸収端に合わせることで、元素選択的測定が可能であるとともに、従来の可視光レーザーを用いた測定よりも巨大なカー回転角を観測できることが知られている[1]。 東大物性研・松田巌研究室と和達研究室では2013年度より、フリーポートにおいてX線共鳴磁気光学カー効果測定装置(図2)を接続しての実験を行ってきた。これは、超伝導コイル付超高真空チャンバーと低温用試料マニピュレータを組み合わせた測定装置である。 これまでの測定で、様々な偏光軟X線を鉄ナ

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図2X 線共鳴磁気光学カー効果測定装置 図3雰囲気光電子分光 (AP-XPS) 装置

ノ薄膜に照射して共鳴MOKE を測定した。s偏光入射時の鉄ナノ薄膜のL 殻吸収端におけるカー回転角スペクトルが得られ、鉄の光学定数から現象論に基づくカー回転角スペクトルの計算で再現することができた。 本研究はBL07LSUのアンジュレータの偏光制御機能を活かすものであり、同時にX線自由電子レーザーにおける超高速スピンダイナミクス研究のための要素技術開発としても不可欠であると考えている。

[1] Sh. Yamamoto et al., Phys. Rev. B 89, 064423 (2014).

(3) 雰囲気光電子分光装置 東大物性研・吉信研究室と松田巌研究室は、JST ACT-C(先導的物質変換領域)プロジェクトにより雰囲気光電子分光(AP-XPS) 装置を設計・構築した。本装置は、フリーポートステーションで得られる高輝度軟X線と差動排気型電子分析器及び小体積ガスセルを組み合わせ約20mbar

という世界最高レベルのガス雰囲気下でのXPS測定が可能である。装置の立ち上げは順調に完了し、2014B期より放射光を使ったAP-XPS実験を開始している。現在はCO2からメタノールに室温で還元可能な新規触媒の創出を目指し、その指針となる反応メカニズムを解明するため触媒表面と反応過程のオペランド観測を行っている。これまでにCu(997)ステップ表面でのCO2の反応キネティックスの測定に成功し、既にTopics in Catalysis誌に投稿した[1]。2015A期では、Cu

(111)、Cu(997)、Zn/Cu(111)、Zn/Cu(997)という4種類の表面において系統的にCO2の活性化・水素化に関してAP-XPS実験を行った。その結果、CO2の活性化について明確な差が観測された。現在投稿論文を準備中である。

[1] T. Koitaya, et al., "Real-time observation of reaction processes of CO2 on Cu(997) by ambient-pressure X-ray photoelectron spectroscopy", Topics in Catalysis, submitted

(2015).

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(4)  回転楕円面メッシュ二次元表示型光電子分光装置

 奈良先端大・大門研究室は、広い取り込み角度の「回転楕円面メッシュ二次元表示型光電子分光装置(DELMA)」[1-3]の開発を進めてきた

(図4)。この分析器は、広い範囲の放出角度分布が一度に測定できるのみならず、試料表面の拡大像も得ることができるという光電子顕微鏡PEEM機能が付いており、拡大像の中の微小領域だけを選択して二次元光電子分光を行うことが可能になっている。従来のPEEMでは、数百eV以上になると±10°程度しか測定できないのに対して、DELMAではエネルギーに依存しないで±50°程度の広い立体角が一度に測定でき、これまで不可能であった微小領域からの光電子回折・ホログラフィーの研究が可能になった。さらに、この装置には高エネルギー分解能の分析器R4000

(VG-SIENTA)が付いているため、これまでの光電子回折装置の弱点であったエネルギー分解能の低さが解消されており、内殻シフトを分別

した光電子回折の測定や、価電子帯の詳しい研究が可能になった。装置の立ち上げはほぼ完了しているが、現在、高圧電源の安定化や新しい装置架台の導入および冷却機構装備のための更なる改良を行っている。これにより研究の幅が劇的に広がり、たとえば金属・絶縁体転移を示す強相関電子系物質の温度による電子状態変化及びそれに伴う構造変化の測定なども可能となる。2014A期より放射光を使った本格的なXPD実験を開始しているが、これまでに鉄系超伝導体BaFe2As2のフェルミ面測定、NiOのバンド構造の測定、Fe3O4の原子サイト分離XPDの測定に成功し、現在解析中である。

[1] L. Tóth, H. Matsuda, H. Daimon, et al., J. Vac. Soc. Jpn. 51, 135 (2008).

[2] K. Goto, et al., e-J. Surf. Sci. Nanotech. 9, 311-314 (2011).

[3] L. Toth, et al., Nucl. Inst. Meth. Phys. Research Sec. A 661, (1) 98-105 (2012).

2-3) 3次元ナノESCAステーション(3D-nanoESCA)

担当者:尾 嶋 正 治(東京大学放射光連携研究機構)

 3次元ナノESCAステーションは、ナノメートルスケールの空間分解能で、物質の電子・化学状態分布を3次元的に可視化するための実験ステーションである。現在、面内空間分解能は最

高で70 nmを達成し、任意の局所位置で原子層オーダーの深さ分解光電子測定が可能である。 2014年度は、半導体パラメータアナライザ

(SPA)を用いたオペランドナノ解析への応用展

図4DELMAの構成図

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開が図られた。図2は有機FET(チャンネル層はC10-DNBDT 3分子層)のオペランド局所電子状態解析への展開例である。バックゲートへの負バイアス印加によるチャンネル領域C 1s光電子ピークのシフトを解析したところ、有機FET中C 1sピークの結合エネルギーはFETドレイン電流とよく相関していることが分かった[1]。さらに、ドレインバイアスにおけるチャンネル領域の電位分布をC 1sピークから求めたところ、ドレイン電流―ドレイン電圧(Id-Vd)特性の優れたFETではGradual Channel Approximation(GCA)近似でよく説明されるが、Id-Vd特性が悪くAu電極と有機超薄膜界面でオーミックが取れていないFETではソース ‐ 有機超薄膜界面で大きな電位降下が起きていることを見出した。 また光触媒への応用として、p型(水素発生)とn型(酸素発生)を分けた新型水分解触媒LTC

(La5Ti2CuS5O7)ナノ粒子の局所電子状態解析を行った。TiサイトへのSc添加効果、粒子サイズ

(1000nm-350nm)効果を解明するとともに、さらに20mW緑色照射ON/OFFによるオペランドナノ光電子分光を試み、バンドギャップ中のフェルミ準位を決定することができた[2]。

[1] N. Nagamura et al., Appl. Phys. Lett. 106, 251604 (2015).

[2] J-Y. Liu et al., Ener. Env. Sci. 7, 2239 (2014).

2-4) 超高分解能軟X線発光分光ステーション(HORNET)

担当者:宮脇 淳、原田 慈久(東京大学放射光連携研究機構・東京大学物性研究所)

 本実験ステーションは400 eV~750 eVでE/ΔE > 8000の世界最高エネルギー分解能で軟X線発光分光が行えるのみならず、種々の試料セルを用いて超高真空と大気圧下の両方で分光が行えるという特長を有している。2014年度は大気圧下の軟X線発光分光装置の開発を進め、6段の差動排気によって10桁の差動排気を実現するシステムをビームラインに導入し、大気圧まで

の差動排気を実現した。差動排気のための長焦点型後置集光鏡の条件を検討し、新たな後置鏡の仕様を確定した。 2014年度は一般課題として発光ステーションで7件を受け入れた。そのうち3件が海外のユーザーグループであった。アナターゼ型TiO2で酸素欠損に由来する100 meVを切る振動モードを共鳴軟X線発光で初めて観測(図1)し、これが

図2有機 FET のゲート電圧下における光電子分光スペクトルマッピング。炭素の内殻準位がゲート電圧で変化する様子を捉えている。

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図1 アナターゼで観測した軟X線励起振動スペクトル。(a)酸素分圧で酸素欠陥を減らした場合(青)と真空下(赤)の比較、(b)弾性散乱を差し引いて抽出した多重振動スペクトルとフランクコンドンモデルによる軟X線非弾性散乱の第一原理計算の比較により、アナターゼが異方的かつ中間的な電子格子相互作用を持つ系であることが示された。[1] 図2 軟X線発光分光装置に組み込んだ磁場印加システ

ム。永久磁石対により最大0.24Tの磁場を印加する。試料に対し45°刻みで印加角度を変えることができる。

誘電遮蔽効果により異方的なエネルギー分散を持つことを示した[1]。また光合成タンパクの酸素発生中心として有名なMnクラスターの分析に向けて、X線により光還元されない真のMn3+, Mn4+状態を抽出することに初めて成功した[2]。このほか、Co-Fe系Fischer-Tropsch触媒の分析、Liイオン電池電極の電池特性と遷移金属の価数挙動の研究[3]、新たに導入した磁場印加機構

(図2)を用いた巨大磁歪を示すTb0.3Dy0.7Fe2や半金属であるCrO2の磁場中RIXS測定など、いずれもアウトステーションならではの特性(高分解能、in situ/オペランド)を活かした実験が行われた。 S型課題の応用研究では、真空隔離膜を用いた実験として、京大と共同で、4級アンモニウ

ム塩(TXA+OH-)溶液の水和挙動とチタニアナノシートの再積層現象に対する影響を調べる研究、NEDOプロジェクトの一環で、鉄/コバルトフタロシアニンを正極触媒に用いたMEAの酸素吸着に伴うFeの電子状態変化の精密解析を行った。

[1] S. Moser et al., Phys. Rev. Lett. 115, 096404 (2015).

[2] M. M. van Schooneveld et al. , J. Electron Spectrosc. Relat. Phenom. 198, 31(2014).

[3] D. Asakura et al., Electrochem. Commun. 50, 93(2014).

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スピン分解光電子分光装置の現状

矢治光一郎、小森 文夫(東京大学物性研究所 SOR 施設)

 これまで軌道放射物性研究(SOR)施設では、高エネルギー加速器研究機構・フォトンファクトリー(PF)のアンジュレータービームラインBL19Aにおいて、スピン分解光電子分光

(SARPES)装置を用いてスピン物性研究を行ってまいりました。2013年度末につくば分室は閉鎖され、それに伴いBL19AにおけるSARPES装置を用いた共同利用も終了いたしました。しかしながら、SOR施設の伝統ともいえるSARPES研究が終了したわけではありません。現在SOR施設では、柏キャンパスの物性研究所極限コヒーレント光科学研究センターにおいて、これまでの装置を遥かに凌駕するSARPES装置の開発し、世界最先端の装置を用いた物性研究を開始しております。 新SARPES装置開発プロジェクトは2013年度よりスタートしました。2013年度には装置の設計・発注を行いました。そして、2014年度5月に新装置が納品され、それから立ち上げ作業を行い、2014年11月末にファーストデータを取得することに成功しました。その後、綿密な調整を経て、2015年度から本格的な物性研究が開始されました。 図1に装置の概略図を示しています。一般的に、SARPESは、その測定効率が、通常の角度分解光電子分光(ARPES)と比較して極端に悪いと言われております。新SARPES装置では、この弱点を克服するために、従来光源として使用していた放射光や希ガス放電管をレーザー光(7 eV)に変更して、光源の強度を大幅に増強しています。これにより、これまで犠牲にしていたエネルギー分解能を犠牲にすることなく超高分解能でのスピン分解光電子スペクトルが取得できるようになります。また、本装置はVLEED型スピン検出器を二台装備しているので三次元的なスピン解析が可能で、固体の電子バンドのス

ピン構造を高精度で可視化できます。本装置は、通常のARPESも可能な設計になっており、レーザーと組み合わせることにより、高分解能なバンド構造を短時間で取得できます。さらに本装置には、解析槽と超高真空的に接続された表面・界面試料作成槽が設置されているので、表面試料をその場で作成・評価し、そのままSARPES測定を行うことができます。 図2に、ARPESモード及びSARPESモードで測定された金厚膜のフェルミエッジを示しています。試料温度は9Kに設定しています。このスペクトルについて、フェルミ分布関数を用いたフィッティングを行うことにより、装置の分解能を評価することができます。その結果、本装置の現段階での最高分解能は、ARPESモードで600μeV、SARPESモードで1.7meVと見積もられました。ARPESモード、SARPESモード共に非常に高い性能を持っているといえます。 新SARPES装置を用いた研究は、物性研のレーザーグループとも協力体制がとられています。現在は7eVレーザーのみが使用可能ですが、異なるエネルギーのレーザーも選択できるようにする予定です。さらに、レーザーのパルス特性を利用した、ポンプ−プローブSARPESも行い、

図1物性研で開発されたSARPES装置

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NEWSLETTERVUV・SX Users' Organization 2015.12 No.23

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伝導帯のスピンに依存したバンド構造、その緩和過程の観測も行う計画です。今後は、段階的に外部ユーザーの方々にもマシンタイムを設けていくことにしており、皆様と協力してスピン物性研究を推進していければと考えております。 エネルギー領域が約100 eVまでのSARPESを行います。これにより、低エネルギーのレーザー光では測定ができなかったブリュアンゾーン全体をカバーすることができます。さらに、レーザーのパルス特性を利用した、ポンプ−プローブSARPESも行い、伝導帯のスピンに依存したバンド構造、その緩和過程の観測も行う計画です。 本装置は、2014年度5月に納品され、現在、旧つくば分室メンバーを中心として鋭意開発が進められております。もちろん、固体表面試料がその場で作成・評価できるといったBL-18A,

19Aのメリットだった部分はそのまま引き継がれています。PFでのつくば分室の活動は終了しましたが、今後は柏キャンパスにおいて格段に性能アップしたSARPES装置を用いた物性研究を展開していきます。2014年度内の完成を目指しており、その後は本装置を用いた共同利用研究が開始されます。皆様には、これまでと同様、ご支援の程よろしくお願い申しあげます。

東京大学放射光連携研究機構 10周年記念講演会 報告報告

松 田   巌東京大学放射光連携研究機構・東京大学物性研究所

 東京大学放射光連携研究機構は総長直轄の組織として平成18年に開設され、これまで高輝度放射光を利用した先端的研究を国内外の研究者と共に実施し、多くの研究成果をあげてきました。また高輝度放射光施設SPring-8に東京大学アウトステーションとして2009年に軟X線ビームラインBL07LSUを建設し、多くの共同研究・共同利用を実施してきました。本年度で本機構が開設されてから丸10年を迎えるため、今後の研究の更なる発展を期して、機構開設10周年を記念する講演会が2015年11月13日(金)に東京大学本郷キャンパス内小柴ホールにて開催されました。本機構及び関係機関から123名(学内 78名・学外 45名)ものご参加をいただき、本講演会は

大変盛況なものとなりました。本稿ではこの10周年記念講演会の内容について報告させていただきます。 本記念講演会のプログラムは記念式典と講演から構成されました。前半に実施された記念式典では最初に雨宮慶幸機構長(東京大学放射光連携研究機構)、瀧川仁所長(東京大学物性研究所)、秋山徹所長(東京大学分子細胞生物学研究所)にご挨拶をいただきました。ご来賓の保立和夫理事・副学長(東京大学)よりお祝いのお言葉と共に、ありがたくも「東京大学が今後も引き続いて東京大学アウトステーション及び放射光分野に大きな支援を行っていきたい」、という心強いお言葉もいただくことができました。さらにご来賓の

図2(a)ARPES モード,及び(b)SARPES モードで測定された金のフェルミエッジ。

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土肥義治理事長(公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI))からも東京大学アウトステーションへの更なる発展を期待したご挨拶を頂戴することができました。そして本記念式典の終わりにご来賓、講師、そして本機構の代表者に壇上にお集まりいただき、図1のように記念写真として収めさせていただきました。 本記念講演会のプログラムの後半の講演セッションでは、まず放射光分野において著しく活躍されている3名の先生方の記念講演がございました。Anders Nilsson教授(SLAC, Stanford University, Stockholm University)からは

「Fundamental X-ray studies of chemical energy transformations at interfaces; in-situ to ultrafast」というご題目で触媒表面における放射光及びX線自由電子レーザーのオペランド分光研究についてご講演いただきました。 樋口芳樹教授(兵庫県立大学)のご講演は「水素酸化還元酵素・[NiFe]-ヒドロゲナーゼの総合的構造化学を目指して(Aiming towards Comprehensive Structural Chemistry of [NiFe]-hydrogenase)」という題目で行われ、放射光を利用した酵素研究について、実験上の困難とそれを克服した経緯を踏まえながらご解説いただきました。石川哲也放射光科学総合研究センター長(理化学研究所)には「SPring-8,

SACLA,そして……(SPring-8,SACLA, and beyond)」という題目で、これまでの我が国の放射光の歴史と今後の展望についてご講演いただきました。そしてこれらの記念講演に続いて辛埴部門長(東京大学放射光連携研究機構物質科学部門) と豊島近部門長(東京大学放射光連携研究機構生命科学部門) から各部門の活動報告と今後の展開についてのご講演がございました。 本記念講演会の締めとして尾嶋正治前機構長

(東京大学放射光連携研究機構)より閉会のご挨拶があり、東京大学放射光連携研究機構の研究活動が東京大学及び学外の学問及び産業の発展に不可欠であることが語られました。そして最後に図2のように参加者全員を集合写真として収めました。閉会後18時より山上会館にて催された懇親会では、参加者は、主催者及び講演者と共に、それぞれの研究展開と放射光分野の将来を熱く議論されておりました。 今回の記念講演会では僭越ながら進行を務めさせていただきました。本会を通じて東京大学と放射光コミュニティの心強いご支援を改めて感じ、皆様の高いご期待に応えられるよう東京大学放射光連携研究機構の一員として気持ちを引き締めさせていただきました。

図1 記念式典での記念写真前方に座られている先生方は左よりAndersNilsson 教授、樋口芳樹教授、石川哲也放射光科学総合研究センター長、土肥義治 JASRI 理事長、保立和夫理事・副学長、古谷研理事・副学長、瀧川仁物性研究所所長、秋山徹分子細胞生物学研究所所長です。ご起立いただいている先生は左より辛埴部門長、雨宮慶幸機構長、尾嶋正治前機構長、豊島近部門長です。

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ISSPワークショップ「SPring-8 BL07LSUの現状と新たな光源に向けた取り組み」報告

和 達 大 樹(東京大学放射光連携研究機構・東京大学物性研究所)

 2015年3月5日に東京大学物性研究所大講義室にて、ISSPワークショップ「SPring-8 BL07LSUの現状と新たな光源に向けた取り組み」が、東京大学放射光連携研究機構とVUV・SX高輝度光源利用者懇談会の共催で開催されました。本ワークショップでは、時間分解光電子分光、3次元ナノ光電子分光、軟X線発光分光の3つのエンドステーションとフリーポートを利用した共同利用実験からの最新の研究報告に加え、「新たな光源に向けた取り組み」を視野に入れた研究会を行いました。この背景には、放射光光源以外にもSACLAなどのX線自由電子レーザー(XFEL)や実験室のレーザーの高次高調波(HHG)など多くの新光源を用いての物性研究が急速に進んでいることがあります。最近SPring-8 BL07LSUとこれらの新光源の相乗効果により、時間分解型のX線分光などの新しい測定法、ひいては物性物理学の新局面が生まれつつあります。本ワークショップでは、SPring-8のBL07LSUとXFEL

など新光源の相乗効果により生まれつつある物性物理学の新しい方向性を明確に打ち出せることを目指しました。今年は例年より多い80名の参加者により一日にわたり活発な討論がされ、SPring-8 BL07LSUさらには新たな光源を用いた物性研究に多くの注目が集まっていることが顕著に表れていました。今後、新物質や新規デバイスなどの合成・開発研究とより密接に連携しながら、BL07LSUなどの放射光やXFELなどの新光源を駆使することにより、物質科学の新分野開拓につなげてゆくことの必要性を強く感じさせるワークショップでした。また、本ワークショップではポスターセッションも開催し、優秀な学生発表者2名にポスター賞を授与するなど、最先端の研究活動を通じて、次世代の人材育成にも大きく貢献しています。軟X線放射光コミュニティの皆様のご参加・ご支援に深く感謝いたします。

図2 東京大学放射光連携研究機構 10周年記念講演会の集合写真

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[プログラム]

10:00~10:05 開会挨拶 慶応大(VSX懇談会会長) 近藤  寛10:05~10:10 来賓挨拶 JASRI理事長 土肥 義治

 session1  座長:和達大樹(東大物性研)

10:10~10:20 東大アウトステーションビームラインについて 東大新領域(東京大学放射光連携研究機構機構長) 雨宮 慶幸10:20~10:45 「SPring-8BL07LSUにおける偏光制御型アンジュレータ光源開発と先端実験」 東大物性研 松田  巌10:45~11:25 特別講演1 「ビスマス・鉛ペロブスカイトの系統的な電荷分布変化」 東工大 東  正樹11:25~11:50 ポスターショートプレゼンテーション11:50~13:00 昼食

 session2  座長:藤森 淳(東大院理)

13:00~14:00 ポスターセッション(投票)14:00~14:30 「3DナノESCAによる局所電子状態解析:オペランドナノ解析をめざして」 東大 尾嶋 正治14:30~15:00 「外場印加とオペランド分光:飛躍する軟X線発光分光」 東大物性研 原田 慈久15:00~15:30 「X線の偏光を活用した磁性研究」 東大物性研 和達大樹15:30~16:10 特別講演2 「SPring-8アップグレード計画-高コヒーレンスリング型光源への 現実的なアプローチ-」 高輝度光科学研究センター 渡部 貴宏16:10~16:30 休憩

 session3  座長:木下豊彦(JASRI)

16:30~16:50 「時間分解軟X線光電子分光法による表面キャリアダイナミクス研究の現状と 今後の展望」 東大物性研 山本  達16:50~17:10 「3Dnano-ESCAを用いた二次元電子系デバイスのオペランド顕微分光」 東北大 吹留 博一17:10~17:30 「電気化学オペランド軟X線発光分光による蓄電池電極の電子状態解析」 産総研 朝倉 大輔17:30~17:50 「顕微光電子回折分光装置の現状と今後の方向性」 奈良先端大 大門  寛17:50~18:10 「SPring-8 BL07LSUにおける雰囲気光電子分光システムの構築」 東大物性研 吉信  淳18:10~18:15 閉会挨拶 東大物性研 辛   埴18:30~20:00 懇親会 世話人: 和達大樹(物性研究所)、辛埴(物性研究所)、小森文夫(物性研究所)、     松田 巌(物性研究所)、原田慈久(物性研究所)

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VUV・SX高輝度光源利用者懇談総会(2015年1月)報告VUV・SX高輝度光源利用者懇談会事務局

平成25年度VUV・SX高輝度光源利用者懇談会 総会議事録

1.日時:平成27年1月10日(土)13:15~14:152. 立命館大学びわこ・くさつキャンパス ロー

ム記念館(5F大会議室)3. 出席者:39名(委任状は38通で総会は成立(会

員446名))4.報告・議事

1)議長に木下豊彦氏(JASRI)を選出した。2) 近藤会長(慶應大学)より、平成26年度の

活動報告(平成25年度総会以降)が行われた。

  ・会員動向   会員:441名 → 446名    賛助会委員:13社 → 10社

・ISSPワークショップ 開催(平成26年2月19日(水))

     「SPring-8 BL07LSUの現状と第II期への展望」

・次期光源・ビームラインアンケート実施 (平成26年2月8日(金))

・平成26年度第一回幹事会の開催(平成26年6年4日(水))

・物性研短期研究会開催 (平成26年9月20日(土)、21日(日))

     「真空紫外・軟X線放射光物性研究のパラダイムシフトに向けて」

・NewsLetter22発行(平成26年11月)・ISSPワークショップ開催予定 (平成27年

3月5日(木))     「SPring-8 BL07LSUの現状と新たな

光源に向けた取り組み」3) 雨 宮 健 太 編 集 委 員 長(KEK)よ り、

NewsLetter22の発行(平成26年11月)について報告が行われた。

4) 奥田太一会計委員長(広島大学)より、平

成26年度の会計報告(中間報告)が行われた。

5) 雨宮慶幸東京大学放射光連携研究機構長(東京大学)より、機構とアウトステーションに関して現状報告が行われた。

  ・機構の構造・人事  ・今後のビームライン運営維持費

6) 松田巖物性研究所播磨分室准教授より、アンジュレータビームラインの現状報告が行われた。・アンジュレータの調整状況、円偏光モー

ドの調整完了・高速偏光切替に向けた調整状況、研究展

望7) 原田慈久物性研究所播磨分室准教授よ

り、SPring-8共同利用状況が報告された。・共同利用実験課題採択状況・各実験ステーションでの研究成果、論文

発表状況・ISSPワークショップ開催予定(平成27年

3月5日(木))8) 辛埴物性研究所軌道放射物性研究施設長

より物性研軌道放射光施設について報告が行われた。・VUV・SX高輝度光源利用者懇談会の発

足・発展の経緯、展望・物性研軌道放射光施設の次期光源への支

持・つくば分室の閉鎖(平成26年3月)、物性

研のスピン偏極光電子分光装置の一般の共同用研究への供出

9) 原田慈久物性研究所播磨分室准教授より、次期光源・ビームラインアンケートの報告が行われた。・回答数38件(紙面:26、メール:12)

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・質問内容、回答結果10) 近藤会長(慶應大学)より、平成26年開催

研究会に関して報告が行われた。・物性研短期研究会 (平成26年9月20日(土)、21日(日))の開催趣旨、発表・議論の内容

11) 全体討論において、松田巖物性研究所播磨分室准教授の議事提起により議論が行われた。

・SOR Activity Report へ の 査 読 付 き Technical Report of ISSP-SORの導入

・VUV・SX高輝度光源利用者懇談会への査読依頼が提起され、賛成多数で承認された。

(議事録:事務局)

平成26年度 会計報告平成26年度会計委員長 奥 田 太 一(広島大学放射光科学研究センター)平成26年度会計監査  小 森 文 夫(東京大学物性研究所)

収入金額 備  考 支出金額 備  考前年度より繰り越し 877,960 通 信 費 64,640 郵便・メール便・フォーム料金

会 費 300,000 賛助会費(1口30,000円)下記参照 印刷出版費 285,120 ニュースレター 22 印刷代

雑 収 入 8,141 銀行利息、ネスプレッソ代 会 議 費 448,130 研究会費用等

会 議 費 224,000 短期研究会懇親会費(41 名分、29 名) 旅 費 34,458 幹事・事務局旅費

7,000 短期研究会お弁当代 雑 費 16,188 放射光学会誌講読料・振り込み手数料

合 計 1,417,101 合 計 848,536

差引残高 568,565賛助会費 一口: アステック株式会社、株式会社アイリン真空、 オミクロンナノテクノロジージャパン株式会社、北野精機株式会社、

ツジ電子株式会社、株式会社トヤマ、VGシエンタ株式会社、株式会社ユニソク、ラドデバイス株式会社、ロックゲート株式会社

(2015年3月31日)

VUV・SX高輝度光源利用者懇談会 賛助会員

(2015年11月現在・50音順)

株式会社 アイリン真空

住  所: 〒452-0961 愛知県清須市春日東出81連 絡 先: Tel:052-401-2061 Fax:052-401-6960 E-mail:[email protected] R L : http://www.ailin-va.com/営業内容: 各種真空機器メーカー コンポーネント商品の販売窓口(エドワーズ、アジレント(旧バリアン)、

エリコンライボルト、VAT、VACGEN LTD(旧VGシエンタ)、キャノンアネルバ他)、真空チェンバー他製作関連の窓口業務。

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アステック株式会社 科学計測事業部

住  所:(本社)〒169-0075 東京都新宿区高田馬場4-39-7 ユニゾ高田馬場四丁目ビル (大阪営業所)〒531-0074 大阪市北区本庄東1-1-10 ライズ88 2F連 絡 先: (本社)Tel:03-3366-0818 Fax:03-3366-3710 (大阪営業所)Tel: 06-6375-5852 Fax: 06-6375-5845 E-mail:[email protected] R L : http://www.astechcorp.co.jp営業内容: 固体表面の組成や反応などを分析測定する表面分析装置類やプロセスの管理、制御を行う機器を

扱っています。これら海外の先端技術を利用した計測機器、分析装置の輸入販売と同時に技術サービスを行っております。

オミクロン ナノテクノロジー ジャパン株式会社

住  所: 〒140-0002 東京都品川区東品川3-32-42 ISビル連 絡 先: Tel:03-6732-8964 Fax:03-6732-8938 E-mail: [email protected] R L : http://www.omicron.jp営業内容: 「表面・ナノ評価技術を通して科学の進歩と産業の発展に貢献する」という理念に基づき、特にナ

ノテクノロジーの分野で皆様のご要望にお応えするための装置開発、高い技術力と迅速な技術サービスを提供いたします。

北野精機株式会社

住  所: 〒143-0024 東京都大田区中央7-17-3連 絡 先: Tel:03-3773-3956 Fax:03-3778-0379 E-mail:[email protected] R L : http://www.kitano-seiki.co.jp営業内容: 弊社は、研究開発装置分野の成膜装置、分析装置を中心とした製品を幅広く取り揃え、保守・メ

ンテナンス・移設等の技術サービスをご提供し、研究者のお悩み・ニーズにお応えします。真空機器・部品をはじめとした総合情報サイト“真空機器・部品.com”もご活用下さい。

ツジ電子株式会社

住  所: 〒300-0013 茨城県土浦市神立町3739連 絡 先: Tel:029-832-3031 Fax:029-832-2662 E-mail:[email protected] R L : http://www.tsujicon.jp営業内容: ステッピングモータのコントローラを始め、エレクトロニクスを駆使して、より良い実験環境構

築のお手伝いをさせていただいております。過去の図面はすべて保存されており、メンテナンスも迅速に対応いたします。

株式会社 トヤマ

住  所: 〒228-0003 神奈川県座間市ひばりが丘4-13-16連 絡 先: Tel:046-253-1411 Fax:046-253-1412 E-mail:[email protected] R L : http://www.toyama-jp.com営業内容: 創業以来53年余を研究者の為の研究開発用装置の設計製作に尽力。研究者のアイデアを次々と確

かなカタチに創り上げて参りました。昨今では、売上の半分が加速器・放射光分野となっています。

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VGシエンタ株式会社

住  所: 〒113-0033 東京都文京区本郷2-19-7 ブルービルディング4階連 絡 先: Tel:03-5842-5885 Fax:03-5842-5850 E-mail:[email protected] R L : http://www.vgscienta.jp/営業内容: VGシエンタ(株)は、VG Scienta AB (Uppsala)の子会社として、光電子アナライザーの販売・

サービスだけでなく装置のカストマイズも行っております。Applicationの範囲は、ARPES、HAXPES、APPES(30mb)、TOF、ARPES/Spinへと拡充しております

株式会社 ユニソク

住  所: 〒573-0131 大阪府枚方市春日野2丁目4番3号連 絡 先: Tel:072-858-6456 Fax:072-859-5655 E-mail:[email protected] R L : http://www.unisoku.co.jp営業内容: 当社は創業以来一貫して高速分光測定装置や走査型プローブ顕微鏡等、先端的な測定機器の開発、

製品化、販売を行ってきました。その技術は大学、研究機関及び民間企業の研究者様から高い評価を得ております。

ラドデバイス株式会社

住  所: 〒192-0046 八王子市明神町2-26-4 アーバンプラザIZUMI 7F連 絡 先: Tel:042-642-0889 Fax: 042-642-0896 E-mail: [email protected] R L : http://www.rad-dvc.co.jp営業内容: 光学デバイスを軸に、研究・開発フィールドのニーズにマッチするユニーク且つ優れた海外製品

をお届けする輸入商社です。 製品に加え、校正・測定、カスタマイズ等のサービスを提供いたします。

ロックゲート株式会社

住  所: 〒116-0013 東京都荒川区西日暮里1-61-23連 絡 先: Tel:03-5805-8411 Fax: 03-5805-8431 E-mail: [email protected] R L : http://www.rockgateco.com営業内容: 低温・磁場関係の技術がベースになっている会社で、以下の製品の取り扱いがある。ヘリウムフ

ロー式クライオスタット、冷凍機、無冷媒希釈冷凍機、AC抵抗ブリッジ、引抜き式磁化測定装置、低温/磁場用ピエゾポジショナー・ローテーター、STM・CFM・AFM・SNOM、ラマンイメージングシステム、微小磁場測定装置、など。

 賛助会員として、上記の企業各社にご協力いただいております。ここにお礼を申し上げますと共に、名簿を掲載させていただきます。

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東京大学放射光連携研究機構アウトステーション・実験課題公募要領 SPring-8 ビームラインBL07LSUに設置された(1)時間分解軟X線分光、(2)フリーポート、(3)3次元走査型光電子顕微鏡、(4)超高分解能軟X線発光における実験課題を広く公募しています。研究課題の公募は、年二回6月(後期分)と12月(次年度前期分)に東京大学物性研究所共同利用係を通して行います。 応募された共同利用実験課題は、実験課題審査委員会による審査を経て、その採否及びビームタイム配分を決定し通知いたします。尚、研究課題を申請する際には必ず事前に実験設備担当者とご相談願います。 詳しくは、以下をご覧ください。

http://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/jointinfo/offering10.html

 なお、公募時期には案内を放射光学会誌に掲載するとともに、VSX利用者懇談会会員にはメールにてお知らせいたします。

 

高エネルギー加速器研究機構雨宮健太(編集委員長)

~お願い~

 所属の変更された方は、住所・Tel番号・Fax番号・E-MailアドレスをVUV・SX高輝度光源利用者懇談会事務局までお知らせください。

発行VUV・SX高輝度光源利用者懇談会

ニュースレター編集委員会〒 277-8581 千葉県柏市柏の葉 5-1-5

東京大学物性研究所附属極限コヒーレント光科学研究センター軌道放射物性研究施設内

VUV・SX高輝度光源利用者懇談会事務局TEL:04-7136-3406FAX:04-7136-3283

(FAX番号変わりました。)E − mail : [email protected]

http://www.issp.u-tokyo.ac.jp/labs/sor/vsx/community/

編 集後 記