19
Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 Author(s) 小山, 順子 Citation 京都大学國文學論叢 (2001), 6: 65-82 Issue Date 2001-06-30 URL https://doi.org/10.14989/137295 Right Type Departmental Bulletin Paper Textversion publisher Kyoto University

Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

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Page 1: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論

Author(s) 小山, 順子

Citation 京都大学國文學論叢 (2001), 6: 65-82

Issue Date 2001-06-30

URL https://doi.org/10.14989/137295

Right

Type Departmental Bulletin Paper

Textversion publisher

Kyoto University

Page 2: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

「風

i

和歌における

「おと」「こゑ」試論ー

「こゑ

「お

の意

の違

いは

はお

「こゑ

の発

「お

を含

まな

い広

い意

の音

て考

えら

いる。

「こ

いら

り、

一つの主

じ音

「おと

「こ

いら

い。

し、

『万葉

の時

「おと

「こ

「お

とー

「こゑ

t

」の使

い分

いた。それ

入り

「こ

ゑ」

で表

の範

囲が

いく

のであ

とも

「お

表さ

いた

のが、

「こゑ

こと

る。

のよう

たど

のか

て、

の表

はど

のよ

て歌

語と

て定着

ゆく

のであ

ろう

か。

『万葉

から

「声

の文

生物

に用

いら

いる

る。

の中

〈風

の音

「声

の文

いる歌

る。

』小四

レ有

レ今

之随

(巻

刈OO)

可歴

深香

(巻

δお

)

二首

「声

の文

「おと

いう

とな

って

いる。

理由

て、

}つは、

一字

一音

の例

「可

母賀

西

(巻

四ωホ

ω)、

「和

屋度

可蘇

(巻

九誌

り一)

と、

は全

「お

と」

て表

こと

る。

65

Page 3: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

のよ

『万

ては

の立

る音

(鳴

)

「こゑ

」、

の立

る音

「お

の語

を用

る原

から

であ

る。

、表

って言

謬O

一〇お

には

「声

の文字

が使

いる

なぜ

「声

いら

かと

いう

を考

ると

の表記

の基

「風

の詩

こと

でき

る。

「風

て無

の例

見出

でき

一般的

であ

る。

久孝

『萬

葉集

「『風

『水

ふ漢

カゼ

ヱ、

ミヅ

ヱと

つた

と考

へる

は誤

であ

るが

に関

は、

のと

であ

「聲

の字

は、

『類

「オ

「コ

ヱ」

の訓

「お

「こ

の意

理解

って、

「こゑ

こと

でき

ので

る。

は詩

「風

日本

にと

「風

こゑ

し換

こと

でき

った

こと

いる。

『万

集』

は、

が吹

く音

「お

」と

て表

の発

る音

「こゑ

表さ

れた

かし

と、

それ

「こゑ

て表

る。

は、

「お

った

のが、

何故

「こゑ

も表

るよ

か。

『岩

辞典

[般

「こ

と表

す例

て、

「漢

『声

の用

に引

いう

る。

『万葉

は詩

「風

の影

の上

いて

であ

った

時代

って、

しだ

いに

の中

にも

ってき

こと

「こゑ

の増

関わ

って

いる

ので

はな

かろ

か。

稿

は、

「風

こゑ

て、

「お

「こ

ゑ」

の問

つい

て考

い。

〈風

の音

に取

三木

に詳

い論

る。神

は、

〈風

の音

に詠

るよ

った

に、

の影

があ

こと

られ

稿

研究

〈風

の音

「こゑ

る際

にも

の影

があ

のか

「風

こゑ

の表

で、

て定

の過

い。

の検

て、

「お

「こ

を考

こと

目的

る。

いて

〈風

の音

「おと

」と

66

Page 4: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

「こゑ

の、

それ

例数

をあ

る。

お、

稿

の目

は歌

「風

こゑ

こと

にあ

ので、

「お

と」

「こ

ゑ」を

いず

「聞

語を

いた

は、

では除

いた

「音

〕部

詞と

て詠

ると

語源

て音

いる

と考

「お

れ」

は、

の数

に含

めた

古今集

後撰集

拾遺集

後拾遺集

金葉集

詞花集

千載集

新古今集

おと

四例

六例

五例

八例

五例

一例

十四例

二十例

のこゑ

七 な な な 一 一 一 一

例 し し し 例 例 例 例

「音羽

山」

一例

「音羽

山」

―例

「おとつれ」

一例

「風

こゑ

おけ

『古

一例

る。

『後

「風

こゑ

の用

は、

首と

いう

こと

る。

「おとつれ」二例

「おとつ

れ」二例

「音羽山」

}例

一例

『拾

『古今

まず

の三首

の例

を検

る。

のか

の右

ふち

の朝

四十

に、

四季

のゑ

かけ

るう

の屏

た、

の江

の松

秋風

ごゑ

るお

白浪

(『古今

』賀

O)

『拾

集』

雑秋

=喬

「右

将定

の屏

の詞

で、

の歌

て収

る。

『躬

る歌

であ

ので、

恒作

る。

は、

「沖

つ白

「こゑ

る」

で、

「こゑ

に、

「こゑ

り、

「こゑ

」が

ったと

いう

情景

る。

で、

「お

はな

「こゑ

のは

であ

か。

まず

の上

で、

「松

「波

漢詩

にお

いて

対句

で用

いら

いる例

い。

には

外枕

二江

一、浪

夜寒

(『本

文粋

8°。紀

長谷

「山

歌越調〕)

のよ

〈波

の音

〈松

の音

で、

の涼

を感

じさ

て用

いら

るも

のも

り、

つとも

題材

であ

ると

見な

しう

る。

、新

古典

文学

『古今

が指

るよ

に、

「松

「波

の詩

語が

でき

る。

「松

一67

Page 5: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

に吹

る音

し、

「不・見

二其

一、虚

二松

(『文

』巻

十九

「高

」)、

「松

二夜

(『李

十詠

)

日本

ても

た詩

見ら

であ

る。ま

「波

(も

「浪

「濤

」)

は、

「焉

二波

一」

(北

・縢

「至

二滑源

一詩

」)、

「濤

声夜

二伍

(『白

一ωひ鼻

「杭

」)

の例

る。更

「こゑ

る」

いう

が、

の影

に成

った

ので

と考

えら

の物

に、

に別

の物

る、

いう

、唐

に先

る。

る例

あげ

る。

二空

―、

松声

二乱泉

(『全

甫再

「奉

三和

孤中

丞遊

二法

こ)

;奏

―、

草色

二鋪

伸聾

(『全

「会

・宴

」)

二銀

杯気

一、

松添

二玉

(『全

「春

」)

に、

露零

添澗

(『千

句』

・松

ひ賦

居易

「杭

」)

は、

の音

に添

る。

「住

の江

の…

「お

つ白

「こゑ

る」

で、

主副

は逆

であ

るが

の詩

に基

いる

る。

れ、

「こゑ

いう

、唐

の影

にあ

ると

る。

「住

の江

の歌

〈松

の音

V

〈波

の音

のに

「こゑ

の語

こと

で、

的な

風韻

を持

果が

った

いだ

の音

を、

の音

に"

調

いる

"と

「こ

ゑ」

の語

いて

るた

は、

を詠

み、ま

た表

にお

も漢

の影

を受

るた

「こゑ

の語

を用

いた

と推

でき

であ

る。

は、

『後撰

の例

であ

る。

のお

の限

つら

ふき

るご

き(『後

撰集

一よ

み人

らず

しら

)

の歌

は、「風

の立

る物

のに、

「お

」「こ

ゑ」

両方

いて

いる。

の歌

「お

は、

れた

〈風

の音

であ

し、

「こゑ

す意

は、

〈風

の音

では

い。

日本

『後

は、

「せ

つら

「責

と楽

の音

を高

る意

「迫

の掛

であ

「吹

「風

「笛

の掛

て解

いる。

これ

「こゑ

「風

では

く、

の連

のも

の調

べを

68

Page 6: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

「こゑ

の関

「こゑ

の語

いら

いる

いう

であ

る。

た、

典叢

『後

は、

「こ

ゑ」

を、

の擬

て、

「秋

て、

風が

あげ

るさ

る。

の解

を採

にせ

「こゑ

いら

の調

を意

「こ

」、

「こ

ゑ」

と表

〈風

の音

「こゑ

「こゑ

ではな

い。

『後

の例

は、

「こゑ

る。

「お

と」

の語

る意

いる

歌合

せさ

にと

にけ

ど、

たを

てま

つり

に、

きま

こゑ

れ秋

こそ

ふか

(『後拾

』秋

ω8

)

の葉

『万葉

の時

「葦邊

傍聾

穂髪

鳴熟.+緊

罵藤.礎

一云

所・聞

今四来霜」

(巻

N【置)

の葉

ぐ風

の音

に、

題材

った。

「荻

の葉

のそ

そ秋

の人

にし

始な

りけ

(『拾

』秋

罵Oつら

、延

喜御

)な

の葉

の音

、最

に秋

の訪

れを

るも

ので

ると

いう

通念

った。

れゆ

の歌

でも

く吹

く風

「こゑ」

に、

の深ま

であ

る。

の歌

『長

には

「を

(『長

』霜ひ風

)

の形

って

いる。

こち

の形

では

「おと

「こゑ

に用

いら

おり

「お

「こゑ

の違

いが

っき

る。

この歌

では

「お

と」

に聴

であ

り、

それ

の主

な把

、「あ

こそ

くな

るら

」と

る物

「こ

る。

こう

た、

}つの物音

「おと

と聴

き、

を更

に何

の意

「こ

ゑ」

て認

いう

同様

の表

は、

はす

のせち

つと

て、か

のあ

けれ

おと

みか

かぜ

のお

きけ

こゑ

のす

かな

(『一条摂

』2)

る。

の歌

『長

の歌と

じく

客観

「風

のお

」を聞

き、そ

の風

の音

「わ

こゑ

」、

つま

「春

の訪

れ1

ると

いう

こと

いう意

「こゑ

」と

て聴

いて

であ

る。

客観

69

Page 7: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

観的

って、

それ

「こ

ゑ」

と表

のであ

る。

『後

集』

に収

る形

も、

で用

いる

「こゑ

」と

は、下

「秋

こそふ

し」

いう

の判断

いる

物音

であ

の判

や感

物音

「こゑ」

〈風

の音

、『後

ると

言う

こと

る。

『古

『後

の勅

った

の音

「こゑ

表現

した

検討

た。

注意

した

のは

これ

の例

「風

こゑ

いう

った詞

ては

いな

こと

であ

る。

「風

こゑ

は、

を通

くな

い。

「風

おと

百首

近く

のと

の差

は歴

いる。

「風

こゑ

いず

の例

も、

私家

しく

歌合

見ら

のみ

で、

安期

の勅

では

私撰

にも

いな

こと

も、

それ

の歌

と認

めら

いな

った

示唆

る。

の撰

いる

り、

それ

ては

後述

〈風

の音

は、

『千

いて

に増

る。ま

、藤

原清

『和

抄』に

は、

「風

フク

ス寸

ワタ

一てミエズ

(秀

)、

「お

る事

には

ヒナ

コノ

ヲギ

ハミヅ

タギ

ツセ

アメ

レ」

(喩

)

この時

に、

の素

て、

「風

」と

「お

認め

こと

る。

かし

「こ

ゑ」

こと

かと

いう

では

い。

『千

は、

一例

出す

こと

であ

る。

『千

に成

撰集

『後

(「風

二例

)、

『続

一例

(同

「お

一例

)、

『月

詣集

一例

(同

例、

「お

例)

う結

であ

る。

た、

『千

の用

ても

「風

のこゑ

とま

った

いて

は、

「さ

むす

のい

ほり

のあ

はれ

つげ

つる

こゑ

かな

(『林

下集

8

宿

いふ

こと

)

であ

る。『千載

』入集

に限

の時

に至

っても

〈風

V

「こゑ

て表

こと

は少

て定

たと

いえな

であ

『新

、『千

り更

く風

の音

V

が増

る。

く風

V

「こゑ

「風

こゑ

の詞

が勅

に初

る。

それ

一70一

Page 8: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

「風

の語

いた

こと

「風

こゑ

」が

定着

こと

示唆

のであ

る。

『新古

に入集

七例

あげ

る。

便

た。

の露

だも

かぜ

ゑぞ

(秋

ω謬

相模

、題

らず

)

千と

せふ

る尾

の松

は秋

こゑ

かは

はら

(賀

ゴα躬

、題

・知

)

かが

く身

む色

のか

かな

のむ

こゑ

(恋

59

八条

院高

、題

)

のめ

もな

の山

さよ

ばま

つ風

の声

(恋

蔦OP鴨

、題

ず)

つも

とや

のお

こぬ

の秋

の声

(恋

δ

、家

歌合

に)

の関吹

こゆ

こゑ

須磨

浦な

(雑

}い℃O壬

見、

天暦

歌)

いす

そら

のこゑ

した

いはね

の松

のゆふ

(神

州゚。°。い大

、社

いふ

ことを

)

では

い、

の歌

の例

で、

まず

それ

ら検

る。

の露

だも

でう

ぞ残

(秋

ω渇

、題

しら

)

の歌

『和

「風

一昨

―声

二明

―涙

・禁

(巴

い大

江朝

)

を漢

詩取

であ

る。

「風

こゑ

は、

ら直

った

であ

「こゑ

は、

の音

「う

る」

心情

を認

る表

って

る。

は後

る。

の関

こゆ

る度

こゑ

須磨

(雑

一いOO壬

生忠

見、天

御時

)

この歌

検討

した

「住

の江

の松

風吹

から

こゑう

つ白

(『古

集』

ωひO)

こと

であ

「住

の江

『古

『俊

るな

て名

った歌

であ

じ趣

の歌

を、

もう

一度

『新

古今

でも

であ

う。

こう

した

安時

の歌

の歌

入集

した

ど考

い。

に、

の例

る。

の作

、鴨

八条

高倉

は当

が、

二首

の詠

年次

不明

であ

る。

かし

「松

こゑ

_71_

Page 9: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

で、

と考

えら

のが

の詞

定家

であ

「松

ゑ」

いる。

下、

次順

にあ

る。

つく

き松

こゑ

(『拾遺

愚草

』2

百首

、旅)

いほ

の友

つかき

Σな

の内

に松

のこゑ

(同

い。゚P重

早率

、雑

)

きく

にさ

しお

の月

にさ

つかぜ

こゑ

(同

ひ刈O花

百首

、月

)

心ち

ぬす

ひ哉

ろす

つか

の声

(同

まOO韻

百廿

和歌

、山家

)

こゑ

へは

にて

ちと

せを

宿

(同

Pお

一賀

、正治

二年

二月

臣家

)

「松

こゑ」

を愛

は、

はり

の詞

に漢

から

であ

う。

を吹

の音

は、

統的

に詠

る題

の音

「声

の語

く用

いら

「住

の江

の…

(『古

集』

O)

で掲

した

のと

例を

る。

況復

二風便

・、

・弦

(『楽

一筍

「銅

」)

二松声

―、

伏二雲

(『藝

類聚

』巻

二七

、宋

・鞄

「至

・竹

」)

二澗

(『白

$

「新

昌新

十韻

二元郎

こ)

・時

レ松

・声

(『本

悼。゚①大

「同

――松

・夏

一応

・教

」)

三二伏

【、

(『和漢

ま斜英

明、

)

・窓

・僧

・院

・鶴

(『千

佳句

・松

ひ口ひ楊

「贈

二李

『新

詠集

い松

)

定家

は、松

過ぎ

る風

の音

を歌

に詠

む際

には

、「こ

「松

のひ

びき

いう

ひと

つに

つるた

にが

の水

(『拾

草』

Uいい閑

百首

)他

一例

のよ

「ひ

びき

の語

いて

いる。

「ひ

はり

「谷

(『全

「遊

二感

化寺

)、

「浪声

中寒

(『本

麗藻

°。ひ

原為

「海

祠住吉社」)

の詩

「松

う。

でも

「松音

こと

が、

に稀

では

るが

いわ

はな

い。

、遙

に多

「声

る。

定家

は素

て松

を吹

く風

の音

ら摂

に際

て、

「松

「松

いよ

「こゑ

「ひ

の語

72

Page 10: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

であ

る。

「お

し、

「こゑ

が聴

の主

観的

判断

や感

を伴

いう

、意

の違

いだ

はな

、漢詩

を詠

にあ

って

の、

表現

の選

が働

いる

のであ

る。

「松

こゑ

の後

の歌

にも

れ、

『新

集』

の撰

・精

・部

一通

り行

久年

の、歌

人ご

の用

例数

をあ

ると

、定家

五例

(既

)、雅

、良経

二例

二例

成女

二例

―例

―例

八条

一例

一例

であ

る。

『新

入集

した、

いか

く身

しむ

のか

かな

のむ

のこゑ

(恋

這9

八条

院高

、題

らず

)

のめ

もな

の山

にさ

つ風

の声

(恋

鵡OP鴨

、題

らず

)

二首

次や

であ

は分

いが、

こう

した

の中

で詠

と考

『新

二首

は恋

であ

り、

「ま

つ」

「松-

つ」

の掛

であ

る。

「こゑ

いる

で、

こに

の感

こめ

る。

て来

い恋

って

いる

こと

}

よう

「松

こゑ

いる

であ

る。

「松

のこゑ

まず

「こゑ」

の語

いた

「松

のこゑ

単な

る景

の描

にと

らな

い場

「松

こゑ

の中

に、

「待

つ」

の意

め、

手が

の中

に身

を置

「待

つ」

「待

る」

のと

「松

のこゑ

いて

ので

る。

それ

は単

る漢

的な

〈松

を吹

の音

を詠

み、

の歌

「こゑ

の語

るだ

はな

い。

「ま

つ」

いう

日本

の音

かれ

た掛

の表

とな

り、

は、

ハ風

の音

の感

の対

であ

こと

「こゑ

の語

いる

後、

「松

こゑ

は摂

る過

て、

のよ

いら

「松-

っ」

の意

〈風

の音〉に

―層

に感

こと

った

に漢

表現

てだ

では

く、日本

「こゑ

の意

に照

「お

「こゑ

いる

がふ

い表

て定

、「松

こゑ

」は

『新

入集

した

のであ

る。

は⑤

の例

であ

る。

つも

く物

や人

のおも

ふら

こぬ

の秋

の声

(恋

一ω一〇良

、家歌

に)

の歌

の詞

にあ

「家

歌合

」と

は、

の半

73

Page 11: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

に良

で行

『六

歌合

』であ

。第

五句

「秋

こゑ

つい

ては

判者

の俊

「事

し」

つま

新味

を追

した

現が

った

と批

いる。

に先

って

「秋

の声

いた

いた

のき

るま

つよ

もな

ンく

かき

こゑ

(『秋

清集

一゚。い二夜

、神

)

「二夜

であ

った

め、

は満

のでき

る出

の歌

は少

った

こと

が、

の賊

「不

・廻

;風

一者

こと

る。

し、

「二夜

「秋

こゑ

を、

一度

て、

『六

歌合

で新

んだ

「秋

こゑ

ら摂

否定

でき

い。

こひ

のち

いま

はけ

き秋

の声

(『古

六帖

』乱

。゚あ

の風)

つ人

ると

すだ

れ吹

いる

る秋

こゑ

(『播

臣歌

』い藤

記大

三番

左)

るを

へのま

つは

こゑ

こそ

いろ

はら

(『躬

』Nい。。あ

)

『躬

集』

は後

『新古

た歌

で、

あげ

る。

、『新

古今

「秋

の」

四句

「こゑ

はれ

り、

に異

同が

る。

『新

の出典

に示

した

であ

った

き、

にし

いた本

の資料

であ

った

可能

「秋

こゑ」

の摂

であ

った

も、

「風

こゑ

ら生

だ定

ると

い歌

、積

に用

いる姿

を持

って

いた

とが

でき

る。

この姿

定家

で用

いた

「松

こゑ

ら影

定家

は違

よう

した

ると

る。

で良

「秋

」を

「こ

ゑ」と

した

のは

一つに

は、や

「風

の詩

いよ

「秋

「声

た漢

る。

臥、

・声

(『白

集』

80い

「新

)

・行

一、

入三論

(『全唐

詩』

「題

二東

こ)

た、

の訪

秋ら

しさ

物音

を表

「秋

」があ

り、こ

の物音

が風

の音

であ

は多

い。

長風

レ西来

二秋

―。

(『全

居易

「客

レ秋

二明準

こ)

74

Page 12: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

二夜

一、

枝薫

颯欲

二秋声

(『和

朗詠

』恥ωO白

竹)

「秋

」と

「風

」を

み合

せた

「秋

こゑ

した

られ

る。

し、

「秋

こゑ

は、

の表

に基

ても

「秋

「秋

-

いる。

の点

は、

「松

こゑ

「松

「松

-

つ」

の掛

て詠

いた

のと

であ

る。ま

、風

の性

「松

」「秋

「こゑ

の内

(聞

の判

る)

を表

いう

構成

いる。

から

の摂

まら

日本

の文

であ

の景

一致

に結

いる

であ

る。

「風

こゑ

対す

る好

、定

・良

はな

く、他

の歌

も広

って

った

。良

「秋

こゑ

は、

から

「事

し」

たが

の後

風歌

人達

「秋

こゑ

いた

の歌

人達

によ

って数多

く詠

こと

にな

る。

「秋

-

の掛

て使

いると

は限

いが、

り秋

の到

しく

は秋

伝え

るも

のと

て、

〈風

の音

識す

る表

って

る。

比較

い摂

の例

をあ

こす

一む

秋風のこゑ

(『壬

二集』

=ω鼻二百

歌、

・田家

)

でぬ

いな

びき

るれ

ふ秋

の声

(『正治

初度

百首

』三ω。゚家

、秋

)

のめ

の末

こす

の声

(『仙

五十

』Pい同定家

、寄

・風

)

かき

り都

には

いりた

ふぬ

の声

(『千

歌合

一、OO↓

女、

百九

右負

)

つる

かも

の河

みそ

こそ神

秋風

こゑ

(同夏

δUO寂

、五百

十番

)

の雲

のた

れぬ

ぬと

つぐ

こゑ

(同夏

=ムO後

羽院

五百

一番

)

も含

て、

久年

の、後

にお

「秋

こゑ

の用例

と、

三例

、俊

二例

、定

一例

一例

「例

があ

る。

「秋

のバ

エー

ンと

出さ

おぼ

しき

、「春

こゑ

」も

る、

せば

むさ

のま

だ若

の春

こゑ

(『最

院和

』U℃℃具親

、武

武蔵)

これ

の摂

の状

ら考

ても

り俊

「事

し」

した

、新

風歌

人達

に評

れ、

75

Page 13: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

れら

こと

が窺

る。

『新

に採

れた

せふ

る尾

は秋

こゑ

こそ

れ色

はら

(賀

Σひ躬

、題

・知

)

は、

―首

の出

こと

であ

、良

で、他

の歌

人達

も積

に取

「秋

のこ

」を

て詠

いた

ったと

いう

こと

が、

入集

一つと

てあ

はな

か。

「風

こゑ

はな

いが

の例

も新

な表

る。

いす

こゑ

した

いはね

の松

のゆ

(神砥

一。゚°。い大

)

の歌

では

「秋

こゑ

「松

の夕

が詠

「秋

こゑ

の音

・鳥

の声

を感

じさ

る物

の意

、先

に触

「秋声

に移

であ

る。

「秋

、『和

詠集

「濤

陽江

雁引

(ω一。。劉

錫、

)

四例

る。

「松

の夕

風」

を感

じさ

る物

て詠

る。

は、

「松

の夕

」を

「こ

ゑ」

で表

るだ

はな

「秋

の詩

で、

「こゑ

る必

った

のであ

る。

「秋

こゑ

」が

いて

いられ

い例

は、『古

歌六

「か

りが

のた

しみ

こゑ

てし

(第

六"ω爵

・か

り)

る。

の語

は家

隆が

の中

まず

い始

め、

の歌

人達

にな

った。

つか

まだ

のさ

へう

ちな

びき

こゑ

(『壬

二集

』轟ひ後

百首

、夏

・早苗

)

はさ

いは

みつ

はあ

こゑな

つのよ

のう

(『壬

二集』

一累

後度

百首

、夏

・泉

)

をぎ

の葉

にか

かぜ

の秋

こゑ

のわ

くだ

(『六

百番

』賦

い定

廿

勝)

おな

ころ

(建久六年秋)、

殿

寄、

秋声

る霜

にむ

てう

つ衣

いく

こゑ

つぐ

(『拾遺

愚草

』N旨い秋

)

の後

「秋

のこゑ

いた歌

は詠

・公

・慈

・雅

・俊

一首

つ作

「秋

こゑ

に好

「松

「風

っ秋

の詩

った表

ってい

る、

の好尚

に合

った

と言

るだ

う。

「松

こゑ

「秋

ゑ」

「風

こゑ

う歌

一76

Page 14: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

、好

った

る。

「風

こゑ

いた

は、

「浪

こゑ

(『拾

N窒

)、

「た

のも

の風

(『拾

霜ひ)、

「竹

の風

(『秋

清集

』霜Q)、

「袖

ふく

こゑ」

(『壬

二集

唱お

)

る。

「風

のこ

ゑ」

を用

いた

『新

古今

に入

理由

に、

「風

こゑ

対す

る愛

ったと

る。

こう

「風

のこゑ

」の流

、素

く風

の音

V

が数

ことを

背景

にし

いる。

し、

『千

』時

ては

、素

く風

の音

V

んだ

の増

「風

のこ

ゑ」

の増

に進

った

それ

のみ

では

なく

「風

こゑ

ほと

ど詠

まれ

こと

った

に、

「松

こゑ

「秋

こゑ

「風

ゑ」

、表

て定

した

でき

であ

る。

く風

の音

V

に遅

「風

こゑ

「松

こゑ

「秋

こゑ

の形

て定

であ

る。

以上

「こゑ

は、漢

ら摂

した

に基

いて

「こ

す場

こから

の感

や主

のもと

る音

「こゑ

場合

こと

を確

認し

た。

から

した

「こゑ

が、

で、

の主

によ

を持

て表

るよ

であ

る。

元来

「お

と」

と表

たも

のが

「こゑ

よう

にな

過程

に、

「風声

じく

と考

は多

い。

「波

こゑ

「波

「浪声

「濤声

の、

「滝

こゑ

」は

「爆

声」

の、

「鐘

こゑ

「鐘

の歌

であ

と考

えら

る。

これ

は、

訓読

る形

日本

き換

て使

であ

る。

しか

し、

漢詩

文か

し、

に置

て使

ると

いえ、

には

日本

語と

「こゑ

の捉

え方

たち

の意

映す

る。

語と

して

着す

るか

は、歌

の物

「こ

」と

て捉

かど

であ

る。

の定

の歌

は、

必ず

しも

は進

い。

の定

と、

詩語

から

た歌

の定

が、

ると

「衣

つこゑ

いう

があ

る。こ

の詞が

て初

て用

いら

のは

『古今

のこ

であ

る。

「から

つこゑ

るか

(『貫

77

Page 15: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

つ所

『和

ω日

にも

る)

のが

の例

「梼

う素

であ

るが

レベ

ルだ

はな

「衣打

こゑ

いう

「擁

・衣

」を歌

た詞

であ

る。

「播

・衣

朝詩

に、

外梼

レ衣

(『玉台

』巻

「秋

」)

偏愁

二別

―梼

・衣

(陳

・江

「宛

」)

秋夜

・衣声

二長

門城

(『藝

』巻

、周

・庚信

「夜

二撰

一詩

」)

の例

が見

る。

の後

日本

ても

れ、

の例が

見え

る。

外城

千家

・衣声

(『文

秀麗

一ω。゚桑

原腹

「和

二滋内

こ)

聞隣

・衣声

・風

(『経

、揚

「夜

・梼

・衣

」)

「拷

・衣

の形

つ音

「千

二了

(『和

朗詠

』ωホ

、梼

)

、漢

では

「声

と表

いる。

「梼

の歌

、『拾

「風

ら衣

つ時

した

まさ

(秋

一G。刈

、延

御時

の御

にご

であ

。し

『古

て詠

まれ

「衣

つこゑ

と、

「拷

『後

に至

って初

て勅

に表

る。永

内裏

に、梼

衣を

みは

りけ

ろも

よす

こゑ

にわ

へね

もあ

かし

つる

かな

(秋

UUU中

)

ふけ

ころ

でう

つこゑ

けば

いそ

れざ

(同

りωひ伊

)

たね

によ

らん

から

ころ

つこゑ

たか

りま

(同

Q嵩

)

の三

詠ま

『永

年内

(一〇

)

一月

で、

「擁

衣」

の題

て用

いら

のは、

この歌

「梼

後、

士暑六

(―〇

)

『丹

』、

(―〇

三)

歌合

『謀

子内

』、

(一〇

二)

『従

』、

(一〇

)

『東

、歌

題と

て数多

く用

いら

よう

にな

る。そ

の後

『堀

百首

の題

り、

の歌

て定

た。

「濤衣

の場

素材

「濤

が定

のと

ほぼ

同時

に、歌

「衣打

つこゑ

」も

定着

いる

(「衣

つお

)。

の哀

な恋

った感

つ物

に感

じ取

の物音

は歌

感情

入す

こと

然な

のと

一78―

Page 16: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

て受

った

る。

「梼

・衣

「衣

つこゑ

への移

詩的

てだ

はな

、日

「こゑ

」の意

ても

抵抗

を覚

に進

んだ

であ

う。

て、

「風声

「風

こゑ

き換

え、

れが

定着

るま

でに

は、

〈風

の音

は、

かか

った

の時

は、

の音

「こゑ

え、

こと

を、

であ

ると

止め

るま

でに

た時

いか

こと

でき

る。

に際

「風

「松

「秋

こゑ

であ

った。

つま

「松

「秋

った

て定

た。

「風」

のみ

日本

「こゑ」

で表

内容

は認

め難

でも

「松

「秋

の性

る媒

しく

「松

「秋

」と

の関わ

の中

のみ

、聞

く風

の音

V

の中

「こゑ

」と

る内

こと

を窺

る。

が感

を動

かさ

のは、

〈風

ではな

く、松

を吹

<風

の音

であ

、秋

に吹

<風

の音

であ

った。

「風

のま

ま歌

した

「風

こゑ

の形

は定

こと

できな

った

では

か。

に漢

現と

はな

的な

表現

にな

るた

は、

〈音

の中

手が

でき

る内

認め

かど

こに分

った

であ

る。

〈注

(皿)馬

田義

「萬葉

集訓詰

一題1

『声』と

『音

』ー

(『和

山大

学学

学部

要』

三号

昭和

二十

)、『時

代別

国語

大辞

代編

(昭

和四十

二年、

三省

)

(二)

『万葉

本文

の引

は、

竹昭

・木

正俊

・小

之著

『萬葉

本文篇

(昭

和三十

八年、

塙書

房)

る。

以下同。

(三)昭

和三十

五年、

中央

公論社。

δお

番歌注

(四)

「『風

の音

ぞ』

と漢詩

文ー

万葉集

ら王朝

和歌

(片

一編

『王朝

学と

の系

譜』

三年

和泉

書院

収V

(五)『平安

詩歌

の展開

と中

国文学

(平成

一年

、和泉

)第

―部

1

「風

の音

の系譜」

(六)小島

之、新

井栄蔵

校注

(平成

七年、

岩波

書店)

(七)

但し

の詩句

『白氏

文集

には

見ら

れな

い。陳

輯校

『全

詩補

(一九

九八

、中

局)

『千

載佳

句』を出典

して採

って

いる。しか

この詩

『千

79

Page 17: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

佳句

以前

日本

に入

って

いた

こと

が確

であり

、敢

『古今

集』

り後

の成

であ

『千載佳

句』

ら引

した。

(八)

月郁

「ネ

・コ

・オト

小考

(『静

岡大

学教

養部

研究

報告

(人文

科学篇

)』

;工号、昭

和五十

五年)

(九)片桐

一校

(平成

二年、

岩波書

店)

(十V

工藤

矩校

(平成

四年、

和泉

書院)

(十

一)

「お

ほぞ

をな

くら

ふく

こゑ

はす

もめ

みえ

ねば

(西本

本三

人集

『躬

集』

のう

た)

は、

書陵

蔵禁

裏本

(五〇一三三五)と

保版

本歌

仙家

『躬恒

には

「かぜ

のおと

で収め

られ

てお

り、『拾遺

集』aO

でも

「かぜ

のおと」

とな

って

いる。

「風

こゑ

の本

問題

ると

られ

それ

を除

き十

四首

した。

(十

二)佐

々木

『日本

二巻

(昭

年、

風間

)

(十三

)定

に先

つ例と

ては

、『宇津

保物

語』

「松

こゑ

にくら

こと

のね

をすな

せみ

はしら

べざ

(四か

すが

まう

で、

中納

のまさ

あき

ら)、能

因法

「白

のこす

かと

みぞき

こえけ

る末

の松

山ま

つ風

の声

(『能因

法師

集』

剛O°。す

のま

つ山に

て)

があ

る。

また

漢詩

にも

「万墾

尽松

風声

(『全唐

詩』

李白

「憶

旧遊

}寄二誰

元参

一」)

「誼識

二松

風声

(『全唐

』楊

「経二端

渓峡

二)

の例

ことも

てお

く。

(十

四)

『拾

遺愚

草』

の引用

は冷泉

家時

亭叢

第八

『拾遺

・中

(平成

五年

日新

聞社

〉、第

『拾

愚草

拾遺

愚草

員外

成定

家詠

筆断

簡』

(平成

年、

日新

社)

によ

り、

をわ

に付

した。

以下同。

(十

五)

一例だ

け例外

があ

る。

にす

みけ

む山

のもと

の心

は猶

やし

はん

(『拾遺

愚草

』一お。゚P関白

左大

臣家

百首

・山家

)

し貞

元年

(=

一三

二)

と後

の作

であ

る。

新古

今時

の定

の歌

ると

「松

「こゑ

る。

(十

六)

「松音

」は

『全唐

詩』

で、次

一例

みであ

る。

苑花

落二池水

一、

語聞二松

(『全唐

詩』

儲光

「石甕

」)

(十

七)こ

の歌

の本

の問

題、表現

技法、解釈

ついては、

拙稿

「藤

原良

の本歌

り凝縮

つい

てー

『後

極殿

御自

歌合

』を

中心

(『国

語国

文』

平成

三年

月号)

で論

じた

ことが

ある

そちら

も併

て参

照さ

い。

、「ことあ

たら

し」

は、『角

川古

大辞典

によ

と、

「『言う

』な

ど、

言行為

を表

語と

とも

に用

いる。

かり

った事

で言う

必要

がな

いも

のを、

の必要

一80

Page 18: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

ると

て改

て言

い立

てるさ

ま」

と説

明さ

いる。

しか

し、

合判

ては、

「あ

たら

し」

同義

で用

いら

いる例

見出

(「あ

たら

つい

ては、

『藤

原俊

論考

(平

五年

新典

社)

二章

六節

「『六

百番

歌合

の歌

態度

「あ

たら

し」

」参

)。最も

端的な

のとし

て、『関白

内大

臣歌合

で、

「う

らな

かた

のに

てるは

じも

みちち

ぬば

かり

に秋

吹く

親隆

野風

四番

左勝

)

に対

て、

判者

の基

は、

「左

歌、『はじも

みち』

こそ、

むげ

みみな

れず

ことあ

たら

しう

べれ」

と評

し、

日判

にお

ても

「左

、『は

じもみち

』ぞあ

たら

しきや

にき

こゆれど

」と、

じ意

で用

いて

いる例

があ

る。『六百番

歌合

』でも

、「し

のをが

まだ

いほ

のひま

をあ

みも

いなづ

まを

もと

こそ

みれ」

(経家

ωN°。、

十四

番稲妻

左持)

に対

て、

「『もる

いなづ

ま』

こと

しく

や侍

ん」

いる例

ある。

これは稲

が、

はか

い瞬時

の光

ことが

通例

であ

のに、

の隙間

ら漏

れる

光を詠

んだ

こと

に対

して、

新奇

であ

ると

てい

ると考

えら

る。

この

「秋風

こゑ」

に対

「事

し」

も、や

同様

「新

であ

る」

「斬新

る」

いると

った。

(十

)『秋篠

清集

は、

理図

書館

本叢

六巻

『秋

清集

(昭和

二年

八木

店)

に拠

り、

濁点

はわたく

しに付

した。

(十

九)

『私家

集大

一巻

中古

1』

によ

ると

諸本

・二句

に異同

はな

いが、第

三句

以降

には

秋ごと

ごゑ

こそかはれ

色は

かは

らず

(光俊

本系

書陵部

蔵本五=二八

「躬恒

1」まα〉

秋風

の声

こそか

はれ色

はかはら

(内

閣文庫

蔵本二〇丁四茜

「躬

恒∬」80)

きご

とに

こゑ

こそまさ

いうも

かはらず

(書陵部

蔵本五9

三二五

「躬恒

皿」

ωOO)

き風

こゑ

こそ

まされ

いろ

はかは

らず

(西

本願寺

本三

十六人集

「躬

恒W」Nい。゚)

異同

る。

「躬

H」

の形が

『新古

今集

一致

が、「躬恒

H」(内

閣文庫

蔵本

二9

・四三四)の当

該歌

は、「乍

レ入

二選集

「漏二家集

一」

の部

で、『新古

今集

から補

った

であ

る。

『新

古今

集』

の出

典資

ては

、現

存す

『躬恒

集』

は本文

が異な

り、ど

の系

統が

出典

資料

であ

った

のか

また

は、

『躬恒

』と

は違

う資

の採

であ

った

のか、

不明

であ

る。

(二

十)

『壬

二集

』本

は、

田淳

『藤

家隆

の研究』

(昭和

四十三

年、三

弥井書

店)

によ

る。

下同。

(二

【〉『千

百番

歌合

は、

有吉

保編

『千

五百

の校

とそ

の研

(昭

四十

風間

書房

)

る。

下同。

なお

遷刈番歌

は、第

五句

「秋

の声

」が

81

Page 19: Title 「風の声」の表現 : 和歌における「おと」「こゑ」試論 … · 『万葉集』か「声」の文字が、非生物に用いられて 記されている歌を掲出する。

陵部

蔵桂

(五

?五八)

では

「秋風

のそら」

と異

同が

る。

(二十

二)

、『新

古今

が勅

撰集

の歌

「松

こゑ」

があ

る。

の許

にま

かり

て、

これ

かれ松

のかげ

おり

てあ

そび

ける

かげ

にと

て立

かく

るれ

ば唐

ぬれ

ぬ雨

ふるま

つの

かな

(『新古今

集』雑中

ま。。ω貫之)

「松

こゑ」

は、

「松

」を

のまま

訓読

し、

歌語

した

であ

る。

この歌

を入集

せた

理由

も、

はり

「松

のこゑ

〈松風

の音

〉と

いう

素材

への愛好

が背

にあ

ると考

えら

る。

(二十

三)

「ことご

き高

、唐

の楽

より

も、

れた

は、な

つかし

おも

しろ

く、波

の声

に響

ひて、

る木高

松風

に吹

きた

てたる

の音

も、

て聞

く調

べに

は変

て身

にし

み、

(下略

(『源氏

物語』

下、引用本

は小学

館新

日本古典

文学全

に拠る

)

の先

例があ

る。

(二十

四)増

田欣

「濤衣

の詩

歌-

の題材史

的考

察ー

(『富

山大教

育学

部紀

要』第

一五号

、昭和

四十

二年

三月)

※付

記特

に注

しな

い限

り、

歌本

び歌

は、

『新

大観』

『文選

『藝文

類聚

『玉台

新詠』

六朝

『全唐

詩』

『白

氏文集

『本

朝文粋

』に拠

る。漢

の本文

引用

は、

一九八

〇年、

藝文

印書館

『文華

秀麗集

『経

集』

『千載

佳句

『本朝麗

藻』

に拠

る。

・二

九七

九年

、上海

古籍

出版社

:

『玉墓

新詠

索引

玉皇

新詠

箋註

(昭和

五十

―年、

山本書

店)

・『先秦

詩』

(一九

三年

局)

:中華

書局

(全

二十

五冊本

)

:『白

氏文集

歌詩

索引』

(平成

年、

同朋舎

)

-新

日本古典

文学

大系

『本

朝文

粋』

(平成

四年

、岩波

書店

)

-日本古

典文

学大

『懐

風藻

・文

華秀

・本朝

文粋

』(昭和三

十九

岩波

書店

)

…新

校群

文章

;金

子彦

二郎

『平安

代文

と白

氏文

題和歌

・千

載佳

句研究

篇』

(昭和十

八年

、培風

館)

-

『校本

本朝

麗藻

附索

引』

(平成

四年

汲古書院

)

(こやま

ゅん

・博士

後期

課程)

s2