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実証において重要視したい部分は、データの蓄積を増やすこ とです。父の時代からKSASを導入していましたが、データが あまり更新されていませんでした。経営改善を図るためのデー タは喉から手が出るほど欲しいので、作業をしながら自動で情 報が集まってくるKSAS対応農機には魅力を感じています。 今回、実演を行ったDR595はKSAS対応したコンバインで、 今まで品種ごとの合計でしか得られなかったデータが、ほ場1 枚当たりの収量や食味を自動で記録してくれるので、次年度以 降の栽培管理に反映でき、収量・品質向上に期待できます。ま た、DR595は合同会社清水川とのシェアリングも行います。 栽培に活用できるデータは多い方が良いので、今回のシェアリ ングでは機械の貸出を行う代わりにデータを蓄積させてもら う予定です。将来的には事業化を図っていきたいですね。 KSASへのデータの蓄積を行うことで より効率的な作業を図る スマート農業に取り組む中で、老若男女関係なく同様の作 業が行える「農業のユニバーサルデザイン化」を目指して行き たいと考えています。例えば、白ネギ栽培で定植前の植付け溝 作りを頼むとします。すると曲がってはいけない難しい作業 なので、皆さん嫌がるんですよね。そういった作業でも、自動 操舵システムがあれば、未熟練者でもまっすぐに植付け溝を 作ることができます。その後の土寄せ作業においても、通常前 だけ見て作業を行うため土寄せに偏りが出ることがありまし た。自動操舵があると、後ろの様子を確認しながら作業が行え るので、仕上がりが綺麗になり、オペレータの方にも自信を 持って作業を行ってもらうことができます。 運搬作業においても、私より力が劣る女性や高齢者が米袋 を持たないと行けないときがあります。そういった時に、都 度、力のある従業員を呼び出していては業務に支障をきたし ますので、作業の平準化を図るためにアシストスーツの導入 を行いました。導入したばかりで、慣れるまでに少し時間はか かりますが、慣れてしまえばスーパーマンです。アシストスー ツがあれば誰でも力仕事ができるようになりますね! スマート農業で誰でもできる 「農業のユニバーサルデザイン」を目指す 10年ほど前に農業を学ぶためアメリカに留学していた時 期があります。留学先の野菜の大規模農業はすでに自動操舵 を導入しており、新しく入った従業員でもすぐに作業ができ る環境を構築していました。現在、日本はやっとそこに追いつ いたと感じています。今後は面積を拡大して1枚当たりの面 積も大きくし、効率的な作業を図っていきたい。スマート農業 の活用で無駄な事はせずにしっかり良いものを作って、父を 超えるような農業人を目指したいです。 父を超える農業を目指して ㈱トプコンの自動操舵 システムでまっすぐ植 え付けされた白ネギ スマート農業を駆使して父を超える農業者を目指す 父から会社を継ぐ時、農業をはじめて5年も経っておらず、 未熟な私が技術や経験不足を補うにはどうすればいいかが常 に課題でした。父の頭の中にしかない知識や技術が多く、作業 のマニュアル化がされていないため、試行錯誤の経営に陥り、 経営が以前より悪くなった事に頭を悩ませていました。さら に現場で中心となって活躍していた方が事務や経営面に時間 を取られ、現場作業を経験の浅い社員に任せたため、労働生産 性が下がってしまいました。そこで省力・低コスト化を図りい かに経営改善を図っていくか解決策を打ち出す必要があると 株式会社福成農園 代表取締役 野口 龍馬 会社を継いで見える化の必要性を体感 水稲36ha、白ネギ4.5ha、小麦4.5ha、小麦4ha、大豆4.5ha 考えていたところ、鳥取県からスマート農業実証プロジェク トの提案を受け、スマート農業技術で活路を見出すため、県の コンソーシアムに参画、令和2年度の事業に採択されました。 ▲㈱福成農園の外観 ▲WIN-1の実演をする野口様 ▲食味・収量センサ付コンバインDR595で収穫を行う ほ場1枚の収量・ タンパク含有率・ 水 分 率 がKSAS に反映される 経営面積 ▲乾燥調製施設には大型の玄米低温貯蔵庫が併設されている 鳥取県南部町㈱福成農園のほ場において、10月6日に㈱福成農園スマート農業実証コンソーシア ムが主催する、「令和2年度第2回スマート農業技術実演会」が行われました。同コンソーシアムは、令 和2年度のスマート農業実証プロジェクトに採択されており、「次世代につなぐ水稲・白ネギを柱に した中山間地域水田複合経営モデルの実証」を行っています。実演会では①食味・収量センサ付コン バインDR595による収穫作業及び、KSASへのデータ取得②㈱トプコン自動操舵システムによる白 ネギの土寄せ作業③ウインチ型パワーアシストスーツWIN-1を活用した米袋の運搬、3つのスマート 農業技術が紹介され、参加者の熱心に質問する姿や、写真を撮る様子に関心度の高さが伺えました。 動画もご覧ください スマート農業実証プロジェクト 現地レポート! 鳥取県南部町 ㈱福成農園 2020年10月6日 第2回スマート農業技術実演会を開催! 誰でも農業ができる 「農業のユニバーサルデザイン化」を目指して ㈱福成農園スマート農業実証コンソーシアム

SOR S2020表 鳥取 南部町 1127 - 農業ソリューション製品サ …SOR S2020表 鳥取 南部町 1127. 実証において重要視したい部分は、データの蓄積を増やすこ

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 実証において重要視したい部分は、データの蓄積を増やすこ

とです。父の時代からKSASを導入していましたが、データが

あまり更新されていませんでした。経営改善を図るためのデー

タは喉から手が出るほど欲しいので、作業をしながら自動で情

報が集まってくるKSAS対応農機には魅力を感じています。

今回、実演を行ったDR595はKSAS対応したコンバインで、

今まで品種ごとの合計でしか得られなかったデータが、ほ場1

枚当たりの収量や食味を自動で記録してくれるので、次年度以

降の栽培管理に反映でき、収量・品質向上に期待できます。ま

た、DR595は合同会社清水川とのシェアリングも行います。

栽培に活用できるデータは多い方が良いので、今回のシェアリ

ングでは機械の貸出を行う代わりにデータを蓄積させてもら

う予定です。将来的には事業化を図っていきたいですね。

KSASへのデータの蓄積を行うことでより効率的な作業を図る

 スマート農業に取り組む中で、老若男女関係なく同様の作

業が行える「農業のユニバーサルデザイン化」を目指して行き

たいと考えています。例えば、白ネギ栽培で定植前の植付け溝

作りを頼むとします。すると曲がってはいけない難しい作業

なので、皆さん嫌がるんですよね。そういった作業でも、自動

操舵システムがあれば、未熟練者でもまっすぐに植付け溝を

作ることができます。その後の土寄せ作業においても、通常前

だけ見て作業を行うため土寄せに偏りが出ることがありまし

た。自動操舵があると、後ろの様子を確認しながら作業が行え

るので、仕上がりが綺麗になり、オペレータの方にも自信を

持って作業を行ってもらうことができます。

 運搬作業においても、私より力が劣る女性や高齢者が米袋

を持たないと行けないときがあります。そういった時に、都

度、力のある従業員を呼び出していては業務に支障をきたし

ますので、作業の平準化を図るためにアシストスーツの導入

を行いました。導入したばかりで、慣れるまでに少し時間はか

かりますが、慣れてしまえばスーパーマンです。アシストスー

ツがあれば誰でも力仕事ができるようになりますね!

スマート農業で誰でもできる「農業のユニバーサルデザイン」を目指す

 10年ほど前に農業を学ぶためアメリカに留学していた時

期があります。留学先の野菜の大規模農業はすでに自動操舵

を導入しており、新しく入った従業員でもすぐに作業ができ

る環境を構築していました。現在、日本はやっとそこに追いつ

いたと感じています。今後は面積を拡大して1枚当たりの面

積も大きくし、効率的な作業を図っていきたい。スマート農業

の活用で無駄な事はせずにしっかり良いものを作って、父を

超えるような農業人を目指したいです。

父を超える農業を目指して

㈱トプコンの自動操舵システムでまっすぐ植え付けされた白ネギ

▼▶

スマート農業を駆使して父を超える農業者を目指す

 父から会社を継ぐ時、農業をはじめて5年も経っておらず、

未熟な私が技術や経験不足を補うにはどうすればいいかが常

に課題でした。父の頭の中にしかない知識や技術が多く、作業

のマニュアル化がされていないため、試行錯誤の経営に陥り、

経営が以前より悪くなった事に頭を悩ませていました。さら

に現場で中心となって活躍していた方が事務や経営面に時間

を取られ、現場作業を経験の浅い社員に任せたため、労働生産

性が下がってしまいました。そこで省力・低コスト化を図りい

かに経営改善を図っていくか解決策を打ち出す必要があると

株式会社福成農園

代表取締役

野口 龍馬 様

会社を継いで見える化の必要性を体感

水稲36ha、白ネギ4.5ha、小麦4.5ha、小麦4ha、大豆4.5ha

考えていたところ、鳥取県からスマート農業実証プロジェク

トの提案を受け、スマート農業技術で活路を見出すため、県の

コンソーシアムに参画、令和2年度の事業に採択されました。

▲㈱福成農園の外観

▲WIN-1の実演をする野口様

▲食味・収量センサ付コンバインDR595で収穫を行う

◀ほ場1枚の収量・タンパク含有率・水分率がKSASに反映される

経営面積

▲乾燥調製施設には大型の玄米低温貯蔵庫が併設されている

鳥取県南部町㈱福成農園のほ場において、10月6日に㈱福成農園スマート農業実証コンソーシア

ムが主催する、「令和2年度第2回スマート農業技術実演会」が行われました。同コンソーシアムは、令

和2年度のスマート農業実証プロジェクトに採択されており、「次世代につなぐ水稲・白ネギを柱に

した中山間地域水田複合経営モデルの実証」を行っています。実演会では①食味・収量センサ付コン

バインDR595による収穫作業及び、KSASへのデータ取得②㈱トプコン自動操舵システムによる白

ネギの土寄せ作業③ウインチ型パワーアシストスーツWIN-1を活用した米袋の運搬、3つのスマート

農業技術が紹介され、参加者の熱心に質問する姿や、写真を撮る様子に関心度の高さが伺えました。

動画もご覧ください

スマート農業実証プロジェクト 現地レポート! 鳥取県南部町㈱福成農園

2020年10月6日

第2回スマート農業技術実演会を開催!

誰でも農業ができる「農業のユニバーサルデザイン化」を目指して

㈱福成農園スマート農業実証コンソーシアム

Page 2: SOR S2020表 鳥取 南部町 1127 - 農業ソリューション製品サ …SOR S2020表 鳥取 南部町 1127. 実証において重要視したい部分は、データの蓄積を増やすこ

スマート農業で活気ある鳥取県の農業に鳥取県では農業生産1千億円達成プランを策定し、施策を進

めており、スマート農業は目標達成を支える技術だと考えてい

ます。スマート農機という言葉だけに魅せられて、機械を購入

される方もおられるので、高価なおもちゃとならないように、

効率的な使い方を含めて費用対効果を分析し、地域への普及を

図っていきたいと思います。スマート農業の普及によって鳥取

県の農業が一層、活気あふれる様に尽力していきたいです。

実演会では、食味・収量センサ付コンバインDR595による収穫作業と㈱クボタ青山技術顧問によるKSASの説明会を実施。

 鳥取県は、農業者の高齢化や少子化に伴う担い手減少が進行

しており、新規就農者も少ない現状です。農業における技術の

ハードルを低くし、幅広い方が農業を行うためには、スマート

農業化は進めていく必要性があると考えていました。そこで、

スマート農業に関心の高い経営体の意見を参考にしながら、県

でスマート農業の普及に取り組んできました。その一環として、

令和2年度のスマート農業プロジェクトに応募し、㈱福成農園

スマート農業実証コンソーシアムが採択されました。㈱福成農

園が掲げる「農業のユニバーサルデザイン化」は、現状を打開し、

新規農業者を確保できる解決策になると期待しています。

スマート農業で農業参入のハードルを下げる

 スマート農業は気軽にできるという事を地域の農業者に

知ってもらうために、実演会を開催しています。今回の実演会

では、3つの柱で構築しています。

 まず、食味・収量センサ付コンバインDR595による収穫実

演作業です。今まで1日に2~3箇所収穫を行うので、ほ場1枚

ごとの収量・品質を把握することは難しいことでした。

DR595は、ほ場1枚当たりの収量・食味のデータがわかるた

め、次年度の管理に反映させることができ収量の安定を図るこ

とができます。次に、白ネギ栽培における自動操舵システムの

活用です。

第2回スマート農業実演会について

スマート農業の普及を図り鳥取県農業に活気を持たせたい

オプションハンド「取っ手穴なし段ボール箱用」を使用して玄米袋の積み下ろし作業の実演を実施。

実演会では小型トラクタに装着した自動操舵システムによる白ネギの土寄せ作業を行い、手放しによる作業が印象的だった。

松田 悟 様

鳥取県農林水産部 農業振興戦略監とっとり農業戦略課 研究・普及推進室室長試験場統括本部 参事

 今回の実演会では、自動操舵を使っての白ネギの土寄せ作業

を行いました。定植する前の植付け溝作りにおいても自動操

舵を導入しており、熟練者でも難しい作業を誤差2~3cmの

精度で作業が行えます。技術のハードルが下がることで、均一

な作業が行え収量・品質が安定することに期待しています。

 最後に、アシストスーツWIN-1の実演を行いました。力仕事

の負担を軽減できれば、女性や高齢者でも作業を行うことがで

きます。

▲実演会は近隣の経営体や、関係機関の方が参加

食味・収量センサ付コンバインDR595 ㈱トプコン自動操舵システム

ウインチ型パワーアシストスーツWIN-1

実証技術概要

熟練者でなくても均質な作業・栽培管理が可能な仕組みづくり労働改善・軽作業化等による人員確保と体制づくり

収量・品質向上に欠かせない適切な管理による栽培体系づくり

● 直進ガイダンス及び自動操舵システムの活用● 直進及び施肥量キープ機能付き田植え機で効率田植え● 衛星画像診断及び診断結果を基にドローン等で可変施肥● アシストスーツの活用

● 営農支援システムの活用による効率的な作業管理と栽培環境データの蓄積● 栽培環境データモニタリング・分析による栽培環境の見える化● 衛星画像診断結果に基づく適期収穫と食味・収量コンバインによるデータ把握● 合同会社清水川との衛星画像診断と食味・収量コンバインのシェアリング

「農業のユニバーサルデザイン化」

「データの見える化」

収穫と同時に籾の水分含有率やタンパク含有量率や収量を計測。計測したほ場ごとのデータをKSASに自動送信される。

腕をアシストするウインチアシスト機能と腰をアシストする腰アシスト機能を搭載。コンテナの積み降ろしや、運搬等の重労働を解消

位置情報受信機、ハンドル、モニタを1セット導入することで、ロータリ等の作業機の幅に合わせて最適な作業位置で自動ハンドル操作を行います。

オプションハンド 取っ手穴なし段ボール箱用

次世代につなぐ水稲・白ネギを柱にした中山間地域水田複合経営モデルの実証~農業の「ユニバーサルデザイン化」・「データの見える化」を目指して~

●中山間地が多く、高齢化に伴う農業の担い手不足 など構造的な問題が進展 ●担い手が活躍できる環境整備と産地力アップに よる農業所得の向上

●水稲作の労働時間14%削減 ●10a当たりの収量増加水稲10%増、白ネギ20%増、 大豆60%増、小麦50%増 ●経営全体における利益450万円増加

㈱福成農園実証コンソーシアム概要

4月時期

「見られる!」

ポイント

5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

③ ③

④ ④ ④ ④

② ②

■■食味・収量センサ付コンバインDR595、■■衛星画像診断、■■診断結果を活用したドローン可変施肥、■■トラクタの直進ガイダンス(㈱クボタガイダンスシステム)、■■㈱トプコン自動操舵システム、■■直進キープ付田植機NW6S、■■水位・気象・土壌センサによる環境モニタリング、■■ウインチ型パワーアシストスーツWIN-1

要素技術

■実証する技術体系の概要

実証課題名

課題・背景

目標

① ② ③④ ⑤ ⑥⑦ ⑧

作業実演1 作業実演2 作業実演3

㈱福成農園実証コンソーシアム 第2回スマート農業技術実演会 概要