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LONWORKS IN BRIEF 1 LONWORKS ® IN BRIEF – LONWORKS ネットワークプラットフォーム概要本書は以下の 3 種類の資料と、参考資料のご紹介から成っています。 1.LONWORKS 技術の概要』 2.LONMARK ® 相互運用性の概要』 3.LonPoint の概要』 4.参考資料 これらの資料はいずれも、LONWORKS 技術や LONMARK の相互運用性、LonPoint ® 製品シリ ーズの概要を理解するうえで欠かすことのできない、重要な用語と概念を総合的に説明すること を意図したものです。また、技術的な参考資料についても細かくご紹介しています。 最初の資料の説明に基づいて次の資料の説明が書かれていますので、読む際には順番にお読み ください。それぞれの資料では重要な用語や概念は太字で示してあり、より詳細な技術文書につ いても参考資料にて言及しています。

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LONWORKS IN BRIEF 1

LONWORKS® IN BRIEF – LONWORKS ネットワークプラットフォーム概要–

本書は以下の 3 種類の資料と、参考資料のご紹介から成っています。

1.『LONWORKS 技術の概要』

2.『LONMARK®相互運用性の概要』

3.『LonPoint の概要』

4.参考資料

これらの資料はいずれも、LONWORKS 技術や LONMARK の相互運用性、LonPoint®製品シリーズの概要を理解するうえで欠かすことのできない、重要な用語と概念を総合的に説明することを意図したものです。また、技術的な参考資料についても細かくご紹介しています。

最初の資料の説明に基づいて次の資料の説明が書かれていますので、読む際には順番にお読みください。それぞれの資料では重要な用語や概念は太字で示してあり、より詳細な技術文書についても参考資料にて言及しています。

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LONWORKS IN BRIEF 2

1.LONWORKS 技術の概要

ここでは LONWORKS 技術のプラットフォームについて概説します。重要な用語や概念は太字で示してあり、より詳細な技術文書についても言及しています。

1.1 はじめに

業界や用途は問わず、自動制御システムはすべて同じ基本部品で構成されています。たとえばセンサーの熱電対(サーモカップル)やスイッチ、キーボード。アクチュエータのモーターやリレー、スイッチ、画面、バルブ。マイクロプロセッサで制御ロジックを実行するアプリケーションプログラム。必要な制御ポイントでデータ値や命令を取得するための通信ネットワーク。監視や管理制御に使用するヒューマン・マシン・インタフェース(HMI)ツール。インストールや設定、保守に使用するネットワーク管理ツールなど、さまざまな基本部品があります。それぞれの自動制御システムは、製品メーカーやシステムインテグレータがこれらの基本部品をどのように設計し、使用するかにより異なることになります。最終的にお客様に納める制御システムがその機能性やコスト、保守容易性といった面でお客様の要件を満たすかどうかは、これらの基本部品をいかにうまく、効果的に組み合わせるかに大きく左右されます。

技術の進歩に伴い、システムアーキテクチャも種類を問わず急速に変化しています。制御システムも例外ではありません。この 20 年間を見ても、ダム端末を中央のコンピュータに接続する形態のメインフレームはLAN接続した小型コンピュータによる分散処理システムに取ってかわられ、この分散処理システムも高性能 PC をピア・ツー・ピア接続した分散処理ネットワークへと姿を変えました。情報システム関連製品の新しい傾向のひとつひとつが大きな成功を収めるためには、マイクロプロセッサや通信プロトコル、オペレーティングシステム、その他のハードウェアやソフトウェアなどの構成要素について、それぞれの業界標準を幅広く取り入れることが重要です。業界で標準となっている仕様を幅広く取り入れることにより、メーカーの多くは相互運用性を備えたハードウェア製品やソフトウェア製品を大量に生産できます。これらの製品は、特別なハードウェアやソフトウェア、あるいはツールなどを開発することなく、あらゆる用途に適合させて情報システムに組み込むことが可能です。エシェロンが開発し、すべてのメーカーがオープンスタンダードとして利用できる LONWORKS 技術は、制御システムアーキテクチャの抜本的な変革を同じ方向へと推し進め、従来の集中制御型システムを高度な分散処理を行う、相互運用性を備えたオープンなシステムに置き換えるためのプラットフォームです。

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図 1 は集中制御型のアーキテクチャを表しています。これは商業用途や産業用途のほとんどの制御システムで最近まで一般的に採用されていたアーキテクチャです。入出力ポイントとも呼ばれる数十から数千のセンサーやアクチュエータで構成されており、それぞれがサブパネルに配線されています。サブパネルはさらに、従来用いられてきたマスタ/スレーブ型の通信バスを介してコントローラパネルに接続されています。コントローラパネルには高性能マイクロプロセッサが搭載されており、接続されている入出力ポイントすべての制御ロジックを実行する独自仕様のアプリケーションプログラムを実行します。大規模なシステムの場合、コントローラは別の従来型通信バスを介して他のコントローラと通信することもあります。センサーやアクチュエータは、通信機能を持たない従来型の入出力デバイス(たとえば単純な入力デバイスのスイッチ、あるいはアナログデバイスからの 4-20mA 電流など)か、マスタ/スレーブバスへの従来型の通信インタフェースを持つデバイスのどちらかになります。このシステムは従来用いられてきたヒューマン・マシン・インタフェース(HMI)を持つこともありますし、標準的な HMI ツールを接続できるようにインタフェースを公開する場合もあります。すべてのシステムで、従来用いられてきたプログラム言語や一般的には用いられていないソフトウェアツールを使用して開発した独自仕様のアプリケーションプログラムを使用する必要があります。この図をよく見ると、10 年から 20 年前の典型的なメインフレームシステムや小型コンピュータシステムのアーキテクチャに類似していることがわかります。

図 1 集中制御型のアーキテクチャ

図 2 は、LONWORKS 技術が実現する、高度に分散化されたピア・ツー・ピア型のアーキテクチャを表しています。集中制御用のコントローラもなければ、リング型に配線されたパネルも見当たりません。LONWORKS デバイス(ノードとも呼びます)は、最適な物理媒体(ツイストペア線、AC 電力線、無線、光ファイバー、赤外線など)を介し、標準の通信プロトコルを使用してシステム内のどのノードとも通信することができます。各ノードには単純なアプリケーションプログラムを配置し、制御ロジックをシステム全体に分散させます。ノードで実行するアプリケーションプログラムは独自にプログラミングするのではなく、パラメータを設定してカスタマイズします。原則的には、システム内のセンサーやアクチュエータすべてが LONWORKS のノードになり得ます。ただし実際には、物理的に近接していて 1 つの制御ループに含まれる複数の入出力ポイントを 1 つのノードにまとめる方がより費用効果が高くなることが多いようです。ヒューマン・マシン・インタフェースとネットワーク管理ツールは複数のベンダーから提供されており、標準の通信プロトコルを使用してシステム内のすべての制御ポイントにアクセスできます。

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図 2. LONWORKS による分散制御型のアーキテクチャ

LONWORKS 技術は、旧式なコマンドベースの制御システムを構築する技術ではなく、情報ベースの制御システムを実現する技術です。つまり LONWORKS のシステムでは、個々のノードのアプリケーションプログラムが、他のデバイスから集めた情報に基づいてシステムの状態を把握し、どのように制御すべきかを独自に判断します。コマンドベースのシステムではそれぞれのノードが他のノードに対して制御コマンドを発行します。つまりコマンドを発行するノード(通常は集中制御用のコントローラ)には、システムの機能やトポロジーに関するさまざまな情報を取得できるように、プログラムを独自に開発して導入する必要があります。このような状態では、複数のベンダーが設計した標準的な制御ノードを自由に組み合わせて使用するなどということは到底不可能です。LONWORKS が持つ革新的な技術のひとつにネットワーク変数という概念があります。このしくみによりメーカーは、相互運用性を備えた情報ベースの制御システムにシステムインテグレータがすぐに組み込めるデバイスを、容易に設計できるようになります。

LONWORKS 技術が実現するこの「フラット」な制御アーキテクチャがエンドユーザーやシステムインテグレータにもたらすメリットは以下のとおりです。

互換性に優れて費用効果の高いさまざまな LONWORKS デバイスを複数のベンダーから入手できる

使いやすい HMI ツールとネットワーク管理ツールを複数のベンダーから入手できる

配線に要する費用を大幅に削減できる

システム設計のサイクルを短縮 - 独自のハードウェアやプログラミング作業は不要

信頼性の高いシステム - シングルポイント障害が発生しない

システム保守サービスを複数ベンダーから選択可能

エンドユーザーの要件を満たす新しい機能を容易に導入できる

以降のセクションでは LONWORKS 技術の重要な要素、および LONWORKS システムを構成するコンポーネントに関して、技術的な概要を説明します。また LonTalk 通信プロトコルの主な機能、そしてシステムの設定プロセスに関しても説明します。

1.2 LONWORKS 技術

LONWORKS 技術は主に以下の要素から成ります。

Neuron チップ制御プロセッサおよびトランシーバ - LONWORKS デバイスで使用するハードウェアコンポーネントです。

LonTalk 通信プロトコル - 個々の LONWORKS デバイスに恒久的に組み込まれます。

LONWORKS Network Services(LNS) - 相互運用性を備えた使いやすいネットワーク管理ツールと HMI ツールのベースとなる、ネットワークオペレーティングシステムです。

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さらに、エシェロンはもちろん、他メーカーからも LONWORKS デバイスやネットワークを設計・開発するためのツールをひとつにまとめた統合パッケージが提供されています。

すべての LONWORKSデバイスでその中心に位置するのは Neuron チップ制御プロセッサです。これは複数のマイクロプロセッサ、RAM(読み書きが可能なメモリ)や ROM(読み出し専用メモリ)、通信と入出力のインタフェースポートを搭載した SoC(システム・オン・チップ)です。ROM には OS や LonTalk 通信プロトコル、入出力ファンクションライブラリを格納します。このチップは不揮発性 RAM(EEPROM またはフラッシュメモリ)を備えており、設定データとアプリケーションプログラムの両方を通信ネットワークからダウンロードして格納します。個々の Neuron チップの製造時には、Neuron ID と呼ばれる世界で 1 つしかない重複しない 48ビットのコードが割り当てられます。さまざまな処理速度、メモリの種類と容量、そしてインタフェース仕様を持つ Neuron チップ製品が多数提供されています。Neuron チップはエシェロンと半導体製造提携先であるモトローラ、東芝が共同で設計し、その後各提携先が大量生産して販売しています。

トランシーバは Neuron チップの通信ポートと物理媒体との間の物理インタフェースを提供する電子モジュールです。媒体はチャネルとも呼ばれ、デジタル通信パケットを他のデバイスに送り届ける役割を持ちます。1 つのチャネルに接続されたデバイスはすべて、同じビットレートで動作する、互換性を持つトランシーバを備えている必要があります。トランシーバは、1 対のツイストペア線や電力線、無線、赤外線、光ファイバー、同軸ケーブルなどのさまざまな媒体に対応した製品がエシェロンや他のメーカーから提供されています。ビットレートは媒体、そしてトランシーバの設計により異なります。現在のところ、ツイストペア線で 1.25Mbps まで対応しています。LONWORKS のシステムでは、同種媒体でも異種媒体でも複数のチャネルを混在させることができます。それぞれのチャネルは LONWORKS ルータを使用して接続します。LONMARK International では、さまざまな種類のトランシーバについて、設計する際の標準を公開して認定サービスを行っています(参考資料 1 を参照)。LONMARK 認定デバイスには必ず認定トランシーバが使用されており、特定の物理媒体における相互運用性が保証されています。

LonTalk 通信プロトコルは、階層化された、パケットベースのシリアル・ピア・ツー・ピア通信プロトコルです。LonTalk は Ethernet やインターネットプロトコルと同様にオープンなプロトコルで、ISO(国際標準化機構)の階層化アーキテクチャである OSI 参照モデルに準拠しています。ただし、LonTalk プロトコルは制御システム特有の要件を考慮して設計されており、データ処理システムの要件を意識したプロトコルではありません。他の多くの通信プロトコルとは異なり、LonTalk は媒体に依存しない設計になっています。つまり LONWORKS システムは、あらゆる物理媒体を介しての通信が可能です。Neuron チップの ROM には必ず、LonTalk ファームウェアと呼ばれるプロトコルのプログラムが実装されています。このプロトコルは変更可能な設定パラメータを多数備えており、個々の用途に合わせてパフォーマンスやセキュリティ、信頼性を柔軟に調整することができます。Neuron チップ内の不揮発性 RAM(EEPROM)の一部が、これらのパラメータ用に予約されています。

LONWORKS Network Services(LNS)はクライアントサーバー型のアーキテクチャを持ち、相互運用性を備えた LONWORKS ネットワークツールのベースとなります。LNS を使用することにより、各種の新世代ツールを提供するコンポーネントベースのソフトウェア設計が可能になり、これらのツールを組み合わせて LONWORKS ネットワークの導入や保守、監視、制御が行えます。また LNS は、制御システムと他の情報システムとの容易な統合も実現します。LNS のアーキテクチャは、JAVA クライアントや DDE クライアント、OPC クライアントなど多様なプラットフォーム上のクライアントに対応しています。2004 年 9 月現在の最新である LNS3.08の動作環境として、現在対応しているのは Windows 2000、XP SP1 または SP2、98Second Edition です。LNS の詳細については参考資料3を参照してください。

LONWORKS デバイスの開発用に、NeuronChip 上のアプリケーションのプログラミング用のツールが数社から提供されています。エシェロンからは NodeBuilder という製品が提供されています。さらに、エシェロンの LonMaker インテグレーションツールなどのネットワーク設計・管理用ソフトウェアツール、またワンダーウェア社の InTouch などのヒューマン・マシン・インタフェース・ツールが数社から提供されています。また LONWORKS ネットワークのテスト・評価・トラブルシュートのために、LonTalk 通信プロトコル用のプロトコルアナライザーが数社から提供されており、エシェロンからも販売されています。

1.3 LONWORKS システムのコンポーネント

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LONWORKS のシステムは LONWORKS デバイス、チャネル、ネットワークツールという 3 種類のコンポーネントで構成されています。

ネットワークに接続された個々の LONWORKS デバイス(ノード)では、少なくとも 1 つのNeuronチップと1つのトランシーバを、それぞれの用途に合わせたパッケージに納めています。通常は適切な電源も備えています。どのような機能のデバイスかにもよりますが、たとえばセンサーやアクチュエータ、外部の既存センサー・既存アクチュエータとの入出力インタフェース、PC などのホストプロセッサとのインタフェースなどを組み込む場合もあります。Neuron チップが実行するアプリケーションプログラムは、それぞれのデバイスがネットワーク経由で受信した情報に応じた制御ロジックの動作や、ネットワークへ送信する情報の値の決定を行ないます。アプリケーションプログラムは ROM(読み出し専用メモリ)に常駐する場合もありますし、ネットワーク経由で不揮発性 RAM(EEPROM やフラッシュメモリ)にダウンロードして取得・更新することもあります。

一部の複雑なアプリケーションプログラムでは、LONWORKS ノードで必要となる機能を実行するのに、一連の Neuron チップ製品のプロセッサ速度やメモリ容量では不十分な場合があります。このようなアプリケーションプログラムに対応するために、高速なパラレルインタフェースを Neuron チップは持っています。これにより、たとえばモトローラ 68000 シリーズなどの任意のマイクロプロセッサを使用してアプリケーションプログラムを実行させ、一方でこのNeuron チップをネットワーク通信用プロセッサとして利用することも可能です。別の方法としては、任意のプロセッサ上で直接実行できるように、オープンな LonTalk プロトコルを移植することも可能です。この場合、LONWORKS デバイスに Neuron チップを組み込む必要はありませんが、重複しない Neuron ID を必ずデバイスに割り振る必要があります。

チャネルというのは、特定の物理的な通信媒体を指します。チャネルには、そのチャネル専用のトランシーバを使用して、1つのチャネルに複数の LONWORKS デバイスを接続します。チャネルには種類によって、最大接続デバイス数や通信のビットレート、あるいは最長距離など、それぞれに異なる特徴があります。一般的に用いられるいくつかのチャネルについて、その特徴を以下の表にまとめます。

チャネルの種類 媒体、トポロジ データ速度 最大デバイス数 チャネル総延長最長距離 (注 2)

TP/XF-1250 ツイストペア線、 バス型

1.25Mbps 1 チャネルに 64 130m(バス長)

TP/FT-10 ツイストペア線、 バス型またはフリートポロジー

78Kbps 1チャネルに 64 2700m(バス型) 500m(フリートポロジ)

PL-20 電力線 5Kbps 制限なし 信号減衰により異なる

LONWORKS/IP (別名:IP-852)

IP 網 IP網に依存。例 100Mbs

1 ドメインに40(LNS3.0 の場合。注 1)

IP 網に依存。

(注 1:このドメインは後述の LONWORKS ネットワークの論理アドレスでのドメインを指します。2004年末リリース予定の次期 LNS では 1 ドメインに 255 台に拡張される予定です。)

(注 2:使用するケーブルの電気的特性などにより変化します。詳細は参考資料1を参照ください)

特に重要なのは、ツイストペア線を使用したケーブルのトポロジーの制約が無いフリートポロジーチャネル、TP/FT-10 です。このチャネルでは、どのような構成においてもツイストペア線のセグメントのどこにでもデバイスを接続することができます。スタブ長やデバイスの分離、ケーブルの分岐などについても特に制限がなく、ノード間の最長距離が 500m 迄と決まっているだけです。LONMARK 認定のチャネルやトランシーバに関する必要な情報はすべて、参考資料 1に記載されています。

ネットワークツールはネットワークの導入や設定、監視、制御、保守を行うためのソフトウェアです。このツールはNeuronチップに常駐させるか、あるいは携帯用コンピュータやPCなど、他のプラットフォームに導入して使用します。

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図 3 は LONWORKS システムのコンポーネントです。いくつかの種類の LONWORKS デバイスについてその内部構造を図解し、具体的な製品名も示しています。この図では、Neuron チップとトランシーバはそれぞれ「N」、「T」と表示されています。

LONWORKS ネットワーク内のデバイスの役割は、ほとんどの場合、制御対象となる物理的なシステムを構成する各コンポーネントの状態を検知し、それを制御することです。これらのデバイスは LONWORKS 制御デバイスと呼ばれ、センサーやアクチュエータ、あるいは外部の既存センサー・既存アクチュエータへの入出力インタフェースがさまざまな組み合わせで組み込まれます。このデバイスのアプリケーションプログラムは、ネットワーク上で値を送受信するだけでなく、検知した変数のデータを処理(たとえば単位変換や四則演算など)したり、PID ループ制御やデータのロギング、スケジューリングなどのロジックを制御したりします。図 3 には制御デバイスの例をいくつか示しています。

エシェロンの LonPoint AI-10 モジュールは A/D コンバータを 2 つ備えており、アナログ入力に接続した既存デバイス(4-20mA、抵抗値、または 0-10V のインタフェース)からの2つの信号をネットワークに接続できます。

ハッベルの H-Moss マルチセンサーモジュールは壁面設置型のユニットで、3 つのセンサーで温度(T:Temperature)、人の存在(O:Occupancy)、湿度(H:Humidity)を監視します。

ハネウェルの XL-10 VAV(可変風量)コントローラにはダンパアクチュエータのモーター(M:Motor)と空気差圧センサー(P:differential air-Pressure sensor)が組み込まれています。ネットワークを介して室温と設定値を取得し、PID シングルループ制御を行って室内を快適に保ちます。

エシェロンの LonPoint SCH-10 スケジューラモジュール*には電池でバックアップされた時計 IC と高度な設定が可能なステートマシンロジックが組み込まれており、LONWORKS システム全体または一部に対してスケジューリングやイベント駆動モードの制御を実行します。

* LonPoint SCH-10 スケジューラモジュールは 2004 年 6 月 30 日付けで販売を終了しています。

スケジュール制御機能は i.Lon100 インターネットサーバを使って行なうことができます。

i.LON100 の詳細は参考資料 18 を参照ください。

既存センサー

ゲートウェイ

外部システム

マルチセンサー

PCまたはラップトップ

図 3. LONWORKS デバイスの内部構造

ネットワークインタフェース

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エシェロンの LPR-10 などのルータデバイスを使用すると、1 つのチャネルから成るネットワークをさまざまな種類の通信媒体を使った複数のチャネルに接続し、より多くのデバイスをサポートすることができます。ルータでは Neuron チップが 2 つ相互接続されており、それぞれが接続されている 2 つのチャネルに対応したトランシーバを備えています。ルータは、ネットワークにおける論理的な操作に対しては完全に透過的ですが、必ずしもすべてのパケットを転送するわけではありません。たとえば LPR-10 などのインテリジェントなルータは、システムの設定情報を十分に認識したうえで、相手側への宛先を持たないパケットをブロックします。エシェロンの i.LON600 LONWORKS/IP サーバなどの、LonTalk パケットを IP パケットに包んで送り(カプセル化)、逆に受け取った IP パケットから LonTalk パケットを取り出すトンネリングという処理を行なう LONWORKS/IP ルータと呼ばれる種類のルータを使用すると、インターネットなどの広域 IP ネットワークを介して LONWORKS システムの接続距離を大幅に伸ばすことが可能です。

ネットワークインタフェースデバイスは、制御用のセンサーやアクチュエータを接続するデバイスではなく、PC や携帯用保守ツールなどの外部のホストコンピュータへの物理インタフェースを提供するデバイスです。このデバイスのアプリケーションプログラムは通信プロトコルとAPI(アプリケーションプログラムインタフェース)を提供し、ネットワークツールなどのホスト側プログラムが LONWORKS ネットワークにアクセスできるようにします。例えばエシェロンの PCLTA-21 LonTalk アダプタは、PC の PCI スロットに装着して使用するネットワークインタフェースデバイスです。このアダプタを PC の PCI バスに差し込むと、LNS や LonMaker インテグレーションツールなどのネットワークツールを利用してネットワークにアクセスできます。

ゲートウェイデバイスは、これまで利用してきた LONWORKS ではない既存の制御システムをLONWORKS システムにインタフェースするためのデバイスです。ゲートウェイデバイスは外部のシステムデバイスや通信バスに対応した物理インタフェースを備えています。このデバイスのアプリケーションプログラムは、外部システムで使われている通信プロトコルとインタフェースします。つまり、必要に応じて 2 つのプロトコルを相互に変換し、外部システムで利用しているコマンドベースのメッセージを、情報ベースの LONWORKS アプリケーションで使用するネットワーク変数に変換します。エシェロンからは EIA-232(旧 RS232C)の任意のプロトコルを使用する既存デバイスの情報を、LONWORKS ネットワークから読み書きできるようにする為の製品として PSG/3 Serial Gateway が提供されています。

1.4 LonTalk プロコルの基本的な機能

すべての LONWORKS デバイスに組み込まれる LonTalk 通信プロトコルは、その技術的プラットフォームの中核を担う機能です。このプロトコルが提供する一連の通信サービスを利用することにより、デバイスのアプリケーションプログラムはネットワークのトポロジーや他のデバイスの名称、アドレス、機能に関する情報を把握していなくても、ネットワークを介して他のデバイスとメッセージをやり取りできます。送信デバイスと受信デバイス間でメッセージの受信を確認する機能(ACKD サービス)、あるいはメッセージの暗号化認証機能(Authentication)、決められた時間内での応答を保証する優先度別配信機能(Priority)などが LonTalk プロトコルに定義され提供されています。リモートのネットワーク管理ツールからは、LonTalk プロトコルに定義された"ネットワーク管理サービス"を利用してネットワークを介してデバイスと通信を行い、ネットワークアドレスやパラメータを再設定したり、アプリケーションプログラムをダウンロードしたり、ネットワークの障害を報告したりできます。また、各デバイスが持つアプリケーションプログラムの開始・停止・リセットも可能になります。

LonTalk プロトコルが持つ機能の概要を以下に説明します。このプロトコルに関する包括的な説明が参考資料5,6 に記載されています。より詳細な説明は参考資料 4 に記載されています。

LonTalk は制御ネットワークに焦点を当てて開発された、オープンスタンダードとなっているパケットベースのシリアルプロトコルです。チャネル上のデバイスは交代でパケットを送信します。各パケットは可変長で、宛先情報や他のネットワークに関する情報だけでなく、アプリケーションレベルの情報も持っています。チャネル上のデバイスはすべて、チャネル上を流れる各パケットを参照し、自分宛てのパケットかどうかを確認します。自分宛ての場合はそのパケットを取り込み、ノードのアプリケーションプログラムで処理するデータが含まれていないか、あるいはネットワーク管理用のパケットかどうかを確認します。アプリケーション用のパケットが持つデータはアプリケーションプログラムに渡され、必要であれば送信元デバイスに受信確認メッ

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セージを送信します。ネットワーク管理用パケットの場合は、アプリケーションプログラムによる処理は必要なく、適切に処理されます。

LonTalk プロトコルを実装している Neuron チップをはじめとするすべてのプロセッサには、Neuron ID と呼ばれる世界で 1 つしかない重複しない 48 ビットのコードが割り当てられます。つまりすべての LONWORKS デバイスが、LonTalk プロトコルで使用する重複しない物理アドレスを持っています。ただし Neuron ID は通常、初期のネットワーク導入時とネットワークやデバイスの診断を行う場合にのみ使用されます。日々のネットワークの運用においては、論理ノードアドレス、グループアドレス、ブロードキャストアドレスなどの的なアドレス方式が使われます。

論理ノードアドレスはドメイン ID・サブネット ID・ノード ID から成り、ネットワークの導入時に定義します。1つのチャネルに接続された複数のデバイスは共通の1つのサブネット IDを持ち、1つのサブネット内のデバイスは、そのサブネット内で重複しないノード ID を持ちます。複数のサブネットがルータにより接続された集合をドメインと呼び、ドメインはドメインID を持ちます。ただし、異なるドメイン ID を持つサブネット・デバイス間では、論理的なアドレス方式では通信ができません。 したがって、1つのシステムとして連携して動作させるデバイス・サブネットには、共通のドメイン ID を割り付けます。ドメイン ID のサイズは0,1,3,6バイトの間で選択できます。サブネット ID は最大 255 個を1ドメイン内に定義できます。1つのサブネット内には最大 127 個のノード ID を定義できます。したがって、LONWORKS システムの 1 つのドメインには、最大で 32,385 のデバイスを含めることができます。

ブロードキャストアドレスは、ドメイン ID とサブネット ID だけを指定することでドメイン内の全てまたは、1つのサブネット内の全てのノードを宛先とするアドレスです。

エシェロンの LonMaker インテグレーションツールや、LNS をベースにしたサードパーティのネットワーク管理ツールでは、これらの論理的なアドレスの割り付けを自動的に行ないます。

ネットワークに送出される LonTalk パケットはすべて、送信元ノードの論理ノードアドレス(ソースアドレス)と送信先アドレスを保有しています。送信先アドレスは物理的な Neuron ID アドレスか論理ノードアドレス、グループアドレス、ブロードキャストアドレスのいずれかになります。

2 つ以上の独立した LONWORKS システムがある場合、それぞれに重複しないドメイン ID を持たせれば、同じ物理ネットワークを共有することが可能です。それぞれのシステム内のデバイスは、自分のドメイン ID を持つパケットにだけ応答し、他のドメイン ID を持つパケットはいっさい無視します。デバイスはまた、自分の Neuron ID 宛てに送信されたパケットにも応答します。この Neuron ID は通常、使用しているネットワーク管理ツールのみが把握している情報です。物理ネットワークを共有すると、当然のことながらパケット数が増加してネットワーク全体の応答時間に影響します。そのため、ネットワーク全体で調整しながら設計する必要があります。

グループアドレスを使うと、1つの送信パケットを、同じグループに属する複数のノードが受信することができます。 1つのノードは、サブネット ID・ノード ID と同時に複数のグループアドレスを持つことができます。1 つのドメイン内には最大で 255 のグループを持たせることができ、各グループには任意の数のノードが属することができます。ただし送信デバイスと受信デバイス間の受信確認(ACKD サービス)が必要な場合は、各グループに属せるノード数は 64 に制限されます。1つのノードは最大で 15 のグループに所属できます。

LonTalk プロトコルにはネットワーク変数(NV:Network Variable)という革新的な概念が実装されています。これにより、複数ベンダーの製品を使って相互運用性を実現する LONWORKSのアプリケーションプログラムの設計作業を大幅に簡素化でき、また、コマンドベースではない、情報ベースの制御システムの設計が促進されます。ネットワーク変数は、たとえば温度やスイッチの値(オン/オフ)、アクチュエータの位置情報などの任意のデータ項目で、特定のデバイスのアプリケーションプログラムがネットワーク上の他のデバイスから取得するデータ項目(つまり入力 NV)と、ネットワーク上の他のデバイスが使用可能なデータ項目(つまり出力 NV)があります。アプリケーションプログラムは、入力 NV がどこから入手した情報なのか、あるいは出力 NV がどこに知らされるのか、またそれらがどういう結果をもたらすのかを知る必要はありません。アプリケーションプログラムの処理で出力 NV の値が更新される場合、新しい値はメモリ上の特定の場所に書き込まれるだけです。ネットワーク上でその NV の値を必要とす

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る他のデバイスやデバイスグループの論理アドレスを把握できるように、バインディングと呼ばれる処理を行って LonTalk ファームウェアの設定作業が行われます。この LonTalk ファームウェアが、適切なパケットを組み立ててそれらのデバイスに送信します。同様に、アプリケーションプログラムが必要とする入力 NV の更新値を LonTalk ファームウェアが受信した場合、LonTalk ファームウェアはそのデータをメモリ上の特定の場所に書き込みます。アプリケーションプログラムは、その場所から常に最新のデータ値を取得できます。このようにバインディングという処理は、あるデバイスの出力 NV と他のデバイスやデバイスグループの入力 NV との間を論理的に接続する作業です。この接続は「仮想配線」と考えることができます。たとえばあるノードに物理的なスイッチがあり、「スイッチ オン/オフ」という出力 NV を持っていたとします。そして別のノードでは「ランプ オン/オフ」という入力 NV を使って電球を操作するとします。これら 2 つの NV をバインディングして接続を作成すれば、スイッチと電球を実際に配線するのと同じ機能効果が得られます。

NV を使って各アプリケーションが正しく相互運用できるようにするためには、システム内のデータを同じ方法で解釈する必要があります。たとえば、温度はすべて「摂氏」か「華氏」のいずれかに統一する必要があります。これを実現するために、標準的なネットワーク変数のタイプ(SNVT)と呼ばれる一般的なシステム変数が 100 以上定義され、公開されています。現在利用できる SNVT の一覧と詳細が参考資料 7 に記載されています。

1.5 ネットワークの設計と設定作業

システムインテグレータがお客様に制御システムを導入する際には、1. システム設計、2. ネットワークの設定、3. アプリケーションの設定、4. 導入という 4 つの段階を踏みます。それぞれの作業は、LonMaker インテグレーションツールなどの優れたツールを使用すると非常に効率的に行えます。

システム設計の作業には大きく分けて 2 つの段階があります。第 1 段階では LONWORKS デバイスを選択します。必要な入出力ポイントを備えたデバイス、既存の入出力ポイントに接続できるデバイス、そして PID ループやスケジューリングなどの必要な制御機能を実装するのに適したアプリケーションプログラムを持つデバイスを選択します。第 2 段階ではチャネルの適切な種類と数を決定し、それらを接続するルータを選択します。

ネットワークの設定では以下の作業を行います。

すべてのデバイス/デバイスグループにドメイン ID と論理アドレスを割り当てる

ネットワーク変数のバインディングを行ってデバイス間を論理的に接続する

チャネルのビットレートや受信確認、認証、優先サービスなど、各ノードで必要になる機能やパフォーマンスに応じて LonTalk プロトコルのパラメータを設定する

ネットワークの設定作業はかなり複雑になることもありますが、LONWORKS のプラットフォームを使用すれば、優れたツールを活用してこの複雑さを気にせずに作業することができます。たとえばエシェロンの LonMaker インテグレーションツールを使用すると、図面上にデバイスのアイコンをドラッグ・アンド・ドロップして接続するチャネルを選択するだけで、簡単にネットワークの物理設計が行えます。またネットワークの機能設計も、デバイスのアプリケーションで使用する機能ブロックを図面上にドラッグし、入力と出力を接続してどの機能ブロックでどのネットワーク変数を使用するのかを決めていくという単純な作業になります。

ネットワークの設定作業は、アドホック方式と事前設計方式のいずれかになります。アドホック方式では、ノードは既にネットワークに接続されて電源も投入された状態にあり、設定データを定義しながら、それをネットワークを介してダウンロードします。一方、事前設計方式では、ネットワーク設定ツールを使用してデータベースに集めた情報を、導入作業時にノードにダウンロードするというかたちになります。いずれの方式でも、設定ツールがデータベースを自動更新しますので、システム内の各ノードの設定情報はデータベースに正確に反映されます。

アプリケーションの設定は、適切な設定パラメータを選択し、各ノードのアプリケーションプログラムを必要な機能に合わせて設定する作業です。この設定作業の方法はデバイスのメーカーにより異なります。ほとんどのメーカーがネットワークを介してパラメータをダウンロードする方法に対応していますが、ハンドヘルドプログラマーなどの特殊なツールをデバイスに直接装

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LONWORKS IN BRIEF 11

着する方法を求めるメーカーもいくつかあるようです。各メーカーは LONWORKS Network Services(LNS)が提供するプラットフォームを利用して、グラフィカルな設定作業を可能にする、プラグインと呼ばれる使いやすいインタフェースを作成することができます。このプラグインは、いったん作成してしまえば他のどの LNS ベースのネットワークツールとも互換性を持ちます。たとえばエシェロンの LonPoint モジュールのアプリケーションはすべて、LNS で設定作業を行うためのプラグインを備えています。プラグインを備えたデバイスのネットワーク設定を LonMaker インテグレーションツールを使用して最初に定義・実行してしまえば、そのデバイスのアイコンを右クリックしてポップアップメニューから[Configure]を選択するだけで、アプリケーションのプラグインが LonMaker から速やかに起動します。

LONWORKS システムの導入作業では、チャネルで使用する物理的な通信媒体の設置、ルータなども含めた LONWORKS デバイスのチャネルへの接続、既存の入出力ポイントのデバイスへの接続を行います。また、LonMaker などのネットワーク導入ツールを使用してネットワーク設定データやアプリケーション設定データをデバイスにダウンロードする(デバイスのコミッション)作業も行います。アプリケーションプログラムを ROM に格納しないデバイスの場合、ネットワークツールはデバイス内の不揮発性 RAM(EEPROM やフラッシュメモリ)にアプリケーションプログラムをダウンロードすることができます。デバイスの導入作業は通常、コミッション作業とテストを 1 つずつ行うか、あるいはオフラインモードでコミッション作業を行っておき、その後オンラインモードにして 1 つずつテストするかのいずれかになります。

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LONWORKS IN BRIEF 12

2. LONMARK 相互運用性の概要

ここでは LONMARK International について説明し、LONWORKS デバイスの相互運用性を実現するために LONMARK International が規定する標準についても概説します。この節の読者は、前節の「LONWORKS 技術の概要」をよく理解している必要があります。重要な用語や概念は太字で示してあり、より詳細な技術文書についても言及しています。

2.1 はじめに

エシェロンが開発した LONWORKS 技術は、真の相互運用性を備えたデバイスやシステムの開発を実現します。ただし、LONWORKS 技術は通信媒体には依存せず、デバイスのアプリケーションプログラムを構造化する方法を規定しているわけでもありませんので、単に LONWORKS 技術を利用するだけでは、同じシステム内に存在する異なるメーカーの LONWORKS デバイスの相互運用性は保証されません。実際、LONWORKS 技術は車両制御システムやコンベアシステム、電話局の監視システムなど、独自に開発されたシステムでも広く採用されています。

多くの業界で真の相互運用性を備えたシステムに対する膨大な需要が見込まれているのを受けて、エシェロンは真の相互運用性を備えたシステム製品の開発に力を注いでいる LONWORKSユーザーのグループとともに、1994 年に LONMARK インターオペラビリティ協会(現LONMARK International)を設立しました。インターオペラビリティ(相互運用性)とは、特別なノードやネットワークツールを開発することなく、同じメーカーでも異なるメーカーでも、あらゆるメーカーが提供する複数のデバイス(ノードとも呼びます)を単一の制御ネットワークに統合できることを意味します。LONMARK は相互運用性を確保するための標準を作成し、この標準に沿って製品の認定作業を行い、相互運用性を備えたシステムのメリットを普及させることを目的とした組織です。LONMARK が認定した真の LONWORKS デバイス(つまり LONMARKデバイス)だけが、LONMARK のロゴを付けることができます。関心をお持ちのすべての企業が、LONMARK International の会員になる資格があります。会費はメーカーやシステムインテグレータ、エンドユーザーなどで異なります。会員に関する情報や現在の活動状況、公開されている標準などのさまざまな情報を LONMARK International の Web サイト(www.lonmark.org)から入手できます。また日本での活動状況については、LONMARK JAPAN の Web サイト(www.lonmark.gr.jp)から入手できます。

LONMARK では以下の 2 つの分野に重点を置いて標準の制定作業を行っています。

標準のトランシーバとそれを使用する対象となる物理チャネルの仕様

ノード用アプリケーションプログラムの構造化とドキュメンテーションに関する標準の定義

2.2 トランシーバと物理チャネルに関する標準

トランシーバや物理チャネルやケーブル種類に応じた総延長距離などに関する LONMARK 標準は、参考資料 1『LONMARK Layer 1-6 Interoperability Guidelines』に記載されています。この参考資料の中の「2.1 節 Standard Transceiver and Channel Types」の Table 1 には、標準の物理チャネルとそれに対応する認定トランシーバの一覧が記載されています。

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LONWORKS IN BRIEF 13

システムインテグレータが頻繁に利用するのは、TP/XF-1250(ツイストペア線-バス型、1.25Mbps)、TP/FT-10(ツイストペア線-フリートポロジー、78kbps)、PL-20(電力線、5Kbps)などの種類のチャネルです。チャネルの特徴と限界値を下表にまとめます。

チャネルの種類 媒体、トポロジ データ速度 最大デバイス数 チャネル総延長最長距離

TP/XF-1250 ツイストペア線、 バス型

1.25Mbps 1チャネルに 64 130m(バス長)

TP/FT-10 ツイストペア線、 バス型またはフリートポロジー

78Kbps 1 チャネルに 64 2700m(バス型) 500m(フリートポロジ)

PL-20 電力線 5Kbps 制限なし 信号減衰により異なる

LONWORKS/IP (別名:IP-852)

IP 網 IP 網に依存。例100Mbs

1 ドメインに40(LNS3.0 の場合。注1)

IP 網に依存。

(注 1:このドメインは LONWORKS ネットワークの論理アドレスでのドメインを指します。2004

年末リリース予定の次期 LNS では 1ドメインに 255 台に拡張される予定です。)

2.3 アプリケーションプログラムに関する標準

相互運用性を備えたデバイスのアプリケーションプログラムに関する LONMARK 標準は、参考資料2『LONMARK Application-Layer Interoperability Guidelines』に記載されています。このガイドラインは、情報システムの世界でコンピュータプログラミングの標準となっている「オブジェクト指向プログラミング」に基づいています。この方法論では、コードをモジュール化したセグメント(これをオブジェクトと呼びます)でアプリケーションプログラムを構成します。個々のオブジェクトは詳細にドキュメント化されている機能を実行し、厳格な入出力インタフェース仕様に従って他のオブジェクトと情報をやり取りします。必要なオブジェクトの作成がすべて終了するとアプリケーション設計の次の段階、つまり適切なオブジェクトを選択してそれらを接続する作業に移ります。

ノードにおける情報の入出力方法やネットワーク上の他のノードとの情報の共有方法に関する標準のフォーマットを定めることにより、LONMARK オブジェクトはアプリケーション層で相互運用性を確保する基盤を形成します。LONMARK オブジェクトは、入力や出力の標準的なネットワーク変数のタイプ(SNVT)を 1 つ以上まとめたかたちで定義され、オブジェクトの動作をネットワーク変数の値や一連の構成プロパティに関連付ける意味上の定義も持ちます。将来の拡張に備え、またメーカーごとに特徴を出せるように、LONMARK オブジェクトの定義は必須のネットワーク変数や任意のネットワーク変数、設定仕様などで構成されます。

LONMARK のガイドラインでは、汎用の LONMARK オブジェクトと LONMARK 機能プロファイルという 2 種類のオブジェクトを定義しています。汎用オブジェクトはさまざまな業界で多くの用途に用いられています。例としてはオープンループ・センサー・オブジェクトがあります。これは、LONMARK デバイスに統合または接続されたいかなる形態のセンサーからの値でも、ネットワーク上で利用可能にするオブジェクトです。機能プロファイルは HVAC(暖房換気空調)や照明システムなど、特定の用途で使用するオブジェクトです。例としては VAV(可変風量)コントローラの機能プロファイルがあります。これは、ネットワークから室温の値を取り込んでPID 制御アルゴリズムを実行し、ダンパのアクチュエータを操作して室温を調整するオブジェクトです。LONMARK では HVAC(暖房換気空調)やセキュリティ、照明、半導体製造システムなどをはじめとするさまざまな機能分野において、関心のあるメンバーを集めて作業グループを組織し、機能プロファイルを設計・認定・公開しています。LONMARK オブジェクトに関する資料はすべて、LONMARK の Web サイトから入手できます。

LONMARK オブジェクトが他の LONMARK オブジェクトと情報をやり取りする際に使用するのは SNVT(標準的なネットワーク変数のタイプ)だけです。ただし多くの場合、オブジェクトをカスタマイズして特定のシステム用途に対応することも必要です。LONMARK のガイドラインでは、標準的な構成プロパティのタイプ(SCPT:「skip-it」と発音します)やユーザー定義

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LONWORKS IN BRIEF 14

の構成プロパティのタイプ(UCPT:「you-keep-it」と発音します)と呼ばれるデータ構造を定義しています。これは、ドキュメンテーションに関する標準や、ネットワークツールを使用してデバイスにデータをダウンロードする際に使われるネットワークメッセージのフォーマットに関する標準を定めたものです。SCPT は、ヒステリシスバンドやデフォルト値、下限値/上限値、ゲイン設定、遅延時間など、さまざまな種類の機能プロファイルで使用される広範なパラメータ用に定義されています。適切な SCPT があれば、適宜使用できます。参考資料 7 に含まれる『LONMARK SCPT Master List』を参照してください。適切な SCPT が見つからない場合は、メーカーは自社オブジェクト設定用の UCPT を定義できます。ただし、UCPT を定義する場合は標準フォーマットに従ってリソースファイルに文書化する必要があります。

このように、LONMARK デバイスのアプリケーションプログラムは 1 つまたは複数のLONMARK オブジェクトで構成されます。各オブジェクトは他のオブジェクトに依存することなく設定・使用できますので、ネットワーク上のあらゆるオブジェクトと接続して必要なシステムレベルの機能を実現することが可能です。それぞれの LONMARK デバイスはノードオブジェクトも備えています。このオブジェクトにより、ネットワーク管理ツールを使用して自身のステータスやノード内の他のオブジェクトのステータスを監視することができます。

LONMARK のガイドラインでは文書化のルールが厳密に定められており、LONMARK デバイスを使用する際に独自仕様の設定ツールは必要ありません。LONMARK デバイスはすべて自己文書化機能を備えている必要があります。これにより、エシェロンの LonMaker インテグレーションツールをはじめとするネットワーク管理ツールは、システムにデバイスを接続したり、デバイスを設定して管理したりするために必要なすべての情報を、ネットワークを介してすべてのLONMARK デバイスから確実に入手できるようになります。また、個々の LONMARK デバイスは外部参照ファイル(専用のフォーマットを持つ PC テキストファイル。拡張子は.XIF)を備えている必要があります。これにより、デバイスを物理的に接続する前にネットワークツールを使用してネットワークデータベースを設計・設定しておき、デバイスの設置後にコミッション作業ができるようになります。LONMARK では、すべての LONMARK デバイスの外部参照ファイルを協会の Web サイトでデータベース化しています。

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3. LONPOINT の概要

ここではエシェロンの LonPoint とその関連製品の概要を説明します。本資料を読む方は前節の「LONWORKS 技術の概要」と「LONMARK 相互運用性の概要」をよく理解している必要があります。重要な用語や概念は太字で示してあり、より詳細な技術文書についても言及しています。

3.1 はじめに

エシェロンの LonPoint は、ビルオートメーションや産業用オートメーションなどの用途の高度に分散化されたピア・ツー・ピア型制御ネットワークにおいて、システムインテグレータがLONWORKS 技術の利点を実現できるように設計されている一連の製品群です。以下の製品があります。

LonPoint デバイスおよびルータ LONMARK により相互運用性を認証されたLONMARK 認定デバイスです。アプリケーションプログラムが付属しており、スケジューリングや信号処理、PID ループアルゴリズムなどのさまざまな分散制御機能を提供します。また、標準の入出力インタフェースを備えており、LONWORKS 以外のセンサーやアクチュエータをあらゆるシステムに簡単に組み込めるようにします。

LonMaker インテグレーションツール Microsoft Visio のグラフィカルユーザーインタフェースを利用した優れたネットワーク管理ツール。Lonpoint を含む一般的 LONMARKデバイスや LONMARK 認証を受けていない他の LONWORKS デバイスから成る分散制御ネットワークの設計やコミッション作業、保守に使用します。

図 1 は分散制御システムのコンポーネントを示しています。分散化されたピア・ツー・ピア

型の制御ネットワークで LonPoint システムや他の LONMARK デバイスを使用しています。

スケジューラ

インタフェース

ルータ ルータ

ユニットコントローラ

端末センサー インタフェース

(既存の入出力

アクチュエータ

モジュール

ポイントに接続)

ネットワーク

図 1. システムのコンポーネント

LonPoint デバイスや LonMaker インテグレーションツール統合ツール以外にも、システムには通常 LONMARK が認定したセンサーやアクチュエータ、LONMARK が認定した端末ユニットコントローラ(たとえば VAV ユニットコントローラやルーフトップユニットコントローラなどのパッケージ型コントローラで、複数のセンサーやアクチュエータ、シングルループ制御アルゴリズムを 1 つのノードにまとめた製品)、ヒューマン・マシン・インタフェース(HMI)用のソフトウェアツール、PC やラップトップをネットワークに接続するネットワークインタフェースデバイスなども使用されます。

以下の各セクションでは、LonPoint 制御デバイスや LonPoint ルータ、LonMaker ツール、エシェロンから提供されているネットワークインタフェースデバイスについて説明します。

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3.2 LonPoint デバイス

LonPoint は LONMARK 認定デバイスです。旧式の階層化された制御アーキテクチャにおいては集中処理型のコントローラで処理していた制御機能のすべてを、このデバイスが行います。さらに、既存の入出力デバイス(LONWORKS 以外のセンサーやアクチュエータ)を物理的・機能的に LONWORKS システムに接続できるようにします。LonPoint 制御デバイスは、フリートポロジー型のツイストペア線に接続するための TP/FT-10 トランシーバを備えています。それぞれのデバイスのアプリケーションプログラムは種々の機能ブロック(FB:Functional Block)から構成されます。この機能ブロックは、基本的な制御機能を実行する LONMARK オブジェクトです(詳細は参考資料 2 を参照)。これらの機能ブロックは、システムに接続されている他のLONMARK デバイスが持つ LONMARK オブジェクトとともにひとまとまりのオブジェクトを形成します。LonMaker ツールを使用してこれらのオブジェクトを設定・接続し、必要なシステム機能を実現します。

既存の入出力ポイントへの接続機能を提供する LonPoint デバイスは以下の5つです。

AI-10 アナログインプットインタフェースモジュール - 16 ビットアナログ入力点を 2 点装備。0-24mA または 4-20mA、0-10V、100-15kΩの出力信号仕様を持つセンサーを接続可能。アプリケーションプログラムは個々の入力に対応するアナログセンサーの機能ブロックを備え、他にも表 1 に示すような機能ブロックを持ちます。

AO-10 アナログアウトプットインタフェースモジュール - 12 ビットアナログ出力点を 2点装備。0-20mA または 0-10V の入力信号仕様を持つアクチュエータを接続可能。アプリケーションプログラムは個々の出力に対応するアナログアクチュエータの機能ブロックを備えています。PID ループコントローラのオブジェクトなど、他にも表 1 に示すような機能ブロックを持ちます。

DI-10 デジタルインプットインタフェースモジュール - 4 点のデジタル入力を装備。ドライ接点または電圧が DC0-32V の出力信号仕様を持つセンサーを接続可能。アプリケーションプログラムは個々の入力に対応するデジタルセンサーの機能ブロックを備え、他にも表 1 に示すような機能ブロックを持ちます。

DO-10 デジタルアウトプットインタフェースモジュール - 4 点のデジタル出力を装備。電圧が DC0-12V の入力信号仕様を持つアクチュエータを接続可能。アプリケーションプログラムは個々の出力に対応するデジタルアクチュエータの機能ブロックを備え、他にも表 1 に示すような機能ブロックを持ちます。

DIO-10 デジタルインプット・アウトプットインタフェースモジュール - 2点のデジタル出力(30VAC または 24VDC のリレー接点出力)、2 点のデジタル入力(5V から31Vまたはドライ接点入力)を装備。表 1 に示すような機能ブロックを持ちます。

SCH-10 スケジューラモジュール*はシステムの動作を調整するためのデバイスで、リアルタイムクロックやカレンダー、システムスケジューラなどの機能を提供します。バッテリーでバックアップされる内蔵のリアルタイムクロック用チップとカレンダー用チップが提供する入力を、「リアルタイムクロック」機能ブロックで使用します。他に機能ブロックが 2 つ用意されており、システムやサブシステムで時間ベースの制御や入力ベースの制御を行えます。時間ベースの制御には「イベントスケジューラ」機能ブロックを利用します。システムのスケジュールを時間帯別や日にち別、特定の月日を指定して定義できます。「モードジェネレータ」機能ブロックは時間ベースのイベントとネットワーク内の特定のアナログ制御点・デジタル制御点の現在値または時系列値の両方を使用するような、高度な機能を持つ制御アルゴリズムを設計するときに使用します。たとえば HVAC(暖房換気空調)システムでは、スケジューラモジュールを使用して朝のウォームアップ、通常運用、夜間の浄化運転、緊急時用のオーバーライド状態などという具合に、システムの一連の運用モードを定義します。これらの制御は時間帯別に、またシステム内の変数の値に応じて行います。複数のスケジューラモジュールを連結して冗長性を持たせたり、より細かくスケジュールを制御したりすることも可能です。

* LonPoint SCH-10 スケジューラモジュールは 2004 年 6 月 30 日付けで販売を終了しています。SCH-10 のスケジュール制御機能は、i.LON®100 インターネットサーバーのスケジュール

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制御機能を使って置き換えることができます。i.LON®100 の詳細は参考資料 18 を参照ください。

機能ブロック DI-10 DO-10 DIO-10 AI-10 AO-10 SCH-10 デジタル入力 4 2 デジタル出力 4 2 アナログ入力 2 アナログ出力 2 アナログ機能ブロック 4 2 2 4 2 デジタルエンコーダ 2 2 2 2 2 PID コントローラ 2 タイプトランスレータ 6 6 6 4 2 リアルタイムクロック 1 イベントジェネレータ 1 モードジェネレータ 1

表 1. LonPoint インタフェースモジュールの機能ブロック

機能ブロックは柔軟性に富んだいくつかの種類に分かれており、表 1 に示したように個々のLonPoint インタフェースモジュールに合わせて、それぞれの機能ブロックが組み込まれています。

アナログ機能ブロック - 数学的な計算や論理計算、エンタルピー計算などを実行します。アナログネットワーク変数を最大 2 つ、デジタルネットワーク変数を 1 つ使用します。計算結果の出力ネットワーク変数はアナログかデジタル(true/false)になります。

デジタルエンコーダ機能ブロック - 最大 4 つまでのデジタルネットワーク変数をもとにBoolean 論理関数を実行し、デジタル(true/false)出力ネットワーク変数、またモード出力変数を作成します。

PID コントローラ機能ブロック - 標準的な PID(Proportional-Differential-Integral:比例-積分-微分)ダイナミック制御ループを実行します。アナログネットワーク変数を 2つ(設定値およびプロセス変数)使用してアナログ出力変数(制御変数)を 1 つ生成します。

タイプトランスレータ機能ブロック - 単位変換やマッピングにより、データを標準的なネットワーク変数のタイプ(SNVT)から別のデータタイプに変換します。異なる SNVTを使用する別の LONWORKS デバイスと接続するときに有用です。

LonPoint デバイスで使用する機能ブロックはどの種類でも柔軟性に富んでおり、さまざまな用途に合わせて設定することができます。どの種類の機能ブロックも(スケジューラモジュールの機能ブロックは除く)LNS に対応したプラグインを備えています。プラグインは LonMakerツールから直接起動でき、グラフィカルなインタフェースによる設定作業を可能にする使い勝手のよいプログラムです。図 2 は「デジタルセンサー」プラグインのユーザーインタフェースです。ディバウンス時間、反転、パルス幅、遅延、オーバーライド値などのオプション項目が簡単に設定できます(LonMaker ツールでは設定を変更した機能ブロックを特別なオブジェクトとして保存しておいて何度でも再利用できるため、個々のインスタンスを最初から設定する必要はありません)。スケジューラモジュールは別途、LNS 対応のグラフィカルなアプリケーションプログラムを備えています。こちらもシミュレーション機能を持ち、システム設計者は時間をかけずにスケジューリングのアルゴリズムをテストして正確な運用スケジュールを設定できます。Lonpointデバイスが持つ機能ブロックやLNSプラグインの詳細は参考資料11を参照ください。

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図 2. 「デジタルセンサー」プラグインのユーザーインタフェース

実際の LonPoint デバイスのパッケージには、低コストで簡単に導入と保守を行えるような最新のノウハウが詰め込まれています。電気系統の設置作業を行う前に電気技師が配線作業とケーブル類のテストを行えるように、2 つの部分に分けたユニークなデザインを採用しています。技術者はノードの設定作業などに時間を回すことが可能となります。ベースプレート(タイプ 1)に取り付けられた両モジュール(図 3)はサイズ 4x4 インチの汎用電気器具ボックスかエシェロンの EuroBox(欧州仕様電気器具ボックス)に収容し、壁や DIN レールに設置します。電源とネットワークの配線は各ベースプレート内でループ状に取り回され、ネットワークの運用を妨げずにホットプラグ方式でモジュールを交換できます。モジュールへの供給電圧は 16V から 30V、交流または直流になります。ネジ留め端子のコードは色分けしてあり、極性に左右されない電源配線やネットワーク接続を行うことで配線ミスを防止します。また、フリートポロジートランシーバは最も使い勝手の良い経路に配線できるようにデザインされています。正面パネルのジャックにそのままツイストペア線をつないでネットワークにアクセスしますので、設定作業や保守作業のためにネットワークにアクセスするときは時間を要しません。

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正面パネルにはモデルと版が記録されたバーコード、そして取り外し可能なステッカーが 2枚貼られています。このステッカーには Neuron ID と呼ばれる重複しない 48 ビットのコードが記載されています。ビルに設置したときやシステム設計の計画時などに、特にノードが手の届かない場所にある場合などは、この Neuron ID のステッカーを利用して導入時間を短縮できます。

図 3. LonPoint 制御デバイスのパッケージ

3.3 LonPoint ルータ

LPR モジュールと呼ばれる LonPoint ルータは、2 つのツイストペア線チャネルをインタフェースするデバイスです。たとえば 78kbps のビットレートで稼動する TP/FT-10 フリートポロジーチャネルと 1.25Mbps のビットレートで稼動する TP/XF-1250 バックボーンチャネルを接続するときに使用します。以下の 6 つのモデルがありますが、それぞれ異なる種類のチャネルが組み合わされています。

ルータ名 モデル チャネルの種類

LPR-10 42100 TP/FT-10 と TP/FT-10

LPR-11 42101 TP/FT-10 と TP/XF-78

LPR-12 42102 TP/FT-10 と TP/XF-1250

LPR-13 42103 TP/XF-78 と TP/XF-78

LPR-14 42104 TP/XF-78 と TP/XF-1250

LPR-15 42105 TP/XF-1250 と TP/XF-1250

* TP/XF-78チャネル対応製品は、過去に構築されたネットワークの保守部品としてのみ販売しており、新規ネットワーク構築の場合は、TP/FT-10 チャネルをお使いください。

LonPoint 制御モジュールと同様に、LPR モジュールもグラフィカルなインタフェースによるLNS プラグインを LonMaker ツールから直接起動して設定作業を行えます。実際のパッケージも次の 2 点を除いて LonPoint 制御モジュールと同じです。1 つはベースプレートが異なり、タイプ 2 を使用します。このタイプはチャネル接続を 2 つ収容できます。もう 1 つの違いは正面プレートに正面パネルジャックを 2 つ備えている点です。これは両方のチャネルにアクセスできるようにするためです。Lonpoint ルータの詳細は参考資料 12、参考資料 13 を参照ください。

3.4 LonMaker インテグレーションツール

LonMaker インテグレーションツールはオープンで相互運用性を備えた、マルチベンダ対応LONWORKS制御ネットワークの設計や導入、保守に使用するソフトウェアパッケージです。LNSネットワークオペレーティングシステムをベースにしたこのツールは、クライアントサーバー型の優れたアーキテクチャを持ち、ユーザーインタフェースには Microsoft 社の Visio を採用して

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います。つまり、分散制御ネットワークの設計やコミッション作業、保守作業を行うのに十分な機能を持ち、保守作業のツールとして現場に備えておける経済性も持ち合わせています。

LNS ネットワークオペレーティングシステムは、LONWORKS ネットワーク上の相互運用性を備えたアプリケーションをサポートする標準のプラットフォームです。LNS では複数のアプリケーションや複数のユーザーが同時にネットワークを管理し、ネットワークとやり取りすることができます。つまり複数の導入担当者が、LonMaker ツールを使用してネットワーク上のデバイスのコミッション作業を並行して行うことが可能です。

LonMaker ツールは LonPoint デバイスをはじめとする LONMARK 認定デバイスはもちろん、他の LONWORKS デバイスも総合的にサポートしています。このツールを使用すると、標準の機能プロファイルや設定など、LONMARK の特徴を最大限に活用できます。LonPoint の機能ブロックや LONMARK の機能プロファイルは LonMaker 図面内ではグラフィカルな機能ブロックとして表現され、制御システムのロジックの視覚化と文書化を容易にします。

ユーザーは使いやすい、CAD ソフトのような感覚で制御システムを設計できます。Visio の優れたシェイプ作図機能を利用することにより、直感的でシンプルな方法でデバイスを作成できます。ネットワークの物理設計を行う際の基本的な操作は、作成するデバイスで使用するシェイプを図面上にドラッグし、接続するチャネルを指定するという手順になります。論理設計の場合は、機能ブロックまたは他の LONMARK オブジェクト(デバイスのアプリケーションプログラムを含む)を図面上にドラッグし、個々のオブジェクトの出力 SNVT を他のオブジェクトの対応する入力 SNVT に接続するという手順になります。図 4 に LonMaker ツールのユーザーインタフェースを示します。

図 4. LonMaker ツールのユーザーインタフェース

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LonMaker ツールには LONWORKS ネットワークや LonPoint デバイスに使用できる有用な基本シェイプが数多く用意されており、シェイプをカスタマイズする機能も備えています。カスタムシェイプは 1 つのデバイスや機能ブロックのようにシンプルなものから、デバイスや機能ブロック、それらの間の接続などをあらかじめ定義した完全なサブシステムのような複雑なものまでさまざまです。サブシステムを新規に追加したい場合は、カスタマイズしたサブシステムのシェイプを新しい図面ページにドラッグするだけで簡単に作成できます。この機能は複雑なシステムを設計するときにとても便利です。

事前設計方式でシステムを設計する場合は、ネットワークの設計は通常オフサイトで行います。つまり、現場に LonMaker ツールを持ち込んでネットワークに接続することはありません。ただし現場でネットワークを設計することもできます。この場合は LonMaker ツールをネットワークに接続してコミッション作業を行います。この機能は特に、規模が小さめのネットワークで有用です。また、デバイスの追加や取り外し、交換などが定期的に生じるネットワークでも有用です。

導入担当者が複数デバイスのコミッション作業を並行して行えれば、ネットワークの導入に要する時間を短縮することができます。デバイスを識別する方法は、サービスピンを使用する方法、バーコードを読んで Neuron ID を取得する方法、あるいは Neuron ID を手入力する方法のいずれかです。ネットワーク変数や構成プロパティをブラウズするための統合アプリケーションを備えているため、テストも容易です。デバイスの個々の機能ブロックをテストしたり、有効/無効、オーバーライドなどの操作を管理ウィンドウから行えます。また、デバイスに対して[Test]や[Wink]などのコマンドを実行したり、[Online]、[Offline]などのコマンドでデバイスの状態を操作したりできます。

監視や管理制御のための HMI アプリケーションについては、LonMaker ツールはさまざまな他社製品と併用できます。たとえばワンダーウェア社の InTouch、ナショナルインスツルメンツ社の LabVIEW や BridgeVIEW などのオペレータインタフェースパッケージがあります。さらに、LonMaker ツールは AutoCAD ファイルのインポートとエクスポートにも対応しており、現況図面を作成することができます。統合型のレポートジェネレータも備えており、ネットワークの設定に関する詳細なレポートを作成することができます。LonMaker ツールの詳細は参考資料 9、参考資料 10 を参照ください。

3.5 エシェロンのネットワークインタフェースデバイス

エシェロンでは以下のようなさまざまなネットワークインタフェースデバイスを提供しており、PC やラップトップなどのホストコンピュータを物理的にネットワークに接続して、さまざまな機能を利用できます。

PCLTA-21 PCI ネットワークアダプタ - LONWORKS ネットワーク用 32 ビット PCI アダプタカード。Windows XP、Windows 2000、Windows98 のプラグアンドプレイ機能に対応。TP/XF-1250、TP/XF-78、TP/FT-10、TP/RS-485 トランシーバのいずれかを搭載。

PCC-10 PC カード - タイプ II PC カード(旧 PCMCIA)対応製品。ノート型 PC の PCカードスロットに装着して使用する。TP/FT-10 トランシーバ内蔵。オプションのケーブルポッドを使用して TP/XF-1250 や TP/XF-78 のチャネルに接続可能。

SLTA-10シリアルLonTalkアダプタ -パソコン等ホストコンピュータのシリアルポートを利用して、ホストコンピュータから TP/XF-1250、TP/XF-78、TP/FT-10、TP/RS-485チャネルへの接続を可能にする。標準の EIA-232 シリアルインタフェースを装備。PCやラップトップをはじめとするホストコンピュータの COM ポートに接続。また、標準のヘイズ社互換モデムを両端に設置して、LONWORKS ネットワーク側のイベントをトリガーにしてリモートのホストコンピュータにダイアルイン/ダイアルアウトすることも可能。

i.LON 10 イーサネットアダプター、i LON100 インターネットサーバ - LNS を実行する PC がリモートネットワーク・インターフェース(RNI: Remote Network Interfaces)を使うことを可能にします。RNI は PC のイーサネットポートやモデムから IP 網を経由して接続した i.LON10/100 をネッ

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トワーク・インタフェースとして使用します。 RNI を直接 LONWORKS/IP チャネルに参加させることはできません。 i.LON10/100 は内蔵のイーサネットポートまたは、外付けの市販の汎用シリアル接続モデムを利用して IP 網に接続します。

i.LON 600 LONWORKS/IP サーバ - LNS を実行する PC がヴァーチャル・ネットワーク・インターフェース(VNI: Virtual Network Interfaces)を使うことを可能にします。VNI はLONWORKS/IP チャネル上のデバイスとして PC を接続する、ソフトウエアで実現した仮想ネットワークインタフェースです。i.LON 600 は LONWORKS/IP ルータとしても機能し、複数の i.LON 600 は互いに LonTalk パケットを IP 経由でルーティングすることができます。i.LON600 は内蔵のイーサネットポートを利用して IP 網に接続します。

各ネットワークインタフェースの詳細は参考資料 14~19 を参照ください。

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4. 参考資料

以下の参考資料がありますので参考にしてください。エシェロン社が発行してる文書は、エシェロン社に直接依頼することもできます。

1. 『LONMARK Layer 1-6 Interoperability Guidelines』 (LONMARK International の Web ページhttp://www.lonmark.org/products/guides.htm にて公開。また、LONMARK JAPAN http://www.lonmark.gr.jp/では会員向けに、日本語訳を配布しています。)

2. 『LONMARK Application-Layer Interoperability Guidelines』 (LONMARK International の Web ページhttp://www.lonmark.org/products/guides.htm にて公開。また、LONMARK JAPAN http://www.lonmark.gr.jp/では会員向けに、日本語訳を配布しています。)

3. 『Echelon の Web ページ:LNS NetWork Operating System 』 (http://www.echelon.com/lns において、LNS UserGuides や LNS 3 の特徴、FAQ(良くある質問と回答)へのリンク集があります。)

4. 『CEA-709.1 Revision B Control Network Protocol Specification』 (LonTalk プロトコルを定義する公式文書。http://www.global.his.com にて実費で配布。)

5. 『Introduction to the LONWORKS System』 (http://www.echelon.com/support/documentation/Manuals/default.htm にて公開。3章に Lontalk プロトコルの説明があります。)

6. 『ニューロンチップ TMPN3150/3120 データブック』 (東芝セミコンダクター社のニューロンチップのマニュアル(日本語)、http://www.semicon.toshiba.co.jp/prd/ics/db07_doc/07524D1AK/intro.html にて公開。8 章に Lontalk プロトコルの説明があります。)

7. 『LONMARK Resource Files』 (最新の SNVT の一覧表「LONMARK SNVT Master List」ファイル名:SNVT.pdf、 SCPT の一覧表「LONMARK SCPT Master List」ファイル名:SCPT.pdf、が含まれています。LONMAK International の Web ページhttp://www.lonmark.org/products/guides.htm にて公開。)

8. 『LonMaker for Windows ユーザーズガイド』(078-0168-02B)(http://www.echelon.co.jp/support/downloads.html にて入手できます。日本語。2004年 9 月現在、製品の最新は LonMaker ver3.13A ですが、本資料は古い LonMaker Ver2.0用のものになっていますので、大まかな流れや概念の参考としてご覧ください。正式には、次の英語版を参照ください。)

9. 『LonMaker Users Guide』(078-0168-02G)(これ以降の資料は断わりのない限りエシェロン社の Web ページ http://www.echelon.com/support/documentation/default.htm にて入手できます。)

10. 『LonPoint Application and Plug-In Guide』(078-0168-02)

11. 『LonPoint Module Hardware and Installation User's Guide』(078-0166-01)

12. 『LonPoint LPR Router Modules Datasheet』(他にも LonPoint 各製品ごとのデータシートがあります。)

13. 『LonWorks PCLTA-21 PCI Interface User's Guide』(078-0271-01)

14. 『LonWorks PCC-10 PC Card User's Guide』(078-0155-01)

15. 『SLTA-10 Adapter and PSG/3 User's Guide』(078-0160-01)

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LONWORKS IN BRIEF 24

16. 『i.LON 600 LonWorks/ IP Server User Guide 』(078-0272-01)

17. 『i.LON100 インターネットサーバー ユーザーズガイド』(078-0196-01A) (エシェロンジャパンの Web ページ http://www.echelon.co.jp/support/downloads.html にて入手できます。日本語。)

18. 『i.LON10 Ethernet Adapter User's Guide』(078-0195-01)

©2004 Echelon Japan K.K. 本書は米国エシェロン・コーポレーションが発行した『LONWORKS IN BRIEF』を、エシェロン・ジャパンにて日本語訳し、

また生産終了になった製品やその後発売された製品についての情報を加えたものです。本書と原文の間に生じるいかな

る相違に関しても当社が保証するものではなく、かような相違が発生した場合には原文の解釈に従うものとします。