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圃場での根圏への酸素供給の効果の検証 植物栄養学講座4年 尾山千夏 概要 酸素は植物の生育に必要不可欠ですが、植物の根圏環境は容易に酸素不足に陥ります。根圏における酸素欠 乏は、養分の吸収を妨げ、根の正常な発達の低下、根圏の好気性微生物の働きの低下などを引き起こします。 そこで、酸素ガスを強制的に根圏に通気しながら作物栽培(エアインジェクションシステム)を行い、植物の 根圏環境の改善を図ります。根圏への酸素供給が作物の生育や養分吸収、根圏微生物に及ぼす効果を明らかに します。今年度は、この栽培方法を用いて特に生育が改善される作物を選択することを目的とし、明瞭な効果 の見られる作物種においてより詳細に根圏土壌の調査を行います。 場所:北大オンコ内圃場のビニルハウス内 使用植物:(イネ科)オオムギ (ナス科)トマト (マメ科)ダイズ (アブラナ科)アブラナ (ユリ科)タマネギ (ウリ科)キュウリ (アカザ科)ホウレンソウ エアインジェクションとは… 植物に水と共に空気を供給する灌漑法。本実験では、タンクに溜めた水にマイクロバブル(直径 50 μm以下 の超微小気泡)発生装置で酸素を混入させて酸素濃度を上げる方法をとっています(Fig 1.)。通常の水の酸素濃 度は 6~8 mg/L に対してマイクロバブル水での酸素濃度は 35~40 mg/L にもなります。これを土中に埋設し た灌水チューブを通して灌漑することで作物の根元に酸素を供給します。その結果、根からの酸素吸収や好気 微生物の活動を活性化させることで、収量増加や品質向上が期待されています。 Fig1. マイクロバブルを発生させている様子 Fig2. ビニルハウス内の様子 (白くなっているのが分かります) 奥に見える白いのがタンク。土が濡れているように みえる所の下に灌水チューブが埋まっています)

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圃場での根圏への酸素供給の効果の検証 植物栄養学講座4年 尾山千夏

概要 酸素は植物の生育に必要不可欠ですが、植物の根圏環境は容易に酸素不足に陥ります。根圏における酸素欠

乏は、養分の吸収を妨げ、根の正常な発達の低下、根圏の好気性微生物の働きの低下などを引き起こします。そこで、酸素ガスを強制的に根圏に通気しながら作物栽培(エアインジェクションシステム)を行い、植物の根圏環境の改善を図ります。根圏への酸素供給が作物の生育や養分吸収、根圏微生物に及ぼす効果を明らかにします。今年度は、この栽培方法を用いて特に生育が改善される作物を選択することを目的とし、明瞭な効果の見られる作物種においてより詳細に根圏土壌の調査を行います。 場所:北大オンコ内圃場のビニルハウス内 使用植物:(イネ科)オオムギ (ナス科)トマト (マメ科)ダイズ (アブラナ科)アブラナ

(ユリ科)タマネギ (ウリ科)キュウリ (アカザ科)ホウレンソウ エアインジェクションとは… 植物に水と共に空気を供給する灌漑法。本実験では、タンクに溜めた水にマイクロバブル(直径 50 μm以下

の超微小気泡)発生装置で酸素を混入させて酸素濃度を上げる方法をとっています(Fig 1.)。通常の水の酸素濃度は 6~8 mg/L に対してマイクロバブル水での酸素濃度は 35~40 mg/L にもなります。これを土中に埋設した灌水チューブを通して灌漑することで作物の根元に酸素を供給します。その結果、根からの酸素吸収や好気微生物の活動を活性化させることで、収量増加や品質向上が期待されています。

Fig 1. マイクロバブルを発生させている様子 Fig 2. ビニルハウス内の様子 (白くなっているのが分かります) (奥に見える白いのがタンク。土が濡れているように

みえる所の下に灌水チューブが埋まっています)