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JASS 18 塗装工事標準仕様書改定の趣旨 ――2013 月改定―― 建築工事標準仕様書 JASS 18(塗装工事)は本文が 1955 年(昭和 30 年)に決定され,その解説 を含めて 1959 月に第版が刊行された後,第版が 1964 月,第版が 1968 月,第 版が 1976 10 月,第版が 1989 月,第版が 1998 月,第版が 2006 11 月に発行 されており,50 年以上にわたり継続的な改定を経てきたものである.これらの改定においては, 新たな塗装仕様や技術の開発および適用対象となる材料に関する JIS の制定や改正への対応が図ら れてきた. 特に,2006 11 月発行の第版においては,グローバルな観点から社会的な問題となってきた 地球環境の保全や人間の健康安全への対応を図り,新たな塗装仕様を採用し,それらの内容を解説 している. 具体的な背景として,2000 月には本会で「地球環境・建築憲章」が制定され,2003 には日本建築仕上学会で仕上げ工事を対象とした「環境宣言」が提言されている.また,2001 月には国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)が施行され,特定 調達品目として公共工事の中の品目分類に「塗料」が取り上げられている.さらに,化学物質等安 全データシート(MSDS)の交付や,PRTR(対象化学物質の環境中への排出量等の把握及び届け 出等)が義務付けられるようになってきた. また,2003 月にはシックハウス症候群対策の規制を盛り込んだ改正建築基準法が施行され, クロルピリホスとホルムアルデヒドが規制されて室内空気質による健康安全に対する影響が配慮さ れている. さらに,2006 月には 2010 年度までに 2000 年度排出量の 30%削減を目指した VOC 排出規 制を含んだ改正大気汚染防止法が施行され,環境保全に関する法規制が大きく推進されて,積極的 な取組みが定着しつつあるのが現状である. 建築工事の中でも塗装工事は,環境汚染や健康被害が懸念される有機溶剤や重金属等を含む材料 を使用しており,地球環境の保全や人間の健康安全が大きな社会問題として取り上げられている状 況下では,話題に上ることが多くなっている. 2006 年の JASS 18 改定以降,環境に対する配慮は資源循環や地球温暖化防止などの観点も含め て,さらに強く求められている. 以上のような変遷および適用対象となる材料に関する JIS が改正,制定,廃止,統合が大きく推 進されたことを受けて,本会では 2011 月に JASS 18 の改定作業に着手して年間での検討を 予定していたが,その緊急性に鑑みて検討作業を推進して,今回の第版発行に至っている.主な 改定内容は,以下のとおりである. ) 本仕様書の使用者である設計者,施工管理者,専門工事業団体および材料製造者団体に対 するアンケートを実施して,その結果に基づいて建築工事における塗装仕様としての必要

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JASS 18 塗装工事標準仕様書改定の趣旨――2013年3月改定――

 建築工事標準仕様書 JASS 18(塗装工事)は本文が 1955年(昭和 30年)に決定され,その解説

を含めて 1959年6月に第1版が刊行された後,第2版が 1964年8月,第3版が 1968年5月,第

4版が 1976年 10月,第5版が 1989年2月,第6版が 1998年1月,第7版が 2006年 11月に発行

されており,50年以上にわたり継続的な改定を経てきたものである.これらの改定においては,

新たな塗装仕様や技術の開発および適用対象となる材料に関する JIS の制定や改正への対応が図ら

れてきた.

 特に,2006年 11月発行の第7版においては,グローバルな観点から社会的な問題となってきた

地球環境の保全や人間の健康安全への対応を図り,新たな塗装仕様を採用し,それらの内容を解説

している.

 具体的な背景として,2000年6月には本会で「地球環境・建築憲章」が制定され,2003年3月

には日本建築仕上学会で仕上げ工事を対象とした「環境宣言」が提言されている.また,2001年

4月には国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)が施行され,特定

調達品目として公共工事の中の品目分類に「塗料」が取り上げられている.さらに,化学物質等安

全データシート(MSDS)の交付や,PRTR(対象化学物質の環境中への排出量等の把握及び届け

出等)が義務付けられるようになってきた.

 また,2003年7月にはシックハウス症候群対策の規制を盛り込んだ改正建築基準法が施行され,

クロルピリホスとホルムアルデヒドが規制されて室内空気質による健康安全に対する影響が配慮さ

れている.

 さらに,2006年4月には 2010年度までに 2000年度排出量の 30%削減を目指したVOC排出規

制を含んだ改正大気汚染防止法が施行され,環境保全に関する法規制が大きく推進されて,積極的

な取組みが定着しつつあるのが現状である.

 建築工事の中でも塗装工事は,環境汚染や健康被害が懸念される有機溶剤や重金属等を含む材料

を使用しており,地球環境の保全や人間の健康安全が大きな社会問題として取り上げられている状

況下では,話題に上ることが多くなっている.

 2006年の JASS 18改定以降,環境に対する配慮は資源循環や地球温暖化防止などの観点も含め

て,さらに強く求められている.

 以上のような変遷および適用対象となる材料に関する JIS が改正,制定,廃止,統合が大きく推

進されたことを受けて,本会では 2011年4月に JASS 18の改定作業に着手して3年間での検討を

予定していたが,その緊急性に鑑みて検討作業を推進して,今回の第8版発行に至っている.主な

改定内容は,以下のとおりである.

(1) 本仕様書の使用者である設計者,施工管理者,専門工事業団体および材料製造者団体に対

するアンケートを実施して,その結果に基づいて建築工事における塗装仕様としての必要

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可否を検討したうえで,採用する塗装仕様を選定している.

(2) 適用する材料の品質規格である JIS が廃止された塗装仕様は削除することを原則としてい

るが,建築塗装として不可欠なものは複数の製造所における製造の継続を確認したうえで,

日本建築学会材料規格を制定して塗装仕様を残している.

(3) 法規制が改正されたものは内容を詳細に解説しており,特に化学物質等安全データシート

(MSDS)は,GHS の定義を受けて 2012年3月に安全データシート(SDS)と改称されて

おり,その旨を解説している.

(4) 金属系素地面に対するさび止めペイントについては,JIS の廃止や廃止予定を考慮して,

有害な鉛・クロム系顔料を含むさび止めペイントは,全て削除している.一方,JIS K

5674(鉛・クロムフリーさび止めペイント)には2種(水系)が制定されたため,つや有

合成樹脂エマルションペイント塗りの下塗り用塗料として採用している.

(5) 環境負荷低減を目的として,弱溶剤系塗料を用いる塗装仕様を独立させて明確な位置付け

としている.

(6) JIS K 5658(建築用耐候性塗料)については一括した塗装仕様にすると,JIS に規定され

る等級区分では品質レベルが不明確になることから,2液形ポリウレタンエナメル塗り,

アクリルシリコン樹脂エナメル塗りおよび常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗りに分けて,

塗装仕様を示している.

(7) 環境負荷の軽減および JIS の制定や廃止,建築塗装としての必要性を考慮して,金属系素

地面に対する塗装仕様から,アルミニウムペイント塗り,アクリル樹脂エナメル塗り,2

液形エポキシ樹脂エナメル塗り,多彩模様塗料塗りの4種類を削除している.一方,弱溶

剤系アクリルシリコン樹脂エナメル塗りと弱溶剤系常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗りを

新たに採用して,9種類の塗装仕様としている.

(8) セメント系素地とせっこうボード系素地面に対する塗装仕様についても,(5)と同様な理

由からアクリル樹脂ワニス塗り,塩化ビニル樹脂エナメル塗り,アクリル樹脂エナメル塗

り,2液形エポキシ樹脂エナメル塗りおよび合成樹脂エマルション模様塗料塗りの5種類

を削除している.一方,弱溶剤系アクリルシリコン樹脂エナメル塗りと弱溶剤系常温乾燥

形ふっ素樹脂エナメル塗りを新たに採用して,14種類の塗装仕様としている.

(9) 木質系素地面に対する塗装仕様については,フタル酸樹脂ワニス塗り,アクリルラッカー

つやなしクリヤ塗り,フタル酸樹脂エナメル塗り,ラッカーエナメル塗り,多彩模様塗料

塗りを削除して,9種類の塗装仕様としている.

(10) 付録1「塗装仕様の選び方」では,従来は工場における塗装仕様を含めていたが,今回の

改定では,本仕様書の本文に取り上げられている塗装仕様に限定している.

(11) 近年,都市部のヒートアイランド現象の緩和や省エネルギー対策を目的として実用化され,

需要が増加している高日射反射率塗料は,改修工事での採用が多く,JASS の対象である

新築工事では適用が少なく,仕様が標準化されていないことから,付録4において材料の

紹介にとどめている.

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 以上のように,本仕様書は世界的規模における社会問題として大きな注目を集め,規制の厳格化

が進められている地球環境の保全と人間の健康安全に対する配慮を前進させるとともに,法規制や

規則等および JIS の制定や改正との整合を図るようにしている.さらに,昨今の研究成果および建

築塗装における実態を反映して,最新の内容に改めたものである.

 建築工事における環境配慮およびより一層の品質向上と合理化に対して,本仕様書を積極的にご

活用いただくことを期待するとともに,会員ならびに関係各位からのご叱正を仰ぐ次第である.

   2013年3月

日本建築学会

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建築工事標準仕様書制定の趣旨と執筆方針

(1) 日本建築学会は,建築工事標準仕様書を制定し社会に対して刊行する.この仕様書は,

JASS(Japanese Architectural Standard Specification)と略称し,工事種別毎に章名をつけ

た番号を付する.

(2) 日本建築学会が建築工事標準仕様書を刊行する目的は,建築物の施工(一部設備等の製作・

施工を含む)に際して,要求目標の設定やそれを具体化する技術的手段に関する標準モデル

を示すことにより,わが国で造られる建築物の品質水準の確保,使用材料・構(工)法の標準

化に資することにある.それによって発注者・設計者・監理者・施工者が,標準技術の内容

に関して共有することが期待される.

(3) 建築工事標準仕様書の直接の用途は,設計者が具体的建築工事の仕様書を作成する際に参考

とすることにある.しかし設計者以外の監理者,施工者,メーカー,発注者に対する教育・

啓発に使用されることも期待される.

(4) 建築工事標準仕様書の本文は,工事請負契約図書を構成する設計図書の一部として使用・引

用できるものとする.

(5) 建築工事標準仕様書は,中立性を保ちながら合理的・経済的な技術水準を示すものとする.

また,その内容は会員間に広く合意を持って受け入れられるものとする.

(6) 建築工事標準仕様書は,技術に関する研究の進展,使用材料・構(工)法に進歩などを反映す

るものとし,もって本会の活動成果を社会に還元するのに役立たせる.したがって,仕様書

は必要に応じて改定するものとする.

(7) 建築工事標準仕様書は,実際の建築物に適用することを前提にしている以上,法令に適合す

るものとする.また,公的な諸規格をできる限り引用するものとする.

(8) 建築工事標準仕様書は,異なる工事種別間で整合のとれた体系を保つことを原則とする.

(9) 建築工事標準仕様書の本文に対する解説を別途付する.解説は,教育・啓発に役立つものと

する.

2001年 11月

日本建築学会 材料施工委員会

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 本会は,去る大正 12年に建築施工技術の向上を図るため,委員会を設けて,仕様書の標準化に

着手致しました.以来昭和 16年までの間に,建築主体工事に関しては 16の標準仕様書が作られ逐

次会誌をもって発表されたのであります.その間においても技術の進歩,材料の変遷等に即して,

改正が企てられましたが,当時緊迫化を辿りつつあった内外の諸情勢は,それを果さしめないまま

遂に終戦を迎えたので,仕様書の改正を断念し,委員会も廃止して終ったのであります.

 終戦後の混乱無秩序は,応急需要と相俟って,低劣な質の建築生産がなされて,真の建築復興の

将来は実に暗澹たるものでありました.しかるに進駐軍施設の建築需要が盛んになるに及んで,否

応なしに海外技術の移入が行なわれるようになって,これが戦時中に低下したわが建築技術の恢復

に多大の刺戟を与えたことは事実として認めない訳には行かなかったのであります.昭和 24年頃

からは,国力も稍恢復を見せたので,従って建築物の質的改善の要請が起って参り,翌 25年5月

には,建築基準法が制定実施に移されて質の向上が法的にも要求されるようになりました.

 それに先だって,いわゆるビルブームの兆が現われ始めましたが,25年2月建築制限がほとん

ど廃止されてからは,永らく抑制下にあったビル建築が一斉に勃興したので,これに対処するため

にも,施工技術の高度化が要求されるに至ったのであります.こればかりでなく,わが国が戦争の

ために空白にした 10年間と,この間の海外における建築技術の著しい進歩に鑑みても,当然施工

技術の合理的改善を行わなければならない情勢にあったのであります.即ち経済性を基調に,移入

技術の応用,わが国における研究成果の活用等によって,簡易化・機械化を図ることが当面の重要

な課題となって来たのであります.

 本会においては,これらの重要性を考慮し,昭和 26年5月には,標準仕様書の全面的更改と材

料規格の調査を目的とする「材料施工規準委員会」を設け,広く建築界各層の技術者および設備技

術者等約 230名を委員に御依頼して発足願ったのであります.

 幸に委員長始め委員各位の熱誠なる御努力が実を結び,逐次発表を見るに至りましたことは建築

界のためにも,誠に欣ばしいことであります.この仕様書が一段階となって,今後益々施工技術の

進歩改善が期待される点は決して尠くないと信じます.

 本会においても,本事業が建築界に大きな期待をもたれていることを察知致しまして,28年度

事業としてこの仕様書による講習会を全国的に催し,速かな普及に資することに致しました.その

ため解説の執筆など委員各位の御多忙を知りつつも相当御無理を願った点の多くあることを恐縮に

存じております.

 本書の刊行に当りまして,委員各位の御尽力はさることながら,これを御支援御協力せられまし

た会員初め官民各方面の職場に対しましては深甚な謝意を表しますとともに,この仕様書の普及実

行に一層の御協力をたまわらんことを望んで己まない次第であります.

昭和 28年 11月

日本建築学会

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「建築工事標準仕様書」(JASS)の発刊に際して

 標準仕様書を作成することは,施工標準を決めようとすることであります.即ち合理的で経済的

な施工の一定標準を定め,これが普遍化を期待し,それによって一般建築物の質の向上を図ろうと

するのが,その目的であります.

 先ず,その根本的方針としては,技術の進歩に即応し,新材料の利用,規格の尊重,新決定用語

の採用によって,時代に適合し,しかも飛躍に過ぎることのない様,官庁と謂わず,民間と謂わず,

建築界全体を通じて使用し得られる仕様書の決定版を得ようとするところに,目標を置いたのであ

ります.

 この仕様書を成るべく短期間にまとめたく思ったためと,また専門中の専門知識を動員するため

に,調査委員会の構成は,細分科制を採り,14の分科会を設け,独り建築主体工事に限らず機械,

電気などの設備工事をも含めた 33章に亘る工事別仕様書の調査執筆に着手したのであります.

 審議の方法は,前記 14の分科会の外に,主査も参加する運用調整委員会を設け,分科会で作ら

れた夫々の原案を更に運用調整委員会にかけて,精粗・軽重などについての分科会相互間の均衡を

考え,総合的に検討を加え,その結果を,広く建築界の輿論に問うため,会誌に発表するほか,全

支部を始め全国に亘り 65ヶ所の連絡機関を設けて,忌憚のない御意見を求めたのであります.そ

れ等の結果は,再びこれを委員会に戻して,再検討を行ない,斯くして得た最終案を,本決定に運

ぶような方法をとったのであります.

 幸に委員各位には公私共に御多忙であるにも拘らず,全く献身的な努力を傾けられまして,御蔭

をもって,昨 27年8月号の会誌から逐次原案を発表することができたのであります.本書に載せ

た仕様書は上記の方法によって得た最終本決定の一部であります.

 未だ全部の完成には到りませんが,一応成果をあげたものをもって学会が講習会を全国的に開か

れることになったため,原案作成委員の方々に重ねてその解説の執筆を煩わしました.時間の関係

もあって,それは執筆委員各自の責任において書かれたものでありますが,これによって,細目に

ついての制定の意図,内容などが正しく御理解願えることと思います.本委員会としては,将来仕

様書の完璧を期するために,実施上の御経験などを御申越戴いて,改善に改善を重ねる考えであり

ますから,今後とも格別の御協力を御願い致したいのであります.

 なお,委員長を扶けられて,非常な御尽力を払われた委員各位を始め資料の御提供に,あるいは

連絡機関として成案に対しても貴重な御意見を御寄せ下さった全支部及び官公庁,建築事務所,建

築業者等の方々に対し,この機会をかりて厚く御礼申上げる次第であります.

昭和 28年 11月

              日本建築学会 材料施工規準委員会

委員長 下 元   連

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日本建築学会建築工事標準仕様書制定調査方針

(目   的)

1.建築の質的向上と合理化を図るための適切な施工標準を作ることを目的とし,次の点を考慮

して標準仕様書を体系づけた.

a.建築設計を拘束したり,統制したりしないが,統一して差支えない程度のものはなるべく

一定するように努めた.しかしそのため,施工技術の最低限度を割らないよう注意した.

b.施工技術の専門細分化が近来特に甚しい傾向にあるので建築技術者を始め多数の専門家の

密接な協力を得て,各専門分野の技術の有機的な繋りを保つと同時にそれ等専門技術の建築

技術への浸透を仕様書を通じて図ることにした.

c.技術に関する研究の進展,材料の進歩等に即応し,検討を経て成果を得たものは,なるべ

く速かに仕様書に織り込み,研究とその成果の活用とを直結して技術に進歩性をもたせた.

(用   途)

2.広く各方面の意見を徴して,官公庁,民間を問わず中央と地方とに拘らず各種構造の建物の

いずれにも適応できるものとした.

(規格,軽量,法令)

3.度量衡はメートル法を主とし,その他の計量が慣用されているものについては,括弧内に併

記した.

4.日本工業規格(JIS),日本標準規格(JES),その他の規格にあるものは規格を用い,公定

規格のないもので特に業界規格等を必要とするものについては,こだわらずに採用して,それ

等との調整と活用とを図った.なお場合によっては,暫定的に日本建築学会規格をも作った.

5.建築基準法その他法令に関係ある事項は,法令に定められたところと背馳しないようにし

た.

(体裁,略称)

6.建築工事における一般的かつ共通的なものについて記述し,特殊な材料,工法,寸法ならび

に工法その他が数種類あるものはこれを羅列し,各工事毎に特記仕様書を附加してこれに設計

者が所要の事項を記入することにした.

7.この仕様書は JASS(Japanese Architectural Standard Specificaton)と略称し,章名の番号

と併記して用語の簡明化を図った.

          「建築工事標準仕様書(JASS)」は学術,技術の進歩,材料の改善に即応せしめて,絶えず改訂を行おうとするものであるから,本仕様書を使用された経験による御意見を本会に御寄せ願い,その完璧を期すことに特に御協力願いたい.

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――JASS 18 塗装工事およびその解説について――

 日本建築学会材料施工規準委員会では,昭和 26年以来,建築工事標準仕様書(JASS)の制定のための調査研究がつづけられ,既に各種工事の JASS が発表されている. 塗装工事の仕様書は,この JASS 章編成の中で第 18章に当るので JASS 18としている.この原案の作成調査は,材料施工規準委員会の第7分科会が担当し,慎重に審議を重ね,昭和 27年 12月号の建築雑誌にその案を発表した.その後この案による実施例や,仕様書連絡機関(建築学会各支部,官公庁,建築設計事務所,建設会社等に,常時 JASS の検討を依頼している),塗装業界の意見に基づき若干の訂正を行なうとともに,仕様書記述の重複を省くための編成替えを行ない,昭和 30年になって決定した JASS 18の本文を発表した.引続いてその解説書の執筆に着手した. この解説は一応執筆委員の責任において,本文作成中特に問題となった点に重点をおいて本文を逐次解説したが,塗料とその施工技術の急激な進歩,発達も考慮の上分科会の検討を経て決定した. 従来建築塗装の仕様は明確を欠く点が多く,したがって施工の段階において困惑する場合があったので,塗装をできるだけ科学的に分解記述することによって,建築塗装の進歩を期することが本文作成当初からの方針であった. この JASS 18と解説によって塗装工事の適正な施工が広く普及することを念願する次第である.   昭和 34年3月

日本建築学会 材料施工規準委員会 第7分科会

――JASS 18 塗装工事仕様および解説の改訂について――

 建築工事仕様書の JASS 18塗装工事は昭和 30年に決定され昭和 34年にその解説が刊行された.昭和 36年,塗装の日本工業規格の改正に伴い,昭和 38年4月本仕様の第1回改訂が行なわれ,解説の改訂版が刊行された.昭和39年以降,塗料のJIS改正のつど仕様の改訂も行なわれてきたので,新旧の混乱を防ぐため,従来の仕様と解説に代えて,今回第2回目の解説改訂版を刊行することとした.   昭和 43年5月

日本建築学会 材料施工委員会委員長 西     忠  雄

JASS 18 塗装工事標準仕様書改訂の趣旨

 本書の前版は昭和 43年に刊行されたものであるが,その後建築業界の活発な建築事情に伴い,新しい塗料が種々開発使用されるようになったので,JASS 18担当の第7分科会においては塗装界の現状に合致させるよう仕様の刷新を計画し,今回の改定版を刊行することとなった. 今回の仕様の改定の主要な点は,コンクリート面に対する塗装のためエポキシ・ウレタンなどの合成樹脂塗料の塗装および新しく JIS で制定された吹付材の仕上げに対する仕様を追加したことである. また,この改定を機会に各種塗装仕様の配列順序を透明塗装・不透明塗装の順に改め,さらに現在不用となった水性塗装塗の仕様を削除した. 上記吹付材の仕上げに関しては左官工事としても扱われているのであるが,塗装工事として扱われる場合も多い現状に鑑がみ,JASS 18にとり入れてある.今後吹付工事の仕様が別個に吹付工事小委員会によって JASS 23として制定されることを付記しておく.   昭和 51年5月

日本建築学会 材料施工委員会 第7分科会

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JASS 18 塗装工事標準仕様書改定の趣旨――1989年2月改定版――

 JASS 18塗装工事は,昭和 27年 12月に初回の仕様書案が建築雑誌に発表されて以来,昭和 30年に本文が定まり本文の解説が昭和 34年に完成した.その後,塗装材料に関連する日本工業規格が大幅に改訂されたのに伴って,昭和 38年4月に改定が行われ,その解説が昭和 43年5月に完成している.第2回目の改定は,昭和 51年5月に行われたが,これは新しい塗装工事として,エポキシ樹脂やウレタン樹脂などの合成樹脂系塗装が著しく進展してきたことと,吹付け工事が JASS 23として新しく独立した仕様書となることの2つの主な理由で改定が行われた. 今回の改定は,その時以来の改定となったためかなり大幅な改定となったがその主な改定の要点は次のとおりである. 1.塗装の対象となる材料を,1)金属系,2)セメントせっこう系,3)木質系およびプラスチック系の4種に大別し,金属系素地を鉄鋼,亜鉛めっき鋼およびアルミニウム合金に区別して,それぞれに適応する塗装工法を選定した.また,セメント・せっこう系素地をコンクリート,セメントモルタル,プレキャストコンクリート部材,ALCパネル,石綿スレート,パルプセメント板,石綿セメントけい酸カルシウム板,せっこうプラスターおよびせっこうボードの9種の材料に指定して,これらに適応する塗装工法の選定を行った.木質系素地は,造作材,集成材,積層材,合板,繊維板,パーティクルボードとし,プラスチック系素地は,硬質塩化ビニル樹脂と繊維強化プラスチックの成形材料とした.こららの材料以外のものに塗装する場合は,特記によることとした.したがって,塗装しようとする素地が4種類のどれであるかが決まれば適用できる塗装工法の仕様の全体像が把握できるのでより合理的に塗装工法を選定することができるようになった. 2.塗装工事の範囲が今まではやや不明確なところがあって,混乱があったが,今回の改定で,塗装工事は素地調整から上塗り完了までの範囲であることを定めることができた.特に素地の性状は塗装の仕上がりや耐久性に大きく影響するので,素地に関する他業種との役割分たんと境界部分を明確にすることの必要性が叫ばれていただけに工事の範囲の設定ができたことは特筆されることであろう. 3.塗装工事に用いられる用語の中には,その他の塗付け工事の用語と同じ字句ではあるが,その意味が異なっていたりして情報の伝達が円滑に行われないことがあった.今回の改定では用語の定義を一層明確にするとともに略号に関しても一定のルールで造ることを提案して誤解の起こらないように努めた. 4.塗装材料の著しい発展に伴って各種の塗料や下地処理材料が出現してきているので,これらのうちから全国的な視野でみて標準的な形で安定している塗装工法を追加することができた.金属系素地では,塩化ゴム系エナメル塗り,2液形ポリウレタンエナメル塗りおよび常温乾燥ふっ素樹脂エナメル塗り,コンクリート・モルタル系では透明仕上げで素地の肌をそのまま生かした仕上げを充実させるとともに,軀体保護性能に大きな期待が寄せられている2液形ポリウレタンエナメル塗りをはじめ,常温乾燥ふっ素樹脂エナメル塗りや防水形の塗りなどを新しく追加している.木質系の塗装は独特のテクスチュァーを失わずに仕上げるクリヤーやラッカーなどの中から改良された塗装が追加されている.プラスチックを素地とする塗装は今回新しく追加されたもので,塩化ビニル樹脂エナメル塗りと2液形ポリウレタンエナメル塗りである. 5.素地ごとの塗装工事の工程を全面的に見直して,必ず行う工程と省略する場合のある工程とを塗装種別ごとに明確に区分した.金属系素地の工程ごとの作業における塗り付けられる塗膜の厚さを明記して確実な塗装の仕上がりが期待できるよう配慮した. 6.塗装材料に関する日本工業規格の制定状況を考慮して,新規の規格を積極的に採用するとともに,JIS 規格に制定されていないが,品質を規定する必要のある塗装材料に関しては,学会規格を制定して,その品質の標準化を図った. 7.工場内だけで行う塗装工法“例えば焼付塗装など”は,本文から削除して,付録に移し,なるべく仕様書が複雑にならないように心掛けた. 8.溶剤等を使用する工事であることから安全管理に関する内容を充実した. 9.素地調整が塗装工事の出来栄えに決定的な役割をはたすことを踏まえて,これらに関する内容の充

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実を図った. 10.施工管理技術とともに技能士の積極的な活用が望ましいことを強調した. 以上のように,この仕様書の内容は,過去に日本建築学会で発表された研究成果をベースとし,これにわが国の塗装工事に用いられる各種材料や塗装設計の現況を調べ,工事監理や施工管理の実態,さらには現在の塗装工事業の技能水準などを総合的に考慮して改定したもので,この仕様書の活用によってわが国建築の一層の質的向上と合理化に役立つよう考慮されて検討されたものである.改定の意図をくみ取り,この仕様書が十分に活用されることを期待するとともに会員諸賢の絶え間ない叱正をお願いする次第である.   1989年2月

日本建築学会

JASS 18 塗装工事標準仕様書改定の趣旨――1998年1月改定――

 建築工事標準仕様書の JASS 18(塗装工事)は本文が 1955年に決定され,1959年にその解説が刊行された.その後,1963年に第1回の改訂が行われ,さらに 1968年に第2回目の改訂がなされ,1976年の改定を経て現行の JASS 18は 1989年に改定されたものである.その改定以降,塗装工事小委員会は塗付け工事運営委員会の下に JASS 15(左官工事)および JASS 23(吹付け工事)との調整を図りながら,改修工事の重要性に鑑みて「外壁改修工事の基本的考え方(湿式編)」の作成を検討して,1994年に発刊した. また,前回の改定以降における世の中や社会の動きに対応して,JASS 18の内容についても以下のような理由から改定の必要性が指摘され,塗装工事小委員会での検討を継続して今回の改定をみた.(1) 塗料に関する JIS 規格の制・改定が行われ,それらとの整合を図る必要がある.(2) 塗り仕上げに対する耐久性向上や地球環境を重視する等世の中の動きに対応した仕様を取り入れる

必要がある.主要な改定内容は,以下のとおりである.(1) 新しい材料規格の JIS を取り入れて,記述内容の整合を図った.(2) 環境問題(溶剤規制,水系材料の採用,消防法,PL法,リサイクル等)への対応を図って,新たな仕様を取り上げたり,解説の記述内容に盛り込んだ.

(3) 2節「工法一般」を「施工一般」に改め,仕様書としての内容に限定した.(4) 適用素地は,金属系(鉄鋼,亜鉛めっき鋼),セメント系(コンクリート,セメントモルタル,プ

レキャストコンクリート部材,ALCパネル,けい酸カルシウム板,ガラス繊維補強セメント板,押出成形セメント板)およびせっこうボードならびに木質系とした. アルミニウム合金やプラスチック系には適切な現場塗装仕様がないため,適用素地から削除した.セメント系では,適用実績が少ない石こうプラスターとパルプセメント板を除き,ガラス繊維補強セメント板,押出成形セメント板への塗装仕上げが増加していることから,適用素地として取り上げた.

(5) 新材料の取込みは慎重に審議して優れたものは積極的に採用し,使用の実態に鑑みて陳腐化した材料や仕様は削除した. 金属系素地面塗装では,適用実績に鑑みてラッカーエナメル塗り,塩化ゴム系エナメル塗り,エポキシエステル樹脂エナメル塗り,シリコーン樹脂耐熱塗料塗りを削除して,アクリルシリコン樹脂エナメル塗りを新規採用した.また,亜鉛めっき鋼に対する付着性に優れる下塗りとして,変成エポキシ樹脂プライマーを新たに採用した.さらに,2液形エポキシ樹脂プライマーの放置時間の上限を考慮して,この塗料を下塗りに適用する2液形ポリウレタン塗り,アクリルシリコン系樹脂エナメル塗りおよび常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗りの工程には,下塗り3回目としてエポキシ樹脂雲母状酸化鉄塗料を適用することにした. セメント系素地面塗装では,アクリルシリコン樹脂ワニス塗り,常温乾燥形ふっ素樹脂ワニス塗り,非水分散形アクリル樹脂エナメル塗り,アクリルシリコン樹脂エナメル塗りを新規採用した.また,外装薄付け仕上塗材塗り,内装薄付け仕上塗材塗り,複層仕上塗材塗り,防水形合成樹脂エマルショ

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ン系複層仕上塗材塗りの仕様は JASS 23と重複するため,JASS 18から除外した. また,セメント系素地面塗装における素地調整に用いる材料には,新たに規格化された JIS A 6916セメント系下地調整塗材と合成樹脂エマルション系下地調整塗材を適用した. 木質系素地面塗装では,スパーワニス塗り,油性調合ペイント塗りを削除した.

(6) 塗料の種類は非常に多いため,要求性能に応じた適切な選択ができるように,塗装仕様の選び方に関する付録を作成した.

(7) JIS 規格が未制定の材料については日本建築学会規格を制定して,付録とした.また,素地に対する JIS 規格が未制定の材料については当該材料の工業会もしくは協会団体による規格を採用して,付録とした. 以上のように,本仕様書は過去に報告された研究成果に基づくとともに,近年大きな社会問題として注目を集めている地球環境問題や労働安全重視への積極的な対応を図り,さらにはわが国における建築塗装の実態を考慮して改定したものである.この仕様書を建築分野におけるより一層の品質向上と合理化に対して積極的にご活用いただくことを期待するとともに,会員ならびに関係各位のご叱正を仰ぐ次第である.

   1998年1月日本建築学会

JASS 18 塗装工事標準仕様書改定の趣旨――2006年 11月改定――

 建築工事標準仕様書 JASS 18(塗装工事)は本文が 1955年(昭和 30年)に決定され,その解説を含めて 1959年に刊行された後,第2版が 1964年に,第3版が 1968年に,第4版が 1976年に,第5版が 1989年に,第6版が 1998年に発行されており,継続的な改定を経てきたものである.これらの改定においては,適用対象となる材料に対する JIS 規格が制定や改正をされ,新たな塗装仕様や技術が開発されたため,それらへの対応が図られてきた. 1998年に発行された第6版には,当時の環境問題(溶剤規制,水系塗料の採用,消防法,PL法,リサイクル等)への対応を図り,新たな仕様を採用したり,解説にそれらの内容を記述したりしている. しかし,1998年の改定を終えた頃から,地球環境の保全に対する意識が世界的な規模で急速に高まり,特に環境負荷の低減に配慮することが重要視されるようになってきた,そのような社会的な動向を受けて,2000年6月には本会で「地球環境・建築憲章」が制定され,2003年3月には日本建築仕上学会で仕上げ工事を対象とした「環境宣言」が提言されている.また,2001年4月には国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)が施行され,特定調達品目として公共工事の中の品目分類に「塗料」が取り上げられている.さらに,「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)」に基づき,化学物質等安全データシート(MSDS)の交付や対象化学物質の環境中への排出量等の把握及び届け出等が義務付けられるようになってきた. また,2003年7月にはシックハウス症候群対策の規制を盛り込んだ改正建築基準法が施行され,クロルピリホスとホルムアルデヒドが規制されることになり,室内空気質による健康安全に対する影響が配慮されている. さらに,2006年4月には 2010年度までに 2000年度排出量の 30%削減を目指したVOC排出規制を含んだ改正大気汚染防止法が施行され,環境保全に関する法規制が大きく推進されている現状である. 建築工事の中でも塗装工事は,環境汚染や健康被害が懸念される有機溶剤や重金属等を含む材料を使用しており,地球環境の保全や人間の健康安全が大きな社会問題として取り上げられている昨今では,話題にのぼることが多くなっている. このような社会的な背景から,本会では 1998年に JASS 18(塗装工事)と JASS 23(吹付け工事)を改定した直後に,塗装工事小委員会と吹付け工事小委員会が一体になり,社会的な動向や塗装・吹付け工事に関連する技術動向を整理した「環境負荷低減に配慮した塗装・吹付け工事に関する技術資料」を 2003年

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3月に発刊している. その発刊を受けた今回の JASS 18改定においては,特に環境保全と健康安全に対する意識の向上を背景として,以下のような点を主体として改定作業を実施した.(1) 上記の 2003年3月に本会で発刊した「環境負荷低減に配慮した塗装・吹付け工事に関する技術資

料」の成果をできる限り反映して,弱溶剤系塗料や水系塗料を適用した新たな仕様を採用した.一方で,適用実績が減少している溶剤系塗料を適用した塗装仕様を一部削除した.

(2) 法規制や各省の指針等に配慮して,室内空気中に含まれる化学物質濃度測定の項を1節「総則」の中に新設して,シックハウス症候群の問題およびホルムアルデヒド発散建築材料等に関連する情報を解説に加えた.

(3) 重金属系顔料の使用を回避したさび止めペイントとして,新たに JIS 化された鉛・クロムフリーさび止めペイントを適用する塗装仕様を金属系素地面に対して採用した.

(4) 室内空気質に配慮して,屋内使用の金属系素地面に対して水系さび止めペイントを下塗りとするつや有合成樹脂エマルションペイント塗りの塗装仕様を新設した.さらに,環境負荷軽減を目的として,金属系素地面に対する弱溶剤系2液形ポリウレタンエナメル塗りを新設した.一方,使用が減少している溶剤系塗料を適用する塩化ビニル樹脂エナメル塗り,2液形厚膜エポキシ樹脂エナメル塗り,2液形タールエポキシ樹脂塗料塗りを削除した.

(5) セメント系素地およびせっこうボード系素地面に対して,従来から採用していた非水分散形アクリル樹脂エナメル塗りの名称を新設された JIS に合わせて,アクリル樹脂系非水分散形塗料塗りに改めた.

(6) セメント系素地およびせっこうボード系素地面に対して,環境負荷軽減を目的とした弱溶剤系2液形ポリウレタンエナメル塗りとポリウレタンエマルションペイント塗りを新設した.一方,使用が減少している溶剤系塗料を適用する2液形厚膜エポキシ樹脂エナメル塗りと2液形タールエポキシ樹脂塗料塗りを削除した.

(7) 従来から採用されていた木質系素地に対する内外部用のピグメントステインや内部用オイルステインと区分して,屋外使用を目的とする木材保護塗料塗りを新設した.また,木質系素地に対する内装薄付け仕上塗材塗りは,適用実績が減少していることから削除した.

(8) 関連する JIS や JAS の改正および JASS 等仕様書や指針類の改定との整合を図り,記述内容を修正した.

(9) 新たに採用した材料の中で JIS が未制定である材料に対しては,付録の日本建築学会材料規格を新設した.また,新たに JIS 化された材料については,本会材料規格を廃止した.

 以上のように,本仕様書は昨今の世界的な規模における社会問題として大きな注目を集めている地球環境の保全と人間の健康安全に対する積極的な対応を最大目標として,法規制や規則等との整合を図るようにしている.さらに,報告されている研究成果および昨今の建築塗装における実態を反映して,内容を改めたものである. 建築分野における環境配慮およびより一層の品質向上と合理化に対して,本仕様書を積極的にご活用いただくことを期待するとともに,会員ならびに関係各位からのご叱正を仰ぐ次第である.   2006年 11月

日本建築学会

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仕様書(第7次改定版)関係委員(2013年3月)――五十音順・敬称略――

材料施工委員会本委員会

委 員 長  本 橋 健 司

幹   事  輿 石 直 幸  桜 本 文 敏  早 川 光 敬

委   員  (略)

内外装工事運営委員会

主   査  本 橋 健 司

幹   事  古 賀 一 八  輿 石 直 幸

委   員  井 上 照 郷  大久保 孝 昭  大 澤   悟  河 辺 伸 二

       近 藤 照 夫  清 家   剛  高 橋 宏 樹  永 井 香 織

       長 井 宏 憲  中 山   實  名 取   発  横 山   裕

       吉 田 倬 郎

JASS 18塗装工事改定小委員会

主   査  近 藤 照 夫

幹   事  井 上 照 郷  本 橋 健 司

委   員  大 垣   敦  大 澤   悟  奥 田 章 子 (川 島 敏 雄)

       久保田   浩  竹 内 金 吾  田 村 昌 隆  永 井 香 織

       長谷川 拓 哉  和 田   環

金属系素地ワーキンググループ

主   査  近 藤 照 夫

幹   事  大 澤   悟  奥 田 章 子

委   員 (川 島 敏 雄) 竹 内 金 吾  田 村 昌 隆  宮 田 敦 士

       村 木 克 彦  山 内 健一郎

セメント・ボード系素地ワーキンググループ

主   査  井 上 照 郷

委   員 (川 島 敏 雄) 島 岡   宏  高 栄 正 樹  竹 内 金 吾

       田 村 昌 隆  長谷川 拓 哉  水 谷   篤  村 木 克 彦

木質系素地ワーキンググループ

主   査  本 橋 健 司

委   員  大 木 博 成 (岡 田 教 博)(川 島 敏 雄) 久保田   浩

       小 林 勝 志  竹 内 金 吾  田 村 昌 隆  和 田   環

*(     )は元委員

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解説執筆委員

全 体 調 整   近 藤 照 夫  井 上 照 郷  本 橋 健 司  奥 田 章 子

        長谷川 拓 哉

1節 総   則

近 藤 照 夫  井 上 照 郷  本 橋 健 司  大 垣   敦

大 澤   悟  奥 田 章 子  久保田   浩  竹 内 金 吾

田 村 昌 隆  永 井 香 織  長谷川 拓 哉  和 田   環

2節 施 工 一 般

竹 内 金 吾  近 藤 照 夫

3節 金属系素地面塗装

近 藤 照 夫  奥 田 章 子  田 村 昌 隆  宮 田 敦 士

村 木 克 彦  山 内 健一郎

4節 セメント系素地およびせっこうボード素地面塗装

井 上 照 郷  島 岡   宏  高 栄 正 樹  田 村 昌 隆

水 谷   篤  村 木 克 彦

5節 木質系素地面塗装工事

本 橋 健 司  大 木 博 成  岡 田 教 博  久保田   浩

川 島 敏 雄  小 林 勝 志  和 田   環

6節 特   記

長谷川 拓 哉

付録1     近 藤 照 夫  井 上 照 郷  奥 田 章 子  高 栄 正 樹

        和 田   環

付録2     井 上 照 郷  近 藤 照 夫  本 橋 健 司  小 林 勝 志

        水 谷   篤  山 内 健一郎  和 田   環

付録3     (日本GRC工業会規格を引用)

付録4     田 村 昌 隆  近 藤 照 夫

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建築工事標準仕様書・同解説

JASS 18 塗装工事

目     次

本 文ページ 

解 説ページ

1節 総   則

1.1 適用範囲および原則 ………………………………………………………………… 1……111

1.2 用語の定義 …………………………………………………………………………… 1……112

1.3 略   号 …………………………………………………………………………… 2……114

1.4 施工管理技術者 ……………………………………………………………………… 3……115

1.5 技 能 者 …………………………………………………………………………… 3……115

1.6 室内空気中に含まれる化学物質の濃度測定 ……………………………………… 3……116

2節 施 工 一 般

2.1 施 工 計 画 …………………………………………………………………………… 3……119

2.2 材   料 …………………………………………………………………………… 4……120

2.3 仮   設 …………………………………………………………………………… 4……129

2.4 工 法 一 般 …………………………………………………………………………… 4……130

2.5 養   生 …………………………………………………………………………… 5……150

2.6 施 工 管 理 …………………………………………………………………………… 6……151

3節 金属系素地面塗装

3.1 総   則 …………………………………………………………………………… 6……155

3.2 素   地 …………………………………………………………………………… 6……156

3.3 素 地 調 整 …………………………………………………………………………… 7……157

3.4 合成樹脂調合ペイント塗り(SOP) ……………………………………………… 9……166

3.5 フタル酸樹脂エナメル塗り(FE) ………………………………………………… 12……170

3.6 2液形ポリウレタンエナメル塗り(2‒UE) ……………………………………… 14……172

3.7 弱溶剤系2液形ポリウレタンエナメル塗り(LS2‒UE) ………………………… 16……177

3.8 アクリルシリコン樹脂エナメル塗り(2‒ASE) ………………………………… 19……180

3.9 弱溶剤系アクリルシリコン樹脂エナメル塗り(LS2‒ASE) …………………… 22……184

3.10 常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗り(2‒FUE) ………………………………… 25……187

3.11 弱溶剤系常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗り(LS2‒FUE) …………………… 28……191

3.12 つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP‒G) …………………………… 30……194

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4節 セメント系素地およびせっこうボード素地面塗装

4.1 総   則 …………………………………………………………………………… 32……198

4.2 素   地 …………………………………………………………………………… 33……199

4.3 素 地 調 整 …………………………………………………………………………… 35……205

4.4 2液形ポリウレタンワニス塗り(2‒UC) ………………………………………… 41……217

4.5 アクリルシリコン樹脂ワニス塗り(2‒ASC) …………………………………… 43……222

4.6 常温乾燥形ふっ素樹脂ワニス塗り(2‒FUC) …………………………………… 45……224

4.7 アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り(NADE) ………………………………… 47……227

4.8 2液形ポリウレタンエナメル塗り(2‒UE) ……………………………………… 49……230

4.9 弱溶剤系2液形ポリウレタンエナメル塗料塗り(LS2‒UE) …………………… 52……235

4.10 アクリルシリコン樹脂エナメル塗り(2‒ASE) ………………………………… 55……238

4.11 弱溶剤系アクリルシリコン樹脂エナメル塗り(LS2‒ASE) …………………… 58……242

4.12 常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗り(2‒FUE) ………………………………… 61……246

4.13 弱溶剤系常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗り(LS2‒FUE) …………………… 64……250

4.14 合成樹脂エマルションペイント塗り(EP) ……………………………………… 67……254

4.15 つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP‒G) …………………………… 70……258

4.16 ポリウレタンエマルションペイント塗り(UEP) ……………………………… 73……262

4.17 多彩模様塗料塗り(EP‒M) ………………………………………………………… 76……266

5節 木質系素地面塗装工事

5.1 総   則 …………………………………………………………………………… 79……272

5.2 素   地 …………………………………………………………………………… 79……273

5.3 素 地 調 整 …………………………………………………………………………… 81……276

5.4 1液形油変性ポリウレタンワニス塗り(1‒UC) ………………………………… 82……278

5.5 2液形ポリウレタンワニス塗り(2‒UC) ………………………………………… 85……282

5.6 クリヤラッカー塗り(LC)および2液形ポリウレタンクリヤラッカー塗り(2‒ULC)

………………………………………………………………………………………… 87……286

5.7 ステイン塗り(ST) ………………………………………………………………… 91……291

5.8 木材保護塗料塗り(WP) …………………………………………………………… 93……295

5.9 合成樹脂調合ペイント塗り(SOP) ……………………………………………… 94……298

5.10 合成樹脂エマルションペイント塗り(EP) ……………………………………… 96……300

5.11 つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP‒G) …………………………… 98……303

6節 特   記

6.1 総   則 ……………………………………………………………………………100……306

6.2 1節「総則」に関する特記事項 ……………………………………………………100……306

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6.3 2節「施工一般」に関する特記事項 ………………………………………………100……307

6.4 3節「金属系素地面塗装」に関する特記事項 ……………………………………101……307

6.5 4節「セメント系素地およびせっこうボード素地面塗装」に関する特記事項 …103……310

6.6 5節「木質系素地面塗装工事」に関する特記事項 ………………………………108……315

付   録

付録1 塗装仕様の選び方 ………………………………………………………………………… 317

付録2 日本建築学会材料規格 …………………………………………………………………… 321

付録3 ガラス繊維補強セメント板(GRC板)の材料規格 ………………………………… 388

付録4 「JASS 18 塗装工事」以外の塗装仕様 ……………………………………………… 392