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財政制度等審議会 財政投融資分科会 財政投融資の対象分野 株式会社 大和総研 副理事長 川村 雄介 2014326

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財政制度等審議会 財政投融資分科会

財政投融資の対象分野

株式会社 大和総研

副理事長

川村 雄介

2014年3月26日

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財政投融資の対象分野を考えるに際しての問題意識

財政投融資の役割や意義について一定の整理(国の信用で調達した資金やペイシェント・リスク・マネーを、民業圧迫を避けつつ政策目的を達成するために活用すること)はなされているものの、対象分野の選定といった観点からは、何をKPI (Key Performance

Indicator)とすべきか。

対象分野を考える際に、財政投融資の総額としての制約を念頭に置く必要はないのか。有効であると認められる個別プロジェクトの積み上げが許されるのか、それとも、毎年のフローの計画にマクロ的な金額枠を設定し、その中で優先度の高い分野やプロジェクトを選択するというアプローチをとるべきか。

財政投融資の対象分野は、時代の変化を背景とする産業や国民生活のニーズに応じて変化する。従来、ある一つのカテゴリーとされてきた分野について、政策立案上で細分化する必要性の是非については、どのような基準で判断していくべきか。

対象分野の分類が複雑化するにつれて、分野ごとの境界があいまいになったり、明らかに目的が重複する分野が出てきたりする状況について、どのように調整すべきか。

政策コスト分析は洗練されてきたが、事前に政策コストが大きいということが明らかであることは、それだけ政策として実施する必要性が高いということを意味しているかもしれない。ある政策目的を達成するための政策コストはできるだけ低いことが望ましいはずだが、政策コストの大きさと財投を活用する必要性をどのようにバランスさせるべきか。

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財政投融資の対象分野に関する基本的考え方

情報の非対称性、外部性、不完全競争、市場の欠落などの観点から、民間金融で対応できないプロジェクトに限定される必要がある。一定の発展をみた経済システム下での「市場の失敗」への対応であり、民間の金融・事業活動を阻害するものであってはならない。

ただし、逆にいえばその点を明確にした上で、財投の役割は依然として小さくない可能性がある。また、その際の手法については様々な金融技術や新規性のあるスキームを駆使することが考えられる。

具体的な対象分野としては、グローバル化を含む経済社会の変化に即したものであるかどうかが重要である。また、政府の成長戦略との整合性をとり、民間投資の呼び水となるプロジェクトを選択していくべきである。

財投プロジェクトについて「赤字であるから不適当」と断定するロジックは適当ではないことを改めて確認。問題は事前と事後に政策コストを明確にすることと、長期の可能性という視点からプロジェクトの必要性について合意があること及び効率性を追求すること。

財政規律を維持する観点と、運営の透明性を確保しつつ政策目的を実現するために、当該プロジェクトを担う機関のガバナンス及びモニタリングが極めて重要である。

住宅、中小零細企業、農林水産業、教育、医療・福祉、環境、社会資本、産業・研究開発、国際金融など各分野のうち、今後特に重要になっていくと見込まれるものについて重点的に議論を深めていく必要があるだろう。

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①産業競争力(資源・エネルギーを含む) ―経緯と実績

財投機関の変遷(エネルギー分野)

資源・エネルギー分野は、主に石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)や国際協力銀行(JBIC)が担っている。

東日本大震災をきっかけにエネルギー確保の重要性が急速に高まり、 JOGMECの財投額(計画)は2011年度の129億円から2013年度は1,158億円へ増額された。ほとんどが産投であり、産投額は財投機関の中で最大である。2012年の法改正で資源開発への産投出資の活用が可能となり、改正後は天然ガスやレアメタル等への資産買収出資等に積極的に取り組んでいる。一方で、JBICは日本企業による海外でのLNGやシェールガスなど資源の開発や権益取得、資源の輸入等を金融面から支援している。

そのほかの分野では、日本政策投資銀行が2013年3月に「競争力強化ファンド」(産投貸付1,000億円、自己調達500億円)を設立した。これは、ファンドを通じてメザニンローンや優先株出資といったリスクマネーを供給することにより、異業種間連携による新事業や企業に眠る高度な技術を生かした新事業の創出を促進することを目的としている。

JOGMECの財投計画と事業費の推移

2004年2月石油公団 (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構金属鉱業事業団

※2012年8月の法改正で下記の業務が可能となった。・災害時の石油・石油ガス供給計画の実施支援・石炭・地熱資源開発に係る支援・産投出資の資源開発ヘの活用・海洋での金属鉱物調査の深度制限の見直し

1999年10月 2008年10月日本輸出入銀行 国際協力銀行 国際協力機構海外経済協力基金 (海外経済協力部門)

日本政策金融公庫(国際部門)

(株)国際協力銀行2012年4月

(出所)大和総研

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実績

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計画+前年か

らの繰越

(億円)

(注)2014年度の前年繰越額はゼロとしている。2013年度は2013年1月

までの累計金額。

(出所)財務省資料より大和総研作成

(年度)

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①産業競争力(資源・エネルギーを含む) ― 現状評価

プロジェクト事例

JOGMECの財投対象事業における日本企業の資源の探鉱開発活動の支援は、2012年度で計11件(資産買収出資:1件(天然ガス)、債務保証:4件(金属鉱物)、探鉱融資:6件(金属鉱物))実行した。

また、再エネについては地熱の探査出資や債務保証を行っており、2014年度では探査出資8億円、債務保証72億円の産投出資を計画している。

「競争力強化ファンド」では、ソーラーフロンティア(株)の太陽光発電事業、 日本電気 (株)の社会ソリューション事業、 三井化学(株)の歯科材料事業などに対して出融資している。投融資先は5件、投融資総額は約850

億円(2014年3月24日時点)。

エネルギー輸入額の増加による所得の国外流出が問題となっている現状に鑑みれば、財投による資産買収出資・債務保証は正当化できる。ただし、財投計画と実績を見ると、計画に対する未達額が非常に大きい。財投を通じてJOGMECやJBICが、我が国のLNG・シェールガス確保を支援しているものの、現時点では輸入LNG価格の低下に繋がっていない。

2013年度に入り、国内の電力会社は石油消費量を減らして石炭消費量を増やしている。燃料費がLNGや石油よりも安価な石炭発電の重要性が高まっている。

再エネの普及促進を目的とした固定買取価格制度(FIT)が2012年7月から施行されており、施行後は太陽光発電の申請件数は増加している。それでもなおリスクマネー供給が不足しているとの観点から、日本政策投資銀行の「競争力強化ファンド」が太陽光発電事業に出資を行っている(出資分は将来的に民間に売却予定)。

当該分野の課題

JOGMECの融資計画と実績を見ると、計画に対する未達額が大きい。

今後の電力政策においては、石炭火力も重要と考えられる。財投を通じた石炭事業に対する資産買収・債務保証額の活用を促していくべきではないか。

太陽光発電事業者はFITによって増加していることから、競争力強化ファンドによる支援が有用なものとなるよう、両者の役割分担を意識した運営が必要。

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①産業競争力(資源・エネルギーを含む) ―今後の方向性と課題

電力供給システム改革のスケジュール

今後、電力供給システム改革(発送電分離、広域系統運用の拡大、電力自由化)が実施される方向にある。しかし、大規模なインフラが必要な電力市場は新規参入者にとっては障壁が高い。既存電力会社との健全な競争を実現するためにも、新規参入企業に対して財投による金融支援を行う余地があるとみられる。

全国規模で電力需給を調整する広域系統運用機関の設立(2015年予定)に向けて、民間電力会社などで構成する準備組合が2014年1月に発足した。広域系統運用機関は公的色彩が強く、日本経済の発展に資する機関であるため、財投によって支援することも一案である。

原発の新設は見込みにくいため、長期的には火力と再エネによる発電によって日本の電力需要を賄うことになるだろう。エネルギー基本計画やFITなど諸制度とのバランスを踏まえつつ、火力発電の効率性や環境技術、再エネの発電能力をいかに高めていくかが重要な課題と言える。例えば発電設備の導入が遅れているもののポテンシャルの高い地熱や中小水力、風力による発電等に対して財投を活用する(拡大する)余地は大きいのではないか。

当該分野において財投が果たせる可能性がある具体的な役割

電力市場に新規参入を目指す企業に対して金融的支援を検討する余地があるか。

エネルギー政策の一環として、電力に関する広域系統運用機関に対して貸付を行うことを検討すべきか。

再生エネルギー分野の中で、設備導入が遅れている市場における投資拡大を支援することを検討すべきか。

エネルギー分野において財投を活用するとした場合、どのような法人を当該分野を担う財投機関とすべきか。 (出所)経済産業省資料

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②イノベーション(農業、医療・福祉を含む) ―経緯と実績

農林漁業成長産業化支援機構の事業スキーム

農林漁業分野では、農林漁業成長産業化支援機構(2013年1月設立)が農林漁業者と他産業のパートナー企業によって設立された法人に対して、サブファンドを通じた出資や経営支援、資本性劣後ローンの融資を行っている(原資は産投と自己資金)。また、日本政策金融公庫は、経営改善や6次産業化に取り組む農業者に対して、設備資金や長期運転資金を融資している。

産業革新機構はベンチャー企業等や先端技術の事業化の支援を通じてオープン・イノベーションを促進している。2014年度の事業費(計画)は2,500億円で、うち100億円が財投(すべて産投)である。

医療・福祉分野では、病院施設や福祉施設の整備、医療機械の充実等に関し財投が活用されている。当該分野の財投計画で最も大きいのが福祉医療機構で、2014年度は3,986億円が計上されている。

産業革新機構の事業スキーム

(出所)㈱農林漁業成長産業化支援機構会社案内 (http://www.a-five-j.co.jp/pdf/pamphlet.pdf)

(注)本図は2014年3月26日時点。

(出所)㈱産業革新機構ウェブサイト(http://www.incj.co.jp/about/overview.html)

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②イノベーション(農業、医療・福祉を含む) ―現状評価

福祉医療機構の貸付額(年度計画)

農林漁業成長産業化支援機構は地域金融機関等とともに41のサブファンドへ333億円の支援決定を行っている(サブファンドの出資総額は666億円、2014年3月時点)。比較的短期間で全国的にサブファンドを組成しており、今後は組成したサブファンドが農林水産業にどのような効果をもたらすのか注視する必要がある。

日本政策金融公庫における農林水産事業向け融資額(2012年度で3,200億円)のうち約7割は農業向けが占めており、その多くは経営改善や6次産業化等の計画を提出して認定された農業者への融資である。農業参入者に対しては29億円(138先)、6次産業化に取り組む農業者には82億円(129先)の融資が行われた(2012年度)。

産業革新機構は医療や環境、再エネ、電機など幅広い分野に対して出資しており、2013年は23件に出資した。資本金の86.7%を出資した(株)ジャパンディスプレイは2014年3月19日に東証一部へ上場した。

医療・福祉分野では施設整備向けの貸付けがほとんどである。このところ福祉貸付が増加傾向にある。

当該分野の課題

政府は農地集約や減反廃止など「強い農業」を目指している。日本政策金融公庫の融資は、それとどのように歩調を合わせていくべきか。

施設整備向け融資のウェートが高い医療・福祉分野では、更に民間資金を活用する余地がないか。

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②イノベーション(農業、医療・福祉を含む) ―今後の方向性と課題

医療・介護給付費の見通し

自立した農業者の育成が課題となっている。経営改善を進める農業者に対象を絞って融資が行われている点は評価されよう。他方、農産物の価格下落や飼料価格の高騰等で一時的に経営が悪化した農業者に対して融資が行われていることをどのように考えるか(漁業も同様)。危機対応目的の融資と成長戦略としての融資をどのように峻別できるか。

医療・介護サービス需要は高齢化等によって拡大が続くと見込まれ、今後も医療機関や社会福祉施設を整備する重要性は大きい。政府は施設整備の資金調達をより円滑にするために、ヘルスケアREITを通じて介護・医療分野に民間資金を呼び込もうとしている。

現在は、設備の建設や運用に関する留意点などを盛り込んだガイドラインをまとめている段階にある。ヘルスケアREITの市場規模を拡大させるためには、民間資金が流入しやすい環境を作ることが必要である。その際、民間資金を呼び込む方策として、財投(産投)を通じたリスクマネーの供給も検討すべきだろう。

社会福祉法人の会計方法は特殊であり外部から経営状況が見えにくい。そのため収益性や政策コストがどの程度なのかを判断するのが容易とはなっておらず、改善の余地がある。

当該分野において財投が果たせる可能性がある具体的な役割

危機対応目的の融資が恒常化するなど、産業の新陳代謝を促すことには必ずしもならない融資からの撤退も検討しつつ、自立した農業者の育成に向けて財投をどのように活用すべきか。

医療機関や社会福祉施設を整備するうえで期待されているヘルスケアREITの市場を拡大させ

るため、民間資金を呼び込む方策として、民業補完にも留意しつつ、財投(産投)を通じたリスクマネーの供給も検討すべきではないか。

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医療給付費

介護給付費

(出所)大和総研「超高齢日本の30年展望」(2013年5月)

(GDP比、%)

(年度)

(予)

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③インフラ投資 ―経緯と実績

2000年以降の主な事業系財投機関等の変遷

わが国のインフラの主要部分は1990~2000年前後にほぼ出来上がったと考えられ、2000年代は事業系の財投機関の再編が進められた。その際、財投の対象から外れたり、資金投入手法が変更されるなどして、現在に至っている。

国土保全・災害復旧、道路、運輸通信、地域開発については、1980年代前半までは運輸通信の構成比が高かったが、1980年代半ば以降は道路の構成比が最も高くなっている。また、近年では道路のうち7~9割ほどが高速道路関係である。

国土保全・災害復旧においては、緊急性が高い事業の当面の資金調達に活用するという観点で財投が有効に機能したと考えられる。

財投計画の使途別構成比(対インフラ関連計)

治水特別会計

道路整備特別会計  2006年度に統合

港湾整備特別会計 社会資本整備事業特別会計

空港整備特別会計 【2014年度に廃止】

都市開発資金融通特別会計

2005年度に再編・株式会社化、高速道路保有については独法化東日本高速道路(株)

日本道路公団 中日本高速道路(株)

西日本高速道路(株)

首都高速道路公団 首都高速道路(株)

阪神高速道路公団 阪神高速道路(株)

本州四国連絡橋公団 本四高速道路(株)

【上記各社は財投対象外へ】

(独)日本高速道路保有・債務返済機構【2014年度当初計画で財投対象機関】

日本鉄道建設公団 2003年度に統合(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構

運輸施設整備事業団 【2014年度当初計画で財投対象機関】

2004年度に株式会社化帝都高速度交通営団 東京地下鉄(株)

【財投対象外へ】

2004年度に株式会社化新東京国際空港公団 成田国際空港(株)

【財投対象外へ】(出所)大和総研作成

(注)各項目の構成比は、国土保全・災害復旧、道路、運輸通信、地域開発の合計に対する比率。

(出所)財務省「財政投融資計画」より大和総研作成

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国土保全・災害復旧道路運輸通信地域開発

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③インフラ投資 ―現状評価

道路における財源別投資額の推移

財投計画において、国土保全・災害復旧では財政融資が占める割合が高いが、道路、運輸通信、地域開発では政府保証の割合が高まる傾向がみられる。

上下水道、道路などの生活インフラの整備について、財投の果たした役割は大きい。例えば、道路では、1990年代半ばまで財投等が特定財源の国費や地方費と並ぶ規模となっている。ただし、道路については過大投資との批判もある。

2000年代の財投対象機関を含むインフラ関連事業や特別会計等の再編、資金調達手法の変更は、道路や鉄道など交通分野を中心に、インフラ事業体に堅実な需要推計とそれに基づく効率的な投資という観点を強化することにある程度成功したと考えられ、適正な投資規模に向けた改善は進んでいる。

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特定財源(国費)一般財源(国費)特定財源(地方費)一般財源(地方費)財投等

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(注)国費、財投等は最終実施計画。地方費の特定財源は譲与実績又は決算見込、一般財源は2007年度まで決算、2008年度は推計値。道路特定財源制度が廃止された2009年度以降は、道路投資の財源別構成が開示されていない。

(出所)国土交通省Webサイト道路IR「財源に関するデータ集」、道路行政研究会「道路行政」より大和総研作成

財投計画の使途別原資内訳

(出所)財務省「財政投融資計画」より大和総研作成

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③インフラ投資 ―今後の方向性と課題

わが国のインフラは概ね完成したと考えられ、今後は量的拡大よりも質の向上、運営の効率化、適切な維持管理・更新投資の実施が主要な課題である。国土交通省の試算(社会資本整備審議会・交通政策審議会「今後の社会資本の維持管理・更新のあり方について」平成25年12月)によれば、国土交通省所管の社会資本に関する2013年度の維持管理・更新費は約3.6兆円、10年後は約4.3~5.1兆円、20年後は約4.6~5.5兆円程度になるものと推定されている。

料金収入が見込める分野では、官民連携を積極的に進めるべきであろう。その呼び水として、2013年10月設立の(株)民間資金等活用事業推進機構(PFI推進機構)が期待される。

官民連携を推進するためには、民間の参入意欲を高めることが重要である。そのためには、規模の拡大や実施期間の柔軟性などに配慮すべき。その際、政府保証の活用など、多様な資金調達手段を検討していくべきだろう。

インフラ分野において財投が果たせる可能性がある役割

国内のインフラは老朽化対策が大きな課題であり、効率的な管理・運営が求められている。官民連携の推進は、そのための重要な施策であるが、現状では民間の参入意欲に応える案件が少ない。

PFI推進機構による案件の発掘、メザニンなどでの様々なレベルでの投融資の実施は、PFI事業者を育てると同時に、インフラ投資資金を呼び込む期待が持てる。その際、政策的視点のみならず、事業採算的な視点をいかに取り込めるかが鍵となる。

国土強靱化について、緊急性の高い事業の当面の資金として、財投を活用することは引き続き有効である。その際も、選択と集中を図ることが、効果的な国土強靱化に資することとなる。

インフラ投資分野の課題

財投を含む様々な資金調達スキームにより、わが国のインフラ整備は着実に進んできた。しかし、資金調達スキームの充実は、過大な需要推計による過大投資を招きやすい。

独立採算的な事業体が主体となっている交通インフラ分野では改善が進んでおり、増大する老朽化対策が今後の大きな課題となるとみられる。

地方公共団体が主体となっている分野では、事業対象の人口減少や事業主体の職員の不足など、資金調達以外の面で多くの課題を抱えている。

人口減少は、インフラの料金収入にとっては基本的にマイナス要素である。また、国土強靱化も人口減少を踏まえた効果的なものであることが重要である。それらを念頭に置き、如何に選択と集中を図るかが求められる。

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④インフラ輸出 ―経緯と実績

海外展開関係の財投機関

海外展開関係の財投機関のメインである国際協力銀行(JBIC)は、何度かの組織再編が行われている。

日本輸出入銀行と海外経済協力基金が統合され1999

年度に旧JBICが設立された。日本輸出入銀行は輸出金融、輸入金融、海外投資金融、海外経済協力基金は円借款等を遂行してきた機関である。

政策金融改革により、2008年度にJBICは日本政策金融公庫の一部門となり、国際金融等業務は重点化され、海外経済協力業務は国際協力機構(JICA)に引き継がれた。

2012年度にJBICは日本政策金融公庫から分離・独立。

こうした変遷は日本の国際的な経済関係や時の対外政策の重点の変化などを反映している。

わが国のインフラ輸出はインフラを構成する機器等の個別納入が多く、他国と比較して、システムとしてのインフラ輸出は出遅れている。わが国のインフラ運営事業者は、国内の事業展開に追われていたり、国内でそれなりの収益を確保していたりしたため、海外展開には積極的でなかったことが、システムとしてのインフラ輸出に出遅れた要因の一つとみられる。

また地方公共団体が運営するインフラも多く、海外展開は視野に入っていなかったと推測される。

商社やプラント会社などはインフラシステムという発想で事業展開しているが、日本からシステムで輸出するという観点は希薄であったと推測される。

わが国では、インフラ輸出は途上国に対してはODAなどの枠組みで行われることも多く、採算性よりも経済協力的な視点が主であった。

貿易・経済協力関連の財政投融資計画

(出所)財務省「財政投融資計画」より大和総研作成

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④インフラ輸出 ―現状評価

インフラシステム輸出の主要分野における日本企業の海外受注推計額

国内での人口減少などを視野に入れると、インフラ関連事業者が今後とも収益を上げ続けるためには、海外展開が求められる。しかし、これまでのような個別納入では十分な収益を上げにくくなっている。

新興国や途上国では、基礎的なインフラが不足している国も多く、地方公共団体が担っているインフラのノウハウ等の移転が求められている(アジア開発銀行研究所は、アジアでは2010~2020年の間に約8兆ドルのインフラ投資が必要と試算)。

交通インフラや水道分野のシステム輸出では、欧米や中韓などに先行されている。電力分野の発電所、水道分野の淡水プラントなどでは、日本勢もそれなりの実績を上げている。

現時点では、円借款を含むODAの枠組みがわが国のインフラ輸出の主流。

インフラ輸出分野の課題

インフラ輸出については、これまでは政府側の戦略が必ずしも一貫していなかったとみられ、そのため財投制度も有効に機能していたとは言いにくい。

インフラの事業主体(地方公共団体を含む)とインフラを構成する機器等を製造する事業者との連携が十分でない。

インフラ輸出では規格等も成否の大きな要素だが、そうした認識が必ずしも十分ではなかったと考えられる。

インフラをシステムとして輸出する場合は、長期でのコミットメントが必要であり、官民の連携が一層重要となる。

(出所)経協インフラ戦略会議「インフラシステム輸出戦略」(2013年5月)より大和総研作成

(億円)現状(2010年)概算 備考

電力 22,000原子力 3,000石油・ガスプラント 5,000スマートコミュニティ 8,000鉄道 1,000次世代自動車 10先進安全自動車 -道路 2,000 2011年港湾 (整備)500 2009-11年平均

(運営)500航空 (空港)500 2007-11年平均

   (管制) 1 2013年情報通信 情報通信 40,000

工業団地 100建設業 10,000水 2,000リサイクル 1,000医療 5,000農業 150宇宙 200海洋インフラ・船舶 1,000 2011年郵便 150

生活環境

新分野

分野

エネルギー

交通

基盤整備

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④インフラ輸出 ―今後の方向性と課題

将来へ向けたインフラ輸出分野のあるべきコンセプト

わが国企業や地方公共団体などの持つ技術やノウハウは、現地の様々な要望に応える潜在力を持っている。一方で、国内のインフラ水準は、輸出先にとっては過剰品質となっている可能性がある。そうしたことを踏まえ、わが国のインフラの長所を活かしながら、現地のニーズに柔軟に対応する取組みが求められる。

インフラを構成する機器等の個別の輸出も重要であるが、運営も含めた総合的なシステムとしてのインフラを輸出することにより、わが国の収益機会と国際貢献の拡大を図る方向での検討が望まれる。

その際、わが国の外交や安全保障も踏まえた、戦略的なインフラ輸出の展開を図るべきであろう。

ODAのあり方の見直しともインフラ輸出は関係する。アンタイド比率は下げて良いし、わが国の国益に沿うかどうかも判断基準とすることを検討してはどうか。

東南アジアやアフリカをはじめとする新興国や途上国、また先進国でもインフラ需要は順調に拡大すると見込まれる。

一方、インフラ輸出市場では、今後、ますます世界的な競争が激しくなると見込まれる。

競争相手の他国では官民一体となった売込をかけている事例も多く、わが国も官民連携の強化が望まれる。

インフラ輸出先が求めるインフラ機能の水準は様々であり、価格等も含む先方のニーズに合わせたインフラ輸出が成否を左右する。また、インフラ輸出には多様なリスクが存在することから、それに関わる財投機関には、そうしたニーズやリスクなどの情報生産機能の強化も望まれる。

インフラ輸出分野において財投が果たせる可能性がある役割

新設予定の(株)海外交通・都市開発事業支援機構(仮称)では、資金的な視点のみならず、インフラ輸出に必要な総合的な対応が期待される。

財投の機能としては、多様な資金調達手段と、長期的な資金の提供機能のより一層の強化が求められる。

財投機関には、民間では困難な長期的な観点からの現地の情報収集を行い、それらに基づいた事業者へのアドバイスを行う機能の強化が期待される。

政府の経協インフラ戦略会議(2013年3月設置、議長は内閣官房長官)でインフラ輸出に関する課題が議論されており、そこでの議論内容の着実な実施が望まれる。

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⑤中堅・中小企業の海外展開 -経緯と実績(1/2)

民間金融機関による供給が困難な長期資金を、低利かつ固定金利で中小企業に供給するため、財政投融資を活用した中小企業向け融資・証券化支援保証・危機対応円滑化業務などが実施されている。

中小企業向け融資および証券化支援保証の事業規模は、民業補完の原則を徹底するとの方針の下、縮小傾向にある。

ただし、2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災の発生時は、危機対応円滑化業務の残高が増加しており、財政投融資全体の金額が縮小傾向にある中、中小企業向けは2000年代を通じてほぼ横ばいで推移。政策コストに関しても中小企業向け融資および証券化支援保証事業に関しては減少しているが、危機対応円滑化業務が大幅に増加した。

近年はグローバル化など経済の構造的変化に対応するため、中堅・中小企業が行う海外展開事業に必要な資金を供給するための制度が設けられている。

主要な中小企業向け財投の政策コスト

0

5

10

15

20

25

30

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

(兆円)

全体の金額(実施額)

全体の金額(当初計画)

中小企業向け(実施額)

中小企業向け(当初計画)

(年度)(出所)財務省より大和総研作成

中小企業向けの財投計画の推移

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

危機対応円滑化業務

中小企業者向け融資、証券化支援保証業務

(年度)

(億円)

(注)政策コストは日本政策金融公庫の事業のみ集計したもの。(出所)財務省より大和総研作成

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中小企業向けの財政投融資は中小企業金融公庫、国民生活金融公庫、商工組合中央金庫を通じて行われていた。2公庫は2008年10月1日付で解散、同日付で設立された日本政策金融公庫に統合された。商工組合中央金庫は民営化に向け特殊会社となった。

民業補完に徹するという原則の下、直接貸付よりも代理貸付の比重を高めるべき、また直接貸付を実施する必要がある場合も、政策金融機関による単独融資ではなく、民間金融との協調融資の比重を高めるべきであるとして、中小企業事業の一般貸付は廃止された(国民事業の一般貸付は継続)。

現在の国際協力銀行の前身は旧国際協力銀行の国際部門である。2008年10月1日に日本政策金融公庫に統合された後、2012年4月1日に日本政策金融公庫の国際部門として誕生した。海外M&Aやインフラ、資源分野等への出資を通じ、中堅・中小企業を含む日本企業の海外展開支援している。

2013年、クールジャパン分野に関する海外展開を支援するために「海外需要開拓支援(クールジャパン)機構」が設立された。また、 「農林漁業成長産業化支援機構」による日本の食産業等の海外展開支援も期待されている。

⑤中堅・中小企業の海外展開 -経緯と実績(2/2)

中小企業金融公庫

国民生活金融公庫

商工組合中央金庫

日本政策金融公庫

中小企業事業

国民生活事業

2008年9月30日まで

商工組合中央金庫

統合・

株式会社化

特殊会社化

組織の変遷

(出所)大和総研作成

国際協力銀行 国際金融業務

国際協力銀行

日本政策金融公庫

中小企業事業

国民生活事業

2012年4月1日以降 2008年10月1日以降

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⑤中堅・中小企業の海外展開 ―現状評価

中小企業向け融資・証券化支援保証事業による中小企業への事業資金の総融資実績は268万件、75兆4,242億円(昭和28年度~平成23年度累計)。危機対応円滑化業務の指定金融機関への貸付は6兆8,582億円、貸付け等に係る損害担保引受けは5兆7,902億円。

中小企業の海外展開を支援する資金供給としては、日本政策金融公庫の企業活力強化貸付(海外展開資金)、海外展開に取り組む者に対する劣後ローン、クールジャパン機構、商工組合中央金庫のグローバルニッチトップ支援貸付制度(平成26年度開始予定)が挙げられる。中小企業のメインバンクである地域金融機関は海外拠点が不足しており、貸出リスクを抱えにくいことから、政策金融機関による海外展開支援は有益といえる。

海外展開関連の主要なプロジェクト

機関 具体的内容 資金供給の方法等

国際協力銀行

・中堅・中小企業を含む日本企業による海外企業の買収やインフラ分野等への海外展開を推進

金額:690億円(平成24年度補正)

投資家や邦銀等と連携し、日本企業によるM&A案件等への出資を目的とする「海外展開支援出資ファシリティ」を創設。出資によりリスクマネーを供給。

日本政策

金融公庫

・企業活力強化貸付(海外展開資金)

金額:財投の内数

海外で事業を行うために必要な設備資金及び長期運転資金(海外企業に対する転貸資金を含む)を基準利率もしくは特別利率により貸付ける。

・海外展開に取り組む者に対する劣後ローン

金額:5億円(平成25年度)

従来の貸付制度のみでは中小企業の資金需要を充足しきれておらず、新たに長期一括償還型の制度を創設。海外現地法人に出資を行う中小企業に劣後ローンを供給。

クールジャパン機構

・クール・ジャパンを体現する日本企業の支援

金額:500億円(平成25年度)

300億円(平成26年度)

出資・管理とともに、事業案件組成、経営支援等も一体的に実施。最終的に、機構の保有する株式は民間企業や第三者企業へ売却すること等を想定。

商工組合

中央金庫

・グローバルニッチトップ支援貸付制度 金額:135億円(平成26年度開始予定)

グローバルニッチトップを目指す中堅・中小企業に対し、海外市場に乗り出す際に必要となる長期性資金を供給。

(出所)大和総研作成

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⑤中堅・中小企業の海外展開 ―今後の方向性と課題

日本の成長戦略の一環としても中堅・中小企業の海外展開を支援していくことは重要。支援にあたっては国際協力機構など他の機関との連携も視野に入れて検討を進めるべき。

民間金融機関は貸出を増やすために海外展開融資に前向きな姿勢である。地域金融機関に関しても少しずつ海外展開融資の体制を整えつつあることから、財政投融資を活用した支援で民間の資金を呼び込みつつ、少しずつ民間に移譲していくことを目指すのが望ましいのではないか。

今後、「海外展開に取り組むものに対する劣後ローン」、「グローバルニッチトップ支援貸付制度」、「クールジャパン機構」と、中小企業に対する資金供給のチャネルが増えていく。全体でどのくらい政策コストがかかっているのかなどの情報を整理していくことが必要ではないか。

民間金融機関のみで連携して物事を進めることは困難である。クールジャパン戦略のように、特定の分野について国として「海外展開すべき」と判断したものについては、財政投融資により資金支援を行うことが有効であろう。

将来へ向けた当該分野のあるべきコンセプト 中小企業支援の課題

平成24年度において、日本政策金融公庫の中小企業向け融資・証券化支援保証業務の当期純損失は251億円。

同業務勘定のリスク管理債権額は6,457億円(部分直接償却後)でリスク管理債権比率は10%を超える。回収のためにも中小企業に対し一層の経営支援が必要。

日本政策金融公庫の開示資料によれば、海外展開支援の平成24年度の実績は、中小企業事業で474社・341億円、国民生活事業で462件・27.5億円となっている。中小企業事業と国民生活事業に分けて運営されており、全体像がわかりにくい。

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⑥地域活性化 ―経緯と実績

関連する財投機関

地域活性化に関する事業を実施している財投機関は、同事業の定義によるものの、主に以下が挙げられる

(公庫等)

株式会社日本政策金融公庫

沖縄振興開発金融公庫

(独立行政法人等)

独立行政法人奄美群島振興開発基金

独立行政法人都市再生機構

独立行政法人福祉医療機構

(特殊法人等)

一般財団法人民間都市開発推進機構

株式会社農林漁業成長産業化支援機構

株式会社日本政策投資銀行

独立行政法人地域医療機能推進機構(新設) 等

財政投融資による地域活性化に向けた事業として、地域資源の活用、農商工連携、6次産業化、中心市街地活性化、都市再生、企業再建・事業承継、中小企業の海外展開等のための資金供給や保証、アドバイザリー、その他推進事業が広く実施されている。これらの分野では、地方公共団体や地域金融機関、専門機関や学術機関等との連携のもと、プロジェクトが進められるケースも多い。

このほか、地域の医療・介護・福祉の向上やこれらのサービスの基盤強化に向けた取り組みや、東日本大震災からの復興支援などにおいても、財政投融資が活用されている。

なお、地方公共団体の事業に対する財政融資(地方債引き受け)は、国の政策と密接な事業を中心とするもの。地方公共団体の地域活性化事業(地方債計画)そのものに対しては、財政融資からの割り当てはなく、民間等資金と地方公共団体金融機構資金により賄われている。

財投計画の推移

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

財政

融資

産業

投資

政府

保証

財政

融資

産業

投資

政府

保証

財政

融資

産業

投資

政府

保証

財政

融資

産業

投資

政府

保証

財政

融資

産業

投資

政府

保証

財政

融資

産業

投資

政府

保証

財政

融資

産業

投資

政府

保証

財政

融資

産業

投資

政府

保証

財政

融資

産業

投資

政府

保証

財政

融資

産業

投資

政府

保証

財政

融資

産業

投資

政府

保証

財政

融資

産業

投資

政府

保証

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

(億円)

(年度)

財政投融資使途別分類(うち中小企業、農林漁業、地域開発)(注)

中小企業 農林漁業 地域開発

(出所)財務省資料より大和総研作成

(注)その他の区分は、「住宅」、「生活環境整備」、「厚生福祉」、「文教」、「国土保全・災害復旧」、「道路」、「運輸通信」、

「産業・技術」、「貿易・経済協力」。

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地域活性化 ―現状評価(1/3)

日本政策金融公庫(国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業) ~融資、保証、産学等との連携、情報提供等による政策金融~

【国民生活事業】※事業計画の原資(3兆613億円)のうち約7割は財政投融資によるもの(2014年度)。

◆地域資源の活用や農商工連携の支援(「地域産業資源活用事業計画」や「農商工等連携事業計画」の認定者を対象とした融資制度)

◆中心市街地活性化・商店街活性化の支援(「企業活力強化資金」「食品貸付」による融資や情報提供)

◆ (創業支援分野などで地域密着型金融(リレーションシップバンキング)の機能強化に取り組む)地域金融機関との連携

◆産学連携の支援(小規模企業からの技術相談の大学への取次ぎや大学発ベンチャー企業への融資)

◆企業再建・事業承継の支援

◆ 「ソーシャルビジネス」の支援

◆医療・福祉分野の支援 等

【中小企業事業】※事業計画の原資(2兆6,114億円)のうち約6割は財政投融資によるもの(2014年度)。

◆新規事業や企業再建の支援(「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」)

◆ベンチャー企業など高い成長性が見込まれる新事業に取り組む中小企業の支援(「新事業育成資金」、新株予約権付融資)

◆新連携・地域資源活用・農商工連携(異分野の中小企業と連携した事業活動(新連携)、地域産業資源を活用した事業活動、中小企業者と農林漁業者が連携した事業活動(農商工連携)などを支援する「新事業活動促進資金」 ) 等

【農林水産事業】※事業計画の原資(3,300億円)のうち約5割は財政投融資によるもの(2014年度)。

◆農業者の経営発展の支援(稲作等の土地利用型農業を中心にさまざまな分野で経営発展に必要な資金を融資)

◆農業参入や6次産業化(農林漁業と2次・3次産業との融合・連携)の支援(設備資金や立ち上がりの長期運転資金を融資)

◆林業者への融資(森林の育成から伐採までに必要な超長期・低利の資金を供給)

◆木質バイオマス資源の利用拡大の支援(林地残材や製材端材等を活用した発電施設の建設や、木屑焚ボイラーの導入等に対する融資)

◆漁業者の経営改善の支援(漁業経営改善支援資金による融資、「Gプロ」(注)への参画)

◆国産農林水産物の利用増加の支援(国産の原材料を取り扱う企業を対象とした食品産業向け融資) 等

(注)2007年度より、漁業者及び地域が一体となり、漁獲から製品・出荷に至る生産体制を改革する「漁業構造改革推進集中プロジェクト(Gプロ)」が立ち上げられており、

公庫(農林水産事業)も地域プロジェクトメンバーとして参画している。

沖縄振興開発金融公庫 ~沖縄における産業の振興開発に寄与する事業への出融資など~ ※事業計画の原資(1,202億円)のうち約7割は財政投融資によるもの(2014年度)。

◆融資(産業開発資金、中小企業資金、生業資金、農林漁業資金、医療資金、生活衛生資金等の貸付け)

◆沖縄における産業の振興開発に寄与する事業に必要な資金または沖縄において事業を行う中小企業者の事業の振興に必要な資金の調達支援(社債の引受け、債務の保証、債権の 譲受け)

◆新事業創出促進出資 等

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地域活性化 ―現状評価(2/3)

独立行政法人奄美群島振興開発基金 ~奄美群島における中小・零細事業者に対する金融支援~ ※事業計画の原資(26億円)のうち約1割は財政投融資によるもの(2014年度)。

◆奄美群島における産業振興の促進(中小・零細事業者に対する金融面(保証業務)からの支援等)

独立行政法人都市再生機構 ~都市再生の推進や中心市街地活性化への取組み~ ※事業計画の原資(1兆5,230億円)のうち約4割は財政投融資によるもの(2014年度)。

◆都市再生の構想企画、諸条件整備等のコーディネート業務やパートナーとしての事業参画を通じた、民間による都市再生の推進

◆地方公共団体等との連携による全国都市再生の推進

◆少子高齢化への対応、環境共生、安全・安心のまちづくりをテーマにした、地域の特性を活かした魅力ある郊外や地方居住の実現推進

◆地方都市等の中心市街地の活性化(地方都市や大都市圏の近郊都市における、中心市街地の賑わいの創出やまちなか居住の推進など地域の実情に応じた活性化への取組みの実施) 等

独立行政法人福祉医療機構 ~医療・福祉の向上に向けた貸付事業~ ※医療・福祉貸付事業に財政投融資(事業計画の原資(4,327億円)うち約9割)が活用されている(2014年度)。

◆地域の医療・福祉の向上に向けた、医療貸付事業(医療・介護の基盤整備に即応した融資)や福祉貸付事業(社会福祉事業施設の整備および民間事業者によるシルバーサービス事業に対する建築資金等の融資)

一般財団法人民間都市開発推進機構 ~民間都市開発事業に対するメザニン支援業務~ ※メザニン支援業務に財政投融資(事業計画の原資(520億円)うち約6割)が活用されている(2014年度)。

◆メザニン支援業務(国や市町村が定める特定区域において行われる防災や環境に配慮した新規の優良な民間都市開発事業に対する、特に調達が困難なミドルリスク資金の安定的な金利による長期供給)

株式会社農林漁業成長産業化支援機構 ~農林漁業の6次産業化支援~ ※事業計画の原資(350億円)のうち約4割は財政投融資によるもの(2014年度)。

◆サブファンドを通じた6次産業化事業体への出資・融資 等

株式会社日本政策投資銀行 ~ファイナンス・アドバイザリー両面からの地域事業の支援~ ※事業計画の原資(2兆1,000億円)のうち約3割は財政投融資よるもの(2014年度)。

◆地域金融機関や地方自治体等との連携のもと、地域再生に資する事業や地域中核ビジネスに対する、ファイナンス・アドバイザリー両面からの支援(地域金融機関とのリレーションを活用した事業再生・事業承継、ガス・鉄道・病院等公営事業の民間化、在庫担保等を活用した地場企業の再生、利子補給金を活用した地域再生計画に合致する事業、などに対する投融資一体型のファイナンス) 等

独立行政法人地域医療機能推進機構(2014年4月新設) ~地域医療の再生支援~ ※事業計画の原資(369億円)のうち約9割は財政投融資によるもの(2014年度)。

◆旧社会保険病院・厚生年金病院等を統合管理する新機構の傘下病院の耐震・老朽化対策等の推進による地域の医療機能の確保

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⑥地域活性化 ―現状評価(3/3)

※国民生活事業の原資のうち約7割は財政投融資によるもの(2014年度)。

<資本性ローン供給>

プロジェクトの事例(日本政策金融公庫)

<地域資源の活用、農商工連携の支援> <中心市街地活性化・商店街活性化の支援>

93

56

2814 14

13

53

21

12 5

0

20

40

60

80

100

120

2008 2009 2010 2011 2012

(件)

(年度)

「農商工等連携事業計画」認定企業への融資実績

「地域産業資源活用事業計画」認定企業への融資実績

(出所)日本政策金融公庫資料より大和総研作成

10,897 9,672

14,335 13,88516,738

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

2008 2009 2010 2011 2012

(件)

(年度)

中心市街地関連地域における事業経営者への融資実績

(注)企業活力強化資金の中心市街地関連地域における融資実績と食品貸付の

認定中心市街地などにおける融資実績の合計

(出所)日本政策金融公庫資料より大和総研作成

115 204 251 337 449 353 315 389586259

312503

557664

588 564712

1165

0

400

800

1200

1600

2000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

(件)

(年度)

協調融資 連携融資

(注)連携融資は、業務提携の覚書を締結している金融機関から紹介を受けて

融資を行った実績。協調融資は、覚書を締結している金融機関と強調して

融資を行った実績。(出所)日本政策金融公庫資料より大和総研作成

<地域金融機関との連携融資> <創業前および創業後1年以内の企業に対する融資>

【中小企業事業】

<新事業育成資金の融資>

【国民生活事業】 【中小企業事業】

1,251 1,168 1,042 1,097 1,012 1,332

645 633 544 562 514

642

847

21,250 20,141

18,478 18,125

16,465

19,469

11,090 10,787 9,654 9,753

8,693 10,023

11,245

5,000

9,000

13,000

17,000

21,000

25,000

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(企業数)(億円)

(年度)

金額(下半期) 金額(上半期)

企業数(通期) 企業数(上半期)

(出所)日本政策金融公庫資料より大和総研作成

※中小企業事業の原資のうち約6割は財政投融資によるもの(2014年度)。

263 216 182 246 231 283

555

493

538

653636

686

400

500

600

700

0

50

100

150

200

250

300

2007 2008 2009 2010 2011 2012

(企業数)(億円)

(年度)

金額 融資企業数

(出所)日本政策金融公庫資料より大和総研作成

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⑥地域活性化 ―今後の方向性と課題

将来へ向けた当該分野のあるべきコンセプト

地域活性化の実現には、それぞれの地域が持つ特色や資源を活かした産業と事業の育成・振興により、需要の開拓や雇用の創出に結びつく取組みが求められる。

それぞれの地域に相応しい成長産業・市場を見極め、育成していくためには、産学官が連携を深め、知見や経験を集積・活用していくことが有効である。

新たな産業や分野において、現行の法規制等が、民間事業者の新規参入や事業展開、また、金融機関による資金供給の妨げとなる場合には、制度の見直しを含めた検討が必要となる。

政策金融が民間金融の成長を阻害しないよう、役割分担や連携のあり方につき適時検証する必要がある。なお、公的補助を前提に事業展開する民業も多いものと考えられることから、事業の継続性が確保されるよう、民間への移譲や事業からの撤退は慎重に検討されるべきだろう。

地域経済は、長年にわたるデフレ、円高、公共事業の減少等により疲弊しており、活力をとりもどせていない状況にある。また、少子高齢化や人口減少が特に地方圏において進展しており、産業の空洞化や雇用の減少等による地域経済の衰退が懸念される。今後、長期的な持続可能性の観点から、それぞれの地域の実情に見合った街づくりや社会資本整備を進めるとともに、多様な地域資源を活かした地域活性化を促進させることが必要になっている。

地域活性化に向けた財政投融資の活用にあたり、今後さらに重要となりうる分野として、医療・介護や環境・バイオなどの新たな産業の振興、農林漁業の6次産業化、農商工の連携促進、観光業の強化などが挙げられる。財投プロジェクトや財投機関においては、

これらの産業の育成・振興に向けて、民間がとれないリスクを負担しつつ、民間活力を最大限引き出すことが求められる。また、地方公共団体による地域の再生・活性化に向けた取組みへの支援のあり方も検討が求められる。

成長可能性の高い分野については、民間金融機関による資金供給や関与のあり方も課題となる。特に、地域金融機関においては、預金が積み上がる一方で貸出の伸び悩みが継続しており、地域資金が十分に活用されていない現状がある。リスクの負担能力のある担い手の裾野を広げていくことも重要となろう。

当該分野の課題

それぞれの地域により、抱える問題や課題が異なるため、「地域」という一つの括りで財政投融資のあり方を考えることは、各地域の特性や実情に一致しなくなる可能性がある。一方、政策コストの観点から、必ずしも地方・都道府県・市町村などエリア毎に区分して検討すべきとは限らないのではないか。

「地域活性化」に資する財投プロジェクトは、多数の財投機関により実施されており、「プロジェクトベース」というよりは「実施主体ベース」となっている。事業の重複も生じている可能性があり、選択や手続き上の煩雑さが増すなど、利用者の利便性を損ねていることも考えられる。事業の重複を解消する上で、有効性・効率性の検証やデマケに関する見直しが必要である。

全体として、「地域活性化」として活用された財政投融資のコストと効果を把握することが難しく、将来へ向けた質や量の見直しを困難にしている。包括的かつ分かりやすい情報開示のあり方について検討を進めるべきではないか。

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