(1) Newton法による高次方程式の解

水素イオン濃度の計算

エクセルで化学平衡の問題を解く

2013年７月３日情報化学演習講義用資料

1 価強酸の電離平衡（濃度Ca塩酸溶液の場合）

酸と塩基の平衡 －水溶液中の種々の化学種の濃度や平衡定数を用いて、溶液中の

[H+]あるいは[OH-]を求める式を誘導してみましょう－

塩酸の電離 HCl → H+ + Cl- Ca = [Cl-]

水の電離 H2O H+ + OH- Kw = [H+][OH-]

プロトンの均衡： [H+] = [OH-] + [Cl- ]

]H[ ]H[ a +

+ += wKC 0]H[ ]H[ a2 =−− ++

wKC

酸の濃度（Ca）が大きい場合：

a- ][H ];[OH ]H[ C=>> ++

弱酸(HA)水溶液における[H+] の厳密な計算 －酢酸の解離平衡を考える－

酢酸の解離平衡

mol/L) 101.8(COOH][CH

]COOCH][H[

COOCHH COOHCH

5-

3

-3

-33

×==

+=+

+

aK

水の電離 H2O H+ + OH- Kw = [H+][OH-]

物質均衡 Ca = [CH3COO-] + [CH3COOH ]

プロトンの均衡： [H+] = [OH-] + [CH3COO- ]

(1)

(2)

(3)

(4)

(１)～(４) 式を1 つにまとめると、[H+] に関する3次方程式

0]H)[(]H[]H[ 23 =−+−+ +++wawaaa KKKKCK

[H+] >> [OH-]の場合 0]H[]H[ 2 =−+ ++aaa KCK

方程式の種類

• 一次方程式

• 二次方程式

• 三次方程式 ・・・ • n次方程式

001 =+ axa

0012

2 =++ axaxa

0012

23

3 =+++ axaxaxa

∑=

==n

i

ii xaxpxp

0)(0)( ここで

代数方程式の解 • 二次の代数方程式

とその解 001

22 =++ axaxa

2

02211

22

02211

1 24

24

aaaaa

xa

aaaax

−−−=

−+−= と

平方根の中がマイナスになれば， 実数係数であっても解は実数にならない。

非線形方程式の解法:ニュートン・ラフソン法

Newton-Raphson法（ニュートン・ラフソン法）は高次方程式の解を近似計算する数値計算法である。 ある方程式f(x)=0の解を求める場合，適当な初期値を具体的に与え,これをx0とする。f(x0)における接線をf(x)の微分から求め，x軸との交点のx座標をx1としてf(x1)における接線を求め，……ということを繰り返していく方法であ

る。この方法では一般的にはいつまで経っても終わらなくなるので，n番目のxとn+1番目のxとの差が誤差設定値を下回ったらやめてn+1番目のxを解とみなすこととする。

ニュートン・ラフソン法 (1/2) (Newton-Raphson method)

• 一次元のNewton法 )('

)(0)( 1n

nnn xf

xfxxxf −=⇔= +

を計算

・・・

を計算

を決める初期値

12

012

21

102

001202

01

0

012

2

2)1(

2)2(

)1(

)0)((0

axaaxaxaxxn

axaaxaxaxx

x

xfaxaxa

n

nnnn +

++−=+

+++

−=

⇔==++

+

と計算していくと、だんだん正解に近づいていく。完全に正解にはならないが、十分に小さな数ε、（例えばε=0.0000001とか）を用意して

となったところで

とみなして、xnを正解のxとしてしま

うわけである。

Newton法(2/2) 初期値

解 f(x)=0

x

例：次の方程式の解を求める 03 =−= xx)x(f

13 2 −= x)x('fNewton法をExcel上で実行する

1. セルB7に初期値5を代入し、セルC7に=B7*(B7^2-1)と入力する 2. セルD7に=3*B7^2-1と入力して，セルB8に=B7-C7/D7 3. セルE8にB8-B7を入力する 4. B7，C7，D7の右下コーナーにポインターをおき（+）という字にポインターが変形したのを見て、反復

の回数をnとしてセルBn，Cn，DnまでドラックするとNewton反復が繰り返される。

Solution x^3 - x = 0初期値 5許容絶対誤差 0.0000001許容相対誤差 1.00E-10

k x k f(x ) f '(x ) x k - x k -1

0 5 120 741 3.3783784 35.18054212 33.2403214 -1.6216216222 2.3200089 10.16730258 15.14732368 -1.058369493

Newton method

初期値の入力セル各行のxの値（B列）を使用してf(x)を計算

各行のxの値（B列）を使用してf'(x)を計算

この場合

課題1(本日提出）： Newton法による次の非線形方程式の実数解を求めよ

012232)(.2

0 = 32 + 21 + 6 + )(.1

234

23

=++−+=

=

xxxxxf

xxxxf

答 (1) -2.6378 (2) 3.8385

課題２ 酢酸水溶液中の水素イオン濃度の計算（7/5まで）

aaCK=+ ][H１． 簡略法による結果と比較してください

２． 酢酸ナトリウム0.05 M共存した場合，溶液のpHを求めよ

k x f(x) f'(x) xk-xk-1

1 0.001 -7.82E-10 1.24E-06 Kw= 1.00E-14

2 1.63E-03 1.46E-09 6.26E-06 6.33E-04 Ka= 1.80E-05

3 1.40E-03 2.56E-10 4.12E-06 -2.34E-04 Ca= 0.1

4 1.34E-03 1.60E-11 3.61E-06 -6.20E-05 CNa+= 0

5 1.33E-03 7.85E-14 3.58E-06 -4.42E-066 1.33E-03 1.94E-18 3.58E-06 -2.20E-08

7 1.33E-03 -5.36E-25 3.58E-06 -5.42E-13 a= 1.80E-058 1.33E-03 2.92E-25 3.58E-06 0.00E+00 b= -1.80E-069 1.33E-03 2.92E-25 3.58E-06 0.00E+00 c= -1.80E-19

x =[H+]; a = Ka; b = -(KaCa +Kw); c = -KaKw とおけば、 水素イオン濃度[H+]は x3 + ax2+ bx + c=0 から求める

HOAc+NaOHシステムの水素イオン濃度の計算

酢酸の場合、K=1.8×10-5(mol/L)

1)

2) 水のイオン積

酸の解離平衡

質量収支

電荷収支

3）

4）

酢酸ナトリウム 強電解質

5）

１），３）式によって 6）

7）

[CH3COO-]について解くと 8）

9） ４）式に代入

9）式両辺に[H+]、さらに（[H+]+K)をかけて

10）

移項して整理すると

11）

水素イオン濃度[H+]は

とおけば、

から求められる

1．次に示す式は pH の計算において、最も簡単で、よく用いられるものである。それぞれの場合につ

いてプロトン均衡式を書き、グラフ法を用いて問題を簡単法することにより、これらの式が正しいこと

を示せ。また、おのおのの場合に用いられる単純化の仮定を示し、それが適用できない条件はどういう

ものかを示せ。 （a） 強酸 pH = -logCa

（b） 強塩基 pH = pKw + logCb

（c） 弱酸 pH = ½ (pKa –logCa)

（d） 弱塩基 pH = ½ (pKw + logCb + pKa)

（e） 両性酸または塩基 pH = ½ (pKa1 +pKa2)

（f） 弱酸混合物：pH = -½log{ )( aiaii

KC∑ }

2. 3×10-5 M H2CO3、1×10-4 M H2SO4及び 2.5×10-5 M HNO3 を含む“酸性雨”の pH を求めよ。

次回の宿題（メールで提出、7/17まで）