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開催:2012年10月6日(土) 会場:京王プラザホテル(東京) 共催:第39回日本肩関節学会/アルケア株式会社 第39回日本肩関節学会ランチョンセミナー6 これまで腱板断裂の治療は,重症例を除き保存療法による経過 観察が主に選択されてきました。しかし近年,MRI や超音波によ る非侵襲的画像診断の精度が向上した結果,手術療法による腱 板修復術,中でも関節鏡視下修復術(ARCR)の施行が増加してい ます。第39回日本肩関節学会ランチョンセミナー6では,小林尚 史先生が数多くのARCR施行経験から得られた新たな知見と術 前術後の患者ケアにおける病院スタッフとの連携について解説さ れました。 骨棘発生部位や骨吸収,骨形成の混在する 不整画像により腱板断裂を予測 腱板断裂の診断は,通常MRI画像から腱板断端の形状や 筋萎縮の程度,断裂の範囲などを観察して行います。しかし腱 板断裂例においては,その骨を観察することで,腱板断裂を予 測できる可能性が考えられます。 肩峰下面における骨棘の形成は加齢や腱板断裂に伴い生じ ることが知られています。一方,上腕骨の腱板付着部は正常 例では滑らかな曲面を呈していますが,腱板断裂が生じると,そ の部位は骨吸収と骨形成が混在した不規則な凹凸を呈するよう になります。骨吸収像ならびに骨形成像を伴った表面の不整像 は主に棘上筋(SSP)付着部の上面に出現しますが,これはおよ そ腱板断裂の部位と一致します(図1)。 そこで,われわれは上腕骨大結節と小結節における腱板付 着部の表面不整像と腱板断裂との関連を調査しました。対象 は当院にて腱板断裂・五十肩(凍結肩)の診断により関節鏡視 下手術を施行し,術前CT,3D-CTによる上腕骨腱板付着部の 愛知医科大学医学部 整形外科教室 特任教授 岩堀 裕介 先生 国家公務員共済組合連合会 北陸病院 整形外科 部長 小林 尚史 先生 座長 演者 形態評価が可能であった57肩です。まず小結節表面の不整像 と肩甲下筋(SSC)断裂の関係を調査したところ,SSC 断裂例29 肩中18肩,断裂なし28肩中2肩に不整像が認められました。小 肩腱板断裂の診断と治療,私の工夫, 看護師・理学療法士とともに 図1 上腕骨筋腱板部の骨棘発生部位および 腱板付着部の不整像出現部位 A:大結節の結節間溝 B:小結節の外側部 C:大結節の上面外側 D:大結節の中面外側 A-D :骨棘の発生しやすい部位 E-G :骨吸収像と骨形成像を伴った表面の不整像の出やすい部位 (提供:小林尚史先生) A B B D C G F F E

肩腱板断裂の診断と治療,私の工夫, 看護師・理学 …...と肩甲下筋(SSC)断裂の関係を調査したところ,SSC断裂例29 肩中18肩,断裂なし28肩中2肩に不整像が認められました。小

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Page 1: 肩腱板断裂の診断と治療,私の工夫, 看護師・理学 …...と肩甲下筋(SSC)断裂の関係を調査したところ,SSC断裂例29 肩中18肩,断裂なし28肩中2肩に不整像が認められました。小

開催:2012年10月6日(土) 会場:京王プラザホテル(東京)

共催:第39回日本肩関節学会/アルケア株式会社

第39回日本肩関節学会ランチョンセミナー6

 これまで腱板断裂の治療は,重症例を除き保存療法による経過観察が主に選択されてきました。しかし近年,MRIや超音波による非侵襲的画像診断の精度が向上した結果,手術療法による腱板修復術,中でも関節鏡視下修復術(ARCR)の施行が増加しています。第39回日本肩関節学会ランチョンセミナー6では,小林尚史先生が数多くのARCR施行経験から得られた新たな知見と術前術後の患者ケアにおける病院スタッフとの連携について解説されました。

骨棘発生部位や骨吸収,骨形成の混在する不整画像により腱板断裂を予測

 腱板断裂の診断は,通常MRI画像から腱板断端の形状や筋萎縮の程度,断裂の範囲などを観察して行います。しかし腱板断裂例においては,その骨を観察することで,腱板断裂を予測できる可能性が考えられます。 肩峰下面における骨棘の形成は加齢や腱板断裂に伴い生じることが知られています。一方,上腕骨の腱板付着部は正常例では滑らかな曲面を呈していますが,腱板断裂が生じると,その部位は骨吸収と骨形成が混在した不規則な凹凸を呈するようになります。骨吸収像ならびに骨形成像を伴った表面の不整像は主に棘上筋(SSP)付着部の上面に出現しますが,これはおよそ腱板断裂の部位と一致します(図1)。 そこで,われわれは上腕骨大結節と小結節における腱板付着部の表面不整像と腱板断裂との関連を調査しました。対象は当院にて腱板断裂・五十肩(凍結肩)の診断により関節鏡視下手術を施行し,術前CT,3D-CTによる上腕骨腱板付着部の

愛知医科大学医学部整形外科教室特任教授

岩堀 裕介 先生

国家公務員共済組合連合会北陸病院 整形外科

部長

小林 尚史 先生

座長

演者

形態評価が可能であった57肩です。まず小結節表面の不整像と肩甲下筋(SSC)断裂の関係を調査したところ,SSC断裂例29肩中18肩,断裂なし28肩中2肩に不整像が認められました。小

肩腱板断裂の診断と治療,私の工夫,看護師・理学療法士とともに

図1 上腕骨筋腱板部の骨棘発生部位および腱板付着部の不整像出現部位

A:大結節の結節間溝 B:小結節の外側部 C:大結節の上面外側D:大結節の中面外側A-D : 骨棘の発生しやすい部位E-G : 骨吸収像と骨形成像を伴った表面の不整像の出やすい部位

(提供:小林尚史先生)

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ALCARE_39th_JSS_k1.indd Sec1:1ALCARE_39th_JSS_k1.indd Sec1:1 14.5.8 11:24:23 AM14.5.8 11:24:23 AMプロセスシアンプロセスシアンプロセスマゼンタプロセスマゼンタプロセスイエロープロセスイエロープロセスブラックプロセスブラック

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結節表面の不整像を腱板断裂のサインとした場合,Sensitivity(感度)は62.1%,Specificity(特異度)は92.9%,Accuracy(正確度)は77.2%,陽性予測値は90.0%という結果を得ました※。 次に大結節とSSPおよび棘下筋(ISP)断裂の関係を検討したところ,SSP,ISP断裂例46肩中30肩,断裂なし11肩中1肩に大結節表面の不整像が確認されました。大結節表面の不整像を腱板断裂のサインとした場合,感度65.2%,特異度90.9%,正確度70.2%,陽性予測値は96.8%でした。したがって,術前CT,3D-CTにおいて腱板付着部で骨吸収,骨形成の混在した不整像が認められた場合は,約9割の確率で腱板断裂を予測できることが示唆されました。このように上腕骨の腱板付着部の形態評価は腱板断裂の診断において,感度は低いものの特異度の高い所見であり,腱板断裂発生以後の推移を予測することや,治療法の選択においても重要と考えます。ただし,表面不整が見られなくても腱板断裂が生じているケースがある点には注意が必要となります。臨床現場では超音波が広く用いられていますので,以上の結果を踏まえ骨の形態を観察し腱板断裂の発生を予測すれば,超音波検査による腱板断裂の診断精度を向上することができるのではないでしょうか。 ※ Sensitivity:患者が病気にかかっている場合に検査結果が陽性になる確率Specificity:患者が病気にかかっていない場合に結果が陰性になる確率Accuracy:正確性

LHBの損傷にはSSC外側の断裂が関与

 続いて上腕二頭筋長頭腱(LHB)とSSC断裂の関連性について紹介します。LHBの状態を正常(N),軽度損傷(B1),高度損傷(B2),消失(V),脱臼(D)に分類し,各状態下でのSSC,SSP,ISPの脂肪変性を調査した結果,NからB1への悪化にはSSCの脂肪変性が,B1からB2への悪化にはSSPとISPの脂肪変性が,B2からVへの悪化にはSSCの脂肪変性がそれぞれ関与することが明らかになりました。また,LHBに高度の損傷が見られる場合には脂肪変性が強く生じていますが,LHBが脱臼した場合にはさほど強い脂肪変性は見られませんでした。これはLHBの脱臼が急激なSSCの損傷により引き起こされるためと推測されます。 さらに,LHB高度損傷例15肩における腱板断裂の分布を調べますと,SSC断裂例が10肩(66%),ISP断裂例が8肩(53%)に認められました。このことから,SSC,ISPの断裂がある症例の半数以上で,LHBが高度損傷を来していると考えられます。ただし,SSPの単独損傷例の中にもLHB高度損傷例は認められますし,SSCが結節間溝付近で部分的に断裂を来している例もありますので,これらを見落とさない注意が必要となります。

 関節鏡視下であっても,関節面から結節間溝までSSCを完全に観察することは通常困難です。そこで横靭帯を外しLHBを脱臼させ,SSCの小結節付着部最上方部の全容を観察しました。SSC断裂症例(完全断裂を除く)17肩を観察したところ,11肩では上関節上腕靭帯のpulley外側がSSCの外側部とともに断裂しており,関節面側は正常な付着を呈していました。このうち,LHBの損傷度は4肩でB1,7肩でB2となっており,SSCの外側とpulleyの断裂がLHB損傷に関与していることが明らかとなりました。また,LHBの肥大扁平化や亜脱臼も11肩に認められました。このLHBの安定化機構の病変については,関節鏡視下にても上記のことを理解し,注意深く観察すれば確認することができます。 以上を基に,当院で最近1年以内にARCRを施行したSSC断裂51肩(完全断裂19肩,部分断裂32肩,部分断裂のうち外側部の断裂16肩)を検討した結果,SSC完全断裂ではLHBの高度損傷が10肩,消失が7肩に見られました。SSC外側部の断裂ではLHBの中等度損傷が5肩,高度損傷が8肩に見られ,その他の断裂(関節面断裂,腱内断裂)ではそれほど高度のLHB損傷は観察されませんでした。この結果から,SSC外側部の損傷がLHBの高度損傷に関与していると考察されます。ただしSSC関節面の断裂例でもLHBに損傷が認められる例もあり,外側のpulleyの損傷がLHB病変に影響している場合もあると考えられます。 従来,SSC断裂は関節面断裂が多いといわれてきましたが,このように,LHBとSSC断裂の関係性の考察を進めますと, SSCの小結節付着部外側部での断裂がLHBの不安定性と実質部損傷に関与している可能性が示唆されました。

病院スタッフが情報を共有して入院から術中,術後の環境をサポート

 治療は手術のみにて完了するわけではなく,入院前から術後までの一貫したケアが重要となります。初めての入院,手術

肩腱板断裂の診断と治療,私の工夫,看護師・理学療法士とともに

図2 装具装着の注意点

固定する肩の位置は◆肘を前外側に30°程度に開いた位置(肩関節屈曲・外転30度)◆前腕の位置はおおよそ正面とお腹の中間地点⇒腱板筋の張力が均一になる肢位

肘の位置が後ろにずれないようにする 両肩の高さを同じにする

(提供:小林尚史先生)

ALCARE_39th_JSS_k1.indd Sec1:2ALCARE_39th_JSS_k1.indd Sec1:2 14.5.8 11:24:24 AM14.5.8 11:24:24 AMプロセスシアンプロセスシアンプロセスマゼンタプロセスマゼンタプロセスイエロープロセスイエロープロセスブラックプロセスブラック

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を控えた患者は,入院・手術の実際について知らない,分からないことによる不安を抱えている場合が多く,当院看護師の調査によると,手術経験がない患者は,手術経験のある患者に比べて術後疼痛が多い傾向にあります。そこで当院では,手術目的の入院患者に対し『入院オリエンテーション』DVDを作成・配布しています。院内の様子や入院の流れなどについて動画を見て疑似体験することで,初めて手術を受ける患者の不安を少しでも軽減し,入院,手術,術後と続く一連の治療にできる限りポジティブな気持ちで臨めるようサポートできればと考えています。 術前から術中,術後を通じた継続的な患者のケアにおいては,看護師や理学療法士(PT)といったスタッフが重要な役割を担っています。患者を疾患に伴う痛みから解放し,その運動機能を日常生活に支障のない状態にまで回復させるという治療目標の達成には,術後の疼痛管理や装具による固定,リハビリテーションを一貫して管理する病院スタッフと医師との連携が不可欠です。 スタッフとの情報共有と手術の円滑な進行を実現するため,当院では術前情報-入室から手術開始-術中-術後から麻酔覚醒-退室までの経過に応じた留意点を列記した術中クリニカルパスを用いています。身長,体重,血液型,感染症の有無,糖尿病や心疾患などの既往といった患者情報や,IDカード・承諾書・カルテなどの確認,抗生剤・麻薬・PCAポンプなどの使用,術後反応,術後指示などの項目の他,肩峰下除圧術の有無や腱板の断裂部位,使用したアンカーの種類と個数,長頭腱固定の有無,術後固定期間も1枚のパスでチェックしています。

術後疼痛管理には0.5%アナペイン5mL/hの持続ISBと先回り鎮痛などを採用

 有用な術後疼痛管理を模索するため,当院ではさらに看護師と協力し,斜角筋間ブロック(ISB)施行後,痛みを訴える前に坐薬を投与した場合(先回り鎮痛)の効果を検討しました。全身麻酔+0.75%アナペイン20mLの術前ワンショット・ブラインドISBの処置を行い,その後「疼痛を訴えたときに坐薬を使用した群」,「麻薬を使用した経静脈的PCA(IV-PCA)を使用した群」,「先回り鎮痛として疼痛の有無にかかわらず術後帰室時に坐薬を使用した群」に分類して検討しました。0.75%アナペインワンショット・ブラインドISBでは平均9.5時間の除痛時間が得られ,「先回り鎮痛として坐薬を使用した群」の除痛時間は,「痛みを訴えてから坐薬を使用した群」よりも約4時間除痛時間を延長することが示されました。「IV-PCAを使用した群」では除痛効果が最も長く持続していましたが,吐気の副作用が懸念されるのが欠点です。先回り鎮痛効果がしっかりと発揮されるためには,痛

みの発現する前に坐薬を投与することが重要です。 また,ISBを確実に行うために,超音波下で斜角筋の位置を確認したり,最近は小児用EDチューブを用いて持続ISBを行っています。持続ISBでのアナペインの濃度と量は,0.5%アナペインを5mL/hが最も適切であり,ほぼ坐薬の投与が不要となりました。さらに看護師がペインスコアを記録し,ペインスコアが1段階以上アップした際は0.5%アナペイン10mLのワンショットを行うなど,徹底した疼痛コントロールに励んでいます。

術前に装具を着けての実生活を試み装具装着のイメージをつかむ

 ARCRを施行した患者の運動機能を回復させるためには,装具による術後固定とリハビリテーションは欠かせません。『入院オリエンテーション』DVDでは,術後の装具固定についても詳細に説明しています。 肩の固定は,肘を前外側に30度程度に開いた位置(肩関節屈曲・外転30度),前腕はおおよそ正面とお腹の中間点となるよう肩甲骨面で固定し,腱板筋の張力が均一になる肢位を保つことが肝要です。肘の位置が後ろにずれないよう,また両肩の高さを同じぐらいに保ち,肩に異常な緊張がかからないよう留意します(図2)。就寝時は,肘が下に落ちて伸展位になると痛みが強くなるので,肩が下がらないように肩甲骨の下から肘の下まで枕・タオル等を入れて安定させています(図3)。ただし,枕で肘を持ち上げ過ぎると肩関節が内旋位となり,逆に痛みが増すため注意が必要です。シャワー浴は手術の翌日から可能になりますが,当院では水に浮かない素材を用いた入浴用の固定装具を用意しており,看護師が着脱を介助し,術後も不安なくシャワー浴や入浴ができるようにしています。 過去に手術経験があり,装具を装着するのに不安がないと答えた患者でも,実際に装着してみると本人が考えていたイメージと異なる場合が多いので,当院の入院患者には術前に装具を着けた状態で半日ほど生活してもらい,イメージとのギャップを解消する工夫を行っています。

図3 就寝時の装具装着

肩が下がらないように,肩甲骨の下から肘の下まで枕・タオルなどを入れて安定させる

(提供:小林尚史先生)

ALCARE_39th_JSS_k1.indd Sec1:3ALCARE_39th_JSS_k1.indd Sec1:3 14.5.8 11:24:25 AM14.5.8 11:24:25 AMプロセスシアンプロセスシアンプロセスマゼンタプロセスマゼンタプロセスイエロープロセスイエロープロセスブラックプロセスブラック

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2013年3月作成

発行:アルケア株式会社編集制作:株式会社メディカルトリビューン

愛知医科大学医学部 整形外科教室 特任教授

岩堀 裕介 先生

本講演に寄せて

 最後に,医師と看護師,PTとの情報共有を目的とした最近の工夫について紹介します。医師が行う手術の目的や術式等は,当然ながら術後のリハビリの方針に大きく関わる情報です。当院では腱板断裂の種類を,A)SSP損傷,B)SSP+SSC損傷,C)SSP+ISP損傷,D)SSP+SSC+ISP損傷に分類し(図4),この4タイプの腱板断裂について記載したパンフレットを病棟,外来,手術室に置いています。また,術中クリニカルパスに患者の

腱板断裂の種類や手術内容について記載し,看護師やPTなどのリハビリスタッフとそれらの情報を共有しつつ,上記4タイプに応じて適切なリハビリの方針を策定しています。 以上のように,当院ではスタッフが肩関節手術の目的や患者の状態をよく理解しながら,患者の早期の運動機能回復と再発防止に向け一丸となって尽力しています。

 小林先生のご講演には3点の重要なメッセージがあると思われます。 1点目は腱板断裂や上腕二頭筋腱損傷の状態と3D-CTの骨性形態との関連性を見いだされたことで,非常にユニークな発想です。腱板や上腕二頭筋長頭腱(LHB)の損傷の痕跡が,腱板付着部である上腕骨大結節・小結節,そしてLHBの滑走部である結節間溝部において不整・骨棘形成・骨硬化といった骨変化として残ることを証明されたのです。 2点目は肩甲下筋(SSC)腱断裂とLHB損傷との関連性の検討から,SSC外側部損傷がLHB高度損傷に強く関与することを報告されたことです。 3点目としては,患者さんの入院加療への不安を取

り除き,快適でポジティブに入院生活を送っていただくための入院オリエンテーションの重要性を訴えられました。特筆すべきは,そのDVDを自ら撮影・編集されたことです。その内容は,入院患者さんの視点に立って細部にわたりきめ細やかであり,そして飽きがこない程度のコンパクトな時間に見事に収められています。患者さんにとって最もつらい術後疼痛に対する積極的な除痛対策や,術後装具の安全で具体的な装着方法などにも触れられています。 登場する病院スタッフ(チーム小林)も実に生き生きしていて,チーム医療を尊重される先生の姿勢が見て取れます。名医には技術とともにこうした資質も必要なことが伺われました。

肩腱板断裂の診断と治療,私の工夫,看護師・理学療法士とともに

図4 肩腱板縫合術のタイプ分類

(提供:小林尚史先生)

棘上筋(SSP)

Type A SSP損傷

棘下筋(ISP)

小円筋(TMI) 肩甲下筋(SSC)Type C SSP+ISP損傷

Type B SSP+SSC損傷

Type D SSP+SSC+ISP損傷

ALCARE_39th_JSS_k1.indd 4ALCARE_39th_JSS_k1.indd 4 14.5.8 11:24:21 AM14.5.8 11:24:21 AMプロセスシアンプロセスシアンプロセスマゼンタプロセスマゼンタプロセスイエロープロセスイエロープロセスブラックプロセスブラック