▽最高高さ・オビ 10層 ▽2FL・オビ5層 ▽1FL ▽GL ±0 ▼オビ 1層 ▼オビ 2層 ▼オビ 3層 ▼オビ 4層 ▼オビ 6層 ▲オビ 7層 ▼オビ 8層 ▼オビ 9層 2090 2880 450 1050 1050 750 600 900 900 9350 1200 300 900 500 750 2390 3440 2090 3440 3440 2090 デッキ: 人工木デッキ t30 床: 長尺塩ビシート 子ども用 ロッカー ロッカー 床1: 長尺塩ビシート t2 床2: タイルカーペット貼り 軒天 軒天: ケイカル板 天井2: 有孔プラスターボード 天井1 天井1 天井1 天井2 天井2 天井1: 木毛セメント板 木小梁: ベイマツ(旧校舎古 材利用) 110×240 2-2 天井3: グラスウール マット 屋根: 粘接着工法 一文字葺 ブチルゴムシート t1.0 フッ素ガルバリウム鋼板 t0.4 屋根 屋根 笠木: ガルバリウム鋼板t0.4 ログ壁 ログ壁 ログ壁: ヒノキ角材組積 135x165(見付150) ログ壁 ログ壁 内壁: ヒノキ羽目板 貼り t15w150 内壁 デッキ 映写壁 ホワイトボード テラス テラス コリドール(外部) 図書室 司書/会議 職員室 多目的ホール WS 2-1 (ロッカー) 外壁: 桧羽目板 t15w150 0 0 0 0 グ壁 グ壁 グ壁 グ壁 2 2 2 2 20 2 20 2 0 2 カー カー カー カー ログ壁 ログ壁 ログ壁 リウム鋼板t0.4 リウム鋼板t0 4 ウム鋼板t0 4 2880 0 0 8 8 2 2 会議 会議 会議 会議 床2 床2 床2 床2 図書室 図書室 図書室 図書室 図書室 440 0 0 4 4 4 4 440 440 内壁 内壁 内壁 内壁 長尺塩ビ 長尺塩ビ 長尺塩ビ 長尺塩ビ シー 240 240 2 240 木小梁: 木小梁: ベイマツ(旧校舎古 ベイマツ(旧校舎古 ベイマツ(旧校舎古 材利用) 材利 ) 材利用) 0 20 材利用) 110×2 材利用) 110×2 2 2 2 材利用) 110×2 カル板 カル板 カル板 天井1 天井1 天井1 リド リド (外 (外 (外部) 外部 (外部) (外部) (外部) ヒノキ ヒノ ヒノ ヒノキ t15w t15w 15 t15w w 天井1: 天井1: 天井1: 天井1: ール ール ード 20 0 20 0 2-1 (ロッカ 3 3 3 ログ壁 ログ壁 ログ壁 ログ壁 ヒノキ ヒノキ ヒノキ ヒノキ ヒノキ 135x 13 135x 135x 35x 木小梁 木小梁 天井3: 3 3: 天井 グラスウール マッ グラス マッ スウ グラ 材利用) 110×240 2 240 材利用) 110×2 材利用) 110 240 木毛セメ 木毛セメ 天井1 天井1 天井1 天井1 090 0 0 9 0 0 0 天井2 天井2 天井2 天井2 司書/ 司書/ 司書/ 司書/ 0 0 0 ログ ログ ログ 天井1 天井1 天井1 天井1 オビ6・7層 △2FL オビ6層 オビ7層 オビ8層 オビ9層 オビ10層 高窓 オビ8・9層 高窓・オビ10層 黒板や掲示、観察台など児童が 直接触れる環境。ログ壁で構成 されている。 2つの天井高さで活動領域を形 作る。採光制御や設備ルートの 確保などの役割も併せ持つ。 小梁に旧木造校舎の古材を活用。 屋根と採光・換気の役割を担う。 林業 製材業 学校 施工業 山の地産更新プログラム 鉄骨柱とログ壁による教室の構成ダイアグラム ・学校の保全と更新 ・地域の産業学習 ・地域の環境学習 ・産業の啓蒙とブランド化 ・産業の活性と連携 この建築は鉄とヒノキでできている。100年以上の歴史をもつ木造校舎の建替えで、象徴的な石段に面する回廊空間が校舎全体をつなぎ、旧校舎の 記憶を継承している。主体構造は2.65mのグリッドに100φ程度の柱が配置され、必要に応じて耐震ブレースを設けることで極めてシンプルで軽快 な鉄骨造としている。それに伴い内外の壁は非構造となり、仕上げは地域の資源である尾鷲ヒノキを活用している。 山から切り出した木をロスなく利用する方法は、芯持ち材を用いることが挙げられるが、構造材は建物の規模で材質や使用量に限界がある。一方、仕 上材では節や虫食いのないものが好まれ、かなりのロスが発生する。 ハードルとなる構造を切り離し、節や虫食いのある木※1をそのまま活かす木材の新たな利用法として、ヒノキの角材をログ加工して積み、間仕切り として使用した。ログ壁は下地も仕上げもなく、ヒノキを積んだままの地肌がフィニッシュとなっている。素材の温かな質感と掲示使用にも耐え得る 強さを併せ持つログ壁は、子どもたちの空間の使い方に合わせて一定の高さごとに鉄柱へ寄り添う位置を変えている。ヒノキの壁に生じた隙間から は光や風がこもれ、隣り合う空間の気配を緩やかに紡いでいる。 休日は地域の方が気軽に立ち寄れる交流・憩いの場としても提供がなされ、地域の木が使われた図書室などが中心となり学校全体が地域の活動の 拠点の役割を担うように考えられている。 ※1三重県が「あかね材」として推奨するスギノアカネトラカミキリに侵食された材。 木材として通常の性能に関して遜色ないことが実証され、ブランド化を進めている。 敷地北側にある保存された正門より見る開口や家具の高さ、高さの異なる天井等、空間の基準となる高さで規定した複数の層(オビ)により、空間 を特徴づけている。特に天井は、空間用途に合わせて低い部分と高い部分を組み合わすことで、大きな まとまりを感じる空間と、小さく親密な雰囲気を感じる空間を共存させている。 高さの異なる天井面とヒノキの壁は、平面で描く室の領域と一致せず、複数の室や内外を横断し跨がっ ている。そのため隣接する内部や外部が連続し、流動的な性格を持つ空間となる。オビを抜き取られた開 口部は、様々な見通しを創り周辺の山並みや港の風景を切り取るフレームの役割を果たしている。 石段上の回廊を見る。コーナーの開口は図書室。前庭を介して手前が職員室。 羽目板幅(内部ではログ材高さ)150mmが建物の基本モジュールとなっている。 多目的ホール。外部のコリドールをはさみ、奥が図書室。天井に吸音性の高い 材を用い機能性を高めている。天井とヒノキの壁が図書室へと連続している。 図書室。奥の低天井は昇降口、手前のカウンターは司書スペース。教室に向かう 階段や多目的室等、ヒノキの壁で連続し、空間の結び目となっている。 教室からワークスペース(WS)を見る。WSと教室はログ壁で囲われたロッカースペースを介して連続する。引戸で空間 を視覚的に分節することができる。ヒノキのログ(見付150)の間仕切壁や羽目板は、どこでもピンナップボードとなる。 校庭より石段上の東面の北面をみる。2.65mを基準グリッドとする白い鉄骨柱と150mm幅のヒノキの羽目板が概観を形 作る。東側1回には15スパン・役40mの回廊が伸び、保存された石段と共にかつての旧校舎の印象を継承している。 設計時から地域の森林組合の方々と地域の 木の活用について、安全性・経済性・将来に わたるメンテナンス性など様々な議論を積 み重ね、地域のヒノキを壁や外壁の羽目板 として使用するに至った。ヒノキの壁は地域 性を考慮し、すべて現場で積み上げられて いる。地域が建設から関わり、今後も常に地 域の手で利用・保全が繰り返されて山に関 わる産業が地域のシンボルと共に活性する 地産型のサスティナブル建築を目指してい る。 教室の平面は2.65mのスパンの 3×3が基本となっている。旧木造校 舎の古材で組まれた天井は持ち上 げられて四周に高窓が廻り、柔らか な光と風に満ちた空間となっている。 オビで構成される壁は、高さごとに 用途・機能にあわせて位置取りを変 え、特に6.7層のログ壁は鉄骨柱に寄 り添って配置さている。それゆえ鉄骨 柱を介して隙間が生じ、一室で完結 しない立体的な教室環境を生み出し ている。 オビによる空間構成を表す断面パース 尾鷲市立尾鷲小学校 鉄骨柱 ログ壁 教室 WS ロッカー 黒板 掲示

尾鷲市立尾鷲小学校...最高高さ・オビ 10層 2FL・オビ5層 1FL GL ±0 オビ 1層 オビ 2層 オビ 3層 オビ 4層 オビ 6層 オビ 7層 オビ 8層 オビ 9層

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Page 1: 尾鷲市立尾鷲小学校...最高高さ・オビ 10層 2FL・オビ5層 1FL GL ±0 オビ 1層 オビ 2層 オビ 3層 オビ 4層 オビ 6層 オビ 7層 オビ 8層 オビ 9層

▽最高高さ・オビ 10層

▽2FL・オビ5層

▽1FL▽GL ±0

▼オビ 1層

▼オビ 2層

▼オビ 3層 ▼オビ 4層

▼オビ 6層

▲オビ 7層

▼オビ 8層

▼オビ 9層

2090 28

80

450

1050

1050

750

600

900

900

9350

1200

30090

050

0750

2390

3440

2090

3440 34

4020

90

デッキ:人工木デッキ t30

床:長尺塩ビシート

子ども用ロッカー

ロッカー 床1:長尺塩ビシート t2

床2:タイルカーペット貼り

軒天 軒天:ケイカル板

天井2:有孔プラスターボード 天井1天井1

天井1

天井1

天井2

天井2

天井1:木毛セメント板

木小梁:ベイマツ(旧校舎古材利用) 110×240

2-2

天井3:グラスウール マット

屋根:粘接着工法 一文字葺ブチルゴムシート t1.0フッ素ガルバリウム鋼板 t0.4

屋根 屋根

笠木:ガルバリウム鋼板t0.4

ログ壁

ログ壁

ログ壁:ヒノキ角材組積135x165(見付150)

ログ壁

ログ壁

内壁:ヒノキ羽目板 貼りt15w150

内壁

デッキ

映写壁

ホワイトボード

テラステラス

コリドール(外部)図書室司書/会議職員室

多目的ホール

WS2-1(ロッカー)

外壁:桧羽目板 t15w150

00000

カカカカカカカカ用用用用用用用ーーーーーーー

ググググググググ壁グ壁グ壁グ壁グ壁壁壁壁壁壁壁

222220220202室室室室室室室室室室室員室員室員室職職職

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リウム鋼板t0.4リウム鋼板t0 4ウム鋼板t0 4リリ

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ログ壁ログ壁ログ壁ログ壁壁ヒノキヒノキヒノキヒノキヒノキキ135x13135x135x35xxxx

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天井2天井2天井2天井2司書/司書/司書/司書/000ログログログググ

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オビ6・7層△2FL

オビ6層オビ7層

オビ8層オビ9層

オビ10層

高窓

オビ8・9層高窓・オビ10層

黒板や掲示、観察台など児童が直接触れる環境。ログ壁で構成されている。

2つの天井高さで活動領域を形作る。採光制御や設備ルートの確保などの役割も併せ持つ。

小梁に旧木造校舎の古材を活用。屋根と採光・換気の役割を担う。

林業

製材業学校

施工業

山の地産更新プログラム鉄骨柱とログ壁による教室の構成ダイアグラム

・学校の保全と更新・地域の産業学習・地域の環境学習

・産業の啓蒙とブランド化・産業の活性と連携

この建築は鉄とヒノキでできている。100年以上の歴史をもつ木造校舎の建替えで、象徴的な石段に面する回廊空間が校舎全体をつなぎ、旧校舎の記憶を継承している。主体構造は2.65mのグリッドに100φ程度の柱が配置され、必要に応じて耐震ブレースを設けることで極めてシンプルで軽快な鉄骨造としている。それに伴い内外の壁は非構造となり、仕上げは地域の資源である尾鷲ヒノキを活用している。山から切り出した木をロスなく利用する方法は、芯持ち材を用いることが挙げられるが、構造材は建物の規模で材質や使用量に限界がある。一方、仕上材では節や虫食いのないものが好まれ、かなりのロスが発生する。ハードルとなる構造を切り離し、節や虫食いのある木※1をそのまま活かす木材の新たな利用法として、ヒノキの角材をログ加工して積み、間仕切りとして使用した。ログ壁は下地も仕上げもなく、ヒノキを積んだままの地肌がフィニッシュとなっている。素材の温かな質感と掲示使用にも耐え得る強さを併せ持つログ壁は、子どもたちの空間の使い方に合わせて一定の高さごとに鉄柱へ寄り添う位置を変えている。ヒノキの壁に生じた隙間からは光や風がこもれ、隣り合う空間の気配を緩やかに紡いでいる。休日は地域の方が気軽に立ち寄れる交流・憩いの場としても提供がなされ、地域の木が使われた図書室などが中心となり学校全体が地域の活動の拠点の役割を担うように考えられている。

※1三重県が「あかね材」として推奨するスギノアカネトラカミキリに侵食された材。木材として通常の性能に関して遜色ないことが実証され、ブランド化を進めている。 敷地北側にある保存された正門より見る。

開口や家具の高さ、高さの異なる天井等、空間の基準となる高さで規定した複数の層(オビ)により、空間を特徴づけている。特に天井は、空間用途に合わせて低い部分と高い部分を組み合わすことで、大きなまとまりを感じる空間と、小さく親密な雰囲気を感じる空間を共存させている。高さの異なる天井面とヒノキの壁は、平面で描く室の領域と一致せず、複数の室や内外を横断し跨がっている。そのため隣接する内部や外部が連続し、流動的な性格を持つ空間となる。オビを抜き取られた開口部は、様々な見通しを創り周辺の山並みや港の風景を切り取るフレームの役割を果たしている。

石段上の回廊を見る。コーナーの開口は図書室。前庭を介して手前が職員室。羽目板幅(内部ではログ材高さ)150mmが建物の基本モジュールとなっている。

多目的ホール。外部のコリドールをはさみ、奥が図書室。天井に吸音性の高い材を用い機能性を高めている。天井とヒノキの壁が図書室へと連続している。

図書室。奥の低天井は昇降口、手前のカウンターは司書スペース。教室に向かう階段や多目的室等、ヒノキの壁で連続し、空間の結び目となっている。

教室からワークスペース(WS)を見る。WSと教室はログ壁で囲われたロッカースペースを介して連続する。引戸で空間を視覚的に分節することができる。ヒノキのログ(見付150)の間仕切壁や羽目板は、どこでもピンナップボードとなる。

校庭より石段上の東面の北面をみる。2.65mを基準グリッドとする白い鉄骨柱と150mm幅のヒノキの羽目板が概観を形作る。東側1回には15スパン・役40mの回廊が伸び、保存された石段と共にかつての旧校舎の印象を継承している。

設計時から地域の森林組合の方々と地域の木の活用について、安全性・経済性・将来にわたるメンテナンス性など様々な議論を積み重ね、地域のヒノキを壁や外壁の羽目板として使用するに至った。ヒノキの壁は地域性を考慮し、すべて現場で積み上げられている。地域が建設から関わり、今後も常に地域の手で利用・保全が繰り返されて山に関わる産業が地域のシンボルと共に活性する地産型のサスティナブル建築を目指している。

教 室 の 平 面 は 2 . 6 5 m のスパ ンの3×3が基本となっている。旧木造校舎の古材で組まれた天井は持ち上げられて四周に高窓が廻り、柔らかな光と風に満ちた空間となっている。オビで構成される壁は、高さごとに用途・機能にあわせて位置取りを変え、特に6.7層のログ壁は鉄骨柱に寄り添って配置さている。それゆえ鉄骨柱を介して隙間が生じ、一室で完結しない立体的な教室環境を生み出している。

オビによる空間構成を表す断面パース

尾鷲市立尾鷲小学校

鉄骨柱

ログ壁

教室

WS

ロッカー 黒板

掲示