6
1 滋賀県立大学 井手慎司 琵琶湖保全政策の変遷 洞庭湖-琵琶湖水生態 持続可能な発展シンポジウム 湖南省長沙市 通程国際ホテル 20181113 琵琶湖保全再生法の制定 琵琶湖をめぐる開発と保全政策の歴史 政策の枠組の編成の背景(時代の要請の変遷) 琵琶湖総合開発事業,第1期ML21計画, 第2期ML21計画,保全再生計画 琵琶湖の保全の今後の方向性 2 琵琶湖の保全及び再生に関する法律 (琵琶湖保全再生法)の制定(20159月) 目的 (第1条)国民的資産である琵琶湖を健全で恵み豊かな 湖として保全及び再生を図り、もって近畿圏における住民 の健康な生活環境の保持と近畿圏の健全な発展に寄与 し、あわせて湖沼がもたらす恵沢を将来にわたって享受 できる自然と共生する社会の実現に資する。 琵琶湖保全再生計画〔滋賀県〕の策定・実施(第3 条) 計画期間(2017年度から2020年度までの4年間 施行期日等(附則) 法律の施行の日から5年以内に必要な見直し 3 第9条 調査研究 10水質汚濁防止 (下水道整備) 11森林整備・保全 (間伐、治山事業等) 12湖辺の自然環境 の保全・再生 12湖辺の自然環境 の保全・再生 13外来動植物対策 (外来魚の駆除) 13外来動植物対策 (外来水生植物の駆除) 14カワウ被害防止 15水草の除去等 16水産資源の適切 な保存及び管理 17環境に配慮した 農業の普及 18エコツーリズムの 推進等 19湖上交通活性化 20景観整備・保全 21教育の充実 国及び関係地方公共団体が講ずべき施策 4 リーフレット「琵琶湖の保全及び再生に関する法律」のあらまし 5 政策の枠組の変遷 琵琶湖総合開発 1972-1996 第1期ML21 2000-2010 保全再生計画 2017-2020 第2期ML21 2011-2020 利水治水 守る 流域生態系の保全・再生 保全「水質保全」 水質保全 水質汚濁防止・改善 「集水域」 治水「水源山地保全涵養」 水源かん養 水源かん養/林業 「集水域」 保全 「自然環境保全・利用」 自然的環境・景観保全 生態系保全再生 景観整備保全 「湖辺域」「つながり」 利水「土地改良」 水源かん養/ 自然的環境・景観保全 農業 「湖辺域」「集水域」 「つながり」 <漁業補償> (自然的環境・景観保全) 【水産業】 「湖内」「集水域」 暮らしと湖の関わりの再生 事業の目的 ・水資源開発(利水治水 ・地域の社会基盤整備 地域振興活かす 「個人・家庭」「地域」 農林水産業 「生業」 観光・交通 (住民参画等) 推進体制 「つながり」 環境教育 (調査研究) 調査研究 (調査研究) 6 支える 琵琶湖の価値の発信

琵琶湖総合開発利水事業 - University of Shiga ...csspcat8.ses.usp.ac.jp/ses/kyouin/shakei/ide/Wesppt00.pdf · 琵琶湖治水・水資源開発 水道 工業用水道 土地改良

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1

滋賀県立大学 井手慎司

琵琶湖保全政策の変遷洞庭湖-琵琶湖水生態

持続可能な発展シンポジウム湖南省長沙市 通程国際ホテル

2018年11月13日

目 次

琵琶湖保全再生法の制定

琵琶湖をめぐる開発と保全政策の歴史

政策の枠組の編成の背景(時代の要請の変遷)

琵琶湖総合開発事業,第1期ML21計画,第2期ML21計画,保全再生計画

琵琶湖の保全の今後の方向性

2

琵琶湖の保全及び再生に関する法律(琵琶湖保全再生法)の制定(2015年9月)

目的

(第1条)国民的資産である琵琶湖を健全で恵み豊かな湖として保全及び再生を図り、もって近畿圏における住民の健康な生活環境の保持と近畿圏の健全な発展に寄与し、あわせて湖沼がもたらす恵沢を将来にわたって享受できる自然と共生する社会の実現に資する。

琵琶湖保全再生計画〔滋賀県〕の策定・実施(第3条)

計画期間(2017年度から2020年度までの4年間

施行期日等(附則)

法律の施行の日から5年以内に必要な見直し3

第9条 調査研究 第10条 水質汚濁防止(下水道整備)

第11条 森林整備・保全

(間伐、治山事業等)

第12条 湖辺の自然環境の保全・再生

第12条 湖辺の自然環境の保全・再生

第13条 外来動植物対策(外来魚の駆除)

第13条 外来動植物対策(外来水生植物の駆除)

第14条 カワウ被害防止 第15条 水草の除去等 第16条 水産資源の適切な保存及び管理

第17条 環境に配慮した農業の普及

第18条 エコツーリズムの推進等

第19条 湖上交通活性化 第20条 景観整備・保全 第21条 教育の充実

国及び関係地方公共団体が講ずべき施策

4リーフレット「琵琶湖の保全及び再生に関する法律」のあらまし

5

政策の枠組の変遷琵琶湖総合開発

1972-1996第1期ML212000-2010

保全再生計画2017-2020

第2期ML212011-2020

利水/治水

守る 流域生態系の保全・再生

保全「水質保全」 水質保全 水質汚濁防止・改善 「集水域」

治水「水源山地保全涵養」 水源かん養 水源かん養/林業 「集水域」

保全「自然環境保全・利用」

自然的環境・景観保全生態系保全再生景観整備保全

「湖辺域」「つながり」

利水「土地改良」水源かん養/

自然的環境・景観保全農業

「湖辺域」「集水域」「つながり」

<漁業補償> (自然的環境・景観保全) 【水産業】 「湖内」「集水域」

暮らしと湖の関わりの再生

事業の目的・水資源開発(利水)・治水・地域の社会基盤整備(地域振興)

活かす 「個人・家庭」「地域」

農林水産業「生業」

観光・交通

(住民参画等) 推進体制「つながり」

環境教育

(調査研究) 調査研究 (調査研究)6

支える

琵琶湖の価値の発信

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琵琶湖をめぐる開発と保全の歴史~1940年代 治水の時代

奈良時代

行基の大日山掘削計画洪水に苦しめられてきた滋賀の歴史 瀬田川の浚渫という悲願

江戸時代

河村瑞賢の大普請(瀬田川の川浚え)(1699)藤本太郎兵衛親子三代による川浚え(1791~1831)

1873 淀川水源砂防法 制定(明治6年)

1885 琵琶湖第一疎水(~1890) (明治18年 琵琶湖洪水)

1889 東海道線開通/淀川大洪水(明治22年)(琵琶湖洪水)

1896旧河川法 制定(治水)琵琶湖大洪水(明治29年.最大水位+3.76 m)/淀川改良工事(~1910)

1905 南郷洗堰完成 琵琶湖のダム湖化

1908 琵琶湖第二疎水(~1913)

1942 内湖干拓事業(~1971) 在来魚の産卵場所や稚魚の生息場所の減少

1943 淀川河水統制第一期事業(~1951)

8

琵琶湖の水位変動と瀬田川疎通能力

淀川水系流域委員会

琵琶湖河川事務所

洗堰設置前

洗堰設置後

第一期河水統制後

淀川水系改修基本計画

琵琶湖総合開発1972

瀬田川疎通能力の変遷

50 ㎥/s200 ㎥/s

400 ㎥/s

600 ㎥/s 700 ㎥/s800 ㎥/s

淀川改良工事淀川河水統制第1期事業

淀川水系改修基本計画事業 琵琶湖総合開発事業

旧洗堰(南郷洗堰)瀬田川浚渫

瀬田川浚渫 瀬田川洗堰改築瀬田川浚渫

最高水位3.76m

M29.9.13

㎥/s

琵琶

湖水

位(m) 新洗堰

瀬田川洗堰瀬田川浚渫

観測史上最低水位-1.23m H6.9.15

年平均水位

年最大水位

年最低水位

-1.03mS14.12.4

水位の低下と安定化:瀬田川の近代史は,疎通能力をいかに高めるかの歴史であった.

9

琵琶湖をめぐる開発と保全の歴史1950-60年代 水質悪化の始まり

1950 琵琶湖国定公園 指定(琵琶湖八景 制定)

1961 瀬田川洗堰完成

1962 除草剤(PCP)による漁業被害 <漁獲量減少のはじまり>

1963北湖一円にコカナダモ繁茂 <外来種問題のはじまり>圃場整備事業の制度化 <用排水分離のはじまり>

1964新河川法 制定(治水+利水:水系一貫管理制度の導入)<滋賀県知事が琵琶湖の河川管理者に> 琵琶湖大橋 開通

1965 滋賀県造林公社設立(7,115 ha)<スギ・ヒノキ植林のはじまり>

1967 公害対策基本法 制定/大中の湖干拓完成

1968 アンチモン公害(米原) <公害問題のはじまり>

1969琵琶湖にカビ臭発生 <富栄養化の兆し>滋賀県公害防止条例 制定/大津市公共下水道供用開始

滋賀県内の新規立地工場と工場用地の動向

滋賀県内の新規立地工場の数は,特に1960年代に多かった.10

琵琶湖総合開発

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400,000

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1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010

滋賀県の人口

国内第5位の人口増加率(2005年国勢調査)

滋賀県における人口は,特に1970年代から急激に増加した

11

琵琶湖総合開発

12

琵琶湖をめぐる開発と保全の歴史1970年代前半 工場排水の規制と大規模開発のはじまり

1970水質汚濁防止法 制定<滋賀県で石けん運動(消費者運動として)始まる>

1971環境基準 制定/農薬取締法 改正美しい湖国をつくる会 結成びわ湖を美しくする運動琵琶湖鳥獣保護区 設定

1972

大津市びわ湖を美しくする運動実践本部 設立PCB公害(草津)琵琶湖総合開発計画(近畿圏整備法[1963]の下)閣議決定(~1996)<大規模開発のはじまり>滋賀県水質汚濁防止法第3条第3項の規定に基づく排水基準を定める条例/滋賀県公害防止条例(改正)

1973 オオカナダモ大繁茂/彦根市沖に局部的赤潮発生

1974びわ湖造林公社設立(12,507 ha)滋賀県造林公社に吸収合併(2012)

近江大橋 開通/武村正義知事誕生

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3

政策の枠組の変遷琵琶湖総合開発

1972-1996第1期ML212000-2010

保全再生計画2017-2020

第2期ML212011-2020

利水/治水

守る 流域生態系の保全・再生

保全「水質保全」 水質保全 水質汚濁防止・改善 「集水域」

治水「水源山地保全涵養」 水源かん養 水源かん養/林業 「集水域」

保全「自然環境保全・利用」

自然的環境・景観保全生態系保全再生景観整備保全

「湖辺域」「つながり」

利水「土地改良」水源かん養/

自然的環境・景観保全農業

「湖辺域」「集水域」「つながり」

<漁業補償> (自然的環境・景観保全) 【水産業】 「湖内」「集水域」

暮らしと湖の関わりの再生

事業の目的・水資源開発(利水)・治水・地域の社会基盤整備(地域振興)

活かす 「個人・家庭」「地域」

農林水産業「生業」

観光・交通

(住民参画等) 推進体制「つながり」

環境教育

(調査研究) 調査研究 (調査研究)13

支える

琵琶湖の価値の発信

琵琶湖総合開発 利水事業

利 水利 水 県内利水県内利水

水 産水 産

琵琶湖治水・水資源開発琵琶湖治水・水資源開発

水 道水 道

工業用水道工業用水道

土地改良土地改良

水 産水 産

漁 港漁 港

湖辺治水湖辺治水

下流利水下流利水

14

新規開発水量40m3/sec

滋賀県における水稲の作付面積・平年収量・圃場整備率

作成:佐藤祐一 出典:作物統計(農林水産省)と滋賀県農業技術振興センター資料

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10a当

たり平

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量(kg)

水稲

の作

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作付面積 10a当たり平年収量

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圃場整

備率

圃場整備率

15

琵琶湖総合開発

用排水分離:移動経路の分断

琵琶湖総合開発 治水事業

治 水治 水

流入河川治 水流入河川治 水

河 川河 川

ダ ムダ ム

砂 防砂 防

造林および林道造林および林道

治 山治 山

琵琶湖治水・水資源開発琵琶湖治水・水資源開発

湖辺治水湖辺治水

下流利水下流利水

水源山地保全涵養水源山地保全涵養

16水陸移行帯の消失/移動経路の分断/土砂供給の減少

滋賀県内における水害の経年変化

作成:佐藤祐一 出典:滋賀県災害史(第1部~第5部)

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家屋

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者数(人

死傷者数

家屋被害(全壊・半壊・床上浸水)

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一日

最大降

水量

(mm)

※彦根気象官署のデータ

13号台風

伊勢湾台風

第2室戸台風

秋雨前線・台風

16号台風

17

琵琶湖総合開発

琵琶湖総合開発 保全事業

保 全保 全

水 質保 全水 質保 全

自然環境保全・利用自然環境保全・利用

下 水 道下 水 道

し 尿 処 理し 尿 処 理

畜産環境整備施設* 畜産環境整備施設*

農業集落排水処理施設*農業集落排水処理施設*

ごみ処理施設*ごみ処理施設*

水質観測施設*水質観測施設*

都 市 公 園都 市 公 園

自然公園施設自然公園施設

自然保護地域公有化自然保護地域公有化

道 路道 路

港 湾港 湾

*1982年の変更時に追加

18

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4

特別の財源措置国庫補助率の嵩上げ下流負担金 602億円下流融資金 50億円

19

全国・滋賀県の下水道普及率の推移

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1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

全国平均

滋賀県

20出典:滋賀県下水道公社

88.3% in 20157th highest in Japan

汚水処理人口普及率は98.5%で全国第3位

琵琶湖総合開発

湖南中部浄化センター運用開始

21

琵琶湖をめぐる開発と保全の歴史1970年代後半 赤潮発生と石けん運動

1976 琵琶湖環境権訴訟(~1989判決)

1977淡水赤潮大発生(5月27日)滋賀県立衛生環境センター 開設

1978

びわ湖を守る粉石けん使用推進県民運動県連絡会議(びわ湖会議) 結成 <運動の水質保全への収斂>(同会議は2008年5月27日に解散)各市町村に水環境を守る生活推進協議会 設立(16市町)

1979 滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例(通称「琵琶湖条例」)制定

1980 環境教育実践推進校 指定開始/環境教育副読本「あおいびわ湖」等発行

22

琵琶湖をめぐる開発と保全の歴史1980年代前半 富栄養化対策の時代

1981雨森倶楽部活動開始わがまちを美しくコンクール金賞受賞(1983)雨森まちづくり委員会 <農村アメニティ運動>

1982湖沼に係る窒素・リンの環境基準設定湖南中部浄化センター 運転開始滋賀県琵琶湖研究所 設置

1983南湖に初のアオコ発生(9月)びわ湖フローティングスクール(うみのこ)開始有機塩素系化合物による地下水汚染 発見

1984ふるさと滋賀の風景を守り育てる条例(風景条例)第1回世界湖沼環境会議 開催(大津)湖沼水質保全特別措置法

1985窒素・リンの排水基準の追加湖沼法の指定湖沼に指定 第1期琵琶湖に係る湖沼水質保全計画 策定

写真:琵琶湖研究所

23

琵琶湖をめぐる開発と保全の歴史1980年代後半 市民活動団体の勃興

1986 大津市河川愛護団体連合会結成 <河川愛護運動>

1988

甲良町ふるさと創生「自ら考え自ら行う地域づくり事業」開始甲良町グラウンドワーク水環境を守る生活推進事業 生活推進協議会(50市町村)「よみがえれ琵琶湖」署名運動(34万人)

1989水と文化研究会発足(ホタルダス) (第7回日本水大賞受賞)環境生協(現碧いびわ湖)設立

1980年代後半 ブラックバス増殖のピーク

1990 蒲生野考現倶楽部・びわ湖自然環境ネットワーク 発足

地球環境問題への注目1985年 オゾンホールの確認1988年 気候変動に関する政府間パネル発足

24

琵琶湖をめぐる開発と保全の歴史1990年代前半 新たなキーワードの登場

1990 琵琶湖リゾートネックレス構想 策定

1991 北湖でピコプランクトン異常発生

1992

瀬田川洗堰操作規則 運用開始

滋賀県琵琶湖のヨシ群落の保全に関する条例 制定

<生態系の保全>

1993環境基本法琵琶湖 ラムサール条約の登録湿地に

1994環境基本計画 <水環境の保全+流域>観測史上最低水位-123cm

1994 ストップフロン滋賀 発足

水質水環境+流域流域生態系

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5

25

在来の魚介類の総漁獲量は1955年以来減少の一途をたどっている

•産卵・生息場所(水陸移行帯)の消失/移動経路の分断<内湖干拓・治水利水事業(水位操作)>•湖底の泥質化•【農薬の流入/水質汚濁】•【外来魚による捕食圧】•(採捕圧[貝類・水草]の減

少/貧栄養化/産卵に適した砂利質の河床の減少)

出典:「マザーレイク21計画(琵琶湖総合保全整備計画)」第1期の評価と第2期以後の計画改訂の提言

琵琶湖総合開発

瀬田川洗堰操作規則運用開始

琵琶湖平均水位の変遷

26

出典:「瀬田川洗堰の弾力的な操作方法の確立について」滋賀県(2013)

27

琵琶湖をめぐる開発と保全の歴史1990年代後半 ボランティア運動論の確立

1995阪神淡路大震災 <ボランティア元年>滋賀県立大学 開学生物多様性国家戦略 策定

1996

豊穣の郷 赤野井湾流域協議会 設立 <県内初の流域協議会>みずすまし構想 策定みずすまし推進協議会滋賀県環境基本条例/生活排水対策推進(みずすまし)条例 施行滋賀県立琵琶湖博物館 開館

1997

ナホトカ号原油流出事故ボランティア運動の理論化

淡海ネットワークセンター 設立

エコライフ地域住民活動推進事業 県エコライフ推進課

生活の質や意味の追求 問題解決と同時に共存の実現 人々の幸福追求とともに自己実現の達成

ボランティア運動の哲学

28

琵琶湖をめぐる開発と保全の歴史1990年代後半 総合開発から総合保全に

1997

琵琶湖総合開発計画 終了県琵琶湖環境部 設置滋賀県環境総合計画 策定 <水環境の保全>河川法改正(治水+利水+環境)河川整備計画川づくり会議 設立琵琶湖の総合的な保全のための計画調査(六省庁,~1998)<水質保全,水源かん養,自然的環境・景観保全>

1998

みずすまし推進協議会 設立(~2000)草津市コミュニティ支援センター 設立近江八幡市 八幡堀水と緑の風景を守り育てる協定書浅小井町が近隣景観形成協定の認定環境影響評価条例 制定

1999

地球温暖化防止対策地域推進第1次計画 策定内湖復元構想浮上/川づくり会議 設立(~2002)滋賀グリーン購入ネットワーク設立大津市環境基本計画 策定

政策の枠組の変遷琵琶湖総合開発

1972-1996第1期ML212000-2010

保全再生計画2017-2020

第2期ML212011-2020

利水/治水

守る 流域生態系の保全・再生

保全「水質保全」 水質保全 水質汚濁防止・改善 「集水域」

治水「水源山地保全涵養」 水源かん養 水源かん養/林業 「集水域」

保全「自然環境保全・利用」

自然的環境・景観保全生態系保全再生景観整備保全

「湖辺域」「つながり」

利水「土地改良」水源かん養/

自然的環境・景観保全農業

「湖辺域」「集水域」「つながり」

<漁業補償> (自然的環境・景観保全) 【水産業】 「湖内」「集水域」

暮らしと湖の関わりの再生

事業の目的・水資源開発(利水)・治水・地域の社会基盤整備(地域振興)

活かす 「個人・家庭」「地域」

農林水産業「生業」

観光・交通

(住民参画等) 推進体制「つながり」

環境教育

(調査研究) 調査研究 (調査研究)29

支える

琵琶湖の価値の発信

30

マザーレイク21計画琵琶湖総合保全計画(2000)

琵琶湖の未来像と段階的目標を示す

施策の体系化(水質保全,水源かん養,自然的環境・景観保全)

環境施策と環境保全運動を車の両輪と位置づける

琵琶湖の保全を集水域全体の取り組みから流入河川の流域毎の取り組みの総体へとシフトさせた

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6

31

琵琶湖をめぐる開発と保全の歴史2000年代 水環境から流域環境の保全に

2000東近江水環境自治協議会 設立アジェンダ21おおつ(大津市地球環境保全地域行動計画) 策定マザーレイク21計画 策定流域環境保全運動の提唱

2001

流域協議会 設立(2001~)近江八幡市環境基本条例 制定夢~舞めんと滋賀近江八幡市 水と緑の市民環境会議 発足第9回世界湖沼会議 開催早崎内湖干拓地の湛水実験開始おおつ環境フォーラム 発足

2002琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例 制定

農業体験学習「たんぼのこ」事業 開始

32

琵琶湖をめぐる開発と保全の歴史2000年代 流域環境から流域生態系の保全に

2003第3回世界水フォーラム 開催滋賀県環境こだわり農業推進条例 制定環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律 制定

2004琵琶湖流域ネットワーク委員会 設立滋賀県環境学習の推進に関する条例 制定

2005特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律施行

滋賀県琵琶湖・環境科学研究センター 開所

2006ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例 制定重要文化的景観の全国第1号として「近江八幡の水郷」が選定魚のゆりかご水田プロジェクト/琵琶湖森林づくり県民税 開始

2007森林環境学習「やまのこ」事業 開始琵琶湖の全循環が大幅に遅れ,3月下旬に(深層部の低酸素化)

2009 オオバナミズキンバイの生育確認(赤野井湾)

2010 生物多様性条約第10回締約国会議 <生物多様性>

政策の枠組の変遷琵琶湖総合開発

1972-1996第1期ML212000-2010

保全再生計画2017-2020

第2期ML212011-2020

利水/治水

守る 流域生態系の保全・再生

保全「水質保全」 水質保全 水質汚濁防止・改善 「集水域」

治水「水源山地保全涵養」 水源かん養 水源かん養/林業 「集水域」

保全「自然環境保全・利用」

自然的環境・景観保全生態系保全再生景観整備保全

「湖辺域」「つながり」

利水「土地改良」水源かん養/

自然的環境・景観保全農業

「湖辺域」「集水域」「つながり」

<漁業補償> (自然的環境・景観保全) 【水産業】 「湖内」「集水域」

暮らしと湖の関わりの再生

事業の目的・水資源開発(利水)・治水・地域の社会基盤整備(地域振興)

活かす 「個人・家庭」「地域」

農林水産業「生業」

観光・交通

(住民参画等) 推進体制「つながり」

環境教育

(調査研究) 調査研究 (調査研究)33

支える

琵琶湖の価値の発信

34

マザーレイク21計画第2期計画期間における新たな取り組みの方向性

34

35

琵琶湖をめぐる開発と保全の歴史2010年代~複数の保全計画が並走する時代に

2011マザーレイク21計画 第2期改定(~2020)環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律 改正琵琶湖の世界的価値を考える会 開催

2013台風18号による瀬田川洗堰の全閉(9月16日02:40~14:30.41年ぶり,南郷洗堰の完成から8回目) 内湖再生全体ビジョン 策定

2014 水循環基本法 成立

2015

琵琶湖の保全及び再生に関する法律 公布・施行(9/28)(2020年までの見直し)日本遺産認定 「琵琶湖とその水辺景観-祈りと暮らしの水遺産」

生物多様性しが戦略 策定 <生物多様性と文化>

2016 琵琶湖の保全及び再生に関する基本方針 策定(4/21)

2017第7期琵琶湖に係る湖沼水質保全計画 策定(3/24)(~2020)琵琶湖保全再生計画 策定(3/30)(~2020)国立環境研究所琵琶湖分室 開所

2020 東京オリンピック

琵琶湖の保全の今後の方向性 流域生態系の保全・再生(環境)

生き物の産卵・生息環境の物理的再生

水陸移行帯の再生/移動経路の復活/湖底環境の改善(耕耘や適切な土砂供給)

水質管理

汚濁負荷対策・貧栄養化対策/農薬の管理

外来種・鳥獣被害対策

暮らしと湖の関わりの再生(社会)

琵琶湖の価値の再評価/治水・利水に対する考え方の見直し/暮らし方の見直し

里湖(採捕圧)の復活

湖を活かす取り組み(経済)36