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Carbon nanotubes as fillers

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●特集 エラス トマ ーにおけるフ ィラーの最近の技術動向

フ ィ ラ ー と して の カ ー ボ ンナ ノ チ ュ ー ブ

野 口 徹*1・ 曲 尾 章*2・ 岩 蕗 仁*3・ 永 田 員 也*4

Carbon Nanotubes as Fillers

Toru NOGUCHI, Akira MAGARIO (Development Center Nagano, Nissin Kogyo Co., Ltd. , Kazawa 801, Toumi-city, Nagano 389-0514, Japan), Hitoshi IWABUKI, Kazuya NAGATA (Material Technology Department, Industrial Technol-ogy Center of Okayama Prefecture, 5301 Haga, Okayama-city, Okayama, 701-1296, Japan)

Carbon nanotubes (CNTs) have been drawing much attention as fillers for composites because they have extraor-

dinarily high strength, elastic moduli, flexibility and aspect ratios as well as superior electrical and thermal properties. In this article, author review the studies on composites fabricated with CNTs and resin, metal or elastomer matrices

including the latest researches on CNT-filled aluminium composites and elastomer composites. When CNTs were uni-formly incorporated in elastomers, isotropic enhancement in their tensile strength and moduli were observed. The

flow phenomena at high temperatures disappeared in non-cured rubber matrix composites and thermoplastic elas-tomer matrix composites with uniform CNT dispersion. These CNT reinforcements are thought to be applicable for

producing high efficiency rubber products and their recycling.

Key Words : Carbon nanotube , Rubber Matrix Composite, TPE, Nanocomposite, Reinforcement, Filler

1.は じ め に

複合材料 とは,異 種の素材を複数組み合わせることによ

って単一の素材では不可能な機能の発現 と高性能化 を目指

すもので,こ こではフィラーを充てんするタイプの複合材

料について説明する.マ トリックスとしては高分子,金 属,

セラミックスなど,フ ィラー としては様々な無機粉体や繊

維材料が用い られている.繊 維材料では,天 然繊維,有 機

合成繊維,無 機繊維,金 属繊維 など多岐にわたっている.

フィラーとしての繊維は,繊 維の物理的性質は元 より繊維

径,繊 維長,繊 維の断面形状,お よび表面の化学的性質な

ど数多 くの因子が複合材料の特性 を左右する.こ れまで,

あ らゆる繊維状物質が検討され,複 合材料の研究開発者の

長年の夢の一つが繊維径 を細 くすることである.ナ ノファ

イバー効果としてはサイズ効果,超 分子配列効果,階 層構

造効果などが考えられてお り1),実 用上は精密 な複雑形状

品の高性能化が考 えられる.特 に,繊 維間の距離や配置な

どが必然的に微小 となり,繊 維 とマ トリックスの界面の影

響も強く現れるなど,こ れまでにない構造体 を生み出す可

能性が期待 される.一 方,1985年 のフラー レンの発見2)

以来,ニ ューカーボ ン材料への関心の高 まる中,1991年,

飯島がマルチウォールカーボンナノチューブ(MWNT)を

発見 し構造 を明 らか に した3).カ ー ボ ンナノチ ュー ブ

(19)

(CNT)は 炭素原子で出来た筒状の円筒形物質であ り,長

さは数μmか ら数十μm以 上 に及ぶ.周 知の通 り,そ の

後の10年 のCNTに 関する活発 な研究は目を見張るものが

あ り,直 径lnm程 度の単層のシングルウォールナノチュ

ーブ(SWNT)の 発見か ら,CNTの 合成法,表 面処理法な

どの進歩に加え,CNTの 数 々の興味深い性質が明らか と

なってきた4).こ こでは,マ トリックスにゴムを用いた複

合材料 を中心にフィラー としてのCNTの 最新動向を概説

したい.

2.CNTの 構 造 と物 性

有機合成繊維では繊維径0.1~ 数μmの 超極細繊維が開

発 され,最 近では20nm繊 維径 の紡糸 も可能になってい

る5).無 機系では繊維径100~500nmの 各種 ウィスカーが

活発 に開発 されているが,直 径1~100nmのCNTは 一桁

から三桁細い.CNTは 炭素原子の六角網の平面 を筒状に

した形状をしてお り,円 筒の先端部は五員環構造によって

閉じた構造をとっている4).多 層の場合,複 数の円筒が積

層 されてMWNTを 作 っている.つ ま り,CNTの 形態上

の特徴 は中空で細長いこととなる.CNTの 詳 しい構造や

製法,生 成メカニズムについては省略す るので他の文献を

参照 されたい4・6・7).CNTに 大 きな期待が集 まったのは特

異な構造だけでなく,興 味深い性質が明らかにされてきた

205

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フ ィラー としての カー ボ ンナ ノチ ュー ブ 日本ゴム協会誌

からである.銅 よりも電気を流 しやす くダイヤモン ドより

も熱が伝わりやすいほかに電子放出能があるなど,数 々の

報告がなされ応用への期待は高 まっている4・6,8).表1に

数種 の高弾性率,高 強度繊維 の物 性 の比 較 を示 した.

CNTの 力学的性質 は測定が難 しいため実測例 が少 な く,

計算例は数多いが構造 も多彩なため一言で表 しに くい.他

のフィラーは組成や製法 によってかなり値が異なるので表

1は お よその 目安に して頂 きたきい4・9・10).総じてCNT

は非常に弾性率 と強度が高 く,計算ではMWNTで1.8TPa,

SWNTで は約5TPaと いう途方もないヤ ング率が求め られ

て他 のフィラーを圧倒 しているll-13).し か も,CNTは

弾 ・塑性変形を示す と言われていることから,柔 軟な複合

材料が得 られる可能性 があるの も利点であ る14).な お,

紙面の関係で樹脂系15-21),お よび金属系22-26)複 合材料に

ついては解説を省略するので参考文献を参照されたい.

3.CNT補 強ゴムおよび熱可塑性エラス トマー系複合材料

3.1報 告例

ゴムマ トリックス複合材料の報告例は金属系 と同様に少

ないが,そ の理由は異なると思われる.ゴ ム技術者の多 く

はCNTを フィラー として一度 は検討 したことがあるが,

試験評価 を断念 した技術者が多いのではないか と想像され

る.そ れは,CNTの あまりの高価格,CNT入 手の困難 さ

などの現実的 問題 に加 えて四桁 以上 も弾性率 の異 なる

CNTと ゴム類の ミスマ ッチを懸念 したためと推定 してい

る.少 ない研究の中で,Frogleyら はSWNT充 てん室温硬

化型シリコー ンゴムの引張特性,補 強機構,フ ィラーの配

向などを報告 した27).ト ルエ ンで希釈 したシリコーンゴ

ム溶液中,超 音波下でフィラーを混合 し乾燥後,フ ィルム

化 したもので,引 張試験の結果,100%ま での比較的低い

変形域の応力は数倍に増大するが,切 断時伸 びは大きく低

下 し引張強さも低下 した.初 期応力 は低アスペク ト比では

Guthの 理論,高 アスペク ト比ではHalpin-tsi理 論に適合 し,

SWNTは バ ンドル単位で補強するとした.SWNTバ ン ド

ルとはSWNTが 凝集 した直径10~15nmの 束のことで,

これではSWNT個 々の特性 を出 し切 っているとは思 われ

ない.一 方,Valentiniら はPP(70wt%)と エチ レンプロピ

レンゴム(EPDM,30wt%)の ブ レン ドにSWNTを 最大

1wt%機 械 混合 した複 合材 料 の貯 蔵 弾性 率 は0.25~

0.75wt%を 極大とし1wt%で は低下することを報告してい

る28).低 濃度のSWNTはPPの 結晶化 を促進 し,こ れは

SWNTバ ンドルにPPが インターカレー トした結果 として

いる.室 温付近での貯蔵弾性率はIGPa近 い値 を示 してい

るので,こ の複合材料はゴム系 とは言いがたいが参考にな

る点が多い.Koernerら は200~300nm直 径のCNFを 熱

可塑性エラス トマーに充てん した複合材料の興味深い応力

回復挙動 を報告 している29).

3.2複 合材料の構造 と物性

3.2.1CNTの 分散性 数種のCNTを ゴムや熱可塑性

エラス トマー(TPE)に 充てんした複合材料を作製 し,そ

の構i造と物性を報告 してきた著者 らのデータ30-34)を中心

に概略を解説する.使 用 した平均直径13nmのMWNT原

料粉(ILJIN社 製)のSEM像 を図1に 示 した.MWNTは 数

十~数百μmの 粉状に凝集 し,取 り扱い性 はカーボ ンブ

ラックなどの粉体 とあま り変わらない.拡 大 した図1で は,

非常 に細いMWNTが 複雑に絡み合 っているのが分かる.

また,MWNTの 末端 はご く少数 しか見 られないことから

MWNTは 非常 に長 く,メ ーカ保障の10~50μmと す る

と,ア スペ ク ト比は1000~5000と いう大 きな値 となる.

このMWNT粉 を各種のゴムにロールで混合 し圧延 して無

架橋試料 を得た.ま た,ロ ール混合時にパーオキサイ ドを

配合 して圧 延 しプ レス架橋 して架橋 試料 を作 製 した.

EPDM系 では島部が数十μmサ イズの海 一島構造 となる

ことを報告 したが30・32),図2に 示 した複合材料 断面の

SEM像 に白 く光って見 えるのがMWNTで あ り,EPDM

の島部はMWNTの 凝集が認め られた.一 方,NR系,ニ

トリルゴム(NBR)系 ではMWNTが 均一に分散し均質構造

を取 ることが分かる.EPDM系 の島の部分 と海の部分 を

さらに拡大 して(×50k)図3に 示 した.島 部(a)はMWNT

表1各 種 フィラーの物性

図1MWNT原 料粉のSEM像(×20k)

206 (20)

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が凝集 してお りゴム分 はわずか しか見 られないが,海 部

(b)は 逆にMWNTは 疎である.こ のように,EPDM中 へ

のMWNTの 均 一分散 は難 しい一方,NRやNBRで は

MWNTが 均一に分散 している.以 上のことか らNBRの 高

い極性 もしくはNRの 素練 り中に生成 した多量のフリーラ

ジカル35・36)がMWNTの 均一分散 に必要であると推定 さ

れる30).こ の他 スチ レンブタジエ ンゴム(SBR)中 へ も

MWNTは 良好 に分散 した.吉 海 らはMWNTの 各種 のゴ

ム中への分散性 について調べ,NR中 へは均一分散するが

NBR,SBRな どその他の ゴムでは均一分散 しないと報告

している37).原 料のMWNTやSWNTに は多量の不対電

子が存在す ることか ら34),こ の分散性の相違 はCNTの 構

造,特 に表面の性質によると推定 される.カ ーボ ンブラッ

クやシリカの ようなナノ粒子の分散性 については,光 学顕

微鏡によって大 きな凝集塊の消失の程度をランク付けして

評価 しているが定量性 に欠ける.CNTも 同様の手法を用

いているが,CNTは 大 きなアスペク ト比 を有する繊維状

物質である点,さ らに複雑で評価 しに くい.現 在開発中の,

ESR34)も しくは3次 元透過型電子顕微鏡 を用いてCNTの

分散性 を定量評価する方法38)の 完成が待たれる.MWNT

の分散の悪かったEPDMの 場合,強 いせん断力が得 られ

る低温練 りと,せ ん断力は小さいが分子鎖が切断 して多量

のフリーラジカルが生成する高温練 りを組み合わせること

によってMWNTの 分散性が向上す ることも示 されてい

る32,34).

TPEで あるスチ レンーブタジエ ンースチ レン トリブロ

ック共重合体(SBS)中 へ はSBRと 同等の分散性が得 ら

れた33).さ らにエポキシ・基の導入によって,よ り均一 に

MWNTが 分散 し,100℃ 付近で見 られる流動が消失 し

た34).し かも練 り返 しが可能なことか ら,高 温での使用の

制限,永 久ひずみが大 きいなどのTPEの 大 きな欠点を補

うものとして注 目される.ま た,金 属系22),樹 脂系18)に

も見 られるが,ゴ ム系,TPE系 で も,CNTに より耐熱性

が大 きく向上することは重要である.

3.2.2マ トリックス ゴム との濡 れ性MWNTを

20phr充 てんしたNR系,NBR系 の複合材料の引張破断面

のSEM像(×50k)を 図4に 示 した.白 く光っているのが

ゴム表面に出ているMWNTで あ り,3kVの 高い加速電圧

で撮影 したため内部の屈 曲したMWNTの 一部 を見ること

が出来る.通 常,短 繊維補強ゴムの破壊状態は,繊 維 とマ

トリックスの接着が悪いと繊維 とマ トリックスの界面に亀

裂が生 じるが39),表 面に出ているMWNTの 根元の部分,

図2MWNT(20phr)充 て ん複 合 材 料 の 断面 のSEM拡 大 像(×10k)

マ トリ ック ス:[al;EPDM,[b】;NR,[c];NBR

図3MWNT(20phr)/EPDM複 合 材 料 断 面 の 海 島 部 の拡 大SEM像

(×50k):(a)島 部,(b)海 部

図4MWNT(20phr)充 て ん 複 合材 料 のSEM像(×50k),マ トリ ッ

クス:(a);NR,(b):NBR

(21) 207

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フィ ラー と して の カー ボ ンナ ノチ ュー ブ 日本ゴム協会誌

お よび内部のMWNT/マ トリックス接触界面 に亀裂 は認

め られない.ま た,MWNTと マ トリックスの濡れが悪 く

界面剥離 な ら,表 面 に出てい るMWNTと ほ ぼ同数 の

MWNTの 抜けた穴が見 られるもの と思われるが,そ の よ

うな穴 は見 られなかった.以 上のことか らMWNTと マ ト

リックスの接着は良好であ り,こ れは,分 散性に影響を与

えた と推定 しているゴムの極性や フリーラジカルの効果 と

思われるが,詳 しい検討が必要である.

3.2.3複 合材料の物性 と配向性 図5にNR系 複合材

料の低伸長応力 を示 した.Thostensonは 理論計算によっ

てMWNTの 密度を直径の違いによって1.4~2.2と してい

るが17),ゴ ム単体 と各複合材料の比重 を求めてMWNTの

密度 を概算す ることによって2と いう平均値 を得たので,

体積 充 てん率 は密度2を 用 いて計算 した.MWNTの

2vol%(5phr)配 合系では低伸長応力が50~100%増 大 し,

21vo1%(60phr)配 合系では15~30倍 の大 きな増大 となっ

左30).ま た,NR系,EPDM系 の引張強さ(TB)を 図6に

示 した.平 均直径100nmのMWNTIOOと 平均直径28μm

の炭素繊維(CF)配 合系 を比較 とした.NR系 では,低 濃度

ではMWNT100とMWNT13の 相違 は見 られないが,

15vol%以 上の高充てん率ではMWNT13に よる引張強 さ

の増大が顕著である.CF配 合系ではほとんど補強効果は

見られなかった.EPDM系 の場合,MWNTI3配 合系の方

が太いMWNT100配 合系 よ り引張強さが小 さくな り,こ

れはMWNT13の 分散が悪 く欠陥が生成 した結果と思われ

る.こ れ らの引張強さが増大 したことは,Frogleyら の結

果27)と異なっている.こ れは,Frogleyら がマ トリックス

にシリコーンゴムを用いたためCNTの 分散が不均一であ

ったか,一 般に引裂きの弱いシリコー ンゴムに原因がある

と思われるが,詳 細 は不明である.

短繊維補強複合材料は列理方向へ短繊維が配向し39),配

向方向には繊維 による高い弾性率40)と 強 さ41)を有 し,配

向方向 と直角方向にはゴムの柔軟な性質を有する異方性の

大 きな複合材料である42-44).10vol%の 短繊維の充てんに

より,繊 維配向方向の弾性率は直角方向の弾性率の10倍

程度の数百MPaを 得 ることもたやす く45),ア スペク ト比

が大 きいほ ど配向性が高 くなる41).8vol%(20phr)の

MWNT13を 充てん した複合材料の列理方向(L方 向)と 直

角方向(T)の 低伸長応力を図7に 示 した.配 向方向と直角

方向での低伸長応力にはほとんど相違が見 られず,ま た,

引張強 さにも異方性が見 られなかった.以 上の結果は,図

4のSEM像 か らも明 らかなようにMWNTは ゴム中でラ

ンダム配向することを示 している.MWNTは アスペク ト

比が非常に大 きいにもかかわ らず,複 雑に屈曲し柔軟性 も

あるため配向 しなか った もの と思われ る.こ の結果 は

MWNTに よる補強が等方的に数百MPaの 弾性率 と大 きな

引張強さを与えうることを示 している.ゴ ム製品は,む し

ろ等方性が好 ましい場合 も多 く,MWNTに よる高い等方

性 補 強 は新 しい補 強方 法 と して注 目され る.ま た,

MWNTを 充てんしたゴム複合材料の無架橋体 は,TPEに

も見 られたように流動現象が200℃ の高温 まで見 られなか

った ことか ら34),無 架橋 での使用が可能な場合 も想定さ

れ,ゴ ム製品の リサイクル化 につながると期待 される.

図5MWNT/NR複 合材料 の低伸長応力

一 一図6NR系 およびEPDM系 複合材料の引張 強さ(TB)

図7NR系 およびEPDM系 複合材料の列理方向(L)と 直角方向(T)

の低伸長応力

208 (22)

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4.CNT補 強複合材料実用化への問題点

実用的にCNTを フィラーとして用いるための大 きな問

題点は高価格,入 手の困難さ,そ して特許上の問題が上げ'

られる.価 格は最近下が ってきたとは言っても,MWNT

が数百円/g,純 度の高いSWNTで は10万 円/g以 上 という

超高価格である.現 在,小 数ながら実用に供 されているタ

ングステ ン繊維 などの10円/9が 価格の上限と思 われる.

価格低減に多 くの努力が注がれ,最 近注 目に値する発表 も

幾つかなされている.廃 タイヤを水蒸気爆発 させる手法46),

産業技術 総合研 究所 の発表 した成 長速度 約3000倍 の

SWMTの 開発47),特 に,ポ リマーブレンドを利用する全

く新 しいアイディアでCNTを 安価 に大量生産す る大谷 ら

の手法48)が 有望と思われる.ま た,2月23日 ~25日 に開

催 された国際ナノテク展(東 京)で は,韓 国のメーカが20

円/9のMWNTを 展示 して大 きな話題 となった.10円/9

の壁を破 ることも夢ではな くなってきた.

一方 ,日 本はCNT研 究開発の本場 とされなが らCNTの

入手が難 しいのは周知の事実である.多 くの企業がCNT

の生産に乗 り出していながら,著 者 らのようなユーザが試

験するときに将来の商品化 まで含めた契約 を締結 しなけれ

ばサ ンプルを提供 して もらえないからである.大 学や研究

機関でも学会発表の内容 も事前報告 しなければならないの

で,自 由な発想で迅速な行動が取れないのは当然である.

やむを得ず,海 外のメーカに目が向かう.契 約が必要なと

ころも少な く,純 度が高 く繊維径のば らつ きも小 さいこと

が多いため,特 に,フ ィラーのように多量のサ ンプル量を

必要 とする用途では 日本が遅れを取 ってしまう可能性が高

い.様 々な事情があるか もしれないが,飯 島の優れた業績

を生かすためにも広い視点と自由な発想が強 く望 まれる.

特許上の問題 も容易ではない.HyperionnCatalisisInter-

national社 は,飯 島のMWNTの 発見 の8年 前1983年 に

CNTを 発見 したと主張 している.CNTの 確認が完全かは ・

分か らないが,MWNTと 同様の直径の炭素 ミクロフィブ

リルを作製 したことは間違いなく,そ れ以後の同社の特許

には悩 まされる.特 に,同 社はコンパウンドで しかサ ンプ

ルを提供 しないので自由な開発は不可能である.著 者 らユ

ーザ側は常 に同社の特許 を越 える決意 と工夫が必要であ

る.,

CNT補 強複合材料を製造する際,新 機能の創造,高 性

能化 と同時に製造工程の開発が急務である.高 い性能が得

られても高価格では,民 需には使用で きない.幸 い,ゴ ム

製品は小形状の高機能が要求される部品も多 く,ゴ ム部品

が使われる機械製品の品質向上やコス トダウンによっては

ゴム部品のコス トアップを吸収で きる場合 も想定 される.

金属などと比較すると製造しやすいとも言 えるので,材 料

開発 と同時並行 して工程開発を行って実用 に供 したい.

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(23) 209

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フ ィラー としての カー ボ ンナ ノチ ュー ブ 日本ゴム協会誌

38)

39)

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41)

42)

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日本語表記参考文献

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46)日 刊 工 業 新 聞,2003年12月19日

47)日 本 経 済 新 聞,2004年11月19日

*1日信工業㈱技術 部(〒389 -0514長 野県東御

市加沢801)主 幹 ・昭和52年,東 北大学工学

部金属工学科 卒業.昭 和61年 神戸大学大学

院 自然科学研究科修了.昭 和61~ 平成13年,

三 ッ星ベ ル ト㈱,平 成14年 か ら日信工 業㈱

勤務.専 門は,材 料物性.編 集委員.

*2日 信工業㈱技術 部(〒389 -0514長 野県東御

市加沢801)主 幹.昭 和61年,信 州大学工学

系 研究科 修士課程 修了.同 年,日 信工 業㈱

入社.現 在,技 術部研 究21ブ ロ ック主幹.

専 門は,材 料物性,ブ レーキ設計.

*3岡 山県工業技術セ ンター材料技術 部(〒701-

1296岡 山市 芳賀5301)研 究員.平 成5年,

神 戸大学大 学院工学研 究科工業化 学専攻修

了.同 年,岡 山県工 業技術 セ ン ター入 所.

現在 に至 る.専 門は,エ ラス トマーの構造

と物性.

*4岡 山県工業技術セ ンター材料技術部(〒701-

1296岡 山市芳賀5301)有 機i材料研究室室長,

理学博士.昭 和56年,神 戸大学大学 院工 学

研 究科修 了.同 年 昭和電工㈱ 入社,平 成2

年,神 戸 大学大学 院 自然科学研 究科博士 課

程修了,現 在 に至 る.専 門は,フ ィラー充

てん複合材 料の相構 造お よび界 面の設計 と

評価,フ ィラー の表 面処理.日 本 ゴム協会

関西支部 幹事,日 本 ゴム協会編 集委員,日

本接着学 会評議員,日 本接着 学会関西支 部

副支部長,日 本接着学会編集委員.

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