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No. 82 (2008 年度 専門委員会関係活動報告) 別冊 2009 年 7 月 技術活動関係委員会一覧 ................................................................... 2 第 1 種専門委員会および関係機関の国内委員会 アクセシビリティ SWG 小委員会 ............................................................. 3 Web サービス SWG 小委員会.................................................................. 3 ディレクティブズ SWG 小委員会 .............................................................. 4 SC 2 専門委員会(符号化文字集合).......................................................... 5 SC 6 専門委員会(通信とシステム間の情報交換) .............................................. 6 SC 7 専門委員会(ソフトウェア技術)........................................................ 9 SC 17 国内委員会(カード及び個人識別).................................................... 13 SC 22 専門委員会(プログラム言語,その環境及びシステムソフトウェアインタフェース) ........ 16 SC 23 専門委員会(情報交換及び保存用ディジタル記録再生媒体) .............................. 18 SC 24 専門委員会(コンピュータグラフィクス,画像処理及び環境データ表現) .................. 19 SC 25 専門委員会(情報機器間の相互接続) .................................................. 20 SC 27 専門委員会(セキュリティ技術)...................................................... 22 SC 28 国内委員会(オフィス機器).......................................................... 26 SC 29 専門委員会(音声,画像,マルチメディア,ハイパーメディア情報符号化) ................ 28 SC 31 専門委員会(自動認識およびデータ取得技術) .......................................... 32 SC 32 専門委員会(データ管理及び交換).................................................... 34 SC 34 専門委員会(文書の記述と処理の言語) ................................................ 37 SC 35 専門委員会(ユーザインタフェース) .................................................. 40 SC 36 専門委員会(学習,教育,研修のための情報技術) ...................................... 41 SC 37 専門委員会(バイオメトリクス)...................................................... 44 第 2 種専門委員会 学会試行標準専門委員会 ................................................................... 48 クロスドメイン・レジストリ専門委員会 ..................................................... 49 第 3 種専門委員会 NFC 有線インタフェース(NFC-WI)JIS 制定原案作成委員会 .................................... 50 オープン分散処理 -- 統一モデリング言語 JIS 原案作成委員会 ................................. 51 プログラム言語 Fortran JIS 原案作成委員会................................................. 51 共通言語基盤(CLI)JIS 改正原案作成委員会 ................................................. 52 オフィス文書のためのオープンな文書形式(OpenDocument)v1.0 JIS 原案作成委員会 ............. 53 アセスメント配信における情報技術(IT)利用の実践のための規範 JIS 原案作成委員会 ........... 53 その他 ISO 2375 登録委員会....................................................................... 54

別 冊 No. 82 - IPSJ/ITSCJ...また,JTC 1のWebサイトのアクセシビリティ化対 応のための,本WGにて,JTC 1にWebサイトのアク セシビリティ化の提案を今後も行っていく.

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別 冊 No. 82 (2008 年度 専門委員会関係活動報告) 別冊 2009 年 7 月

目 次

技術活動関係委員会一覧 ...................................................................2

第 1 種専門委員会および関係機関の国内委員会 アクセシビリティ SWG 小委員会 .............................................................3

Web サービス SWG 小委員会..................................................................3

ディレクティブズ SWG 小委員会 ..............................................................4

SC 2 専門委員会(符号化文字集合)..........................................................5

SC 6 専門委員会(通信とシステム間の情報交換)..............................................6

SC 7 専門委員会(ソフトウェア技術)........................................................9

SC 17 国内委員会(カード及び個人識別)....................................................13

SC 22 専門委員会(プログラム言語,その環境及びシステムソフトウェアインタフェース) ........16

SC 23 専門委員会(情報交換及び保存用ディジタル記録再生媒体)..............................18

SC 24 専門委員会(コンピュータグラフィクス,画像処理及び環境データ表現)..................19

SC 25 専門委員会(情報機器間の相互接続)..................................................20

SC 27 専門委員会(セキュリティ技術)......................................................22

SC 28 国内委員会(オフィス機器)..........................................................26

SC 29 専門委員会(音声,画像,マルチメディア,ハイパーメディア情報符号化)................28

SC 31 専門委員会(自動認識およびデータ取得技術)..........................................32

SC 32 専門委員会(データ管理及び交換)....................................................34

SC 34 専門委員会(文書の記述と処理の言語)................................................37

SC 35 専門委員会(ユーザインタフェース)..................................................40

SC 36 専門委員会(学習,教育,研修のための情報技術)......................................41

SC 37 専門委員会(バイオメトリクス)......................................................44

第 2 種専門委員会 学会試行標準専門委員会 ...................................................................48

クロスドメイン・レジストリ専門委員会 .....................................................49

第 3 種専門委員会 NFC 有線インタフェース(NFC-WI)JIS 制定原案作成委員会 ....................................50

オープン分散処理 -- 統一モデリング言語 JIS 原案作成委員会 .................................51

プログラム言語 Fortran JIS 原案作成委員会.................................................51

共通言語基盤(CLI)JIS 改正原案作成委員会.................................................52

オフィス文書のためのオープンな文書形式(OpenDocument)v1.0 JIS 原案作成委員会.............53

アセスメント配信における情報技術(IT)利用の実践のための規範 JIS 原案作成委員会 ...........53

その他 ISO 2375 登録委員会.......................................................................54

注:第 1種専門委員会:ISO/IEC JTC1 傘下の SWG/SCs に対応

第 2 種専門委員会:標準化の提案を準備、または標準化活動を支援

第 3 種専門委員会:経済産業省または日本規格協会の委託により,国際規格 JIS 化の原案作成

SC17 (カードと個人識別) (社)ビジネス機械・情報システム産業協会担当 SC31 傘下の WG (社)電子情報技術産業協会担当

SC28 (オフィス機器) (社)ビジネス機械・情報システム産業協会担当 SC35 傘下の WG (社)ビジネス機械・情報システム産業協会担当

技 術 活 動 関 係 委 員 会

(2009 年 3 月現在)

委員会(テーマ) 委員長/主査

技術委員会関係

技術委員会 (情報技術)

石崎 俊

FDT-SWG (形式記述技法) 二木 厚吉

アクセシビリティ SWG 山田 肇

Web サービス SWG 鈴木 俊宏

ディレクティブズ SWG 小委員会 大蒔 和仁

第 1種専門委員会関係

SC2 (符号化文字集合)

関口 正裕

SC6 (通信とシステム間の情報交換) 山下 博之

WG1 (物理層およびデータリンク層) 高山 佳久

WG7 (ネットワーク層およびトランスポート層) 脇野 淳

WG8 (ディレクトリおよび ASN.1) 山口 純一

SC7 (ソフトウェア技術) 山本 喜一

WG1A (IT ガバナンス) 菊島 靖弘

WG2 (ソフトウェアシステムの文書化) 山本 喜一

WG4 (ツールと CASE 環境) 岸 知二

WG6 (評価とメトリクス) 東 基衞

WG6/FSM SG (チャネルレベルインタフェース) 高橋 光裕

WG7 (ライフサイクル管理) 村上 憲稔

WG10 (プロセス評価) 小川 清

WG19 (IT システムの仕様化技術) 梶原 清彦

WG19/ODP SG 宮崎比呂志

WG20 (ソフトウェア工学知識体系) 松本 吉弘

WG21 (ソフトウェア資産管理プロセス) 高橋 快昇

WG23 (システム品質の運営管理) 高橋 宗雄

WG24 (小企業向けソフトウェアライフサイクル) 伏見 諭

WG25 (IT サービス管理) 平野 芳行

SC22 (プログラム言語,その環境およびシステムソフトウェア

インタフェース)

石畑 清

COBOL WG (WG4) 高木 渉

Fortran WG (WG5) 田中 稔

言語共通 WG (WG11) 筧 捷彦

C WG (WG14) 野田 誠

LISP WG (WG16) 湯淺 太一

Prolog WG (WG17) 中村 克彦

C++ WG (WG21) 林田 聖司

SC23 (情報交換及び保存用ディジタル記録再生媒体) 山下 経

ファイルフォーマット SG (ボリュームとファイル構造) 後藤 芳稔

WG6 (iVDR カートリッジ) 国崎 修

SC24 (コンピュータグラフィクス,画像処理および環境

データ表現)

青野 雅樹

WG6 (マルチメディアによるプレゼンテーションおよび交換) 青野 雅樹

SC25 (情報機器間の相互接続) 山本 和幸

WG1 (ホームエレクトロニックシステム) 山本 和幸

WG3 (商用構内配線) 倉嶋 利雄

WG4 (計算機システムおよび周辺機器間の相互接続) 脇村 慶明

WG4/SG1 (チャネルレベルインタフェース) 若林 弘雄

WG4/SG2 (デバイスレベルインタフェース) 森 宗正

WG4/SG3 (ファイバチャネル) 親泊 肇

SC27 (セキュリティ技術) 寶木 和夫

WG1 (情報セキュリティマネジメントシステム) 原田 敬

WG2 (暗号とセキュリティメカニズム) 櫻井 幸一

WG3 (セキュリティ評価技術) 田邉 正雄

WG4 (セキュリティコントロールとサービス) 中尾 康二

委員会(テーマ) 委員長/主査

WG5 (アイデンティティ管理とプライバシー技術) 佐藤 慶浩

SC29 (音声,画像,マルチメディア,ハイパーメディア情報符号化) 守谷 健弘

WG1 (静止画像符号化) 小野 文孝

WG11/VIDEO (動画像符号化/動画) 鈴木 輝彦

WG11/AUDIO (動画像符号化/音声) 山崎 芳男

WG11/SYSTEMS (動画像符号化/システム) 金子 格

WG11/SYSTEMS/MPEG-7 SG (動画像符号化/システム

/MPEG-7)

渡部 秀一

WG11/SYSTEMS/OICI SG (動画像符号化/システム

/MPEG 知財コンテンツ情報)

上野 孝文

SC31 (自動認識およびデータ取得技術) 柴田 彰

SC32 (データ管理および交換) 鈴木 健司

WG1 (e-ビジネス) 森田 勝弘

WG2 (メタデータ) 堀内 一

WG3 (データベース言語) 芝野 耕司

WG4 (SQL マルチメディア・アプリケーションパッケージ) 鈴木 健司

SC34 (文書の記述と処理の言語) 小町 祐史

WG2(文書情報表現) 小町 祐史

WG3(情報関連付け) 内藤 求

SC35 (ユーザインタフェース) 山本 喜一

WG8(ユニバーサルリモートコンソール) 山本 喜一

SC36 (学習,教育,研修のための情報技術) 仲林 清

WG2 (協調及び知的技術) 池田 満

SC37 (バイオメトリクス) 瀬戸 洋一

WG1 (バイオメトリック専門用語) 溝口 正典

WG2 (バイオメトリック テクニカル インタフェース) 山田 朝彦

WG3 (バイオメトリックデータ交換フォーマット) 新崎 卓

WG4 (バイオメトリック機能アーキテクチャと関連プロファイル) 道坂 修

WG5 (バイオメトリック技術の試験および報告) 鷲見 和彦

WG6 (バイオメトリクスに関わる社会的課題) 池野 修一

第 2種専門委員会

学会試行標準

石崎 俊

WG1 (情報技術用語) 大野 義夫

WG2 (文字図形識別情報) 古家 時雄

WG3 (解析・生成用日本語電子化辞書形式) 橋本三奈子

WG4 (音声言語処理インタフェース) 新田 恒雄

WG5 (符号化文字基本集合(BUCS)) 松岡 榮志

WG6 (レスポンシブリンク) 山崎 信行

WG7 (フォントリソース参照方式) 小町 祐史

クロス・ドメインレジストリ 堀内 一

第 3種専門委員会

プログラム言語 Fortran JIS 原案作成

田中 稔

共通言語基盤 JIS 改正原案作成委員会 黒川 利明

オープン分散処理 - 統一モデリング言語JIS原案作成 薮田 和夫

オフィス文書のためのオープンな文書形 JIS 原案作成 村田 真

NFC 有線インタフェース(NFC-WI)JIS 制定原案作成委員

山下 博之

アセスメント配信における情報技術(IT)利用の実践の

ための規範 JIS 原案作成

永岡 慶三

その他

ISO 2375 登録

三上 喜貴

<第 1種専門委員会および関係機関の国内委員会>

■ アクセシビリティ SWG 小委員会

主査 山田 肇(東洋大学)

1. 概要

(1) 委員会の担当範囲等

アクセシビリティ SWG 小委員会は,JTC 1 の中に設

置された Special Working Group on Accessibility

(SWG-A)に対応する国内委員会である.

情報通信機器・サービスを誰にでも利用できる形で

提供するためには,情報アクセシビリティに配慮する

必要がある.特に利用できないという状況が起きやす

いのは障害者なので,そのニーズを調査し,取りまと

めて文書として発行しようというのが,SWG-A の活動

目標である.

(2) 主な国際会議と参加の状況

2008 年度 SWG-A は,東京にて 6 月 16 日から 19 日

まで会議を開催した.日本からは 11 名が参加し,積

極的に貢献した.

また 2009 年 1 月 15 日に,電話会議が開催された.

日本時間では夜間という不便な時間帯に設定されて

いたが,日本からは 5名が参加し,積極的に発言した.

(3) 完成した TR

SWG-A では,次の 3 本の TR を 2 月に完成させ,今

後,JTC 1 から無償で公開される予定である.

① TR 29138-1 Accessibility Considerations for

People with Disabilities - Part 1: User Needs

Summary

障害者による情報アクセスにかかわるニーズを,障

害者団体に照会したり,既存の標準などを調査した

りして,取りまとめた文書である.

② TR 29138-2 Accessibility Considerations for

People with Disabilities -- Part 2: Standards

Inventory

情報アクセシビリティに関する国際・地域標準や各

国の国内標準の情報を収集し,一括して掲載した文

書である.

③ TR 29138-3 Accessibility Considerations for

People with Disabilities - Part 3: Guidance on

User Needs Mapping

Part 1 の文書を,今後,情報通信分野で標準を作

成する過程でどのように活用するかを解説した文

書である.

(4)日本が担当するエディタなど

わが国は,TR 29138-3 に対して,東洋大学の山田

肇をコエディタとして派遣し,SWG-A の活動に積極的

に対応している.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

上述の 3 本の TR は,2008 年 3 月 28 日締め切りで

PDTR 投票が実施され,そのコメントに対する修正を 6

月の東京会合で合意し,DTR 投票にかけられた.DTR

投票の結果,TR として承認されたが,その際のコメ

ントに対する修正については 1 月 15 日の電話会議に

て,合意した.

2009 年 6 月の電話会議では,今後の SWG-A の活動

について,審議する予定である.

また,JTC 1 の Web サイトのアクセシビリティ化対

応のための,本 WG にて,JTC 1 に Web サイトのアク

セシビリティ化の提案を今後も行っていく.

3. その他

わが国は,3 本の PDTR および DTR についてすべて

賛成の投票をした.

この決定を行った技術委員会で,TR 29138-1 と TR

29138-3 について,国内でも TR として発行すべきと

いうことになった.今後,わが国で情報アクセシビリ

ティに関連する標準を作成する際に重要な参考資料

となると,判断したためである.

6月の東京会合に参加した関係者を講師とする公開

セミナーを東京会合終了後に開催した.聴講者は 100

名を超え,情報アクセシビリティに関する世界の最新

情報が共有された.

なお SWG-A の活動資料は,次に掲載されており,自

由に利用できる. http://www.jtc1access.org/

■ Web サービス SWG 小委員会

主査 鈴木 俊宏(日本オラクル(株))

1. 概要

Web サービス SWG 小委員会は,以下の二つの役割を

果たすために 2006 年 4 月に設置された.

・ JTC 1の Webサービスに関わる審議案件について,

日本のポジション(投票)案について取りまとめ,

情報規格調査会技術委員会の審議に付す.

・ JTC 1 WSSG (Web Services Study Group)に動き

があれば日本の対応窓口となり,活動に参画す

る.

JTC 1 にはこの小委員会に直接的に対応する委員会

はないが,前記の JTC 1 WSSG は 2003 年 11 月の JTC 1

シンガポール総会で Web サービスの標準化に対する

JTC 1 の貢献を戦略的に検討するために設置されて以

来,毎年 JTC 1 総会で継続が決議されている.特に

2008 年度の JTC 1 奈良総会では,SOA(Service

Oriented Architecture)対応へのスコープの拡大と

共に,今後 JTC 1 の中で Web サービス/SOA をどう扱

うか,次回 JTC 1 テルアビブ総会で WSSG から方針を

提案するように求められた.

WSSG の議長は米国の Donald Deutsch 氏,セクレタ

リはカナダの Francois Coallier 氏が務めている.

WSSG の主活動は,1) JTC 1 に対する Web サービス

に関する国際提案の審議サポート,2) Web サービス

の標準を概観できる Web Services Inventory

Database 構築と保守が挙げられる.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

(1-1) WS-I Basic Profile 審議

WS-I からの以下の 3 件の Web サービス標準プロフ

ァイルの PAS 提案に対し審議を行い,2007 年 6 月の

投票で日本は幾つかのコメント共に賛成票を投じた.

2008 年 6 月に ISO 標準として公開された.

ISO/IEC 29361:2008 Information technology -- Web

Services Interoperability -- WS-I Basic Profile

Version 1.1

ISO/IEC 29362:2008 Information technology -- Web

Services Interoperability -- WS-I Attachments

Profile Version 1.0

ISO/IEC 29363:2008 Information technology -- Web

Services Interoperability -- WS-I Simple SOAP

Binding Profile Version 1.0

(1-2) WS-Session 審議

Ecma から Fast Track として ISO/IEC 22534:2005

(ECMA-354)の Web サービス版標準の以下提案があり,

担当専門委員会(SC 6)に代り技術的な審議を担当し

た.日本は「現在市場で流通している Web サービス標

準を無視する内容である」として反対票を投じたが,

賛成票が反対票を上回り国際標準として承認された.

SC 6 専門委員会によるとコメントの一部が修正され

るとのことだが,現在のところ BRM が開かれる案内は

ない.ちなみに,日本から強く主張した点(標準にな

っていない使用を Normative 参照すべきではない)の

一部は修正される模様である.

ISO/IEC DIS 25437 Information technology --

Telecommunications and information exchange

between systems -- WS-Session -- Web services for

application session services

(2) Web Services Inventory Database 構築

Web サービスに関する標準の inventory の作成は

WSSG の主要活動に位置付けられている活動である.

Web サービス SWG 小委員会では,Web Services

Inventory Database の基礎データとなる「Web

Services 標準文書の状況」を日本から WSSG に半年に

一度提供している.今後も必要に応じて定期的にデー

タを提供していく予定ではあるが,誰がデータを更新

するかも含め,Web Services Inventory Database の

開発,保守に関する協議を行っている.

(3) SOA 対応

SOA へのスコープ拡大は中国からの提案である.現

在も WSSG 参加各国やリエゾンからの寄書を基に SOA

の定義やスコープを始め今後のJTC 1における対処方

針について議論検討している.

3. その他

昨今 JTC 1 Subcommittee にて Web サービスや SOA

に関する標準の議論が散見される.しかし残念ながら

JTC 1 にはエキスパートが少ないのが現状であり,さ

らにはステークホルダー不在の標準化が行なわれる

事態にも発展する恐れがある.このような状況は市場

を混乱させることにも繋がり兼ねないため,それらを

打開するための WSSG の検討報告が待たれる.

■ ディレクティブズ SWG 小委員会

委員 成井 良久(ソニー(株))

1. 概要

ディレクティブズ SWG 小委員会は,JTC 1/SWG on

Directives(以降 SWG-D)の対応をするために,2008

年 10 月に技術委員会の直下に設置された委員会であ

る.役員会,技術委員会から広く委員を募り,大蒔主

査,平野幹事を中心にディレクティブズに興味を持つ

メンバ,情報規格調査会の国際幹事や,経済産業省も

オブザーバとして参加して,SWG-D への寄書の作成を

行っている.2008 年度は 2回(大阪,デルフト(蘭))

の SWG-D への参加及び対応のため,7回の委員会を開

催した.現在はオブザーバを含め 9人で活動をしてい

る.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

(1)Directives の整合化作業

SMB/TMB の要請により,SWG-D では現在単独で存在

している JTC 1 Directives を ISO/IEC と同様に

ISO/IEC Directives + Supplement という構成にする

べく,JTC 1 特有の部分を規定する JTC 1 Supplement

を完成させる活動を進めている.この Supplement と

ISO/IEC Directives とが一対になって現行の JTC 1

Directivesに代わるものになる.小委員会では,SWG-D

が準備した ISO/IEC Directives に JTC 1 Directives

の異なる部分を加えたMerged Documentと呼ばれる資

料の検討をし,不明確な点,新規定義の必要な点など

をまとめる作業や誤記訂正を行った.その結果を

SWG-D に寄書として提出し,資料のブラッシュアップ

に貢献した.SWG-D ではこれからまとめの作業に入り

2010 年の完成を目指す.

(2) 現行 Directives の改訂作業

SWG-D では,ISO/IEC との整合化作業を進めること

と並行して,JTC 1 特有のプロセスである Fast Track

や BRM (Ballot Resolution Meeting) のあり方につ

いての議論をしている.

Fast Track の最初に 30 日レビューの期間が設けら

れているが,有効に働いていないので,現在の審議期

間を長引かせることなく,Fast Track の入口に何ら

かの別の手続きを設ける必要があるとのコメントを

日本から出した.しかし,議論の中では適当な具体案

が見つけられず,結局現在のところ,BRM を開催する

ことや Explanatory report を準備することなどを除

いては,ISO/IEC Directives に整合させることにな

っている.現在,SWG-D では,Supplement の完成に軸

足を置いているが,今後は Fast Track や BRM のプロ

セスの不明確な部分を明確にしていく作業も必要に

なる.

■ SC 2 専門委員会(符号化文字集合/Coded

Character Sets)

委員長 関口 正裕(富士通(株))

1. 概要

SC 2 は,世界中の国や地域で使用される符号化文

字集合(いわゆる文字コード)および文字列の照合順

番を担当する,JTC 1 の中でも最も長期にわたって活

動している SC である.日本は,SC 2 の議長および幹

事国を継続的に引き受けるなど,主導的な役割を果た

している.

SC 2 には,複数オクテット符号化文字集合の規格

(ISO/IEC 10646)を開発している WG 2 があり,WG 2

の傘下には,主に漢字使用国が集まって漢字に関連す

る事柄を担当している表意文字ラポータグループ

(IRG:Ideographic Rapporteur Group)がある.現

在 SC 2 には,WG 2 以外の WG は設置されていない.

SC 2 では,単一オクテット符号化文字集合,制御機

能などの規格も担当しているが,これらの規格はスタ

ビライズされているものも多く,WG を組織せず SC が

直接担当している.国際文字列照合順番の規格である

ISO/IEC 14651 に関しても WG を組織していないが,

規格の編集作業については,OWG-SORT(Other working

group on sorting)を設置している.

国内の組織は,SC 2 専門委員会が SC 2 およびその

傘下のすべての活動に対応している.特定の技術的内

容に関して詳しい検討が必要な場合,随時アドホック

グループを編成して対応することとしている.2008

年度は,特にアドホックグループを編成しなかった.

2008 年度の国際会議の状況は,4月および 9月にそ

れぞれ米国ワシントン州および香港で WG 2 が,6 月

および11月にそれぞれ韓国および中国昆明でIRGが,

それぞれ開催された.日本からの参加者(*1)は,それ

ぞれこの順に,3人,1人,4人,4人であった.

2008 年度には,ISO/IEC 10646:2003/Amd.4:2008 お

よび ISO/IEC 10646:2003/Amd.5:2008 が発行された.

規格審議は,NP 0 件,PDAM 1 件,FCD 0 件,FPDAM 2

件,FDAM 0 件および FDIS 0 件であった.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 国際符号化文字集合

現在の SC 2 の活動は,国際符号化文字集合 ISO/IEC

10646 Universal Multiple-Octet Coded Character

Set(UCS)の開発と保守が中心となっている.最初の

規格化は ISO/IEC 10646-1:1993 である.その後も活

発に追補・改版,またパート 2 の出版が行われたが,

2003 年度末にはパート構成を廃した ISO/IEC

10646:2003 として規格を再整理した.その後も,継

続的に主として文字の追加を行い,追補の形で出版し

ている.現在,追補 5まで発行されているが,すでに

追補 6~8 の作業が始まっている.また,これらの追

補をまとめて編集しなおし,10646 を改訂する計画も

進んでいる.

審議待ちの提案が何件かあることに加えて,今後も

新規の提案が行われる見込みである.しかし,いわゆ

る主要な言語については,ほとんどの文字についてす

でに規格化が完了している.今後提案・規格化される

文字の大部分は,利用者人口の少ないものや用途が特

殊なものが中心になると思われる.実際,2008 年度

に審議された新規の文字の大半は現代では使われな

くなった古い文字と利用者人口が少ない少数民族の

文字であった.この種の文字は,提案を評価し検討を

行える人材が限られるため,国際的にも国内的にも検

討体制に課題がある.

また,UCS が名実ともに情報通信分野での標準文字

コードとして確実に普及するにつれ,従来「特定シス

テムに特有の独自拡張文字コード」のような位置づけ

で公的な国際標準とは別世界と考えられていたよう

なものを,UCS の一部として取り込む動きも起きはじ

めている.この種の文字のうち,特に日本に関連する

ものとして,日本のデジタルテレビ放送に関する電波

産業会(ARIB:Association of Radio Industries and

Business)の標準規格 ARIB STD B-24 に規定されてい

るデータ放送用の記号類の提案や,日本の携帯電話で

利用されているいわゆる絵文字の提案などが行われ,

一部はすでに追補案となっている.

2.2 漢字関連

漢字に関しては,2008 年度まで日本規格協会,国

立国語研究所および情報規格調査会が共同で実施し

てきた汎用電子情報交換環境整備プログラムが終了

し,この成果の早期の国際規格への反映が,当面の最

大の関心事である.

すでに,約 800 の漢字が UCS への追加の漢字として

追補として発行され,または,追補案として投票にか

かっているが,UCS への追加が必要と考えられる候補

の漢字がまだ 2000 ほど残っている.これを 2008 年末

に IRG に対して寄書として提出した.IRG 自体の検討

スケジュールの都合もあり,この寄書の審議はまだ始

まっていないが,各国専門家からのコメントが何件か

集まっており,今後提案を改良してゆく予定.

また,汎用電子情報交換環境整備プログラムの成果

のグリフの中には,統合の基準に照らすと既存の符号

化文字と同一とみなされる字体・字形の漢字が多数含

まれている.こちらについては互換漢字としての UCS

への追加提案を WG 2 に対して行っているが,IVS(*2)

による扱いの方が適切との意見があり,今後検討を行

う予定.

なお,日本からの漢字に関する提案・審議は,汎用

電子情報交換環境整備プログラムの文字符号標準化

作業委員会と連携して進めている.

2.3 単一オクテット符号化文字集合

単一オクテット符号化文字集合の規格の多くは,ス

タビライズされており,審議件数は少ない.2008 年

度には,ISO/IEC 8859-7 の 5 年ごとの見直しを行っ

た.

2.4 国際文字列照合順番

ISO/IEC 10646 に対する文字の追加と一致するよう

に,ISO/IEC 14651 を保守することが主要な活動であ

る.2008 年度には,2007 年に発行した ISO/IEC 14651

の第 2版に対する追補の開発を開始した.

3. その他

前述の通り,近年の ISO/IEC 10646(UCS)に関す

る標準化作業の中心は,利用人口の少ない文字(例え

ば少数民族固有の文字や古代の文字など)になってい

る.IRG でも,中心課題というわけではないが,甲骨

文字の符号化の検討が行われている.

この種の文字の検討は,符号化文字集合の専門家と

いうよりは個々の文字の専門家(その分野の学術研究

者)が中心となって行われている.WG 2 などの国際

会議では,個々の文字の内容については立ち入らず,

符号化文字としての技術面のチェックを行って規格

原案として取りまとめている.日本が積極的に参加し,

規格作成に貢献するには,個々の文字についての国内

の専門家の参画が必要となる.しかし,現在の SC 2

専門委員会は,それにこたえられる体制になっていな

い.今後の課題と認識している.

(*1) SC 2 議長の参加を除く.

(*2) IVS:Ideographic Variation Sequence とは,

ある漢字の文字符号に対して,統合の対象としてその

一つの符号位置に符号化されるような複数の漢字の

実字形のうち,特定のものを指定して情報交換する仕

組み.ISO/IEC 10646 の追補 3で規定された.

■ SC 6 専門委員会(通信とシステム間の情報交換

/Telecommunications and Information Exchange

Between Systems)

委員長 山下 博之((株)NTT データ,現 情報処理推

進機構)

1. 概要

SC 6 は,汎用計算機/ワークステーション/パソ

コンなどの情報処理装置,情報通信家電や IC カード

互換通信機器,マルチメディア情報機器を含む各種情

報転送に必要となるシステム相互間の下位層及び上

位層の通信プロトコルの標準化を担当している.特に,

上位層プロトコルは,旧 SC 33 より引き継いだプロジ

ェクトであり,ITU-Tとの協調作業が進められている.

ニーズにあった規格をタイムリーに標準化するため,

ITU-T に加えて,IEEE,Ecma,IETF などとリエゾンを

とりながら活動を進めている.

2008年度には,2003年度から開始されているNFCIP

( Near Field Communication Interface and

Protocol)に関する,我が国発で Ecma 経由の

Fast-Track 手続きに基づく標準化作業を継続して精

力的に実施した.また,無線 LAN 関連,PLC(Power Line

Communication),High Rate Ultra Wideband などの

通信プロトコルに関する標準化作業が行われた.さら

に,将来ネットワーク,センサーネットワーク,ASN.1

及びディレクトリ関連の活動も活発に行われた.

2. 主なプロジェクトの進行状況

2.1 WG 1(物理層およびデータリンク層)

2.1.1 主な投票及びその対応状況

(1) DIS 案件

ISO/IEC DIS 12139-1 High speed PLC medium

access control and physical layer Part 1: General

requirements

韓国提案,日本は反対.国際では承認.

本件は投票案作成の際に国内SC 25への意見照会が

行われた.日本からは反対を投票した.BRM が開催さ

れることを希望として伝えた.BRM は開催され,DIS

12139-1 は日本企業が支持する IEEE P1901 など他の

PLC規格との干渉に考慮されていないことを注意喚起

する努力を行うこと,及び,Part 2 にて高品質でマ

ルチメディアを扱える能力を加える際に共存を実現

することを共に目指すことを合意した.即ちこの BRM

の成果として,将来,日本企業が支持する仕様を ISO

化する余地を確保した.

(2) FCD 案件

FCD24771 (SC6N13480) MAC/PHY standard for ad

hoc wireless network to support QoS in an

industrial work environment

韓国提案,日本は賛成.国際で承認済み.

(3) NP 案件

PHY/MAC specifications for short-range wireless

low-rate applications in ISM band

韓国提案,日本は賛成.国際で承認済み.

(4) Ecma からの Fast-Track 投票案件

下記はいずれもコメント期限 2009 年 1 月 15 日の

30 日レビューが行われ,現在 5 ヶ月間投票期間中と

なっている.いずれも日本企業が関わっている.

① ECMA-368 3rd Edition High Rate Ultra Wideband

PHY and MAC Standard (UWB(Ultra WideBand)の

PHY/MAC 規格の保守,第三版.)

② ECMA-369 3rd Edition MAC-PHY Interface for

ECMA-368 (UWB の PHY-MAC インタフェース規格の保

守,第三版.)

③ ECMA-385 NFC-SEC: NFCIP-1 Security Services

and Protocol (NFCIP-1 用の暗号化データ伝送用の

サービス及びプロトコル)

④ ECMA-386 NFC-SEC-01: NFC-SEC Cryptography

Standard using ECDH and AES (NFCIP-1 用の暗号

アルゴリズム)

⑤ ECMA-387 High Rate 60 GHz PHY, MAC and HDMI PAL

(60GHz 高速通信用 PHY/MAC/HDMI プロトコル適応層)

2.1.2 14443/NFC ハーモナイゼーション

国内では SC 6 アドホックにて対応している.2008

年 9 月にベルリンにて国際 SC 17 主催による

14443/NFCハーモナイゼーション会議が開催され日本

からも参加した.SC 6 モントルー総会にて,本件の

ToR を策定する使命を帯びて SC 6 Study Group が設

置されて,2名の共同議長(Mr. Meindl, Mr. Takayama)

が指名され,2009 年 4 月に福岡にて SC 6 Stduy Group

会議を行った.NFCは日本発の規格であること,また,

そのひとつのユースケースであるおサイフケータイ

は日本で広く普及していることもあり,それら実績を

踏まえた日本からの寄書並びに貢献は,国際コミュニ

ティーにて歓迎されている.現在はユースケースの確

認作業の段階であり,今後要件定義が続き,その後規

格の検討となる見込み.

2.1.3 中国提案の無線 LAN セキュリティ拡張規格

(WAPI)

WLAN セキュリティのスタディ期間中に,WAPI

( Wireless Local Area Networks (WLAN)

Authentication and Privacy Infrastructure)を

ISO/IEC 8802-11 に導入するために 2つのオプション

を確認できたので,残る差異を解決してコンセンサス

を最大化できるように,スタディ期間を 2009 年の東

京会議まで延長.2008 年 11 月 30 日までに,3ヶ月レ

ビューとコメントのため,次の文書を回覧.

6N13774: 独立型のWAPIサンプルドラフトスタン

ダード.

6N13775: サンプル TR.

6N13776: SC6 NB と IEEE リエゾンへの中国 NB か

らの声明.

IEEE としては,中国と対話を継続,じっくり対応し

ていく方針である.US からは,3ヶ月レビュードキュ

メントに SC 6 のスコープとあわないものが入ってい

るため,反対との意見がでていた.

2.2 WG 7(ネットワーク層およびトランスポート層)

2.2.1 主な投票及びその対応状況

(1) マルチキャスト通信

マルチキャスト通信関連の規格である,拡張トラン

スポートプロトコル(6パート構成)については,今

年度パート3と5が発行され4つのパートが完了した

が,残るパート 4,6の開発が停滞している.

拡張トランスポートプロトコル以外にグループ管

理プロトコル(発行済),マルチキャスト中継プロトコ

ル(3 パート構成),マルチキャストセッション管理

プロトコルの開発が行われている.マルチキャスト中

継プロトコルは,今年度パート 2が発行され,2つの

パートが完了した.残るマルチキャスト中継プロトコ

ルのパート 3 及びマルチキャストセッション管理プ

ロトコルの FCD 投票が実施された.日本は国内での普

及の見込みが無いと思われることから,従来から積極

的には議論に参画していないが,内容として技術的に

問題が無く,反対する理由もないことから,棄権投票

を行った.

また,モバイルマルチキャスト通信に関する規格(3

パート構成)の開発も行われているが,何れのパート

も CD 段階である.これらについても,上記と同様の

理由で静観している.

(2) NP 案件

新作業項目として以下の 3件の NP が採択された.

a) フューチャーネットワーク(問題点の報告と要件)

b) ユビキタス・センサ・ネットワークのセキュリテ

ィ・フレームワーク

c) センサーネットワークのアプリケーションとサー

ビスに関する参照アーキテクチャモデル

これらの NP 投票について,日本は静観の立場で作

業に参加を表明した.

2.3 WG 8(ディレクトリおよび ASN.1)

2.3.1 ディレクトリ

2.3.1.1 主な投票及びその対応状況

(1) 拡張作業

ディレクトリでは 2005 年版(第 5 版)に対して,

通信支援の強化の拡張作業を,2007 年度に継続して

行った.これは,通信下位層に TCP/IP を利用可能に

するトランスポート層の規定,IPv6 サポート,RFID

のための属性定義,を目的とする拡張である.2nd

PDAM 投票,FPDAM 投票が実施された.日本は,重要性

を認識し,賛成の対応をした.

(2) 作業開始案件

新たに,パスワードポリシー支援の作業が,2007

年度に行われた NP 投票を経て承認され,作業が開始

された.これは,ディレクトリ規格で規定不足であっ

たパスワード期限,品質などのパスワード管理ポリシ

ーを具体化し,規定するものである.現在は WD 段階

だが,日本は検討の意義があるとの立場で作業に参加

している.

(3) 維持管理作業

ディレクトリ規格の維持作業としては,2005 年版

に加えて,その後の拡張作業,技術的修正などを取り

込んだ新たな版を 2009 年度に出版の予定で準備して

いる.

2.3.2 ASN.1

2.3.2.1 主な投票及びその対応状況

(1) 拡張作業

ASN.1に対する次の拡張を技術課題として議論して

きた.

a) タグに基づくオブジェクト識別子弧(FDIS

9834-9)

b) オブジェクト識別子の国際化対応

a) は,タグに基づいた識別手段として,

{ joint-iso-itu-t (2) nid(27) }配下のオブジェク

ト識別子の追加登録を行うものである.FDIS 投票が

実施され,日本は FCD 投票までのコメントが受け入れ

られているので賛成した.b)は,ASN.1 のオブジェク

ト識別子(Object Identifier, OID)に多バイト文字

を許すという拡張であり,これにより,ISO/IEC 10646

で規定されている文字を OID に使用できるようにな

る.この文字列を Unicode ラベルという.関連する

ISO/IEC 8824 シリーズ(抽象構文の規格群),8825 シ

リーズ(転送構文の規格群)及び 9834 シリーズ(オ

ブジェクト識別子の登録に関する規格群)の FPDAM 投

票が行われた.日本は,有用な拡張と判断し,いずれ

も賛成投票した.ただし,Unicode ラベルという名前

は ISO の規格にふさわしくない,とのコメントを付し

たが,Unicode は広く知られており分かりやすいとの

判断からコメントは受け入れられなかった.

(2) NP 案件

NP として,次のプロジェクトが韓国より提案され

た.

・ オブジェクト識別子解決プロトコル,並びに関

連アーキテクチャ,要件及びガイダンス

これは,ASN.1 の OID を与えて,それに関連する情

報にアクセスするプロトコル,OID 解決プロトコルを

始めとして,それに関連する OID 解決アーキテクチャ,

OID 解決サービスの操作,OID 解決処理のセキュリテ

ィなどを規定する.OID は多くのアプリケーションで

使用されておりニーズがあると考えられ,標準的な手

法の規格化は相互運用性の観点から重要と判断し,作

業に参加することとした.

(3) 維持管理作業

既存の 8824 シリーズ,8825 シリーズ及び 9834 シ

リーズには多くの追補(AM)及び技術的修正(TC)が

溜まってきたので,それらを取り込んだ新たな版を

2009 年度に出版の予定で準備している.

2.4 私設統合サービス網(PISN)に関する対応

過去の経緯で,PBX などの私設統合サービス網

(PISN)に関するものが Ecma から Fast-Track 提案さ

れることがあるが,SC 6 内では対応するグループは

解散していること,国内では関心がないことなどから,

原則,棄権の対応をしている.しかし, DIS 25437

(Information technology -- Telecommunications

and information exchange between systems --

WS-Session -- Web services for application session

services)に対しては,Web サービス SWG で関心があ

るとのことだったので,対応を依頼した.その結果,

開発中の規定を normative で参照しているなどの理

由で,反対投票することになった.

3. その他

2009 年 6 月開催の SC6 東京総会開催にあたり,実

行委員会を組織し,開催準備を入念に進めてきた.

■ SC 7 専門委員会 (ソフトウェア技術/Software

and Systems Engineering)

委員長 山本 喜一(慶應義塾大学)

1. 概要

SC 7 は,ソフトウェア開発に関連したソフトウェ

ア技術の標準化に取り組んでいる.国際では現在 15

の WG と 2 つの SWG で次の主要なテーマを検討してい

る.

WG として,ソフトウェアのドキュメンテーション

(WG 2),本年度新たに独立したツールと CASE(*1)環

境(WG 4),ソフトウェア製品の評価とメトリクス(WG

6),ライフサイクル管理(WG 7),プロセス評価(WG 10),

IT システムの仕様化技術(WG 19),ソフトウェア及

びシステム知識体系とプロフェッショナル形成(WG

20),ソフトウェア資産管理(WG 21),ソフトウェア

とシステムの用語(WG 22),9000 品質管理ガイドラ

イン(WG 23),ライフサイクルの小企業向きガイド(WG

24),IT サービス管理(WG 25),ソフトウェア検査(WG

26),アーキテクチャ(WG 42),IT ガバナンス(WG 1A),

SWG として,管理と将来計画(SWG 1),規格の構成(SWG

5)があり,活発に活動している.国内では,本年度

から WG 4 及び WG 1A を新たな国内小委員会として発

足するとともに,WG 6 の中に SG として機能規模測定

及び IT プロジェクト性能ベンチマーキング(FSM-SG)

を新たに設立した.2008年度は,前年新設されたWG 26

が活発に活動を開始したが,国内 WG 26 はまだ発足し

ていない.また,WG 42 についても SC 7 専門委員会

が対応している.

2008 年度は,5月に独のベルリンで第 21 回総会(以

下,ベルリン会議)と各 WG の会議を開催した.ベル

リン会議のドラフティング委員会には,日本から福地

(日立)が参加し,その活動に謝辞が送られている.

また,各 WG はベルリン会議以外にそれぞれさらに 1

~2回の国際会議を開催し,活発に活動を行っている.

ベルリン会議には,25 カ国から 213 名の代表が集

まり,懸案事項を熱心に審議し,多くの成果をあげた.

日本からは 25 名の代表が参加し,提出した寄書及び

国際会議における意見交換において多くの貢献を行

った.この会議において,プロセスアセスメント関連

規格の改訂,ライフサイクルプロセスの融合,システ

ムインテグレーションガイド新規格案調査,Agile 開

発分野におけるガイド規格調査,IT ガバナンスの規

格及び TR を作成する順位とスケジュール検討,法廷

で用いるデジタルデータのための IT ガバナンスに関

する規格又は TR の調査,IT 運用の企業統治及び SC 7

におけるサービス及びシステム管理規格とそれらの

統合の 7つの Study Group の新設が承認され,それぞ

れの Study Group に日本から最低 1名が参加した.

日本の貢献は,人的な面でも大きく,WG 6 及び WG 23

のコンビーナ,WG 6 のセクレタリ,プロジェクトエ

ディタ 18 名を提供し,ISO TC176,JTC 1/SC 22,JTC

1/SC 27 とのリエゾンを担当している.また,日常的

には多くの寄書により価値及び質の高い貢献を行っ

ている.2008 年度の投票は,NP 9 件,CD 登録 1 件,

CD 10 件,FCD 4 件,DIS 7 件,FDIS 3 件,PDTR 14

件,DTR 5 件,PDISP 4 件,PDAM 3 件,FPDAM 4 件の

計 64 件であった.また,IS 7 件,TR 3 件が出版され

た.

(*1) CASE:Computer Aided Software Engineering

2. 各 WG の活動状況

2.1 WG 2(ドキュメンテーション:Documentation of

software and systems)

WG 2 は,昨年度に引き続き Study Group 報告に基

づいた,ドキュメンテーション関連規格の再構成作業

を継続している.Proj. 26511 ソフトウェア及びシス

テム技術 ― 管理者のための利用者文書の要求事項

( Software and Systems Engineering -- Re-

quirements for managers of user documentation) は

CD 投票を開始した.Proj. 26512 ソフトウェア及び

システム技術 -- 購入者及び供給者のための利用者

文書の要求事項(Software and Systems Engineering

-- Requirements for acquirers and suppliers of

user documentation)も CD 投票まで進んだ.Proj.

26513 ソフトウェア及びシステム技術 -- 検査者及

び査定者のための利用者文書の要求事項 (Software

and Systems Engineering -- Requirements for

testers and assessors of user documentation)の

作業が進み FCD 投票を開始した.また,ISO/IEC 26514

ソフトウェア及びシステム技術 ―設計者及び開発者

のための利用者文書の要求事項 (Software and

Systems Engineering -- Requirements for designers

and developers of user documentation)が 6月に出

版された.11 月の南寧会議(中国)においてライフ

サイクルの間に作成される文書についての Proj.

26521~26524 について議論したが,別個の規格が必

要かどうかについて合意が得られず,今後議論を継続

することになった.

5 月のベルリン会議,11月の南寧会議には山本(慶

大)が参加した.

2.2 WG 4(ツールと CASE 環境:Tool and CASE

Environment)

WG 4 では,ソフトウェアプロダクトラインの規格

化が始まったことを契機に,岸(早大)を主査に国内

小委員会を設立した.また同規格のリファレンスモデ

ルについて,コエディタを引き受けることにより日本

の意見を適切に反映する準備を整えた.継続していた

要求技術ツールの能力の手引(Guide for Requirement

Engineering Tool Capabilities),構成管理ツールの

能力の手引(Guide for Configuration Management

Tool Capabilities)については,日本からの提案に

よる大幅な改定を完了し,DTR 投票も完了し出版され

る.これからも日本にとって有意義な規格になるよう

に,提案される原案の修正・変更に取り組んでいきた

い.

2.3 WG 6(ソフトウェア製品の評価とメトリクス:

Software products evaluation and metrics) WG 6 では,ソフトウェア品質評価の次世代規格群

ISO/IEC 25000(SQuaRE: Software product Quality

Requirements and Evaluation)シリーズの原案作成

の審議を行った.SQuaRE シリーズの構成は,日本か

らの提案によるもので,コア部門(13 規格)及び拡

張部門から成る.2007 年度までに,ISO/IEC 25000

(Guide to SQuaRE),ISO/IEC 25001(Planning and

management),ISO/IEC 25020(Measurement reference

model and guide ), ISO/IEC 25030 ( Quality

requirements),ISO/IEC 25051(Requirements for

quality of COTS and instructions for testing)及

び ISO/IEC 25062 ( Common industry format for

usability test reports)が IS として,ISO/IEC 25021

(Quality measure elements)が TR として,出版さ

れている.

今年度は,ISO/IEC 25012(Data quality model)

の FCD 及び FDIS 投票が賛成多数で承認され,IS とし

て出版された.

その他のプロジェクトに関して,ISO/IEC 25010

(Quality model)は,2nd CD 投票を行い,改訂版を

3rd CD 投票に進めた.ISO/IEC 25040(Evaluation

reference model and guide)は,2nd CD 投票のコメ

ント処理の過程で,当初計画していた ISO/IEC 25042

( Evaluation process for developers ), 25043

( Evaluation process for acquirers ), 25044

(Evaluation process for evaluators)を ISO/IEC

25040 の Annex とし,1 規格に統合することに合意し

て,再編成した改訂版を3rd CD投票に進めた.ISO/IEC

25045(Evaluation module for recoverability)は,

WD&CD登録投票及び 1st CD投票を行い,改訂版をFCD

投票に進めた.ISO/IEC 25060(General framework for

usability-related information)は,WD&PDTR 登録

投票を行い,改訂版を PDTR 投票に進めた.

新規作業項目に関して,ISO/IEC 25021(Quality

measure elements)は,TR を改訂して IS 化する NP

の準備作業として,WD の作成を進めている.

これら一連のプロジェクトに対し,日本は,国内委

員会での審議結果をベースに多数のコメントを出し,

国際会議への参画,寄書,及び Email ベースでのやり

取りを通して,規格原案の質的向上に寄与している.

WG 6 では,日本から,東(早大)がコンビーナ及

びISO/IEC 25000シリーズ全体のプライムエディタを,

込山(NEC)がセクレタリを,江崎(荏原),坂本(NTT

データ),谷津(日本 IBM)及び山田(東芝)がプロ

ジェクトエディタを務めている.5月のベルリン会議

には,東,込山,江崎,谷津,山田の 5 名が参加し,

10 月には新潟市の協力を得て,新潟に会議を招致し

て,東,込山,江崎,坂本,谷津,山田,菊地(沖電

気),古賀(日立 S&S),中山(日立 S&S),古山(東海

大),山形(JSA-INSTAC)の 11 名が参加し,技術面並

びに運営面で大きく貢献した.

2.4 WG 6/FSM-SG(機能規模測定及び IT プロジェクト

性 能 ベ ン チ マ ー キ ン グ : Functional size

measurement(FSM) and IT project performance

benchmarking)

FSM-SG は,旧 WG 12(2007 年に廃止)が担当して

いた機能規模測定関連規格の改訂作業(国際では,WG

6/SG 4 が担当)と,ベルリン会議から新たに作業が

始まった ISO/IEC 29155 シリーズ(IT project

performance benchmarking framework)の制定作業(国

際では WG 10/SG 1 が担当)を併せて担当している.

2008 年度は,機能規模測定に関しては,ISO/IEC

14143-2 ( FSM -- Conformity evaluation ) の

Corrigendum審議,ISO/IEC 14143-6(FSM ― Guide for

use)の改訂に向けた NP 案審議,ISO/IEC 29881(FiSMA

FSM method)の DIS 投票結果の審議,ISO/IEC 19761

(COSMIC-FFP FSM method)改訂の NP 投票結果及び

WD 審議,ISO/IEC 20926(IFPUG FSM method)改訂の

DIS 投票を行った.ベルリン会議には高橋(電力中研)

が国際 WG 6/SG 4 リーダとして参加した.

ベンチマーキングに関しては,ISO/IEC 29155 シリ

ーズの第 1 部(Concepts and Definitions)の WD1,

WD2 の審議を行った.また,第 2部(Requirements for

benchmarking)の予備原案を日本から提供した.ベル

リン会議及び南寧会議には,高橋が国際 WG 10/SG 1

リーダ兼ISO/IEC 29155-1コエディタとして参加した.

2.5 WG 7 (ライフサイクル管理:Life cycle

Management)

WG 7 では,ソフトウェアやシステムのライフサイ

クルプロセス(活動)と関連プロセスを定義する規格

作りを進めている.今年度,2008 年に改定されたソ

フトウェアとシステムとの二つの SLCP に対する共通

ガイドに加えて,あらたに Requirements Engineering

やシステム保証に関する規格検討も始まった.そのほ

か,プロジェクト管理審議や次期 SLCP 検討とテーマ

や活動の幅も広がり,WG 7(主査村上:富士通)は国

内体制を強化しつつある.

ベルリン会議には,村上,橋本(東京国際大学),

菊島(アイネス),山田(東芝),小山(日立),小堀 (NTT

データ),森下(IPA/SEC)の 7名が参加し,また南寧

会議には,村上,橋本,山田,菊島,森下,小堀の 6

名が参加し,提案を含め技術面で大きく貢献した.

(1) Requirements Engineering(ISO/IEC 29148)

当初米国提案の WD はシステム要件とソフトウェア

要件が対象であったが,あいまいな要求がシステム品

質や開発に大きく影響することから,日本はベルリン

会議において,さらに上流の事業要件や業務要件まで

拡大し役割分担まで訴求する規格作りを提案した.具

体的には,日本で取り組んできた“超上流,共通フレ

ーム 2007,原理原則 17 ヵ条”の実績を説明し,賛同

を得て日米共同で WD を開発することになった.事

業・業務を日本が,システム・ソフトウェアを米国が

開発し,橋本がコエディタ になった.11 月の南寧会

議では,要求と要件の違い,4つの要件の関係,それ

ぞれの層ごとに要求が要件へと変換されるモデルや

プロセスの定義,Business Requirements 仕様と下位

の仕様との整合性など,多くの課題を休日返上で審議

を重ねてまとめてきた.この WD は国際 WG7 参加国へ

事前レビュー用に配布し,2009 年のハイデラバード

(インド)会議後には CDR&CD 投票へと進める予定で

ある.

(2) システム及びソフトウェア・アシュアランス

(ISO/IEC 15026)

従来の ISO/IEC 15026 は Integrity Level だけを扱

っていた.この規格の改訂版は 4つのパートから成る.

パート 1は全体の用語と概念,パート 2はアシュアラ

ンスケース,パート 3は Integrity Level の拡張,そ

してパート 4 がアシュアランスを行うためのプロセ

スである.ベルリン会議ではパート 1 の PDTR とパー

ト 2の CD2 は,いずれも冗長性が高く日本は構成の見

直しを要請し対応した.アシュアランスケースの概念

や取決めについては専門性が高く,南寧会議で日本か

らの貢献を依頼されたこともあって,1月より木下及

び高井(ともに産業技術総合研究所)が新たに WG 7

委員として加わり,パート 1の DTR 投票及びパート 2

の CD3 投票には冗長性排除と洗練化を主なコメント

として提言した.特に,国の信頼性・セキュリティ研

究会で討議した“リスクの共有と二者間合意”のもと

での保証の仕組みを参考に,“品質要求のクレームと

その根拠説明”との対峙のみではなく,新たに

“Justification”の項目を起こして強化する案を提

言している.

(3) ライフサイクル管理のガイド(TR 24748)

ISO/IEC 12207 及び ISO/IEC 15288 両規格の整合化

の第一ステップとして,2008 年に両規格とも改訂さ

れたが,本 TR は両者に共通する上位水準でのガイド

である.2 回目の PDTR 投票に対し,日本はコメント

付賛成としていたが,ベルリン会議での審議後,DTR

投票へ進み,南寧会議でのコメント処理後に TR とし

て発行する手続きへ進めた.

(4) ISO/IEC 12207 及び ISO/IEC 15288 ハーモナイズ

Study Group

プロセスやアクティビティの水準の違い,ソフトウ

ェアとシステムとの関係,Requirements Engineering,

サービスマネジメント,IT ガバナンスあるいは

Application Management などの新たな規格テーマ検

討がもたらす新たなプロセス群との関係,あるいは共

通フレーム 2007(要件定義プロセスや契約の変更管

理プロセス)など課題解決型のプロセス群の取込みな

ど,次期 SLCP をどうしていくかの研究を行っている.

これには村上が参画している.

(5) 関連規格

プロジェクト管理規格(ISO/IEC 16326)は,ISO/IEC

12207 改及び ISO/IEC 15288 改のプロジェクト管理プ

ロセスにそって,IEEE のプロジェクト管理計画を立

案するにあたって,プロセスと仕様に対するガイダン

スを規定するものである.コメント付賛成とした FCD

投票のコメントはベルリン会議で採用され,FDIS 投

票へ進む.

2.6 WG 10(プロセス評価:Process assessment)

IT benchmark の規格である ISO/IEC 29155-1 IT

Project Performance Benchmarking ― Part 1:

concepts and definitions を国際の SC 7/WG 10 で審

議することになったが,国内では Function Point の

審議を行う WG 6の FSM-SGで合わせて審議をしている.

日本から高橋がエディタとして原案作成にあたって

いる.

ISO/IEC 15504 シリーズについて,当初の 5部構成

の規格は 2003 年から発行されているため,5 年見直

しの Study Group を開始した.また,ISO/IEC 15504

シリーズの TR として次の 2 件を発行した.(1)

ISO/IEC TR 15504-6 Process assessment -- Part 6:

An exemplar system life cycle process assessment

model,(2) ISO/IEC TR 15504-7 Process assessment

-- Part 7: Assessment of organizational maturity.

Part 6 は小川(名古屋市工研)が,Part 7 は岡崎(日

本IBM)がコエディタとして編集に参加し,言語依存,

文化依存の内容が含まれないかを確認し,審議の内容

が正確に文章に反映されるように努めた.

現在,WG 25 で審議中の ISO/IEC 2000-4 を参照モ

デルとするアセスメントモデルである ISO/IEC TR

15504-8 Software process assessment -- Part 8: An

exemplar process assessment model for IT service

management と,どのように能力の対象プロファイル

を作るかのガイドである ISO/IEC TR 15504-9

Software process assessment -- Part 9: Capability

Target Profiles との二つを審議中である.

このほか,安全に関する拡張と,Conformity

Assessment に関する NWI を審議している.

2.7 WG 19(IT システムの仕様化技術:Techniques for

Specifying IT Systems)

WG 19 は,モデリング言語,メタモデル,ODP(*2)

フレームワーク及びその構成要素の標準化に取り組

んでいる.ODP については継続的に参加し,改善に貢

献しており,UML for ODP,ODP 参照モデル第 2 部,

第 3 部も完成した.モデリング言語では High-Level

Petri Nets の第 1 部の改訂に多大な貢献を行うとと

もに第1部,第2部の関係者間の対立を調整した結果,

FDIS 投票にまで進めることができた.また,OMG から

の KDM(Knowledge Discovery Meta-model),UML,CORBA

の 3つのPASに対してISO規格文書としての多数の不

適切さの改善を求める投票を行った.

(*2) ODP: Open Distributed Processing

2.8 WG 20(ソフトウェア及びシステム知識体系とプ

ロフェッショナル形成:Software and Systems Bodies

of Knowledge and Professionalization)

WG 20 の名称が Software and Systems Bodies of

Knowledge and Professionalization に変更され,こ

れに従って邦名を「ソフトウェア及びシステム知識体

系とプロフェッショナル形成」に変更することになっ

た.

本年度は,向山(IPA)がコエディタを務めたソフ

トウェアエンジニアリング・プロフェッショナルを認

証するための規格である FDIS 24773 Certification

of software engineering professionals -- Com-

parison framework が出版された.ベルリン会議で承

認された新作業項目である Guidelines and Examples

については,エディタ 3名のうち 1名に向山が選ばれ

た.また,システムズエンジニアリング・ハンドブッ

クに関するTRであるSystems Engineering -- Systems

Engineering Handbook の NP 投票が開始された.

2.9 WG 21(ソフトウェア資産管理:Software asset

management process)

WG 21 は,ソフトウェア資産管理のプロセスの標準

化について議論している.2008 年度の主な活動は次

の通りであった.

(1) ISO/IEC 19770-1 の JIS 原案作成

2008 年 6月より,ISO/IEC 19770-1 Software asset

management -- Part 1: Processes の JIS 化の検討を

行った.合計 9 回の集合討議及びメールにより,JIS

原案を作成した.成果は,2009 年度中に JIS として

発行される予定である.

(2) JTC 1/SC 7/WG 21 での標準化活動

ベルリン会議には山本,フロリダ会議には篠田(ク

ロスビート)が参加した.ISO/IEC 19770-1 のアセス

メントに関して,完全適合に対する成熟度評価だけで

なく,マーケットの要望に合わせ分割し,それを段階

的に実施していく構築アプローチが提案され,OWG を

立ち上げて検討が進めている(19770-4仮称).ISO/IEC

19770-2(導入されているソフトウェアの情報をコン

ピュータにもたせるタグの標準化)については,11

月に FCD 投票が行われ,日本と米国が条件付き反対を

投票したが,日本のコメントは殆ど採用され,FDIS

へ進んでいる.ISO/IEC 19770-3(導入されているラ

イセンスの情報をコンピュータにもたせるタグの標

準化)も OWG の検討が進んでおり,日本からは今泉

(Adobe)が参加した.

2.10 WG 22(ソフトウェアとシステムの用語:Software

and systems engineering consolidated vocabulary)

ベルリン会議開催までに,2008 年 2 月に制定され

た ISO/IEC 12207 及び ISO/IEC 15288 内の定義の反映

を済ませた.その時点でデータベースに登録されてい

る用語総数は 3358,定義数は約 4169,ソース文書は

103 に及んだ.用語に対する補足説明はコメント的に

記載されていたが,最終的には ISO の形式に合わせる

べく,“Notes“,“Examples”等として,手動で変換・

調整していくことにし,それらの修正は FDIS 版で反

映することにした.またその後,DB の保守に関して

評価チームを作って審議するという ISO の形式が提

案されたが,本 DB は IS として制定されたものを集め

るだけである故,内容の審議は必要がない,寧ろする

べきではないということになった.

2.11 WG 23(ISO 9000 品質管理ガイドライン:Systems

quality management)

ベルリン会議後に投票にかけられた 2件の NPが 10

月に承認されたことを受けて,南寧会議で,投票に対

して付加されたコメントの評価を行った.

ISO/IEC 90003 Software and systems engineering

- Guidelines for the application of ISO 9001:2000

to computer software の改訂については,南アフリ

カから,対象となっている ISO/IEC 12207 を改訂して

ISO/IEC 90003 が含む内容を付属書として書く方がよ

いという反対があっただけで問題なく承認された.エ

ディタとしてCoster(UK)と加藤があたることとした.

もう 1件の ISO/IEC 20000-1 Service management --

Part 1: Specification と ISO 9001 との関連を示す

ガイドラインを作成する NP については数ヶ国から,

その必要性を疑問視するコメントが付けられた.

ISO/IEC 20000-1 は未だに規格の内容が確実になって

いる段階ではなかったので,ISO/IEC 20000-1 の規格

が FCD レベルとなるまで規格作成を延期することと

した.エディタとして Rosennberg(UK)を選定し,

コエディタを加藤が担当することとした.

具体的な規格作成は,2009 年のハイデラバード会

議からということとした.

2.12 WG 24(ライフサイクルの小企業向きガイド:

Software life cycles for very small enterprises)

WG 24 は,各種ソフトウェアエンジニアリング規格

が多くの情報をもつあまり,比較的大きな企業でしか

消化しきれないという問題提起に対応して設定され

ている.具体的には,現在,ISO/IEC 29110 シリーズ

( Software Engineering Lifecycle Profiles for

Very Small Entities(Enterprises))の審議を行って

いる.本規格は,ISO/IEC 12207,15288 などの IS の

一部をテイラリングした ISP(International Stan-

dard Profile)の Part が 2 つと,それらを支援する

TR の Part が 3 つで構成されている.2008 年度は,CD

レベルに相当する PDISP,PDTR の審議を行い,2009

年度に予定されている FPDISP レベルへの進展と DTR

レベルへの進展のための準備をした.わが国の立場と

しては,小規模企業のソフトウェアプロセス改善は重

要だが,ドラフトの成熟度が高くないことから拙速な

規格化は有効でないこと,主として Conformance アセ

スメントを予定したかのような規格化は合理的背景

を欠くことなどを主張している.

2.13 WG 25(IT サービスマネジメント:IT service

management)

ISO/IEC 20000 シリーズの標準化を担当しており,

現在第 1部,第 2部の改訂及び第 3部から第 5部の作

成に関する審議を行っている.

第 1 部(仕様)は,ベルリン会議での審議の結果,

サービスの開発プロセスの追加など ISO 9000 等への

整合化がはかられた.その際,日本は反対したが,多

数決により WD から CD へ進むことが決議され,また,

同様に 11 月の南寧会議で FCD の投票にかかることに

なったが,その投票期限がハイデラバード会議直前の

ため,そこでの審議が難しい状況になった.第 2部(実

施のための規範)は,吉田がエディタを務め,第 1部

が FCD の段階になって最終形が見えたことにより,中

断していた活動を再開した.第 3 部(scoping

guidance)は,南寧会議で DTR へ進むことが決まった.

第 4部(process assessment model)について,日本

はその必要性に疑問をもっており,作成に反対してい

るが,南寧会議で DPTR へ進むことが決まった.また,

第 5 部(Process reference model)も日本は反対し

たが DPTR へ進むことが決まった.第 4 部,第 5 部に

ついて,日本はその分野のエキスパートが参加できな

いため審議に参加していない.なお,ISO/IEC 20000-1

は 2010 年に改訂版が発行される見込みである.

2.14 WG 1A(IT ガバナンス:IT governance)

ベルリン会議で WG 1A の設立が承認され,WG1A に

係る次の 3つの Study Group,(1) The governance of

IT,(2) IT governance for digital forensics,(3)

The application of governance principles to IT

operations に対応するため,2008-8-18 付で国内小

委員会設立が申請され,設立された.

設立後における国内 WG 1A の作業は,上記 3 Study

Group に係る対応を行うと共に,2008-12-3/5 にウェ

リントン(ニュージーランド)で開催された中間会議

に参加し 2008 年 10 月 8 日に NP として提出された

Corporate governance of IT implementation guide

に係る審議,投票を行った.

ウェリントン会議においては,WG 1A における IT ガ

バナンス検討の方向と内容が日本にとって有益なも

のとなるよう,日本における IT ガバナンスの実践事

例の次の 2件を紹介した.

(1) 官の取組み:経済産業省の IT ガバナンスガイド

ライン策定の歴史と内容の紹介

(2) 民の取組み:大手損害保険会社における,20 世

紀初頭からの IT 技術活用の歴史と現在の IT ガ

バナンス実践事例

一方,IT ガバナンスに係る体制変更が JTC 1 奈良

総会において決定され,Corporate governance of IT

を扱う WG 6 が JTC 1 直下に設置された.

WG 1A と JTC 1/WG 6 の役割分担は,ウェリントン

会議の検討も踏まえ NP 投票で承認された Corporate

governance of IT implementation guide 開発の JTC

1/WG 6 への移管を含め,2009 年度初めに決定する予

定である.

■ SC 17 国内委員会(カード及び個人識別/Cards

and Personal Identification)

委員長 廣川 勝久((株)電子商取引安全技術研究所)

1. 概要

ISO/IEC JTC 1/SC 17 は,カードと個人識別を対象

とし,各種カードの要素技術から利用システム(クレ

ジット・IC 旅券・運転免許証等)までを含む国際互

換性に関する標準化と登録管理を担当している.SC

17 国内委員会には,国際 WG(WG 1~WG 11)に対応す

る国内 WG に加えて,国内関係機関との連携強化を図

るためのサブ WG を設置している.SC 17 とこれらの

WG 及びサブ WG は単独または共同で,更に,関係委員

会・関係機関と連携して国際標準化を推進している.

後述の国際役職貢献とともに国際貢献の一環とし

て例年どおり,林義昭幹事長原案・木澤誠顧問監修の

日本国ナショナルレポートを SC 17 総会に提出した.

本年度は,

・ 公的システムにおけるカード技術の利用として,

IC 旅券発行実績の急増,入国審査時の IC 旅券と

電子署名確認,ISO 準拠運転免許証の発行拡大

・ カードシステムのバリアフリー化を目的とした,

TIM (Tactile Identifier Mark)の普及活動及び

ETA (Enhanced Terminal Accessibility)の国際

標準化提案

を紹介した.

前年度に引続き日本意見の反映を優先課題とし,

ISO国際会議派遣旅費の支出削減を行うよう運営しつ

つも後継者育成の機会創出も意識し,SC 17 総会と各

WG・各 TF の国際会議及び SC 間・WG 間合同国際会議

に委員が積極的に出席し,国際規格の制定活動に貢献

した.

第 21 回 SC 17 総会はロンドン(英)で開催され,

わが国からは後述の 8名が出席した.

本年度も,日本提案の NP について国内外関係機関

と連携して推進に努めるとともに,IC 旅券・運転免

許証に関する標準化活動を主導している.

日本提案の ISO/IEC 7811-9(識別カード-第 9 部:

TIM)は 2008 年 6 月に国際規格として制定された.

WG 3/TF 4(IC 旅券の試験方法)では日本が引続き

国際コンビーナを,WG 10(自動車運転免許証と関係

書類)では日本が国際セクレタリを務め国際標準化を

推進している.

WG 4(IC カード)では米提案の ISO/IEC 24727(IC

カード-プログラミング・インタフェース)シリーズ

について,国内の公的 IC カードシステムがこの規格

の範囲内でも稼動可能であり,将来の発展を阻害しな

いように試験規格も含めた審議に継続して参加して

いる.また日本提案の ETA は,2008 年 10 月に ISO/IEC

12905 として標準化が開始されている.

WG 8(非接触 IC カード)では実験データに基づく

提案によって ISO/IEC 14443(近接型非接触 IC カー

ド)シリーズの改訂に貢献している.

また,次節に示すようにカードの用途別耐久性評価及

び非接触 IC カードとその関連規格間のハーモナイゼ

ーションについて新たな活動を始めている.

1.1 国内委員会体制の特記事項

SC 17 国内委員会体制のうち国際 WG 11(カード及

び個人識別へのバイオメトリクス応用)案件に関して

は,2006 年度からサブ WG(WG 4/SWG 4,主査 坂本静

生氏)を国際 WG 4 案件である ISO/IEC 7816-11(IC

カード-第 11 部:生体認証手法を用いた個人照合)

及び国際 WG 11 案件への対応国内体制と位置付け両

WG の連携を強化している.

2008 年度は SC 17 国内委員会の直下に二つのサブ

WG を新設した.

国際 WG 1 案件である ISO/IEC 24789(カードサー

ビスライフ:カードの用途別耐久性評価方法)シリー

ズへの対応のためのサブ WG(SC 17/SWG A,主査 谷

内田益義氏)を設置し,メーカのみでなくユーザ団体

の意見も反映するための体制を強化している.

ISO/IEC JTC 1/SC 6(通信とシステム間の情報交換)

が担当する NFC(Near Field Communication 近距離

無線通信)シリーズと SC 17/WG 8 が担当する ISO/IEC

14443 シリーズとのハーモナイゼーション(相互動作

可能な条件の調整等)への対応のためのサブ WG(SC

17/SWG B,主査 苅部浩氏)を設置し,国内 WG 8 委員

に国内SC 17の関係委員も加え応用システム面からの

意見も反映するための体制を強化している.

2008 年 4 月には,国内 WG 10 の主査が牧野忠由氏

から榊純一氏に交代した.ここに,SC 17 及び発足当

初からのWG 10で多大な貢献をされた牧野氏の功績に

敬意と感謝を表したい.

なお,上記以外で対応国内委員会を設置していない

国際 WG 7(金融取引カード)案件,対応国内委員会

が休会中の国際 WG 9(光メモリカード)案件及び SC 17

共通事項への対応案はSC 17国内運営委員会で策定し

ている.

また,SC 17 国内委員会会議・同運営委員会会議の年

間開催予定を技術委員会(JTC 1 国内委員会)に連動

するよう設定することによって,各 WG での案件審議

時間を柔軟に確保できるようにしている.

1.2 国際会議の開催及び出席者数等

(1) SC 17 総会

開催地/会期: ロンドン(英)/2008 年 10 月 10

日~12 日

参加国数/出席者数: 18 ヵ国,4リエゾン/計 59

名(以下本項では敬称略)

議長(Richard Mabbott,英),セクレタリ(Chris

Starr,英),豪,オーストリア,ベルギー,加,中,

フィンランド,仏,独,日(森田信輝[METI/JISC],

廣川勝久,谷内田益義[東工大/リコー],中澤明[日本

電産サンキョー],寄本義一[凸版印刷],井出野敦弘

[全銀協],苅部浩[JBMIA],坂本静生[NEC]),韓,マ

レーシア,蘭,ニュージーランド,シンガポール,南

ア,西,英,米

リエゾン: Visa,MasterCard,ICMA,JTC 1/SC 31

(2) 各 WG 等の国際会議回数及び出席者

WG 1(3 回 7 名),WG 3(1 回 1 名),WG 4(4 回 9

名),WG 5(1回 1名),WG 8(SC 6 とのハーモナイゼ

ーション含む,5回 20 名),WG 10(3 回 12 名),WG 11

(1 回 1 名),その他 ICAO 等(5 回 10 名)であった.

なお,WG 10 対応については,(社)新交通管理シ

ステム協会に委託の上,合同で推進中である.

1.3 規格投票件数

本年度に行った規格への投票は,以下のとおりであ

る.

NP: 3 件,CD: 15 件,FCD: 8 件,DIS: 0 件,

FDIS: 15 件,IS 成立: 17 件

2. 主なプロジェクトの進捗状況

本年度に注力した主要案件,今後影響を与える可能

性のある案件等は次のとおりである.

2.1 わが国の SC 17 関連規格活動への役職貢献

わが国が目指す産業競争力強化のために,重点 TC

のひとつとして各種カードの要素技術から利用シス

テムに関わる提案を行うとともに,わが国の技術を規

格に反映させるため次の国際役職を務めている(以下

本項では敬称略).

① WG 3/TF 4(IC 旅券の試験方法)コンビーナ:榊

純一,2004 年から継続.

② WG 10(自動車運転免許証と関係書類)セクレタ

リ:榊純一,2004 年から継続.

③ WG 1(ID カードの物理的特性及び試験方法)

ISO/IEC 7811-9(TIM)プロジェクトエディタ:中澤

明,2006年就任,2008年 6月IS発行に伴い任務完了.

④ WG 4(IC カード) ISO/IEC 7816-1(外部端子付

き IC カード-第 1 部:物理的特性)改訂プロジェク

トエディタ:寄本義一,2008 年就任.

⑤ WG 4(IC カード) ISO/IEC 7816-11(IC カード-

第 11 部:生体認証手法を用いた個人照合)改訂プロ

ジェクトエディタ:寄本義一,2008 年就任.

⑥ WG 4(IC カード) ISO/IEC 12905(ETA)プロジ

ェクトエディタ:寄本義一,2008 年就任.

⑦ WG 8(非接触 IC カード) ISO/IEC 15693-1(近傍

型非接触 IC カード-第 1 部:物理的特性)改訂プロ

ジェクトエディタ:苅部浩,2008 年就任.

⑧ SC 17 総会決議起草委員:廣川勝久,-1995 年か

ら継続.

2.2 「TIM-Tactile Identifier Mark」の標準化

国内 SC 17/WG 1 は,ISO/IEC 7810(識別カード-

物理的特性)に定められた ID-1 カード(国際クレジ

ット等で使用されているカード)のエンボス領域の右

下端に点字 3文字分のスペースによる,視覚障害及び

高齢のカード所持者自身が判断できるマーク(点字)

を加工する方法につき,「共用品推進機構」と協力し

て国際標準化を推進した.この日本提案は,日本がプ

ロジェクトエディタを務めて推進した結果,ISO/IEC

7811-9(TIM)として制定された.

2.3 IC 旅券(eMRP)の標準化

ICAO/NTWG が中心になり標準化を進めている IC 旅

券(eMRP)の技術レポート(ICAO-TR)作成に,わが国は

外務省と共に積極的に参加し旅券への近接型非接触

IC カード技術の利用に関わる仕様策定に貢献してき

た.

国際的な運用では,このシステムを構成する IC 旅

券及び読取装置の国際互換性のための統一仕様及び

試験方法が必要となる.日本が国際コンビーナを務め

る WG 3/TF 4 では,ICAO の協力の下にその標準化を

進めている.IC 旅券の試験規格に関する ICAO 文書の

うち RF インタフェースに関する部分は ISO/IEC

10373-6 の追補(PDAM 7)として標準化が進められて

いる.

2.4 ETA に関する関係国内委員会との連携

日本提案に基づく ISO/IEC 12905(ETA:カード所

持者に適合したインタフェースを用いた端末利用の

向上)の標準化に際し,ISO/IEC JTC 1/SC 35(ユー

ザインタフェース)国内委員会との間で標準化内容の

相互確認を行い各々の標準化範囲と共通部分の整合

性確保を図っている.

2.5 ACBio に関する関係委員会との連携

ISO/IEC JTC 1/SC 27(情報セキュリティ)で日本

提案に基づき審議中の ISO/IEC 24761(ACBio-

Authentication Context for Biometrics)について

は,IC カードに適用した場合に必要なコマンド機能

等に関する連携を継続している.

2.6 バイオメトリクス応用への対応

シンガポール提案に基づく ISO/IEC 24787(カード

上での生体情報[指紋等]の入力・照合)は CD 段階で

の検討が継続されている.本規格への対応には,

ISO/IEC JTC 1/SC 37(バイオメトリクス)・同 SC 27

(情報セキュリティ)との連携が必要であり,SC 17

内でも複数 WG の連携が必要である.このため,WG

4/SWG 4 を編成し,国内の関係活動への影響をも考慮

しつつ対応している.

2.7 非接触 IC カード関連のハーモナイゼーション

ISO/IEC 14443 シリーズと NFC シリーズのハーモナ

イゼーションについては,2008 年 9 月の SC 17 Ad Hoc

ベルリン会議の検討結果に基づき 2008 年 10 月の SC

17ロンドン総会で推進する方針が決議された.一方,

2008 年 11 月の SC 6 総会で Study Group の設置が決

議された.その後のJTC 1奈良総会でSC 6 Study Group

に SC 17からもエキスパートが参加しハーモナイゼー

ションの検討を行うよう決議された.このため SC

17/SWG B を設置し対応検討を行うこととした.

3. 来年度以降への重要な課題

① IC カード等に関する基本的な要素技術以外で,

ISO/IEC 24727 シリーズのように利用システムに関わ

る標準化が求められている.その一方で,利用システ

ムからの要求に基づき,要素技術についても機能や性

能に関わる追加提案が増加する傾向が本年度も続い

ている.今後,カードの製造・発行・利用に係わる関

係機関・関係企業のより積極的な理解と参画を得て,

利用者個人も含めた各関係者の利益を考慮しつつ,わ

が国の技術力を踏まえた要素技術と利用技術の両面

からの対応を継続していく必要がある.

② IC 旅券の国際試験仕様(耐久性・プロトコル)に

ついて,ICAO 文書の ISO/IEC 規格への変換を含めて

継続的に対応する.

③ 日本提案に基づき制定された ISO/IEC 7811-9

(TIM)の普及を推進する.

④ ISO/IEC 24789(カードサービスライフ)シリーズ

について,わが国の技術を踏まえユーザの意見も反映

しつつ対応を行う.

⑤ 利用者にとって“inter-industry”等の用語がよ

りわかりやすくなるよう,ISO/IEC 7812(識別カード

-発行者の識別)シリーズの改定等を行う.

⑥ ISO/IEC 14443 シリーズと NFC シリーズとのハー

モナイゼーションに関して ISO/IEC JTC 1/SC 6 との

連携を検討する.

⑦ 国内では 2007 年 1 月から IC 化運転免許証の運用

が開始されており,国内外の動向を踏まえた ISO/IEC

18013(ISO 準拠運転免許証)シリーズの規格化を継

続する.

⑧ 日本意見を反映した国際標準化のためのエキスパ

ート養成が急務であり,そのための環境造りを検討す

る.また,SC 17 総会の 2010 年日本(高松)開催へ

の対応準備を進める.

■ SC 22 専門委員会(プログラム言語,その環境お

よびシステムソフトウェアインタフェース/

Programming Languages , their Environments &

System Software Interfaces)

委員長 石畑 清(明治大学)

1. 概要

SC 22 では,各プログラム言語の規格,言語共通の

規格,プログラミング環境やシステムソフトウェアと

のインタフェースに関する規格の開発を行っている.

現在の国際の SC 22 の構成は,COBOL,Fortran,C,

Ada,Lisp,Prolog,C++,VDM-SL と Z(仕様記述用言

語)を担当する WG があり,そのほかに脆弱性を扱う

WG と,言語共通事項(データ型,算術,手続き呼出

し,結合方法など)を扱う WG がある.APL,BASIC,

Modula-2 , Pascal , PCTE (Portable Common Tool

Environment),POSIX,国際化機能は,保守フェーズ

に入っている.

SC 22 の総会は,2008 年 9 月にイタリアのミラノで

開催され,日本からは 5名が参加した.WG 関係では,

COBOL,Fortran,Prolog の WG に積極的に参加した.

なお,2008 年度の投票は,NP 0 件,CD 5 件,PDTR

3 件,FCD 1 件,FDIS 0 件,DTR 0 件,COR 2 件,国

際規格の出版は,IS 1 件,TR 2 件,COR 1 件であっ

た.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 COBOL WG(WG 4)

2011 年の制定を目標に,次期 COBOL 規格の改定作

業を進めている.CD投票が2008年6月に締め切られ,

賛成多数であった (日本はコメント付き賛成).2008

年 10 月に米国で開催された WG 4 会議で,寄せられた

140 件の CD コメントを審議し,90 件を処理して,残

りの検討を継続している.2010 年 1 月に,2 回目の

CD 投票にかける予定である.

これまで WG 4 は,COBOL 規格に関する大きな方針

決めを担当し,実際の規格原案作成作業は米国の

INCITS(InterNational Committee for Information

Technology Standards) PL22.4(COBOL 規格委員会)

が担当している.この体制では,参加費を払って米国

の団体のメンバにならなければ,国際規格の仕様決定

過程にタイムリーに参画できない.2008 年 9 月の SC

22 総会で日本から改善を求め,運用改善を WG 4 に要

請する決議を得た.これを受けて,2008 年 10 月の WG

4 会議で,OWG-1 という名称の Other Working Group

を創設し,業務を INCITS PL22.4 から引き継いでいく

ことを決めた.2009 年 12 月から新しい体制で運用し

ていく予定である.

2.2 Fortran WG(WG 5)

2008年度の主な作業は,第1部の改正(通称Fortran

2008,2010 年 6 月改正版発行を予定)に向けた仕様

検討,及び Type 2 Technical Report として発行予定

の Further Interoperability of Fortran with C の

仕様検討であった.第 1 部の改正作業は,WG 5 で決

めた要求仕様に基づき,原案作成母体の米国 INCITS

PL22.3が詳細な仕様検討を行い,その作業内容をWG 5

会議にてチェックするという形で進めている.2008

年度の WG 5 国際会議は,11 月に東京で開催された.

この東京会議にて,この改正原案の CD 投票で寄せら

れたコメントについての回答処理及び技術検討が行

われた.Type 2 Technical Report の検討については,

この第 1 部のコメント処理に多くの時間を費やした

こともあり,東京会議の終了後,電子メールによる審

議及び議論を進めている.次回の 2009 年 5 月に開催

予定の WG 5(ラスベガス会議)では,第 1 部の FCD

作成,及びその作成状況に応じたスケジュールの見直

しが予定されている.

国内委員会の活動は,WG 5 の国際的活動に直接関

与しながら進めている.通常年 1~2 回開催されるこ

の WG 5 会議には日本からも代表者を毎回派遣し,議

論に直接参加することで大きく貢献している.2008

年 11 の東京会議開催に併せ,国内の研究機関や企業

などから Fortran に関する有識者を集め,情報技術標

準化フォーラム「Fortran 規格最前線 特に coarray

について」を主催した.また,国内では,国際規格の

改正に合わせて,JIS X 3001-1 の改正原案を作成す

る作業を継続して進めている.

2.3 言語共通 WG(WG 11)

2008 年 5 月 27 日締切りで,次の案件の CD 投票が

あった.

CD 10967-1 Language independent arithmetic

(LIA) -- Part 1: Integer and floating point

arithmetic

日本は,ドキュメントが未成熟として反対した.し

かし日本を除き,9 メンバが賛成票,5 メンバが棄権

票を投じ,賛成多数の結果であった.

2.4 C WG(WG 14)

WG 14 では,C 言語の現行規格 ISO/IEC 9899:1999

の改訂に向けて,TR や IS の形で一部の仕様を先行し

て公開している.TR の 1件は現在開発中である.

(1) TR 18037 Embedded C(2004 年 7 月発行済み)

組込みプロセッサの特性を最適に引き出すような

プログラムを可搬性のある C 言語で開発することを

可能とするように,既存 C言語の構文と意味規則に対

して拡張を施す Type 2 TR.

(2) TR 19769 new character data types(2004 年 7

月発行済み)

UTF 16 でエンコードされた文字をそのまま内部デ

ータとして扱えるビット幅固定の新データ型を導入

する Type 2 TR.

(3) TR 24731-1 Extensions to the C Library, Part

1: Bounds Checking Interfaces(2007 年 9 月発行済

み)

Cのライブラリ関数が潜在的に持っているセキュリ

ティ脆弱性を解決するためにライブラリ関数の拡張

を行う Type 2 TR.新関数は,既存関数と機能的には

同等だが,バッファ長を示す新規のパラメータを持つ.

これにより既存のプログラムは,アルゴリズムを変え

ずに関数の置換えを行う程度で配列の境界チェック

が可能となり,脆弱性への対処ができる.

(4) TR 24732 decimal floating-point arithmetic

(2009 年 1 月発行済み)

IEEE-754R に基づく 10 進浮動小数点計算に対応可

能とするための拡張を行う Type 2 TR.

(5) ISO/IEC 24747 Mathematical Special Functions

(2009 年 1 月発行済み)

ISO 31-11:1992 Quantities and units - Part 11

に定義されている全ての数学特殊関数を標準ライブ

ラリに追加する規格.最初は,Type 2 TR として提案

されたが,その後,ISO/IEC 9899 本体とは独立した

IS となった.

(6) TR 24731-2 Extensions to the C Library, Part

2: Dynamic Allocation Functions

文字列のコピーなどでのバッファオーバフローを

防ぐ Secure C Library の第 2部.第 1部(TR 24731-1)

は,既存の関数と置換え可能な,境界チェックを行う

関数の提案だけであったが,第 2部は,動的にバッフ

ァを確保する関数の提案.これらの新関数は,処理の

後でメモリ解放などを行う必要があり,単に関数の置

換えをするだけでは済まないため,新規に開発するプ

ログラムに適用されることを意図している.2009 年 1

月に PDTR 登録投票(日本は賛成)が可決承認され,

WG 14 が DTR 投票の準備を進めている.

2.5 Lisp WG(WG 16)

WG 16 は,言語規格(ISO/IEC 13816,JIS 規格は

JIS X 3012)の改訂版(ISO/IEC 13816:2007)が出版

されて小休止の状態である.

2.6 Prolog WG(WG 17)

Prolog 言語の国際規格として 1995 年に ISO/IEC

13211-1 Prolog-Part 1: General Core が,また 2000

年に ISO/IEC 13211-2 Prolog-Part 2: Module が制定

された.Prolog-Part 1 に対して「JIS X 3013 プロ

グラム言語 Prolog‐ 第 1 部:基本部」(要約 JIS)

が 2001 年に制定されている.現在,WG 17 ではこれ

らの規格の見直しに加えて,確定節文法(DCG),マル

チスレッド,および日本が提出した大域変数などの付

加機能について PDTR 投票を目指して検討が続けられ

ている.

2.7 C++ WG(WG 21)

C++ 言語の国際規格は, 1998 年に ISO/IEC

14882:1998 として制定された.5年後に改訂された版

ISO/IEC 14882:2003 は,defects の修正を目的とし,

大幅な言語仕様の改訂は行っていない.現在,ライブ

ラリおよび言語仕様の大幅な追加や修正を検討して

おり,2008 年度に CD1 投票を行った(日本はコメント

付き賛成,コメントの作成・検討のため外部有識者

15 名も参加した拡張 Ad hoc 会議を開催した).2009

年度に FCD 投票,2010 年度に DIS 投票を行う予定で

ある.

(1) ライブラリ仕様

正規表現を始めとする様々なライブラリの追加が

検討されている.提案された仕様は,Type 2 TR(TR

19768, TR 24737)としてまとめられ,その中から次

期改訂に追加する仕様を選択している.

(2) 言語仕様

従来のリファレンスを拡張した Rvalue Reference,

template の引数の型に対する要求仕様を明確化する

Concepts,マルチスレッドや関数の定義と実行を抽象

化したラムダ式(Lambda Expression)などの追加や

修正が検討されている.

(3) その他

10 進数浮動小数点の追加を行う PDTR 投票(TR

24733)と 特殊数学関数のみの標準化(IS)を目的とし

た CD 投票が行われ,可決された(日本は両件ともコ

メントなし賛成投票).

3. その他

3.1 JTC 1/SC 22/WG 23 案件の対応

2009 年 2 月 11 日締切りで,次の案件の PDTR 投票

があった.プログラミング言語の脆弱性を,言語独立

に記述した TR である.

PDTR 24772 Guidance to Avoiding Vulnerabilities

in Programming Languages through Language

Selection and Use

日本は,105 件のコメントを付けて賛成した.賛成

11,反対 1,棄権 5で,あわせて 6か国から膨大なコ

メントが寄せられた.

■ SC 23 専門委員会(情報交換及び保存用ディジタ

ル記録再生媒体/Digitally Recorded Media for

Information Interchange and Storage)

委員長 山下 経((株)日立製作所)

1. 概要

SC 23 は,情報交換用ディジタル記録媒体(光記録

方式の媒体および磁気記録方式の媒体)および光ディ

スク用ファイルフォーマット等の標準化を担当して

いる.P メンバは日本,オランダなど 9 カ国,O メン

バは 16 カ国,議長および幹事国は日本が担当してい

る.08 年度は,ほぼ 2 ヶ月おきに国内委員会開催(6

回)と,SC 23 総会(2008-12)への参加(delegation 派

遣)を行い,2008 年日本から NP 提案した iVDR 規格

FCD29171 審議,2007 年 NP 提案した光ディスクの誤り

監視規格 FCD29121 の FDIS 化検討と FDIS 審議,ISO TC

42/WG 5/TG 5 から要請のあった,光ディスクの寿命

推定新規規格化検討のための SC 23との JWG設立に対

する SC 23 としての方針検討(含む TC 42 側検討内容

確認のための会議開催),DIS規格審議等を実施した.

2. 内容

2.1 スコープの改定

2007 年 11 月 23 日に日本から提案したスコープの

改定提案“ハードディスクを除く”の削除は,SC 23

での承認(2008-02-22)後,JTC 1 での 60 days default

ballot を経て 2008 年 4 月 25 日に承認された.

2.2 新規の規格提案投票時の参加国数削減

NP 投票時の参加国数削減について,JNB から JTC 1

総会(2008-10)に提案がなされ Pメンバ国数が 16 カ

国以下の SC では,NP 投票時に 4カ国の参加が得られ

ればよいとのルール改定が合意され,2008 年 10 月に

開催された JTC 1 総会でも確認された.SWG on

Directives 会議での検討を経て,ようやく ISO TMB

にて 2009 年 3 月に Directive が改正された.9 カ国

しか Pメンバがいない SC 23 にとって,この改正は朗

報である.

2.3 光ディスクの誤り監視規格 FCD 29121 審議

2006 年に検討を開始し 2007 年 2 月に日本から NP

提案した,記録済み光ディスクでのデータ記録の誤り

状態を監視する規格 ISO/IEC 29121「Data migration

method for DVD-R,DVD-RW, DVD-RAM, +R and +RW」は

2007 年 10 月に FCD 投票にかけられ,2008 年 2 月 1日

に承認された.その後国内 Ad-hoc 委員会で FCD コメ

ントを元に FDIS 案を作成し ITTF に送付(2008-7).

FDIS 投票承認後(2009-1),IS 化に向けた Editor コ

メントを作成し,ITTF に送付(2009-1),2009 年 2 月

15 日に IS として発行された.近年 Ecma から多数提

案されている Fast Track Procedure と同様,検討開

始からNP提案を経てほぼ2年という短期間でIS規格

発行までこぎつけることが出来た.

2.4 ハ ー ド デ ィ ス ク 関 連 規 格 FCD 29171

「Information versatile Disk for removable usage

(iVDR) Cartridge」日本からの NP 提案

2007年末からiVDRコンソーシアムからの要請によ

り検討審議開始してきた iVDR(ケース,コネクタ等

の物理規格)国際規格化は,SC 23 スコープ修正(ハ

ードディスクを検討カテゴリに含める)と並行して審

議を重ね,2008 年 4 月 25 日 JTC 1 でのスコープ修正

承認を待って 7 月末に日本から NP 提案した.本提案

は2008年 11月末に5カ国の積極参加により承認され,

12 月の SC 23 総会で本件を審議する新規委員会 WG 6

設立承認(Convener; 山下 経(日立),Editor ; 国崎

修(日立 GST),Co-Editor; W. Glinka(USA))と FCD

29171 作成を行った.その後 12 月末に FCD 投票が開

始され,日本からの回答案作成と投票を 2009 年 3 月

に実施した.2009 年 4 月末に FCD 投票完了し,6月末

に FCD に対する BRM を San Jose, CA. USA で実施予

定である.

2.5 ISO TC42/WG5/TG5(含む ISO TC171)との Joint

Working Group (JWG) 設立について

ISO/TC42 Photography からの要請,1) SC 23 で 1

昨年開発した DVD の寿命推定規格である ISO/IEC

10995 への追加修正と,2) それを協議する新たな JWG

設立提案(SC 23 及び JTC 1(2008-10)で承認済),に

対する SC 23 としての対応策を探るため,SC 23 議長

からの要請に基づき,国内委員会メンバと

TC42/WG5/TG5 とで 2008 年に複数回会議を実施した.

これらの会議結果に基づき日本から新規開発規格方

針案を作成し,SC 23 へ提案した.この案は 2008 年

12 月に開催された SC 23 総会で,JWG convener 候補:

SC 23 側; 山下 経,TC42 側 Prof. Peter Adelstein,

事務局 SC 23 セクレタリ 長澤有由子(日)などの運営

関連案件と共に審議され,承認された.これらの審議

結果はTC42側に伝えると共に,第一回JWG会議の2009

年 2月 27日開催準備を依頼した.しかし,その後 TC42

側との連絡がうまくとれず,6 月 26 日に延期(ホス

ト:SC 23 米国,NCITS)することとした.

2.6 ISO/IEC 2382-12 Vocabulary -- Part 12 :

Peripheral equipment 用語レビュー

SC 23 総会(2008-09)で日本,韓国,中国が協力

を表明した用語レビューは,この一年間特段の活動は

なかった.

3. SC 23 のプロジェクト進捗

2008 年度,以下の規格作成進捗があった.

3.1 120mm 関係

・ ISO/IEC 11976: Data interchange on 130 mm

rewritable and write-once-read-many ultra

density optical (UDO) disk cartridges--

Capacity: 60 Gbytes per cartridge -- Second

generation(Ecma よりのファストトラック提

案.)(2008-12-15 出版)

・ ISO/IEC 25434: Data interchange on 120 mm and

80 mm optical disk using +R DL format --

Capacity: 8,55 Gbytes and 2,66 Gbytes per side

(recording speed up to 16X)(Ecma よりのファ

ストトラック提案)(2008-12-15 出版)

・ ISO/IEC DIS 12862: 120 mm (8,54 Gbytes per

side) and 80 mm (2,66 Gbytes per side) DVD

recordable disk for dual layer (DVD-R for DL)

(Ecma よりのファストトラック提案)(投票期

限:2009-01-08)

・ ISO/IEC DIS 17341: Data interchange on 120 mm

and 80 mm optical disk using +RW format --

Capacity: 4,7 Gbytes and 1,46 Gbytes per side

(recording speed up to 4x)(Ecma よりのファ

ストトラック提案)(投票期限:2009-01-08)

・ ISO/IEC DIS 17344: Data interchange on 120 mm

and 80 mm optical disk using +R format --

Capacity: 4,7 Gbytes and 1,46 Gbytes per side

(recording speed up to 16x)(Ecma よりのファ

ストトラック提案) (投票期限:2009-01-08)

・ ISO/IEC DIS 26925: Data interchange on 120 mm

and 80 mm optical disk using +RW HS format --

Capacity: 4,7 Gbytes and 1,46 Gbytes per side

(recording speed 8x)(Ecma よりのファストト

ラック提案)(投票期限:2009-01-08)

・ ISO/IEC DIS 29642: Data interchange on 120 mm

and 80 mm optical disk using +RW DL format --

Capacity: 8,55 Gbytes and 2,66 Gbytes per side

(recording speed 2,4x)(Ecma よりのファスト

トラック提案)(投票期限:2009-01-08)

3.2 光ディスクの信頼性関連規格

ISO/IEC 29121: Digitally recorded media for

information interchange and storage -- Data

migration method for DVD-R, DVD-RW, DVD-RAM, +R

and +RW disks(出版:2009: 2009-02-15)

3.3 iVDR 規格

FCD 29171:Digitally recorded media for

information interchange and storage- Information

versatile Disk for removable usage (iVDR)

Cartridge (投票期限:2009.-04-25)

4. その他関連事項

① TC42/WG5の国内窓口である写真感光材料工業会か

ら内容チェック依頼のあった,ISO/DIS 18938 につい

て2007年 12月に回答した.TC42での投票結果を2008

年 3 月に入手し,コメントが反映されていることを確

認した.

② SC 23 国内委員会の幹事が 2008 年 4 月浜田氏(日

鉄技術情報センタ)から布施氏(ソニーオプティアー

ク)に交代した.

③ 3年ごとに見直しが行われるSC 23議長について,

2008 年 11 月の JTC 1 総会において三橋議長が再任さ

れた.

■ SC 24 専門委員会(コンピュータグラフィクス,

画像処理及び環境データ表現/Computer graphics,

image processing and environmental data

representation)

委員長 青野 雅樹(豊橋技術科学大学)

1.概要

本委員会に対応する国際組織は,ISO/IEC JTC 1/SC

24 であり,担当範囲は,

・ コンピュータグラフィクス

・ 画像処理

・ 仮想現実

・ 環境データ表現

・ 情報の表示と対話

に関する情報技術応用システムのための各種インタ

フェースを標準化することであるが,

・ 文字および画像の符号化

・ マルチメディア/ハイパーメディア文書の交換

形式の符号化

・ JTC 1での利用者システムインタフェースおよび

文書表現

・ ISO/TC 207 の環境マネージメント

・ ISO/TC 211 の地理情報

・ JTC 1/SC 22 のソフトウェア環境 は,除外する.

国際では,

・ WG 6(マルチメディアによるプレゼンテーショ

ンと交換)

・ WG 7(画像の処理と交換,登録)

・ WG 8(環境表現)

の WG が存続しており,国内でも WG 6 関係の案件は

WG 6 小委員会を設けて対応している.WG 7 と WG 8 案

件は,専門委員会が直接担当することとなっている.

主な国際会議および参加の状況に関しては,昨年の

6月に米国カリフォルニア州モンテレーで開催された

が,日本からの参加はなかった.2008年度の主なSC 24

の審議案件は,以下のとおりである.

・ NP 投票 2 件(賛成)

・ FCD 投票 2 件(賛成 2)

・ FDIS 投票 3 件(賛成 3)

・ FDAM 投票 1 件(賛成)

カッコ内は日本の投票内容,コメント付き賛成も含む.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 WG 6 小委員会

仮想現実モデル化言語 VRML97(ISO/IEC 14772)の

後継規格で Web3D コンソーシアムと共同開発の X3D

(基本機能仕様は ISO/IEC 19775-1/2:2004)の第1

世代に関しては,2005 年度中に XML 符号化および

VRML 風符号化(ISO/IEC 19776-1 および 2)が出版さ

れ,言語結合(19777-1 および 2)は 2006 年の 3月まで

の FDIS 投票で可決された後,2006 年 5 月に出版され

た.第 1 世代への第 1 次機能拡張は,基本機能部分

(19775-1/Amd.1),XML 符号化(19776-1/Amd.1),VRML

風符号化(19776-2/Amd.1)が,FPDAM 投票を終え,

いずれも承認された段階である.符号化に関しては,

2006年度に圧縮バイナリ符号化(19776-3)の FCD投票

が行われた.さらに,第 2次機能拡張の代わりにこれ

までの追補をまとめた基本機能部分の改訂版

(19775-1/rv1)の CD 投票が行われ承認され,2007

年度には FCD 投票が行われ可決された.その後,

19755-1/rv1 は,X3D の基本規格の第 2版(edition 2)

と呼ばれるようになった.X3D の第 2版に関して,そ

れに関連する幾つかの規格の投票が 2008 年度に行わ

れた.具体的には,符号化に関して,Part 1: XML 符

号化(第 2 版)の FCD19776-1 が可決,Part 2: VRML

風符号化(第 2版)の FDIS19776-2 が可決,Part 3: 圧

縮バイナリ符号化の FCD19776-3 が可決された.言語

結合部分の第 2 版の審議・投票は 2009 年度に行われ

る予定である.

2.2 専門委員会直轄プロジェクト

2005 年度に SC 24 内の小委員会としては解散した

WG 7 は専門委員会の直轄プロジェクトのひとつであ

る.しかし WG 7 にも国際的には人的かつプロジェク

ト的な新たな動きがではじめている.具体的には,

2007 年の東京会議にて新しいコンビーナに韓国の Y.

K. Chung 氏が抜擢された.同時に New Work Item 候

補として,コンビーナから,知的ロボット応用のため

の画像処理に関する発表があった.また以前のコンビ

ーナだった米国の Laura Moore 氏からは,衛星画像利

用のための IEC TC11 NP に関して発表があったが,

2008 年度には,これに関する NP は特に提出されなか

った.

国際の WG 8 で作業が進められている SEDRIS

(Synthetic Environment Data Representation and

Interchange Specification)は,飛行訓練などの地

理座標依存情報を用いたシミュレーション対応の国

際標準である.具体的には,基本となるデータクラス

を規定する SEDRIS 本体(18023-1),地理・宇宙空間用

の各種座標系を扱う空間参照モデル(SRM,18026),

環境シミュレーション関係のオブジェクトおよび属

性のコード化(EDCS,18025)の 3 本の柱から成り,

それぞれに,データ交換と応用プログラムインタフェ

ース(API)の規格と言語結合の規格が含まれている.

2006 年度までに,SRM(18026,18042-4)が出版され,

SEDRIS 関係でも,言語結合(18024-4)のほか,SEDRIS

のデータ交換インタフェース規格(18023-1,18023-2,

18023-3)が出版されている.2008 年度には,FDCS の

補遺である 18025/AMD1 の NP投票が,また,SRMでは,

18026/AMD1 の FDIS 投票と 18027/AMD2 の BP投票が行

われ,いずれも可決された.日本としては,WG 8 は

専門委員会の直轄プロジェクトであるが,今後もこれ

までと同様に取り組んでいく予定である.

■ SC 25 専門委員会(情報機器間の相互接続/

Interconnection of Information Technology

Equipment)

委員長 山本 和幸

1. 概要

1.1 会議開催

SC 25 専門委員会は情報機器間の相互接続に関する

国際標準化を担当し,現在 WG 1:住宅,ビル内電子

機器の相互接続ネットワーク,WG 3:構内の情報配線

システム,WG 4:計算機システム及び周辺機器間の相

互接続の国際標準化を行っている.

SC 25 総会は 2008 年 10 月 24 日,リヨン/フラン

スで開催され,23 カ国,2 機関/組織,55 名の参加

があり,日本からは 4 名(山本/SC25 委員長,宮島

/住友電工,別府/昭和電線ケーブルシステム,渡邊

/旭硝子)が参加した.

WG 1 会議は,ミラノ(2008-03-31/04-04)及びリ

ヨン(2008-10-20/23)で開催された.ミラノ会議は 11

カ国+1 組織,計 32 名(うち日本からは 2 名)の参

加,リヨン会議は 11 カ国+3組織,計 27 名(うち日

本からは 1名)の参加があった.

WG 3 会議は,リヨン会議(2008-10-20/23,24 カ国,

56 名出席),ロスカボス会議(2009-03-23/27,22 カ

国,45 名出席)の 2回の会議が開催された.

WG 4 会議はリヨン(2008-10-22/23)で開催され,

2カ国 4名(日本から 1名)の参加で行われた.

1.2 成果と総会

着手した NP は 6 件,CD 7 件,FCD 13 件,PDTR 1

件,DIS 1 件,FDIS 10 件,DTR 1 件の投票と IS 12

件,TR 0 件が出版された.

総会ではタイトル,スコープ,組織構成,セクレタ

リ等の変更は特になかった.議長は 2期 8年の任期を

務めた G. Zaidler から Gerd Weking(独,IEC/TC 48

議長兼任)に引き継がれた.

PTTT(Project Team Taxonomy & Terminology)は

2006 年ベルリン会議からセクレタリの強引な運営で

発足し,依然としてドイツが中心となって極めて政治

的に運営されている.このため各国の反発も多く,活

動も停滞している.実行上 WG 1 の中で WP として運営

されているが,引き続きその動きには注意が必要であ

る.

2007 年,新メンバとしてインド,カザフスタン,

シンガポール,レバノンの 4カ国が承認され,Pメン

バ国は 28 カ国となった.しかしカザフスタンは投票

を全く行っていないため,Oメンバへの格下げの要請

を決議した.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 WG 1 関連(Home Electronic System)

(1) エコーネット提案(日本)

1) フル仕様提案

日本提案のホームネットワークプロトコル:エコー

ネットのフル仕様提案は,ISO/IEC 14543-4-1: HES

Architecture - Part 4-1: Communication layers

Application layer for network enhanced control

devices of HES Class 1 と,ISO/IEC 14543-4-2: HES

Architecture - Part 4-2: Communication layers -

Transport, network and general parts of data link

layer for network enhanced control devices of HES

Class 1 として共に 2008 年 5 月 1日に IS となり,出

版された.

2) セキュア通信プロトコル

セキュア通信ミドルウェア提案は ISO/IEC

24767-1: IT - Home network security - Part1:

Security Requirements and Internal Security

Services: Secure Communication Middleware

Protocol と,ISO/IEC 24767-2: IT - Home network

security - Part 2: Internal Security Services:

Secure Communication Protocol for Middleware は

共に2008年4月のSC 27京都会議でのリエゾン審議,

FDIS 投票を経て 2008 年 1 月に出版された.

(2) IGRS 提案(中国)

AV機器制御ミドルウェアである中国提案のIGRS規

格は,パート 1 は 2nd FCD,パート 21 は CD,パート

22 は 2ndFCD,パート 3 は CD,パート 4は FDIS,パー

ト 5は CD,パート 6は CD の各投票が終了し,各々承

認された段階である.

しかし,IGRS 規格の主要部分が,先行して承認さ

れた同じ AV 機器制御ミドルウェア規格(ISO/IEC

29341)であるUPNPの一部デッドコピーであるとUPNP

側から主張があった.ところが中国はデッドコピーで

はないと主張したため,審議は実質進展していない.

(3) UP&P(米国)

AV 機器制御ミドルウェア規格(UPNP Device

Architecture 1.0)は ISO 29341 として出版された.

(4) LonWorks(CENELEC/米国)

2006 年に米国から提案され,欧州の反対多数で否

決されたビル制御ネットワークプロトコルの

LonWorks 規格は,CENELEC から Fast Track DIS

149081-1から 149081-5で再度投票にかけられ再度賛

成多数とはならなかったが 10 月の BRM で IS 化が承

認され出版された.

(5) Interoperability 審議

マルチ標準化合意の結果として,相互接続性規格

Interoperability審議の重要性が高まり,韓国,UK,US

が審議を推進している.日本からも議論収束方法の提

案をしているが,各国意見が収束していない.

(6) Residential Gateway Part 2 審議

API(Application Program Interface)による新しい

大胆な審議計画の提案や今後の審議方向に対する意

見がまとまらず,技術者の理想論と市場要求が合致し

ないため審議は進展していない.

(7) BA,HA の機能安全性

Home and Building Electronic Systems (HBES) -

Guidelines for functional safety 規格はドイツ提

案の CENELEC 規格であり,日米が反対したが,欧州の

賛成多数で承認され,ISとして出版(ISO/IEC 14762)

された.

(8) その他

韓国提案の CMP:Centralized Management Protocol

for ubiquitous home network services 規格,WiBEEM:

省エネ無線ネットワーク規格は提案元の作業が停滞

し,審議が進んでいない.

2.2 WG 3 関連(Customer Premises Cabling)

(1) 概要

WG 3 は構内配線アーキテクチャ,ケーブル/コネク

タから成るリンクの仕様,ケーブル設置スペース規定

など構内配線システムの標準化を行っており,2008

年度の主なテーマと検討内容は以下のとおり.

(2) 工業用配線(ISO/IEC 24702)

ISO/IEC 11801 の拡張規格としての産業用構内配線

規格 ISO/IEC 24702 の POF(Plastic Optical Fiber)

関連の規定を追記するための Amendment として日本

が提案したものである.FPDAM1の投票結果は承認さ

れたが,光ファイバケーブルの用語を統一して FDAM

として審議することとなった.

(3) ユーザ機器における配線法総則(ISO/IEC 11801 )

1st FPDAM2 には日本は賛成したが投票では否決さ

れた.3rdPDAM1.2 には日本は反対し,投票も否決さ

れた.

(4) リモート給電(ISO/IEC 29125)

TR が承認され PDTR として回覧中.11801,24702,

24764,15018 で規定される配線法における給電条件

等を審議する.

(5) 家庭用配線(ISO/IEC 15018)

FDAM1 は承認されてすぐに刊行される模様である.

1st PDAM2 は SC コネクタの追記を条件に日本は反対

し,投票では否決された.2nd FPDAM として投票とな

ったが,再度否決された.日本としては,SC コネク

タの採用を WG 3 のコメントとして事務局修正案に回

答した.

(6) データセンタ(ISO/IEC 24764)

1st FCD には日本はコメントなしで賛成したが否決

された.2nd FCD が回覧中である.

(7) ユーザ配線系の施工と運用(ISO/ISE 14763)

TR 14763-2 は CD 文書が回覧予定.14763-3FPDAM 1

は承認された.NP の 14763-2-1TR は承認された.日

本は賛成投票を行ったが,実効性などには疑問が残る.

2.3 WG 4 関連(計算機システム及び周辺機器間の相

互接続/Interconnection of Computer Systems and

Attached Equipment)関連

(1) 概要

リヨン会議では各プロジェクトの状況確認を行う

とともに①スコープの整理(SC の重複・競争),②WG 4

と米国 INCITS (International Committee for IT

Standards) T10/T11 との同時開催,③WG 4 提案文書

の取り扱い(規格修正の責任者,ワープロソフト),等

について議論した.また,今後の WG 4 国際標準化会

議は T10/T11 と同時開催することとし,2009 年の SC

25 総会開催時には WG4 会議を開催しないこととし,

WG 4 コンビーナが SC 25 総会に出席することとした.

以下にプロジェクト毎の 2008 年度の活動状況を報

告する.

(2)ファイバチャンネル(FC)

国内委員会において Link Services (FC-LS)の NP

投票に賛成投票した.また,Storage management Host

Bus Adapter API の CD 投票, 10GFC および Fabric

application interface standard (FAIS)の 2 件の FCD

投票に賛成投票した.更に 10GFC Amendment 1 の FDIS

投票および Arbitrated Loop 2 Amendment1 の FPDAM

投票に賛成投票した.また,Avionics environment

upper layer protocol MIL-STD-1553B Notice 2 (FC-AE

-1553)の TR に賛成投票した.

(3) SCSI(Small Computer System Interface)

国内委員会においてArchitecture Model-4 (SAM-4)

および SCSI-ATA Translation (SAT)の 2 件の FCD 投

票に賛成投票した.また,iSCSI Management API

(iSCSI) の FDIS 投票に賛成投票した.

(4) その他

WG 4 で扱う規格は重要な案件が多く生産性も高い

が,ここ数年来参加国が減少し,昨年から 2カ国にな

った.これは WG が扱う規格は INCITS の T10/T11 から

提案されることが多いが INCITS に多国籍の企業が参

加しJTC 1への提案時点で既に国際的な仕様の調整が

行われているためである.

日本提案の Responsive Link が唯一 WG 4 の独立案

件であったがその IS化が終了しこの点からも WG 4の

開催意義が薄れてきた. 従って今後の WG 4 は INCITS

T10/T11 が開催される時に同時開催することとし,

T10/T11を米国以外でも開催することを計画すること

とした.なお,独立案件が出てくればこれまでの形態

に戻すことも有りうるとした.JTC 1 中央オフィスか

らも,「審議で衝突がないのに会議に参加するのは出

席者にとって負担となること,T10/T11 で実質的な議

論ができているのであれば,そちらにオブザーバとし

て参加する方がメリットは大きく参加者数も増える

であろう」などの理由で合意を得た.

■ SC 27 専門委員会(セキュリティ技術/Security

Techniques)

委員長 寳木 和夫((株)日立製作所)

1. 概要

SC 27 は一般に広く使われる情報セキュリティの要

素技術,管理システム,および,サービス技術の標準

化を担当している.国内でも国際会議と同じ 5 つの

WG に対応する小委員会を設置している.

2008年度に行われた NP投票は 13件,CD/PDTR/PDAM

投票は 18 件,FCD/FPDAM 投票は 16 件,DTR 投票は 1

件,DIS 投票は 0 件,FDIS/FDAM 投票は 9 件,IS/TR

出版は 16 件であり,引き続き活発に標準化が行われ

ている.

2008年4月に日本の京都で開かれたSC 27総会で,

WG 1 では ISO/IEC 27000 シリーズの進展と関連する

NP 提案の扱い,WG 2 では種々の暗号メカニズム標準

に関する改訂や,サインクリプション,軽量暗号メカ

ニズムなど新規案件の推進,WG 3 では暗号モジュー

ルのセキュリティ要件に関する改訂,脆弱情報開示に

関する新規案件,WG 4 ではセキュリティコントロー

ル 27030 シリーズの進展,新規案件の取扱い,WG 5

ではプライバシーフレームワークなど WD レベルが続

いている案件などの審議を行った.この京都会議の詳

細については,既に報告したとおりである(NL No.79,

2008 年 9 月).

2008年 10月にキプロスのリマソールで開催された

SC 27 の各 WG の国際会議では,上記課題の他,WG 1

で順次出力される ISMS27000 シリーズと新規案件と

の関係整理,WG 2 で標準化開始前段階にある軽量暗

号技術,グループ鍵管理等の検討課題,WG 3 で暗号

モジュールのセキュリティ要件,WG 4 でアウトソー

シングなど新たな項目の進展,WG 5 で,プライバシ

ー関連プロジェクトなどへの日本の取組み方などに

注意しながら臨んだ.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 WG 1(情報セキュリティマネジメントシステム)

2.1.1 情報セキュリティマネジメント関連の標準化

情報セキュリティマネジメントシステム ISMS は,

主に,組織のマネジメントとして自らの必要なセキュ

リティレベルを決め,プランを持ち,資源配分して,

システムを運用する手続きを規定するものであり,

ISO/IEC 27000 シリーズとして標準化が進められてい

る.2008年6月,ISO/IEC 27005 "Information security

risk management"が,2008 年 12 月に ISO/IEC 27011 "

Information security management guidelines for

telecommunications organizations based on ISO/IEC

27002"が 新たに IS 文書として発行された.27011 の

エディタは中尾康二(KDDI)が務めた.以下,ISO/IEC

番号を示すとき,ISO/IEC を省略して単に番号のみを

記す.

① 27000 “ISMS -- Overview and vocabulary”は,

定める用語の適用範囲(ISMS ファミリー全体)の検

討などを行い,FDIS に進むこととなった.27000 のコ

エディタは原田敬(日立)が務めている.

② 27001 “ Information security management

systems -- Requirements”および 27002 "Code of

practice for information security management"は

5 年後見直し時期に近づいており,賛成多数により,

そのままの継続ではなく一部改訂することになった.

③ 27003“Information security management system

implementation guidance”については,総数 539 件

のコメントに対し処理を行い,FCD に進むこととなっ

た.山崎哲(IBCS)がコエディタを務めている.

④ 27004 “Information security management --

Measurement”については,コメント総数 449 件の処

理を行ったが,技術的変更が必要なことから改訂版と

して 2nd FCD を作成することとなった.

⑤ 27007 “Guidelines for information security

management systems auditing”については,130 件

のコメントに対し処理を行い,ISO 19011改訂及びISO

17021-2策定の作業と調和を計りつつ作業を進めるた

め,次回,WD 改訂版を作成することとなった.

⑥ 27008 “Guidance for Auditors on ISMS Controls”

については,NP 投票が可決され,TR 作業項目として

進めることとなった.

2.1.2 その他の WG 1 標準化項目

① ISM for e-government と ISM for inter-sector

communications について,NP 投票が可決され,WD を

作成することとなった.

② "Information Security Governance Framework"

等について NP 投票にかけることになった.

2.2 WG 2(暗号とセキュリティメカニズム)

WG 2 は苗村憲司(情報セキュリティ大学院大)コン

ビーナのもと,暗号アルゴリズム,エンティティ認証

等のセキュリティ基盤技術の標準化を進めている.

① 18033 “Encryption algorithms”の発行後 5年に

向け議論がなされた.

Part 1(一般): 日本のみが改訂を提案したが,修

正の内容が軽微であることから,改訂せずに

Amendment を作成することになった.

Part 3(ブロック暗号): 韓国から暗号 HIGHT の提

案があり改訂版の作成が決定した.

Part 4(ストリーム暗号): 米, カナダ, 日本, ル

クセンブルグが改訂を提案.18033-4/FPDAMも含めて,

改訂することが決まった.

② 11770 "Key management"-Part 1,2,3,4, 9798

"Entity authentication"-Part 1,2,3,4,5,6 につい

て,英国 Chen-Mitchell より鍵に対する parsing

ambisuites 攻撃が紹介された.ID 部分の結合実装に

よっては成りすましができると指摘し,これらの標準

技術に攻撃ができると主張.今後の対応として,

Defect Report として Technical Corrigendum(正誤

表の作成に相当)を行うことになった.

③ 日本がエディタ,ラポータをする項目:

竜田敏男(情報セキュリティ大学院大)が担当する

9798-2(対称暗号利用型エンティティ認証[改版])は

2008 年 12 月に IS が発行され,11770-1(鍵管理の枠

組み[改版])は今回 CD 段階に進むことになった.吉田

博隆(日立)と近澤武(IPA/三菱)が担当する 10118-2

(ブロック暗号利用型ハッシュ関数[改版])は CD 段

階にある.宮地充子(北陸先端大)が担当する 15946-5

(楕円曲線生成),および渡辺創(産総研)が担当す

る 13888-3(非対称技術利用型否認防止[改版])は今

回 FCD 段階に進んだ.また,宮地担当の 15946-1(楕

円曲線暗号技術の総論[改版])/Cor1,および櫻井玄弥

(IPA)担当の 18031(乱数ビット生成)/Cor1 は DCOR 投

票を終えて出版の見通しである.なお,市川忠昭(ア

マノ)と宮地が担当した18014-1(タイムスタンプの枠

組み[改版])は 9 月に出版された.

新たに改版作業を開始する項目のうち,18031(乱ビ

ット生成)については櫻井(IPA)が米と共同で,また

18033-4(ストリーム暗号アルゴリズム)については宮

地が独と共同でエディタを担当することになった.

櫻井幸一(九大)がラポータを担当した軽量暗号メ

カニズム,多数エンティティ用鍵設定メカニズムの 2

件が,軽量暗号およびグループ鍵管理として標準化に

進むことになった.前者については南アフリカと共同

で盛合志帆(ソニー)が,また後者についてはドイツ

と共同で田中俊昭(KDDI)がエディタを担当する予定

である.秘密分散メカニズムについては,新たに櫻井

(九大)がラポータを担当することになった.

なお,新たな標準化項目を産み出す元として重要性

を増してきた WG 2 ロードマップについては,櫻井(九

大)が引き続きラポータを担当するのに加えて,新た

に近澤が WG 2 Standing Document 1 のエディタを担

当することになった.

④ その他 WG 2 標準化項目:

認証と暗号の機能を統合した認証暗号(19772)およ

びサインクリプション(29150)の規格開発を進めてい

る.前者は FDIS 段階,後者は WG 段階にある.

楕円曲線生成(15946-5)は今回の会議で FCD 段階に

進むことになった.汎用ハッシュ関数利用型メッセー

ジ認証(9797-3)は,エディタが欠席したことと一部の

アルゴリズムに対する攻撃方法が発見されたために

WD 段階のままであるが,エディタ代理に依頼して WD

の更新を行うこととした.

2.3 WG 3(セキュリティ評価技術)

① 15408-1 “Evaluation Criteria for IT Security

-- Part 1: Introduction and general model”につ

いて,3rd FCD 投票結果の報告とその際に寄せられた

コメントの審議を行った.コメントについて,すべて

処理を行い,FDIS 投票にかけられることになった.

② 15443 “A framework for IT security assurance”

について,早期改訂することが決まっているが,エデ

ィタの立候補はなかったため,再度募集することにな

った.Part の構成変更(現在,3部)について,一つ

にまとめたらどうかというコメントがスウェーデン

から出された.再度,contribution を求めることに

なった.

③ 24759 “Test requirements for cryptographic

modules”は IS が発行されたことが報告された.

④ 19790 "Security requirements for cryptographic

modules" の改訂については,近藤潤一(IPA)がコエデ

ィタを務めることになった.

⑤ 19792 "Security evaluation of biometrics "は,

FCD 投票時に出されたコメントについて審議した.日

本は条件付き反対で投票していたが,主要なコメント

について受け入れられたため,賛成に投票内容を変更

することにした.次は FDIS 投票に進む.

⑥ 29128 "Verification of Cryptographic

Protocols"について,2nd WD のコメント処理が行わ

れた.英国から出ていた暗号の parsing に関する論文

については,議論の結果,直接には関係がないが,参

考のために次回の WD に何らかの形で記載することに

なった.USより NIST での活動と関係する可能性があ

るとのコメントがあり,今後,情報交換することとな

った.3rd WD が作成されることとなった.日本から,

宮崎邦彦(日立),松尾真一郎(NTT データ),大塚玲

(産総研)がエディタを務めている.

⑦ 29147 "Responsible Vulnerability Disclosure"

について,1st WD についてコメントの審議を行った.

今回,日本と同様,脆弱性の取扱いで指導的なポジシ

ョンにある,米国と英国とフィンランドから新たに脆

弱性ハンドリングの専門家が参加しての議論となっ

た.日本の情報セキュリティ早期警戒パートナーシッ

プ(JVN)向けに作成された脆弱性情報の公表ガイド

ラインの英訳版のうち,公表情報の例示が 2nd WD で

annex として採用されることとなった.

⑧ セキュアシステムデザインについて,NP 投票のた

めの文書について議論し,NP 投票にかけることにな

った.タイトルが,"Secure System Engineering

Principles and Techniques"に変更された.

2.4 WG 4(セキュリティコントロールとサービス)

① 27031 "ICT Readiness for Business Continuity"

は,2nd WD をベースに審議を進めたが,さらに次回

の会合に向けた 3rd WD の作成を進め,各国にコメン

トを要請することとした.

② 27032 "Guidelines for cybersecurity "につい

て,サイバーセキュリティに関する定義がなされ,セ

キュリティ技術向上に係る「情報共有のフレームワー

ク」や「相互に関連するセキュリティ対策」などについ

て2nd WDとして今後議論されることとなった.なお,

本規格を IS とするのか,TR とするのかについては,

米国は判断を次会合まで保留とした.中尾康二(KDDI)

がコエディタを務めている.

③ 27033 "Network security" に ついて, Part1

"Guidelines for network security"については,全

体的なネットワークセキュリティを概観しているも

のであり,これまでの審議が進んでいることを考慮し,

FCD として進めることが合意された.また,Part2

"Guidelines for the design and implementation of

network security(3rd WD)"と Part-3 " Reference

network scenarios -- Risks, design techniques and

control issues(2nd WD)"に関しては,まだ作業文

書としての審議を継続するものとしている.なお,

Part4 "Securing communications between networks

using security gateways -- Risks, design

techniques and control issues"と Part-5 "Securing

virtual private networks -- Risks, design

techniques and control issues"については,既存の

規格 ISO/IEC 18028- Part3,Part5 が基本的にそれぞ

れ対応するものである.Part6 "IP Convergence(新

規)"と Part-7 "Wireless(新規)"については,新

規 Part として現状オープンである.

④ 27035 " Information security incident

management"について,1st WD が審議され,計画と準

備,検知と報告,評価と決断,対応,教訓,勉強のイ

ンシデントマネジメントプロセスを考えることで大

枠合意された.CD に進む.佐藤慶浩(日本 HP)がコエ

ディタを務める.

⑤ TR 29149 "Best practices on the provision of

time-stamping services (TR Type 3)"については,

WG 2 から移行された本件につき,コメント処理を行

い,2nd WD に進むこととなった.

⑥ その他 WG 4 標準化項目:

スタディピリオドで審議していた"Guidelines for

Identification, Collection and/or Acquisition and

Preservation of Digital Evidence"と"Guidelines

for Security of Outsourcing"は,NP に進んだ.

2.5 WG 5(アイデンティティ管理とプライバシー技術)

① 24745 “Biometric template protection”につい

て,3rd WD が出されたところで,欧州の数社からバ

イオ技術も進展して今や商品も発売されてきている

と,バイオ技術を取り入れる提案のコメントが出てき

た.これを取り入れる形で 4th WD が作成されること

となった.

② 24760 "A framework for identity management "

について,日本,米国,オーストラリア,カナダが担

当した ad-hoc 結果の ID 管理ライフサイクルの図に

ついて審議され,とりまとめの佐藤から改訂図を紹介

して概ね認められたが,細かな修正意見があり,メー

ル審議を通じて 6th WD に反映されることとなった.

③ 29100 “A privacy framework”については,用語

の見直しなどを行い,CDに進むことになった.

④ 29101 “A privacy reference architecture”は,

エディタの Stefan Weiss の属するコンサルタント会

社(デロイト)の人が作成した ppt ファイルが映し出

され,「これをもとにPrivacy Reference Architecture

を全面的に書き直す」と方針が宣言されたが,ppt の

コピーは配付されず,次回 WD に掲載されるのを待つ

ことになった.

⑤ 29115 "Authentication assurance"については,

Liberty alliance や ITU-T SG17 による関連文書の存

在を確認するとともに,メール審議を通じて 4th WD

が作成されることとなった.佐藤がコエディタを務め

ている.

⑥ スタディピリオド" Requirements for Relative

Anonymity with Identity Escrow "が NP に進んだ.

エディタは提案者でもある佐古和恵(NEC)が務める.

3. その他(今後の進め方に関する特記事項)

① WG 1 で審議している ISMS の中心となる 27001 お

よび 27002 の 5 年見直しに伴い,日本はそのままの継

続でよいとしたが,改訂を支持する国が圧倒的に多く,

27001,27002 を改訂せざる得ない状況となった.ドイ

ツなどからコントロールの追加など構成変更にかか

わるものが結構コメントされており,改訂が始まると

27003,27004などにも多くの改訂工数が発生すること

が予想される.国内委員会で,今後,運営をどう効率

化していくかを検討する必要が生じる可能性がある.

② WG 2 では,日本提案に基づく「軽量暗号」(盛合

がエディタを担当)および「グループ鍵管理」の標準

化が開始される見込みである.また,日本から WG 5

に提案した新作業項目「相対的匿名性の要求条件」(佐

古がエディタを担当)に対応して WG2 でもグループ署

名を含む「匿名性支援メカニズム」の検討に着手する

ことになった.新しい暗号メカニズムの標準化に積極

的に貢献していく.

③ WG 3,暗号モジュールのセキュリティ要件(19790)

の改訂について,エディタについては,米国,日本,

ドイツ,フランスの 4人が立候補していたが,ドイツ

が降りたため,米国がエディタ,フランスと日本(近

藤)がコエディタになることが確定した.日本におけ

る暗号装置の調達基準に影響を与え得るもので重要

であり,引き続き積極的に貢献していく.

④ WG 4でプロジェクトが始まったばかりの27036「セ

キュリティのアウトソーシングのためのガイドライ

ン」は,アウトソーシングの範囲を,ICT に限定して

おらず,人的リソース,設備管理などのアウトソーシ

ングも対象範囲としている.日本にも大きく関係し得

るスコープであり,今後,注意していく.

⑤ WG 5,プライバシー関連プロジェクトの審議にお

いて,日本に名指しでさらなる協力を求められるなど,

期待されている.国内委員会では,ID 管理などと比

べてプライバシー関連は少し手薄な感があり,国内体

制について関係者と議論を続けていく.

■ SC 28 国内委員会(オフィス機器/Office

Equipment)

委員長 小澁 弘明

1. 概要

SC 28 の担当範囲は下記に示される.

Standardization of basic characteristics, test

methods and other related items, excluding such

interfaces as user system interfaces,

communication interfaces and protocols, of office

equipment and products such as: Printers, Copying

Equipments, Digital scanners. Facsimile equipment

and systems composed of combinations of office

equipment.

国際 SC 28 は,2007 年にオーストラリアとインド

が P メンバ登録したが 2009 年にカザフスタンが O メ

ンバに変更したため 13 カ国の Pメンバと, 2008 年ベ

ルギーとサウジアラビア,2009 年マレーシアが参加

した 18 カ国の O メンバから構成されている.議長お

よび幹事国業務は引き続き日本が引き受けている.現

在の SC 28 は 4 つの WG から構成されている.中長期

戦略を議論する Advisory Working Group(AWG),

Consumables 消耗品・イールド:WG 2,機器の生産性:

WG 3, Image Quality Assessment 画質測定:WG 4 が

それぞれのテーマを担当している.

一方国内SC 28委員会は従来通り社団法人ビジネス

機械・情報システム産業協会(JBMIA)において運営さ

れ,JIS 化も完了したリサイクル規格担当 WG 5 を廃

止し, 新たに NP が成立したカートリッジ特性を担当

する 29142WG を新規に編成した 6 WG 体制で審議を行

っている.

本年度に発行された国際標準は 3件である.

本年度の国際会議としては,第 19 回総会(6 月ドイ

ツ・ベブリンゲン)及び,AWG 会議 3 回(6 月ドイツ・

ベブリンゲン,1 月韓国・ソウル,1 月米国・サンノ

ゼ),WG 2 会議 2 回(6 月ドイツ・ベブリンゲン,10

月米国・レキシントン),WG 3 会議 1回(6 月ドイツ・

ベブリンゲン),WG 4 会議 2 回(6 月ドイツ・ベブリ

ンゲン 1月・米国・サンノゼ)が開催され,参加した.

1.1 議長,幹事国業務の引き受け

2002 年より幹事国業務を,また 2003 年より国際議

長を日本が引き受けている.幹事国業務は SC 28 国内

委員会参加の主要企業の持ち回りとすることが決め

られ,2006 年 10 月にこれまでのキヤノン(株)の出井

克人から(株)リコーの熊倉和正に正式に交代した.

2009 年 9 月で任期満了となるため,次期派遣担当企

業富士ゼロックス(株)から候補を任命する.国際議長

はコンサルタントの斎藤輝であり,再任任期の 3年目

になるが,SC 28 日本委員会から正式に Endorse を行

い 2009 年 6 月韓国・プサン総会で 3期目就任を SC 28

に求め承認された.議長のリーダシップと公正な態度

は,参加各国から高く評価され,SC 28 国際標準化活

動は順調に推移している.

1.2 第 19 回総会 SC 28 ドイツ総会

第 19 回総会が,ドイツの招待によりシュツットガ

ルト郊外ベブリンゲンにある HP 社欧州マーケティン

グ本部会議場にて開催され,9 カ国 1 機関 45 名が参

加した(豪 1 名,墺 1 名,中 2 名,独 6 名,韓 3 名,

蘭 1 名,露 1 名,米 9 名, 日 15 名,国際議長及び国

際幹事 2名, オブザーバ 4名).

今回の総会では,個別案件では特に大きく問題とな

る課題も無く,おおむね順調に議事が進行した.

日本が主導的に活動している AWG(Advisory

Working Group.コンビーナ Dr. C.-W. Kim, Inha Univ,

韓)では,正式に ad-hoc group として,AWG/PWG5(仲

谷主査),AWG/PWG6(臼井主査)の設置が承認された

(Resolution 17,20).

また,注目される新たな米提案のトナーカートリッ

ジ特性規格 NP 29142(5 parts)の 5 部のうち 4 部の

Assistant-editorsに日本から参加することになった

(Resolution 09).

今回の総会では,全体会議と AWG,WG 2(消耗品イ

ールド),WG 3(生産性),WG 4(画質評価)及び初め

てのカートリッジ特性 Editors meeting が行われた.

今回の総会に初めてOメンバのロシアが参加し,SC 28

の活動の重要性を認識.帰国後 Pメンバになるべく推

進して,いずれは総会開催の引き受けを実現するべく

運動したいとの意向が表明された.

次回の第 20回総会は 2009 年 6月 10日~6月 12日

の間,プサン(韓国)で開催予定である.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

本年度に発行された国際標準は次の 3件である.

・ ISO/IEC 10779: Information technology --

Office equipment accessibility guidelines

for elderly persons and persons with

disabilities(情報技術-高齢者及び障害者の

ための事務機器の使いやすさの指針)

・ ISO/IEC 24734: Method for Measuring Digital

Printer Productivity(ディジタル印刷におけ

る生産性測定方法(制定))

・ ISO/IEC 24735: Method for Measuring Digital

Copying Productivity(ディジタル複写におけ

る生産性測定方法(制定))

また,NP については,日本提案の TR Type-3 Test

Method of Colour Gamut Mapping Algorithm for

Office Colour Equipment 及 び Digital Copying

Productivity of a Single,One Sided Original が,

承認成立した.

2.1 AWG(コンビーナ: C. W. Kim,韓)

AWG の使命は現在と将来のマーケットニーズを分

析・予測すること,SC 28 の作業を分類し短期・中期

ロードマップの策定と見直しを行うこと,SC 28 の作

業範囲を見直し修正を提案することである.

今回の総会では,

(1) AWGの下に OWGとして PWG5(カラーマネジメント)

及び PWG6(オフィス機器アプリケションソフトウェ

ア)を配することが決定された(Resolution 17/20).

(2) これに関連し,新しい WG 5(Office Colour)の設

立を日本から提案する運びとなった.

(3) 懸案のロードマップ策定については,2009 年 1

月のサンノゼ会議でそのベースとなるユーザニーズ

/技術ニーズが合意され,これをテンプレートとして,

各 WGと NBの協力を得て SC 28 の Roadmap を作成する

ことが合意された.

2.2 WG 2(Consumable Yield/消耗品イールド,コン

ビーナ: P. Jeran,米)

複写機,プリンタ,ファックス,複合機の消耗品(ト

ナー/インク)の寿命(使用可能枚数)決定方法の審

議を行っている.

カラーフォトイールド測定方法(WD29102)と,カ

ラーフォトイールド・テストチャート(WD29103)に

ついて 2回の WG 2 会議(6 月べブリンゲン,10 月レキ

シントン)で検討された.

2.3 WG 3(Productivity 生産性,コンビーナ: Y. Ng,

米)

WD 24734:ディジタル印刷における生産性測定方法

WD 24735:ディジタル複写における生産性測定方法

(制定)

について審議している.WD 24735 のプロジェクトエ

ディタは日本が担当.

5年間にわたり日米が主導して進めてきた生産性規

格審議では,その後のお互いの努力によりディジタル

印刷における生産性測定方法(WD24734)およびディ

ジタル複写における生産性測定方法(WD24735)はFDIS

に移行し(Resolution 02),2009 年 1月にともに承認

されるに至った.

新規 NP“Digital Copying Productivity of a Single,

One Sided Original “ (単票片面原稿ディジタル複

写における生産性測定方法)も 2009 年 2 月に承認成

立した.

2.4 WG 4(Image Quality Working Group/画像品質,

コンビーナ: E. Zeise,米)

昨年度日本から提案の NP 投票案件(画質属性測定

規格 ISO/IEC 13660 改訂/NP 24790: ハードコピー出

力の画質属性測定―2値単色のテキストおよびグラフ

ィック画像)が成立したことで WG 4 が設立され,プロ

ジェクトエディタを日本が担当している.

第 19 回 Plenary 会議において ISO/IEC 24790WD を

FirstCD とすることが承認された,

2.5 SIG-CC(Colour Comparison/色彩比較,リーダー:

T. Schmeltzer,独)

2006年Lexington(Kentucky州)で開かれたPlenary

で SIG-CC(Colour Comparison)の設立が決議されたが,

実質的活動がなかっため廃止し,その活動はAWG/PWG5

に吸収させることとした(Resolution 16).

前述のとおり AWG のもとで PWG5 として日本から暫

定リーダを出し,具体的な活動計画を作成することを

合意した.

さらに,上記活動の最初の活動となる NP を 2008 年

11月末に日本から提案し2009年3月に承認成立した.

2.6 カートリッジ特性関連

2007 年末に米国提案の NP が SC 28 で採択され,

29142PJ:Cartiridge Characterization(カートリッ

ジ特性)として新プロジェクトが発足した.この対応

を専門に行うグループとして新規に 29142WG(カート

リッジ特性)発足が 2001 年 1 月の SC 28 国内委員会

で承認された.

2009 年 2月末現在で 56名の委員がメンバ登録され

ている非常に規模の大きなグループであり,全体会議

での詳細議論は非常に難しい面もある.構成は 29142

国際プロジェクトの構造に対応した,Part1:一般:

用語,記号(General :Terms,Symbols and Notaions),

Part2 :標示(Labeling),Part3:環境(Environment),

Part4:インクカートリッジ特性(Ink cartridge

attributes),Part5:トナーカートリッジ特性(Toner

cartridge attributes)の 5つのグループで構成され

ている.

3. 今後の主要課題

① カートリッジ規格の国内審議体制

② 新テ-マの発掘と NP 提案の促進(継続)

③ 制定された国際規格のJBMS/JIS化の推進(支援)

④ Secretariat (Chairman & Secretary)業務への

支援

⑤ SC 28 の改革の促進

⑥ 新 WG/PWG 体制の確立

■ SC 29 専門委員会(音声,画像,マルチメディア,ハ

イパーメディア情報符号化/Coding of Audio,

Picture, Multimedia and Hypermedia Information)

委員長 守谷 健弘(日本電信電話(株))

1. 概要

SC 29 専門委員会の中には,WG 1(JPEG,JBIG),

WG 11(MPEG)の二つの Working Group があり,主に

マルチメディア符号化技術の規格化を担当している.

2008 年度の SC 29 総会は,ハノーバー(独)で,7月

28 日に行われ,日本からは,浅井議長,小倉セクレ

タリの他,JNB として守谷委員長が出席した.総会で

は,標準化の新規プロジェクト,変更,エディタ,ビ

ジネスプランが承認された.また JTC 1 での ISO DIS

投票を5ヶ月から4ヶ月に短縮する要求を継続してい

くこと,技術情報交換のため WG 1 と WG 11 の同時開

催を奨励することなどが決議された.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 WG 1(静止画像符号化)

(1) 開催会議および日本からの出席者数

会 期 場 所 出席者数

2008-03-31/04/04 サンフランシスコ(米) 4 名

2008-07-07/11 ポアティエ(仏) 5 名

2008-10-13/17 釜山(韓) 7 名

2009-01-19/23 サンフランシスコ(米) 5 名

(2) 活動内容

ロービットレートからロスレスまでの広い範囲で

の高画質プログレッシブ再生,任意エリアの優先的伝

送やエラー対策などの豊富な機能を有する「JPEG

2000(ISO/IEC 15444 シリーズ)」では, JPEG 2000

符号化データのより広範な応用を目的とするパート

14:XML structural representation(2007 年度に日

本から提案)を除く各パートの標準化を終えており,

現在は D-Cinema への対応や各種応用パートの実用化

を支援するための AMD の制定に注力している.画像検

索を主題とする課題「JPSearch(ISO/IEC 24800 シリ

ーズ)」については,MPEG-7 と連携しつつ審議を進め

ており,パート 1 は既に TR となり,パート 3,4 につ

いても CD 投票を終えている.また,マイクロソフト

が推進する HD PHOTO と呼ばれる静止画符号化方式に

基づく新標準(ISO/IEC 29199 シリーズ)はその名称

を「JPEG XR」と変え,符号化仕様を規定するパート 2

の標準化をほぼ終えた.引き続き Motion JPEG_XR な

どの継続 part の標準化に進んでいる.また新たなプ

ロジェクトとして Advanced image coding and

evaluation methodologies(ISO/IEC 29170 シリーズ)

が発足し画質評価を含む符号化標準の策定を予定し

ている.

(3) 実用化状況

JPEG 2000 はパスポートや運転免許証,デジタルシ

ネマ,アーカイブ,医用画像などの分野で活用されて

いるがインターネット,デジタルカメラの分野では相

変わらず JPEG が優位である.JPEG XR はデジタルカ

メラ分野への適用を標準化のドライビングフォース

と考えており,カメラメーカを対象としたワークショ

ップを開催するなどの普及活動を行っている.

(4) 今後の課題

JPEG 2000 のパート 1の標準化が完了して 8年が経

過した.上記のように新たなアプリケーションではそ

の導入が進んでいるが既存のアプリケーションで

JPEG を置き換えるのは困難な状況にある.今後も,

JPEG2000/JPEG XR などの新標準がより使用されるよ

う,必要な追加標準化内容の検討や WG 1 の掲げるロ

イヤリティー・フィー・フリーのより確実な実現に向

けての仕様策定に取り組んでいく予定である.

2.2 WG 11/Video(MPEG ビデオ符号化)

(1) 開催会議および日本からの出席者数

会 期 場 所 出席者数

2008-04-28/05-02 アルシャン(仏) 24 名

2008-07-21/25 ハノーバー(独) 23 名

2008-10-13/17 釜山(韓) 24 名

2009-02-02/06 ローザンヌ(スイス)25 名

(2) 活動内容

以下の案件に投票を行った.

ISO/IEC 13818-1:2007/FDAM 3

ISO/IEC 13818-1:2007/PDAM 4

ISO/IEC 13818-2:2000/FPDAM 3, FDAM 3

ISO/IEC 13818-4:2004/FPDAM 3, FDAM 3

ISO/IEC 14496-2:2004/FPDAM 5, FDAM 5

ISO/IEC 14496-4:2004/FDAM 30

ISO/IEC 14496-4:2004/FPDAM 31, FDAM 31

ISO/IEC 14496-4:2004/FPDAM 32, FDAM 32

ISO/IEC 14496-4:2004/FPDAM 33

ISO/IEC 14496-4:2004/FPDAM 34

ISO/IEC 14496-4:2004/FPDAM 35, FDAM 35

ISO/IEC 14496-4:2004/PDAM 37

ISO/IEC 14496-4:2004/PDAM 38

ISO/IEC 14496-5:2001/FPDAM 14, FDAM 14

ISO/IEC 14496-5:2001/PDAM 15

ISO/IEC 14496-5:2001/FDAM 18

ISO/IEC 14496-5:2001/FPDAM 19, FDAM 19

ISO/IEC 14496-5:2001/FPDAM 21, FDAM 21

ISO/IEC 14496-5:2001/FPDAM 22

ISO/IEC 14496-5:2001/PDAM 24

ISO/IEC 14496-5:2001/PDAM 25

ISO/IEC 14496-10:2008/FDAM 1

ISO/IEC 14496-11:2005/FPDAM 6

ISO/IEC 14496-12/PDAM 1 & 15444-12/PDAM 1,FPDAM 1

ISO/IEC 14496-14:2003/PDAM 1

ISO/IEC 14496-15:2004/PDAM 3

ISO/IEC 14496-16:2006/FDAM 2

ISO/IEC 14496-20:2008/PDAM 2

ISO/IEC 14496-22 [2nd Edition]

ISO/IEC FCD, FDIS 14496-25

ISO/IEC FCD 23000-11

ISO/IEC FCD 23001-4

ISO/IEC FCD 23002-4

システム関連ではまず,MPEG-2 システムに関し,

SVC (Scalable Video Coding), MVC (Multiview Video

Coding)を MPEG-2 Systemsで伝送するための規格化が

進められた.SVC transportに関しては13818-1/Amd.3

として規格化を収束した. MVC transport は

13818-1/FPDAM 4 を発行し,継続審議を行っている.

MPEG-4 システムに関し,MPEG-JPEG の共通ファイル

フォーマットを規定するパート 12 において,ヒント

トラック,メタデータ伝送,サンプルグループなどの,

明確化や,ブランドの明確化による互換性確保が図ら

れた.AVC ファイルフォーマットを規定するパート 15

において AVC 拡張仕様である階層符号化したストリ

ームを格納するための追加規定である FPDAM 2,およ

びMultiviewに対応したMVCを格納するための追加規

定である PDAM 3 が審議された.アニメーションにお

ける 3 次元メッシュ構造の表現方法および影の表

現・複数解像度での表示を行うための拡張を規定する

パート 16は FDAM 2の審議を行い,規格化が収束した.

携帯端末向けの簡易版シーン記述フォーマット

(LASeR),およびビデオ・オーディオなどのストリー

ムを多重化するフォーマットを規定するパート 20 で

は,2nd Edition が発行され,審議投票を行った.3

次元グラフィクス圧縮モデルを規定するパート 25 に

関しては FDIS 審議投票を行い,規格化が収束した.

ビデオ関連では,まず MPEG-2 パート 2 において

1080@60p を追加する FDAM 3 の審議投票を行い,規格

化が収束した.MPEG-4 パート 2 関連において,シン

プルスタジオプロファイルのレベル拡張を行うFDAM5

の審議投票を行い,規格化が収束した.一方,MPEG-4

パート 10 の AVC 関連では, AVC を複数ビュー映像符

号化へ拡張するFDAM 1についても審議投票を行った.

MPEG-4適合性試験を規定するパート4に関しては,

AVC の適合性検査に業務用プロファイル用の適合性

検査を追加する FDAM 30,AVC のスケーラブル拡張 SVC

のビットストリーム適合性試験 FPDAM 31/FDAM 31,

アニメーションメッシュ構造表現や複数解像度表示

に関する FPDAM 32/FDAM 32 および FPDAM 33,シンプ

ルスタジオプロファイルのレベル5と6の追加規定に

対応した FPDAM 35/FDAM 35, ファイルフォーマット

に新規コンフォーマンスファイルを追加する PDAM

37,MVC の適応性試験を追加する PDAM 38 に関して

審議投票を行った.

MPEG-4 参照ソフトウェアに関するパート 5 では,

AVC における業務用プロファイル拡張に対応する

FDAM 18,AVC におけるスケーラブル符号化拡張に対

応する PDAM 19,MVC 拡張に対応する PDAM 15,アニ

メーションメッシュ構造表現に関するPDAM 21の審議

投票を行った.

MPEG-B 関係では,再構成可能なビデオ符号化フレ

ームワークにおけるコーデックの記述方法について

規定するパート 4の FCD について審議投票を行った.

MPEG-C ビデオ関連においては,再構成可能なビデ

オ符号化フレームワークとして既存の MPEG ビデオ標

準のビデオ符号化ツールを規定するパート4のFCDを

審議するとともに投票を行った.

新しい取組みとしては,自由視点からの映像視聴を

可能とする Free-viewpoint TV(FTV),および次世代

コーデック HVC (High Performance Video Coding) の

2 つがある.FTV の検討では,複数カメラから取得し

た多視点映像をベースとして,奥行きデータを有効に

活用することで,圧縮率の向上だけでなく視点切出し

の効率的なフレームワークまで含めて規定しようと

いう議論がなされ,日本からの提案を中心として,提

案募集に向けた準備が行われている.HVC の検討では,

更なる符号化効率改善を目標にし,検討が進められて

いる.4:4:4 や 4K など高精細画像を想定した実験な

どが進められている.ITU-T SG 16 WP3 Q.3 (VCEG) と

の協業も議論されているが,継続審議中.

(3) 実用化状況

MPEG-2 ビジュアルおよびシステムファイルフォー

マットは,BS/CS/地上デジタルをはじめとするデジタ

ル放送や DVD など各種情報家電で利用されている.

MPEG-4 ビジュアルは,インターネットストリーミン

グや携帯電話による双方向通信サービスなどにおけ

る映像圧縮方式として利用されている.また,最新ビ

ジュアル規格であるパート 10(AVC)については,移動

体/携帯向けのデジタル放送(ワンセグ放送)用の映

像圧縮方式として利用されている.また,次世代 DVD

のビジュアル規格としても MPEG-2 などとならんで

AVC が搭載されるほか,最近では家庭用の民生用ハイ

ビジョンビデオカメラや,ゲーム機などにも利用され

てきている.さらに,AVCはその高圧縮性が評価され,

ブロードバンドネットワークを利用したビデオオン

デマンドサービスやライブ中継サービスをはじめ,地

上デジタル放送の IP 再送信用圧縮方式としても利用

される予定である.AVC 規格は放送・家電・通信の分

野での映像サービス/システムを牽引する今後の主

力規格となっており,AVC の持つ潜在的な符号化性能

を十分引き出せるような LSI,コーデック装置,ソフ

トウェアの開発が各社で進んでおり,今後さらに大き

な市場を創出していくことが期待される.

(4) 今後の課題

システムおよびビジュアルにおいては今後も多く

の拡張/修正の審議が想定される.次世代符号化 HVC

の審議,標準化が今年度から活発化することが,予想

される.映像の高精細・高フレームレート化に伴って,

HDTV を超える高精細映像向けにも次世代コーデック

が議論されており,本委員会としても,産業界の動き

を把握して想定アプリケーションや標準化時期を見

据えてフォローしていく.

マルチビュービデオ符号化 MVC については,2008

年度中に最終草案が発行された.しかし,2視点のみ

に限定するプロファイルの審議も開始されており,本

委員会としても,産業界の動きを把握してフォローし

ていく.

また,自由視点からの映像切出しを可能とする FTV

も提案募集へ向けた技術検討が始まっており,日本と

してイニシアチブを取るべく本委員会としてもサポ

ートを継続する.

RVC についても 2008 年度には FCD が発行され 2009

年度中に最終仕様策定の予定になっており,文書内容

に関してのレビューが重要な課題となる.

2.3 WG 11/Audio(MPEG Audio,オーディオ符号化)

(1) 開催会議および日本からの出席者数

会 期 場 所 出席者数

2008-04-28/05-02 アルシャン(仏) 8 名

2008-07-21/25 ハノーバー(独) 9 名

2008-10-13/17 釜山(韓) 8 名

2009-02-02/06 ローザンヌ(スイス) 6 名

(2) 活動内容

下記の投票を行った.

ISO/IEC 14496-3:2005/PDAM 10

ISO/IEC 14496-3:2005/FDAM 8,FDAM 9

ISO/IEC 14496-3:200X/FPDAM 1

ISO/IEC 14496-4:2004/PDAM 36

ISO/IEC 14496-4:2004/FDAM 20, FDAM 29

ISO/IEC 14496-5:2001/PDAM 24

ISO/IEC 14496-5:2001/FPDAM 24

ISO/IEC 14496-5:2001/FDAM 16, FDAM 20

ISO/IEC 14496-14:2003/PDAM 1

ISO/IEC CD 23000-6

ISO/IEC 23003-1/FDAM 1,FDAM 2

ISO/IEC CD 23003-2

ISO/IEC FCD 23003-2

他 DCOR 投票 14 件

これらの投票のうち最終規格案が発行されたもの

は,原オーディオファイル情報用の MP4FF ボックス,

低遅延 AAC,階層無歪符号化の適合試験,MPEG-4 フレ

ームワーク向けMPEG-1とMPEG-2オーディオの参照ソ

フトウェア,立体音響符号化の適合試験と参照ソフト

ウェア,音楽記号表記の適合試験と参照ソフトウェア

である.なお,立体音響向け CH マッピングの例が

MPEG-4 Audio 規格に追加されている.また,空間音

響オブジェクト符号化は方式改善のため FCD 投票が

再度実施されることとなった.さらに,音声・音響統

一符号化の方式募集が実施され,規格化が本格化した.

無歪音響符号化,立体音響符号化,空間音響オブジェ

クト符号化の策定には日本の機関が貢献をしている.

(3) 実用化状況

日本国内向け衛星および地上波デジタル放送のオ

ーディオ伝送方式には MPEG-2/AAC が,ワンセグ放送,

衛星デジタル音声放送では,MPEG-2/AAC+SBR が採用

されサービスが行われている.またインターネットや

無線通信の配信,携帯音楽プレーヤにも,MPEG-4 AAC

や HE-AAC が採用され始めている.

(4) 今後の課題

空間音響オブジェクト符号化,音声・音響統一符号

化などのオーディオの拡張規格や関連規格,修正に関

する提案や投票を行い,標準を策定する予定である.

2.4 WG11/Systems

(1) 開催会議および日本からの出席者数

会 期 場 所 出席者数

2008-04-28/05-02 アルシャン(仏) 7 名

2008-07-21/25 ハノーバー(独) 9 名

2008-10-13/17 釜山(韓) 5 名

2009-02-02/06 ローザンヌ(スイス) 7 名

(2) 活動内容

WG 11の組織変更に伴いSystems小委員会を設立し,

これまであった MPEG-7 小委員会,OICI 小委員会を

Systems 小委員会下の SG に再編した.従来 MPEG-7 小

委員会,OICI 小委員会で担当していたプロジェクト

とその延長線にあるプロジェクトは今後も MPEG-7 SG,

OICI SG で担当する.

下記の投票を行った.

・MPEG-4(Coding of audio-visual objects)

ISO/IEC 14496-4:2004/FDAM 32

ISO/IEC 14496-5:2001/FDAM 21

ISO/IEC 14496-16:2006/FDAM 2

ISO/IEC FDIS 14496-25 FDIS

・MPEG-7(Multimedia content description interface)

ISO/IEC 15938-3:2002/PDAM 3,FPDAM 3,FDAM 3*

ISO/IEC TR 15938-8:2002/PDAM 4*

ISO/IEC FCD/FDIS 15938-12,DCOR 1*

・MPEG-21(Multimedia framework)

ISO/IEC 21000-5:2004/FDAM 3**

ISO/IEC 21000-7:2007/DCOR 1,FDAM 1*

ISO/IEC 21000-8:2008/FPDAM 1**

ISO/IEC 21000-9:2005/FDAM 1

ISO/IEC 21000-15:2006/FDAM1**

ISO/IEC CD 21000-19 **

・MPEG-A(Application Format)

ISO/IEC 23000-3:2007/FPDAM 1,FDAM 1*

ISO/IEC 23000-4:2009/FPDAM 1,FDAM 1*,

ISO/IEC FDIS 23000-4 2nd Ed, FDAM 2

ISO/IEC FCD/FDIS 23000-6, PDAM 1

ISO/IEC 23000-7:2008/FPDAM 1**

ISO/IEC FCD,FDIS 23000-8 *

ISO/IEC 23000-9:2008/PDAM 1

ISO/IEC FCD 23000-10,PDAM 1*

・MPEG-E(Multimedia Middleware)

ISO/IEC FCD,FDIS 23004-8

(備考: * MPEG-7SG 担当, **OICI SG 担当)

MPEG-4(Coding of audio-visual objects)は様々なソ

ース符号化を規定するが,3D グラフィックスの符号

化に関する標準は MPEG-V 等のシステム標準との関連

性が高いことから Systems 小委員会で担当している.

MPEG-7 (Multimedia content description interface)

は,映像・音声をはじめとするマルチメディアコンテ

ンツの内容を記述するための枠組みを規定した規格

である.現在は 12 のパートから構成され,記述デー

タの語彙やその構文法を規定し,ディジタルライブラ

リやマルチメディアコンテンツ検索・編集などのアプ

リケーションの開発,普及に寄与することを目的とす

る.2008 年度は,パート 12 の規格化を完了,また,

パート 3/Amd.3 および 4,パート 8/Amd.4 の規格化を

進めた.パート 12(クエリフォーマット)は,マル

チメディアコンテンツ検索時の入/出力フォーマッ

トやクエリ(検索条件)管理に係る各種ツールの規定

であり,4 月に FDIS を発行,連続値による条件判定

記述や独自に定義した演算方法を利用するための仕

組み,画像や音楽の一部分を用いたクエリ表現などが

規定された.12 月に IS を発行済である.パート 3(ビ

ジュアル)/Amd.3(イメージ・シグネチャ・ツール)

は,改変処理が加えられた静止画像を信号特徴から識

別・同定する署名(シグネチャ)ツールの規定であり,

4月発行のFPDAMで輝度変更やスケーリングなど基本

的改変に対応した方式を採用,7月には幾何変換を含

む複雑な改変処理に対応した拡張方式を採用し FDAM

を発行した.2009 年 4 月に AMD を発行予定である.

Amd.4(ビデオ・シグネチャ・ツール)は,同様に動

画像を信号特徴から識別・同定する署名ツールであり,

非可逆符号化やフレームレート変更,アナログダビン

グ等による動画像改変に対応する.7月に CfP が発行

(9月に更新)され,2009 年 1 月に提案技術の評価を

実施,実験条件の修正などを行い CE による検討が継

続されている.また,パート 8/Amd.4 は MPEG オーデ

ィオ等の圧縮データから MPEG-7 規定の音響特徴を抽

出する方法を記載した TR であり,2009 年 1 月に DAM

を発行した.

MPEG-21(ISO/IEC 21000)は,デジタルアイテムの

管理・利用に係る各種の記述ツールを規定する.パー

ト 5/FDAM 3 ではオープンアクセスを規定する.パー

ト 7(デジタルアイテム適応)は,端末能力や利用者

の嗜好により再生コンテンツを適応的に変換するた

めの記述ツールの規格であり,MPEG-7 規格を一部利

用する.パート 7:2007/Amd.1 では,既に規定されて

いた端末能力記述を,MPEG-7 パート 12 で新たに規定

された能力記述ツールを参照した記述へと拡張した.

12 月に AMD を発行済である.パート 8(参照ソフトウ

ェア)は様々な関連するパートの規定が混在しており

FDAM 1 でその整理が進んだ.パート 9/Amd.1 ではフ

ァイルフォーマットに MIME Type が追加された.パー

ト 15/Amd.1 ではセキュリティイベントが追加された.

パート 19 は Media Value Chain Ontology を規定す

る.

MPEG-A(Application Format)は,MPEG 規格の各

種ツールを組合せた MPEG 標準のアプリケーションフ

ォーマットを規定する.パート 3(デジタルフォトラ

イブラリ),パート 4(音楽スライドショー),パート

6(業務用保管),パート 7(オープンアクセス),パ

ート 8(携帯ビデオプレーヤ),パート 9(DMB),パー

ト 10(ビデオ監視アプリケーション)などがあり,

多くが FDIS から IS 段階に進んだ.

MPEG-E(Multimedia Middleware)は 23004-8 の FDIS

投票を終えすべての投票が終了した.

中国などの提案により JTC 1 で設立された DCMP

(Digital Content Management and Protection) Study

Group は MPEG-21 との関連から OICI SG で動向を注視

することとした.2009 年 3 月時点で,参加は 8 カ国

(中国,日本,イタリア,オランダ,スペイン,シン

ガポール,US,UK),2団体(SC 29,GS1)である.

(3) 実用化状況

MPEG-7 は MPEG-21 や MPEG-A,また MPEG-4 規格など

で参照されている.その他,WG 1(JPEG)の検索技術

標準化プロジェクト JPSearch に MPEG-A パート 3(デ

ジタルフォトライブラリ)採用の MPEG-7 メタデータ

およびMPEG-7パート12のクエリフォーマットが採用

されている.また,欧州 DVB( Digital Video

Broadcasting)の要請を受け MPEG-7 のスキーマ文書

が ITTF ホームページで公開され,実用に供されてい

る.さらに,MPEG-7 パート 1 で規定の XML 文書のバ

イナリ圧縮技術 BiM(現在は MPEG-B パート 1)は,

TV-Anytime Forum(ETSI TS 102 822),ARIB(ARIB-STD

B38),DVB(ETSI TS 102 323(DVB-S/-T/-C);ETSI TS

102 034/TS 102 539(IPTV);ETSI TS 102 471(DVB-H))

の各種規格で採用され,イタリアの Mobile TV,日本

の IPTV で実用化が進められている.また,MPEG-7 メ

タデータを活用した国内の事例には,NHK が提供する

メタデータ付与技術研究のための統合フレームワー

ク MPF(メタデータ制作フレームワーク)や,奈良先

端科学技術大学院大学が行っている MPEG-7 メタデー

タ付きの授業映像の Web 公開などがある.

MPEG-21 はフレームワーク標準であり,MPEG-A,

MPEG-E などで参照され,MPEG-V,MPEG-M の標準化に

おいても MPEG-21 が利用されると予想される.MPEG-A

では多種の応用向けフォーマットが規定され,一部実

用化に結びついている.

(4) 今後の課題

MPEG-7 では,パート 3/Amd.3 および 4,ならびにパ

ート 6,7,8の AMD の審議を進める.パート 3/Amd.3

および 4は,静止画像や動画像を映像自身の信号特徴

に基づいて識別・同定する署名ツール規定であり,改

変処理に強く,特別なデータを必要としないという特

徴を持つ.今後規格の効果的な活用のための実用性の

高いツールに注力する.

MPEG-21,MPEG-A(Application format)はほぼ完了

しているが,いくつかのパートの AMD や第 2版などの

標準化作業が続く見込みである.

MPEG-V(Media context and control)は CD 段階,

MPEG-M(MPEG extensible middleware (MXM))は NP 投

票中(SC 29 N 10206)であり,来年度標準化活動が本

格化すると考えられる.MPEG-M では API の標準化と

並行してOpen Source手法でその実行環境を開発する

ことが計画されている.API 標準化とともに Open

Source ソフトウェア開発の成否が注目される.

JTC 1/DCMP Study Group は MPEG の多くのパートに

関係し,その動向を注視している.

■ SC 31 専門委員会(自動認識およびデータ取得技

術/Automatic Identification and Data Capture

Techniques)

委員長 柴田 彰((株)デンソーウェーブ)

1. 概要

SC 31 は自動認識及びデータ取得技術を標準化の対

象としている.具体的には,1 次元シンボル,2 次元

シンボル,RFID 及びその関連機器の標準化を分担し

ている.SC 31 の議長及び事務局は米国が担当し,P

メンバ 33 カ国,O メンバ 7 カ国で構成されている.

SC 31 は下部組織として,WG 1~WG 6 の 6 つのワーキ

ンググループがあり,WG 1(データキャリア)は 1次

元シンボル及び 2 次元シンボル規格を担当している.

WG 2(データストラクチャ)はデータキャリア(1次

元シンボル,2次元シンボル,RFID)へのデータの格

納構造及び格納方法に関する規格,WG 3(コンフォー

マンス)は 1次元シンボル及び 2次元シンボルの印刷

品質及び機器の試験方法を担当している.WG 4は RFID

を担当し,4つの SG(SG 1,SG 3,SG 5,SG 6)と電

波法に関連した規定類を分担するラポータグループ

がある.WG 5(Real Time Locating Systems (RTLS))

は RFID の応用である,物の位置情報を得るためのリ

アルタイムロケーティングシステムを担当している.

WG 6 は,2008 年に新設された WG で,「Mobile item

identification & management」という名称で,モバ

イル端末(携帯電話等)に AIDC ( Automatic

Identification and Data Capture)メディア読取装

置を組み込み,AIDCメディアからデータを読み取り,

関連サイトからサービスや情報を受け取る仕組みに

関する規格を開発中である.

2008 年の SC 31 総会はトロント(加)で 6 月 6 日

に開催され,参加国は 17 カ国,関連機関は 3 機関で

事務局を含めると 47 名が参加し,日本からは 5 名が

参加した.会期が 1日に短縮されてから 2回目の総会

であったため,短い時間の中で,各 WG の報告,各国

の活動状況報告,ビジネスプラン,リエゾン報告が行

われ,Resolution をまとめて終わるといった,スピ

ーディーな会議進行であった.

総会において,日本から吉岡稔弘(AI 総研)が継

続して次の 3 年間も WG 2 コンビーナを務めることが

承認された.また,日本提案の 29162(AIDC メディア

へのデータ構造規格適用ガイドライン)プロジェクト

エディタとして,日米欧の 3 名(若泉和彦(日本情報

処理開発協会),C. Harmon,H. Oehlmann)が承認さ

れた.

日本提案は,WG 3 で審議されていた 1 件が成立発

行した.それ以外に以下の 3件が審議中である.

・ RFID データマネジメント(24791-2)WD

・ 書換え可能な目視媒体(29133)CD

・ AIDC メディアへのデータ構造規格適用ガイドラ

イン(29162)WD

2008 年はワーキンググループ等も含めて SC 31 全

体では 24 回の国際会議(Face to face)が開催され,

日本からはそれらの会議に延べ 86 名を派遣した.

日本での国際会議は 2008 年 5 月に横浜で,WG 1 と

WG 3 の会議を開催した.その他に多くの電話会議が

開催されている.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 WG 1(Data Carrier)

5 年目の見直しが完了したデータキャリア識別子

(15424)が,第 2 版として制定された.シンボル規

格,EAN.UCC コンポジット(24723)及び RSS(24724)の

5 年目の見直し作業を行っている.2 次元シンボル規

格 QR コード(18004)のプロジェクトエディタとして,

高井弘光(デンソーウェーブ)が指名,承認された.

NP 投票 2 件,CD 投票 2 件,FCD 投票 2 件,FDIS 投

票 2件を行った.

2.2 WG 2(Data Structure)

ユニーク識別子の構造と登録手続き規格である

15459 シリーズでは,Part 7 に「包装」,Part 8 に「輸

送単位のグルーピング」が新規提案されたが,Part 7

は NP が Fail となり,Part 8 のみ審議が行われてい

る.一方,これまでに成立している Part 1 から Part

6 までの全体を通して見直しを行い,整合を取るため

Ad hoc が設立され検討を進めている.2009 年 6 月の

WG 2 会議に Ad hoc の結論が報告され,その後,具体

的な見直しドラフトの作成・検討に入る予定である.

もう一つの主要規格である 15434(大容量 AIDC 情

報媒体のシンタックス)の実際の運用に関するガイド

ライン提案(日本提案)は成立し,WD の作成・検討

が日米欧のTri-エディタ構成で進められている.RFID

へのデータ書込みに関しては,15961,15962 といっ

た規格が一方にあり,15434 は二次元シンボルで既に

広く使われている.この両者の整合をどう取るかがガ

イドラインの重要な課題である.

NP 投票 3件,CD 投票 2件を行った.

2.3 WG 3(Conformance)

日本提案のテクニカルレポート,ダイレクトマーキ

ングの指針(TR 24720)が制定された.バーコードの

ディジタル方式画像化及び印刷性能試験(15419)及び

バーコードマスタ試験仕様(15421)の改訂作業を行っ

ている.

日本提案の書換え可能な目視媒体(29133)のワーキ

ングドラフトの作成作業が完了し,CD 投票が開始さ

れた.テクニカルレポート,DPM(Direct Part Marking)

の品質ガイドライン(29158)の PDTR 投票が開始され

た.

従来 WG 3/SG 1 が担当していた RFID のパフォーマ

ンス及びコンフォーマンス試験方法の審議は,WG

4/SG 6 に引き継がれた.

NP 投票 1件,CD投票 1件, FCD 投票 2件を行った.

2.4 WG 4(RFID)

SG 1(アプリケーションインタフェースプロトコ

ル)では,ホストとリーダライタ間のコマンド規格

(15961)へ UHF エアインタフェース(18000-6C)対

応コマンドを追加したり,メモリマップへのアクセス

方式(15962)として日本から提案したプロファイル

方式を追加したりするなどの改訂を行っている.また,

ホストとリーダライタ間のデータ管理及びデバイス

管理,デバイスインタフェース,セキュリティをソフ

トウェアシステム基盤(24791)としてまとめている.

SG 2(タグ固有 ID)は活動を休止していたが,規

格(15963)成立後に追加された UII(ユニークアイ

テム識別子)の概念を追加する改訂を行っている.

SG 3(エアインタフェース)では,タグとリーダラ

イタ間のエアインタフェース規格(18000 シリーズ)

を改訂して電池補助とセンサ機能の追加などを進め

ているが,改訂のベースとなる他団体の規格の審議が

遅れていることから成立が遅れている.

SG 5(RFID 導入ガイドライン)では,RFID のラベ

ル化やリサイクル性及びリーダライタの設置方法な

どの TR(24729 シリーズ)が成立.現在は,タグやリ

ーダライタに貼付する RFID エンブレムをまとめてい

る.

SG 6は,WG3/SG1の審議を引き継ぐために新設され,

RFID のパフォーマンス試験方法(18046 シリーズ)及

びコンフォーマンス試験方法(18047 シリーズ)の改

訂を行っている.

WG 4 全体で,NP 投票 5件,CD(PDTR)投票 13 件,FCD

投票 5件,FDIS(DTR)投票 10 件を行った.

2.5 WG 5(RTLS)

RTLS は,学童の見守りシステム他で,国内でも利

用が徐々に進んできているが,日本国内で用いられて

いる周波数は,国際標準である 433MHz あるいは

2.4GHz ではなく 300 MHz 帯で電波法規制外の微弱電

波による製品が主に提供されている.これは,国際標

準の 433 MHz は,日本では輸出入コンテナ用途に限定

され,また従来方式の 2.4 GHz は,帯域幅が 60 MHz

あるため日本では使用できないことによる.現在,

2.4GHz で新たに CSS(Chirp Spread Spectrum)によ

る方式が提案され,WD がほぼ完成し,2009 年早々に

CD 投票の予定である.この規格は,日本国内でも使

用可能となる見込みである.

RTLS の適合性に関する DTR 投票が,WG 3/SG 1 にお

いて 2件行われた.

2.6 WG 6(Mobile Item Identification & Management)

6 月に開催された SC 31 総会にて正式に WG として

発足した.議長は米国 Craig Harmon 氏,事務局は韓

国 Se Won Oh 氏である.

韓国が新規作業項目として提案したエアインタフ

ェース仕様(29143)の審議を開始し,CD 投票を経て現

在 FCD 投票中である.また,韓国からデバイスプロト

コルをはじめ 9 件の新規作業項目が提案され,NP 投

票の結果すべて成立している.現在,WD の作成中で

ある.

日本からは,携帯電話等の画面に表示した 2次元シ

ンボルをクーポン等にするサービスが実現している

ことから,2次元シンボルを画面に表示する際の技術

条件等をまとめたTR作成を2009年に提案する予定で

ある.

NP 投票 9件,CD 投票 1件を行った.

■ SC 32 専門委員会(データ管理及び交換/Data

Management and Interchange)

委員長 鈴木 健司(東京国際大学)

1. 概要

今年度は第12回 SC32総会が2008年 5月 26日~30

日にシドニーで開催された.

SC 32の本年度のIS出版が10件,FDIS投票が9件,

DIS 投票が 0 件,DTR 投票が 1 件,FCD 投票が 8 件,

CD 投票が 3件であった.

SC 32 では,XML を基盤とするメタモデル,データ

管理の開発が推進されるに伴い,各 WG で共通する課

題も多く,共同して開発を行う項目も含まれている.

WG 間で共通する開発課題(メタモデル関連,XML 関連)

については,SC 32 と WG 合同で開発内容の明確化,

開発分担などを議論しつつ推進している.具体的には,

将来のデータベース要件に関する開発方向性を議論

するために WG 2,WG 3,WG 4 の合同会議を開催

(2008/11/17-21)して,今後の対処方針を取り纏め

るなど WG 横断的な活動を推進している.

WG 1(e-ビジネス)関連では,ISO/IEC 15944 シリ

ーズのうち Part 1,2,4,5 が IS の発行を完了し,

残りの Part 3,6,7,8 が審議中である.Part 3 に

ついては,米国のエディタの引退に伴い審議が停滞す

る可能性がある.また,Part 6 と Part 7 については,

再投票に進む見込みである.Part 8 については,エ

キスパートが不在なため,日本から審議に参加できる

見通しがない.WG 2(メタデータ)関連では,ISO/IEC

11179 規格の第 3 版の CD 版が,シドニー会議(2008

年 5 月)を経て引き続き審議が行われている.メタモ

デル関係では,メタモデル相互運用枠組み規格

(ISO/IEC 19763)群の第 2 部,第 4 部の審議を継続

している.2008 年シドニー会議では,メタモデル枠

組みによるレジストリ相互運用を図る ROR のスタデ

ィプロジェクトを発足させた.OMG からの PAS による

ISO/IEC 19504(CWM)は日本がコンビーナとなってコ

メント解決を図っているが,OMG 側の審議が停止した

ままとなっている.WG 3(SQL)関連では,2008 年 7

月にデータベース言語 SQL(ISO/IEC 9075)の最新版

を制定したことを受けて,次期版の開発に着手し CD

投票を開始する予定である.また,セキュリティ対応

など産業界で実応用に資する機能についても活動を

継続している.WG 4(SQL マルチメディア及びアプリ

ケーションパッケージ)関連では,SQL/MM の新たな

サブプロジェクトとして,SQL データベース上で履歴

データを扱えるようにする Part 7: History は,現在

FCD 投票が行われている.また,WG 3 において米国か

ら Part 7: History 仕様と同様な機能を規定する

「system-versioned table」と呼ぶ仕様が提案されて

いるが,日本が提案した SQL/MM の Part7:History の

WG 4 における早期 IS 化を推進する.さらに,韓国か

ら提案された MDR(Metadata Registry)交換のため

の問合せ言語 SQL/MDR が Part 7 として承認されてい

る.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 WG 1(eBusiness)

(1)経緯

今年度は,15944 シリーズ(Business Agreement

Semantic Descriptive Techniques ) の Part 3

( Open-edi description techniques ), Part 6

(Technical Introduction to e-Business Modeling

and Classification Scheme),Part 7(e-Business

Vocabulary)及び Part 8(Identification of privacy

requirements as external constraints on business

transactions)の審議が行われた.しかし,Part 6

以外の各 Part ともリソース不足のため停滞気味であ

った.

(2)開発状況

15944 シリーズは,Part 1,2,4,5 がすでに審議

を終え,残りの Part 3,6,7,8 の審議が行われた.

Part 3 については,いったんは従来の UML ベースの

UMM フレームワークと ITU の M.1401 ベースのものの

調和化が検討された.しかし,ITU エキスパートの協

力が打ち切られたため,M.1401 ベースの規格化方針

は撤回し,元々の UML ベースの規格化方針へ回帰せざ

るを得ない状況となった.また,これまでの米国のエ

ディタの引退に伴いリソース不足が更に深刻化する

と考えられる.

Part 6 については内容の審議は終了していたが,

他パートとの用語不整合の指摘を受け,その対応のた

めの修正作業が行われ,再投票へと進んだ.

Part 7 についてはオタワ会議にて FDIS 投票結果の

審議が行われ,再投票に進む予定である.

Part 8 については,個人情報管理の制度的な側面

に精通したエキスパートが,日本側の委員会メンバに

いないため,日本としては審議に関与することがむず

かしい状況にある.

(3)今後の取組み

電子商取引の進展とともに,データ交換に求められ

る規格の範囲が,単なる情報技術規格からビジネスの

運用規格へと広がりつつある.現在の WG 1 の審議も

山を越えたことから,新たなニーズに合わせた国際規

格化のスコープの再検討が必要と考えられる.

2.2 WG 2(Meta Data Registry)

(1) 経緯

WG 2 は,データ要素の管理属性,命名規則及び登

録などに関する規格シリーズ(ISO/IEC 11179,MDR:

Meta Data Registry),モデルや情報の連携を促進す

るための規格シリーズ(ISO/IEC 19763 MFI:Metamodel

Framework for Interoperability),さらにロジック

記述法として(ISO/IEC 24707: A Framework for a

Family of Logic-Based Languages),などの規格化と

保守を担当している.

日本,中国,韓国,英国,及びカナダによる 5カ国

共同プロジェクトにより進められてきた ISO/IEC

19763 規格シリーズのうち Part 1(参照モデル)と

Part 3(オントロジー登録のためのメタモデル)が,

2007 年 3 月に国際規格として成立している.その他

の部も継続審議中である.

2007 年度から,Part 3 の第 2 版「オントロジーの

進化と管理」(日中共同編集),及び Part 5「プロセ

スモデル登録」(中国編集)が追加され,2008 年のシ

ドニー会議(5月)で,Part 6(登録手続き)が承認

され,ポルトガル中間会議(11 月)を経て,審議を

継続している.

2008 年シドニー会議で,スタディプロジェクトと

して,「MDR の意味的連携(韓国提案)」,「ODMS(中国

提案)」,「ROR(日本提案)」と「MDR-MFI 統合(日米

共同提案)」が承認された.

(2) 開発状況

1) ISO/IEC 11179(MDR)関係

本規格群の中核となる Part 3: Registry metamodel

and basic attributes の第 3 版は,CD 化期限を超過

して 2006 年 3 月の神戸会議で再提案となった.2008

年度もシドニー会議,ポルトガル会議と編集会議を持

ったが未解決のコメントが山積している.

2) ISO/IEC 19763(MFI)関係

① Part 2: Core model(日韓共同編集)は,FCD 投

票(3次)中である(SC32N1848,投票期限:2009-07-10).

② Part 4: Metamodel for model mapping(日中共同

編集)は,FCD 投票(2次)中である(SC32N1846,投

票期限:2009-07-10).

③ Part 3: Metamodel for ontology registration

(日中共同編集)は,FCD 投票中である(SC32N1831,

投票期限:2009-06-07).

④ Part 5: Metamodel for process model

registration(中国編集)は,CD 投票中である

(SC32N1819,投票期限:2009-04-13).

⑤ Part 6:Registration procedure は,2007 年の

NY 会議にスタディプロジェクトとして日本から提案

し,シドニー会議(2008-05)で承認された.スタデ

ィプロジェクトの MDR/MFI 統合との関係が問題とな

っている.

⑥ シドニー会議で,日本からレジストリ相互運用の

ために「ROR(Registry Of Registries)」をスタディ

プロジェクトとして提案した.また,同時に,日米共

同で「MDR/MFI 統合」のスタディプロジェクトを提案

した.WG 2 はこのほかにも,韓国(1 件),中国(2

件)のスタディプロジェクトを進めている.

(3) 今後の取組み

WG 2 には,MDR(11179)と MFI(19763)の 2 つの

規格群が存在する.

MDRでは,11179-3の第3版(SC32N1851a,2009-06-22

期限の CD 投票中)で,米国がオントロジー登録を進

めていることが問題であり,19763-3(MFI)との重複

が指摘されている.一方で,MFI では,中国提案によ

る Part 5,Part 7 などの新規の規格開発が相次いで

いる.そのため,SC 32 議長(米)からのローカルな

要請に基づき,シドニー会議で,日米共同提案により,

「MDR/MFI 統合」のスタディプロジェクトを発足させ

た.しかし,その方向付けと,その進め方に対するコ

ンセンサスづくりは,2009 年 6 月の韓国会議以降と

なる.既定路線で進められている各規格開発をどこま

で整合させられるか,長期的な構えを必要とする.

2.3 WG 3(データベース言語)

(1) 経緯

WG 3 では 2008 年 7 月にデータベース言語 SQL

(ISO/IEC 9075)の最新の版を制定した.この版では

Part 14 SQL/XML の XQuery 対応機能拡張のために開

発された ISO/IEC 9075-14:2005(SQL/XML:2005)を

統合するともに,Web アプリケーションとのシームレ

スな連携を目指す正規表現(Perl 仕様を基にした W3C

XQeury Function&Operator 仕 様 に 準 ず る ),

BINARY/VARBINARY データ型(2 進オクテット表現),

問合せの結果行数の制限機能という新たな要求に対

応するための開発を行った.

次期の版では,2011 年の制定を目標に,今後の機

能拡張が望まれる Part1:SQL/Framework,Part2:

SQL/Foundation , Part4 : SQL/PSM , Part11 :

SQL/Schemata,Part14:SQL/XML の開発を行うことに

なった.Part3:SQL/CLI,Part9:SQL/MED,Part10:

SQL/OLB,Part13:SQL/JRT については保守だけを行

うこととなった.

(2) 開発状況

ISO/IEC 9075-14:2005(SQL/XML:2005)では,本格

的な SQL での XML 対応のため,XQuery データモデル

に基づく XML 型,SQL 文中で XML 型データに対して

XQuery 問合せを実行するための XMLQuery 関数,XML

型のデータから表データを生成する XMLTable 関数な

どの仕様開発を行った.ISO/IEC 9075-14:2008 でも

これはそのまま踏襲される.XQuery1.0 は,2007 年 1

月に正式に W3C の勧告(Recommendation)となったが,

さらにXMLデータの更新を扱うためのXQuery/Update

が開発された.ISO/IEC 9075-14:2008 では,XML デー

タを直接更新する機能は今後の課題とし,Transform

機能(XML データの写しを作りこれを更新する機能)

への対応を行った.

この他,ISO/IEC 9075:2008 では新しいデータ型と

して BINARY/VARBINARY 型(2 進オクテット表現),

XQuery で規定される正規表現(Perl 仕様を基にした

W3C XQeury Function&Operator 仕様に準ずる)に基

づくパターン照合,区画単位で外部結合を行うための

結合表機能,問合せの結果行数を制限するための機能,

ビューに対する更新を契機として起動されるINSTEAD

OF トリガを導入した.

2008年度は5月にオーストラリアのSydney(BWU),

11 月にポルトガルの Vilamoura(FAO)で 2 回の会議

が開催された.日本では,ISO/IEC 9075:2008 の Part1

及び Part2 の JIS 化作業を並行して行い,この作業に

おいて,ISOの規格書中の多くの問題点が摘出された.

これらの問題点を解決するための 100 件以上の修正

案を BWU,FAO の会議で提出し,規格仕様書の精度向

上に努めた.

一方,2006 年 3 月に神戸で開催された SC 32 総会

において日本が行った SQL/Security に関する提案に

は,研究期間(Study Period)が設定され,現在も継

続中である.近年,情報システムのセキュリティへの

社会的要求は高まるばかりであるが,SQL データベー

スに関しては,特に SQL インジェクションによる直接

的な攻撃が深刻化している.日本は,インジェクショ

ン攻撃の発見の手段として監査証跡の取得機能,及び

攻撃に対するダメージコントロールの手段としてア

クセス行数制限機能を優先課題として検討し,仕様案

を作成し提出した.

(3) 今後の取組み

WG 3 では現行規格の枠組みの範疇での開発に専念

しているが,昨今の産業界でのセキュリティへの意識

の高まりを踏まえ,データベースのセキュリティ要件

に資するセキュリティ対応を新たなサブプロジェク

トとして,日本が提案する SQL/Security のような新

たな適用分野を開拓し,時代の要請及び現実の業務要

件から必須とされている技術課題に取り組むべきで

ある.TPA 会議において,ブレインストーミングセッ

ションを行った結果,SQL/Security への要件分析を

行う議論内容が情報共有できたので,これらをブラッ

シュアップすることで,委員会草案の開発を目指して

日本からの開発貢献を継続する.

FAO 会議では,次期標準の機能として,表データを

版管理する機能が提出された.この機能には,WG 4

で開発中(2008 年 4 月現在 FCD 投票中)の SQL/MM

Part7:History の機能と少なからぬ類似点が見られ

る.日本の WG 3 委員会としては,日本が提案した

SQL/MM の Part7:History の WG 4 における早期 IS 化

に協調する.

2.4 WG 4(SQL マルチメディア及びアプリケーション

パッケージ)

(1) 経緯

SQLマルチメディア及びアプリケーションパッケー

ジ(SQL/MM と略称)(ISO/IEC 13249)は,マルチメ

ディア及びアプリケーションで利用するデータをSQL

データベースに格納し,操作することを可能にするた

めに,共通のデータ型及びルーチンのパッケージを定

義する.

2008 年度は,Part 3: Spatial,Part 7: History の

標準化作業に取り組んだ.

(2) 開発状況

2008 年 5 月にシドニー会議,11 月にビラムーラ会

議(ポルトガル)において,主に日本から提案した

Part 7: History の CD 編集会議を行った.

1) Part 3: Spatial の進捗状況

第 4 版の WD の検討が進められ,2008 年 11 月のビ

ラムーラ会議では,米国から,TC 211 及び OGC (Open

GIS Consortium)で開発中の機能に対応した 3 次元形

状の三角形近似に関する提案と,3次元の取り扱いの

拡張の提案がなされた.これらの提案が合意され CD

に進めることになり,現在 CD 投票が行われている.

2) Part 7: History の進捗状況

日本から提案した Part 7: History は,2006 年 3

月に神戸会議で CD に進めることになり,エディタを

日本が引き受けた.CD 投票結果の編集会議として,

2006 年 9月のウルムチ会議と 2007 年 7月のニューヨ

ーク会議を経て,第2回CD投票を行うことになった.

投票の結果,日本,カナダ,ドイツ,英国,米国から

139 件のコメントがあり,2007 年 11 月のヤクストハ

ウゼン会議,2008 年 5 月のシドニー会議,2008 年 11

月のビラムーラ会議の編集会議を経てすべてのコメ

ントを解決し,現在 FCD 投票が行われている.

2008 年 11 月のビラムーラ会議の直前,WG 3 におい

て米国から History 仕様と同様な機能を base table

で規定する system-versioned table と呼ぶ仕様が提

案された.これは,WG 4 において日本の History の

提案に最初から反対し続けていた米国メンバから提

案されたものであり,提案には,History と同じスコ

ープが記述され,同じ例が用いられている.日本はこ

の仕様提案に抗議し,WG 3 と WG 4 の合同会議により

調整したが,合意は得られず,折衝結果,日本と米国

はそれぞれの提案を WG 3 と WG 4 で相互に進めること

について反対しないこととなった.その結果,History

の FCD へ促進については,賛成 3 カ国(日本,英国,

韓国),反対 1カ国(カナダ),棄権 1カ国(米国)と

なった.これまで History の現仕様のアプローチに反

対し続けていた米国はこのような経緯からやむをえ

ず棄権したものであり,事実上は反対の姿勢に変わり

はない.各国の対応状況から今後も厳しいことが予想

される.

3) SQL/MDR の study period の提案

2007 年 7 月のニューヨーク会議において韓国から

提案された MDR(Metadata Registry)交換のための

標準的な MDR の構成及びアクセス方法を提供する

SQL/MDR は,study period を経て 2008 年 5 月のシド

ニー会議において,SC 32 での 60 日間の郵便投票に

まわし,4 カ国以上の支持があれば SQL/MM サブプロ

ジェクトとして受け入れることになった.投票結果,

賛成 5 カ国(中国,チェコ,韓国,英国,米国),反

対 2 カ国(カナダ,日本)で,SQL/MM サブプロジェ

クトとして正式に認められた.日本は,SC 32/WG 2

で標準インタフェースを開発するのが適切であり,そ

の後,SQL/MM でのインタフェース提供が必要であれ

ば SQL/MM サブプロジェクトとすべきという理由で反

対した.

■ SC 34 専門委員会(文書の記述と処理の言語

/Document Description and Processing Languages)

委員長 小町 祐史(大阪工業大学)

1. 概要

1.1 担当範囲と組織構成

SC 34 は,広義の文書情報の交換に用いられる文書

データの構造記述,ハイパリンク記述,スタイル指定,

フォーマット済み文書記述およびそれらに必要なフ

ォント情報に関する標準化を行う.議長は Sam G.

Oh(韓).2008 年度末には,37 カ国の Pメンバと 19 カ

国のOメンバが参加して,次のWGが組織されている.

(1) WG 1(マーク付け言語,コンビーナ: 2008 年 9月

まで村田真(国際大),それ以降,Alex Brown(英))

SGML,XML に代表される情報記述言語およびそれに

関連するサブセット,API,試験,登録などの規格を

担当する.

(2) WG 2(文書情報表現,コンビーナ: 小町祐史)

文書のフォーマット処理,フォント情報交換,フォ

ーマット済み文書記述およびそれらの API を規定す

る規格を担当する.

(3) WG 3(情報関連付け,コンビーナ: P. Durusau(米))

文書情報のリンク付け,番地付け,時間依存情報表

現,知識処理および対話処理を規定する規格を担当す

る.

(4) WG 4(Office Open XML,コンビーナ: 村田真)

ISO/IEC 29500(OOXML)のメンテナンスを行い,

ISO/IEC 29500(ODF)に関連するプロジェクトを傘下

に置く.

(5) WG 5(文書の相互運用性,コンビーナ: J. Lee(韓))

異なる ISO/IEC 文書ファイルフォーマットで表さ

れた文書の相互運用性の原則と指針を開発する.

国内では,24 名の委員(エキスパート 7名,オブザ

ーバ 1 名を含む)で構成される SC 34 専門委員会が,

関連する国内意見のとりまとめと国際への対応とを

行っている.その傘下に,6 名のメンバからなる SC

34/WG 2 小委員会と,8 名のメンバで構成される SC

34/WG 3 小委員会とがあり,それぞれフォント関連技

術とトピックマップ関連技術に関する国際標準化の

検討を行っている.

1.2 国際会議と参加状況

① SC 34 総会および WG 1,WG 3 会議(2008 年 4 月 5

日~9日,オスロ,ノルウェー): 15 カ国/37 名(日本

6名)が参加した.

② SC 34/WG 2 会議(2008 年 3 月 31 日~4月 1日,オ

スロ,ノルウェー): 2 カ国/4 名(日本 3 名)が参加し

た.

③ SC 34/Adhoc1 会議(2008 年 7 月 21 日~22 日,ロ

ンドン,英): 10 カ国/20 名(日本 1名)が参加した.

④ SC 34 総会および WG 1,WG 2,WG 3 会議(2008 年

9 月 28 日~10 月 1 日,チェジュ,韓国): 15 カ国か

ら 40 名(日本から 5名)が参加した.

⑤ SC 34/WG 4 会議(2009 年 1 月 28 日~30 日,沖縄,

日本): 7 ヶ国から 12 名(日本から 1 名)が参加した.

SC34/WG5会議(2009年1月28日~30日,沖縄,日本):9

カ国から 20 名(日本から 3名)が参加した.

⑥ SC 34 総会および WG 1,WG 2,WG 3,WG 4,WG 5

会議(2009 年 3 月 23 日~27 日,プラハ,チェコ): 11

ヶ国から 36 名(日本から 4名)が参加した.

1.3 投票等

FDIS 投票 5 件

(FDIS 24754,FDIS 19757-8,FDIS 19757-9,FDIS

13250-4,FDIS 9541-4)

FDAM 投票 3 件

(FDAM4/9541-1,FDAM2/9541-2,FDAM2/9541-3)

FCD 投票 7 件

(FCD 19757-7,FCD 9541-4,FCD 13250-5,FCD 13250-6,

FCD 18048,FCD 19756,FCD 19757-1)

FPDAM 投票 1 件

(FPDAM2/9573-3)

CD 投票 1 件

(CD 13250-1)

NP 投票 1 件

(NP: ODF/OOXML translation)

規格出版 12 件

(29500-1,29500-2,29500-3,29500-4,24754,19757-8,

19757-9 , 13250-4 , 9541-4 , Amd.4/9541-1 ,

Amd.2/9541-2,Amd.2/9541-3)

1.4 国際委員会の主な変更点および変更理由

2007 年度には次に示すメンバ変更(P メンバ 2 カ国

減,O メンバ 3 カ国増)があった.OOXML(DIS 29500)

が SC 34 に割当てられたことによる 2007 年度におけ

る著しい参加国増加が,2008 年度になって一段落し

た.

O メンバから Pメンバへの変更:スロバキア

P メンバから Oメンバへの変更:キプロス,カザフス

タン

P メンバからの退会:ルクセンブルク

O メンバへの新規参加:ポルトガル,セルビア

WG 4 と WG 5 の新設に伴い,WG 1 コンビーナが村田真

から Alex Brown に変更になり,WG 4 のコンビーナと

して村田真が指名された.

1.5 日本担当のエディタの変更

ISO/IEC 9541-1,2,3 の第 2 版の開発開始に伴っ

て,次のエディタが指名された.

・ 9541-1: 小町祐史,鈴木俊哉(co-editor)

・ 9541-2: 小町祐史,鈴木俊哉(co-editor)

・ 9541-3: 鈴木俊哉,小町祐史(co-editor)

19757 および 9541-4 の Amd.のプロジェクトについて

は,次のエディタが指名された.

・ 19757-2/Amd.1: 村田真

・ 19757-4/Amd.1: 村田真

・ 9541-4/Amd.1: 鈴木俊哉,小町祐史(co-editor)

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 WG 1(マーク付け言語)

(1) DSDL(文書スキーマ定義言語,ISO/IEC 19757)

XML 等で表現されるデータの構造,データ型,デー

タ制約の定義を行う DSDL に関して,2008 年度に議論

された主なパートの動向を次に示す.各パートの規定

概要については,以前の報告を参照されたい.

a) パート 1(概要)

FCD 投票の結果を受けて,ターゲットを IS から

Type3 の TR に変更し,テキストが提示されたら PDTR

投票を開始する.これは,パート 1の内容が規定でな

いことによる.

b) パート 2(正規文法に基づく妥当性検証-RELAX

NG)の Amd.1

RELAX NG 利用者からのモジュール化機能の向上要

求に応えて,Amd.1 を開発することにした.

c) パート 4(名前空間に基づく検証委譲言語(NVDL))

の Amd.1

NVDL の名前空間名(namespace names)に基づくディ

スパチッチ機能が不十分であるとの NVDL 利用者の要

求に応えて,Amd.1 を開発することにした.

d) パート 5(データ型)

表題を次のように変更した.

Document Schema Definition Languages (DSDL) --

Part 5: Extensible Datatypes

e) パート 6(パスに基づく一貫性制約)

プロジェクトをキャンセルした.

f) パート 7(文字レパートリについての検証)

FCD 19757-7 コメント対処に基づいて FDIS テキス

トが作成された.その際に,表題を次のように変更し

た.

Document Schema Definition Languages (DSDL) --

Part 7: Character Repertoire Description Language

(CREPDL)

g) パート 8(文書スキーマ再命名言語)

懸案となっていた実体の宣言機構・改名機構を残す

かどうかの問題点については,適合性を既定する

clause 8 において,実体マッピング適合性と実体定

義適合性との 2レベルを既定し,機構そのものは残す

ことにした FDIS テキストが承認されて,規格が出版

された.

h) パート 9(データ型および名前空間を認識する

DTD)

FCD 投票結果に基づいて軽微な修正を施した FDIS

テキストが承認されて,規格が出版された.

i) パート 10(検証管理)

プロジェクトをキャンセルした.

j) パート 11(スキーマ関連)

スキーマのロケーションに関するヒントを提供す

る処理命令を標準化する.文書とスキーマを結び付け

る必要性が 2009 年 3 月に提案され,プロジェクト再

分割によってこのプロジェクトが設立された.

(2) 数学用及び科学用の公開実体集合(ISO/IEC TR

9573-13 第 2 版)

プロジェクトをキャンセルした.

(3) 規格文書交換のための構造記述およびスタイル

指定(ISO/IEC TR 9573-11 第 2 版)の Amd.1

ITU-Tの TSAG(Telecommunication Standardization

Advisory Group)において参照され,ITU-T 文書の XML

交換様式との整合を考慮する検討が行われているた

め,DAM テキストの提出が遅れている.

(4) ODF(オフィス応用のための開放形文書フォーマ

ット,ISO/IEC 26300)

次の作業のために,ISO/IEC 26300 のメンテナンス

に関する Adhoc グループ 3を設立し,F. Cave をコン

ビーナに指名した.

・ OASISと共同してISO/IEC 26300のメンテナンス

の長期計画を立て,その計画案等を SC 34 総会

に提案する.

・ ISO/IEC 26300のメンテナンスに関連するすべて

の活動を調整する.

2.2 WG 2(文書情報表現)

(1) フォント情報交換(ISO/IEC 9541)

SC 29 によって提案された ISO/IEC 14496-22(開放

形フォントフォーマット)と ISO/IEC 9541(フォント

情報交換)との整合のために始められた,ISO/IEC

9541のパート3に対するAmd.とパート4とが完成し,

それ以前から作業が続いていたパート 1,2 に対する

Amd.とともに発行された.

a) パート 2(交換フォーマット)の Amd.2

フォント参照の拡張に関する利用者要求に応じて

開発された ISO/IEC 9541-2/Amd.2の FDAMテキストが

承認され,Amd.2 が発行された.

b) パート 1(体系)の Amd.4

ISO/IEC 9541-2/Am.2 の中で使う幾つかの属性を

ISO/IEC 9541-1 の中で定義するために開発された

ISO/IEC 9541-1/Amd.4 の FDAM テキストが承認され,

Amd.4 が発行された.

c) パート 3(グリフ形状表現)の Amd.2

Adobe Type1 CharString 互換のグリフ形状表現の

拡張である Adobe Type2 CharString の内容を規定す

る ISO/IEC 9541-3/Amd.2の FDAMテキストが承認され,

Amd.2 が発行された.

d) パート 4(開放形フォントフォーマットとの整合)

ISO/IEC 9541の既存の各パートの修正ではISO/IEC

14496-22 との整合に対応できない内容をまとめた

ISO/IEC 9541-4 の FDIS テキストが承認され,Amd.2

が発行された.

e) ISO/IEC 9541 の第 2版

これまでの多くの Amd.と Cor.の発行の結果,読み

にくくなった ISO/IEC 9541 に関して第 2 版を発行す

ることを ISO 中央事務局から勧められ,パート 1,2,

3について第 2版の開発を行うことを決めた.

(2) 文書レンダリングシステムを指定する最小要件

(ISO/IEC 24754)

レンダリング結果において必要となる文書スタイ

ルを保存したまま文書を交換し合うために,レンダリ

ングシステムが共有しなければならない最小要件を

ネゴシェーションするための枠組みを規定する.FDIS

テキストが承認されて,規格が出版された.

(3) UOML(Unstructured Operation Markup Language)

OASISで承認されたこの規定を国際規格にするため,

WG 2 は中国の担当者からどういう手続きが適切かの

相談を受けた.

2.3 WG 3(文書情報関連付け)

(1) TM(トピックマップ,ISO/IEC 13250)マルチパー

TM の規格を再構成してマルチパート化を図る作業

が 2003 年度から継続されているが,2008 年度に進捗

があったパート 6 の動向と,2007 年 12 月の WG 3 会

議で策定された作業計画とを示す.各パートの規定概

要については,以前の報告を参照されたい.

a) パート 1(概要及び基本概念)

CD テキストが承認され,FCD 処理のために改訂テキ

ストが用意されている.

b) パート 4(正準構文,CXTM)

FDIS テキストが承認されて,規格が出版された.

c) パート 5(参照モデル,TMRM)

FCD テキストが承認され,FDIS 理のために改訂テキ

ストが用意されている.

d) パート 6(簡潔構文,CTM)

FCD テキストが承認され,FDIS 理のために改訂テキ

ストが用意されている.

(2) TMQL(TM 問合せ言語,ISO/IEC 18048)

FCD テキストが承認され,2nd FCD 処理のために改

訂テキストが用意されている.

TMQL については,これまで次のように 3回の CD 投

票と FCD 投票とが行われており,FCD から FDIS への

早期進捗が望まれる.

2001-04,NP/CD 投票終了,プロジェクト成立.

2005-05,2nd CD 終了.

2006-10,3rd CD 終了.

2008-11,FCD 終了.

2010-06,2nd FCD 予定.

(3) TMCL(TM 制約言語,ISO/IEC 19756)

FCD テキストが承認され,2nd FCD 処理のために改

訂テキストが用意されている.

2.4 WG 4(Office Open XML)

(1) OOXML(オフィス開放形XMLファイルフォーマット,

ISO/IEC 29500)

OOXMLの各パートが出版された後も多くの欠陥報告

が提出されている.欠陥報告に対応して ISO/IEC

29500 を変更する必要がある.必要な変更の幾つかは

Cor.の範囲を越えている可能性があり,むしろ Amd.

によって扱われることが望ましい.そこで WG 4 は,

Cor.とAmd.とを区別するための評価基準を作成した.

a) パート 1,2,4 の Amd.

細分割によって ISO/IEC 29500-1,2,4 の Amd.の

プロジェクトを設立した.エディタからテキストを受

領した後,FPDAM 投票を開始する.

b) NP(ECMA-376:2006 と ISO/IEC 29500:2008 との技

術的差異)

欠 陥 報 告 と し て ス イ ス か ら 提 案 さ れ た

ECMA-376:2006 と ISO/IEC 29500:2008 との技術的差

異を明示する件は欠陥として扱わないことになった

ため,スイスは OOXML への Amd.としてこの技術的差

異を付加することを提案し,NP として投票を受け,

各国からのコメントに基づいて審議することになっ

た.

2.5 WG 5(文書の相互運用性)

(1) ODF-OOXML 間の変換(ISO/IEC TR 29166)

まだドラフトが示されていないが,TR 29166 の表

題 を ODF/OOXML Translation か ら ODF/OOXML

Translation Guidelines に変更し,それに従って適

用範囲も変更することが WG 4 から提案され,JTC 1

にその追認を求めることになった.

■ SC 35 専門委員会(ユーザインタフェース/ User

Interface)

委員長 山本 喜一(慶應義塾大学)

1. 活動概況

国際 SC 35 では,次の 7 つの WG において規格化活

動が行われている.幹事国/議長国はフランスが務め,

日本は 2つの WG のコンビーナ(WG 2:山本喜一,WG 4:

中尾好秀)を務めている.

・ WG 1:キーボード及び入力インタフェース

・ WG 2:グラフィカルインタフェース及びインタ

ラクション

・ WG 4:モバイルデバイスのインタフェース

・ WG 5:文化的及び言語的適合性

・ WG 6:ユーザインタフェースアクセシビリティ

・ WG 7:ユーザインタフェースのオブジェクト,

動作及び属性

・ WG 8:遠隔インタラクションのためのユーザイ

ンタフェース

国内では,WG 5 及び WG 8 を除く WG の審議は社団

法人ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA),

SC 35(WG 5 及び WG 8 含む)の案件審議は情報処理

学会という形式で審議を行っているが,実質的な審議

はJBMIA内でWGとの合同委員会において行っている.

また国内 WG については,WG 1,WG 2(WG 7 の案件

を含む),WG 4,WG 6,WG 8 の 5 つが組織されており,

その WG でそれぞれの案件を審議している.なお,WG 5

については SC 35 専門委員会で対応している.

2008 年度は,国際 SC 35 の成果として ISO/IEC

24757(Keyboard interaction model --

Machine-readable keyboard description)の IS 1 件

が出版された.

また,次の国内委員会の審議,国際会議へ参加する

ことにより SC 35 国際標準化の推進を図ってきた.

(1) 国内委員会

2008 年度は,SC 35 専門委員会及び WGs 合同会議を

10 回(原則として月 1 回)実施し,NP2 件,CD8 件,

FCD7 件, FDIS2 件,PDTR1 件の合計 20 件の投票を行

った.

(2) 国際会議

SC 35 国際会議総会は各 WG 会議と合同で行ってお

り,2008 年度は 2回開催された.

2008 年 9月 08 日~12 日イタリア ナポリ市

2009 年 2月 16 日~20 日ドイツ ベルリン市

日本からは,ナポリ会議へは山本(慶大),池田(千葉

大),中尾,関(産総研),中野(沖電気),野村(日立),

田場(経産省)の 7名,ベルリン会議へは前記の田場

氏を除く 6名と儘田(東芝)がオブザーバとして参加

した.ベルリン会議は幹事である仏 AFNOR のセクレタ

リが参加できず,公式には General orientation me

eting として開催されたが,実質的には総会と同じで

ある.

2. 各 WG の審議状況

SC 35 としては,上述のとおり 2008 年度合計 20 件

の投票を行った.国内で未組織の WG 5 及び情報処理

学会組織の WG 8を含む各 WGの審議状況は次のとおり

である.

2.1 WG 1(キーボード及び入力インタフェース)主査

中野義彦

9995シリーズの第3次改正作業は,6件のCD投票,

6 件の FCD 投票,1件の CD 投票を行った.2009 年度

で終了の見込みである.欧州におけるキーボード配列

の標準化の必要性の高まりを受けて,活発な規格開発

が行われている.FDIS 24757 (Keyboard Interaction

model -- Machine-readable keyboard description)

については,特に問題はなく賛成で投票した.また,

NP(Frameworks for text entry based on 3x3 Matrix

Layout)は,提案国の韓国の準備が遅れているが,NP

投票時に反対投票をした我が国としては特に問題は

ない.

2.2 WG 2(グラフィカルインタフェース及びインタラ

クション)及び WG 7(ユーザインタフェースのオブ

ジェクト,動作及び属性)主査 中尾好秀

アイコンについての 11581 シリーズの完全な書換

えを行っており,アイコンそのものの定義は,データ

ベース規格とすることになっている.国内では,WG 2

と 7 はひとつの委員会として開催し,本年度は CD,

FCD 及び DTR を 1 件ずつ投票した.

日本から提案した,データベース規格を管理するた

めの NP が承認され,ISO/IEC 11581-40 “Management

of Icon Registration”として作業が開始された.ま

た,池田がプロジェクトエディタに指名された.この

データベースについては IEC 中央事務局との共同作

業でプロトタイプをすでに作成した.

2.3 WG 4(モバイルデバイスのインタフェース)主査

池田宏明

日本提案の 2つの Study Group である,OWG-NUM(4

方向キーインタフェース)及び OWG-VC(ボイスコマ

ンド)について審議を進めた.4方向キーについては,

モバイル端末などの小規模なディスプレイと 4 方向

キー及びラダーメニューの組合せによるインタフェ

ースについて,多数の機器について調査を行い,複数

の形式が使われていることが判明した.この結果に基

づいて,来年度に日本においてユーザビリティテスト

を実施し,その結果を規格化することになった.

2.4 WG 5(文化的及び言語的適合性)

FCD 15897 User interfaces -- Procedures for

registration of cultural elements の投票が終了し

賛成多数で承認され,Disposition of comments と共

に FDIS 投票に進めることになったが,日本としては

作業を妨げることはしないが特に参加することもし

ない.

2.5 WG 6(ユーザインタフェースアクセシビリティ)

主査 関喜一

日本から提案し,関がエディタを務めている FCD

24786 Accessible User Interface for Accessibility

Settings の FDIS 投票が開始された.また,同様に日

本からNP提案を行い野村がエディタを務めているCD

29136 Accessibility functions for personal

computers はタイトルを Hardware accessibility

features for personal computers に変更して CD 投

票が開始された.

FDIS 24756 Framework for specifying a common

access profile (CAP) of needs and capabilities of

users, systems, and their environments は,賛成

多数で成立し IS 出版待ちである.

NP 13066 Interoperability with Assistive

Technology (AT)は,NP として承認されたが,少なく

とも 3 パートからなる規格とすることが合意され,

Part-1 概要 の CD 投票が開始された.

2.6 WG 8(ユニバーサルリモートコンソール)

計画していた IS の出版がすべて終了し,本年度は

実質的な活動は行われなかった.

3. 今後の主要課題

アイコン DB 規格をできるだけ早く実現し,多くの

利用者に開放するとともに,保守管理の手順を確立し,

安定した運用を行う必要がある.

アクセシビリティに関する関連規格として JIS X

8341-2 対応の規格案の作成を行い,本年度中には CD

投票の開始まで進めた.来年度以降,出来るだけ早く

の IS 出版に向けて引き続き努力する.

4. 特記事項

SC 35 においては日本が 2 つの WG のコンビーナを

務めるとともに,3件のプロジェクトでプロジェクト

エディタを務めている.今後さらに SC 35 における日

本からの国際的な活動が期待されている.特に,アク

セシビリティ関連の規格については日本からの更な

る貢献が期待されている.

日本の池田名誉教授がプロジェクトエディタを務

めている,User system interfaces and symbols --

Icon symbols and functions -- Part 40: Management

of Icon registration の CD 投票が開始され,データ

ベースのプロトタイプを作成して評価を取っている.

今後は,ISの制定と共に本番の DB を運用する体制を

考える必要がある.

今年度新たに承認された NP,Interoperability

with Assistive Technologies については,国際の場

での審議体制がまだ確定していないが,対象範囲が極

めて広く実際の作業が始まるときには国内での対応

体制を考慮する必要がある.

5. 2009 年度国際会議予定

2009 年 8月 22 日~26 日 サスカチューン市(加)

2009 年 2月 22 日~26 日 欧州

■ SC 36 専門委員会(学習,教育,研修のための情報

技 術 /Information Technology for Learning,

Education and Training)

委員長 仲林 清(放送大学)

1. 概要

SC 36 は,コンピュータを活用した教育・研修の分

野を担当し,教育コンテンツ,学習者情報,教育品質,

などに関する標準化活動を進めている.ただし,教育

の内容自体に関わるような標準化は行わない.この分

野はすでに多くの技術標準化団体が存在しており,SC

36 はこれらの団体と連携して国際標準規格を制定し

ようとしている.現在 SC 36 には 7 つの WG,ひとつ

の RG,ひとつの SWG,ひとつの AdHoc がある.2008

年 9 月の時点で 27 のプロジェクトが進行中である.P

メンバは 26 カ国,O メンバは 8 カ国であり,過去 1

年で Pメンバ,Oメンバ各2カ国が増えている.また,

ISO/IEC 外の 8つの団体とリエゾンを結んでいる.議

長は米国である.セクレタリアートは英国が引き受け

ていたが,2009-02 に韓国に引き継いだ.SC 36 の運

営の特徴にSWG on Business Planningの存在がある.

この SWG において,各プロジェクトの整合性や優先順

位付けなどが行われ,SC 全体をスムースに運営する

努力が行われている.

今年度の国際会議は,2008 年 9 月 6 日~12 日にド

イツのシュトゥットガルト(17 ヶ国,6 団体,52 人

が参加),2009 年 3 月 21 日~27 日にニュージーラン

ドのウェリントン(15 ヶ国,6 団体,54 人が参加)

で開催された.今年度,承認された NP は 2 件,CD は

9 件,FCD は 1 件,FDIS は 8 件,出版された IS は 9

件である.

現在,日本は WG 2(協調技術)のコンビーナ(電

通大 岡本),セクレタリ(大阪学院大 西田)および

プロジェクトエディタ(ユニシス 原,日立 古賀),

WG 5(品質保証)のプロジェクトエディタ(東洋大 平

田)を引き受けている.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 WG 1(ボキャブラリ)

SC 36 で制定する規格で用いられる用語の定義を行

う.2382-36 Information Technology Vocabulary―

Part 36: Learning, Education, and Training を策

定中である.第 1版は掲載する用語を限定して早期に

IS 化することを目指して進められ,2008 年 5 月に IS

が出版された.

用語数を拡充した第 2 版の策定も並行して進めら

れており,SC 36 の各規格で用いられている語彙のハ

ーモナイゼーションを図るため,WD,CD,FCD 段階の

Terms and Definitions を WG1 に収集してコメントを

付ける枠組みを作ることが議論されている.

2.2 WG 2(協調・知的技術)

日本から WG 設置を提案し,電通大 岡本コンビーナ

のもとで 3つのプロジェクトが進行している.

19778 Collaborative Workplace(CW)プロジェク

トは,

・ 19778-1: Collaborative Workplace Data Model

・ 19778-2: Collaborative Environment Data

Model

・ 19778-3: Collaborative Group Data Model

から構成され,原がプロジェクトエディタを務めてい

る.19780 Collaborative Learning Communication

(CLC)のプロジェクトは古賀がカナダの Norm

Friesen と共にエディタを務めている.昨年 FDIS 投

票が行われ,2008 年 5 月に IS が出版された.これら

については,今後,ユースケースなどの解説を作成す

る予定で,TR 作成の NP 提案を準備していたが,ウェ

リントン会議で NP 投票を行うことが合意された.

19779-1 Agent to Agent Communication は韓国が

プロジェクトエディタを引き受けていたが,進展がお

もわしくなく,シュトゥットガルト会議でプロジェク

トの取下げが決定された.

米国よりとして提案されていた Type 3 TR

“ Intelligent System for Multilingual Reverse

Query Expansion” は,ウェリントン会議で PDTR 投

票の BRM が行われ,DTR 投票を実施することが認めら

れた.

他に,Integration of Automated Processes for

Supporting Collaborative Aactivities に関して

Study Period が進められている.

2.3 WG 3(学習者情報)

この WG は学習者の学習履歴,成績,スキルなどの

情報の標準化,および,モバイル関連の技術を扱う.

昨年から Managing and Exchanging Participant

Information の スタディピリオドを設けて,

e-portfolio と Competency semantic information の

二つのカテゴリで検討を進めている.シュトゥットガ

ルト会議,ウェリントン会議でそれぞれ 4件程度の関

連技術に関する発表が行われた.この結果,

e-portfolioについてはコアデータ要素や相互運用性,

CompetencyについてはCompetencyモデリングないし

Competency 情報モデルの NWI の検討を,スタディピ

リオドを延長して進めることとなった.

プライバシー保護に関しては,従来,アドホックを

設けて検討してきたが,ウェリントン会議で NWI が認

められた.教育関連の個人情報保護に関する要件,実

践事例などを扱う.

学習者のスキル,能力の記述に関しては,TR24763

CRM Competencies and related object が進められて

いる.ウェリントン会議 PDTR 投票が行われ,DTR に

進めることで合意した.

モバイル学習向けの学習者情報に関しては,スタデ

ィピリオドを設定して検討してきたが,昨年,日本を

含む 4か国から事例などの情報提供が行われ,これを

ベースに WD の作成が進められた.このうち,ISO/IEC

TR29140-2 Nomadicity and Mobile Technologies -

Part 2: Learner Information for Mobile Learning

については,ウェリントン会議で BRM が行われ,ドキ

ュメントを修正して再度投票を行うこととなった.

2.4 WG 4(学習管理)

WG 4 はコンテンツ関連の標準化を行う.現在,

ISO/IEC 19788 Metadata for Learning Resource (MLR),

ISO/IEC 12785 Content packaging,および,ISO/IEC

TR 29163 SCORM(Sharable Congtent Object Reference

Model)に関するプロジェクトが活動している.

MLRは学習リソースに関するメタデータの項目ごと

の Multi Part Standard として規格化を進めようとし

ている.2008 年 9 月のシュトゥットガルト会議にお

いて,Part1 Framework の CD3 投票と Part2 Core

Elements の CD2 投票の BRM が行われた.しかし,MLR

全体の構成について,Dublin Core やセマンティック

Web 技術などとの整合性の観点から,メタデータ項目

の構成を階層型でなくフラットなものにしようとい

う提案が北欧・オーストラリアなどから行われ,これ

に関連する多数のコメントが付いたため,Part1 につ

いては BRM を延期して,11 月に改めてパリで実施し

た.Part2 についてはメタデータ項目を Dublin Core

と一致させることで合意し,FCD 投票を進めることと

なった.他のパートとして,Part 3: MLR Core

Application Profile,Part 4: Technical Elements,

Part 5: Educational Elements,Part 6: Availability,

Distribution, and Intellectual Property Elements

が進められている.これらはいずれも WD 段階である.

Content packaging は,今年度開始されたプロジェク

トで,Part 1: Content Packaging Information Model,

Part 2: Content Packaging XML Binding, Part 3:

Content Packaging Best Practice and

Implementation Guide が進められている.この規格

は,もともと IMS Global Learning Consortium が策

定したもので,後述する SCORM のベース規格として用

いられるなど,すでに世界的に広く用いられているも

のである.Part1 については,ウェリントン会議で CD

投票の BRM が行われ,FCD に進めることになった.他

のパートについても投票準備を進めている.

SCORM は,米 ADL(Advanced Distributed Learning

Initiative)が開発した WBT(Web-based Training)

の規格であり,現在,SCORM 2004 第 3 版が Fast Track

による TR 化の過程にある.SCORM 規格は,複数の標

準化団体が開発した規格を統合したものであり,2007

年 9 月のトロント会議で SG が設置され,ISO 規格化

を進めるにあたり,どのような課題があるかを議論し

てきた.シュトゥットガルト会議で最終報告が行われ,

現在の SCORM 2004 第 3 版の TR 化を進めること,今後

開発される新しい版についても TR に反映することが

合意された.SCORM 2004 第 3 版の TR については,JTC

1 レベルで投票が行われ,ウェリントンでの BRM で合

意が得られて TR が出版されることとなった.

2.5 WG 5(品質保証)

学習教材や教育サービスにおける品質標準を扱う.

開発プロセスに関する標準を議論しており,ISO/IEC

19796-1 Quality Management, Assurance, and

Metrics―Part 1: General Approach が IS として発

行されている.現在,Part2: Quality Model,Part3:

Reference Methods and Metrics, Part4: Best

Practice and Implementation Guide, Part5: The

Guide of How to use 19796-1 の各パートが進められ

ている.この中で,平田がプロジェクトエディタを務

める Part 3 が最も進捗しており,FDIS 投票を経て,

2009 年 2 月に IS が発行された.

また,新たなプロジェクトとして,アセスメント(教

育における評価)に関するプロジェクトが開始され,

e-Testing,quality of assessments,quality and

validation of single assessment items の三つの課

題に焦点を当てて検討を進めている.

2.6 WG 6(国際標準プロファイル)

WG 6 ではeラーニングフレームワークや各種プロ

ファイルの議論を行っている.具体的には,中国が

PE を務め,ISO/IEC 24725 Information technology ―

Learning, education, and training ― Profiles of

standards and specifications のプロジェクトを進

めているが,ドキュメントの位置づけなどについて各

国の合意が得られず,進行が停滞していた.ウェリン

トン会議で, JTC 1 より ISP ( International

Standardized Profiles)の廃止に関する回答があり,

既存規格のプロファイルの作業を中心としていた WG

6 はプロジェクトの見直しを行った.具体的には,WG

の名称,スコープを見直し,また,進行中の ISO/IEC

24725 についても名称,構成の見直しを議論した.

WG の名称については Supportive Technology and

Specification Integration への変更を次回総会まで

議論する.また,進行中のプロジェクトについては,

ISO/IEC 24725-1 Framework and taxonomy および

ISO/IEC ISP 24725-2 Profile of Rights Expression

Language (REL) -- Commercial Applications につい

ては Type2 TR にすること,ISO/IEC TR24725-3

International Standardized Profile on Platform

and Media Profiles (PMP)については,名称の変更な

どを行った上で再投票にかけることになった.

2.7 WG 7(文化,言語,利用者機能適応)

WG 7 は,24751 Individualized Adaptability and

Accessibility in E-learning Part 1-8 が進められ

てきた.このうち,Part 1-3 に関しては昨年度規格

のベースを開発した IMS Global Learning Consortium

と JTC 1 の間で著作権に関する調整が行われ,今年度

IS が出版された.また,ウェリントン会議で,進展

が芳しくなかった 4 つのプロジェクト ISO/IEC

24751-4~7 が取り下げられることが決まった.Part 8

の Language Accessibility and Human Interface

Equivalencies は別の規格に独立させるための NP 投

票が行われていた.しかし,プロジェクトに関わって

いくと投票した国の数が規定に届かず NP が成立しな

かったため,再度,NP 投票を行い,Part 8 の独立を

目指すこととなった.さらに,24751 の中に新しく 2

つのPart9: Access for All, Personal User Interface

Preferences および Part10: Access for All, User

Interface Characteristics を設けることとなった.

また,WG の名称を “ Culture, language, and

individual needs” と変更することになり,各国に

母国語への翻訳が依頼された.

3. その他

日本がイニシアチブを取って進めてきた WG 2 のプ

ロジェクトについて,昨年度末に FDIS 投票が行われ,

今年度末に IS として出版された.日本からのコンビ

ーナ,セクレタリ,プロジェクトエディタが各国との

議論を繰り返し,会議以外の場も含めて,各国の協力

を引き出しながら,粘り強く合意を形成してきた努力

によるところが大きい.

WG 5 でも,日本がエディタを引き受けているプロ

ジェクトがスムースに進捗し,今年度 FDIS が承認さ

れて IS が出版された.品質保証については,世界的

に関心を集めているトピックであり, WG 5 は普及活

動についても力を入れていく予定である.国内でも関

係団体と協力して普及啓発を図って行きたい.

また,2010 年 3 月の SC 36 総会は日本で開催する

こととなった.関係各位のご協力をお願いしたい.

■ SC 37 専門委員会(バイオメトリクス/Biometrics)

委員長 瀬戸 洋一(産業技術大学院大学)

1. 概要

SC 37(議長:Fernando Podio(米))は,汎用的な

バイオメトリック技術に関する標準化を担当する.

2003 年 9 月開催の第 2 回ローマ総会により,6 つの

Working Group 体制が発足した.2008 年度は 7月に釜

山(韓)で第 7 回総会および第 10 回 WG,1 月にハワ

イ(米)で第 11 回 WG が開催された.韓国での総会開

催は第 3回のソウル開催についで 2度目である.

2007 年 7月のベルリン総会での審議の結果,今後 5

年間の組織運営における課題を検討するために HoD

(Head of Delegation)および国際主査をメンバとす

る SG(Special Group)会議が設置され,第 1 回 SG

会議(2008 年 1 月イスラエル)に続き,2008 年 4 月

にニューヨークで第 2 回,そして 2008 年 7 月,釜山

総会に先立ち第 3 回 SG 会議が開催され,組織運用が

検討された.SG 会議では,WG 間での開発案件数の格

差および WG 間の連携に関して議論された.

国際標準化活動も新規規格の開発から,初期に標準

化されたドキュメントの改訂や適合性評価標準の開

発の比率が増えてきた.このためドキュメント開発の

スケジューリングが問題となっている.

日本として WG 2(テクニカルインタフェース)に

おいて貢献の要望が高まっている.1つはセキュリテ

ィインタフェース仕様,もうひとつは,BioAPI(プロ

グラムインタフェース)適合性仕様である.日本から

Editor を出し積極的に標準化を進めている.

現在,Pメンバは24カ国,Oメンバは6カ国である.

2008年 7月総会時点では 44件のプロジェクトが審議

され,2008 年度までに 26 の IS 文書,13 の SD 文書が

発行された.

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 SC 総会

第 7 回総会(18 カ国,5リエゾン組織,48 名参加)

は,2008 年 7月 14 日~15 日に釜山(韓)で開催され

た.第 10 回 WG 会議も併設し開催された.韓国での総

会開催は第 3回のソウル開催についで 2度目である.

2007 年のベルリン総会の結果,今後 5 年の活動を

見据えた組織運営に関する課題を検討するためにHoD

および国際主査をメンバとする SG(Special Group)

会議が設置され,第 1回 SG 会議(2008 年 1 月イスラ

エル),第 2 回 SG 会議(2008 年 4 月ニューヨーク)

が開催された.釜山総会に先立ち HoD 会議が開催され

組織運用の確認が行われた.ポイントは,以下の 5点

である.

① 各 WG の ToR(Terms of Reference)の見直し.例

えば,WG 1 では,用語だけではなく,各フレームワ

ーク規格で使用するバイオメトリック技術用語の調

整文書(SD11 Harmonization 文書)の開発もスコー

プに含めることになった.

② ロードマップを各 WG で検討し,SD(Standing

Document)として発行する.ロードマップは,SC 37

の今後の運営の適正化を図ることを目的とし,

・ WG ToR,

・ 各 WG のプロジェクトの状況,

・ 他 WG,他 SC との競合確認と調整,

・ 将来の方向性

などを明記する.

③ WG 構成は,現状の 6つの WG とする.

④ 境界領域の問題に対処するため WG 間の合同会合

を実施する.

⑤ 総会および WG の開催は,いままで通り 6ケ月ごと

に開催する.

ここ 2年ほどの SC 37参加国の変化として,ロシア,

スペインの活動が盛んになった.また,今回初めてウ

クライナから出席があった.中国からの参加者 2名は,

IEC & JTC 1 における標準を主管する CESI(中国電子

技術標準化研究所)の所属であり,バイオメトリクス

にも取組みを強化する姿勢が出始めた.

2011 年 7 月,日本で第 10 回総会および第 16 回 WG

を開催することが決議された.

2.2 WG 1(Harmonized Biometric Vocabulary/専門

用語)

WG 1(主査:Rene McIver(加))は,バイオメトリ

ック技術用語を標準化するグループである.ISO/IEC

2382 用語および SC 37 で使用される様々な概念間の

調和を図ってバイオメトリック技術用語を標準化す

る.各用語の本質的な意味や関連性を示すコンセプト

マップの作成,用語を定義した SD2(Standing

Document 2)Harmonized Biometric Vocabulary のド

キュメント作成を行っている. また,ToR として,

用語だけではなく,一般的なバイオメトリック技術を

定義する SD11 Harmonization Document も含めること

になった.

SD2 バージョン 10 は,関連する組織(SC 17,SC 24,

SC 27,TC 68,ITU-T SG 17)へ展開することになっ

た.

2.3 WG 2(Biometric Technical Interfaces/バイ

オメトリック テクニカル インタフェース)

WG 2(主査:Young-Bin Kwon(韓))は,バイオメ

トリクスの共通インタフェース仕様を策定するグル

ープである.

日本の栗田が Editor を務めるプログラムインタフ

ェースの適合性評価に関する 24709-3 BioAPI

Conformance Testing,Part 3: Test Assertions for

BioAPI Frameworks に関し,ハワイ会議で,中村より

開発方針を明確にするための寄書説明を行った.この

結果,当初強く反対に回っていた英国の賛成が得られ,

課題となっていた BioSPI_Enroll に対する寄書提出,

それを審議する SWG 設置,それらの内容に基づき CD

開発へ進むことが決議された.

日本の入国管理システムなどにも関係する 29141

Tenprint Capture using BioAPI が FDIS に進むこと

が決議された.その他,29164 BioAPI Lite はスペイ

ンの Retillo が Editor を務めている.この規格は

BioAPIの名称がついているが内容はBioAPIの範疇で

はないため 19784 のマルチパートの位置づけと異な

るプロジェクト番号をつけることになった.ハワイ会

議でプロジェクト番号 29164 として CD に進むことが

決定した.

2.4 WG 3(Biometric Data Interchange Formats/

バイオメトリックデータ交換フォーマット)

WG 3(主査:Christoph Busch(独))は,バイオメ

トリックデータの交換形式を策定するグループであ

る.バイオメトリックシステム間で認証の相互運用性

(Interoperability)確保を目的として,データ交換

フォーマットの開発を行っている.具体的には,認証

技術毎にパートを分けた ISO/IEC 19794(データ交換

フォーマット)シリーズとその関連規格の審議を進め

ている.

19794 シリーズでは,2007 年 6 月のベルリン会議か

ら改版(Revision)プロジェクトを開始している.

19794 改版プロジェクトは,Fast Track ではなく,通

常の進め方をすることが確認された.今までの不都合

部分の改善と新しいフォーマットの追加が議論され

ている.不都合部分の改善として,フォーマットの整

理(19794-2 での指紋特徴点カードフォーマット・ヘ

ッダ有/無),互換性に問題のあるフォーマットの削除

(19794-6 での虹彩極座標画像)などがある.新しい

フォーマットの追加は顔画像での高精細フォーマッ

トや動画像フォーマットである.さらには,データの

XML 化が検討されている.下記に示す CD 開発の改版

プロジェクトでは,各パートの調和をより強化する方

向で進められており,フレームワーク(19794 Rev -1)

の重要性が増している.

・ 19794 Rev -1: Biometric data interchange

format -- Part 1: Framework(フレームワーク)

・ 19794 Rev -2: Part 2 Finger Minutiae Data(指

紋特徴点)

・ 19794 Rev -4: Part 4 Finger Image Data(指紋

画像)

・ 19794 Rev -5: Part 5 Face Image Data(顔画像)

・ 19794 Rev -6: Part 6 Iris Image Data(虹彩画

像)

WG 3 ではデータ交換フォーマットの品質を定義す

るためのフレームワークの規格策定も進めている.

FCD 投票へと進んでいる 29794-1 は,バイオメトリッ

クサンプル品質データを品質算出アルゴリズム ID や

ベンダ ID を用いて取り扱うための枠組みを規定して

いる.しかし,29794-1 を使うためには,品質アルゴ

リズム ID やベンダ ID の IBIA(International

Biometric Industry Association)への登録手順を

CBEFFと同様に別パートとして成立させることが必要

であり,その内容を 19785-2:CBEFF(共通バイオメト

リック交換データファイルフレームワーク)登録手順

の追補規格として扱うことが 2008 年テルアビブ会議

にて議論され,決議文書に WG 3 から WG 2 への要請と

して記載された.従って,19785-2:CBEFF 登録手順の

追補規格が成立するまでは,実際に 29794-1 の仕組み

を利用することは出来ない状況である.

19794シリーズで策定したデータ交換フォーマット

使う際には,そのシステムでデータ交換フォーマット

が適切に使われているかを検証するための規格が必

要である.19794 シリーズで規定されたデータ交換フ

ォーマットの適合性テスト方法を規定する規格とし

て 29109(適合性:Conformance)シリーズの策定が

進められている.29109 でも同様にパート間の調和が

重視される形でプロジェクトが進められており,共通

項目を規定する 29109-1 の重要度が増している.文書

が作成されているプロジェクトの例を以下に示す.

・ 29109-1: CT Methodology for biometric

interchange Records Formats -- Part 1:

Generalized CT Methodology(適合性テスト --

一般的なテスト方法)(FDIS)

・ 29109-2: Finger Minutiae Data(指紋特徴点)

(FCD)

・ 29109-4: Finger Image Data(指紋画像)(FCD)

・ 29109-5: Face Image Data(適合性テスト -- 顔

画像)(CD)

・ 29109-6: Iris Image Data(虹彩画像)(WD)

・ 29109-9: Vascular Image Data(血管(静脈))

(CD)

・ 29109-10: Hand Geometry Shilhouette Data(手

形)(FCD)

29109-9:血管画像フォーマットの適合性テスト方

法では,日本から Co-Editor として緒方,浜の 2名が

参加し開発を進めている.

データ交換仕様を扱う WG 3 は,開発プロジェクト

が最も多く,同一会期内でのセッション併置開催が承

認された.ただし,会議参加者数の少ない NB への配

慮により,NB 投票は併置セッションで行わない方針

となった.また,適合性評価の基準を開発しているが,

適合性に関係する規格の開発の遅れや,初期に IS 化

した文書の改訂時期にあり,開発スケジューリングが

非常にタイトなため,意識的に開発期間の延期などを

行うことにより調整を行っている.

2.5 WG 4 (Biometric Functional Architecture and

Related Profiles/バイオメトリクス・アプリケーシ

ョンの運用仕様)

WG 4(主査:M. Hogan(米))は,バイオメトリッ

ク認証を用いるアプリケーションにおける API およ

びデータフォーマットの利用方法や運用仕様,つまり

システムプロファイルを検討するグループである.

WG 4 の取り組むプロジェクトは,プロジェクト番

号 24713 の互換性確保およびデータ交換のためのバ

イオメトリックプロファイルに関するマルチパート

を扱っている.

3 件の開発プロジェクトの内,2008 年になってバイ

オメトリックシステムの共通アーキテクチャと空港

における雇用者のための物理的アクセスコントロー

ルを扱う 2件の IS 化が行われた.

・ ISO/IEC 24713-1 Biometric Profiles for

Interoperability and Data Interchange - Part

1: Overview of Biometric Systems and

Biometric Profiles(February 2008 発行)

・ ISO/IEC 24713-2 Biometric Profiles for

Interoperability and Data Interchange - Part

2: Physical Access Control for Employees at

Airports(May 2008 発行)

残る 1 件は,ILO(国際労働機関)による第 185 号改

正条約において規定される指紋情報付船員身分証

(SID)の国際標準仕様を定める下記案件であり,ハワ

イ会議で審議され,FDIS に昇格した.

・ 24713-3 Biometric Profiles for

Interoperability and Data Interchange - Part

3: Biometric Based Verification and

Identification of Seafarers

この結果,この WG で扱っていた 24713 マルチパート

のシステムプロファイルの開発がすべて終了し,現在

新たな NP 提案を待っている状態である.WG 4 は今後

の活動方針が不明確であり,主査(Hogan)が作成する

ロードマップドキュメントを精査し,日本の対応方針

を検討する必要である.

2.6 WG 5(Biometric Testing and Reporting/バイ

オメトリック技術の試験および報告)

WG 5(主査:Phillip Statham(英))は,バイオメ

トリックシステムとコンポーネントの試験ならびに

標準フォーマットを用いた試験結果の報告方法に関

する標準化を検討するグループである.アルゴリズム

の試験(Technology Evaluation),運用想定試験

(Scenario Evaluation) , お よ び 運 用 試 験

(Operational Evaluation)までの各レベル,指紋や筆

跡などの各生体モード,出入管理などのアプリケーシ

ョンなど,全てのタイプの試験に対する試験手順の標

準化に向け,英国での試験方法標準として開発された

“ Best Practices in Testing and Reporting

Performance of Biometric Devices”(2002 年発行)

をベースとして国際標準 19795 が策定されている.

2008 年度に 2 つの新規開発案件の NP が成立した.

・ 19795-5 Biometric Performance Testing and

Reporting - Part 5: Scenario Evaluation of

Biometric Access Control Systems(アクセス

制御のシナリオ試験方法)(Editor は Rick

Lazarick (米))

・ 19795-7 Biometric Performance Testing and

Reporting - Part 7: Testing of ISO/IEC

7816-based verification algorithms.(IC カー

ド照合の試験方法(Editor: Patrick Grother

(米)).

英国から NP 提案された TR 29156: Guidance for

specifying performance requirements to meet

security and usability needs in applications using

biometrics(安全性/利便性に関する運用要件のガイ

ダンス)は日本の JISTR が元になっている.Editor

は Nigel Gorden(英)が就任した.Editor の下で

Special Group が設置され,三村が参加しベースドキ

ュメントを開発中である.

WD 審 議中である 29120-1 ~ 4: Information

technology: Machine Readable Test Data for

biometric testing and reporting(Editor: Patrick

Grother (米)) は,パート構成の変更が行われ承認さ

れ下記のような構成となった.

・ Part 1 Framework and Components

・ Part 2 Test Input Data

・ Part 3 Test Reports

・ Part 4 Biometric Test Certificates

指紋のDBの困難度評価法に関するTR 29198: Testing

Level of Difficulty of Fingerprint Database for

Technology Evaluation:は,Acting Editor として

Hakil Kim (韓),溝口が Co-Editor に就任した.

2.7 WG 6(Cross-Jurisdictional and Societal Aspect

/社会的課題)

WG 6(主査:Mario Savastano(伊))は,バイオメ

トリック技術を適用する上での社会的側面の領域に

おける標準化を行う WG である.現在,運用者がバイ

オメトリック認証システムを適切に運用するための

社会的課題(プライバシー,法的課題,アクセシビリ

ティ,ユーザビリティなど)に対して考慮すべきガイ

ドラインを纏めた下記 TR 24714 を作成中である.

24714-1: Guide to the accessibility,privacy and

health and safety issues in the deployment of

biometric systems for commercial application は

アクセシビリティやプライバシーに関する概論につ

いてまとめた TR である.Part 1 は,すでに発行済み

である.

24714-2: Practical application to specific

contexts は,モダリティ毎,アプリケーション毎の

具体的な考慮点をまとめたものである.6 回目の WD

を開発中である.

新規案件として,以下の TR の開発に着手した.

① 24779-1 Cross-Jurisdictional and Societal

Aspects of Implementation of Biometric

Technologies - Pictograms, Icons and Symbols for

Use with Biometric Systems - Overview は,バイオ

メトリクス関係のアイコンの標準を扱うTRでありWD

を開発中である.

② 24779-2: Fingerprint Applications は 3 回目の

WD,24779-3: Vascular Applications は,個別のモ

ダリティのアイコンに関する標準であり WD を開発中

である.

アイコンピクトグラムの専門家は日本からの 1 名

である.他国からは専門家の派遣がなく,日本がリー

ドしている.

29144: The use of biometric technology in

commercial Identity Management applications and

processes Identity Management(IdM)に関する TR

である.英国からの新規提案であり,Base Document

を開発中である.IdM にバイオメトリクスを利活用す

る上での考慮点を纏めるものである.

3. その他

3.1 リエゾン体制

① European Patent Office(EPO)は,パテント関係の

情報を得るため,SC 37 ドキュメントを検索すること

を要望している.本件に関し審議した結果,SC 37 の

多数の NB は問題ないとしたが,ロシアと米国が

Abstain 回答をした.

② SC 17 および SC 27 対応で Special Group を設置

した.関連する開発案件に関しレビュー&コメントを

迅速に行うことになった.

3.2 今後の開催予定

第 8 回 総会 2009-07 ロシア

第 12 回 WG 2009-07 ロシア

第 13 回 WG 2010-01 シンガポール

第 9 回 総会 2010-07 マレーシア

第 14 回 WG 2010-07 マレーシア

第 15 回 WG 2011-01 南アフリカ

第 10 回総会 2011-07 日本

第 16 回 WG 2011-07 日本

<第 2種専門委員会>

■ 学会試行標準専門委員会

委員長 石崎 俊(慶應義塾大学)

1. 委員会活動の経緯と最近の動向

情報処理学会試行標準は 2001 年度からスタートし

た制度で,情報規格調査会が情報処理学会における研

究活動との連携も考慮しながら,第 1種の専門委員会

における従来型の標準の開発ばかりでなく,システム

開発や研究開発などにも役立つような標準を学会試

行標準として制定し,国内・国際標準を目指してホー

ムページ(http://www.itscj.ipsj.or.jp /ipsj-ts/)

で公開して広く意見を求めるというものである.

この制度はスタートから 9年目に入り,成立した学

会試行標準は 11 件に上って国際標準として成立した

ものや国内の国家プロジェクトに役立ったものがあ

る.本報告書では本委員会の具体的な活動内容として,

7 つの WG について個別に説明し,特に学会活動との

連携を重視して学会での発表などの報告も含めた.

2. 活動内容

2.1 WG 1:情報技術用語(主査:大野義夫)

情報技術用語データベースとして JIS などの文書

で定義された用語を基本とし,国内外で使用されてい

る最新の用語を対象にするデータベースを開発して

いる.試験使用で送られた意見をもとにして,一部の

インタフェースを変更し,新しいデータを簡単な操作

で追加できるような仕組みを開発している.

大量の項目を含み非常に多くの追加が想定される

ので分野分け,出典文書の種類や版,出版年の区分な

どについて詳細に検討し公開方法も含めて改良を検

討している.

2.2 WG 2:文字図形識別情報(主査:古家時雄)

IPSJ-TS 0002:2002(文字図形識別情報)および

IPSJ-TS 0010(文字図形間の構造的距離-定義とその

算出法)を既に制定・公開している.IPSJ-TS 0002 に

おける文字図形集合の一覧の PDF 化による改版の準

備をほぼ終了し,2008 年度にはチュノム(ベトナム

の字)を部首画数で並べ替える作業を行った.

2.3 WG 3:日本語電子化辞書形式(主査:橋本三奈子)

日本語の自動解析に用いる電子化辞書の記述項目

を標準化し,電子化辞書の分散・共同開発を容易にす

ることを目指し,2004 年度に IPSJ-TS0003:2004(解析

用日本語電子化辞書の記述項目と記述形式)を制定・

公開している.

次に IPA で研究開発した IPAL の動詞辞書,形容詞

辞書および名詞辞書を試行標準の形式(XML)に変換

し,IPAL 解説編についても WORD 化および PDF 化を行

って,これらをダウンロード可能にして公開した.そ

の後,XML タグについて改良を行い,ボランティアベ

ースで実際に辞書データを構築する仕組みを構築し

て公開することを検討している.なお,2009 年度初

めに主査が橋本から国立国語研究所の柏野和佳子に

交代する予定である.

2.4 WG 4:音声言語処理インタフェース(主査:新田

恒雄)

本 WGでは既にIPSJ-TS0009:004(ディクテーション

に用いる基本記号に対応する読み)および IPSJ-

TS0011:2005(カーナビ用音声入力の性能評価のため

のガイドライン)を制定・公開している.2006 年 3 月

に NP として,IPSJ-TS 0012(マルチモーダル対話のた

めの記述言語Part 1要求仕様)が技術委員会で承認さ

れ,2007 年度に標準化を進めた.2007 年 10 月には情

報処理学会 SLT 研究会で「マルチモーダル対話システ

ムのための階層的アーキテクチャの提案」を発表し,

音声入出力の 6層モデルを提案した.

試行標準案としてマルチモーダル対話システムの

ためのアーキテクチャの草稿を,情報処理学会と電子

情報通信学会が共催する FIT2008 において,イベント

企画「ユビキタス web - これからの web のために必

要な技術は何か」で発表した.WG 4 の荒木委員(京

都工繊大),西本委員(東大),桂田委員(豊橋技科大)

が参加し,荒木委員から WG 4 の活動を中心に「わが

国におけるマルチモーダル対話記述標準化-現状と

将来への期待」と題して講演を行うと共に,参加 WG4

委員全員がパネル討論に参加し,活発な意見交換を行

った.2009 年度初めに試行標準として制定公開する

予定である.

2.5 WG 5:符号化文字基本集合(主査:松岡榮志)

IPSJ-TS 0005(符号化文字基本集合)を 2002 年に制

定・公開し,2003 年には IPSJ-TS0007:2003(符号化文

字基本集合-日本コア漢字)を制定・公開している.

これは,我が国から ISO/IEC JTC 1/SC 2 に提案され

て国際標準に向けて参加各国の協力の下に手続きが

進められ,2005 年度に成立した.

IPSJ-TS0008(大規模文字集合の異体字構造)は松岡

主査の下で試行標準化作業が進められ,2007 年 3 月

に制定され 2007 年度に入って公開されている.その

後,試行標準関係表の CGI 化,異体字データの個別公

開法,応用事例の紹介などについて審議した.2008

年 4 月には国際大学 GLOCOM セミナーにおいて,大規

模漢字集合の構造表現と題して WG 5 の上地宏一委員

が講演した.

2.6 WG 6:レスポンシブリンク(主査:山崎信行)

2003 年 9 月に,並列分散制御用のリアルタイム通

信規格であるレスポンシブリンク(Responsive Link)

を制定した(IPSJ-TS 0006).これはロボットの制御な

どに有効な日本独自の技術であり,JTC 1/SC 25 で国

際標準化が進められて 2007 年度に成立した.そこで

は,物理層の仕様が Annex に規定されているので,今

後,この仕様を本体に移すことを計画している.

2.7 WG 7: フォントリソース参照方式(主査:小町祐

史)

2007 年度に新たに設置した WG 7 では,ユーザ要求

に応えるためのフォントの選択・代替・置換を可能に

するためのフォントの属性情報を規定することを目

指す.具体的には,文書作成時の意図の反映,文書変

換に際して埋め込みされていない場合に意図に近い

もので置換すること,また,埋め込みされていても場

合に応じて積極的にフォント置換を行うものである.

2008 年 12 月には,画像電子学会 第 23 回 VMA 研究会

でフォントリソース参照方式の TS 素案を発表した.

■ クロスドメイン・レジストリ専門委員会

委員長 堀内 一(東京国際大学)

1. 経緯

本専門委員会は,ISO/IEC JTC 1/SC 32(データの

管理と交換)の WG 2(メタデータ・レジストリ)と

連携しながら,メタモデル相互運用枠組み(Metamodel

framework for interoperability-MFI : ISO/IEC

19763)規格群をベースとして,異なるレジストリ間

の相互運用を実現するために,MFI 規格の拡張及び関

連する規格を開発することを目的に,2008 年度設置

された.

MFI 規格群の狙いは,e ビジネスなど企業間システ

ム連携を容易にする,モデルや情報要素,あるいはオ

ントロジなどの共有を促進するため,それらを記述し

たメタモデルを登録させることにある.

2002年 5月のプロジェクト発足以来,SC 32内にて,

日本,中国,韓国,英国,およびカナダの 5カ国によ

る共同プロジェクトとして活動している.

MFI 規格は,2009 年 3 月末で,審議中のものを含め

て第 1部から第 7部で構成され,次のような共同編集

体制をとっている.

第 1 部: 日本/英国,第 2部: 日本/韓国,

第 3 部: 日本/中国,第 4部: 日本/中国,

第 5 部: 日本, 第 6 部: 日本,

第 7 部: 中国

2007 年 2月 1 日,3月 1日に上記のうち第 1部と第

3部が,それぞれ規格成立(IS)となっている.

2. 作業内容

2008 年度,本委員会は,次のような作業を行った.

(1) 第 3 部(オントロジ登録のためのメタモデル)第

2版(進化の管理)の原案作成

MFI 第 3 部(ISO/IEC 19763-3)の第 2 版(オント

ロジ進化の管理)は,2007 年 3 月に規格(IS)成立

した第 1版に,オントロジ変更管理のメタモデルを加

えて,中国と共同して WD を作成した.2008 年 5 月の

シドニー会議で CD 登録し,2009 年 11 月のポルトガ

ル会議で FCD 投票の承認を得て,2009 年 3 月末時点

で同投票中である.

(2) 第 6 部:(登録手続き)の素案作成

MFI 第 6 部(ISO/IEC 19763-3)登録手続きについ

ては,1年間のスタディピリオドの後,2008 年 5 月の

シドニー会議で承認された.メタモデルの登録を規定

するものでるが,2008 年 5 月に提案された「MDR/MFI

統合」スタディ・プロジェクトとの調整が求められて

いる.2009 年 3 月末で WD の状況にある.

(3) 日本からの新提案準備

本部会では,2008 年度,レジストリ相互運用実現

のために,次のような規格案の可能性と準備を進めた.

①MFI サービスプロトコル

MFIのメタモデルの登録や維持のためのサービスプ

ロトコルを規格化する.MFI レジストリの実装と並行

して検討を進めた.

②レジストリ初期コンテンツ

MFIレジストリにモデルやオントロジの登録に求め

られる情報要素の標準を決めることを目的とする.た

だし,ドメインごとの多様性からその規格化は困難で

あり,UN/CEFACT が決める ebXML のコア情報要素など

を利用することで,新たな規格の提案は不要とした.

(4) 日本からのスタディ・プロジェクト提案

本委員会の目的であるレジストリの相互運用を実

現するため,2008 年 5 月シドニー会議で,次のよう

なスタディ・プロジェクトを提案した.

① ROR スタディ・プロジェクト

2008 年 5 月のシドニー会議に,異レジストリ間の

相互運用を目的とするスタディ・プロジェクトを申請

し承認された.2009 年 6 月の韓国会議へ報告する.

その報告では,わが国に「サービス・レジストリ・ア

ーキテクチャ」規格化の動きがあることを伝え,スタ

ディ期間の 1 年延長を申請する予定である.その間,

同アーキテクチャについて規格素案を用意し何らか

の形で,NP(新規格化作業)を SC 32 に提案する.

② MDR/MFI 統合プロジェクト

2008 年 5 月シドニー会議で,日米共同で提案した

ものである.MDR(ISO/IEC 1179)とMFI(ISO/IEC 19763)

の共通部を統合しながら,両規格間の重複排除,また

中国などから予定される新規提案を吸収するために,

SC 32/WG 2 のスコープ見直しを含めて検討する.

(5) MFI レジストリの実装実験

2008 年度,MFI のコア部分(第 2部)及び MDR の一

部を実装して一部を公開した.今後,サービスプロト

コル規格開発や Web サービスレジストリの実験へ拡

張する.

3.その他

異なるレジストリ間の相互運用に対するニーズは

電子政府など,各分野で高まっている.わが国ベンダ

の間でも,Web サービスを前提として,アーキテクチ

ャが議論されている.SC 32 における ROR スタディ・

プロジェクトを活用して,それらのベンダと連携して

アーキテクチャの規格化提案を進める方針である.

<第 3種専門委員会>

■ NFC 有線インタフェース(NFC-WI)JIS 制定原案作

成委員会

委員長 山下 博之((株)NTT データ)

1. 経緯

規格番号:

ISO/IEC 28361

英文タイトル:

Telecommunications and information exchange

between systems -- Near Field Communication

Wired Interface (NFC-WI)

和文タイトル:

近距離通信ワイヤード・インタフェース(NFC-WI)

ISO/IEC 28361(NFC-WI) 規 格 の 原 案 は , Ecma

International(TC47)にて制定・発行された ECMA-373

が,JTC 1 の Fast-Track 手続きにより IS となったも

のである.

2. 作業内容

幹事が原規格からの粗訳を用意し,インタネットフ

ァイルサービスを用いて,委員間で作業ファイルを共

有しつつ作業を行った.業務用メールの受信容量制限

のある委員のためにファイルサービスを用いること

にした.

メール審議を基本としながら,随時会議を招集し,

確認しながら原案作成作業を進めた.

NFC-WI は,NFCIP-1 を実現することを専らにしてい

るため,オプションが無く単純である.よって,RF

フロントエンドを単純なモデムとして安く作ること

も可能である.シグナルインとシグナルアウトは,ア

ナログ信号ではなくデジタル信号であるため,配線経

路や配線距離への配慮が比較的簡便である.フロント

エンド回路をアンテナの極めて近くに置くことがで

きるため,アンテナ側の RF 信号を引き回す必要がな

い.

NFC-WI は,コンスーマー用途の他に工業用途にも

応用の場がある.NFC-WI のデジタル信号を用いるこ

とにより,ノイズの多いロボットの内部でも比較的長

い配線を引き回すことができる.

[参考]

近距離通信用インタフェース及びプロトコル(以下,

NFCIP-1 という)規格は,およそ 10cm 程度の距離を

想定した 13.56MHz の ISM 帯を利用する無線通信手段

であり,一部の非接触 IC カードとの通信互換性も備

えている.さらに,受動通信モード,能動通信モード,

それぞれの通信モードにおける変調方式及び符号化,

データ転送速度(106kb/s,212 kb/s,424 kb/s),RF

インタフェースのフレーム形式,初期化方式及び衝突

制御などの仕様を規定している.NFCIP-1 規格は,毎

日持ち歩いて使う鉄道の電子乗車券 Suica に象徴さ

れるタッチアンドゴーというスタイルを実現する技

術として,家電製品の中へ組み込まれる方向にあり,

特に携帯電話での応用に注目が集まっている.

NFCIP-1 は,誘導式読み書き通信であり,通常,RF の

アナログ信号処理部及びプロトコルを処理するデジ

タル信号処理部で構成される.

■ オープン分散処理--統一モデリング言語 JIS 原案

作成委員会

委員長 薮田 和夫(富士通(株))

当委員会は 2005 年 10 月に発足して以来,ISO/IEC

19501:2005 の JIS 化作業を鋭意推進してきた.2007

年 10 月には規格調整分科会の審議に臨み,Glossary

翻訳の必要性を含む,エディトリアルな指摘を中心に

全 246 の改善指摘を受けた.この改善指摘に対応した

最終 JIS 原案を,2008 年 2 月に日本規格協会へ提出

した.ここまでの作業経過,発生した問題点等につい

ては 2007 年度 専門委員会活動報告にまとめている.

その後規格協会側で JIS 規格としての編集校正作

業が行われ,8月にその完成原稿をもって規格協会よ

り経済産業省へ提出(申し出)が行われた.そして

2009年 1月 31日に経済産業省で開催された情報技術

専門委員会の審議において,UML JIS原案はJIS X 4170

として承認された(2009年5月20日官報により公示).

■ プログラム言語 Fortran JIS 原案作成委員会

委員長 田中 稔(富士通(株))

1. 経緯

国際規格 ISO/IEC 1539-1(Programming languages

-- Fortran -- Part 1: Base language)が 2004 年に

改正された.これに伴い 2005 年 4月に国内の Fortran

標準化活動を推進する SC 22/Fortran WG 小委員会の

メンバを中心とした JIS 原案作成委員会を組織し,対

応する JIS X 3001-1 の原案の作成作業を開始した.

この Part 1 では,Fortran 基底言語で表現されるプ

ログラムの形が規定され,その解釈が与えられる.こ

の改正版は通称 Fortran 2003 と呼ばれ,旧版(通称

Fortran 95)から様々な仕様拡張が行われている.例

えば,派生型(“構造型”から用語変更を検討中)の仕

様拡張,オブジェクト指向プログラミングの支援,

ASSOCIATED 構文の追加,データ操作の拡張,入出力

機能の拡張(非同期転送,流れ探査等),手続ポインタ

の追加,有効範囲の仕様拡張,IEC 60559(IEEE 754)

の例外処理や算術の用意,プログラム言語 C との相

互利用可能性の支援,国際利用の支援,オペレーティ

ングシステムとの一体化の拡張(コマンドライン引数

等)などである.Fortran 2003 では,旧版の Fortran 95

の構文規則や解釈がそのまま包含されており,

Fortran 95 から上位互換を保ちながら拡張されてい

る.ほんの一部に些細な解釈の違いはあるものの,そ

れらの違いを除けば,Fortran 95 に合致するプログ

ラムは,Fortran 2003 にも合致する.500 ページを優

に超えるほど膨大な分量があるものの,プログラム言

語が一般に広く利用されることなどの性格を考慮し,

完全翻訳による原案作成とすることにした.

2008 年度は,2005 年度,2006 年度及び 2007 年度

の作業から継続して,索引作成など最後の体裁を整え

る作業を行った.2005 年度の作業開始当初は,2006

年 10 月に原案作成作業を完了させる予定で作業を始

めた.しかし,作業量が多く各委員の作業時間も思う

ほど自由にはならなかったため,作業期間を 2007 年

6 月まで延長した.その後,委員追加による補強を行

ったり原案レビューのための会議時間を増やしたり

などの対策を講じ作業進捗はかなり改善されたもの

の,各委員の作業時間の確保が思うように行かず作業

期間を 2008 年 11 月まで再度延長することとなった.

その後,形成原案の体裁を整えるための最終的な作業

を終え,2008 年 9 月,日本規格協会に改正原案を提

出した.

2. 作業内容

原案作成作業は,2005 年度,2006 年度及び 2007 年

度に引き続き,対応する原国際規格を忠実に翻訳する

形で進めた.新規に追加された用語についての訳語を

ある程度決めてから翻訳作業に着手したが,翻訳作業

中に新たに出現しその都度検討した訳語も少なから

ずあった.また,従来から存在する用語についても一

部見直しを行い,いくつか訳語を変更したものもある.

Fortran 95 で廃止されたが,仕様拡張によって

Fortran 2003 で復活した用語もある.例えば,derived

type は,旧版の Fortran 95 では構造体を宣言する型

としての意味しかもたなかった.当時の用語委員会か

らの助言によって構造型としてきたが,Fortran 2003

ではクラス及び拡張型の概念が導入され,これらの概

念を説明するのに構造型のままでは不適当になった.

したがって,構造型から派生型へ変更することにした.

また,長さ型パラメタ(length type parameter)は,

Fortran 90 で導入されたが,Fortran 95 では文字長

パラメタ(character length parameter)に変更された

ので,一旦廃止された用語である.Fortran 2003 で

は,派生型パラメタ化する機能が追加され,そのパラ

メタの一つとして長さ型パラメタがある.長さ型パラ

メタは,必ずしも文字長を表すとは限らないことから,

もっと広い意味の用語として復活した.

この原案作成にあたっては,仕上がりの高品質化や

作業効率を考慮し,旧版の JIS 改正原案作成作業のと

きから使用している日本語文書清書システムの環境

を整備して再利用している.併せて,WWW サーバ及び

電子メールを積極的に利用するなど情報の共有に努

め,委員を下訳作成担当と編集専門担当に分けるなど

さらなる作業の効率化を図った.作業中,原国際規格

にはいくつかの不備も見つかった.これらの不備は,

原国際規格の原案作成委員会であるISO/IEC JTC 1/SC

22/WG 5 にすでに通知してある.

■ 共通言語基盤(CLI)JIS 改正原案作成委員会

委員長 黒川 利明((株)CSK ホールディングス)

1. 経緯

共通言語基盤(CLI)は,Microsoft 社などが進め

ている.NET において,各種のプログラム言語をサポ

ートする安全で高機能な環境を提供するもので,2006

年 11 月に JIS X 3016(ISO/IEC 23271:2003)として

公示された.この原案作成時,英文原規格は作成団体

の Ecma TC39 TG2(当時,現 TC49)において,拡張作

業が大詰めの段階に来ていたので,JIS X 3016:2006

解説の懸案事項に改訂版への対応の必要を述べてお

いた.実際には,2006 年 6 月には,Ecma 総会で改訂

が承認された共通言語基盤の仕様が Ecma からファス

トトラックで提案されており,JIS 発行の 1ヶ月前の

2006 年 10 月に ISO/IEC 23271:2006(第 2版)が発行

された.JIS X 3016:2006 共通言語基盤(CLI)は,

一歩遅れたものとなっていた.

早急に国際標準に合わせる必要があることを受け,

2007 年 7 月から C# JIS 改正原案作成委員会において

CLI JIS 改正を検討する作業を開始した.2008 年度の

JIS 原案作成公募に JIS X 3016 共通言語基盤(CLI)

が無事採用されたので,2008 年 4 月からは「共通言

語基盤(CLI)JIS 改正原案作成委員会」として正式

に活動を開始した.

国際規格の改定内容については,プログラム言語

C#の場合と同様に,日本から提案した多くの修正が取

り入れられていた.さらに,2003 年の規格よりも英

語としての表現自体が標準にふさわしいものに手直

しされ,細かい字句や表現の修正がほぼ全部の領域に

亘っていた.規格の構成は partition 構成のままで,

IS 及び JIS の形式と合わない問題点は,残念ながら

解消されず,今回の JIS 改正に際してもいろいろと難

しい問題を引き起こした.

機能的には,総称(generics)の導入が今回の改訂

の目玉であり,その内容の検討については多くの議論

を費やした.プログラム言語 C#に限らず,多くのプ

ログラム言語が総称機能を取り入れている.ただし,

ほとんどの場合,C++や Java がそうであるように,総

称機能はコンパイル時に解決され,実行時には従来の

型体系に従うだけである.

これに対して,共通言語基盤としては,実行時の総

称機能を提供している.すなわち,一つには,C#を始

めとする複数の言語において,総称機能が簡便に使え

るようになる.もう一つには,総称機能を使ったとき

に,実行処理の柔軟性と高速性,さらには安全性を確

保するという狙いがある.しかし,それは同時に,共

通言語基盤が提供するオブジェクト指向の基礎とな

る型体系の中に総称という抽象化機能が組み込まれ

たことであり,実行時に総称という抽象化された実体

を具現化して,実コードに落としていくという作業を

伴う.

この作業は,共通言語基盤(CLI)の型安全性の原

則を堅持するために,どうしても複雑なものとならざ

るを得ない.総称に関する共通言語基盤の仕様は,そ

のような動作を反映して複雑なものとなっており,日

本語に適切に翻訳するためには,その機構の理解にか

なりの時間を費やさねばならなかった.

幸いなことに,委員各位の献身的な貢献によって

2009 年 2 月末に,共通言語基盤(CLI)JIS 改正原案

を無事に日本規格協会に提出することができた.現在

は,7 月 17 日に行われる日本規格協会の規格調整委

員会の審議のための準備をしている状態である.

2. 作業内容

ISO/IEC 23271:2006 の英文原規格は,566 ページと

いう大部のものである.経緯でも述べたように,本文

全体にわたって変更が加えられているために,単純に

JIS X 3016:2006 文書に,改訂部分を追加するという

わけにはいかず,文書全体を再度見直す必要があった.

また,JIS Z 8301(規格票の様式及び作成方法)の改

訂があったために,文書形式にもかなり手を入れる必

要がった.

また,残念ながら英文原規格のバグがまだ残ってお

り,従来通り,Ecma TC49 への通知を含めて,規格自

体の品質向上を図っていく必要があった.訳語は,基

本的には,前回用いた訳語を継承するが,英文原規格

において,用語を改訂した部分があるため,訳語につ

いてもさらに検討を進める必要があった.

幸いなことに,前回の JIS 原案作成委員の多くが今

回の改正原案作成委員会に参加してくれたのと,新た

な委員が積極的に参加してくれたので,意識あわせな

どの作業も順調に進み,原案作成を円滑に進めること

ができた.また,JIS テンプレートの作業その他につ

いては,従来通り,マイクロソフト プロダクト ディ

ベロップメント リミテッドから作業支援を頂いた.

現時点(2009 年 6 月)までは,最終審議に備えて

月一回の委員会を継続してきた.今後とも,情報部会

での最終審議に備えて月一回程度委員会を継続する

予定である.

3. その他

本委員会では,車椅子の身体障害者の委員が二名参

加しておられる.委員会の主たる会場である機械振興

会館がトイレなど,もう少し身障者にとって使いやす

いように設備を改良していただけるとありがたい.ま

た,介護の方々が待つことのできるスペースもあると

良い.

■ オフィス文書のためのオープンな文書形式

(OpenDcument)v1.0 JIS 原案作成委員会

委員長 村田 真(国際大学)

1. 経緯

ISO/IEC 26300:2006 Open Document Format for

Office Applications(OpenDocument) V1.0 は,オフ

ィス電子文書の交換のための規格である.

ISO/IEC 26300 を JIS 化するため,オフィス文書の

ためのオープンな文書形式(OpenDocument)v1.0 を制

定する第 3種委員会が 2006 年 8 月に発足し,2007 年

7 月には原案を日本規格協会に提出した.2008 年 1 月

及び2009年2月には規格調整分科会の審議を受けた.

2. 作業内容

規格調整分科会の審議を受けて,原案を修正する作

業を行っている.修正はほぼ終了し,まもなく改定版

を提出する運びである.

3. その他

(1) ODF への正誤表

規格調整分科会で指摘された問題点のいくつかは,

ISO/IEC 26300:2006 それ自体に関するものであった.

ISO/IEC 26300:2006 自体についての疑義は,OASIS に

メールで提出するとともに,SC 34 専門委員会を通じ

て欠陥報告(SC34N942 及び SC34N1078)を提出した.

SC34N942 にある欠陥の多くに対処して,OASIS

standard としての ODF 1.0 への正誤票が発行された

が,ISO/IEC26300:2006 自体についての正誤票はまだ

発行されていない.また,SC34N1078 にある欠陥はま

だ対処されていない.

今回作成した JIS 原案では,OASIS standard とし

ての ODF 1.0への正誤票は取り込んでいる.ODFが JIS

になった後でも,OASIS 及び JTC 1 で正誤票が発行さ

れた場合には,JIS 規格への正誤票を発行していく必

要がある.

(2) ODF のバージョン

JIS 原案が準拠している ISO/IEC 26300:2006 は,

ODF 1.0 に相当する.しかし,ODF 1.1 がすでに OASIS

規格として成立しており,主要な実装はこの ODF 1.1

を採用している.さらに,OASIS では ODF 1.2 を検討

している.

ODF 1.0 と ODF 1.1 の差は大きなものではないが,

アクセシビリティに関する機能はODF 1.1にのみ存在

する.したがって,JIS 原案にもアクセシビリティに

関する機能は存在しない.

ODF 1.1 を ISO/IEC 規格化する計画はない.したが

って,ODF 1.1 を JIS 化する計画も存在しない.しか

し,ODF の今後の版(ODF 1.2 など)が IS 規格化され

た場合には,JIS規格化について検討する必要がある.

■ アセスメント配信における情報技術(IT)利用の

実践のための規範 JIS 原案作成委員会

委員長 永岡 慶三(早稲田大学)

1. 経緯

本委員会は,BSI からの Fast track 提案で 2007 年

2 月に IS となった,ISO/IEC 23988 Information

technology -- A code of practice for the use of

information technology (IT) in the delivery of

assessments を JIS 化するために,2007 年 7 月に設置

された.規格名の assessments(アセスメント)とは,

教育分野での「評価」を指している.近年のeラーニ

ングの普及とともに,国内でもオンラインテストを実

施する機関や組織が増えている.特に,資格取得や単

位認定などのハイステークスアセスメント(結果が受

験者に重大な影響を及ぼすテスト)においては,セキ

ュリティやアセスメントのスムースな実施に細心の

注意を払う必要があり,このようなオンラインアセス

メントの運営プロセスに関する標準規格は非常に重

要になってきている.

本規格は,ネットワークを用いたオンラインテスト

などを対象に,その運営プロセスのガイドラインを定

めたものである.具体的には,以下のようなアセスメ

ントのサイクルにおいて,e)の配布から j)のデータ

返却までのプロセスを対象に,関係者が遵守しなくて

はならない要件を定めている.

a) アセスメントを行うニーズの特定

b) 成果/アセスメント手法の設計

c) 準備と較正

d) 支払いを含む事前登録

e) 配付

f)(本人確認を含む)認証

g) 配信

h) 回答の返却

i) 採点,結果判定,および/または,フィードバック

j) データ返却

k) 分析

l) 異議申し立て

m) 証明交付

2. 作業内容

今年度は,委員全員による本委員会を 2 回実施し,

さらにメールによって作業を進めた.英文規格は約

40 ページの小規模なもので完全翻訳による JIS 化を

目指した.規格の規模は小さいが新規の分野であるた

め,適切な訳語の確定や,記述されている概念の解釈

にかなり時間をとられた.今年度は,昨年度実施した

翻訳をベースに概念の再確認,翻訳の見直しを行った.

特に全編を通じて問題となったのは should の訳し方

である.英文原規格の ISO/IEC 23988 は推奨規格(ガ

イドライン規格)であり,その旨が規格の中にも明記

されている.しかし,公平で信頼性の高いテストを実

施するためには, “should” を“~望ましい”では

なく“~しなければならない”とした方がよい,と考

えられる個所が散見された.例を以下に挙げる.

(例 1)

受検者(又はアセスメントの開発,手配又は実施

にあたる者)の健康及び安全を危険にさらさない

ことが望ましい.

(例 2)

アセスメントコンテンツ及び正答の機密性が重

要な要求事項である場合,アセスメントサイクル

全体を通じ,機密性を維持するための手順を設け

ることが望ましい.

これらを“~しなければならない”とすることも検討

されたが,今回は国際一致規格とするために“~望ま

しい”で統一することとした.

本規格は,2009 年 3 月に JIS 原案として日本規格

協会に提出した.

3. その他

本規格には,大学・企業などオンラインテストの利

用者,オンラインテストのシステムやサービスなどの

提供事業者,オンラインテストの理論や教育活用に関

する研究者,と多岐に渡る関係者がいるため,委員会

もできるだけ多彩なメンバをそろえて,様々な側面か

らの意見を集約して作成に当たった.すでに業界関係

者からの問い合わせなども受けており,今後,JIS と

して発行されて広く活用されることが期待される.

<その他>

■ ISO 2375 登録委員会

委員長 三上 喜貴(長岡技術科学大学)

2008 年度は特記すべき活動なし.これまでの登録

内容は,ISO-IR(International Register)の Web サ

イト(http://www.itscj.ipsj.or.jp/ISO-IR/)に掲

載されている.

発 行 人

社団法人 情 報 処 理 学 会

情報規格調査会

広報委員会

〒105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8

機械振興会館 308-3

Tel: 03-3431-2808 Fax: 03-3431-6493

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http://www.itscj.ipsj.or.jp/